(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294240
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】アクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20180305BHJP
C08G 63/08 20060101ALN20180305BHJP
C07C 51/09 20060101ALN20180305BHJP
C07C 57/04 20060101ALN20180305BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
C08F20/06
!C08G63/08
!C07C51/09
!C07C57/04
!C07B61/00 300
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-558787(P2014-558787)
(86)(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公表番号】特表2015-509497(P2015-509497A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013026810
(87)【国際公開番号】WO2013126375
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/605,252
(32)【優先日】2012年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/601,707
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マホニー, ジェイムズ イー.
【審査官】
土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/118128(WO,A1)
【文献】
特開平06−287280(JP,A)
【文献】
米国特許第03002017(US,A)
【文献】
米国特許第02361036(US,A)
【文献】
特開2012−162471(JP,A)
【文献】
特表2010−510274(JP,A)
【文献】
TETSUYA SHIOTA et al.,JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,1967年,Vol.11,pp.753-771
【文献】
SLOWIK ET AL.,Catalytic Conversion of Waste Carbon Monoxide to Valuable Chemicals & Materials,TECHNICAL PROCEEDINGS OF THE 2010 CLEAN TECHNOLOGY CONFERENCE AND TRADE SHOW 2010,2010年,pp.283-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/09
C07C 57/04
C08F 20/06
C08G 63/08
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸を製造するための方法であって、
ここで、該方法は、
ポリプロピオラクトンを第一の場所で生成するステップ;
該ポリプロピオラクトンの少なくとも一部をペレット化するステップ;
該ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を該第一の場所から第二の場所に、トラック、鉄道、タンカー、荷船、または船、またはこれらの任意の組み合わせにより輸送するステップ;
該ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を該第二の場所でアクリル酸に転化するステップ;および
該アクリル酸を、直接、アクリル酸重合反応器に供給するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記アクリル酸が、該アクリル酸の分離および貯蔵なしに、直接、前記アクリル酸重合反応器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記アクリル酸重合反応器に直接供給された前記アクリル酸へのまたはからの安定剤の添加、除去またはそれらの組み合わせを必要としない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクリル酸が氷アクリル酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アクリル酸が少なくとも99.4%の純度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記輸送の前に、前記ペレット化されたポリプロピオラクトンのうちの少なくとも一部を前記第一の場所で貯蔵するステップ、または
(ii)アクリル酸への前記転化の前に、前記ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を前記第二の場所で貯蔵するステップ
をさらに含む、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記貯蔵するステップが、少なくとも1週間行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の場所と前記第二の場所が161キロメートル(100マイル)よりも離れている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
所定の日において:
(a)前記第一の場所でのエチレンの報告された価格が、前記第二の場所でのエチレンの報告された価格よりも低く、ここで、該所定の日は、前記生成が行われた日より15日〜180日(上限日および下限日を含む)前の任意の日であるか;または
(b)前記第一の場所でのエチレンの報告された価格が、前記第二の場所でのプロピレンの報告された価格よりも低く、ここで、該所定の日は、前記生成が行われた日より15日〜180日(上限日および下限日を含む)前の任意の日であるか;
