(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294334
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】内燃機関のためのピストンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F02F 3/18 20060101AFI20180305BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20180305BHJP
F16J 1/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
F02F3/18
F02F3/00 301B
F16J1/00
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-540840(P2015-540840)
(86)(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公表番号】特表2015-535047(P2015-535047A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】US2013068206
(87)【国際公開番号】WO2014071274
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年8月25日
(31)【優先権主張番号】61/721,682
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライントン,ワラン・ボイド
(72)【発明者】
【氏名】アゼベド,ミゲル
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−127300(JP,A)
【文献】
米国特許第02155383(US,A)
【文献】
実開昭61−187944(JP,U)
【文献】
特表2010−529357(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0087153(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/151620(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0307958(US,A1)
【文献】
特表2015−508140(JP,A)
【文献】
特表2013−545927(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0312695(US,A1)
【文献】
特開昭52−092034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/18
F02F 3/00
F16J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのピストンであって、
上側クラウンと前記上側クラウンの少なくとも一部に沿って延在する冷却空洞とを含む本体部分を含み、前記冷却空洞は封止され、前記ピストンはさらに、
前記冷却空洞に配置される金属含有組成物を含み、
前記金属含有組成物は、摂氏181度未満の溶融温度を有し、かつ、摂氏181度以上で液体であるベース材料と、前記ベース材料の熱伝導率より大きい熱伝導率を有する複数の金属粒子とを含む、内燃機関のためのピストン。
【請求項2】
前記金属粒子は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ベリリウム(Be)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選択される1つ以上の元素からなる、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記金属粒子は摂氏181度の温度で固体である、請求項1に記載のピストン。
【請求項4】
前記金属含有組成物の前記ベース材料はオイルからなる、請求項1に記載のピストン。
【請求項5】
前記オイルはシリコーンオイルである、請求項4に記載のピストン。
【請求項6】
前記金属粒子は銅からなる、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記金属含有組成物の前記ベース材料は1つ以上のアルカリ金属からなる、請求項1に記載のピストン。
