特許第6294287号(P6294287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294287
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】腹部治療システム、送達装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-227047(P2015-227047)
(22)【出願日】2015年11月19日
(62)【分割の表示】特願2012-557235(P2012-557235)の分割
【原出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-41283(P2016-41283A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】13/043,987
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/312,990
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】サモンズ,アレキサンダー
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−532504(JP,A)
【文献】 特表2009−508549(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066105(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/85248(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0204084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔を治療するための装置において、当該装置が:
穿孔を有する第1の液体不透過層と;
穿孔を有する第2の液体不透過層と;
前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層の間に微小チャネル空間を形成するように、前記第1の液体不透過層を前記第2の液体不透過層に連結する複数の接合部と;
前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層の間に配置された発泡体スペーサと、を具えており、前記発泡体スペーサが、中央部分と離間された脚状部材とを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層が共通の境界によって規定されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、標的流体を除去するための少なくとも1つの内部領域を形成する相互連結された部材を具えていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において:
前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層が共通の境界によって規定され;
前記発泡体スペーサが、前記共通の境界によって規定された領域の80%未満の領域を有していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記複数の接合部が、前記発泡体スペーサの縁部の周囲に、前記第1の液体不透過層および前記第2の液体不透過層に対して前記発泡体スペーサを定位置に固定するよう構成されたスペーサ接合部を具えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記スペーサ接合部がステッチ接合部を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置がさらに、前記中央部分から放射状に外方に形成された縦走接合部を具えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の装置がさらに、前記微小チャネル空間に流体連結された減圧源を具えていることを特徴とする装置。
【請求項9】
腹腔を治療するための装置において、当該装置が:
少なくとも部分的に穿孔され、実質的に平坦な部材を形成するように互いに近接して配置された複数の液体不透過層と;
前記複数の液体不透過層の少なくとも2つの層の間に配置された発泡体スペーサと;
を具えており、