または(a)および(b)の組み合わせであり、
そして該報告された価格が商業用情報源への参照によって明らかになる、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記商業用情報源がPlattsまたはICISである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の場所が前記頁岩プレイまたは頁岩層の483キロメートル(300マイル)内に存在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
エチレンオキシドを一酸化炭素と、金属カルボニル化合物の存在下で合わせて、βプロピオラクトンを製造するステップ;および
該βプロピオラクトンを重合開始剤と合わせて、該ポリプロピオラクトンを前記第一の場所で生成するステップ
をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記重合開始剤がカルボキシレートアニオンまたはポリ酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボキシレートアニオンがアクリレートアニオンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アクリル酸重合反応器に直接供給された前記アクリル酸がポリアクリル酸を製造し、そして前記方法がさらに、前記ポリアクリル酸を高吸水性ポリマーに転化するステップを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アクリル酸重合反応器に直接供給された前記アクリル酸がポリアクリル酸を製造し、そしてここで、ポリアクリル酸が製造されるのと同じ速度で前記ポリプロピオラクトンがアクリル酸に転化される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ポリアクリル酸を製造するための方法であって、
エチレンオキシドを一酸化炭素と、第一の場所で、金属カルボニル化合物の存在下で接触させてβプロピオラクトンを製造するステップ;
該βプロピオラクトンを重合開始剤と反応させて、ポリプロピオラクトンを該第一の場所で生成するステップ;
該ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を該第一の場所においてペレット化するステップ;
該ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を、該第一の場所から第二の場所に、トラック、鉄道、タンカー、荷船、または船、またはこれらの任意の組み合わせにより輸送するステップ;
該ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を、該第二の場所でアクリル酸に転化するステップ;および
該アクリル酸の分離および貯蔵なしに、該アクリル酸を、直接、アクリル酸重合反応器に供給するステップ、
を含み、
ここで、該方法は、前記アクリル酸重合反応器に直接供給された前記アクリル酸へのまたはからの安定剤の添加、除去またはそれらの組み合わせを必要としない、
方法。
【請求項18】
(i)前記輸送の前に、前記ペレット化されたポリプロピオラクトンのうちの少なくとも一部を前記第一の場所で貯蔵するステップ、または
(ii)アクリル酸への前記転化の前に、前記ペレット化されたポリプロピオラクトンの少なくとも一部を前記第二の場所で貯蔵するステップ
をさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記貯蔵するステップが少なくとも1週間行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第二の場所と前記第一の場所が161キロメートル(100マイル)よりも離れている、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ポリアクリル酸を製造するための方法であって、
ポリプロピオラクトンを第一の場所から第二の場所に、トラック、鉄道、タンカー、荷船、または船、またはこれらの任意の組み合わせにより輸送するステップ;
該ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を、第二の場所でアクリル酸に転化するステップ;および
該アクリル酸の分離および貯蔵なしに、該アクリル酸を、直接、アクリル酸重合反応器に供給するステップ
を含む、方法。
【請求項22】
前記第一の場所と前記第二の場所が161キロメートル(100マイル)よりも離れている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記アクリル酸重合反応器に直接供給された前記アクリル酸へのまたはからの安定剤の添加、除去またはそれらの組み合わせを必要としない、請求項21または22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年2月22日出願の米国出願第61/601,707号、及び2012年3月1日出願の米国出願第61/605,252号の優先権を主張し、これらの出願の各々は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、ポリアクリル酸系高吸水性ポリマー(SAP)に対する需要が増大していることにより、アクリル酸(AA)の製造及び使用が大きく増えている。SAPは、おむつの製造用及び農業用途において広く使用される。SAPを上手く製造するには、純度の高い氷アクリル酸を使用する必要がある。氷アクリル酸は貯蔵及び輸送において不安定であるという点から問題が生じ、材料は、予想外の激しい重合反応を受ける可能性がある。アクリル酸の重合は非常に激しく、かなりの熱及び圧力を生成し、熱蒸気及びポリマーを放出させることがあり、これにより自然発火し得る。非常に急速な圧力上昇のために、爆発の危険性が存在する。激しい(「暴走」)重合化が原因でアクリル酸の容器が爆発した事例が数件知られている。
【0003】