【請求項8】
前記ベース材料はアルカリ金属の混合物からなる、請求項7に記載のピストン。
【請求項9】
前記ベース材料はナトリウムおよびカリウムの混合物からなり、前記金属粒子は銅からなる、請求項8に記載のピストン。
【請求項10】
前記金属含有組成物は、前記金属含有組成物の総体積に基づいて、前記ベース材料を50体積%〜99体積%の量で含み、前記金属粒子を1体積%〜50体積%の量で含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項11】
前記金属粒子は200W/(m・K)より大きい熱伝導率を有する、請求項1に記載のピストン。
【請求項12】
前記金属粒子は、各々149ミクロン未満である異なる粒子サイズの混合物を含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項13】
前記金属含有組成物は、前記冷却空洞の総体積に基づいて、前記冷却空洞の20体積%〜50体積%を満たす、請求項1に記載のピストン。
【請求項14】
前記本体部分は下側クラウンを含み、前記上側クラウンは第1の外側リブおよび第1の内側リブを含み、前記下側クラウンは第2の外側リブおよび第2の内側リブを含み、前記リブの各々は、中心軸のまわりを周方向に延在し、前記第2の内側リブは前記第1の内側リブに接続され、前記第2の外側リブは前記第1の外側リブに接続されて、前記内側リブと前記外側リブとの間において前記中心軸のまわりを周方向に延在する前記冷却空洞を呈する、請求項1に記載のピストン。
【請求項15】
前記本体部分は鋼材料から形成され、
前記本体部分は、中心軸のまわりを周方向に、および前記中心軸に沿って上側端部から下側端部に長手方向に延在し、
前記上側クラウンは、外側表面および反対側を向く内側表面を呈し、前記冷却空洞は、前記上側クラウンの前記内側表面の少なくとも一部に沿って延在し、
前記上側クラウンの前記外側表面は前記上側端部でボウル形状の構成を呈し、
前記上側クラウンは第1の外側リブおよび第1の内側リブを含み、前記第1の外側リブおよび前記第1の内側リブは、各々、前記中心軸のまわりを周方向に、および前記上側端部から前記下側端部に向かって長手方向に延在し、前記第1の内側リブは前記第1の外側リブと前記中心軸との間に配置され、
前記第1の外側リブの前記外側表面は複数のリング溝を呈し、前記複数のリング溝は、前記中心軸の方を向かず、ピストンリングを保持するために前記中心軸のまわりを周方向に延在し、
前記本体部分は、前記上側クラウンから前記下側端部まで延在する下側クラウンを含み、
前記下側クラウンは外側表面および反対側を向く内側表面を呈し、前記冷却空洞は前記下側クラウンの前記内側表面の少なくとも一部に沿って延在し、
前記下側クラウンは、前記第1の外側リブに接続される第2の外側リブ、および前記第1の内側リブに接続される第2の内側リブを含み、前記第2のリブは、前記上側端部と前記下側端部との間で前記中心軸のまわりを周方向に延在して、前記封止された冷却空洞を、前記内側リブと前記外側リブとの間において、前記上側クラウンの前記内側表面の一部に沿って、前記ボウル形状の構成と対向して、形成し、
前記第2のリブは摩擦溶接によって前記第1のリブに接続され、
前記下側クラウンの前記外側表面は少なくとも1つのリング溝を呈し、
前記上側クラウンおよび前記下側クラウンの一方は、前記冷却空洞内に延在し、前記金属含有組成物が前記冷却空洞内に注がれることを可能にするための開口部を含み、
前記上側クラウンの前記内側表面および前記内側リブは冷却チャンバをそれらの間に呈し、前記冷却チャンバは、前記上側クラウンの前記内側表面の一部に沿って径方向に、および前記中心軸に沿って長手方向に延在し、シリンダボアに露出されるために前記下側端部に向かって開いており、
前記本体部分は、ピンボスの対を含み、前記ピンボスの対は、前記下側クラウンから懸架し、前記中心軸に対して垂直に延在する横方向に離間されたピンボアの対を含み、
前記本体部分は、前記下側クラウンから懸架するスカートを含み、前記スカートは、前記ピンボスに対して横方向に結合され、前記ピンボスを互いから離間し、
前記スカートは、前記シリンダボアとの協働のために凸状である外側表面を含み、
前記金属含有組成物は、W/m・Kで測定して、冷却オイルより5〜1000倍大きい範囲の熱伝導率を有し、
前記金属含有組成物の前記金属粒子は181℃の温度で固体状であり、
