特許第6294405号(P6294405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6294405低PAH量を有する変性カーボンブラック及びそれを含むエラストマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294405
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】低PAH量を有する変性カーボンブラック及びそれを含むエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/50 20060101AFI20180305BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180305BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180305BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20180305BHJP
   C09C 1/56 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C09C1/50
   C08K3/04
   C08L21/00
   C09C3/08
   C09C1/56
【請求項の数】32
【外国語出願】
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2016-146515(P2016-146515)
(22)【出願日】2016年7月26日
(62)【分割の表示】特願2014-560033(P2014-560033)の分割
【原出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2017-36436(P2017-36436A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】61/606,282
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック エイチ.ランプ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディー.モリス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エー.ベルモント
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−509466(JP,A)
【文献】 特開昭60−190469(JP,A)
【文献】 特開2001−139839(JP,A)
【文献】 特開昭62−250042(JP,A)
【文献】 特表平10−510574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/48〜1/60
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70m/g〜250m/gのSTSAを有する変性カーボンブラックであって、75ppm以下のPAH22含量を有し、そして少なくとも1種の化学基を結合かつ/又は吸着しているファーネスカーボンブラックであり、
前記化学基が、少なくとも1種のトリアゾール、少なくとも1種のピラゾール、少なくとも一種のイミダゾール又はこれらの組み合わせを含む、変性カーボンブラック。
【請求項2】
前記ファーネスカーボンブラックが、強化グレードのカーボンブラックである、請求項1に記載の変性カーボンブラック。
【請求項3】
75ppm以下のPAH含量を有する変性カーボンブラックであって、前記PAHがPAH22含有量に基づいて決定され、ファーネスカーボンブラックであり、かつ少なくとも1種の化学基を結合かつ/又は吸着しているカーボンブラックを含み、
前記化学基が、少なくとも1種のトリアゾール、少なくとも1種のピラゾール、少なくとも一種のイミダゾール又はこれらの組み合わせを含む、変性カーボンブラック。
【請求項4】
PAH22含量が1ppm未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項5】
前記少なくとも1つの化学基を結合しているカーボンブラックを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項6】
前記少なくとも1つの化学基を吸着しているカーボンブラックを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項7】
前記化学基が、以下を含むトリアゾ−ルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック:
【化1】

【化2】
又は互変異性体
(式中、Yは、H又はNH2であり、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH,CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、ポリ硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
【請求項8】
前記トリアゾ−ルが、以下を含む、請求項7に記載の変性カーボンブラック:
【化3】
又はその互変異性体
(式中、Eは、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
【請求項9】
前記トリアゾ−ルが以下を含む、請求項7に記載の変性カーボンブラック:
【化4】
又はその互変異性体
(式中、Yは、H又はNH2である)。
【請求項10】
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール、若しくは1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィド、又はこれらのいずれかの組み合わせを、その上に吸着して有する、請求項7に記載の変性カーボンブラック。
【請求項11】
前記化学基が以下を含むピラゾ−ルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック:
【化5】

【化6】
又はその互変異性体
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、若しくはCFであるか、又はYは、Rであり、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり、
Eは、ポリ硫黄含有基である)。
【請求項12】
前記吸着している基が以下である、請求項6に記載の変性カーボンブラック:
a)少なくとも1種のトリアゾール;
b)少なくとも1種のピラゾール;
c)少なくとも1つのイミダゾール;又は
これらのいずれかの組み合わせ、
ここで、前記変性カーボンブラックは、エラストマー組成物中に存在する場合、修飾されていない前記カーボンブラックと比較して、耐摩耗性が改善される。
【請求項13】
a)が存在し、かつそれが1,2,4−トリアゾ−ルである、請求項12に記載の変性カーボンブラック。
【請求項14】
a)又はb)が、硫黄含有置換基を含む、請求項12又は13に記載の変性カーボンブラック。
【請求項15】
それに結合した少なくとも1つの化学基をさらに含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項16】
前記少なくとも1種の化学基が、前記カーボンブラックに結合した1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基である、請求項5に記載の変性カーボンブラック。
【請求項17】
前記少なくとも1種の化学基が、前記カーボンブラックに結合した3‐メルカプト‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル基である、請求項5に記載の変性カーボンブラック。
【請求項18】
前記少なくとも1種の化学基が、前記カーボンブラックに結合しているイミダゾールである、請求項5に記載の変性カーボンブラック。
【請求項19】
前記イミダゾールが、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、請求項18に記載の変性カーボンブラック:
【化7】

【化8】
又はその互変異性体
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、前記カーボンブラックへの結合、H、アルキル、アリール、又はNHを含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR、SOSR、SNRR、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びRは、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC−C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、ポリ硫黄含有基である)。
【請求項20】
前記少なくとも1種の化学基が、脂肪族基又は芳香族基を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項21】
カーボンブラック表面積(m)あたり0.01〜10マイクロモルのヘテロ環基吸着量を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項22】
前記少なくとも1種の化学基を有する前記カーボンブラックが、前記少なくとも1種の化学基を有さないこと以外は同じであるカーボンブラックと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合、耐摩耗性が向上し、かつヒステリシスが改善(低減)する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項23】
黒鉛化されていない、請求項1〜22のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の変性カーボンブラック及び少なくとも1種のエラストマーを含有している、エラストマー組成物。
【請求項25】
請求項24に記載のエラストマー組成物を含む、製造物品。
【請求項26】
タイヤ又はその構成部品である、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
以下の工程を含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の変性カーボンブラックの製造方法:
1以上の導入箇所において少なくとも1種のカーボンブラック生成原料を反応器に導入し、前記少なくとも1種のカーボンブラック生成原料をホットガスの流と混合して、前記1以上の導入箇所から下流を移動する反応流中に、カーボンブラック及びPAH種を形成する工程、及び前記PAH種を実質的に破壊し、かつ前記カーボンブラックの表面を少なくとも部分的に不活性化するのに十分な温度に前記反応流を付し、そして前記カーボンブラックを含有する前記反応流の反応クエンチする工程;
75ppm以下のPAH22を有する前記カーボンブラックを、前記反応クエンチ工程後に回収する工程;並びに
1以上の化学基を前記カーボンブラックに結合及び/又は吸着させて、表面の不活性化によって失われた1以上の特性を少なくとも部分的に復元させて、前記変性カーボンブラックを形成する工程、