氷AAを安定化させるために様々な技術が開発されており(例えば、米国特許第4,480,116号、第4,797,504号及び第6,403,850号参照)、この目的のため、市販されているAAの大半に、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が含有され、酸素が溶解される。それにもかかわらず、氷AAの輸送及び貯蔵に関する問題は残存する。暴走重合化に対して上手く安定化しても、貯蔵している間にジアクリル酸が生成される。ジアクリル酸の生成を化学添加剤によって阻止することはできず、いくつかの用途では、ジアクリル酸がアクリル酸の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの理由から、アクリル酸を使用する多くのプロセスは、商業用等級AAから氷AAの現地精製に依存する。これは、専門的知識及び氷AAを供給原料として使用するプロセスの複雑性及び費用の増大となる極めて高度な装置及び制御を必要とするエネルギー集約型プロセスである。
更に、米国及び他の場所において、エタンを豊富に含むシェールガス保存地が近年発見されたことにより、化学工業、更に具体的には、アクリル酸の製造に影響を及ぼす可能性がある。現在、ほとんどすべての商業用アクリル酸は、プロピレン酸化から誘導される。プロピレンは主に精油生成物であり、その価格及び利用可能性は、原油価格とほぼ同じである。このため、アクリル酸の価格は近年、大幅に上昇している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,480,116号明細書
【特許文献2】米国特許第4,797,504号明細書
【特許文献3】米国特許第6,403,850号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
安全且つ/又はエネルギー効率の高い方法で、氷アクリル酸(AA)の輸送及び/又は貯蔵を行うための方法が依然として必要とされている。更に、プロピレンの酸化に依存しないAAへの経路の代替方法を提供することが依然として必要とされている。
【0006】
一態様では、本発明により氷アクリル酸を貯蔵及び輸送するにあたって特有の問題への解決法が提供される。
【0007】
一態様では、本発明により、アクリル酸の製造に使用するためにより安価の供給原料が可能になる。
【0008】
一態様では、本発明により、アクリル酸及びその誘導体の広範な地域的要求を満たすために、1つの現場でより安価な供給原料を使用できるようになる。例えば、本発明を展開して、シェールガス及び一酸化炭素のC2成分を利用して、ポリマーポリプロピオラクトン(PPL)を作製することができる。
【化1】
【0009】
PPLは、氷AAの出荷及び貯蔵に伴う安全上の懸念又は品質の低下なく、長期にわたり安全に輸送及び貯蔵することができる安定した材料である。氷アクリル酸が必要な場合、本発明の方法により、AA使用時でのポリプロピオラクトンの分解ステップを経て高純度形態において氷アクリル酸が提供される。したがって、特定の実施形態では、本発明により安全に且つ/又はより安価で、且つ/又は柔軟性の高い方法でアクリル酸を入手できる。
【0010】
特定の実施形態において、本発明の方法は、
−第一の場所で、ポリプロピオラクトンを生成するステップと、
−ポリプロピオラクトンを分離するステップと、
−分離されたポリプロピオラクトンを第二の場所へ輸送するステップと、
−アクリル酸が必要となるまで、任意で在庫のポリプロピオラクトンを貯蔵するステップと、
−ポリプロピオラクトンを熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、を含む。
【0011】
特定の実施形態では、本発明は、アクリル酸の製造方法を提供する。本方法は、第一の場所で、ポリプロピオラクトンを生成するステップと、ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を分離するステップと、第二の場所で、分離したポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、を含む。特定の実施形態において、本発明は、アクリル酸の製造方法を提供し、本方法は、第一の場所で生成されたポリプロピオラクトンを第二の場所で受け取るステップと、第二の場所で、受け取ったポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、を含む。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
アクリル酸の製造方法であって、
第一の場所で、ポリプロピオラクトンを生成するステップと、
前記ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を分離するステップと、
第二の場所で前記分離したポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、
を含む方法。
(項目2)
前記熱分解前に、前記分離したポリプロピオラクトンを前記第二の場所に輸送するステップを更に含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記輸送ステップは、前記ポリプロピオラクトンを100マイル超の距離を移動させることを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
アクリル酸の製造方法であって、
第一の場所で生成されたポリプロピオラクトンを第二の場所で受け取るステップと、
前記第二の場所で、前記受け取ったポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、
を含む方法。
(項目5)