前記金属含有組成物は、前記冷却空洞の総体積に基づいて、前記冷却空洞の20体積%〜50体積%を満たし、
さらに、前記開口部内にねじ筋に沿ってねじ込まれ前記冷却空洞を封止するプラグを含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項16】
前記金属含有組成物はコロイド組成物であり、
前記金属含有組成物は、前記金属含有組成物の総体積に基づいて、前記ベース材料を50体積%〜99体積%の量で含み、前記金属粒子を1体積%〜50体積%の量で含み、
前記ベース材料はオイルからなり、
前記金属粒子は、200W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、
前記金属粒子は、149ミクロン未満の粒子サイズを有し、
前記金属粒子は少なくとも2つの異なる粒子サイズを含み、
前記金属粒子は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ベリリウム(Be)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選択される1つ以上の元素からなる、請求項15に記載のピストン。
【請求項17】
前記金属含有組成物は、前記金属含有組成物の総体積に基づいて、前記ベース材料を50体積%〜99体積%の量で含み、前記金属粒子を1体積%〜50体積%の量で含み、
前記ベース材料は、85〜141W/(m・K)の熱伝導率および摂氏63〜181度の溶融温度を有し、
前記ベース材料は1つ以上のアルカリ金属からなり、前記1つ以上のアルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、およびウンウンエンニウム(Uue)を含み、
前記金属粒子は、摂氏181度より高い溶融温度および200W/(m・K)より大きい熱伝導率を有し、
前記金属粒子は、149ミクロン未満の粒子サイズを有し、
前記金属粒子は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ベリリウム(Be)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選択される1つ以上の元素からなる、請求項15に記載のピストン。
【請求項18】
内燃機関のためのピストンを製造する方法であって、
ピストンの上側クラウンの少なくとも一部に沿って延在する冷却空洞に金属含有組成物を供給するステップを含み、前記金属含有組成物は、摂氏181度未満の溶融温度を有し、かつ、摂氏181度以上で液体であるベース材料と、前記ベース材料の熱伝導率より大きい熱伝導率を有するするベース材料と、前記ベース材料の熱伝導率より大きい熱伝導率を有する複数の金属粒子とを含み、前記方法はさらに、
前記冷却空洞を封止するステップを含む、内燃機関のためのピストンを製造する方法。
【請求項19】
前記ベース材料および前記金属粒子は前記供給ステップ中において固体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記供給ステップ中において、前記ベース材料は液体であり、前記金属粒子は固体である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2012年11月2日に提出された米国仮特許出願連続番号第61/721,682号の恩恵を主張するものであり、その全体をここに引用により援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は、一般に、内燃機関のためのピストンおよびそれを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
高負荷ディーゼルピストンのような、内燃機関において用いられるピストンは、動作中において、特に、ピストンの上側クラウンに沿って、非常に高い温度に晒される。したがって、温度を適度にするために、ピストンは、典型的には、冷却空洞が上側クラウンの下にある状態で設計され、冷却オイルは、ピストンがエンジンのシリンダボアに沿って往復運動する中、冷却空洞内に噴霧される。冷却オイルは、上側クラウンの内側表面に沿って流れ、熱を上側クラウンから散逸させる。しかしながら、動作中においてピストン温度を制御するために、高いオイルの流量を常に維持しなければならない。加えて、冷却オイルは、内燃機関の高温のため、時間とともに劣化し、冷却オイルを定期的に交換してエンジンの寿命を維持しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