ここで、前記化学基は、少なくとも1種のトリアゾール、少なくとも1種のピラゾール、少なくとも1つのイミダゾール又はこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【請求項28】
前記反応流が、10〜500msの滞留時間を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記滞留時間が、1200℃〜1800℃の温度で30〜300msである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記温度を、カーボンブラックの表面積が形成され、かつ反応クエンチの前に、前記反応流に1種以上の酸化剤含有流を導入することによって達成する、請求項27〜29に記載の方法。
【請求項31】
以下の工程を含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の変性カーボンブラックの製造方法:
75ppm超のPAH含量を有する出発カーボンブラックを、30分〜4時間の時間で、1200℃〜1800℃の温度処理に付して、カーボンブラックをアニールし、そして前記PAHを実質的に破壊することで、50ppm以下の低下させたPAH含量とする工程;及び
1以上の化学基を前記カーボンブラックに結合及び/又は吸着させる工程、
ここで、前記化学基は、少なくとも1種のトリアゾール、少なくとも1種のピラゾール、少なくとも1つのイミダゾール又はこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【請求項32】
前記出発カーボンブラックが、前記温度処理の間に、表面不活性化される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性カーボンブラック、その変性カーボンブラックを含む組成物、例えばエラストマー組成物又はゴム組成物、その変性カーボンブラックの製造方法、及びその変性カーボンブラックの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的に製造されるカーボンブラックは、制御された処理条件の高温下で、炭化水素の熱分解によって提供される。これらの条件下では、PAHとして公知の、微量レベルの多環芳香族炭化水素が、カーボンブラックの表面に生成する。
【0003】
いくつかのPAHは、健康に害を及ぼす影響を与える可能性がある。カーボンブラックに付着しているPAHは、容易にはヒトへの曝露に至らないが、EUの規制及び顧客の両者によって、カーボンブラック中でPAHの濃度を低下させるための行動が取られている(非特許文献1を参照のこと)。最近の例としては、以下を挙げることができる:
−食品と接触することになるプラスチック材料及び物品のための規則を調和させるEU指令2007/19/ECの公布。この指令は、カーボンブラック中での0.25mg/kgのベンゾ(a)ピレン含有量を定めた。この指令以前は、カーボンブラックにPAHの上限量が、存在しなかった。
−タイヤの生産で使用されるエキステンダーオイル中でのPAHの含有量を規制するEU指令2005/69/ECの公布。この指令は、カーボンブラック中のPAHの含有量を直接規制しない。しかし、EUは、難分解性有機汚染物質での長距離の国境を越えた空気汚染の1979コンベンションの1998議定書の要求に応じて、PAHの年間排出物を減らすために、タイヤを生産用に使用されるエキステンダーオイル及び配合物中のPAHの含有量を規制することを選択した。
【0004】
上記に列挙した例は、より低いPAHのカーボンブラックへの傾向が高まっていることを示している。
【0005】
先のプロセスでは、低PAHを有するカーボンブラックを製造した。例えば、特許文献1では、カーボンブラック中の低PAH濃度を記載している。この特許に記載のとおり、
ガス形態のPAHを除去できるように、カーボンブラックは、260℃〜約950℃の温度のカーボンブラック製造プロセスにおいて、気相から分離することができる。この温度は、カーボンブラックの表面をアニールしないか又は分解しないくらい十分に低く、かつ低PAHカーボンブラックの強化性能を劣化させないぐらいに十分に低い。この特許での他の記載において、このカーボンブラックを、カーボンブラックの製造中に形成されることができ、この方法は、通常260℃〜約950℃の温度で、PAHを含む熱い排ガスを取り除くことを含んでいる。他の方法がこの特許の中にさらに記載されているが、この特許の目的は、カーボンブラックの表面をアニールすることがないか、又はそうでなければ、表面活性、及びエラストマーコンポジットの強化能力に影響しないことである。この特許に記載のプロセスは、低いPAHを有するカーボンブラックを形成するのに有効であるが、そのプロセスは、基本的な製造ステップの変更、場合によってはカーボンブラック粒子を製造するのに使用する装置及びプラントの配置の変更を必要とする。したがって、この特許に記載の方法は、産業規模でカーボンブラックの粒子を製造するための既存の装置、かつ/又は運転条件で実施できない。同じカーボンブラックプラントにおいて、これらの方法と一般的な方法とを交互に行うことは不可能なので、低PAHカーボンブラックプロセスにラインを割り当てる必要があるであろう。その結果、工学上及び操作上の複雑さ、並びにコストが超過する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,034,316号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bonn PJ, et al,Formation of PAH−DNA adducts after in vivo and vitro exposureof rats and lung cells to different commercial carbon blacks、Toxicology and Applied Pharmacology、2005 ,June 1;205(2):157〜167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カーボンブラックに対して比較的低いPAHへの要望が高まっているが、PAHを低減させようとすると、ゴム及び他の用途におけるカーボンブラックの望ましい性能特性と両立できない。したがって、現在のカーボンブラックによって達成できる特性を犠牲にすることなく、カーボンブラック中のPAH濃度を低下させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、低PAH濃度量を有する変性カーボンブラックを提供することである。
本発明のさらなる特徴は、ゴム及び他の用途において受け入れられる物理的な特性を有する低PAH量を有する変性カーボンブラックを提供することである。
本発明のさらなる特徴は、低PAH量を有する変性カーボンブラックを製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる特徴は、望ましいゴム特性を有し、そして低PAH量を有する変性ラバーブラックを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、既存の製造装置で、かつ/又は産業規模での使用条件で実行することができ、大量生産でき、比較的短時間での、かつ/又は従来の方法よりも低コストの、低PAHを有するカーボンブラックの製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の記載で部分的に記述されるであろうし、そして記載から部分的に明らかであろうし、又は本発明の実施から学習できるであろう。本発明の目的及び他の利点は、記載及び請求項で特に指摘された要素及び組み合わせの手段によって実現され、そして達成されるであろう。
【0013】
これらの利点及び他の利点を達成するために、そして本明細書中で具体化され、そして広範に記載された本発明の目的に従って、本発明は、22のPAH化合物の規定された群における低全濃度等の低PAH量を有する変性カーボンブラックに関する(図1を参照のこと)。本発明の目的のために、PAH22は、ベンゾ(j)フルオラントレン以外の図1で特定されるPAHの測定である。また、本発明の目的のためのPAH8は、ベンゾ(a)アントラセン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(e)ピレン、ベンゾ(b)フルオラントレン、ベンゾ(j)フルオラントレン、ベンゾ(k)フルオラントレン、クリセン、及びジベンゾ(a、h)アントラセンの測定である。BaPは、ベンゾ(a)ピレンの参照である。例えば、この変性カーボンブラックは、75ppm以下、50ppm以下、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、又は1ppm以下、例えば1ppm〜50ppm、1ppm〜40ppm、1ppm〜30ppm、1ppm〜20ppm、1ppm〜10ppm、2ppm〜10ppm、0.001ppm〜75ppm、又は0.01ppm〜75ppmのオーダーで、22PAHについて低い総濃度を有することができる。
【0014】
本発明は、少なくとも1種のエラストマー、ポリマー、又はゴムと共に、そのエラストマー組成物又はゴム組成物中に、本発明の少なくとも1種の変性カーボンブラックを含有する、エラストマー組成物又はゴム組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、低いPAH総濃度を有する変性カーボンブラックの製造方法に関する。
【0016】
先の一般的な記載及び以下の詳細な記載の両方は、例示的かつ説明的なだけであり、そして請求項のような本発明のさらなる説明を提供することを目的とする。
【0017】
本文献に取り込まれ、そして本文献の一部を構成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を具体的に示し、そして記載と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の目的のための「PAH22」と考えられる22のPAH化合物(ベンゾ(j)フルオラントレンを除く)の表である。
図2図2は、カーボンブラック反応器の一例の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、低PAH22等の低PAH量を有する変性カーボンブラックに関する。本発明はまた、少なくとも1種のエラストマーと共に本発明の少なくとも1種の変性カーボンブラックを含有するゴム組成物又はエラストマー組成物に関する。本発明は、さらに本発明の変性カーボンブラックの製造方法に関する。
【0020】
低PAH量を有するカーボンブラックを製造するための、高速の、コスト効率の高い、かつ大規模なプロセスを提供するために、プロセスを、以下で記載するように開発した。しかしながら、コスト効率の高い、かつタイムリーな方法で低PAH量を有する大量のカーボンブラックを製造できるプロセスを開発するという問題を克服する際に、カーボンブラックの表面が影響を受け、以下でさらに記載するように、表面がアニールされることが発見された。特に、本発明の1若しくは複数のプロセスにおいて、カーボンブラックの表面は少なくとも部分的に不活性化される。表面の不活性化は、「バウンドゴム」の割合(%)、かつ/又はゴムコンパウンドの物理特性(例えば、応力/歪み)に見られるカーボンブラックを含むエラストマーコンポジットの強化性能の低下によって見られ得る。さらに又は替わりに、表面の不活性化は、表面エネルギー測定、又は米国特許第7,776,604号;同第7,776,603号;同第7,776,602号;及び同第7,000,457号(それらの全体を参照により本明細書中に援用する)に記載の界面電位値から分かる。
