(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記トルク制限値を複数設定し、前記鉄心薄板の打抜き時のトルク制限値を、非打抜き時のトルク制限値よりも大きい値に設定することを特徴とする請求項1に記載の順送り金型装置用の背圧装置。
前記制御装置は、少なくとも前記鉄心薄板の打抜き時において、前記昇降用モータの位置決め制御を実施することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の順送り金型装置用の背圧装置。
前記制御装置は、前記鉄心薄板の打抜き時において前記受け台を上昇または下降させるように、前記昇降用モータを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の順送り金型装置用の背圧装置。
前記制御装置は、前記鉄心薄板の打抜き時において前記受け台を目標位置に移動させるように、前記昇降用モータを位置決め制御することを特徴とする請求項5に記載の順送り金型装置用の背圧装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来技術では、支持プレートをガススプリング等によって支持するための機構を受け台に設ける必要があるため、背圧装置の構造が複雑になり、また装置コストも嵩むという問題がある。さらに、上記従来技術では、弾性部材の上端部に設けられた支持プレートを略水平に維持するために、支持プレートの上下動をガイドするためのガイド部材等(補助機構)を設ける必要も生じる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、簡易な構成により、鉄心薄板の突き上げを防止しつつ、鉄心薄板の打抜き時に適切な背圧を発生させる順送り金型装置用の背圧装置及びこれを備えた
積層鉄心製造装置並びに順送り金型装置における背圧制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面では、間欠移送される帯状薄鋼板(W)から鉄心薄板(2)を打ち抜き、当該鉄心薄板を複数積層してなる積層鉄心(3)を製造する順送り金型装置用の背圧装置(6)であって、順送り金型装置(1)において、前記帯状薄鋼板から打ち抜かれた前記鉄心薄板を保持する鉄心保持部材(22)内に昇降自在に設けられ、前記鉄心薄板が順次載置される受け台(31)と、前記受け台を支持する支持ユニット(32)と、前記支持ユニットを介して前記受け台の昇降動作を行う昇降用モータ(33)と、前記昇降用モータの回転動作を制御する制御装置(34)とを備え、前記制御装置は、前記順送り金型装置の動作に応じて前記昇降用モータの出力トルクを制限するための複数のトルク制限値を設定し、前記鉄心薄板の打抜き時には、前記複数のトルク制限値における最大のトルク制限値に基づき前記出力トルクを制限することを特徴とする。
【0010】
この第1の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、簡易な構成により、受け台からの背圧が過度に付与されることによる鉄心薄板の突き上げを防止しつつ、鉄心薄板の打抜き時に適切な背圧を発生させることが可能となる。より詳細には、非打ち抜き時には、比較的低いトルク制限値(すなわち、付与され得る背圧)によって鉄心薄板の突き上げを防止しつつ、鉄心薄板の打抜き時のトルク制限値を増大させることにより、各鉄心間の密着度(すなわち、各鉄心薄板間の固着力)をより高め、延いては積層鉄心の占積率を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の側面では、上記第1の側面に関し、前記制御装置は、前記昇降用モータの出力トルクを常時制限し、前記複数のトルク制限値は、前記鉄心薄板の打抜き時の高トルク制限値と、当該鉄心薄板の打抜き時以外の低トルク制限値とからなることを特徴とする。
【0012】
この第2の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、高トルク制限値及び低トルク制限値の2つのトルク制限値を用いる昇降用モータの簡易な制御により、鉄心薄板の打ち抜き時及び非打ち抜き時において適切な背圧を付与することができる。
