特許第6294313号(P6294313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6294313ポリマー粒子の水性分散液、それを含有する膜形成組成物、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294313
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ポリマー粒子の水性分散液、それを含有する膜形成組成物、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20180305BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20180305BHJP
   C09D 5/00 20060101ALN20180305BHJP
   A61L 26/00 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   A61K9/10
   A61K47/32
   A61K47/18
   A61K8/04
   A61K8/81
   A61K8/44
   A61P17/16
   A61Q17/04
   !C09D5/00
   !A61L26/00
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-515575(P2015-515575)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-519376(P2015-519376A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】FR2013051325
(87)【国際公開番号】WO2013182828
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】1255393
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514245133
【氏名又は名称】ビバテック
(73)【特許権者】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】514305884
【氏名又は名称】エコール スペリュール デ フィジーク エ シミ アンドゥストリエル デ ラ ヴィル デ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】レイブラー ルートヴィック
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニルハック フランソワーズ
(72)【発明者】
【氏名】トリフタリドゥ アッゲリキ
(72)【発明者】
【氏名】ロイシュナー エヴァ−マリア
(72)【発明者】
【氏名】オーギュスト ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ ジャン−マルク
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−138394(JP,A)
【文献】 特表2001−514312(JP,A)
【文献】 特開2007−332370(JP,A)
【文献】 特開2008−266252(JP,A)
【文献】 特開2000−351721(JP,A)
【文献】 特表2002−537158(JP,A)
【文献】 特公昭48−043661(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 − 9/72
A61K 8/00 − 8/99
A61K 47/00 − 47/69
C08F 265/06
C09D 5/00
C09D 151/00 −151/04
A61L 26/00
A61P 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相ポリマー粒子の水性分散液であって、ポリマー粒子が、2以上の異なる相:
20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のポリマーPによって形成される内側相と、
60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する硬質のポリマーPによって形成される外側相と、
を含み、
前記分散液が、サルコシン酸誘導体及びグルタミン酸誘導体から選択される界面活性剤を含み、
ポリマーPは架橋剤の存在下での重合によって形成されており、
ポリマーPが、疎水性モノマーの重合によって得られる単位を、95重量%以上、含む、水性分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の水性分散液であって、前記多相ポリマー粒子が略球状であり、15〜300ナノメートルの直径を有することを特徴とする、水性分散液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水性分散液であって、ポリマーPが前記粒子の60重量%〜90重量%を占め、ポリマーPが前記粒子の10重量%〜40重量%を占めることを特徴とする、水性分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水性分散液であって、ポリマーPが、
(メタ)アクリル酸の(C−C16)アルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、直鎖又は分岐鎖カルボン酸のビニルエステル、スチレン、アルキルスチレン、ハロアルキルスチレン、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、酸又は塩基性官能基を含むモノマー、シラン化(メタ)アクリル又はビニルモノマー、アセトアセトキシ基を含むモノマー、及びこれらの混合物、からなるグループ(I)から選択される1以上のモノマーの重合によって得られる単位を90重量%〜99.5重量%と、
架橋剤の重合によって得られる単位を0.5重量%〜10重量%と、
を含むことを特徴とする、水性分散液。
【請求項5】
請求項4に記載の水性分散液であって、前記架橋剤が、
モノカルボン酸又はジカルボン酸のアリル又は(C−C16)アルキルエステル、共役ジエン、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルベンゼン、ポリアリル誘導体、及びこれらの混合物、からなるグループ(II)から選択されることを特徴とする、水性分散液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性分散液であって、ポリマーPが、
請求項4に定義されたグループ(I)から選択される1以上のモノマーの重合によって得られる単位を95重量%〜99.5重量%、含むことを特徴とする、水性分散液。
【請求項7】
請求項4に記載の水性分散液であって、ポリマーPのグループ(I)のモノマーが、ブチルアクリレートと、メチルメタクリレートと、これらの混合物と、から選択されることを特徴とする、水性分散液。
【請求項8】
請求項5に記載の水性分散液であって、ポリマーPのグループ(II)の前記架橋剤が、ジアリルマレエートと、ジメチルマレエートと、1,4−ブタンジオールジアクリレートと、これらの混合物と、から選択されることを特徴とする、水性分散液。
【請求項9】