前記発泡体スペーサが標的流体を除去するための内部領域を含み、減圧下で、前記内部領域が少なくとも270度の角度にわたって減圧を受けるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置がさらに、前記液体不透過層を連結して、前記液体不透過層の近接する層の間に微小チャネル空間を形成する複数の接合部を具えていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、前記内部領域を規定する相互連結された部材を具えていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、円弧状部材、文字「C」を二つ、互いに切れ目のない側で接合させることによって得られる形状を有する部材、楕円形部材、または環状円を含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、中央部分と離間された脚状部材とを具えていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置がさらに、前記中央部分から放射状に外方に形成された縦走接合部を具えていることを特徴とする装置。
【請求項15】
腹腔を治療するための装置において、当該装置が:
少なくとも部分的に穿孔され、実質的に平坦な部材を形成するように互いに近接して配置された液体不透過層と;
前記液体不透過層の間に配置され、少なくとも1つの窓部を形成する相互連結された部材を具える発泡体スペーサと;
前記液体不透過層を連結し、前記窓部の外周縁に沿って配置された接合部と;
を具えていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、前記接合部が、前記液体不透過層の間に微小チャネル空間を形成することを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、円弧状部材、文字「C」を二つ、互いに切れ目のない側で接合させることによって得られる形状を有する部材、楕円形部材、または環状円を含むことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の装置において、前記発泡体スペーサが、中央部分と離間された脚状部材とを具えていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置がさらに、前記中央部分から放射状に外方に形成された縦走接合部を具えていることを特徴とする装置。
【請求項20】
腹腔を治療するための装置において、当該装置が:
穿孔を有する第1の液体不透過層と;
穿孔を有する第2の液体不透過層と;
前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層の間に微小チャネル空間を形成するように、前記第1の液体不透過層を前記第2の液体不透過層に連結する複数の接合部と;
前記第1の液体不透過層と前記第2の液体不透過層の間に配置された発泡体スペーサであって、標的流体を除去するための少なくとも1つの内部領域を形成する相互連結された部材を具えている発泡体スペーサと;
を具えており、
前記発泡体スペーサが、円弧状部材、文字「C」を二つ、互いに切れ目のない側で接合させることによって得られる形状を有する部材、楕円形部材、または環状円を含むことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2010年3月11日に出願された米国仮特許出願第61/312,990号、表題「Abdominal Treatment Systems,Delivery Devices,and Methods」の出願の利益を米国特許法第119条(e)の下で主張する。上記仮特許出願はあらゆる目的のため参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は一般に医療用治療システムに関し、より詳細には腹部治療システム、送達装置および減圧を使用して腹腔を治療する方法に関する。
【0003】
医療環境に応じて、減圧が、とりわけ組織部位における肉芽形成を促す減圧治療に、あるいは組織部位の流体を排出するために使用され得る。本明細書で使用する際、別に明示しない限り、「または」は相互排他性を求めない。減圧治療および減圧による排出は、組織部位への減圧の分岐または分配を伴うことが多い。
【発明の概要】
【0004】
例示的な非限定的実施形態によれば、減圧を腹腔内の組織部位に分配するための、および流体を除去するための腹部治療送達装置は、互いに近接する複数の液体不透過層と、複数の液体不透過層の少なくとも2層の間に配置される発泡体スペーサとを含む。複数の液体不透過層はそれぞれ共通の境界によって規定された領域A1を有し、液体不透過層は穿孔されている。発泡体スペーサは領域A2を有し、A2はA1の80%未満(すなわちA2<0.8A1)である。発泡体スペーサは、減圧下、流体除去標的領域が、角度シータ(θ)にわたって減圧を受けるように構成されかつ位置付けられており、この角度シータ(θ)は流体除去標的領域の大部分の場所で360度である。