この発明の1つの局面は、内燃機関のためのピストンを提供する。ピストンは、金属材料から形成される本体部分を含む。本体部分は、上側クラウンと、上側クラウンの少なくとも一部に沿って延在する封止された冷却空洞とを含む。金属含有組成物が、封止された冷却空洞に配置される。金属含有組成物は、181℃未満の溶融温度を有するベース材料と、ベース材料の熱伝導率より高い熱伝導率を有する複数の金属粒子とを含む。
【0005】
この発明の別の局面は、内燃機関のためのピストンを製造する方法を提供する。この方法は、金属含有組成物を冷却空洞に供給するステップと、冷却空洞を封止するステップとを含む。
【0006】
高温動作中においては、金属含有組成物は、封止された冷却空洞中を流れる。典型的には、ベース材料は液体状であり、固体の金属粒子を上側クラウンの内側表面に沿って担持することにより、熱をそれから除去する。金属含有組成物は、エンジンの寿命中において、高温のためには劣化せず、冷却空洞のコーキングは生じない。金属含有組成物は冷媒として機能し、金属含有組成物から得られる、より高い熱伝達率は、酸化およびその結果の腐食を排除する。加えて、金属含有組成物は、熱流を再分布させ、したがって、上側クラウンの外側表面に沿ってカーボンデポジットを低減し得、さらに、上側クラウンの外側表面に沿って用いられる任意の潤滑油の劣化も低減し得る。金属含有組成物によって与えられる利点は、さらに、エンジンの運転間隔間の時間も延長し得る。
【0007】
上記に加えて、そのような冷却方法は、特定の要求に対して調整され得、さらには、ピストンの頂部に沿って一様なより高い温度を意図的に誘導しさえし得る。これは、エンジン熱力学に好ましく影響し、他の機器による使用のために排気においてさらなる熱を与えるであろう。
【0008】
図面の簡単な説明
この発明の他の利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて考慮して参照することにより、よりよく理解され、容易に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の1つの例示的実施例に従うピストンの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施可能な実施例の説明
図を参照して、複数の図にわたる同様の参照符号は対応する部品を示し、内燃機関のための例示的なピストン20が、概して、
図1に示される。ピストン20は、高い熱伝導率を有する金属含有組成物24を部分的に充填された、封止された冷却空洞22を含む。金属含有組成物24は、典型的には、銅またはアルミニウム粒子がシリコーンオイルまたは他の等しく高温の安定した液相に分散された懸濁物を含む。別の実施例では、金属含有組成物24は、銅の粒子が1つ以上のアルカリ金属中に分散されるような、金属の混合物を含む。
【0011】
図1の例示的なピストン20は高負荷ディーゼルピストンであり、それは、内燃機関のシリンダボアに配置される。しかしながら、任意の他のタイプのピストンが、金属含有組成物24が冷却空洞22にある状態で、用いられ得る。
図1に示されるように、ピストン20は、中心軸Aの周りを周方向に、かつ中心軸Aに沿って長手方向に上側端部28から下側端部30に延在する本体部分26を含む。本体部分26は、鋼、アルミニウム、またはそれらの合金などのような金属材料から形成される。例示的実施例では、本体部分26は、上側クラウン32、下側クラウン34、ピンボス36の対、およびスカート38を含む。
【0012】
ピストン20の上側クラウン32は、外側表面40と、反対側を向く内側表面42とを含む。上側クラウン32の外側表面40はボウル形状の構成を上側端部28において呈し、それは、動作中、シリンダボアにおいて高温の燃焼ガスに直接晒される。冷却空洞22は、ボウル形状の構成に対向して、上側クラウン32の内側表面42の少なくとも一部に沿って延在し、したがって、その中に含まれる金属含有組成物24は、動作中において、熱を、高温のボウル形状構成から散逸させ得る。例示的な実施例では、封止された冷却空洞22は、上側クラウン32のボウルリム70の下において、中心軸Aの周りを周方向に延在する。
【0013】