請求項6に記載の水性分散液であって、ポリマーPのグループ(I)のモノマーがメチルメタクリレートであることを特徴とする、水性分散液。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性分散液であって、ポリマーPが、疎水性モノマーの重合によって得られる単位を、100重量%、含むことを特徴とする、水性分散液。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性分散液であって、前記界面活性剤が、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸二ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、N−ココイルサルコシン酸ナトリウム、N−オレオイルサルコシン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸アンモニウム、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、水性分散液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の水性分散液であって、前記界面活性剤の濃度は前記水性分散液の乾物の重量を基準として0.1重量%〜5重量%であることを特徴とする、水性分散液。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の水性分散液であって、前記水性分散液のpHが、使用される前記界面活性剤のpKaの1単位上よりも大きいことを特徴とする、水性分散液。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の水性分散液であって、抗菌剤、防腐剤、抗ウイルス剤、防真菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤、治癒促進剤、保湿剤、脱色剤、角質溶解剤、再構築剤、麻酔剤、及び日焼け止め剤から選択される有効成分を含むことを特徴とする、水性分散液。
【請求項15】
請求項14に記載の水性分散液であって、前記有効成分が、前記多相ポリマー粒子の内側相又は外側相に含まれることを特徴とする、水性分散液。
【請求項16】
膜形成組成物であって、生理学的に許容される媒質中に、請求項1〜15のいずれか一項に記載の多相ポリマー粒子の水性分散液を含むことを特徴とする、膜形成組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の膜形成組成物であって、抗菌剤、防腐剤、抗ウイルス剤、防真菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤、治癒促進剤、保湿剤、脱色剤、角質溶解剤、再構築剤、麻酔剤、及び日焼け止め剤から選択される医薬品を含むことを特徴とする、膜形成組成物。
【請求項18】
2以上の異なるTg値を呈する膜であって、前記膜が多相ポリマー粒子と界面活性剤とを含み、前記ポリマー粒子が2以上の異なる相:
20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のポリマーPによって形成される内側相と、
60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する硬質のポリマーPによって形成される外側相と、を含み、
前記界面活性剤がサルコシン酸誘導体及びグルタミン酸誘導体から選択され、ポリマーPは架橋剤の存在下での重合によって形成されており、
ポリマーPが、疎水性モノマーの重合によって得られる単位を、95重量%以上、含む、ことを特徴とする、膜。
【請求項19】
膚、粘膜、創傷、病変、及び/又は皮膚疾患の表面保護のための、請求項18に記載の膜
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相ポリマー粒子の水性分散液、及び、例えば皮膚、粘膜、創傷、病変、及び/又は皮膚疾患に塗布可能な膜形成組成物中におけるその使用に関する。本発明の別の主題は、前記分散液を使用して生理学的に許容可能な、皮膚に塗布可能な膜を形成することである。
【背景技術】
【0002】
ラテックス型の膜形成組成物(ポリマーの水性分散液)を含む生理学的に許容可能な製剤は、当業者に周知である。
【0003】
特許文献1において、Procter&Gambleは、例えばシェービングフォームとして使われることを想定した組成物を記載している。該組成物は、界面活性剤によって水相中に分散された1以上の膜形成材料を含む。膜形成材料は、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシエチルセルロース等のポリマー、あるいはスチレン−アクリレート又はスチレン−ブタジエンラテックス等のコポリマーであってよい。複数の界面活性剤、具体的にはサルコシン酸誘導体、より具体的にはN−ミリストイルサルコシンナトリウムが記載されている。当該明細書による組成物はシェービングフォームであって、具体的には、柔軟で耐水性があり、高い破断強度を有し、例えば皮膚などの表面の長期にわたる保護を提供する、分離可能な膜を形成することを可能にしない。
【0004】
ラテックスは、分離可能な膜を形成するために特に使用できる。例えば3Mは、特許文献2において、コポリマーの水性分散液を含むラテックス型の組成物であって、
酢酸ブチル等の、対応するホモポリマーが−15℃未満のTgを有する「軟質」モノマーと、
メチルメタクリレート等の、対応するホモポリマーが−5℃より高いTgを有する「硬質」モノマーと、
N−ビニルピロリジノン等の、ヨウ素の錯体形成が可能なモノマーと、を含み、
該組成物が、抗菌性と、前記水性分散液を安定させることを目的としてヨウ素を含み、水相中におけるラテックス粒子の分散を補助するために界面活性剤を更に含む、組成物を記載している。
【0005】
本膜形成組成物は、皮膚上に保護膜、例えば特に包帯、を形成するよう意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0021409号
【特許文献2】米国特許第5173291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの組成物によって形成された膜は、機械的特性、特に柔軟性と破断強度、が限定されている。
【0008】
したがって、耐破壊性を有し、接着性であり、高い柔軟性を呈し、耐水性を有する分離可能な膜を容易かつ素早く形成することが可能な、新規な膜形成組成物への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人は、驚くべきことに、多相ポリマー粒子の水性分散液であって、該ポリマー粒子が、異なるTg値を有する2以上の異なる相を含み、内側相が架橋剤の存在下での重合によって形成され、該分散液がアミノ酸誘導体から選択される界面活性剤を含む、分散液により、素早く乾燥し、優れた接着性、柔軟性、耐水性、及び耐破壊性を呈する膜を調製することが可能であることを見出した。この分散液から形成される膜は2以上の異なるTg値を含む。
【0010】
したがって、本発明の主題は、本発明の第一の態様によれば、多相ポリマー粒子の水性分散液であって、ポリマー粒子が、2以上の異なる相:
20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のポリマーPによって形成される第1の相と、
60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する硬質のポリマーPによって形成される第2の相と、を含み、
前記分散液が、アミノ酸誘導体から選択される界面活性剤を含み、ポリマーPは架橋剤の存在下での重合によって形成されている、水性分散液である。
【0011】
第二の態様によれば、本発明の別の主題は、膜形成組成物であって、生理学的に許容される媒質中に、多相ポリマー粒子の水性分散液を含むことを特徴とする、膜形成組成物である。
【0012】
本発明はまた、第三の態様によれば、2以上の異なるTg値を呈する膜であって、前記膜が多相ポリマー粒子と界面活性剤とを含み、前記ポリマー粒子が2以上の異なる相:
20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のポリマーPによって形成される第1の相と、
60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する硬質のポリマーPによって形成される第2の相と、を含み、
前記界面活性剤がアミノ酸誘導体から選択され、ポリマーPは架橋剤の存在下での重合によって形成されていることを特徴とする、膜に関する。