【0005】
別の例示的な非限定的実施形態によれば、腹腔を減圧で治療するためのシステムは、減圧を組織部位に分配するための腹部治療装置と、減圧源とを含む。減圧源は腹部治療装置に流体連結される。腹部治療装置は、互いに近接する複数の液体不透過層と、複数の液体不透過層の少なくとも2層の間に配置された発泡体スペーサとを含む。複数の液体不透過層は、それぞれ共通の境界によって規定された領域A1を有し、穿孔されている。発泡体スペーサは領域A2を有し、A2はA1の80%未満(すなわちA2<0.8A1)である。発泡体スペーサは、減圧下、流体除去標的領域が、角度シータ(θ)にわたって減圧を受けるように構成されており、この角度シータ(θ)は流体除去標的領域の大部分の場所で360度である。
【0006】
別の例示的な非限定的実施形態によれば、腹部治療装置を製造する方法は、穿孔されている複数の液体不透過層を提供するステップと、複数の液体不透過層の少なくとも2層の間に発泡体スペーサを配置するステップとを含む。複数の液体不透過層はそれぞれ共通の境界によって規定された領域A1を有する。複数の液体不透過層の少なくとも2層の間に配置された発泡体スペーサは領域A2を有し、A2はA1の80%未満(すなわちA2<0.8A1)である。発泡体スペーサは、減圧下、流体除去標的領域が、角度シータ(θ)にわたって減圧を受けるように構成されかつ位置付けられており、この角度シータ(θ)は流体除去標的領域の大部分の場所で360度である。
【0007】
別の例示的な非限定的実施形態によれば、腹腔内の組織部位を治療する方法は、開口した腔部を形成するために腹腔を開くステップと、腹腔内に腹部治療送達装置を配置するステップと、減圧連結器サブシステムを配置するステップと、開口した腔部の上に流体封止を形成するために封止部材を配置するステップとを含む。方法はさらに、減圧連結器サブシステムを減圧源に流体接続するステップと、減圧源を作動するステップとを含む。腹部治療装置は、互いに近接する複数の液体不透過層と、複数の液体不透過層の少なくとも2層の間に配置された発泡体スペーサとを含む。複数の液体不透過層はそれぞれ共通の境界によって規定された領域A1を有し、穿孔されている。発泡体スペーサは領域A2を有し、A2はA1の80%未満(すなわちA2<0.8A1)である。発泡体スペーサは、減圧下、流体除去標的領域が、角度シータ(θ)にわたって減圧を受けるように構成されて位置付けられており、この角度シータ(θ)は流体除去標的領域の大部分の場所で360度である。
【0008】
例示的な実施形態の他の特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、腹腔を治療するための例示的なシステムの断面の一部の概略図である。
図2図2は、例示的な腹部治療装置の概略的な平面図である。
図3図3は、線3−3に沿った図2の例示的な腹部治療装置の一部の概略的な断面図である。
図4A図4Aは、腹部治療装置の一部の概略的な平面図である。
図4B図4Bは、線4B−4Bに沿った図4Aの腹部治療装置の一部の概略的な断面である。
図5図5は、別の例示的な腹部治療装置の別の概略的な平面図である。
図6図6は、別の例示的な腹部治療装置の概略的な平面図である。
図7図7は、別の例示的な腹部治療装置の概略的な展開斜視図である。
図8図8は、追加的な特徴とともに示された図6の例示的な腹部治療装置の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
非限定的な例示的実施形態の以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付図面への参照がなされる。これらの実施形態は、当業者が本発明を実行可能とするのに十分詳しく記載され、他の実施形態が用いられてもよいこと、および本発明の精神および範囲から逸脱することなく論理構成的、機械的、電気的および化学的な変更がなされてもよいことが理解される。当業者が実施形態を実行可能とするのに必要でない細部を回避するために、本記載は当業者に公知の特定の情報を省略する場合がある。従って以下の詳細な記載は、限定的な意味にとられるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は以下の添付の請求項によってのみ定義される。
【0011】
ここで図1および2を参照すると、腹腔102を治療するためのシステム100の例示的な実施形態が提示されている。システム100は腹部治療装置104を含む。システム100および腹部治療装置104は患者の組織部位106を治療するためにある。組織部位106はあらゆる人間、動物または他の生物の体組織であり得る。この例示的実施形態において、組織部位106は、体腔および特に腹腔102内の組織を含む。組織部位106は、腹部内容物108または腹腔102に近接する組織を含む。組織部位106の治療は、液体例えば腹水の除去、腹腔の保護、または減圧療法を含みうる。
