(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294253
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 9/22 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
H01R9/22
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-52281(P2015-52281)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-173894(P2016-173894A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】摺田 拓弥
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−035568(JP,A)
【文献】
特開平08−115757(JP,A)
【文献】
特開平09−320666(JP,A)
【文献】
特開平03−069873(JP,A)
【文献】
米国特許第05944566(US,A)
【文献】
特開平08−250169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケースと下ケースとで成るケース本体と、前記下ケース内に載置される電線の素線を上方から圧着して固定する素線固定金具と、この素線固定金具を常時下方に押し下げる押えバネを備えた端子台であって、
前記上ケースは、被覆を剥いて前記素線を露出させた前記電線を、側面方向から挿通可能に電線挿入穴が形成されており、
前記下ケースは、前記上ケースと対向する表面にすり鉢状を呈するとともに電導性を有した端子台導体が形成され、前記素線が前記すり鉢状に這うように載置され、
前記素線固定金具は、前記下ケースの前記端子台導体に這わせた状態の前記素線を上方から圧着し、
前記素線固定金具は、絶縁ツマミと、この絶縁ツマミの下方に連接する軸部と、この軸部の下方に連接する回転抑制部と、この回転抑制部の下方に連接する素線押え部から成り、
前記絶縁ツマミは、ユーザーが前記素線固定金具を約90度回転可能に指で摘めるように形成されており、
前記素線固定金具には、前記軸部の前記絶縁ツマミ側の端部近傍に、断面が略三角錐状の押えネジが、前記軸部の一周り分程度、形成されていることを特徴とする端子台。
【請求項2】
前記上ケースには、前記電線挿入穴と直交する方向に前記軸部を挿通するための軸穴が形成され、この軸穴の開口近傍には、前記押えネジと嵌め合う押えネジガイドが前記軸穴の一周り分程度、形成されており、
前記軸穴に連通して前記押えバネが介装される押えバネ収納部が形成され、この押えバネ収納部に、前記回転抑制部が嵌入可能であることを特徴とする請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記上ケースは、前記押えバネを収容する押えバネ収納部が形成され、
前記回転抑制部と前記押えバネ収納部は、いずれも断面が非円形で、かつ相似する形状を呈しており、前記回転抑制部が前記押えバネ収納部に入り込むと、前記素線固定金具の回転を抑止することができることを特徴とする請求項2に記載の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の素線を差し込んで使用する端子台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、端子台においては、電線の被覆を剥き、端子を素線に圧着し端子台にネジで固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−170207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の結線作業は、電線の被覆を剥き圧着端子を素線に圧着し端子台にネジで締め付け固定するため手間がかかった。また、稀にネジが緩み、接触不良による焼損や設備の誤動作等が発生することから、確実に締付けられていることを確認する為、複数回の締付けを行う必要があった。
【0005】
そこで、本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、盤内の端子台に電線を接続する作業において、電線接続部に圧着端子を取付けることなく容易に接続作業及び締付け確認が実施できる端子台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、上ケースと下ケースとで成るケース本体と、前記下ケース内に載置される電線の素線を上方から圧着して固定する素線固定金具と、この素線固定金具を常時下方に押し下げる押えバネを備えた端子台であって、前記上ケースは、被覆を剥いて前記素線を露出させた前記電線を、側面方向から挿通可能に電線挿入穴が形成されており、前記下ケースは、前記上ケースと対向する表面にすり鉢状を呈するとともに電導性を有した端子台導体が形成され、前記素線が前記すり鉢状に這うように載置され、前記素線固定金具は、前記下ケースの前記端子台導体に這わせた状態の前記素線を上方から圧着
し、前記素線固定金具は、絶縁ツマミと、この絶縁ツマミの下方に連接する軸部と、この軸部の下方に連接する回転抑制部と、この回転抑制部の下方に連接する素線押え部から成り、前記絶縁ツマミは、ユーザーが前記素線固定金具を約90度回転可能に指で摘めるように形成されており、前記素線固定金具には、前記軸部の前記絶縁ツマミ側の端部近傍に、断面が略三角錐状の押えネジが、前記軸部の一周り分程度、形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、盤内の端子台に電線を接続する作業において、電線接続部に圧着端子を取付けることなく容易に接続作業及び締付け確認が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る端子台の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す端子台のA−Aに沿った略断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る端子台100の概略構成を示す図である。
図2は、