【0013】
最後に、第四の態様によれば、本発明の主題は、皮膚、粘膜、創傷、病変、及び/又は皮膚疾患の表面保護のための上述の膜の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
水性分散液
本発明の主題は、多相ポリマー粒子の水性分散液である。
【0015】
水性分散液とは、本特許出願の意味において、少なくとも水を含む液相中の固体粒子の懸濁液を指すと理解される。
【0016】
水相は更に、アミノ酸誘導体から選択される1以上の界面活性剤と、任意で酸化/還元系、及び/又はpH調整剤、及び/又は1以上の医薬品又は化粧品、及び/又は1以上の生理学的に許容可能な添加剤と、を含む。
【0017】
特に、水相は、水性分散液の重量を基準として20重量%〜75重量%、好ましくは40重量%〜70重量%の含有量で本発明の分散液中に存在してよい。
【0018】
多相ポリマー粒子
本発明の意味において、多相ポリマー粒子とは、水相中に分散された固体のポリマー粒子である。
【0019】
ポリマーは、本発明の意味において、ホモポリマー又はコポリマーを指すと理解される。
【0020】
該多相粒子は、2以上の相を含み、各相が、例えば相ごとに異なるガラス転移温度(Tg)といった、性質の大きく異なるポリマーによって構成される。
【0021】
本発明の意味において、多相ポリマー粒子の各相のガラス転移温度(Tg)は、文献において参照されるホモポリマーのTg、もしくはFox−Floryの混合物の法則によって計算されたコポリマーのTgのいずれかを指すと理解される。実際、このような多相粒子の各相のTgは直接測定できない。
【0022】
粒子のある相がコポリマーによって構成される場合、当業者は、特にFox−Floryの混合物の法則によって、この相のTgを容易に算出できる。したがって、多相粒子の一の相が、ガラス転移温度Tg(A)を有するモノマーAの質量分率Xと、ガラス転移温度Tg(B)を有するモノマーBの質量分率Yとを呈するコポリマーによって構成される場合、コポリマーのガラス転移温度Tg(AB)は、以下の関係を適用することで推定できる。温度はケルビン。
【数1】
【0023】
一の実施形態によれば、軟質のポリマーPによって形成される第一相は粒子の内側相(コアとも呼ばれる)であってよく、硬質のポリマーPによって形成される第二相は粒子の外側相(シェルとも呼ばれる)であってよい。
【0024】
特に、本発明の文脈において、ポリマー粒子は少なくとも二相であって、コア/シェル構造を呈してよい。
【0025】
ポリマーPの柔軟性は、20℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃未満のTgを有するポリマーPを選択することで向上できる。
【0026】
一方、ポリマーPの硬度は、60℃超、好ましくは70℃超、より好ましくは80℃超のTgを有するポリマーPを選択することで向上できる。
【0027】
特定の実施形態によれば、ポリマーPは粒子の60重量%〜90重量%を占め、ポリマーPは粒子の10重量%〜40重量%を占める。
【0028】
本発明によるポリマー粒子の第一相は、一以上のモノマーの重合と、一以上の架橋剤の重合によって得られる。本発明によるポリマー粒子の第二相は、一以上のモノマーの重合と、任意で一以上の架橋剤の重合によって得られる。
【0029】
第一相における架橋剤の存在は、特に、架橋によって該粒子を、特に、2つのガラス転移温度を呈する膜形成組成物を得ることを可能にする該粒子の第一相を、制御された、複製可能な形で構成するのに用いることができる。
【0030】
特定の実施形態によれば、ポリマーPは、好ましくはグループ(II)から選択される架橋剤の重合によって得られる単位を、0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%、より好ましくは2重量%〜5重量%含んでよい。
【0031】
特定の実施形態によれば、ポリマーPは以下を含むことができる。
グループ(I)から選択される一以上のモノマーの重合によって得られる単位を、90重量%〜99.5重量%、好ましくは93重量%〜99重量%、より好ましくは95重量%〜98重量%、及び
好ましくはグループ(II)から選択される架橋剤の重合によって得られる単位を0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%、より好ましくは2重量%〜5重量%。
【0032】
別の特定の実施形態によれば、ポリマーPは、グループ(I)から選択される一以上のモノマーの重合によって得られる単位を、95重量%〜99.5重量%、好ましくは97重量%〜99重量%、より好ましくは100重量%含むことができる。
【0033】
ポリマー粒子の第二相が架橋されている場合、ポリマーPは、好ましくはグループ(II)から選択される架橋剤の重合によって得られる単位を0.5重量%〜5重量%、好ましくは1重量%〜3重量%含むことができる。
【0034】
本特許出願の意味において、グループ(I)のモノマーは以下から選択することができる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の(C−C16)アルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、酢酸ビニル及びステアリン酸ビニル等の直鎖又は分岐鎖カルボン酸のビニルエステル、スチレン、メチルスチレン等のアルキルスチレン、クロロメチルスチレン等のハロアルキルスチレン、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸及びその無水物等の誘導体、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、又はマレイン酸等の、酸又は塩基性官能基を含むモノマー、メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン又はメタクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン等のシラン化(メタ)アクリル又はビニルモノマー、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシ基を含むモノマー、及びこれらの混合物。
【0035】
グループ(II)の架橋剤は、本特許出願の意味において、以下のモノマーから選択することができる。アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート又はフタレート、及びジメチルマレエート等のモノカルボン酸又はジカルボン酸のアリル又は(C−C16)アルキルエステル、ブタジエン及びイソプレン等の共役ジエン、エチレングリコールジメタクリレート又はトリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−又は1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン又はトリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルトリメセート等のポリアリル誘導体、及びこれらの混合物。
【0036】
好適な実施形態によれば、ポリマーPのグループ(I)のモノマーは、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0037】
別の好適な実施形態によれば、ポリマーPのグループ(II)の架橋剤は、ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0038】
別の好適な実施形態によれば、ポリマーPのグループ(I)のモノマーはメチルメタクリレートである。
【0039】
好適な実施形態によれば、本発明の水性分散液のポリマーPは、疎水性モノマーの重合によって得られる単位を、91重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは100重量%含むことができる。実際、疎水性モノマーのこのような含有量は、対応する膜の形成に際し、硬質で非粘着性の、耐水性の膜を得ることを可能にすることができる。一方、粒子の外側層が10%超の水性モノマーを含む場合、これらの特性に悪影響を及ぼす。