【0021】
本発明の目的のために、表面不活性化は通常、表面の活性化を反映するこれらの特性の一以上に対する少なくとも10%の負の影響、例えばカーボンブラックの表面に活性化を反映するこれらの特性の一以上、これらの特性の二以上、又はこれらの特性のすべてに対して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の減少又は負の影響等である。表面不活性化による負の影響は、10%〜95%、20%〜90%以上、30%〜90%以上等であり得る。強化性能を定量化するための分析試験としては、これだけに限定されるものではないが、バウンドゴムの割合(%)の測定(S. Wolff, M−J Wang, E−H Tan, Rubber Chem Techn, v 66, 163, 1993)、動的ゴム特性(0℃での最大tanδを、ねじれ歪みモード(歪み)で運転したARES/Rheometrics Dynamic Spectrometer II(RDS II、Rheometrics、Inc.、N.J)を使用してテストし、かつ測定を、0℃、0.2〜120%の範囲の二重歪み振幅(DSA:double strain amplitude)を用いた歪みスイープ、10Hzの一定周波数で行った)、応力/歪み特性、摩耗試験(耐摩耗性は(21%すべり)は米国特許第4,995,197号によって試験した)等が挙げられる。
【0022】
「負の影響」は、同じグレードであるが、そのグレードのカーボンブラック上に一般的に存在している従来のPAH量を有するカーボンブラックとの比較に基づいている。つまり、この比較は、従来のカーボンブラックが、表面の不活性化がなく、かつ随意に、75ppmを超える又は100ppmを超えるPAH量を通常有する、かつ/又はPAH22含量に基づいて、本発明のカーボンブラックのPAH含量より少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも100%高いPAH量を通常有することを別にすれば、本発明のカーボンブラックと同じSTSAを有するか、又は同じであるか若しくは非常に類似した(±10%又は±5%)STSAを有する従来のカーボンブラックに基づいている。
【0023】
したがって、低PAH量を有するカーボンブラックを形成する効率的なプロセスは、その後エラストマーコンポジット中のカーボンブラックの特性、かつ/又はカーボンブラックを含むエラストマーの性能特性に影響する表面不活性化に関して問題を生じさせる。表面不活性化は、マトリックス又はエラストマー中にカーボンブラックを組み入れるユーザ又は製造業者にとって容認できない製品につながるであろう。したがって、この問題は解決されなければならず、さもなければ、効果的でタイムリーな様式で低PAH量を作り出すプロセスは有用でないであろう。以下で記載するように、この問題は、低PAH量を有するカーボンブラックを形成し、次いで、1若しくは複数の化学基を、そのカーボンブラック上に結合、かつ/又は吸着するように処理することによって対処又は解決されたが、このカーボンブラックには、ラバーコンパウンドの応力/歪み、かつ/又は界面電位特性、若しくは表面エネルギー特性を少なくとも部分的に復元する等の、バウンドゴムの割合(%)及び/又はエラストマーコンポジットの1若しくは複数の強化性能特性を少なくとも部分的に復元する能力等の、表面不活性化のために失われた特性の一以上を少なくとも部分的に復元する能力があった。表面不活性化まで失われた一以上の特性を少なくとも部分的に復元するためのカーボンブラック表面の処理は、表面不活性化により失われた特性の量を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%(例えば10%〜50%、又は20%〜50%等)復元する能力がある。つまり、本発明には、少なくとも部分的に、もしそうでなければほとんど完全に又は完全に、表面不活性化のために失われた一以上の特性又はそのすべてを復元する能力がある。つまり、本発明には、表面不活性化のために失われたバウンドゴムの割合(%)、及び/又は応力/歪み、かつ/若しくは少なくとも1つの表面エネルギー特性(若しくは界面電位特性)等の一以上の強化性能特性を少なくとも部分的に、又はほぼ完全に若しくは完全に復元する能力がある。さらなる詳細は、以下に提供する。
【0024】
低PAH含量を有する強化グレードのカーボンブラック又は準強化グレードのカーボンブラック等であっても、カーボンブラックを製造する好ましいプロセスにおいて、プロセス条件は、アニール表面を有するカーボンブラック粒子を典型的には作り出す。粒子上にアニール表面を形成した結果、これらの強化グレードの機能性能は、エラストマーコンポジットの強化材料として以下の特性の一以上、又はすべてが有意に低減される:
a)表面活性の減少
b)表面水素含量の減少
c)表面上の結晶サイズの増大
d)表面不規則性(例えば、平面化効果)の数の減少、かつ/又は
e)表面上の高エネルギー部位の数の減少。
【0025】
本発明の目的のために、「アニール表面」に関する「アニール」という用語は、上記のことを意味する。ファーネスカーボンブラックを作るための製造プロセスにおいて、その条件は、PAH含量を下げるように実施され、そしてその条件はまた、カーボンブラック粒子の表面をアニールし、(所望の表面積が生じた時点で)反応炉中のカーボンブラックを(従来を超えてより短いか、又はより長い時間)高熱にさらすことを含み得る。これは、所望の発生表面積を有するカーボンブラックを含む反応流に、その結果、反応流を高熱に晒すことになる、遅れた反応クエンチに供することによって、かつ/又は反応流中のPAHを破壊するのに十分な温度まで温度を上げるか又はその温度を維持するように反応流に酸化剤を噴射するか、若しくは他のやり方で導入することによって、表面積が生じた後に、反応流を高熱に晒すことによって実施され得る。
【0026】
強化グレードのカーボンブラック等のカーボンブラックを製造するプロセスにおいて、アニールされたカーボンブラックのPAH含量は、アニールされていない同じカーボンブラックと比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%低減される。言い換えれば、低減に関するこの比較は、STSAによって評価した場合に、同じであるか又は同様(10%又は5%の範囲内)の表面積を有するアニールされていない同じカーボンブラックに関するものであり得る。低減率(%)は、PAH22含量のppm量における低減に対する言及である。
【0027】
アニールされたカーボンブラックにおいて、PAH含量は、75ppm以下になるまで、50ppm以下になるまで、例えば45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、5ppm以下、1ppm以下等になるまで、例えば1ppm〜50ppm、1ppm〜40ppm、1ppm〜30ppm、1ppm〜20ppm、1ppm〜10ppm、2ppm〜10ppm、0.001ppm〜75ppm、0.01ppm〜75ppm、又は0.0001ppm〜5ppm等になるまで低減される。
【0028】
本発明は、少なくとも1つの化学基をアニールされた表面に結合、かつ/又は吸着する更なるステップを採用することによって、低PAHのアニールされたカーボンブラック粒子に強化機能性を復元するための方法を提供する。強化特性を維持することを試みながらPAH含量を下げるようにカーボンブラック粒子の基本的な製造法を変更したこれまでのプロセスと異なり、本発明の方法は、低PAH含量カーボンブラック粒子を作製し、次いで、カーボンブラック粒子表面を本明細書中に記載したように化学的に修飾する製造後ステップによって、粒子の表面アニールによって失われた強化機能性を少なくとも部分的に復元させる。
【0029】
カーボンブラックのPAH含量は、同じであるか又はほとんど同じ(10%又は5%の範囲内の)STSAを有するが、アニールされた表面を有していない、そして、通常アニールされたカーボンブラックより高いPAH含量を有するカーボンブラックと比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%低減され得る。低減率(%)は、PAH22含量のppm量における低減に対して述べている。
【0030】
したがって、本発明の変性カーボンブラックは、アニールされた表面を有し、そして、少なくとも1つの化学基を結合、かつ/又は吸着している、低PAHカーボンブラックであると見なされ得る。
【0031】
本発明は、(単数若しくは複数の)化学基を結合した、かつ/又は吸着した、低PAH量を有する変性カーボンブラックに関する。変性カーボンブラックは、その変性カーボンブラックが低PAH量を有するように形成される。本発明の変性カーボンブラックは、低PAH量を有し、かつ少なくともSTSAに関して標準的なASTMカーボンブラックの仕様を有し得る。実施例に示されるとおり、ヨウ素価は通常、アニールされることで増加し、そして、同じであるか又はほとんど同じSTSA(10%又は5%の範囲内)を有するが、アニールされた表面を有していないカーボンブラックと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、例えば5%〜75%ほど増加する。
【0032】
本発明の有効性は、強化カーボンブラック及び準強化カーボンブラックに特に見られ、かつ有用である。したがって、変性カーボンブラックは、強化グレードのカーボンブラック、かつ/又は準強化グレードのカーボンブラックであり得る。強化グレードの例は、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、及びN375である。準強化グレードの例は、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、N787、及び/又はN990である。
【0033】
変性カーボンブラックは、例えば20m/g〜250m/g以上の範囲に及ぶ等のあらゆるSTSAを含み得る。しかしながら、本発明の有効性は、最少の70m/gのSTSAで、例えば70m/g〜250m/g、80m/g〜200m/g、90m/g〜200m/g、100m/g〜180m/g、110m/g〜150m/g、120m/g〜150m/g等のSTSAで最もよく見られる。カーボンブラックは、ファーネスブラック、あるいは、ケイ素含有種、かつ/又は金属含有種等を含む炭素製品であり得る。カーボンブラックは、本発明の目的のために、少なくとも1つの炭素相と、少なくとも1つの金属含有種相又はケイ素含有種相(シリコン処理カーボンブラックとしても知られている)を含んで成る多相凝集体である。記載のとおり、カーボンブラックは、ラバーブラック、特に強化グレードのカーボンブラック又は準強化グレードのカーボンブラックであり得る。ヨウ素価(I数)は、ASTM Test Procedure D1510に基づいて測定される。STSA(表面積の統計的な厚さ)は、(窒素吸着によって計測する)ASTM Test Procedure D−5816に基づいて測定される。OANは、ASTM D1765−10に基づいて測定される。
【0034】