【0012】
図1で示されるように、腹部治療装置104は、組織部位106を治療するために患者の腹腔102内に配置される。腹部治療装置104は腹部内容物108によって支持される。腹部内容物108は表面を含み、その上に腹部治療装置104が位置付けられる。腹部治療装置104の部分110は、第1結腸傍溝112内にまたはそれに近接して位置付けられてもよく、別の部分114は、第2結腸傍溝116内にまたはそれに近接して置かれてもよい。
【0013】
腹部治療装置104は、複数の液体不透過層117、例えば第1液体不透過層118と第2液体不透過層120で形成される。図1は概略図であり正確な縮尺ではない。複数の液体不透過層117、例えば層118、120は、それぞれ穿孔122、124とともに形成される。「液体不透過層」に関する「液体不透過」は、層が液体不透過材料で形成されることを意味する。従って、層は、液体不透過材料で形成されていたとしても、穿孔されている場合、液体透過性であり得るが、それにもかかわらず液体不透過層と呼ばれる。穿孔122、124は、任意の形状、例えば円形開口、矩形開口、多角形、あるいは任意の他の形状をとってもよい。穿孔122、124は本例示的実施形態ではスリット、すなわち線状の切り込みとして呈される。以下でより完全に記載されるように、発泡体スペーサ125が、複数の液体不透過層の少なくとも2層、例えば第1液体不透過層118と第2液体不透過層120との間に配置される。図1の考察において、示される腹部治療装置104の部分は、図2の線A−Aに沿った断面に基づいていることが注記される。腹部治療装置104は第1の面105と、組織に面する第2の面107とを含む。腹部治療装置104は典型的に対称であり、面105、107が同じである。腹部治療装置104の異なる面への言及は、説明目的でなされる。
【0014】
マニホルド126、またはマニホルドパッドが、減圧を腹部治療装置104に分配する。封止部材128が流体封止を腹腔102の上に提供する。1つ以上の皮膚閉鎖装置が患者の表皮130に置かれてもよい。
【0015】
腹部治療装置104を減圧導管134と流体連結するために減圧連結器サブシステム132が使用されてもよい。減圧連結器サブシステム132は、減圧連結器136またはインターフェイスとマニホルド126とを含んでもよい。あるいは、減圧連結器サブシステム132は、減圧を腹部治療装置104に供給するための腹部治療装置104または任意の他の装置上の生体内原位置連結器(図示せず)であってもよい。減圧導管134は減圧源138に流体接続される。
【0016】
従って、1つの例示的実施形態において、減圧送達導管134に接続される減圧連結器136を介して減圧を受け取るマニホルド126を介して、減圧は腹部治療装置104に送達される。減圧源138は減圧を減圧送達導管134に送達する。
【0017】
組織部位106からの腹水、滲出液または他の液体の除去を促進する助けとなるべく減圧は組織部位106に適用されてもよい。特定の例において、減圧は付加組織の成長を刺激するために適用されてもよい。特定の例では液体除去だけが望まれ得る。本明細書で使用する際、「減圧」は、治療に供されている組織部位において周囲圧力未満である圧力に一般に言及する。多くの例において、この減圧は、患者が置かれる大気圧未満であろう。あるいは、減圧は、組織部位で静水圧未満であり得る。減圧は最初にマニホルド126、減圧送達導管134内でおよび組織部位106に近接して流体流を生成し得る。組織部位106周囲の静水圧が所望の減圧に近づくと、流れが弱まり、減圧が維持されてもよい。他に示されない限り、本明細書で述べられる圧力値はゲージ圧である。組織部位に適用される圧力を記載するために用語「真空」および「負圧」が使用されても、組織部位に適用される実際の圧力は、完全真空と通常は関連付けられる圧力を超え得る。本明細書での使用と一致して、別に示されない限り、減圧または真空圧の増加は、典型的に絶対圧の相対的な減少に言及する。
【0018】
マニホルド126は腹部治療装置104に隣接して示される。マニホルド126は多くの形態をとってもよい。本明細書で使用される際、用語「マニホルド」は、組織部位106または他の場所に減圧を適用する、流体を送達する、または組織部位106または他の場所から流体を除去するのを補助するために設けられる物体または構造を一般に言及する。マニホルド126は、マニホルド126に供給される、およびマニホルド126周囲に除去される流体を分配する複数のフローチャネルまたは経路を典型的に含む。1つの例示的実施形態において、フローチャネルまたは経路は、組織部位106から供給または除去される流体の分配を改善するために相互連結される。マニホルド126は、組織部位と接触して置くことができる生体適合材料であってもよい。マニホルド126の例は、限定しないが、フローチャネルを形成するように配置された構造的要素を有する装置、連続気泡フォームなどの多孔性フォーム、多孔性組織集合体、フローチャネルを含むか含むように硬化した液体、ゲル、および発泡体を含む。マニホルド126は多孔質であってもよく、発泡体、ガーゼ、フェルトマットまたは特定の生物学的アプリケーションに好適な任意の他の材料から作製されてもよい。