図1に示す端子台100のA−Aに沿った略断面を示す図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る端子台100は、大別すると、素線固定金具1、上ケース2、下ケース3および押えバネ7で構成されている。
【0011】
上ケース2は、下ケース3とペアになってケース本体を成し、側面方向から電線5を挿通可能に電線挿入穴4が形成されている。さらに、上ケース2には、電線挿入穴4と直交する方向に素線固定金具1の軸部12(後述する)を挿通するための軸穴2aが形成されている。軸穴2aの開口近傍には、押えネジ15(後述する)と嵌め合う押えネジガイド10が軸穴2aの一周り分程度、形成されている。さらに、軸穴2aに連通して押えバネ収納部8が形成されている。押えバネ収納部8には、後述する押えバネ7が介装されるとともに、後述する回転抑制部13が嵌入するようになっている。回転抑制部13と押えバネ収納部8は、いずれも断面が非円形で、かつ相似する形状を呈している。回転抑制部13が押えバネ収納部8に嵌入すると、素線固定金具1の回転を抑止する。
【0012】
下ケース3は、上ケース2とペアになってケース本体を成し、上ケース2と対向する表面にすり鉢状の端子台導体9が形成されている。この端子台導体9は電導性を有しており、電線5の素線6がすり鉢状に這うように載置される。
【0013】
素線固定金具1は、下ケース3の端子台導体9に這わせた状態の素線6を上方から圧着して、端子台導体9に押し付けるように固定するものである。
図3は、素線固定金具1の斜視図である。
図3に示すように、素線固定金具1は、絶縁ツマミ11と、この絶縁ツマミ11の下方に連接する軸部12と、この軸部12の下方に連接する回転抑制部13と、この回転抑制部13の下方に連接する素線押え部14から構成されている。絶縁ツマミ11は、ユーザーが素線固定金具1を約90度回転可能に指で摘めるように形成されている。軸部12の絶縁ツマミ11側の端部近傍には、断面が略三角錐状の押えネジ15が、軸部12の一周り分程度、形成されている。
【0014】
素線固定金具1の絶縁ツマミ11を上方に引き上げると、電線挿入穴4が端子台内部まで開き、電線5の素線6を挿入できるようになる。
【0015】
押えバネ7は、素線固定金具1の軸部12と上ケース2の押えバネ収納部8間に介装され、常時、素線固定金具1を下方に押し下げる役割を果たす。押えバネ7は、例えば、圧縮コイルバネが好適である。
【0016】
上述したように、素線固定金具1の回転抑制部13と上ケース2の押えバネ収納部8は、いずれも断面が非円形で、かつ相似する形状を呈している。回転抑制部13が押えバネ収納部8に入り込むと、素線固定金具1の回転を抑止することができる。
【0017】
押えネジ15を上ケース2の押えネジガイド10に嵌め、絶縁ツマミ11を回すと略90°まで回転し、素線固定金具1は押えネジ15と押えネジガイド10の噛み合わせに伴い下方に押し下げられる。
【0018】
この押えネジ15と押えネジガイド10が嵌まる位置は、丁度、素線固定金具1の回転抑制部13が上ケース2の押えバネ収納部8から外れる位置と一致する。
【0019】
素線押え部14と端子台導体9は、
図2に示すように、すり鉢状の形状となっている。
【0020】
電線5の素線6を電線挿入穴4に挿入後、摘んでいた絶縁ツマミ11を放すと、押えバネ7の作用により、素線6は素線押え部14と端子台導体9に挟まれ密着する。
【0021】
上ケース2と下ケース3は、例えばネジ16で固定される。
【0022】
端子台100は、これら素線固定金具1、上ケース2、下ケース3および押えバネ7を一組として複数組を組み合わせて構成することができる。
【0023】
<動作>
次に、以上のように構成した端子台の動作について説明する。
【0024】
接続する電線5は先端の被覆を剥ぎ取って素線6が露出した状態とする。本実施形態では、素線6等に端子を圧着する必要はない。
【0025】
素線固定金具1の絶縁ツマミ11を上方に引き上げ、素線6を電線挿入穴4に入れて絶縁ツマミ11を放すと、素線6は押えバネ7の圧力により素線固定金具1の素線押え部14に上方から押され、端子台導体9に接触する。
【0026】
更に上から絶縁ツマミ11を押すと押えネジ15が上ケース2の押えネジガイド10に嵌り、略90°回転させると素線固定金具1が更に下方向に移動し素線6と端子台導体9が十分な圧力で密着する。
【0027】
この様に、絶縁ツマミ11の引き上げ、素線6の挿入、絶縁ツマミ11の回転からなる一連の操作によって、端子台に電線5を簡単・確実に接続できる。
【0028】
素線6が電線挿入穴4に挿入された状態では、回転抑制部13が押えバネ収納部8内にある為、絶縁ツマミ11を回転させることは出来ない。絶縁ツマミ11を上部から押すと、押えネジ15が上ケース2の押えネジガイド10に嵌ると同時に、回転抑制部13が押えバネ収納部8の外に出て回転可能な状態となる。この状態で絶縁ツマミ11を回転させると、押えネジガイド10のストッパーにより押えネジ15は略90°までしか回転できず止まる。
【0029】
本実施形態に係る構造により、絶縁ツマミ11の向きで素線6と端子台導体9が十分な圧力で密着した状態であるかどうかを目視で判断できる為、従来実施していた固定ネジの締付け確認が不要となる。
【0030】
素線6が電線挿入穴4に挿入すると、端子台100の外部に充電部が露出しないことから、メンテナンス等の受電中での作業で感電するリスクを低減することができる。
【0031】
また、素線6の固定作業は絶縁ツマミ11の回動操作のみであることから、他の端子が充電中でも当該端子が無電圧であれば作業が可能となる。
【0032】
素線押え部14と端子台導体9が
図2の様にすり鉢状の形状となっているので、素線6との接触面積を十分確保できる。また、開放状態では素線6の挿入・引き抜きを容易にし、締付け状態では容易に脱落しない様な構造となっている。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、盤内の端子台に電線を接続する作業において、容易に接続作業及び締付け確認が実施することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
100・・・端子台
1・・・素線固定金具
2・・・上ケース
3・・・下ケース
4・・・電線挿入穴
5・・・電線
6・・・素線
7・・・押えバネ
8・・・押えバネ収納部
9・・・端子台導体
10・・・押えネジガイド
11・・・絶縁ツマミ
12・・・軸部
13・・・回転抑制部
14・・・素線押え部
15・・・押えネジ
16・・・ネジ