カーボンブラックは、酸化剤を用いて予め酸化されたカーボンブラックなどの酸化カーボンブラックであってよい。酸化剤としては、空気、酸素ガス、オゾン、NO(NOと空気との混合物を含む)、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、カリウム、若しくはアンモニウムを含む過硫酸塩、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、若しくは過ハロゲン酸塩(亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、若しくは過塩素酸ナトリウムなど)、硝酸などの酸化酸、及び過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、若しくは硝酸セリウムアンモニウムなどの遷移金属含有酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤の混合物、特に、酸素及びオゾンなどの気体酸化剤の混合物を用いてよい。加えて、塩素化及びスルホン化など、その他の表面修飾法を用いて、顔料表面上にイオン性若しくはイオン化可能基を導入して作製されたカーボンブラックも用いてよい。予め酸化されたカーボンブラックの作製に用いてよいプロセスは、本技術分野にて公知であり、いくつかの種類の酸化カーボンブラックが市販されている。
【0035】
本発明の目的のために、PAH含有量は、21CFRパート17B、FDA Federal Register、v62、#90.Friday May 9、1997に記載された方法によって、測定/テストされる。これは、参照により本明細書中にその全てを取り込む。
【0036】
この変性カーボンブラックは、随意に、ゴムマトリクス、又はエラストマー組成物に、少なくとも1つの有益な機械的特性を与える性質を有する。その少なくとも1つの有益な機械的特性は、以下の1つ又は2つ以上であることができる:
−耐摩耗性(21%すべり)−米国特許第4、995、197号明細書によりテスト。
−伸長(%)−SBR中カーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法調合及び評価手順。
−引っ張り強度(MPa);SBR中カーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法調合及び評価手順。
−100%弾性率(MPa);SBR中カーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法調合及び評価手順。
−300%弾性率(MPa);SBR中カーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法調合及び評価手順。
−300%弾性率/100%弾性率(M300%/M100%)の比;SBR中カーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法調合及び評価手順。
−バウンド(bound)ゴム(%);S.Wolff、M−J Wang、E−H Tan、Rubber Chem Techn、v66、163(1993)。
−ねじれ歪みモード(剪断)で操作したARES/Rheometrics Dynamic Spectrometer II (RDS II、Rheometrics、Inc.,NJ)でテストした0℃での最大tanδ。測定を、0℃、10Hzの一定周波数で、0.2〜120%の範囲で二重振幅歪(DSA)を用いて、歪みスイープで行った。
【0037】
本発明の変性カーボンブラックは、低PAH量及びこれらの有益な機械的特性の少なくとも1つ、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、及び/又は8つ全てのこれらの有益な機械的特性を有することができる。これらの機械的特性は、上記それぞれの機械的特性の次に提供される公知のASTM又は認定基準(Published Standard)によって測定される。
【0038】
本発明は、低PAH22等の低PAH量を有する変性カーボンブラックに関し、この変性カーボンブラックは、少なくとも1つの有益な機械的特性を与える性質を有する。上記の様に、これらの機械的特性の少なくとも1つは、高PAH22等の高PAHを有し、かつ変性もされていない(例えば、上記の結合した化学基又は吸着した化学基を有していない)同じタイプのカーボンブラックと、同等の機械的特性値の50%以内(例えば、40%以内、30%以内、20%以内)である。高PAH22は、例えば、600ppm〜1、000ppm等の600ppm以上のPAH22であることができる。高PAHを有する同じタイプのカーボンブラックの機械的特性と約50%以内でポリマーマトリックスに少なくとも1つの有益な機械的特性を与える性質を有し、かつ低PAHを有する本発明の変性カーボンブラックは、有益な機械的特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、及び/又は8つ全てのこれらの有益な機械的特性に関してであることができる。すなわち、本発明は、低PAH22等の低PAH量を有する変性カーボンブラックを提供することができ、そして少なくとも匹敵する機械的特性又はゴム特性を、エラストマー組成物等のポリマーマトリックスに与えることができ、ここで匹敵するとは、特定の機械的特性の約50%以内(例えば、40%以内又は30%以内)を意味すると理解される。
【0039】
本発明の目的のために、低PAH量は、低PAH22を含み、又は低PAH22によって規定される。上記に示したように、PAH22は、本願の図1に記載のPAHの測定結果である。本発明の目的のために、低PAH量は、低PAH22によって規定できる。例えば、この変性カーボンブラックは、75ppm以下、50ppm以下、45ppm以下、40ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、25ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、8ppm以下、又は5ppm以下、例えば1ppm〜50ppm、1ppm〜40ppm、1ppm〜30ppm、1ppm〜20ppm、1ppm〜10ppm、2ppm〜10ppmのオーダーで、22PAHについて低い総濃度を有することができる。好適な量の例は、このカーボンブラック中に存在するPAH22の総量に関して、約1ppm〜約45ppm、1ppm〜40ppm、1ppm〜35ppm、1ppm〜30ppm、1ppm〜20ppm、1ppm〜10ppm、又は1ppm〜8ppmを含む。上記に提供した範囲又は量のいずれかで、下限は、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、2ppm、5ppm、10ppm、又は15ppmであることができる。これらの範囲は、正確な値であるか、又は約(例えば、「約1ppm」等)であることができる。これらのppm範囲は、PAHの全て又は任意の数(例えば、全てのPAH又はPAHの1種若しくは2種以上)に適用できる。本発明の目的のために、PAH22は、ベンゾ(j)フルオラントレンを除き、図1で特定されたPAHの測定である。また、本発明の目的のためのPAH8は、ベンゾ(a)アントラセン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(e)ピレン、ベンゾ(b)フルオラントレン、ベンゾ(j)フルオラントレン、ベンゾ(k)フルオラントレン、クリセン、及びジベンゾ(a、h)アントラセンの測定である。BaPは、ベンゾ(a)ピレンのことである。
【0040】
随意に、PAH22含有量に加えて、又は別個で、変性カーボンブラックa)のためのPAH8は、5ppm以下(例えば、4ppm以下、0.0001ppm〜5ppm、0.1ppm〜5ppm、0.5ppm〜5ppm、3ppm以下)であることができる。さらに又は替わりに、BaPは、4ppm以下(0.001ppm〜4ppm、0.1ppm〜4ppm、0.5ppm〜3ppm)であることができる。本発明の変性カーボンブラックは、等しくより低いPAH8を有することができ、そして一般的に本明細書中に記載されたPAH22値より、少なくとも50%(例えば、50%〜80%低い)PAH8を有することができる。さらに、カーボンブラックのためのBaPは、典型的には本明細書中に記載されたPAH22値より、少なくとも75%低い(例えば、75%〜95%低い)ことができる。
【0041】
変性カーボンブラック、例えば変性ゴムグレード又は変性タイヤグレードは、20m/g〜250m/g又は80〜約150m/gのSTSAの組み合わせで、以下の機械的特性又はゴム特性の1つ若しくは複数を有することができ、変性カーボンブラックがゴム調合物中に存在する場合、機械的特性及び/又はゴム特性は、SBR中のカーボンブラックのためのASTM D3191−02標準テスト法−調合及び評価手順に従って決定される:
−80〜170の耐摩耗性(21%すべり);
−300〜600の伸長(%);
−20〜35の引っ張り強度(MPa);
−2.4〜4.5の100%弾性率(MPa);
−12〜23の300%弾性率(MPa);
−3.5〜6の300%弾性率/100%弾性率(M300%/M100%)の比;
−15〜30のバウンドゴム(%);及び/又は
−0℃で、0.25〜0.4の最大tanδ。
これらの特性は、1種又は複数のゴムコンパウンドで達成でき、そしてゴムが天然ゴム及び/又はSBRの場合、達成できる。
【0042】
本発明はまた、上記の様に低PAH量を有し、ならびに20m/g〜250m/g又は80〜140m/gのSTSA及びそれぞれの特性で提供された式
−耐摩耗性(21%すべり):y=5/6(x)+(43+/−10)
に基づいて以下の機械的特性の1つ又は複数を有するカーボンブラックに関し、式中、xは、カーボンブラックのSTSA(m/g)であり、そしてyは、機械的特性である。
上記で確認された他の機械的特性は、STSAと同じか又は類似の関係を有することができる。
【0043】
少なくとも部分的に表面不活性化の効果を復元するため等に、カーボンブラック上に結合、かつ/又は吸着され得る化学基に関して、以下の化学基が、カーボンブラック上に結合、かつ/又は吸着され得る。
【0044】
変性カーボンブラックは、その上に少なくとも1つのトリアゾールを吸着しているカーボンブラックであり得る。より具体的な調合法及び例が、提供されている。
【0045】
変性カーボンブラックは、さらに又は替わりに、有機基、例えば、少なくとも1つのアルキル基及び/又は芳香族を含む有機基等の結合された少なくとも1つの化学基を有する。このアルキル基及び/又は芳香族基は、カーボンブラックに直接結合され得る。この化学基は、カーボンブラックに吸着されている基と同じであっても、類似していても、又は異なっていてもよい。結合している化学基は、少なくとも1つのトリアゾール、少なくとも1つのピラゾール、少なくとも1つのイミダゾール、又はいずれかのその組み合わせであっても、又はそれを含んでいてもよい。
【0046】
さらに詳細には、本発明は、一つには、それに吸着している1,2,4トリアゾール等の少なくとも1つのトリアゾールを有するカーボンブラックであるか又はそれを含む変性カーボンブラックに関する。変性カーボンブラックは、エラストマー配合物中に存在した場合に、変性していない同じカーボンブラックと比較して(すなわち、同じであるか又は非常に類似した低PAH含量を有するが、結合している、かつ/又は吸着している化学基を有していない同じカーボンブラックと比較して)、耐摩耗性を改善するのが好ましい。
【0047】