【0019】
一実施例において、マニホルド126は多孔質発泡体であり、フローチャネルとして機能する複数の相互連結された気泡または細孔を含む。多孔質発泡体は、Kinetic Concepts,Incorporated(San Antonio,Texas)によって製造されているGranuFoam(登録商標)材料などのポリウレタン連続気泡網状フォームであってもよい。他の実施形態は「独立気泡」を含んでもよい。ある状況において、マニホルド126はまた、薬剤、抗菌薬、成長因子および様々な溶液などの流体を、組織部位106または別の場所に分配するために使用されてもよい。吸収性材料、吸水性材料、疎水性材料、および親水性材料などの他の層が、マニホルド126内にまたは上に含まれてもよい。腹部治療装置104内の発泡体スペーサ125は、マニホルド126と同じ材料の任意のものから製造されてもよい。例えば、限定ではなく、発泡体スペーサ125は、GranuFoam(登録商標)材料などのポリウレタン連続気泡網状フォームであってもよい。
【0020】
封止部材128が腹腔102の上に置かれ、流体封止を提供する。本明細書で使用される際、「流体封止」または「封止」は、関連する特定の減圧源138またはサブシステムを与えられた所望の部位に減圧を維持するのに適切な封止を意味する。封止部材128は、マニホルド126を腹部治療装置104のある部分に固定するのに使用されるカバーであってもよい。封止部材128は不透過性または半透過性であってもよい。封止部材128を腹腔102および特に腹腔開口部140の上に取り付けた後、封止部材128は減圧を組織部位106に維持できる。封止部材128は、シリコーン系化合物、アクリル樹脂、ヒドロゲルまたはヒドロゲル形成性材料、または減圧を組織部位106に適用するために所望される不透過または透過特性を含む任意の他の生体適合性材料から形成される柔軟性の覆い布または膜であってもよい。
【0021】
封止部材128は、封止部材128を患者の表皮130に固定するために取付装置142をさらに含んでもよい。取付装置142は多くの形態をとってもよい。例えば、取付装置は、直接または間接的に流体封止部に患者の表皮130を提供するために封止部材128の周囲、全体または任意の一部に沿って位置付けられてもよい接着層144であってもよい。接着層144はまた封止部材128にあらかじめ付着され、貼付時に除去される剥離可能なバッキング材または部材(図示せず)で被覆されてもよい。
【0022】
減圧連結器136は、一例として、マニホルド126から減圧送達導管134へのおよびその逆の流体の通過を許容するポートまたは連結器であってもよい。例えば、マニホルド126および腹部治療装置104を使用して組織部位106から収集される流体は、減圧連結器136を介して減圧送達導管134に流入してもよい。別の実施形態では、システム100は減圧連結器136を省略してもよく、減圧送達導管134が封止部材128におよびマニホルド126に直接挿入されてもよい。減圧送達導管134は医療用導管またはチューブまたは減圧および流体を輸送するための任意の他の装置であってもよい。減圧送達導管134は多ルーメン部材であってもよい。1つの実施形態では、減圧送達導管134は2ルーメン導管であり、減圧および液体用の1つのルーメンと、圧力を圧力センサに伝えるための1つのルーメンとを備える。
【0023】
減圧は減圧源138によって減圧送達導管134へ供給される。広範囲の減圧が減圧源138によって供給されてもよい。1つの実施形態では、圧力は−50〜−300mmHgの範囲であってもよく、別の実施形態では、−100mmHg〜−200mmHgの範囲であってもよい。圧力は例えば、−100、−110、−120、−125、−130、−140、−150、−160、−170、−180、−190、または−200mmHgであってもよい。1つの例示的実施形態では、減圧源138は−100mmHg、−125mmHgおよび−150mmHgにプリセットされたセレクタを含む。減圧源138はまた、閉塞アラーム、漏出アラーム、またはローバッテリーアラームなどの複数のアラームを含んでもよい。減圧源138は可搬式減圧源、壁掛け式減圧源、または腹腔用の他のユニットであり得る。減圧源138は、一定の圧力、可変圧力(パターン式またはランダム式)、断続的圧力または連続的圧力を選択的に送達してもよい。減圧送達導管134を介して腹腔から除去される流体は、環境次第で1日あたり5L以上と同程度の多さであり得る。除去された流体を受容するための容器または流体貯蔵器が減圧源138に付随してもよい。