図1に示されるように、上側クラウン32は、第1の外側リブ44および第1の内側リブ46を含み、それらは、各々、中心軸Aの周りを周方向に、および長手方向に上側端部28から下側端部30に向かって延在している。第1のリブ44、46は互いから離間され、第1の内側リブ46は、第1の外側リブ44と中心軸Aとの間に配置される。第1の外側リブ44の外側表面40は、複数のリング溝52を呈し、複数のリング溝52は、中心軸Aに面さず、ピストンリング54を保持するために、中心軸Aの周りを周方向に延在している。第1の内側リブ46は、上側クラウン32の外側表面40から冷却空洞22に延在する開口部56を含み、冷却空洞22を封止する前に金属含有組成物24が冷却空洞22内に供給されることを可能にする。しかしながら、別の好ましい実施例では、開口部56は、下側クラウン34の第2の内側リブ50において、ピストンの非スラスト面に沿って形成される。プラグ58は、典型的には、ねじ筋に沿って開口部56にねじ込まれ、次いで、高温エポキシ組成物などのような接着剤で封止される。しかしながら、開口部56は、代替的に、プラグ58を開口部56にタングステン不活性ガス(TIG)溶接、レーザ溶接、または蝋接することなどのような、他の方法を用いて封止され得る。他の封止技術は、プラグ58を開口部56内にプレス嵌めすることを含み、それは、ねじ筋または溶接技術と比較して、製造時間をより短くする。
【0014】
ピストン20の本体部分26は、さらに、上側クラウン32から下側端部30に向かって延在する下側クラウン34を含む。下側クラウン34は、ピストンリング54を保持するための少なくとも1つのリング溝52を含む外側表面40を呈する。下側クラウン34は、さらに、外側表面40の反対側を向く内側表面42を含む。下側クラウン34は、上側クラウン32の第1の外側リブ44と整列し、それに接続される第2の外側リブ48と、上側クラウン32の第1の内側リブ46と整列しそれに接続される第2の内側リブ50とを含む。第2のリブ48、50は、上側端部28と下側端部30との間において、中心軸Aの周りを周方向に延在し、下側クラウン34の内側表面42によって互いから離間される。したがって、
図1に示されるように、上側および下側クラウン32、34の内側リブ46、50および外側リブ44、48は、それらの間に、封止された冷却空洞22を形成する。第2のリブ48、50は、典型的には、摩擦溶接60によって第1のリブ44、46に接続されるが、他のタイプの溶接または接続によっても接続され得る。
【0015】
図1に示されるように、上側クラウン32の内側表面42と第1の内側リブ46とは、それらの間に、冷却チャンバ62を呈する。冷却チャンバ62は、上側クラウン32の内側表面42の一部に沿って径方向に、かつ中心軸Aに沿って長手方向に延在し、下側端部30に向かって開いている。動作中、冷却チャンバ62はシリンダボアに露出され、オイルを冷却チャンバ62内に噴霧してピストン20の温度を低減してもよい。
【0016】
ピストン20の本体部分26は、さらに、ピンボス36の対を含み、ピンボス36の対は、下側クラウン34から懸架し、中心軸Aに対して垂直に延在する横方向に離間されたピンボア64の対を呈する。本体部分26は、さらに、下側クラウン34から懸架するスカート38を含む。スカート38は、ピンボス36に対して横方向に結合され、ピンボス36を互いから離間する。スカート38の外側表面40は、シリンダボアとの協働のため、凸状である。
図1に示されるピストンは単一ピース構成であるが、ピストン20は、代替的に、他の設計を含み得る。
【0017】
上に示唆されるように、金属含有組成物24は、動作中に、内燃機関において、高温の上側クラウン32から熱を散逸させるために、高い熱伝導率を有する。金属含有組成物24の熱伝導率は、ワット毎メートル・ケルビン(W/m・K)で測定して、標準的な冷却オイルの熱伝導率の5〜1000倍より大きい範囲にある。一実施例では、金属含有組成物24は少なくとも100W/m・Kの熱伝導率を有する。金属含有組成物24は、典型的には、冷却空洞22の総体積に基づいて、冷却空洞22の20体積%〜50体積%を満たす。1つの例示的実施例では、金属含有組成物24は、冷却空洞22の20体積%〜30体積%を満たす。したがって、内燃機関の動作中において、ピストン20がシリンダボアにおいて往復運動する中、金属含有組成物24は、冷却空洞22中を流れ、上側および下側クラウン32、34から熱を散逸させる。
【0018】
金属含有組成物24は、ベース材料68中に分散された複数の金属粒子66を含む。ベース材料68は、典型的には、金属含有組成物24の総体積に基づいて、50体積%〜99体積%の量で存在する。一実施例では、ベース材料68は、金属含有組成物24の総体積に基づいて、70体積%〜90体積%の量で存在する。他の実施例では、ベース材料68は、金属含有組成物24の総体積に基づいて、75体積%の量で存在する。ベース材料68は、典型的には、85〜141W/(m・K)の熱伝導率および181℃未満の溶融温度を有し、したがって、181℃以上の温度では液体である。