この変性カーボンブラックは、次をその上に吸着したカーボンブラックであることができる:(a)少なくとも1つのトリアゾール、例えば1,2,4トリアゾール;(b)他の芳香族基を有し又は有さずに、硫黄含有置換基を有している、少なくとも1つのピラゾール;さらに、好ましくは、この変性カーボンブラックは、エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていない同じカーボンブラックと比較して、耐摩耗性を向上させる。
【0048】
本発明の目的のために、吸着とは、吸着化学基が、カーボンブラックの表面に化学的に結合しておらず、ソックスレー抽出などの溶媒抽出によって、表面から除去可能であることを意味する。例えば、カーボンブラック上に吸着した化学基は、メタノール又はエタノール中16〜18時間で行うことができるソックスレー抽出によって除去することができ、ここで、この抽出により、すべての、又はほとんどすべての、又は実質的にすべての化学基が除去される。抽出は、1回以上繰り返してよい。吸着基の残基がカーボンブラックの表面上に残留し得ることも考えられる。本発明の目的のために、本明細書で述べるように、溶媒による抽出は、吸着化学基の少なくとも80重量%を、一般的には、吸着化学基の少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%を除去することができる。これは、抽出及び未抽出サンプルの元素分析によって測定することができる。
【0049】
本発明の目的のために、トリアゾールは、トリアゾール含有基を有する化学基を含む。トリアゾールは、1,2,4トリアゾール又は1,2,3トリアゾールであってよい。トリアゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリトリアゾールであってよい。1,2,4トリアゾール又は1,2,4マゾール(1,2,4 Mazole)含有基が、吸着化学基として好ましい。トリアゾールの例としては、以下の式を有するトリアゾール(若しくはその互変異性体):
【化1】
若しくは
【化2】
又は、以下の式を有するトリアゾール(若しくはその互変異性体)が挙げられる:
【化3】
若しくは
【化4】
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Yは、H又はNHであり;
Aは、官能基であり、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)であってよいか、又はこれらを含んでよく;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びRは、同一であっても又は異なっていてもよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である。SRは、SHであってよい。SRについて、RがHでない場合、kは、2から8であり、RがHである場合、kは1から8であり;
Eは、S(ここで、wは2から8である)、SSO、SSO、SOSO、SOSOなどの複数硫黄含有基(polysulfur−containing group)であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
【0050】
トリアゾールのより具体的な例としては、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル‐ジスルフィド;1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール;1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル‐ジスルフィド;3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル‐トリスルフィド;4‐アミノ‐3‐ヒドラジノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の目的のために、ピラゾールは、ピラゾール含有基を有する化学種を含む。ピラゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリピラゾールであってよい。ピラゾールの例としては、以下の式を有するピラゾール(若しくはその互変異性体):
【化5】
又は、以下の式を有するピラゾール(若しくはその互変異性体)を挙げることができる:
【化6】
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH,CONR、CN、CH、OH、NDD’、若しくはCFであるか、又はYは、Rであってよく、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、官能基であり、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)であってよいか、又はこれらを含んでよく;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一であっても又は異なっていてもよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;kは、1から8の整数であり;かつQは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である。SRは、SHであってよい。SRについて、RがHでない場合、kは、2から8であり、RがHである場合、kは1から8である。Eは、S(ここで、wは2から8である)、SSO、SSO、SOSO、又はSOSOなどの複数硫黄含有基であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
【0052】
ピラゾールのより具体的な例としては、ピラゾール‐3‐チオール、ピラゾール‐3‐イルジスルフィド、及び/又は3‐メチル‐ピラゾール‐5‐チオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で示される式のいずれについても、置換基Aに関して、より具体的な例としては、SH;Arがトリアゾール若しくはピラゾールであるAr、又はArが異なるヘテロ環であるSSArが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
述べたように、カーボンブラック上又はカーボンブラックの表面上に吸着されてこの種類の変性カーボンブラックを作り出す化学基は、単一の化学基であっても、又は2つ以上の異なる種類の化学基であってもよい。1つ以上の異なる種類のトリアゾールが存在してよく、及び/若しくは1つ以上の異なる種類のピラゾールが存在してよく、又は1つ以上のピラゾールと共に1つ以上のトリアゾールなどのこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。加えて、選択肢として、トリアゾール及び/又はピラゾール以外のその他の化学基も、吸着化学基としてカーボンブラック上に追加的に存在してもよい。
【0055】
吸着化学基は、カーボンブラックの露出表面の表面領域上全体に、若しくは実質的に全体にあって、変性カーボンブラックを形成してよく、又はこれより少ない量であってもよい。例えば、吸着化学基は、カーボンブラック表面の表面領域の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、若しくは約100%、又はカーボンブラックの表面上の表面領域の100%を被覆していてよい。
【0056】
(1若しくは複数の)吸着化学基の量は、カーボンブラック上におけるいずれの量であってもよい。例えば、吸着化学基の総量は、窒素吸着(BET法)で測定した場合、カーボンブラック表面積(m)あたり約0.01から約10マイクロモルのヘテロ環基であってよく、約1から約8マイクロモル/m、約2から約6マイクロモル/m、又は約3から約5マイクロモル/mを含む。
【0057】
(1若しくは複数の)吸着化学基を有する変性カーボンブラックを形成するためのプロセスに関して、従来のいずれの吸着技術を用いてもよい。例えば、この種類の変性カーボンブラックを形成するためにカーボンブラック上又はカーボンブラック表面上に所望される化学基は、適切な溶媒に溶解されて、カーボンブラック表面に適用されてよく、ここで、続いて溶媒が、蒸発法などによって除去されてよい。別の選択肢として、変性カーボンブラックを形成するためにカーボンブラック表面上に吸着されるべき化学種は、溶融されてもよい。カーボンブラックとカーボンブラック表面上に吸着されるべき化学種との接触は、いかなる方法で行ってもよく、スプレーコーティング法などがある。カーボンブラック上に吸着されるべき化学溶液は、ピンペレタイザー中にて一緒に混合されてよく、次に溶媒が蒸発されてよい。
【0058】
また、選択肢として、本明細書で述べる吸着化学基を有する変性カーボンブラックは、所望に応じて、1つ以上の化学基の結合を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の目的のために、1つ以上の化学基の結合とは、化学基が、カーボンブラック表面上に吸着されるのではなく、吸着化学種を除去する目的で前述した抽出プロセスによって除去できないか、又は実質的に除去できないことを意味する。少なくとも1つの化学基の結合は、一般的に、共有結合によるなどの化学結合によるものである。
【0060】
カーボンブラック上に結合しているかつ/又は吸着している化学基は、少なくとも1つの有機基であってよい。有機基は、アルキル基及び/又は芳香族基を含んでよいか、又はそれらであってよい。より具体的な例としては、C1−20アルキル基又はC6−18芳香族基が挙げられ、C1−12アルキル基又は(1若しくは複数の)C‐C12芳香族基などである。結合基の例としては、本明細書で述べる置換基Aと同じであってよい1つ以上の官能基を有するアルキル又は芳香族基を挙げることができる。アルキル基及び/又は芳香族基は、カーボンブラックと直接結合していてよい。
【0061】
芳香族スルフィドは、本発明の変性カーボンブラックを形成するためにカーボンブラック上に結合、かつ/又は吸着される化学基の別の基を包含する。これらの芳香族スルフィドは、式Ar(CH(CHAr’又はA−(CH(CHAr’’によって表され、式中、Ar及びAr’は独立に、置換又は無置換アリーレン又はヘテロアリーレン基であり、Ar’’は、アリール又はヘテロアリール基であり、kは、1〜8であり、そして、q及びrは、0〜4である。置換アリール基は、置換アルキルアリール基を含むであろう。アリーレン基は、フェニレン基、特にp−フェニレン基、又はベンゾチアゾリレン基を含んでいる。アリール基は、フェニル、ナフチル、及びベンゾチアゾリルを含んでいる。kによって規定される、存在している硫黄の数は、2〜4の範囲にあることが好ましい。芳香族スルフィド基は、ビス−パラ−(C)−S−(C)−及びパラ−(C)−S−(C)である。これらの芳香族スルフィド基のジアゾニウム塩は、それらの対応する第一アミン、HN−Ar−S−Ar’−NH又はHN−Ar−S−Ar’’から好適に調製され得る。前記化学基は、(C)−NH、(C)−CH−(C)−NH、(C)−SO−(C)−NH等のアミノフェニルを有する有機基であり得る。
【0062】