【0024】
複数の異なる装置、例えば装置146が、減圧送達導管134の一部に加えられてもよい。例えば、装置146は流体貯蔵器、または容器収集部材、圧力フィードバック装置、容積検出システム、血液検出システム、感染検出システム、フィルタ、流れ監視システム、温度監視システムまたは他の装置であってもよい。多数の装置146が含まれてよい。これらの装置のいくつか、例えば液体収集部材は減圧源138と一体的に形成されてもよい。
【0025】
ここで主に図2および3を参照すると、腹部治療装置104は柔軟性であり、腹腔内に容易に位置付けられる。同時に、腹部治療装置104は、広範な方向に流体を流すことによって、腹部治療装置104の離散した場所で閉塞を回避するように適合される。柔軟性を促進するために、腹部治療装置104は液体不透過層117より小さい発泡体スペーサ125とともに形成されてもよい。
【0026】
腹部治療装置104は複数の液体不透過層117、例えば第1液体不透過層118と第2液体不透過層120とを含む。微小チャネル168空間が複数の液体不透過層117の隣接層間に形成される。追加層が複数の液体不透過層117内に含まれてもよい。複数の液体不透過層117は穿孔、例えば穿孔122、124とともに形成され、複数の液体不透過層117の層は互いに近接して置かれ、領域A1を有する実質的に平坦な部材を形成する。
【0027】
領域A1は平面図における領域(挿入前)であり、発泡体スペーサ125に隣接する複数の液体不透過層117の層が互いに共延伸している。発泡体スペーサ125は複数の液体不透過層117の少なくとも2層の間に配置される。複数の液体不透過層117は封止部材128と同じ材料から形成されてもよい。1つの実施形態では、液体不透過層117の各々は50〜120マイクロメートルの範囲の厚さであってもよく、別の非限定的な実施形態では約80マイクロメートルであってもよい。
【0028】
発泡体スペーサ125は、複数の液体不透過層117の領域A1未満の領域A2、例えば平面図で示される領域を有する。領域A2は、柔軟性を向上させるため、少なくとも部分的に複数の液体不透過層117の領域A1未満である。典型的に、領域A2は複数の液体不透過層117の領域A1の80パーセント(80%)未満、すなわちA2<0.8A1である。領域A2はA1のあるパーセント未満、例えばA2<0.7A1、A2<0.6A1、A2<0.5A1、A2<0.4A1、A2<0.3A1、A2<0.2A1、A2<0.1A1等であってもよい。
【0029】
複数の接合部160を使用して複数の液体不透過層117の少なくとも2層を接続してもよい。任意のパターンのまたはランダムな接合部が複数の接合部160に使用されてもよい。接合部は、溶接(例えば超音波またはRF溶接)、ボンディング、接着剤、セメント剤、または他のボンディング技術または装置を非限定的に含む任意の公知の技術を使用して形成されてもよい。複数の接合部160は、平面図で示されるような発泡体スペーサ125の縁部164の周囲にあるまたは縁部164を取り囲み得るスペーサ接合部162を含んでもよい。スペーサ接合部162は図2で示されるようなステッチ接合部または図5で示されるような連続した接合部であってもよい。スペーサ接合部162は発泡体スペーサ125を複数の液体不透過層117に対して固定位置に固定するのを助ける。
【0030】
穿孔、例えば穿孔122、124によって流体が複数の液体不透過層117の間の空間に入ることが可能になる。穿孔122、124に入った流体は減圧源に向かって直接または間接的に移動する。減圧は腹部治療装置104の中央部分166または他の場所に適用されてもよく、典型的には適用され、流体が穿孔122、124を通って、かつ複数の液体不透過層117の隣接層の間に形成される発泡体スペーサ125または微小チャネル168(図3)内を流れるようにする。通常、発泡体スペーサ125は減圧を複数の液体不透過層117内に伝え、多くの場合減圧の主要源であろう。様々な場所での減圧が圧力ベクトル、例えば減圧ベクトル156(図2)によって表されてもよい。
【0031】
柔軟性が腹部治療装置104に望まれる一方、閉塞の回避も望まれる。腹部装置104が中央部分166だけを有する場合、微小チャネル168内、または液体不透過層の間のあるポイントが、流体を実質的に一方向にまたは中央部分166からの距離に依存する限定された角度に移動させる減圧を受けるであろう。その一方向の経路が閉塞した場合、特定領域の流れが大部分止まるかもしれない。腹部治療装置104の本実施形態は、減圧を広角度、例えば270〜360度にわたり、所定のポイントに送達する。通例、減圧は全ての方向(360度)にかけられる。発泡体スペーサ125は、減圧の最も強力な源を微小チャネル168内に提供し、流れ方向に影響を及ぼす。
【0032】