前記熱分解前に、前記ポリプロピオラクトンを貯蔵するステップを更に含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記第一の場所と前記第二の場所との距離が100マイル〜12,000マイル離れている、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記第一の場所と前記第二の場所との距離が、少なくとも250マイル、少なくとも500マイル、少なくとも1,000マイル、少なくとも2,000マイル又は少なくとも3,000マイル離れている、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記ポリプロピオラクトンを貯蔵する前記ステップが、前記第一の場所で行われる、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記ポリプロピオラクトンを貯蔵する前記ステップが、前記第二の場所で行われる、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記貯蔵ステップは、前記ポリプロピオラクトンを少なくとも1週間貯蔵することを含む、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記貯蔵ステップは、前記ポリプロピオラクトンを少なくとも1ヶ月間貯蔵することを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記貯蔵ステップは、前記ポリプロピオラクトンを少なくとも6ヶ月間貯蔵することを含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
所定の日において、前記第一の場所でのエチレンの価格が前記第二の場所でのエチレンより安価であり、前記所定の日は、前記ポリプロピオラクトンの生成が行われた日より15日〜180日(上限日及び下限日を含む)前の任意の日である、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記所定の日は、前記ポリプロピオラクトンの生成が行われた日より30日〜90日(上限日及び下限日を含む)前の任意の日である、項目13に記載の方法。
(項目15)
所定の日において、前記第一の場所でのエチレンの価格が前記第二の場所でのプロピレンより安価であり、前記所定の日は、前記ポリプロピオラクトンの生成が行われた日より15日〜180日(上限日及び下限日を含む)前の任意の日である、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記所定の日は、前記ポリプロピオラクトンの生成が行われた日より30日〜90日(上限日及び下限日を含む)前の任意の日である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記第一の場所は、頁岩プレイ又は頁岩層の300マイル以内に存在することを特徴とする、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記第一の場所は、頁岩プレイ又は頁岩層の150マイル以内に存在することを特徴とする、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記ポリプロピオラクトンを生成するステップは、エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させるステップを含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させる前記ステップは、前記エチレンオキシドをカルボニル化して、βプロピオラクトンを生成することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記βプロピオラクトンを重合する前記ステップを更に含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させる前記ステップは、前記エチレンオキシドを金属カルボニル化合物と接触させることを含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させる前記ステップは、エチレンオキシドを一酸化炭素と共重合させることを含む、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記熱分解によって遊離された前記アクリル酸が氷アクリル酸であることを特徴とする、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
熱分解によって遊離された前記アクリル酸をアクリル酸の重合に供給する追加ステップを含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記アクリル酸が前記アクリル酸を分離及び貯蔵することなく、前記アクリル酸の重合に直接供給される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記熱分解速度が、前記アクリル酸重合中の重合速度に適合されている、項目26に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の特定の実施形態の概略を示す図である。
【
図2】本発明の特定の実施形態による代表的な第一の場所及び第二の場所を示す図である。
【
図3】ポリプロピオラクトンを第二の場所に輸送するステップが、熱可塑性プロピオラクトン組成物を、市場に出すことのできる有用な物品に生成することと、次いで本明細書に記載のとおり処理し、アクリル酸を提供することができる使用済みのリサイクルストリームとして、有用な物品を収集することと、を含むサブステップを含む本発明の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の実施に有用なポリプロピオラクトンのサンプルを示す
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、アクリル酸の製造方法を提供する。本方法は、第一の場所で、ポリプロピオラクトンを生成するステップ、ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を分離するステップと、第二の場所で、分離したポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解してアクリル酸を遊離させるステップと、を含む。特定の実施形態では、本方法は、更に、分離したポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解して、アクリル酸を遊離させる前に、分離したポリプロピオラクトンを第二の場所に輸送するステップを含む。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、アクリル酸の製造方法を提供し、本方法は、第一の場所で生成されたポリプロピオラクトンを第二の場所で受け取るステップと、第二の場所で、受け取ったポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解してアクリル酸を遊離させるステップと、を含む。