【0013】
本発明の第3の側面では、上記第1または第2の側面に関し、前記制御装置は、少なくとも前記鉄心薄板の打抜き時において、前記昇降用モータの位置決め制御を実施することを特徴とする。
【0014】
この第3の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、鉄心薄板の打抜き時において、トルク制限値に基づき昇降用モータの出力トルクを制限しつつ位置決め制御を実施することにより、鉄心薄板の打抜き時に適切な背圧を精度良く発生させることができ、また、受け台を適切に位置決めすることによりトルク制限値の大小に拘わらず鉄心薄板の突き上げを防止することができる。
【0015】
本発明の第4の側面では、上記第1から第3の側面のいずれかに関し、前記支持ユニットは、昇降用モータによって回転駆動されることにより前記受け台を昇降させるボールねじ(42)を含み、前記ボールねじは、前記鉄心薄板の打抜き時に前記受け台に作用する下向きの押圧力によって逆作動することを特徴とする。
【0016】
この第4の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、受け台を支持する支持ユニットにボールねじを逆作動(すなわち、直線(軸方向)運動を回転運動に変換)可能に設けることにより、鉄心打ち抜き時に適切な背圧を付与しつつ、打ち抜き時における受け台の下降によって生じるボールねじの逆作動により、支持ユニット等に対する負荷を軽減(打ち抜き荷重を緩衝)することができる。
【0017】
本発明の第5の側面では、上記第1から第4の側面のいずれかに関し、前記制御装置は、前記鉄心薄板の打抜き時において前記受け台を上昇または下降させるように、前記昇降用モータを制御することを特徴とする。
【0018】
この第5の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、鉄心薄板の打ち抜き条件(鉄心保持部材の側圧の大きさ等)に応じて受け台を上昇または下降させることで、鉄心薄板の打抜き時により適切な背圧を発生させることが可能となる。
【0019】
本発明の第6の側面では、上記第5の側面のいずれかに関し、前記制御装置は、前記鉄心薄板の打抜き時において前記受け台を目標位置に移動させるように、前記昇降用モータを位置決め制御することを特徴とする。
【0020】
この第6の側面による順送り金型装置用の背圧装置では、鉄心薄板の打ち抜き条件に応じて受け台を適切な範囲で上昇または下降させることで、鉄心薄板の打抜き時により適切な背圧を発生させることが可能となる。
【0021】
本発明の第7の側面は、上記第1から第6のいずれかに係る順送り金型装置用の背圧装置を備えた積層鉄心製造装置である。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によれば、簡易な構成により、鉄心薄板の突き上げを防止しつつ、鉄心薄板の打抜き時に適切な背圧を発生させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は本発明に係る背圧装置を備えた順送り金型装置の要部を示す構成図である。順送り金型装置1は、電磁鋼板からなるフープ材(帯状薄鋼板)Wに対して金属プレス加工を行うことにより、鉄心薄板2を複数積層してなる積層鉄心3を製造する装置である。順送り金型装置1は、上下方向に往復運動可能に設けられた上型4と、図示しないホルダに固定された下型5と、下型5において積層される鉄心薄板2の下面に対して上向きの圧力(背圧)を付与する背圧装置6とから主として構成される。
【0026】
上型4は、フープ材Wを打ち抜くための複数のパンチ(
図1には、外形打ち抜き用のパンチ10のみを示す。)と、それらパンチを保持するパンチ保持体11と、パンチ保持体11の昇降動作をガイドするために上下に延在する複数のガイドポスト(ここでは、ガイドポスト12のみを示す。)と、図示しないストリッパ用ガイドによってスライド自在に支持され、打ち抜き後のフープ材Wをパンチから分離させるストリッパプレート13とを有している。