【0040】
一般に、モノマーの疎水性は、その水中での不溶解性、又は水への親和性の欠如によって定義される。ポリマーが疎水性モノマーによって構成される場合、該ポリマーも疎水性であると見なされる。本特許出願の意味において、ポリマーの疎水性は、Properties of Polymers、D.W.Van Krevelen著、1990、3rd editionの200ページに記載される溶解性パラメータδを用いて定義することができる。このパラメータは、様々なポリマーを、水への親和性によって分類することを可能にする。本発明によれば、δが26未満である場合、ポリマーは疎水性である。
【0041】
好適な実施形態によれば、本発明のポリマー粒子の第二相は酸性官能基を含むモノマーの重合によって得られる単位を含まない。
【0042】
特定の実施形態によれば、本発明のポリマー粒子は、第一相と第二相との間に、ポリマーPによって形成される中間相を含む。有利なことに、中間相のポリマーPは、20〜60℃の間のガラス転移温度Tgiを呈する。ポリマーPは特に、架橋剤の存在下での重合によって形成される。ポリマーPは、グループ(I)から選択される1以上のモノマーの重合によって得られる単位を、90重量%〜99.5重量%、好ましくは93重量%〜99重量%、より好ましくは95重量%〜98重量%含むことができる。更に、ポリマーPは、グループ(II)から選択される架橋剤の重合によって得られる単位を0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%、より好ましくは2重量%〜5重量%含むことができる。好ましくは、ポリマーPのグループ(I)のモノマーは、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリマーPのグループ(II)の架橋剤は、ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0043】
特定の実施形態によれば、多相ポリマー粒子は略球状であり、15〜300ナノメートル、好ましくは30〜100ナノメートルの寸法を呈する。
【0044】
多相ポリマー粒子は、本発明によれば、特に、水性分散液の重量を基準に25重量%〜70重量%、好ましくは30重量%〜70重量%の含有量で水性分散液中に存在することができる。
【0045】
界面活性剤
本発明の多相粒子の水性分散液は、1以上の界面活性剤を更に含む。界面活性剤は、特に、水相中における多相ポリマー粒子の懸濁を安定化させるために用いられ得る。
【0046】
本発明の分散液において用いられる界面活性剤は、特に、サルコシン酸又はグルタミン酸の誘導体等のアミノ酸誘導体である。
【0047】
アミノ酸由来の界面活性剤は、具体的には、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸二ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、N−ココイルサルコシン酸ナトリウム、N−オレオイルサルコシン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸アンモニウム、及びこれらの混合物、から選択することができる。
【0048】
好適な実施形態によれば、上記界面活性剤はN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、及びNラウロイルグルタミン酸ナトリウム、好ましくはN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムから選択される。
【0049】
本発明の水性分散液における、アミノ酸由来の界面活性剤の選択は、改善された機械的特性と、特には、より高い柔軟性、より高い破断強度、及びより高い破断歪を呈する膜を形成可能な水性のポリマー分散液の調製を可能にする。
【0050】
膜の機械的特性を向上させることに加え、アミノ酸由来の界面活性剤は環境に対し(これらの界面活性剤は生分解性である)、さらに、人体に対して非常に低い毒性を呈する。この低い毒性は、このように、本発明の膜を皮膚、創傷、及び/又は粘膜上に適用する用途にとって利点である。これらの界面活性剤が有するその他の顕著な利点のうち、皮膚のpHとの適合性と潜在的な刺激性の低さが言及され得る。
【0051】
更に、出願人は、驚くべきことに、界面活性剤の濃度と性質を調節することで、膜形成組成物の適用後に得られる膜の特性を更に最適化することが可能であることを見出した。実際、界面活性剤の濃度が低すぎると、膜は柔軟性を失い、脆弱になる。逆に、界面活性剤の濃度が高すぎると、膜は不透明になり、白くなる傾向を有し得る。具体的には、モノマー対界面活性剤のモル比が約30又は30未満である場合、得られる膜は白くなる傾向を有し、この比が約190又は190超である場合、得られる膜はひび割れる傾向を有することがわかっている。
【0052】
すなわち、本発明の水性分散液中の界面活性剤の濃度は、水性分散液の乾物の重量を基準として、好ましくは0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.4重量%〜5重量%、より好ましくは0.7重量%〜2重量%である。
【0053】
酸化/還元系
本発明の分散液の水相は、重合の開始を推進可能な酸化/還元系を任意で含むことができる。
【0054】
本発明の文脈において、酸化/還元系は、tert−ブチルヒドロペルオキシド/亜硫酸水素ナトリウム(任意でホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが加えられる)、過硫酸カリウム/重亜硫酸ナトリウム(任意でホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが加えられる)、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム(任意でホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが加えられる)、過硫酸カリウム/ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合物、から選択することができる。
【0055】
好適な酸化/還元系は、過硫酸カリウム/亜硫酸水素ナトリウム及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムである。
【0056】
本発明の水性分散液中の酸化剤及び還元剤の濃度は、水性分散液の乾物重量を基準として0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜2重量%であってよい。
【0057】
pH調整剤
本発明の分散液の水相は、更に、重合を最適化するためにpHを調整する目的で特に用いられるpH調整剤を含むことができる。本発明で用いられるpH調整剤は、当業者によって広く用いられるものである。このような調整剤は、以下の文献CRC Handbook of Chemistry and Physics,76th ed.(8−42ページ)、Bower,V.E.and Bates,R.G. J.Res.Nat.Bur.Stand.,55,197,1955、及びBates R.G. and Bower V.E.,Anal.Chem.,28,1322,1956に記載されている。
【0058】
pH調整剤は、Handbook of Chemistry and Physics,76th ed.,Chapter 8、pp.8−42に記載のとおり、KHPO(リン酸二水素カリウム)の0.1M水溶液とNaOH(水酸化ナトリウム)の0.1M水溶液とを様々な割合で混合することによって得られることが好ましい。
【0059】