【0015】
特定の実施形態では、本方法は、少なくともいくつかの分離させたポリプロピオラクトンを熱分解して、アクリル酸を遊離させる前にポリプロピオラクトンを貯蔵するステップを含む。ポリプロピオラクトンを貯蔵するステップは、第一の場所、第二の場所、1以上の他の場所(例えば、輸送中)又はこれらを組み合わせた場所で発生し得る。特定の実施形態において、ポリプロピオラクトンは、第一の場所から輸送される前に、第一の場所で貯蔵される。特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンは、少なくともその一部が熱分解される前に、第二の場所で貯蔵される。特定の実施形態において、ポリプロピオラクトンは、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間又は少なくとも2年間貯蔵される。
【0016】
異なる場所での価格差は、ある場所でポリプロピオラクトンを生成し、別の場所でポリプロピオラクトンを熱分解し、アクリル酸を遊離させるために利点になり得る。ポリプロピオラクトンを安全に貯蔵及び輸送することができると、原材料の価格が第二の場所よりも安い第一の場所でポリプロピオラクトンを生成することができ、その後、第二の場所へ輸送させ、引き続き熱分解を行ってアクリル酸を遊離させる。
【0017】
特定の実施形態において、本発明の方法は、ポリプロピオラクトンを製造する場所(即ち、第一の場所)及び少なくとも一部のポリプロピオラクトンが熱分解される場所(即ち、第二の場所)が少なくとも100マイル離れていることを特徴とする。特定の実施形態では、第一の場所と第二の場所との距離が100マイル〜12,000マイルである。特定の実施形態では、第一の場所と第二の場所との距離が、少なくとも250マイル、少なくとも500マイル、少なくとも1,000マイル、少なくとも2,000マイル又は少なくとも3,000マイル離れている。特定の実施形態では、第一の場所と第二の場所との距離が約250〜約1,000マイル、約500〜約2,000マイル、約2,000〜約5,000マイル、約5,000〜約10,000マイル離れている。特定の実施形態では、第一の場所のある国と第二の場所のある国とが異なる。特定の実施形態では、第一の場所のある大陸と第二の場所のある大陸とが異なる。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の方法がポリプロピオラクトンを第一の場所から第二の場所へ輸送するステップを含む特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを100マイル超の距離を移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを500マイル超、1,000マイル超、2,000マイル超又は5,000マイル超の距離を移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを100マイル〜12,000マイルの距離を移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを約250〜約1000マイル、約500〜約2,000マイル、約2,000〜約5,000マイル又は約5,000〜約10,000マイルの距離を移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを第一の国から第二の国へ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを第一の大陸から第二の大陸へ移動させることを含む。
【0019】
特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを北米から欧州へ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを北米からアジアへ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを米国から欧州へ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを米国からアジアへ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを中東からアジアへ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンを中東から欧州へ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンをサウジアラビアからアジアへ移動させることを含む。特定の実施形態では、輸送ステップは、ポリプロピオラクトンをサウジアラビアから欧州へ移動させることを含む。
【0020】
特定の実施形態では、輸送ステップは、トラック、鉄道、タンカー、荷船、船、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせから選択される手段によって、ポリプロピオラクトンを移動させることを含む。特定の実施形態では、本方法としては、所定の日において、第一の場所でのエチレンの価格が第二の場所でのエチレンより安価である上述のステップを含む。特定の実施形態では、本方法は、所定の日において、第一の場所でのエチレンの価格が第二の場所でのプロピレンより安価である上述のステップを含む。特定の実施形態では、本方法としては、所定の日において、第一の場所でのシェールガスのC2成分の価格が第二の場所でのエチレンより安価である、上述のステップを含む。特定の実施形態では、本方法としては、所定の日において、第一の場所でのシェールガスのC2成分の価格が第二の場所でのプロピレンより安価である、上述のステップを含む。特定の実施形態では、本方法としては、所定の日において、第一の場所でのエタンの価格が第二の場所でのエタンより安価である上述のステップを含む。特定の実施形態では、本方法としては、所定の日において、第一の場所でのエタンの価格が第二の場所でのプロパンより安価である上述のステップを含む。所定の日は、ポリプロピオラクトンの生成が起こる日より15日〜365日(上限日及び下限日を含む)、15日〜180日(上限日及び下限日を含む))、30日〜90日(上限日及び下限日を含む)、30日〜60日(上限日及び下限日を含む)、60日〜90日(上限日及び下限日を含む)前の、任意の日であってよい。