【0019】
上に示唆されるように、ベース材料68は、典型的には、シリコーンオイルなどのようなオイルからなる。ベース材料68は、代替的には、高温において等しく安定した他の液相を含み得る。別の実施例では、ベース材料68は1つ以上のアルカリ金属を含む。アルカリ金属は、周期表の1族に見られる元素であり、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、およびウンウンエンニウム(Uue)を含む。アルカリ金属は、個々の元素として、またはNaKのような合金として与えられ得る。アルカリ金属は、典型的には、約85〜141W/(m・K)の熱伝導率を有し、それは、潤滑油の熱伝導率よりもはるかに高い。比較のため、潤滑油は0.15〜0.20W/(m・K)付近の熱伝導率を有する。アルカリ金属の高い熱伝導率は、アルカリ金属が熱を上側および下側クラウン32、34から効果的に伝達して取除くことを可能にする。アルカリ金属はさらに、典型的には、約63〜181℃の溶融温度も有する。したがって、アルカリ金属は、室温においては固体として与えられ、内燃機関の動作中においてそれらの溶融温度より高い温度に晒されると液体に変換される。たとえば、ナトリウムは、約141W/(m・K)の熱伝導率および約98℃の溶融温度を有し;カルシウムは、約102W/(m・K)の熱伝導率および約63℃の溶融温度を有し;リチウムは、約85W/(m・K)の熱伝導率および約181℃の溶融温度を有する。アルカリ金属は反応性が高い場合があり、したがって、外側冷却空洞22はしっかりと封止されるべきである。
【0020】
金属含有組成物24の金属粒子66は、ベース材料68中に分散される。金属粒子66は、ベース材料68の熱伝導率および溶融温度よりも高い熱伝導率および溶融温度を有する。典型的には、金属粒子66は、181℃より高い溶融温度、および200W/(m・K)より高い熱伝導率を有する。したがって、金属粒子66は、内燃機関の動作中において高温に晒されても、固体のままであり、液体のベース材料68中に懸濁されたままである。したがって、固体の金属粒子66は例外的な熱吸収および散逸を与え得、一方、液体のベース材料68は優れた熱接触を与える。金属粒子66は、典型的には、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ベリリウム(Be)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選択される1つ以上の元素からなる。上に示唆されるように、1つの例示的実施例では、金属含有組成物24は、シリコーンオイルに懸濁される銅粒子を含む。代替的に、金属含有組成物24は、アルカリ金属の配合物に懸濁された銅粒子を含む。
【0021】
金属含有組成物24は、金属粒子66を、金属含有組成物24の総体積に基づいて、1体積%〜50体積%の量で含む。一実施例では、金属粒子66は、金属含有組成物24の総体積に基づいて、10体積%〜30体積%の量で存在する。さらに別の実施例では、金属粒子66は、金属含有組成物24の総体積に基づいて、25体積%の量で存在する。
【0022】
金属粒子66は、典型的には、149ミクロン未満〜25ミクロン未満(−100〜−550メッシュ)、または44ミクロン(−325メッシュ)未満の粒子サイズを有する。金属粒子のすべてが同じサイズの粒子を有し得るが、典型的には、金属粒子は、ある粒子サイズ分布を有する。たとえば、50体積%の金属粒子は、−100メッシュ〜+400メッシュの粒子サイズを有し得、50体積%の金属粒子は−400メッシュの粒子サイズを有し得る。金属粒子66は、さらに、さまざまな異なる構造を有し得る。たとえば、金属粒子66は、水霧化またはガス霧化によって形成された粒子のような、霧化された粒子であり得る。代替的に、金属粒子66は、撚線、スポンジ、または発泡の形態であり得る。金属粒子66は、さらに、ブレーキ部品のような他の物体の製造中に廃物流から回収されてもよい。
【0023】