特定の実施形態によれば、pH6.0の調整剤としては、50mlのKHPO(0.1M)及び5.6mlのNaOH(0.1M)が100mlのフラスコ内で混合され、脱イオン水によって体積が100mlとされる。pH7.0の調整剤としては、50mlのKHPO(0.1M)及び29.1mlのNaOH(0.1M)が100mlのフラスコ内で混合され、脱イオン水によって体積が100mlとされる。pH7.5の調整剤としては、50mlのKHPO(0.1M)及び40.9mlのNaOH(0.1M)が100mlのフラスコ内で混合され、脱イオン水によって体積が100mlとされる。
【0060】
pH調整剤は、界面活性剤の酸−塩基型を制御するためにも使うことができる。実際、アミノ酸由来の界面活性剤は、反応媒体のpHに依存して、2つの型で存在することができる:
pHが界面活性剤のpKaよりも大きい、中性型、および
pHが界面活性剤のpKaよりも小さい場合に、酸性官能基がカルボン酸ナトリウムとなっている、塩基型。
【0061】
安定性のために、界面活性剤は、用いられる界面活性剤のpKaの1単位上よりも大きい水性分散液のpHに対応する塩基型であることが好ましい(pH>pKa+1)。
【0062】
一般的に、本発明の意味におけるアミノ酸由来の界面活性剤のpKaは、最終的な乳化液のpHよりも小さくなければならない。pKa値は、具体的には、2〜7、好ましくは3〜5であってよい。
【0063】
水性分散液中のpH調整剤の濃度は、具体的に、水性分散液1リットル当たりのpH調整剤のモルで表される濃度として、5mmol/l〜100mmol/l、好ましくは10mmol/l〜15mmol/lであってよい。
【0064】
界面活性剤が5付近のpHで沈殿する場合、例えば、50mlのリン酸二水素カリウム溶液(0.1モル)+xmlのNaOH(0.1モル)から、5.8〜8.0のpHを有する緩衝液が調整可能である(xは所望のpHの関数として表に示される値)。
【0065】
医薬品又は化粧品
本発明による水性分散液は、上述の成分に加え、具体的には、抗菌剤、防腐剤、抗ウイルス剤、防真菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤、治癒促進剤、保湿剤、脱色剤、角質溶解剤、再構築剤、麻酔剤、及び日焼け止め剤等の1以上の医薬品又は化粧品(もしくは有効成分)を含むことができる。
【0066】
具体的には、本発明による組成物に含めることができる有効成分は、以下から選択できる。
ポリミキシンB、ペニシリン(アモキシシリン)、クラブラン酸、テトラサイクリン、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、銀及びその塩(スルファジアジン銀)、又はプロバイオティクス等の抗菌剤;
チオメルサール、エオシン、クロルヘキシジン、ホウ酸フェニル水銀、過酸化水素水溶液、デーキン液、トリクロサン、ビグアニド、ヘキサミジン、チモール、ルゴール液、ヨウ化ポビドン、メルブロミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、エタノール、又はイソプロパノール等の防腐剤;
アシクロビル、ファムシクロビル、リトナビル等の抗ウイルス剤;
ポリエン、ニスタチン、アンホテリシンB、ナタマイシン、イミダゾール(ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チアベンダゾール、チオコナゾール)、トリアゾール(フルコナゾール、イトラコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール)、アリルアミン、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、又はブテナフィン等の抗真菌剤;
フルシトシン(代謝拮抗剤)、グリセオフルビン、カスポファンギン、又はミカファンギン;
パラセタモール、コデイン、デクストロプロポキシフェン、トラマドール、モルヒネ及びその誘導体、又はコルチコイド及び誘導体等の鎮痛剤;
グルココルチコイド、非ステロイド性抗炎症剤、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ケトロラク、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、インドメタシン、ナプロクスシノッド、ニメスリド、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、フェニルブタゾン、ニフルム酸、又はメフェナム酸等の抗炎症剤;
レチノール、ビタミンA、ビタミンE、Nアセチルヒドロキシプロリン、ツボクサエキス、パパイン、シリコーン、タイム精油、ニアウリ精油、ローズマリー精油、セージ精油、ヒアルロン酸、八硫酸スクロースのカリウム塩等の1〜4個の単糖単位を有する合成多硫酸化オリゴ糖、八硫酸スクロース又はスクラルファートの銀塩、又はアラントイン等の治癒を促進する有効成分;
ヒアルロン酸、尿素、グリセロール、脂肪酸、アクアポリンモジュレータ、植物油、キトサン、ソルビトールを含む特定の糖、バター及びロウ等の保湿剤;
コウジ酸(Kojic Acid SL(登録商標)−Quimasso(Sino Lion))、アルブチン(Olevatin(登録商標)−Quimasso(Sino Lion))、パルミトイルプロリンナトリウムとセイヨウスイレンエキスとの混合物(Sepicalm(登録商標)−Seppic)、ウンデシレノイルフェニルアラニン(Sepiwhite(登録商標)−Seppic)、アスペルギルス及びエトキシジグリコールの発酵により得られるカンゾウエキス(Gatuline Whitening(登録商標)−Gattefosse)、オクタデセン二酸(ODA White(登録商標)−Sederma)、α−アルブチン(Alpha−arbutin(登録商標),SACI−CFPA(Pentapharm))、クマコケモモ葉の水性エキス(Melfade−J(登録商標)−SACI−CFPA(Pentapharm))、複合植物混合物Gigawhite(登録商標)(SACI−CFPA(Alpaflor))、ジアセチルボルジン(Lumiskin(登録商標)−Sederma)、ウンシュウミカンエキス(Melaslow(登録商標)−Sederma)、クエン酸が強化されたレモンエキスとキュウリエキスとの混合物(Uninontan(登録商標)U−34−Unipex)、ルメックスオキシデンタリスエキスとビタミンCとの混合物(Tyrostat(登録商標)11−Unipex)、オリゴペプチド(Melanostatin 5(登録商標)−Unipex)、ジパルミチン酸コジク(KAD 15(登録商標)−Quimasso(Sino Lion))、LCWから入手される天然由来の複合体Vegewhite(登録商標)、小麦胚芽エキス(Clariskin(登録商標)II−Silab)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の脱色剤;
サリチル酸、サリチル酸亜鉛、アスコルビン酸、α−ヒドロキシル化された酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸)、ウラジロサトウカエデ、スミノミザクラ、又はタマリンドエキス、尿素、局所用レチノイドKeratoline(登録商標)(Sederma)、枯草菌の発酵により得られるプロテアーゼ、Linked Papain(登録商標)(SACI−CFPA)又はパパイン(パパイヤ果実由来のタンパク質分解酵素)等の角質溶解剤;
シリカ誘導体、ビタミンE、カミツレ、カルシウム、トクサエキス又はsilk lipester等の再構築有効成分(例えば身体表面の成長のための再構築有効成分);
ベンゾカイン、リドカイン、ジブカイン、塩酸プラモキシン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、又はエチドカイン等の麻酔剤;