変性カーボンブラックは、結合している化学基及び/又は吸着している化学基、すなわちAr(CH(CHAr’を有するカーボンブラックであってよく、式中、Ar及びAr’は、同じであるか又は異なり、アリーレン又はヘテロアリーレンであり;kは、1〜8の整数であり;qは、0〜4の整数であり;そして、rは、0〜4の整数である。前記Ar及びAr’は、アリーレンであってよく;kは、1〜8の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。Ar及びAr’は、フェニレンであってよく;kは、2〜4の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、kは、2であってよい。この式において、Ar及びAr’は、ヘテロアリーレンであってよく;kは、1〜8の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、Ar及びAr’は、ベンゾチアゾリレンであってよく;kは、2〜4の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、kは、2であってよい。
【0063】
変性カーボンブラックは、結合している化学基及び/又は吸着している化学基、すなわちAr(CH(CHAr’を有するカーボンブラックであってもよく、式中、Ar及びAr’は、アリーレン又はヘテロアリーレンであり;Ar’は、アリール又はヘテロアリールであり;kは、1〜8の整数であり;qは、0〜4の整数であり;そして、rは、0〜4の整数である。この式において、Arは、アリーレンであってよく;Ar’は、アリールであってよく;kは、1〜8の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、Arは、フェニレンであってよく;Ar’は、フェニルであってよく;kは、2〜4の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、Arは、フェニレンであってよく;Ar’は、ヘテロアリールであってよく;kは、1〜8の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。この式において、Arは、フェニレンであってよく;Ar’は、ベンゾチアゾリルであってよく;kは、2〜4の整数であってよく;そして、q及びrは、0であってよい。
【0064】
変性カーボンブラックは、結合している化学基及び/又は吸着している化学基、すなわち−(C)−S−(C)−NH(式中、kは、2〜8まで整数である)、かつ/又は化学基、すなわち(C)−S−(C)−NH(式中、kは、2である)を有するカーボンブラックであってもよい。
【0065】
1つ以上の化学基をカーボンブラック上に結合させてこの種類の変性カーボンブラックを形成するための方法は、ジアゾニウム反応を含む、カーボンブラック粒子へ化学基を結合させるための公知のいかなる結合機構を含んでもよい。
【0066】
結合化学基を有する変性カーボンブラックは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,554,739号;同第5,707,432号;同第5,837,045号;同第5,851,280号;同第5,885,335号;同第5,895,522号;同第5,900,029号;同第5,922,118号;同第6,042,643号;同第6,398,858号;同第7,175,946号;同第6,471,763号;同第6,780,389号;同第7,217,405号;同第5,859,120号;及び同第6,290,767号;米国特許出願公開第2003‐0129529 A1号;同第2002‐0020318号;同第2002‐0011185 A1号;及び同第2006‐0084751 A1号、並びにPCT国際出願第99/23174号に記載の方法を用い、適合させることで作製することができる。これらの参考文献は、一部、顔料へ官能基を結合させるためのジアゾニウム化学の使用について記載している。単なる一例として、これらのプロセスは、本発明の変性カーボンブラック(結合化学基を有する)の形成に適合され、使用された。
【0067】
アミノ型のトリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾールを用いてよく、そして、例えば上記の特許に記載のようなジアゾニウム反応を用いてこれらをカーボンブラック上に結合させ、有機基などの、並びに結合された少なくとも1つのトリアゾール基、ピラゾール基、及び/又はイミダゾール基などの結合化学基を有するこの型の変性カーボンブラックを形成してよい。結合されたトリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾール基は、別の型の変性カーボンブラックの場合について以下でさらに例示され、ここでも適用可能であろう。
【0068】
変性カーボンブラック(結合化学基を有する)は、当業者に公知である化学基を結合させるためのいかなる方法を用いて作製してもよい。例えば、変性カーボンブラックは、上記で引用した特許/刊行物に記載の方法を用いて作製してよい。変性カーボンブラックを作製するためのその他の方法としては、利用可能な官能基を有するカーボンブラックを、有機基を含む試薬と反応させることを含み、例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,783号に記載のものなどである。そのような官能性カーボンブラックは、上記で組み込まれる参考文献に記載の方法を用いて作製してよい。加えて、結合官能基を含有する変性カーボンブラックはまた、各々についてその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,831,194号及び同第6,660,075号、米国特許出願公開第2003‐0101901号及び同第2001‐0036994号、カナダ特許第2,351,162号、欧州特許第1 394 221号、及びPCT国際公開第04/63289号、並びにN.Tsubokawa,Polym.Sci.,17,417,1992、そして国際公開第2011/028337号に記載の方法によって作製してもよい。
【0069】
結合基の量は、変性カーボンブラックの所望される用途及び結合基の種類に応じて様々であり得る。例えば、結合有機基の総量は、窒素吸着(BET法)で測定される場合、カーボンブラック表面積(m)あたり約0.01から約6.0マイクロモルの基であってよく、約0.1から約5.0マイクロモル/m、約0.2から約3.0マイクロモル/m、又は約0.3から約2.0マイクロモル/mを含む。
【0070】
トリアゾール、ピラゾール、及び/又はイミダゾール基の例は、これらの基が、例えば化学結合によってカーボンブラックへ結合すること以外は、上述の吸着化学基の場合と同じである。結合化学基の例が、以下に示され、また参照により全てが組み込まれる国際公開第2011/028337号に示されている。
【0071】
本発明の目的のために、トリアゾールは、トリアゾール含有基を有する化学基を含む。トリアゾールは、1,2,4トリアゾール又は1,2,3トリアゾールであってよい。トリアゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリトリアゾールであってよい。1,2,4トリアゾール又は1,2,4トリアゾール含有基が、達成される特性の観点から、特にエラストマーコンポジットにおいて、吸着及び/又は結合トリアゾール化学基として好ましい。結合トリアゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下の結合トリアゾール又はその互変異性体が挙げられる:
【化7】
【化8】
【化9】
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのカーボンブラックへの結合であるか、又はそれを含む。
【0072】
このトリアゾールの式中にて、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、カーボンブラックへの結合を含み、並びに残りのXのいずれも、カーボンブラックへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A及び/若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(C3/4)であり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり;かつ
Yは、H、アルキル、アリール、又はNHである。
【0073】
具体的な例において、カーボンブラックに結合した基は、5‐メルカプト‐1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基、及び/又はトリアゾールジスルフィド基、及び/又は1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基を例とするメルカプトトリアゾリル基であってよいか、又はこれを含んでよい。カーボンブラックに結合した基は、2‐メルカプト‐1,3,4‐チアジアゾール‐5‐イル基、及び/又はチアジアゾールジスルフィド基であってよいか、又はこれを含んでよい。置換又は無置換オキサジアゾール基、並びにジアゾールを例とするその他の置換又は無置換アゾール基が、例えば直接、カーボンブラックに結合していてよい。
【0074】
本発明の目的のために、結合ピラゾールは、ピラゾール含有基を有する化学種であるか、又はそれを含む。ピラゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリピラゾールであってよい。ピラゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下のピラゾール、又はその互変異性体が挙げられる:
【化10】
【化11】
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのカーボンブラックへの結合であるか、又はそれを含む。
【0075】
このピラゾール式中において、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのX又はYは、カーボンブラックへの結合を含み、及びその他のX又はYのいずれも、同一又は異なっていて、カーボンブラックへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A及び/若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である。
【0076】
本発明の目的のために、結合イミダゾールは、イミダゾール含有基を有する化学種であるか、それを含む。イミダゾールは、チオール又はポリスルフィド含有ポリイミダゾールであってよい。イミダゾールに関して、例としては、これらに限定されないが、以下のイミダゾール又はその互変異性体が挙げられる:
【化12】
【化13】
式中、置換基は、前述のものと同じであるが、ただし、X(又はXのうちの1つ)は、結合された状態となるためのカーボンブラックへの結合であるか、又はそれを含む。
【0077】
このイミダゾールの式中にて、
は、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、カーボンブラックへの結合、H、アルキル(他所にて提供される例がここで適用される)、アリール(他所にて提供される例がここで適用される)、又はNHを含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である。
【0078】