【0021】
異なる場所間での価格差は、第一の場所で頁岩プレイ又は頁岩層からエタンを入手することにより、発生し得る。シェールガスへの物理的近接又はシェールガスを供給するパイプラインへのアクセスを介して得られる。特定の実施形態において、第一の場所が頁岩プレイ又は頁岩層から物理的に近傍であるため、異なる場所での価格差が発生する。特定の実施形態では、第一の場所は、頁岩プレイ又は頁岩層の600マイル、450マイル、300マイル又は150マイル内に存在する特徴がある。例えば、Platts World Shale Resources Map(Platts世界頁岩資源マップ)を参照のこと。
【0022】
特定の期間(例えば1日)、価格が不安定である場合でも、このような材料が報告された価格(例えば、1日の価格)を有し、この価格が狙いとする価格であることは当業者によって理解されるであろう。このような価格は、商業用情報源、例えば、Platts(エチレン、プロピレンを含む)、ICIS(エチレン、プロピレンを含む)への参照によって明らかになる。このような材料が、地理的及び/又は政治的及び/又は他の考慮事項(例えば、中国、米国、サウジアラビア又はブラジルなどの各国、若しくは北西欧州など更に広い領域又は狭い領域)によって定義し得る領域について、報告された価格を有することは、当業者によって同様に理解されるであろう。また、当業者は、参考にするために適切な価格である任意の所定の場所について理解するであろう。
【0023】
このような価格差があるため、第一の場所からポリプロピオラクトンの少なくとも一部を熱分解し、第二の場所でアクリル酸を遊離させることを意図した第三者にポリプロピオラクトンを輸出することが有利となり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、第一の場所で、ポリプロピオラクトンを生成するステップ、ポリプロピオラクトンの少なくとも一部を分離するステップ、熱分解してアクリル酸を遊離させるために、分離したポリプロピオラクトンの少なくとも一部を第二の場所に送り出すステップ、を含む方法を提供する。送出ステップでは、アクリル酸に熱分解するために、ポリプロピオラクトンを最終的に引き渡すことを意図された任意の行為の形態(例えば、輸送、輸出、販売のため提供)を取ることができる。
【0024】
特定の実施形態では、この方法は、遊離アクリル酸が氷アクリル酸であることを特徴とする。特定の実施形態では、遊離された氷アクリル酸が、SAPなどアクリル酸ポリマーの製造に直接使用するために適した純度である。
【0025】
特定の実施形態では、第一のステップで生成されたポリプロピオラクトンは、液体であることを特徴とする。特定の実施形態においては、このような液体ポリプロピオラクトン組成物は、比較的低分子量のオリゴマーをかなりの量で含む。特定の実施形態において、生成されたポリプロピオラクトンの数平均分子量(M
N)は、約200g/モル〜約10,000g/モルである。特定の実施形態においては、生成されたポリプロピオラクトンのM
Nは約5,000g/モル未満、約3,000g/モル未満、約2,500g/モル未満、約2,000g/モル未満、約1,500g/モル未満、約1,000g/モル未満、又は約750g/モルである。特定の実施形態において、生成されたポリプロピオラクトンは、2〜約10モノマー単位を含むオリゴマーを含む。特定の実施形態では、このようなオリゴマーは、環状オリゴマーを含む。特定の実施形態において、環状オリゴマーは、平均約2モノマー単位、約3モノマー単位、約4モノマー単位、約5モノマー単位、約6モノマー単位、約10モノマー単位以下、又は2つ以上のこれらの材料の混合物を含む。
【0026】
特定の実施形態では、第一のステップで生成されたポリプロピオラクトンは、固体であることを特徴とする。特定の実施形態では、この方法には、一括で簡単に取り扱いできるように固体ポリプロピオラクトンをペレット化する追加ステップを含む。特定の実施形態において、固体ポリプロピオラクトン組成物は、かなりの割合の高分子量のポリマー鎖を含む。特定の実施形態において、このような高分子量のポリプロピオラクトンは、M
Nが約10,000g/モル〜約1,000,000g/モルであることを特徴とする。特定の実施形態では、高分子量のポリプロピオラクトンは、M
Nが約10,000g/モル超、約20,000g/モル超、約50,000g/モル超、約70,000g/モル超、約100,000g/モル超、約150,000g/モル超、約200,000g/モル超、又は約300,000g/モル超であることを特徴とする。
【0027】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンを生成するステップは、βプロピオラクトン(BPL)の重合ステップを含む。重合は、BPLがカルボン酸重合開始剤と接触することによって得られ得る。開始工程により、共有結合によって、このようなカルボン酸塩がポリマー鎖に組み込まれる。特定の実施形態において、本発明により、この結合開始剤から考えられる望ましくない影響に対して、解決法が提供される。つまり、PPLが解重合してアクリル酸を提供するとき、重合開始剤に相当するカルボン酸は、遊離することができ、また、生成されたアクリル酸中に混入物質としての役割を果たし得る。したがって、特定の実施形態では、BPLの重合ステップは、アクリレートアニオンを含む重合触媒にBPLを接触させることを含む。このようなポリマーは、結合開始剤から生成した非アクリレート材料には、ポリマーから生成されたその後のアクリル酸ストリームを汚染することはないという利点を有する。