【0027】
また、上型4の上部は、上下方向に往復運動(例えば、25mm〜35mm程度のストロークで上下動)するスライド部(図示せず)に固定されている。スライド部では、上型駆動用モータ15によって駆動されるクランク軸16の回転運動がコネクティングロッド(図示せず)を介して上型4の上下方向の運動に変換される。また、スライド部には、クランク軸16の回転位相(クランク軸16の基準回転位置からの回転角度)を検出し、その検出結果を示すエンコーダ信号(以下、「同期信号」という。)を発生するエンコーダ17が設けられている。
【0028】
下型5は、略円柱状のパンチ10が挿入される略円形の外形打ち抜き穴が設けられたダイ20と、ダイ20の周囲を保持するダイプレート21と、ダイ20の下端に連なり、積層された鉄心薄板2に対して側圧(締め付け力)を付与するスクイズリング(鉄心保持部材)22と、スクイズリング22を保持すると共に、ダイプレート21の下面を支持するダイホルダ23と、ダイホルダ23の下面を支持するサブプレート25とを有している。
【0029】
なお、本実施形態では、打ち抜かれた鉄心薄板2を保持するための鉄心保持部材としてスクイズリング22を用いた構成を示したが、少なくとも複数の鉄心薄板2を収容し、且つそれらの積層に供されるものであれば、スクイズリング22に限らず略筒状をなす任意の部材を用いることができる。また、鉄心保持部材としては、積層された鉄心薄板2に対して側圧を付与することを目的とするものだけでなく、筒穴(ガイド穴)によって鉄心片を整列させることを目的とするものでもよく、その穴形状としては、円形のみならず、鉄心薄板2の形状に合わせて、方形、扇型、台形、T型等の種々の形状を採用することができる。
【0030】
スクイズリング22の内径は、ダイ20の内径と同等の大きさに設定(内径と同一に設定または内径よりも僅かに小さく若しくは僅かに大きく設定)されており、スクイズリング22は、パンチ10によってダイ20内に打ち抜かれた鉄心薄板2を所定の側圧をもって保持しながら順次下方に移動させる。
【0031】
背圧装置6は、ダイ20内に打ち抜かれた鉄心薄板2が順次載置される受け台31と、受け台31を下方から支持する支持ユニット32と、支持ユニット32を介して受け台31を昇降させるための動力を発生する昇降用モータ33と、昇降用モータ33の回転動作を制御するコントローラ(制御装置)34と、コントローラ34からの指令に基づき昇降用モータ33を駆動するドライバ35とを主として備える。昇降用モータ33としては、サーボモータやステッピングモータ等の公知のモータを用いることができる。
【0032】
受け台31は、ダイ20内やスクイズリング22内などにおいて鉄心薄板2の下面に当接する平坦な上面31aを有し、上面31aに載置された鉄心薄板2を上方に押圧することにより、鉄心薄板2に背圧(押圧力)を付与する。受け台31は、ダイ20の上端付近に設定された上限位置から、スクイズリング22下方の下限位置(搬出位置)の間を昇降可能である。なお、積層鉄心3は、下型5の下方の搬出位置まで移動した受け台31からプッシャ36(後述する
図5(D)参照)によって搬送ラインに押し出され、搬送ラインのコンベア装置等によって組立ラインに搬送される。
【0033】
なお、本実施形態では、各鉄心薄板2を固着する方法として積層かしめ法が用いられ、上下に隣接する鉄心薄板2に形成されたかしめ用の凹凸をかしめ結合させるによって積層鉄心3が形成される。ただし、本発明の順送り金型装置1には、積層かしめ法に限らず、各鉄心薄板2を固着する方法として接着剤を用いる積層接着法や、レーザを用いるレーザ溶接法などの他の公知の方法を適用することもできる。
【0034】