図2および3を参照して、微小チャネル168内の位置における圧力を分析するための検査体積である円筒状分析用検査体積を検討する。検査体積158は360度にわたり減圧を受ける。腹部治療装置104は、全ての分析用検査体積、例えば分析用検査体積158を、360度の減圧を受ける治療領域、または流体除去標的領域内に有してもよい。従って、分析用検査体積の一方向に閉塞が発生した場合、流体は他の方向内を移動し続け得る。減圧が所定の分析用検査体積、例えば分析用検査体積158に作用する角度は、角度シータ(θ)として定義される。
【0033】
270度を超える減圧を受ける腹部治療装置104の領域は、流体除去標的領域として定義されてもよい。例えば、その領域は270、280、290、300、310、320、330、340、350、または360度の減圧を受けてもよい。流体除去標的領域は一般に、任意の不連続部を許容する発泡体スペーサ125の外周縁によって実質的に境界を定められる領域として定義される。従って、図2の腹部治療装置では、流体除去標的領域は周縁150から距離152だけ内側にある腹部治療装置104の部分に存在する。言い換えると、流体除去標的領域は発泡体スペーサ125の周縁167から(または同心円154の外縁から)内側である。他の例示的実施形態では、流体除去標的領域は、分析用検査体積が360度未満、例えば270度の角度シータ(θ)を有するであろう場所を有してもよいが、好ましくは分析される場所の大部分すなわち>50%は360度の減圧がそれらに作用する。他の実施形態では、フロー標的領域は、70パーセント(70%)超の場所が360度の減圧を受けると定義されてもよい。図2で示されるように、発泡体スペーサ125は、円筒状分析用検査体積158が示される場所のような複数の窓または窓開口部とともに形成されてもよい。
【0034】
次に図4Aおよび4Bを参照すると、腹部治療装置104の一部が提示されている。この部分は、穿孔127を有する第1液体不透過層118の下の発泡体スペーサ125の部分を示す。第1液体不透過層118は接合部160によって第2液体不透過層120に接合され、その間に発泡体スペーサ125がある。窓129が、流体除去標的領域のこの部分に発泡体スペーサ125によって形成される。窓129の発泡体スペーサ125は減圧の主要な送達を提供するため、分析用検査体積158は360度の角度シータにわたって減圧158を受ける。
【0035】
多くの場合、所定方向の減圧は、所定方向における分析用検査体積158から発泡体スペーサ125までの距離と関連付けられる。従って、図4Aでは、第1の減圧159および第2の減圧161は、それらが発泡体スペーサ125に最も近い場所にあるため最も大きい。第3および第4の減圧163および165は、それらが所定方向において発泡体スペーサ125から最も離れているため最も小さい。
【0036】
発泡体スペーサ125は、多くの可能な形状をとってもよい。発泡体スペーサ125の形状および寸法は普通、腹部治療装置104の柔軟性を促進するように、すなわち腹部治療装置104を適合させるように選択される。柔軟性は一般に腹部治療装置104または腹部治療装置104の一部を、結腸傍溝112および116などの到達が難しい場所に配置する助けとなり、また、腹部治療装置104を特定の状況において取り除く助けとなる。後者に関して、腹部治療装置104は、ある状況において、直接接続する減圧送達導管134とともに開腹部を介して適用される場合があり、腹腔開口部140が閉鎖され、その後腹部治療装置104が外科的切開、例えば5センチメートル〜40センチメートルあるいはその任意の部分範囲の切開を介して取り除かれ得る。
【0037】
柔軟性に加えて、発泡体スペーサ125の形状は、フロー標的領域において減圧156の範囲を推進するように、または流れを方向づけるように選択されてもよい。図2の例示的実施形態では、発泡体スペーサ125は、部材172によって相互接続される複数の円弧状部材、例えば同心円または楕円形部材170として形成される。治療標的領域は360度の減圧を受け得る。図5は別の例示的な形状を提示する。
【0038】
次に主に図5を参照すると、腹部治療装置104の発泡体スペーサ125は、相互連結された逆向きのc形状部材を含む。発泡体スペーサ125は1つ以上の連続した接合部であるスペーサ接合部162とともに形成される。この実施形態では、フロー標的領域内の分析用検査体積158などの分析用検査体積は、360度未満であり得るが270度を超える減圧156を受ける。他のポイント、例えば内側ポイント174は360度の減圧156を受け得る。この実施形態のフロー標的領域は発泡体スペーサ125の外周縁167の内側である。フロー標的領域の場所の大部分、例えば>50%が、360度の減圧を受け、それにより、流れを阻害する閉塞の可能性を最小化するのを助ける。他の実施形態では、フロー標的領域は70パーセント(70%)超の場所が360度の減圧を受けると定義されてもよい。