結合有機基は、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR‐2、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩、N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORである官能基を少なくとも有するアルキル基又は芳香族基であってよいか、又はそれらを含んでよく、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数である。
【0079】
結合有機基は、式AyAr−を有する芳香族基であってよいか、又はそれを含んでよく、式中、Arは、芳香族基であり、Aは、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩、N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORであり、ここで、R及びRは、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機若しくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数であり、yは、1から芳香族基中の−CH基の総数までの整数である。
【0080】
Arは、トリアゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよく、Arは、ピラゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよく、又はArは、イミダゾール基であってよいか、若しくはそれを含んでよい。
【0081】
結合有機基は、少なくとも1つのアミノメチルフェニル基及び/若しくはカルボキシフェニルであってよいか、又はそれらを含んでよい。
【0082】
結合有機基は、X−C−S−S−C−Xであってよいか、又はそれを含んでよく、ここで、少なくとも一方のXは、カーボンブラックへの結合であり、他方のXは、カーボンブラックへの結合、又は本明細書で述べる置換基Aなどの官能基である。
【0083】
結合有機基は、少なくとも1つの芳香族スルフィド又はポリスルフィドであってよいか、又はそれを含んでよい。
【0084】
選択肢として、1つ以上の追加のしかし異なる化学基が、カーボンブラック上に結合されていてよく、結合トリアゾール、結合ピラゾール、及び/又は結合イミダゾールとは異なる1つ以上の追加の化学基などである。この結合化学基は、前述の、及び/又は上述した特許文献中のいずれの結合化学基であってもよく、結合アルキル基及び/又は結合芳香族基などであり、例えば、アミノメチルフェニル、カルボキシフェニル、又はフェニルジスルフィドフェニル(C−S−S−C)である。
【0085】
本発明の目的のために、本発明の変性カーボンブラックのさらなる型は、変性カーボンブラックが、少なくとも1,2,4トリアゾールなど、少なくとも硫黄含有置換基を有する1,2,4トリアゾールなどの少なくとも1つのトリアゾールを、例えばその他のいずれかの芳香族基の存在下又は非存在下にて結合されて有するカーボンブラックを含む場合である。少なくとも1つのトリアゾールなどの結合化学基を有する変性カーボンブラックは、変性されていない同一のカーボンブラックと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合、ヒステリシスを改善することができる。ここでも、この試験性質を確認するために、実施例で示されるエラストマー配合物を用いてよい。本発明のさらなる変性カーボンブラックは、以下のトリアゾ−ル又はその互変異性体を含むトリアゾールをその上に有するカーボンブラックであるか、又はそれを含む:
【化14】
【化15】
式中、Zは、アルキレン基(例:C‐Cアルキレン)であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、カーボンブラックへの結合を含み、並びに残りのXのいずれも、カーボンブラックへの結合、又は本明細書で述べる種々の置換基A若しくはRなどの官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、若しくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上のその官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、若しくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換若しくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CH2)O(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CH3/4であり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
トリアゾールは、所望に応じて、NDD’置換基によってN置換されていてよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである。
この型の変性カーボンブラックは、いずれの吸着化学基を有していても、又は有していなくてもよい。
【0086】
本出願全体を通して、カーボンブラック上への結合化学基に関して、化学基は、化学基からカーボンブラックへの少なくとも1つの結合を通して結合されている。本出願において、置換基Xは、結合を表してよいか、又は結合を含んでよい。本発明の目的のために、置換基Xは、結合、並びに、例えばカーボンブラックへの結合を達成する目的のその他の置換基又は元素を含んでよいことは理解されたい。例えば、Xは、結合であってよいか、又は結合から成っていてよい。別の選択肢として、Xは、結合を含んでよい。例えば、Xは、リンカー基を含む結合であってよい。リンカー基は、シランリンカー基、又はシランカップリング剤由来のものであってよい。リンカー基は、Si含有基、Ti含有基、Cr含有基、及び/若しくはZr含有基、又はシリカを例とする金属酸化物カーボンブラックなどのカーボンブラックへの化学基の結合を促進するその他の適切なリンカー基であってよいか、又はそれを含んでよい。本発明の目的のために適合することができるそのようなリンカーの例としては、いずれもその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,947,436号;同第5,159,009号;及び同第5,116,886号に示されているものが挙げられる。
【0087】
本発明において、本発明の変性カーボンブラックの様々な種類(吸着及び/又は結合基)について、(1以上の化学基が結合及び/又は吸着している)変性カーボンブラックの調製は、少なくとも1つのエラストマーなど、エラストマー組成物を形成するための成分などのその他の成分がカーボンブラックに導入される前に行ってよく、行うべきである。言い換えると、本発明で用いられる(1若しくは複数の)化学基は、少なくとも1つのエラストマー、若しくは少なくとも1つのポリマー、及び/又は配合物のその他の成分との混合、又は配合、又はそれ以外での接触を行う前に、(1若しくは複数の)カーボンブラックへ予め吸着及び/又は予め結合される。本発明者らは、少なくとも1つのエラストマー及び/又は少なくとも1つのポリマーとの配合を試みるなど、カーボンブラックの変性をその他の成分の存在下(例:in situ)で試みる場合、本出願によって達成される特性における種々の向上がまったく達成されない、すなわち、ヒステリシス及び/又は耐摩耗性が減少してしまう可能性があることを見出した。
【0088】
本発明の目的のために、本発明の変性カーボンブラックのいずれの組み合わせを用いてもよい。例えば、本明細書で述べるように、様々な型の変性カーボンブラックについて記載してきた。例えば、本発明の変性カーボンブラックの1つの型は、吸着基を有し、所望に応じて結合化学基も有していてよいカーボンブラックである。本発明の別の型は、結合化学基を有し、いずれの吸着基も持たないカーボンブラックを含む。したがって、1つの選択肢として、エラストマー配合物などの配合物は、本発明の種々の変性カーボンブラックの組み合わせを含んでよく、例えば、1つ以上の吸着化学基を有するいくつかの変性カーボンブラックを、結合化学基を有する1つ以上の他の変性カーボンブラックと組み合わせて用いてよい。したがって、エラストマー又はポリマー配合物などの配合物中に、いかなる組み合わせの変性カーボンブラックを用いてもよい。
【0089】
本発明の目的のために、変性カーボンブラックが吸着化学基及び結合化学基を有する場合、吸着化学基のカーボンブラック上への配置は、化学基の結合の前、結合の間、及び/若しくは結合後に行ってよく、又は、2つ以上の吸着基及び/若しくは2つ以上の結合基がカーボンブラック上に存在する場合は、いかなる順序で行ってもよい。
【0090】
本発明は、さらに、エラストマー組成物、又はエラストマーコンポジットに関し、さらにはゴム組成物又はコンポジットも考慮される。エラストマー組成物は、少なくとも1つのエラストマー及び少なくとも1つの本発明の変性カーボンブラック、並びに所望に応じて、エラストマー配合物に用いられる1つ以上の従来の成分を含有する。2つ以上の種類の変性カーボンブラックを用いてよい。
【0091】
代表的なエラストマーとしては、これらに限定されないが、ゴム、1,3‐ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、アルキルがメチル、エチル、プロピルなどであってよい2,3‐ジアルキル‐1,3‐ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどのポリマー(例:ホモポリマー、コポリマー、及び/又はターポリマー)が挙げられる。このエラストマーは、示差走査熱分析(DSC)によって測定される場合、約−120℃から約0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し得る。例としては、これらに限定されないが、溶液SBR(又はSSBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム及び塩素化ゴムなどのその誘導体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン‐ブタジエンコポリマー、並びにこれらのいずれかの油展誘導体が挙げられる。前述のいずれのもののブレンドも用いてよい。特に適する合成ゴムとしては:19部のスチレンと81部のブタジエンとのコポリマー、30部のスチレンと70部のブタジエンとのコポリマー、43部のスチレンと57部のブタジエンとのコポリマー、及び50部のスチレンと50部のブタジエンとのコポリマーなどの、約10から約70重量パーセントのスチレンと約90から約30重量パーセントのブタジエンとのコポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレンなどの共役ジエンのポリマー及びコポリマー、並びにそのような共役ジエンと、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2‐ビニル‐ピリジン、5‐メチル‐2‐ビニルピリジン、5‐エチル‐2‐ビニルピリジン、2‐メチル‐5‐ビニルピリジン、アリル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アクリル酸及びジアルキルアクリル酸アミドなどのアルファメチレンカルボン酸並びにそのエステル及びアミドなどのそれと共重合可能であるエチレン性基含有モノマーとのコポリマーが挙げられる。本発明での使用に適するものとしては、さらに、エチレンと、プロピレン、1‐ブテン、及び1‐ペンテンなどのその他の高級アルファオレフィンとのコポリマーである。以下でさらに述べるように、ゴム組成物は、エラストマー及びカーボンブラック及びカップリング剤に加えて、種々の加工助剤、エキステンダーオイル、老化防止剤、及び/又はその他の添加剤を含有してよい。