支持ユニット32には、上下方向に延在する支持軸41と、ボールねじ42を構成する一対のナット43及びねじ軸44とが設けられている。支持軸41は、剛性の高いシャフトからなり、図示しないガイドにより水平方向の移動が制限されている。また、支持軸41の上端部は受け台31の下部に接続される一方、その下端部はナット43に固定されている。ここでは図示しないが、ナット43の内部には、公知のナットと同様に、ねじ軸44に設けられたねじ軸側ねじ溝と共にボール(剛球)を転動可能に収容するナット側ねじ溝や、ボールを循環させるための循環通路及びデフレクタ等が設けられている。ねじ軸44は、その軸心がモータ回転軸心となるように昇降用モータ33の回転軸に直結されている。
【0035】
このような構成により、支持ユニット32では、昇降用モータ33の正転によってねじ軸44が正方向に回転すると、ナット43が上昇し、これにより、ナット43に固定された支持軸41(及び受け台31)も上昇する。一方、昇降用モータ33の逆転によってねじ軸44が逆方向に回転すると、ナット43が下降し、これにより、ナット43に固定された支持軸41も下降する。
【0036】
本実施形態では、昇降用モータ33によってねじ軸44が回転する構成としたが、これに限らず、昇降用モータ33の回転によってナットが回転する構成としてもよい。その場合、受け台は、ねじ軸に取り付けられ、ナットの回転によりねじ軸が上下方向に進退移動(すなわち、受け台が上昇または下降)する。
【0037】
昇降用モータ33には、その速度及び回転角度(位置)を検出するための速度・位置検出装置としてのエンコーダ51が付設されている。エンコーダ51は、速度及び回転角度の検出結果をエンコーダ信号(以下、「速度・位置検出信号」という。)としてドライバ35に送出する。なお、昇降用モータ33の速度・位置検出装置としては、エンコーダに限らず、レゾルバ等の他の検出装置を用いてもよい。また、リニアスケール等の速度・位置検出装置を用いてナット43の位置を検出し、その検出結果を速度・位置検出信号としてドライバ35に送出することもできる。
【0038】
コントローラ34は、上型4側のエンコーダ17からクランク軸16の回転位相(すなわち、パンチ10の昇降動作のタイミング)の情報を含む同期信号を取得し、この同期信号に基づきドライバ35に対して昇降用モータ33の速度指令及び位置指令を送出することにより、モータの回転動作(すなわち、受け台31の昇降動作)を制御する。ドライバ35は、コントローラ34からの速度指令及び位置指令の少なくとも一方と、エンコーダ51からの速度・位置検出信号(すなわち、速度及び位置フィードバック)とに基づき、電源(図示せず)から昇降用モータ33に印加される電流を制御することにより、昇降用モータ33の回転速度及び停止位置(すなわち、受け台31の昇降速度及び停止位置)を制御する。
【0039】
また、コントローラ34は、予め設定された1以上のトルク制限値に基づき、ドライバ35に対してトルク制限指令(すなわち、トルク制限値)を送出する。トルク制限値は、スクイズリング22から鉄心薄板2の周面に対して付与される圧力(側圧)や、鉄心薄板2の板厚等に基づき、少なくとも鉄心薄板2の突き上げを防止する観点から設定することができる。ドライバ35は、コントローラ34からのトルク制限指令に基づき、昇降用モータ33に印加される電流制限値を設定して昇降用モータ33の出力トルク(すなわち、背圧装置6の背圧)を制限する。昇降用モータ33のトルク制限値については、昇降用モータ33によって受け台31を上昇させる力がパンチ10による押圧力よりも小さくなるように設定することが好ましい。
【0040】
上記構成の順送り金型装置1では、パンチ10によって打ち抜かれた1枚目の鉄心薄板2が受け台31上に載置される。2枚目以降の鉄心薄板2は、それよりも先に打ち抜かれてダイ20内に積層されている鉄心薄板群上に順次積層され、ダイ20の下方のスクイズリング22内へと順次押し込まれ、規定枚数の鉄心薄板群(すなわち、積層鉄心3)において互いに固着される。パンチ10による打ち抜き時には、鉄心薄板2が載置された受け台31にパンチ10による下向きの押圧力が発生するが、ボールねじ42が逆作動可能な態様で設けられているため、トルク制限値を越える負荷が加わった場合はモータ33が逆回転する。このボールねじ42の逆作動(すなわち、受け台31の下降)によって従来技術におけるガススプリング等と同様に、背圧を増大させると共にパンチによる衝撃の緩衝効果が得られ、支持ユニット32等に対する負荷を軽減(打ち抜き荷重を緩衝)することができる。背圧装置6の構成については、少なくともボールねじが逆作動可能な態様で設けられている限りにおいて、ここに示すものに限らず、他の構成を用いてもよい。