高い熱伝導率を有する金属含有組成物24を外側冷却空洞22に含むピストン20は、多数の利点を与え得る。内燃機関の動作中において、オイルまたはアルカリ金属のようなベース材料68は液体状であり、一方、金属粒子66は、固体のままであり、液体のベース材料68において懸濁される。液体のベース材料68は、固体の金属粒子66を、冷却空洞22中に、上側および下側クラウン32、34の内側表面42に沿って担持し、したがって、上側クラウン32および下側クラウン34から熱を除去する。さらに、金属含有組成物24は、エンジンの寿命中において、高温のために劣化せず、冷却空洞22のコーキングは生じない。リング溝52に向かう熱流の再分布は、さらに、ピストンランドのような外側表面に沿ってカーボンデポジットを低減し、外側表面40に沿って用いられる任意の潤滑油の劣化を低減する。これらの利点は、エンジンの運転間隔間の時間を延長し得る。加えて、ピストン20の外側表面40上におけるカーボン蓄積がないことは、シリンダライナーボアポリッシングを遅らせ、その結果、オイルの消費を制御下に維持する。冷却空洞22にある金属含有組成物24でピストン20を冷却することからの結果の他の有益な特性は、第1の(最上部の)リング溝52にカーボン蓄積がないことである。これにより、ピストン20の性能にとって有害である、圧縮リングのカーボンジャッキング、およびその結果のリング焼付きの双方の可能性が回避される。
【0024】
この発明の別の局面は、内燃機関のためのピストン20を製造する方法を提供し、この方法は、金属含有組成物24を冷却空洞22に供給するステップと、冷却空洞22を封止するステップとを含む。さまざまな異なる方法を用いて、ピストン20を冷却空洞22とともに形成し得る。しかしながら、1つの例示的実施例によれば、この方法は、上側クラウン32および下側クラウン34を形成することと、上側および下側クラウン32、34の内側リブ46、50および外側リブ44、48を長手方向に整列させることと、上側および下側クラウン32、34のリブ44、46、48、50をともに溶接して冷却チャンバ62および冷却空洞22をそれらの間に
図1に示されるように形成することとを含む。例示的方法は、次に、冷却空洞22への開口部56を形成することを含む。このステップは上側クラウン32に穴を穿つことを含んでもよい。別の好ましい実施例では、この方法は、開口部56を、下側クラウン34において、たとえば、第2の内側リブ50を通して、およびピストン20の非スラスト面に沿って、穿つことを含む。
【0025】
この方法は、さらに、金属含有組成物24を、開口部56を通して、冷却空洞22内に、一般的には不活性の乾燥雰囲気、典型的には窒素またはアルゴンの下で供給することを含む。この供給ステップ中において、金属含有組成物24は、固体、液体、または固体粒子と液体との混合物であり得る。金属粒子66は、典型的には、供給ステップ中においては固体であるが、ベース材料68は固体または液体であり得る。たとえば、金属含有組成物24がコロイド組成物を含む場合には、オイルは固体の金属粒子66のための担体として作用し、固体の金属粒子66は、オイル中に分散され、上側クラウン32または下側クラウン34の開口部56内に注がれる。しかしながら、ベース材料68がアルカリ金属を含む場合には、この方法は、アルカリ金属を溶融して担体を与えるステップを含み、金属粒子66は溶融されたアルカリ金属中に分散される。代替的に、アルカリ金属は固体粒子状であり得、固体の金属粒子66と配合され得る。この固体粒子の混合物も、上側クラウン32または下側クラウン34の開口部56内に注がれ得る。固体のアルカリ金属粒子66は、内燃機関の動作中に高温に晒されると、液体に遷移して固体の金属粒子66のための担体を与える。
【0026】
金属含有組成物24が冷却空洞22に供給された後、この方法は、ピストン20が依然として不活性雰囲気内にある間に、冷却空洞22への開口部56を封止することを含む。この封止ステップは、典型的には、開口部56においてプラグ58をねじ筋に沿ってねじ込んで締め、次いで、高温エポキシ組成物のような接着剤をプラグ58に塗布することを含む。別の実施例では、開口部56は、プラグ58を開口部56においてプレス嵌めすることによって封止され得、これは、製造時間を短縮する。さらに別の実施例では、プラグ58は、代替的には、ピストン20を不活性雰囲気内に維持し、次いで、プラグ58を上側クラウン32にタングステン不活性ガス(TIG)溶接またはレーザ溶接することによって封止され得る。プラグを蝋接または締まり嵌めすることは、同じく企図される代替態様である。
【0027】
明らかに、この発明の多くの修正物および変形物が上記の教示に照らして可能であり、特許請求の範囲内にありながら、具体的に記載されるのとは異なる態様で実施されてもよい。