【化2】
【0028】
特定の実施形態では、BPLの重合ステップは、非揮発性材料のアニオンを含む重合触媒にBPLを接触させることを含む。特定の実施形態において、生成されたアクリル酸ストリームを汚染する可能性のある揮発性副産物を生成することはほとんどないため、このような非揮発性開始剤で作られたPPLが望ましい。特定の実施形態では、このような実施形態で使用される非揮発性開始剤は、ポリ酸を含む。特定の実施形態では、ポリ酸は、高分子材料又は酸官能性の固体を含む。特定の実施形態では、ポリ酸は、ポリカルボン酸を含む。特定の実施形態では、ポリ酸は、スルホン酸を含む。特定の実施形態では、ポリ酸は、カルボン酸基及びスルホン酸基の両方を含む。
【0029】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンを生成するステップは、エチレンオキシドを一酸化炭素と反応させるステップを含む。特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンを生成するステップは、プロピオラクトンを提供し、その後、重合させてPPLを提供するために、エチレンオキシドをカルボニル化するステップを含む。特定の実施形態では、BPLは分離されず、in situで重合され、PPLを提供する。
【0030】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンを生成するステップは、エチレンオキシドと二酸化炭素との交互共重合化を行うことを含む。
【化3】
スキーム1:
【0031】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンの熱分解ステップは、PPLを100℃超、150℃超、175℃超、200℃超、又は約220℃超の温度に加熱することを含む。特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンの熱分解ステップは、不活性雰囲気においてPPLを加熱することを含む。特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンの熱分解ステップは、減圧下においてPPLを加熱することを含む。特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンの熱分解ステップは、解重合触媒の存在下でPPLを加熱することを含む。
【0032】
特定の実施形態において、本発明の方法は、熱分解ステップからアクリル酸を分離させる追加ステップを含む。特定の実施形態において、アクリル酸を分離させるステップは、熱分解ステップから放出される気体ストリームから酸を凝縮させることを含む。特定の実施形態において、アクリル酸は分離されていないが、重合させてポリアクリル酸になる重合反応器に直接導入される(例えば、アニオン系又はラジカル系オレフィン重合法によって)。
【0033】
特定の実施形態では、PPLの熱分解ステップは(例えば、供給バッチ反応器又は他の連続フロー反応器の構成において)連続して行われる。特定の実施形態において、連続熱分解プロセスを連続重合化プロセスに接続し、反応器の生成速度に合わせた速度でAAを提供する。特定の実施形態においては、この方法は、重合反応器に供給されたアクリル酸に安定剤を添加する且つ/又は重合反応器に供給されたアクリル酸から安定剤を除去する必要がないという利点を有する。
【0034】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンを第二の場所に輸送するステップが、
−熱可塑性プロピオラクトン組成物を、市場に出すことのできる有用な物品に生成すること、と、
−使用済みのリサイクルストリームとして有用な物品を収集すること、とのサブステップを含む。
【0035】
次いで、リサイクルストリームを上述のように処理し、アクリル酸を提供することができる。
図3はこのような実施形態の概略を示す図である。
【0036】
このため、特定の実施形態では、本発明は、
−ポリプロピオラクトンポリマーを生成するステップと、
−ポリプロピオラクトンを含む有用な物品を製造するステップと、
−使用済みのリサイクルストリームとしてポリプロピオラクトンを含む物品を収集するステップと、
−ポリプロピオラクトンを熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップと、
を含む方法を包含する。
【0037】
特定の実施形態では、ポリプロピオラクトンから有用な物品を製造するステップは、消費者用包装商品の製造を含む。特定の実施形態では、消費者用包装商品は、ボトル、使い捨て食品容器、発泡物品、ブリスターパック等を含む。特定の実施形態では、有用な物品は、農業用フィルム又は包装用フィルムなどのフィルムを含む。特定の実施形態では、有用な物品は、調理器具、プラスチックおもちゃ、クーラー、バケツのほか、電子部品、自動車部品、スポーツ用品などの消費財におけるプラスチック部品などの成形プラスチック物品を含む。特定の実施形態では、有用な物品は、現在、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニールなどの熱可塑性樹脂から作られたあらゆる無数の物品を含む。特定の実施形態では、有用な物品は、繊維又は織物を含む。
【0038】
特定の実施形態では、使用済みのリサイクルストリームとしてポリプロピオラクトンを含む物品を収集するステップと、ポリプロピオラクトンを熱分解して、アクリル酸を遊離させるステップとは、ポリプロピオラクトン成分を非ポリプロピオラクトン成分から分離させること、ポリプロピオラクトンを含む物品を破砕する、粉砕する又は溶解すること;破砕、粉砕又は溶解した材料を乾燥させること、及び/又は熱分解ステップ前に、ポリプロピオラクトン含有材料を処理して着色剤、充填剤、添加剤などの非ポリプロピオラクトン成分を除去することなどの、1以上の追加のサブステップを含む。
【0039】
特定の実施形態では、使用済みリサイクルストリームとしてポリプロピオラクトンを含む物品を収集するステップでは、消費者又はリサイクル設備に運搬するために材料がポリプロピオラクトンを含む表示付き物品を提供するステップが含まれる。特定の実施形態では、このような表示には、PPLに関連する番号表示を含む。特定の実施形態では、表示はSPI(プラスチック工業協会)リサイクルコードを含む。