【0041】
なお、本明細書では説明を省略するが、順送り金型装置1では、上述の構成に関連する鉄心薄板2の外形打ち抜き及び積層(固着)工程の前工程として、従来装置と同様にパイロット穴やスロット部、内径ティース等の打ち抜き加工等の各工程が順次実施されて鉄心薄板2が連続的に形作られる。また、順送り金型装置1に関するストリップレイアウト(鉄心薄板2の形状等)については、鉄心薄板2の外形を打ち抜く際に背圧装置6によって背圧を付与可能である限りにおいて任意の形態を適用することができる。
【0042】
図2は、順送り金型装置におけるパンチの位置とクランク軸の回転角度との関係を示す説明図であり、
図3(A)〜(C)は、順送り金型装置における1枚目の鉄心薄板の打ち抜きに関する背圧装置の一連の動作を示す説明図である。
【0043】
図2において、縦軸は、クランク軸16のクランクピン16aの高さ位置に応じて上下するパンチ10の先端10aの位置であり、横軸は、クランク軸16の回転角度である。また、
図2中に示したT1〜T5は、各点における時刻(すなわち、経過時間)を示している。図に示すように、パンチ10は、1回の昇降動作において、時刻T0(クランク軸回転角度0°)における上死点から、時刻T3(クランク軸回転角度180°)における下死点を経て再び時刻T5において上死点に戻る。また、時刻T2は、パンチ10の先端10aがフープ材Wの表面の位置まで下降した時刻に相当し、時刻T4は、パンチ10の先端10aが下死点から再びフープ材Wの表面の位置まで上昇した時刻に相当する。
【0044】
パンチ10によるフープ材Wの打ち抜き動作は、パンチ10がフープ材Wに当接してから元の位置に戻るまでの時刻T2〜T4において実施される。ただし、鉄心薄板2のダイ20内への打ち抜きについては、パンチ10がフープ材Wに当接してから下死点を超えるまでの時刻T2〜T3で概ね完了する。
【0045】
なお、本実施形態では、上述のエンコーダ17からの同期信号として、鉄心薄板2の打ち抜き開始直後(
図2中の時刻T0またはT5)のタイミングでエンコーダ17から順次送出される同期信号1と、少なくともパンチ10が下死点に到達する予定時刻(
図2中の時刻T3参照)から所定の時間Tzだけ前のタイミングでエンコーダ17から順次送出される同期信号2が用いられる。
【0046】
図3(A)では、パンチ10の昇降動作の開始前の状態を示しており、パンチ10の先端10aは、上限位置(
図2中の時刻T0における上死点に相当)にある。また、受け台31は、ダイ20の上端面20aを基準として所定の長さだけ下降した初期位置(ここでは、受け台31の上限位置)にある。受け台31は、この初期位置で一旦停止した後、1枚目の鉄心薄板2の打ち抜き動作に対応するための打ち抜き位置まで下降する。
【0047】
図3(B)では、パンチ10が
図3(A)の上限位置からフープ材Wに向けて下降を開始した状態を示しており、パンチ10の先端10aは、上限位置と下限位置(
図2中の時刻T3における下死点に相当)との間の位置(
図2中の時刻T1における中間点に相当)にある。また、受け台31の上面31aは、
図3(A)と同じ位置にある。
【0048】
図3(C)では、パンチ10による1枚目の鉄心薄板2の打ち抜き動作途中の状態を示しており、パンチ10の先端10aは、下限位置(
図2中の時刻T3における下死点に相当)にある。また、受け台31は、パンチ10の押圧によってボールねじ42が逆作動することにより、上記
図3(B)の位置から降下する。このとき、受け台31の上面31aは、ダイ20の上端面20aを基準として、下限位置におけるパンチ10のダイ20に対する挿入深さ(かみ合い長さ)L(
図3(C)参照)と鉄心薄板2の厚さtとを加算した長さ(L+t)だけ下方の位置(打ち抜き位置)まで移動する。
【0049】
図4は、順送り金型装置における2枚目の鉄心薄板の打ち抜きに関する背圧装置の動作を示す説明図である。