化学遮断剤(オキシベンゾン、スルイソベンゾン、ジオキシベンゾン、Tinosorb S(登録商標)、アボベンゾン、2−エトキシエチルp−メトキシシンナメート、Uvinul(登録商標)A+、Mexoryl(登録商標)XL、オクチルメトキシシンナメート又はオクチノキサート、サリチル酸オクチル又はオクチサレート、オクチルトリアゾン又はUvinul(登録商標)T150、サリチル酸メチル、メラジメート、エンザカメン、MBBT又はTinosorb(登録商標)M、オクチルシアノフェニルシンナメート又はParsol(登録商標)340、パラ−アミノ安息香酸、エンスリゾール、Parsol(登録商標)SLX又はポリシロキサン−15又はベンジリデンマロン酸ポリシロキサン、Parsol(登録商標)MCX又はエチルヘキシルメトキシシンナメート、サリチル酸トリエタノールアミン又はサリチル酸トロラミン、Mexoryl(登録商標)SX又はテレフタリリデンジカンフルスルホン酸)及び無機遮断剤(酸化亜鉛、二酸化チタン、又はカオリン)等の日焼け止め剤。
【0067】
本発明による水性分散液の調製において、有効成分は、多相ポリマー粒子の内側相又は外側相に含有させるか、もしくは、溶液中で遊離にするかを選択できる。有効成分を含有させるのに望ましい相は、有効成分の化学的性質に応じて選択される。また、有効成分を含有させる相は、該成分が除去されることが望まれるか否かに応じて選択することもできる。
【0068】
したがって、例えば、多相ポリマー粒子の相の一つに有効成分を含有させるためには、該成分は、その相のポリマーを形成するモノマーと同時に導入され得る。
【0069】
特定の実施形態によれば、多相ポリマー粒子の内側相に含有される有効成分はParsol(登録商標)MCX等の日焼け止め剤である。この日焼け止め剤は疎水性であり、その遮断性質を発揮し、UV−B波から皮膚を保護するために、好ましくは皮膚表面に残存する、つまり除去されない、べきである。Parsol(登録商標)MCXは、例えば有効成分の良好な分散と、膜の適用後、皮膚上での良好な持続性を提供するために、粒子の内側相に含有させることができる。そのため、内側相に日焼け止め剤を含む多相ポリマー粒子の分散液が皮膚上に適用された場合、特に防水性で、太陽から皮膚を効果的に保護する膜が得られる。このようにして、最適な日焼け止め効果を使用者に提供しつつ、日焼け止めクリームを繰り返し塗布することが防止され得る。実際、得られた膜を水で洗浄しても、日焼け止めの除去は観察されないことが示されている。
【0070】
別の特定の実施形態によれば、有効成分は多相ポリマー粒子の水性分散液の溶液中、又は該分散液を含む組成物中で遊離となっている。
【0071】
具体的には、皮膚等の表面を保護するよう意図された日焼け止め等の有効成分の含有という文脈においては、該有効成分が溶液中で遊離であるよりも、ポリマー粒子の相の一つに含有されることが好ましい。実際、このようにすることで有効成分は膜中により良く分散され(より均一な分散)、それにより皮膚へより良く密着するため、太陽光線からの優れた保護を皮膚に提供する。
【0072】
生理学的に許容可能な添加剤
本発明による水性分散液は、上述の成分に加えて、香料、香味料、染料、顔料、つや消し剤、レオロジー剤、又は保存料等の1以上の生理学的に許容可能な添加剤を含むことができる。
【0073】
医薬品又は化粧品有効成分と同様に、添加剤の溶解性、及び該添加剤が添加される重合ステージに応じて、該添加剤が、多相ポリマー粒子の内側相又は外側相に含有されるか、本発明による水性分散液の溶液中で遊離とされるかを選択することができる。
【0074】
水性分散液の調製方法
本発明による水性分散液は、具体的には、当業者に周知の技術による乳化重合によって得ることができる。乳化重合において、界面活性剤はモノマーの液滴(ミセルとも呼ばれる)の形成を可能にし、液滴内で重合が起きる。
【0075】
本発明の文脈において、第一ステージで、例えば粒子の内側相を構成する軟質のポリマーPを、好ましくはグループ(II)から選択される架橋剤の存在下で調製し、その後、粒子の外側相を構成する硬質のポリマーPの調製に進むことが可能である。
【0076】
ポリマー粒子が、ポリマーPによって形成される中間相を含む場合、第一ステージで、粒子の内側相を構成するポリマーPを、架橋剤の存在下で調製し、その後第二ステージで、粒子の中間相を構成するポリマーPの調製に進み、粒子の外側相を構成するポリマーPの調製で完結することが可能である。
【0077】
各ステージで、重合反応は、用いられる酸化/還元系の性質に従って、不活性雰囲気下で、25〜150℃の温度で行われることが好ましい。
【0078】
好適な実施形態によれば、モノマーは、約100gの水性分散液の調製のために、10分〜3時間、好ましくは15分〜90分にわたって、純粋な形態、または一部の水と1以上の界面活性剤を含むプレエマルジョンの形態で、水相に加えられる。
【0079】
膜形成組成物
本発明の別の主題は、生理学的に許容可能な媒質中に、本発明による多相ポリマー粒子の水性分散液を含む、膜形成組成物である。
【0080】
生理学的に許容可能な媒質は、本発明の意味において、皮膚、粘膜、創傷、病変、及び/又は皮膚疾患に適合する媒質を意味すると理解される。
【0081】
生理学的に許容可能な媒質は、具体的には、水を含む。
【0082】
好適な実施形態によれば、生理学的に許容可能な媒質は、水以外の溶媒を含まない。
【0083】
本発明による組成物は、多相粒子の水性分散液に加えて、1以上の上に定義された医薬品又は化粧品(もしくは有効成分)を含むことができる。
【0084】
本発明による組成物は、1以上の上に定義された生理学的に許容可能な添加剤も含むことができる。
【0085】
好適な実施形態によれば、本発明による膜形成組成物は、上述の多相ポリマー粒子の水性分散液のみを含む。
【0086】
別の好適な実施形態によれば、本発明の膜形成組成物は以下を含む:
80%〜99.9%の、上述の多相ポリマー粒子の水性分散液
0.1%〜20%の、1以上の医薬品及び/又は1以上の添加剤。
【0087】
好適な実施形態によれば、本発明の膜形成組成物は液状であり、つまり、自重で流動する。
【0088】
本発明による膜形成組成物は、例えば、様々な有効成分及び添加剤を、撹拌しながら本発明の多相ポリマー粒子の分散液に加えるか、又は逆に、本発明の多相ポリマー粒子の分散液を、様々な有効成分及び添加剤を含む水性基材に加えることにより調製できる。
【0089】
上述のとおり、有効成分及び/又は生理学的に許容可能な添加剤は、多相ポリマー粒子の内側相又は外側相に含有されるか、もしくは、本発明による組成物の溶液中で遊離とされることができる。
【0090】

本発明の別の態様による本発明の別の主題は、2以上の異なるTg値を呈する膜であり、該膜が多相ポリマー粒子と界面活性剤を含み、該ポリマー粒子が2以上の異なる相:
20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する軟質のポリマーPによって形成される第1の相と、
60℃超のガラス転移温度(Tg)を有する硬質のポリマーPによって形成される第2の相と、を含み、
前記界面活性剤がアミノ酸誘導体から選択され、ポリマーPは架橋剤の存在下での重合によって形成されていることを特徴とする、膜である。
【0091】
膜は、実験によって測定可能、かつ、具体的には、該膜を構成するポリマー粒子の2つの相のTg値と同じ桁数である2つの異なるTg値を呈する。しかしながら、粒子の相の一つを調製する際に特定の医薬品を導入することは、医薬品が導入された相のTg値の変化につながり得る。この場合、実験によって測定される膜のTg値の1つと、該医薬品が存在しない場合に測定されたTg値との間に差が観察され得る。
【0092】
膜のガラス転移温度は、本発明の意味において、以下に記載する方法によってDMA(Dynamic Mechanical Analysis(動的機械分析)、もしくはDMTA(Dynamic Mechanical Thermal Analysis、動機械的熱分析)とも呼ばれる)で、1Hzで測定された、予熱されない(もしくはアニールされない)膜のガラス転移温度を意味すると理解される。
【0093】
動的機械分析(DMA)の測定は、膜から切り取られた、寸法10mm×25mmの矩形の試料をまず用意し、DMA2980分析器(TA Instruments製)を用いて、0.01Nのプレテンションを付加することによる張力下での膜配置において、1Hzで運転することにより行われる。Tg値は、散逸率tan(delta)が最大を通過する際の温度である。これらの値は、予熱されない膜をまず3℃/分で加熱する際に測定される。