【0039】
腹部治療装置104の発泡体スペーサ125がとり得る形状の別の非限定的な例として、図6は複数の相互連結された環状円として形成された発泡体スペーサ125を提示する。この実施形態では、分析用検査体積(例えば、第1分析用検査体積158および第2分析用検査体積174)は360度の減圧156を受ける。スペーサ接合部162はこの例ではステッチ接合として示されている。
【0040】
次に主に図7および8を参照すると、腹部治療装置104の別の例示的実施形態が提示されるが、この実施形態では、減圧の方向の制御が所望される。発泡体スペーサ125は複数の離間された脚状部材178を備えた星として形成される。縦走接合部182が流体流を特定方向に方向づけるために加えられている。腹部治療装置104のこの実施形態によって引きつけられる流体は、発泡体スペーサ125に沿った流れおよび縦走接合部182によって形成されたフローチャネル184に沿った流れを主に有する。
【0041】
発泡体スペーサ125は複数の液体不透過層117の第1液体不透過層118と第2液体不透過層120との間に配置される。スペーサ接合部162を含む複数の接合部160が形成される。周縁の周りのスペーサ接合部162は、周縁において層118、120間に開口取り込みスペースを残すために除外されてもよい。フローチャネル180は第1の縦走接合部182と第2の縦走接合部182とを所望の場所に配置することによって形成される。縦走接合部182および184は中央部分166から放射状に外方へ形成されてもよい。縦走接合部182、184は示されるように中央部分166の外側を起点としてもよく、または中央部分166まで延在してもよい。フローチャネル180は、増加したまたは方向づけられた減圧が閉塞を防ぐことよりも重要である場所に使用されてもよい。分析用検査体積186は、減圧が中央部分166の方に主として向けられてもよいことを示す。
【0042】
腹腔102を治療するためのシステム100を使用する1つの例示的手法において、腹腔102が開かれ、腹部治療装置104が腹腔102内に配置される。減圧連結器サブシステム132が腹部治療装置104に流体接続されてもよい。減圧連結器サブシステム132は減圧源138に流体接続されてもよく、減圧源138が作動される。使用後、腹部治療装置104は開腹部を介してまたはその後外科的切開を介して取り除かれてもよい。
【0043】
腹部治療装置104は、1つの例示的実施形態に従い、窓の設けられた複数の液体不透過層117を提供し、複数の液体不透過層117を積層し、複数の液体不透過層117の少なくとも2層の間に発泡体スペーサ125を配置することによって製造されてもよい。複数の液体不透過層117は領域A1を有する。複数の液体不透過層117の少なくとも2層の間に配置される発泡体スペーサ125は領域A2を有する。A2はA1の80%未満(すなわちA2<0.8A1)である。発泡体スペーサ125は、減圧下、流体除去標的領域が90度を超える角度シータ(θ)にわたり減圧を受けるように構成かつ配置される。
【0044】
本発明ならびにその利点が、特定の例示的な非限定的実施形態との関連で開示されてきたが、様々な変更、差し替え、置き換え、および修正が、添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるべきである。いずれか1つの実施形態と関連して記載されたいずれかの特徴が、任意の他の実施形態にも適用可能であることが認識される。
【0045】
上に記載された恩恵および利点は1つの実施形態に関連してもよく、またはいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解される。「an」の付いた品目への言及は、それら品目の1つ以上に言及する。
【0046】
本明細書に記載された方法のステップは、任意の好適な順番で、または適切な場合は同時に実行されてもよい。
【0047】
適切であれば、上で記載された任意の実施例の態様は、同等のまたは異なる特性を有しかつ同じまたは異なる問題に対処するさらなる実施例を形成するために、記載された任意の他の実施例の態様と組み合わされてもよい。
【0048】
上の好ましい実施形態の記載は例としてのみ挙げられていることおよび様々な修正が当業者によってなされてもよいことが理解される。上の明細書、実施例およびデータは、本発明の例示的実施形態の構造および使用の完全な記載を提供する。本発明の様々な実施形態が、ある程度詳しく、または1つ以上の個別の実施形態を参照して上に記載されてきたが、当業者であれば、請求項の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に多数の修正を施すことができよう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8