【0050】
図4(A)では、1枚目の鉄心薄板2の打ち抜き動作後に、パンチ10が、再び上限位置(
図2中の時刻T5における上死点に相当)に戻った状態を示している。一方、受け台31の上面31aは、
図3(C)と同様に、ダイ20の上端面20aを基準として、L+tだけ下方の位置にある。
【0051】
図4(B)では、パンチ10が
図4(A)の上限位置から再びフープ材Wに向けて下降を開始した状態を示しており、パンチ10の先端10aは、
図3(B)と同様に、上限位置と下限位置との間の位置にある。また、受け台31の上面31aは、
図4(A)と同じ位置にある。
【0052】
図4(C)では、パンチ10による2枚目の鉄心薄板2の打ち抜き動作途中の状態を示しており、パンチ10の先端10aは、
図3(C)の場合と同様に下限位置にある。また、受け台31の上面31aは、パンチ10の押圧によってボールねじ42が逆作動することにより、上記
図4(B)の位置から降下する。このとき、受け台31の上面31aは、ダイ20の上端面20aを基準として、パンチ10の挿入深さL(
図4(C)参照)と2枚の鉄心薄板2の厚さ2tとを加算した長さ(L+2t)だけ下方の打ち抜き位置まで移動する。なお、3枚目以降の鉄心薄板2の打ち抜きについても上記と同様の動作が繰り返される。
【0053】
図5(A)〜(E)は、積層鉄心の搬出時における背圧装置の動作を示す説明図である。ここで、
図5(A)は、
図3(A)と同様の状態を示している。その後、上述のように、順送り金型装置1では、
図3及び
図4に示した動作(外形打ち抜き及び積層工程)が繰り返し実行されることにより、ダイ20内に鉄心薄板2が順次打ち抜かれて積層される。さらに、打ち抜かれた各鉄心薄板2は、スクイズリング22による側圧及び背圧装置6による背圧を付与されながら、
図5(B)に示すように、ダイ20からスクイズリング22内に順次押し込まれ、スクイズリング22内において強く密着した状態で固着(ここでは、かしめ結合)される。
【0054】
図5(C)は、所定枚数の鉄心薄板2が互いに固着された鉄心薄板群が1つの積層鉄心3としてスクイズリング22の下端から排出された状態を示している。このとき、積層鉄心3を載置した受け台31は、下型5の下方の搬送位置(ここでは、下限位置)まで下降した状態にある。
【0055】
図5(D)では、搬送位置における受け台31上の積層鉄心3が、プッシャ36によって搬送ライン(図示せず)に押し出される途中の状態を示している。積層鉄心3が搬送ラインに押し出される(すなわち、上面31aから取り除かれる)と、受け台31は再び上昇して初期位置に戻る。このとき、受け台31の上面31aは、
図5(E)に示すように、スクイズリング22内に保持された最も下方に位置する積層鉄心3における最下層の鉄心薄板2の下面に当接する。これにより、スクイズリング22内の鉄心薄板群に対して再び背圧が付与された状態となる。
【0056】
図6は、背圧装置の動作の流れを示すフロー図である。背圧装置6が起動されると、コントローラ34は、順送り金型装置1での打ち抜き開始前の初期動作として、以下のステップST101〜ST104を実施する。
【0057】
初期動作に関し、まず、コントローラ34は、トルク制限値を「低」に設定するためのトルク制限指令をドライバ35に対して送出し、ドライバ35は、そのトルク制限指令に基づき、昇降用モータ33に印加される電流制限値を設定する(ST101)。
【0058】
本実施形態では、トルク制限値は「高」及び「低」の2段階で設定され、常時「高」及び「低」のいずれかのトルク制限がなされている。トルク制限値「低」は、鉄心薄板2の突き上げが生じない程度の値に設定され、より好ましくは、鉄心薄板2の突き上げが生じず、かつスクイズリング22の側圧によって生じる鉄心薄板2の反りの発生を抑制可能な程度の値に設定される。トルク制限値「低」は、少なくとも受け台31が昇降動作に可能な大きさに設定されていればよい。一方、トルク制限値「高」は、少なくともトルク制限値「低」よりも高い値である。本実施形態のトルク制限値「高」では、パンチ10の打ち抜き動作における下方の押圧を受けない場合(すなわち、非打抜き時)には、鉄心薄板2の突き上げが生じ得る。ただし、これに限らず、トルク制限値「高」は、非打抜き時に鉄心薄板2の突き上げが生じない大きさに設定されてもよい。