【0094】
予熱されない膜(もしくはアニールされない膜)は、本発明の意味において、40℃以上に加熱されていない膜を意味すると理解される。
【0095】
膜は、具体的には、本発明による膜形成組成物を直接表面に適用し、その後水分を蒸発させることにより得ることができる。
【0096】
このように、組成物は、具体的には、上記表面に1層で適用されることができる。膜形成組成物の10〜300μmの層が形成されることが好ましい。
【0097】
組成物は、スプレー、ペン、スパチュラ、特にはハケ等の、当業者に周知のすべての手段で適用されることができる。
【0098】
予期せぬ事に、本発明の水性分散液によって得られる膜が、特に早い乾燥時間、通常は2分未満、を呈することを出願人は見出した。この特性は、皮膚等、その場での膜形成に特に適している。
【0099】
出願人は、水性分散液中の水の分量を減らした場合に更に短い乾燥時間が得られることを観察した。
【0100】
膜は、高い耐水性も呈する。
【0101】
好適な実施形態によれば、乾燥後の膜は、以下に記載の方法で確認される、高い機械的特性を呈する:
本発明の膜形成組成物の、テフロン(登録商標)モールド内の高さ約2ミリのカラムを蒸発させることで、約0.7mmの厚さを有する膜が得られる。厚さ約0.7mmのシートを中空のパンチで穿孔することで、ISO 527−3標準に準拠した、DIN 53504S3A形状のダンベル(作業長さ12mm、幅2mm)が得られる。機械的測定は、500Nの力センサーを備えたInstron引張試験機を用いて、10mm/分の引張速度で行われる。
【0102】
得られる結果は、本発明の膜が、150%超となり得る良好な破断歪、また、最大で5MPaとなり得る良好な破断強度を有し得ることを示す。さらに、本発明の膜は、およそ50MPaの弾性係数と、およそ3MPaの降伏点を有する広い塑性領域という弾性条件を呈する。
【0103】
最後に、膜は、それが形成される支持体に対する非常に高い粘着性を呈しながらも、接触に対しては粘着質な面を呈さない。膜はまた、高い耐摩擦性を呈する。
【0104】
膜の使用
本発明の別の態様によれば、膜は、保護すべき表面に適用することができる。したがって、本発明の別の主題は上述した膜を、皮膚、粘膜、創傷、病変、及び/又は皮膚疾患の表面を保護するために使用することである。このため本発明の膜は、皮膚科及び化粧品の分野に用途を有する。膜を皮膚の付属器に適用することも想定されてよい。
【0105】
本発明による膜は、あらゆる種類の材料、例えば皮革、プラスチック、石膏、板又は紙、もしくはコンクリートあるいは木材等の複合材料、のコーティングの分野にも用途を有する。
【0106】
好適な実施形態によれば、上述の膜形成組成物は、保護すべき表面に適用することができる。約2分後、水分が完全に蒸発すると、処理された表面は柔軟な膜で覆われる。本発明は、以下に記載する非限定的な例においてより詳細に説明される。
【実施例】
【0107】
実施例において、以下の略語が用いられる。
MMA:メチルメタクリレート
BuA:n−ブチルアクリレート
BDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
DAM:ジアリルマレエート
SB:重亜硫酸ナトリウム
KPS:過硫酸カリウム
SFS:ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
【0108】
調合液A:
0.49gのNaHPOが250mlの容器内に投入され、150gの水溶液を得るように脱塩水が加えられる。
【0109】
調合液B:
開始剤SB(重亜硫酸ナトリウム)の2.8重量%水溶液。
【0110】
調合液C(界面活性剤:N−ラウロイルサルコシンナトリウム):
54.2gのBuA(423mmol)、23.2gのMMA(232mmol)、0.8gの架橋剤BDA(4mmol)、及び17gのN−ラウロイルサルコシンナトリウムの10重量%水溶液(Schill+Seilacher GmbH、Perlastan L30)が、磁気撹拌機(長さ50mm)を備えた平底ガラス容器(内径55mm)に導入される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0111】
調合液D(界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム):
54.2gのBuA(423mmol)、23.2gのMMA(232mmol)、0.8gの架橋剤BDA(4mmol)、及び17gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS,Aldrich)の10重量%水溶液が、磁気撹拌機(長さ50mm)を備えた平底ガラス容器(内径55mm)に導入される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0112】
調合液E(日焼け止め剤:Parsol(登録商標)MCX):
54.2gのBuA(423mmol)、23.2gのMMA(232mmol)、0.8gの架橋剤BDA(4mmol)、3.96gのエチルヘキシルメトキシシンナメート(Parsol(登録商標)MCX)、及び17gのN−ラウロイルサルコシンナトリウム(Schill+Seilacher GmbH、Perlastan L30)の10重量%水溶液が、磁気撹拌機(長さ50mm)を備えた平底ガラス容器(内径55mm)に導入され、アルミ箔で光から保護される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0113】
調合液F:
1.36gのBuA(10.61mmol)、3.37gのMMA(33.66mmol)、0.3gの架橋剤DAM(1.53mmol)、及び0.49gの調合液B(すなわち0.136mmolの開始剤SB)が、磁気撹拌機(長さ20mm)を備えた平底ガラス容器(内径30mm)に導入される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0114】
調合液G:
11.71gのMMA(117mmol)及び3.82gの水が、磁気撹拌機(長さ20mm)を備えた平底ガラス容器(内径30mm)に導入される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0115】
調合液H(日焼け止め剤:Parsol(登録商標)MCX):
11.71gのMMA(117mmol)、3.61gのParsol(登録商標)MCX、及び3.82gの水が、磁気撹拌機(長さ20mm)を備えた平底ガラス容器(内径30mm)に導入され、アルミ箔で光から保護される。媒質は600rpmで、乳化するまで、つまり5分以上、撹拌される。
【0116】
実施例1:(比較例) アミノ酸由来の界面活性剤による単相ポリマー粒子の水性分散液の調製
115gの調合液A(すなわち2.65mmolのNaHPO)が、錨状のガラス撹拌機を備えた内径100mmの丸底反応容器に導入され、あらかじめ窒素で脱気され、窒素下で調合液Cが導入される。
【0117】
高さ調節が可能な外部の油浴を用いて、反応温度は70℃に調節され、混合物は窒素下で260rpmで撹拌される。追加が完了してから10分後、2.62gの調合液B(すなわち、モルで0.73mmolの開始剤)が、5分間かけて一定の速度で混合物に滴下される。更に10分間の撹拌の後、7.7gの脱塩水中で溶液とされた0.34gのKPS(1.25mmol)が、蠕動ポンプを経由して、2分間かけて混合物に追加される。1時間後、反応混合物は撹拌を続けたまま冷却される。得られる乳化液(乳化液1と呼ぶ)は、温度が35℃未満になったらすぐに容器に回収される。
【0118】
実施例2:アミノ酸由来の界面活性剤による本発明の多相ポリマー粒子の水性分散液の調製