【実施例】
【0040】
以下の実施例において、本発明の特定の態様の非制限的な技術的詳細を示す。
【0041】
実施例1〜3:ポリプロピオラクトンを介したエチレンオキシドからのアクリル酸の研究所規模の調製
この例では、小規模の研究室において、本発明の方法に有用な1つの化学的手順を実施する。
【化4】
【0042】
ステップ1:EOのカルボニル化及びBPLの重合
乾燥窒素下において、Parr社300mL高圧反応器に触媒1([(TPP)Al(THF)
2][Co(CO)
4]286mg、0.3mmol)及び乾燥脱酸素化THF85mLを充填した。反応器を45℃まで加熱し、500rpmで撹拌し、COを用いて150psiまで加圧した。反応器の温度が安定した後、EO13.5g(306mmol)をCO圧力600psi下で注入し、EO注入後、反応混合物を600psiで210分間維持した。次いで、CO圧力をゆっくり放出して周囲圧力とした。次いで、触媒2の溶液を窒素下で反応器(5mL塩化メチレン中PPNTFA1.98g、3.0mmol)に添加した。混合物は、反応器内で45℃で16時間撹拌した。MeOH中に1%HCl33mLを添加して、重合反応物をクエンチした。次いで、MeOH250mLを添加して、ポリマーを沈殿させた。反応器を空にし、20mLのCHCl
3で洗浄した。収集した反応混合物と洗剤とを合わせて濾過し、白色固体を生成した。固体を100mLのMeOHで洗浄し、40mLのCHCl
3中に溶解し、300mLのMeOH中に再度沈殿させた。沈殿物を濾過し、200mLのMeOHで洗浄し、真空オーブン内で40℃で16時間乾燥させ、PPL15.51gを得た。ポリマーのプロトンNMRスペクトル(CDCl
3)を
図4に示す。
【0043】
ステップ2:ポリプロピオラクトンの熱分解
50mL丸底フラスコに、砂10g、ステップ1で得たポリ(プロピオラクトン)2.0g、及びMEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)8.6mgを混合し、その混合物を磁気撹拌棒で撹拌した。フラスコを移送アダプターブリッジでMEHQ8.4mgの入った別の50mL丸底フラスコに接続した。装置全体を真空下にセットし、圧力が500mTorrに到達した後に閉じた。次いで、ポリマーの入ったフラスコをマントルヒーターに入れ、210℃まで加熱し、受けフラスコはドライアイス/アセトンバスに浸漬させた。アクリル酸は、加熱したフラスコ内でポリマーを熱分解させて遊離させ、受けフラスコに真空移送した。受けフラスコ中でそれ以上液体が凝縮しなくなると、加熱を停止した。熱分解終了時、透明な液体1.39gを受けフラスコから回収した。液体のGC分析により、液体は、少なくとも純度が99.4%であるアクリル酸であることがわかった。
【0044】
実施例2:重合開始剤としてのアクリル酸の使用
【化5】
【0045】
本実施例は、PPNアクリレートを重合触媒として使用する点を除き、実施例1に記載されている条件下で実施される。生成されたポリプロピオラクトンは、アクリレート末端基を含み、その熱分解によりアクリル酸のみを遊離させる。
【0046】
実施例3:安定したアクリル酸前駆体としてのポリプロピオラクトンの貯蔵
この実施例は、ポリプロピオラクトンが熱分解前に空気中において、室温で1年間貯蔵される点を除き、実施例1に記述された条件下で実施される。生成されたアクリル酸の収率及び品質は、実施例1と同じである。
【0047】
実施例4:アクリル酸供給チェーンのパイロット規模の実施。
この実施例では、本発明の供給チェーンの新規性をパイロット規模で示す。
【0048】
シェールガスプレイに近接の第一の反応器には、シェールガス誘導C2生成物ストリームから誘導されたエチレンオキシド75kg/時間を充填する。第一の反応器は、反応器容積中に存在するβプロピオラクトン濃度が1.5Mである定常状態条件で操作する。更に、触媒1[(TPP)Al(THF)
2][Co(CO)
4]15モル/時間を含む溶媒4850L/時間を反応器に供給する。反応器は、一酸化炭素圧力を600psigとし、供給及び溶媒の滞留時間が少なくとも2.5時間(例えば、容積は少なくとも15,000L)である大きさとする。これらの条件下で、β−プロピオラクトン約1740モル/時間を含有する反応ストリームが作製される(125kg/時間)。
【0049】
βラクトンストリームは、そのストリームを溶媒及び触媒を含有する触媒リサイクルストリームとプロピオラクトン及び溶媒を含むβ−プロピオラクトンストリームとに分離する分離ユニットに案内される。触媒リサイクルストリームは、第一の反応器に戻し、βプロピオラクトンストリームは、PPN−アクリレート(触媒2a)に接触させる第二の反応器に供給する。第二の反応器は、反応物質の滞留時間が少なくとも30分(例えば、容積1250L)であるような大きさの栓流反応器であり、任意の温度で維持し、ラクトンすべてが滞留時間中に消費されるように触媒を充填する。第二の反応器によりポリプロピオラクトン約1740モル/時間(123kg/時間)を生成する。栓流反応器の流出物は、塩酸及びメタノールで処理し、ポリマーを沈殿させる。沈殿させたポリマーはペレット化し、アクリル酸前駆体として販売するために提供する。
【0050】
ペレットは、在庫として貯蔵するアクリル酸の最終使用者の施設に貨物船で1,500マイル輸送する。
【0051】
流動床反応器に接合されたホッパーを供給するために在庫を使用する。流動床反応器は、150℃で乾燥窒素により掃気し、ホッパーから1時間当たり500kgの速度でポリプロピオラクトンペレットが供給される。流動床からの窒素掃気は、液体氷アクリル酸ストリームを速度約480kg/時間で生成するコンデンサ段階に向ける。
【0052】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、本発明の原理の用途を例示しているにすぎないことが理解される。本明細書の例示された実施形態の詳細について触れることは、請求項の範囲を限定するものではなく、それ自体、本発明に必須のものとしてこれらの特徴を列挙する。