【0059】
その後、コントローラ34は、ドライバ35に対して昇降用モータ33の速度指令を送出することにより速度制御を開始し(ST102)、これにより、受け台31は、所定の速度で初期位置まで上昇する(ST103)。このとき、ダイ20またはスクイズリング22内に鉄心薄板2が存在しない場合には、予め設定された上限位置(
図3(A)参照)が受け台31の初期位置となる。一方、既に打ち抜き済みの鉄心薄板2がダイ20またはスクイズリング22内に存在する場合には、コントローラ34が、その鉄心薄板2の下面に対する受け台31の当接(衝突)を検出し、その当接が検出された位置(
図5(E)参照)が受け台31の初期位置となる。鉄心薄板2の下面に対する受け台31の当接は、昇降用モータ33の負荷電流によって検出できる。一方で、例えば、受け台31の上部に力センサ55(
図1参照)を設け、この力センサ55によって受け台31の当接を検出してもよい。なお、力センサ55の代わりに近接センサ等の他の公知のセンサを用いることにより、鉄心薄板2の下面に対する受け台31の当接を検出してもよい。また、ここでは好ましい例としてステップST102の制御を速度制御とし、ステップST104の制御を位置決め制御としたが、それぞれの制御は、速度制御、位置決め制御、及びトルク制御のいずれによっても実施可能である。
【0060】
その後、コントローラ34は、速度制御から位置決め制御に切り替え(ST104)、続いて、外形打ち抜き時の背圧付与動作を実施する(ST105)。このステップST105に関する動作については後に詳述するが、ステップST105ではトルク制限値が「高」に設定される。ステップST105における背圧付与動作が終了する(すなわち、スクイズリング22内から積層鉄心3が排出され、その搬出の必要が生じる)と、次に、コントローラ34は、順送り金型装置1での積層鉄心3の搬出動作として、以下のステップST106〜ST110を実施する。
【0061】
搬出動作に関し、まず、コントローラ34は、ドライバ35に対して位置決め指令を送出することにより、受け台31を搬出位置まで下降させる(ST106)。その後、コントローラ34は、トルク制限値を「低」に設定するためのトルク制限指令をドライバ35に対して送出し(ST107)、さらに、ドライバ35に対して速度指令を送出することにより再び速度制御を開始する(ST108)。これにより、受け台31は、所定の速度で初期位置まで上昇する(ST109)。このとき、コントローラ34は、既に打ち抜き済みの鉄心薄板2の下面に対する受け台31の当接(衝突)を検出することで、その当接位置を初期位置とする。
【0062】
その後、コントローラ34は、速度制御から位置決め制御に切り替える(ST110)。ここで、全ての鉄心薄板2の打ち抜きが終了していない場合(ST111:No)には、再び、ステップST105に戻って上述の各ステップを繰り返し実行する。最終的に、全ての鉄心薄板2の打ち抜きが終了すると(ST111:Yes)、背圧装置6の一連の動作も終了する。なお、好ましい例としてST108の制御を速度制御、ST110の制御を位置決め制御としたが、それぞれの制御は、速度制御、位置決め制御、トルク制御のいずれによっても可能である。
【0063】
図7は、
図6中のステップST105の処理を示すフロー図である。順送り金型装置1において鉄心薄板2の打ち抜きが開始されると、コントローラ34は、上型4側のエンコーダ17からの同期信号2の受信待ちの状態となる(ST201)。
【0064】
その後、コントローラ34が同期信号2を受信すると(ST201:Yes)、コントローラ34は、トルク制限値を「高」に設定するためのトルク制限指令をドライバ35に対して送出し、ドライバ35は、そのトルク制限指令に基づき、昇降用モータ33に印加される電流制限値を設定する(ST202)。続いて、コントローラ34は、同期信号1の受信から予め設定された時間(パンチ10が下死点に到達するまでの時間)Tyが経過したと判断すると(ST203:Yes)、その時点の受け台31の位置をパンチ10の下死点到達時の位置(以下、「位置A」という。)として決定(記憶)する(ST204)。