150gの乳化液1が、上述の反応容器内で、上述のように撹拌され、窒素下で70℃に置かれる。その後、調合液Fが蠕動ポンプによって2分間かけて追加される。その後、0.7gの脱塩水に溶解された0.015gのKPS(0.055mmol)が、蠕動ポンプによって10分間かけて導入される。撹拌は70℃で60分間維持され、その後2.20gのSFSの1.74重量%水溶液(すなわち0.25mmolのSFS)が、蠕動ポンプを用いて1分間かけて追加され、それと同時に、2つの蠕動ポンプを用いて、調合液Gと、10gの過硫酸アンモニウム0.5重量%水溶液(すなわち0.22mmolのAPS)とが15分間かけて追加される。追加の後、反応容器の温度は30分間、70℃に維持される。その後、残存する反応性物質は、0.46gの過硫酸アンモニウム水溶液(15.61重量%)と0.32gのSB水溶液(2.8重量%)との混合物を加える事で不活化される。反応は70℃で30分間維持される。その後撹拌は維持されるが、油浴を下降することで加熱は中止される。乳化液(乳化液2と呼ぶ)は、温度が35℃未満になったらすぐに回収される。
【0119】
実施例3:(比較例) 界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムによる多相ポリマー粒子の水性分散液の調製
実施例1の手順に従うが、調合液Cに代えて調合液Dを用いる。乳化液3が得られ、実施例2の手順に従って乳化液4に変換される。
【0120】
実施例4:実施例1〜3の乳化液の比較
粒径の比較
ALV/LSE 5004マルチタウ相関器と波長632.8nmのHe−Neレーザーを備えたALV/CGS3ゴニオメーターを用いて、DLS(Dynamic Light Scattering、動的光散乱)による測定が行われた。測定は直径10mmで、60°〜120°までの7つの散乱角にわたって10°の増分で、試料に対して行われた。系は23℃に維持された。各試料は以下のように調製された:0.22μmの気孔率を有するシリンジフィルターで2回濾過された20mlのMilli−Q(登録商標)水がガラス製フラスコに投入される。マイクロピペットを用いて、ここに5μlの乳化液が投入される。その後それぞれの角度値に対して100秒のシーケンスで、これらの試料は順に分析され、収集されたデータはその後キュムラント分析で処理される。
【0121】
乳化液1において、粒子は球形であり、DLSによる測定で約36〜38nmの平均径を有する。
【0122】
乳化液2は6〜7のpHを有し、乾物率は約40%である。分散されたポリマー粒子は球形で、DLSによる測定で約38〜42nmの平均径を有する。粒子の、アクリル酸ブチルとメチルメタクリレートとの混合物で構成される軟質の相は、粒子の総重量の約80%を占め、メチルメタクリレートで構成される硬質の相は、粒子の総重量の約20%を占める。
【0123】
乳化液4において、粒子は球形であり、DLSによる測定で約47〜49nmの平均径を有する。
【0124】
乳化液1(比較例)、乳化液2(本発明)、及び乳化液4(比較例)により得られる厚膜の機械的特性の比較
乳化液2の、テフロン(登録商標)モールド内の高さ約2ミリのカラムを蒸発させることで、約0.7mmの厚みを有する膜が得られる。厚さ約0.7mmのシートを中空のパンチで穿孔することで、ISO 527−3標準に準拠した、DIN 53504S3A形状のダンベル(作業長さ12mm、幅2mm)が得られる。
【0125】
機械的測定は、500Nの力センサーを備えたInstron引張試験機を用いて、10mm/分の引張速度で行われ、以下の結果が得られた:
動的機械分析(DMA)の測定は、同じ膜から切り取られた、寸法10mm×25mmの矩形の試料をまず用意し、DMA2980分析器(TA Instruments製)を用いて、0.01Nのプレテンションを付加することによる張力下での膜配置において、1Hzで運転することにより行われる。Tg値は、散逸率tan(delta)が最大を通過する際の温度である。これらの値は、予熱されない膜をまず3℃/分で加熱する際に測定される。
【0126】
乳化液1から得られた膜は以下の特性を呈する:
破断応力:0.25MPa
Tg=−5℃
乳化液2から得られた膜は以下の特性を呈する:
延伸弾性係数:48MPa
降伏点:2.6MPa
破断応力:3.7MPa
公称破断歪:250%
ビデオ伸び計による歪の測定によって、破断歪が150%よりも高いことが示された。
Tg=−3℃、Tg=70℃
乳化液4から得られた膜は以下の特性を呈する:
破断応力:0.85MPa。
【0127】
乳化液1から得られた膜に行われた機械的測定は、およそ0.25MPaという、本発明の乳化液2から得られた膜よりも低い応力で膜が破断することを示す。更に、乳化液1から得られた膜では、さらに低い適用応力での塑性歪が見られる。
【0128】
この実施例は、単相粒子(乳化液1)から形成された膜は、本発明による多相構造の粒子(乳化液2)から得られた膜よりも、機械的特性が劣ることを示す。
【0129】
乳化液4から得られた膜で行われた機械的測定は、およそ0.85MPaという、本発明の乳化液2から得られた膜よりも低い応力で膜が破断することを示す。更に、乳化液4から得られた膜では、さらに低い適用応力での塑性歪が見られる。
【0130】
この実施例は、多相粒子から形成された膜は、従来技術におけるSDSに代えて、N−ラウロイルサルコシンナトリウム等のアミノ酸誘導体が界面活性剤として用いられた場合に、優れた機械的特性を有することを更に示す。
【0131】
実施例5:重合後の有効成分の含有(溶液中で遊離)
8gの乳化液2(実施例2)の試料が、40℃で、14000rpm(r=0.08m)すなわち17500gの半径方向加速度で1時間遠心分離される。ペレットは保持され、上澄み液は除去され、16.11mlのエタノールと9.7マイクロリットルのParsol(登録商標)MCX(エチルヘキシルメトキシシンナメート)の0.07Mエタノール溶液、すなわち初期濃度43.3マイクロモル/リットル、で置換される。光を遮断して24時間静置後、乳化液は同条件下で再度遠心分離される。紫外分光法による上澄み液の分析は、308nmにおいて、0.325の吸光度を示す。同じ波長で、2.78マイクロモル/リットル及び4.48マイクロモル/リットルのParsol(登録商標)MCXのエタノール溶液である標準溶液は、それぞれ0.317及び0.345の吸光度を示す。
【0132】
実施例6:ポリマー粒子の内側相における有効成分の含有
調合液Cに代えて調合液Eを用い、また、アルミ箔によって反応容器とフラスコを光から保護する以外は、実施例1の手順に従う。得られる乳化液はその後、アルミ箔によって反応容器とフラスコを光から保護した状態で、実施例2の手順によって変換される。
【0133】
得られた乳化液の粒子の、光散乱法(DLS)で測定した寸法は、約36〜38nmである。
【0134】
実施例7:ポリマー粒子の外側相における有効成分の含有
調合液Gに代えて調合液Hを用い、また、アルミ箔によって反応容器とフラスコを光から保護する以外は、実施例2の手順に従う。
【0135】
光散乱法(DLS)で測定した粒子の最終寸法は、約40〜44nmである。
【0136】
実施例4と同一条件下、ただし光を遮断して、この乳化液から膜が形成される。
【0137】
実施例4と同様に測定したTg値は以下のとおり:
Tg=−8℃、Tg=55℃
実施例4と同様に測定した機械的特性は以下のような結果となる:
延伸弾性係数:10MPa
降伏点:1MPa
破断応力:2.1MPa
公称破断歪:250%。
【0138】
実施例8:実施例2および7の乳化液から形成された膜の透過率の比較測定
Jasco V−530分光計を用い、膜を可能な限り検出器の近くに配置して、530nmの可視領域と308nmのUVB領域において実施例7で得られた膜の透過率が測定される。実施例2に従って形成された日焼け止め剤を含まない対照の膜にも同じ測定が行われる。
【0139】
以下の結果が得られる。
【表1】
【0140】
実施例9:本発明の膜形成組成物の適用
3cmの清潔で乾燥した皮膚に、ハケを用いて実施例2の膜形成組成物が150μmの1層で適用される。
【0141】
2分後、水分が完全に蒸発され、柔軟で、数時間にわたって皮膚に密着し、粘着質でなく、水、特に複数回の手を洗う操作、に対して耐性を有する、膜によって皮膚は覆われる。