【0065】
その後、コントローラ34は、トルク制限値を「低」に設定するためのトルク制限指令をドライバ35に対して送出し(ST205)、次に、ドライバ35に対して昇降用モータ33の位置決め指令を送出し、これにより、受け台31は、位置Aからのずれが生じている場合には、位置Aまで移動する(ST206)。上記ステップST201〜ST206の動作は、各積層鉄心3がスクイズリング22から排出されるタイミングがくるまで(ST207:Yes)、繰り返し実行される。コントローラ34は、ステップST207における積層鉄心3の排出のタイミングについて、予め設定された搬出可能位置に受け台31が到達したか否かによって判定する。
【0066】
図8は、
図6中のステップST105の処理の変形例を示すフロー図である。順送り金型装置1において鉄心薄板2の打ち抜きが開始されると、コントローラ34は、上型4側のエンコーダ17からの同期信号2の受信待ちの状態となる(ST301)。
【0067】
その後、コントローラ34が同期信号2を受信すると(ST301:Yes)、コントローラ34は、トルク制限値を「高」に設定するためのトルク制限指令をドライバ35に対して送出する(ST302)。続いて、コントローラ34は、ドライバ35に対して受け台31を予め設定された位置B(目標位置)に移動させるための位置決め指令を送出する(ST303)。
【0068】
その後、受け台31は、ステップST302の位置決め指令に基づき、予め設定された位置Bに移動する(ST304)。なお、上記時間Tzは、パンチ10が下死点に到達した際に、受け台31が位置Bへの移動途中にあるように設定するとよい。つまり、
図7では、受け台31が停止した状態で、パンチ10が下死点に到達するが、
図8の変形例では、受け台31が上昇または下降している状態で、パンチ10が下死点に到達する。これにより、背圧装置6は、鉄心薄板2の打抜き時により適切な背圧を発生させることができる。上記受け台31の上昇または下降は、スクイズリング22の側圧や、鉄心薄板2の板厚等に基づき選択することができる。なお、ステップST303の受け台31の移動は、位置決め制御によることが好ましいが、これに限らず複数の制御モードを設定することが可能であり、例えば、受け台31の上昇または下降(モータ33の正転または逆転)の指令と、速度制御またはトルク制御との組合せによっても可能である。
【0069】
その後に続くステップST305〜ST309は、それぞれ上述の
図7のステップST203〜ST207と同様である。
【0070】
このように、上記順送り金型装置1の背圧装置6では、コントローラ34が、2つのトルク制限値(「高」、「低」)を設定し、鉄心薄板2の打抜き時のトルク制限値「高」を、非打抜き時のトルク制限値「低」よりも大きい値に設定するため、非打ち抜き時には、比較的低いトルク制限値「低」によって鉄心薄板2の突き上げを防止しつつ、鉄心薄板2の打抜き時には比較的高いトルク制限値「高」を設定することにより、各鉄心間のより密着度(すなわち、各鉄心薄板2間の固着力)を高め、延いては積層鉄心3の占積率を向上させることができる。
【0071】
なお、トルク制限値については、ここに示したものに限らず、鉄心薄板の打抜き時(少なくとも
図2に示す時刻T3を含むタイミング)において、最大のトルク制限値が適用される限りにおいて、順送り金型装置1の動作に応じてより多くのトルク制限値を設定してもよい。ただし、2つのトルク制限値(「高」、「低」)を用いる場合には、昇降用モータ33の制御が容易である。
【0072】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。なお、上記実施形態に示した本発明に係る順送り金型装置用の背圧装置及びこれを備えた順送り金型装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。