【0092】
1若しくは複数のエラストマーは、官能性エラストマーであってよい。例えば、エラストマーは、化学基を用いて官能化されたSBRであってよい。例えば、官能化された基は、カルボン酸、ヒドロキシル、トリアゾール、(単数若しくは複数の)アミノシラン、エポキシ、スズ結合基等であってもよい。本発明の変性カーボンブラックには、1若しくは複数のヒステリシス特性を改善する能力がある。
【0093】
選択肢として、連続フィードされるラテックス、及びカーボンブラックスラリーなどのカーボンブラックを、凝集タンク内に導入して、撹拌してよい。これは、「湿式混合」法としても知られる。ラテックス及びカーボンブラックスラリーは、凝集タンク内で混合及び凝集されて、「ウェットクラム(wet crumb)」と称される小ビーズとされてよい。米国特許第4,029,633号;同第3,048,559号;同第6,048,923号;同第6,929,783号;同第6,908,961号;同第4,271,213号;同第5,753,742号;及び同第6,521,691号に記載の種々のプロセス及び技術を、カーボンブラックとエラストマーとのこの組み合わせ、及びラテックスの凝集に用いてよい。これらの特許文献の各々は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の変性カーボンブラックが用いられること以外はこれらの特許文献及びプロセスで述べられる種々の技術、配合物、ならびにその他のパラメータを用いることで、この種のエラストマー配合物を本発明の変性カーボンブラックと共に用いることができる。
【0094】
代表的な天然ゴムラテックスとしては、これらに限定されないが、フィールドラテックス、ラテックス濃縮物(例えば、蒸発、遠心分離、又はクリーミングによって作製される)、スキムラテックス(例:遠心分離によるラテックス濃縮物作製後に残された上清)、及びこれらのいずれかの2つ以上のいずれかの割合でのブレンドが挙げられる。ラテックスは、選択された湿式マスターバッチプロセス(wet masterbatch process)、及び意図する目的又は最終ゴム製品の用途に対して適切なものであるべきである。ラテックスは、通常、水性キャリア液体中にて提供される。適切なラテックス又はラテックスブレンドの選択は、本開示の有益性、及び本業界にて一般的に十分に認識されている選択基準の知識が与えられる場合、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0095】
エラストマーコンポジットは、少なくとも約40phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、少なくとも約65phr、もしくは少なくとも約70phrのカーボンブラック、例えば、約40から約70phr、約50から約75phr、約55から約80phr、60から約85phr、65から約90phr、70から約90phr、40から約60phr、50と約65phrとの間、55から約80phr、約60から約90phr、約65から約80phr、もしくは約70から約80phr、のカーボンブラック充填量で作製されてよい。
【0096】
1つ以上のカップリング剤を本発明で用いてよい。カップリング剤は、1つ以上のシランカップリング剤、1つ以上のジルコネートカップリング剤、1つ以上のチタネートカップリング剤、1つ以上のニトロカップリング剤、又はこれらのいずれかの組み合わせであってよいか、又はそれを含んでよい。カップリング剤は、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(例:エボニックインダストリーからのSi 69、ストラクトール社(Struktol Company)からのStruktol SCA98)、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(例:エボニックインダストリーからのSi 75及びSi 266、ストラクトール社からのStruktol SCA985)、3‐チオシアナートプロピル‐トリエトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのSi 264)、ガンマ‐メルカプトプロピル‐トリメトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのVP Si 163、ストラクトール社からのStruktol SCA989)、ガンマ‐メルカプトプロピル‐トリエトキシシラン(例:エボニックインダストリーからのVP Si 263)、ジルコニウムジネオアルカノラートジ(3‐メルカプト)プロピオナート‐O(zirconium dineoalkanolatodi(3−mercapto) propionato−O)、N,N’‐ビス(2‐メチル‐2‐ニトロプロピル)‐1,6‐ジアミノへキサン、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ,ウイルトン,コネチカット州、からのNXTシランカップリング剤(チオカルボキシレート官能シラン:3‐オクタノイルチオ‐1‐プロピルトリエトキシシラン)、及び/又は化学的に類似するか、もしくは1つ以上の同じ化学基を有するカップリング剤であってよいか、又はそれを含んでよい。商品名によるカップリング剤のさらなる具体例としては、エボニックインダストリーからのVP Si 363が挙げられるが、これに限定されない。カップリング剤は、エラストマーコンポジット中に、いかなる量で存在してもよい。例えば、カップリング剤は、エラストマーコンポジット中に、シリカなどのカーボンブラック100部あたり少なくとも0.2部(質量基準)、シリカなどのカーボンブラック100部あたり約0.2から60部、シリカなどのカーボンブラック100部あたり約1から30部、シリカなどのカーボンブラック100部あたり約2から15部、又はシリカなどのカーボンブラック100部あたり約5から10部の量で存在してよい。
【0097】
本発明のプロセスのいずれにおいても、1つ以上の酸化防止剤を用いてよい。酸化防止剤(劣化防止剤の一例)は、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イミダゾール系酸化防止剤、カルバミン酸金属塩、(1もしくは複数の)パラ‐フェニレンジアミン、及び/又は(1もしくは複数の)ジヒドロトリメチルキノリン、高分子化キニン酸化防止剤、及び/又はワックス、及び/又はエラストマー配合物で用いられるその他の酸化防止剤であってよい。具体例としては、N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(6‐PPD、例:住友化学株式会社より入手可能なANTIGENE 6C、及び大内新興化学工業株式会社より入手可能なNOCLAC 6C)、精工化学株式会社製の「Ozonon」6C、重合1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチルキノリン、R.T.バンダービルトより入手可能であるAgerite Resin D、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられるが、これらに限定されない。その他の代表的な酸化防止剤は、例えば、ジフェニル‐p‐フェニレンジアミン、及び、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるThe Vanderbilt Rubber Handbook (1978), pages 344‐346に開示されるものなどのその他のものであり得る。酸化防止剤及びオゾン化防止剤はまとめて、劣化防止剤である。これらの劣化防止剤は、実例として、アミン、フェノール、イミダゾール、ワックス、イミダゾールの金属塩、及びこれらの組み合わせなどの化学官能基を含む。本発明で有効である具体的な劣化防止剤としては、実例として、N‐イソプロピル‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン、N‐(1‐メチルヘプチル)‐N’‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン、6‐エトキシ‐2,2,4‐トリメチル‐1,2‐ジヒドロキノリン、Ν,Ν’‐ジフェニル‐p‐フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’‐ビス(a,a’‐ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’‐ジクミル‐ジフェニルアミン、2,5‐ジ‐tert‐ブチル‐ヒドロキノン、2,2’‐メチレン‐ビス(4‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、2,2’‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐メチルシクロへキシルフェノール)、4,4’‐チオ‐ビス(3‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、4,4’‐ブチリデン‐ビス(3‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、トリス(ノニル化フェニル)ホスファイト、トリス‐(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト、2‐メルカプトベンズイミダゾール、及び亜鉛2‐メルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。例は、少なくとも1つのアミン及び1つのイミダゾールを含む。所望に応じて、重合キノリンを用いてよい。酸化防止剤の相対量は、0.5から3部のアミン、0.5から2.5部のイミダゾール、及び0.5から1.5部の所望に応じて用いてよい重合キノリンを含んでよい。劣化防止剤のアミンは、4,4’‐ビス(アルファ‐ジメチルベンジル)ジフェニルアミンであってよく、イミダゾールは、亜鉛2‐メルカプトトルイミダゾールであってよく、及び重合キノリンは、重合1,2‐ジヒドロ‐2,2,4‐トリメチルキノリンであってよい。一般的に、劣化防止剤(例:(1もしくは複数の)酸化防止剤)は、通常、ポリマー又はゴム系100重量部あたり0.1から20重量部(phr)存在する。酸化防止剤の典型的な量は、例えば、約1から約5phrを含み得る。
【0098】
ゴム配合物は、タイヤ又はタイヤ部品用であってよく、親水性カーボンブラックを用いてよい。親水性カーボンブラックは、カーボンブラックに結合した有機基を有していてよく、この有機基は、置換もしくは無置換のアゾール基であるか、又はそれを含む。この基は、メルカプトトリアゾールを例とするトリアゾール、及び/又はトリアゾールジスルフィドであてよい。この基は、チオール置換チアジアゾールを例とするチアジアゾールであってよい。
【0099】
変性カーボンブラックは、ゴム、加工助剤、促進剤、架橋及び硬化剤、酸化防止剤、オゾン化防止剤、カーボンブラック、樹脂など、従来のタイヤ配合成分及び添加剤と組み合わされてタイヤ配合物が作製されてよい。加工助剤としては、これらに限定されないが、メルカプタン、合成オイル、石油及び植物油、樹脂、ロジンなどの、可塑剤、粘着性付与剤、エキステンダー、化学コンディショナー、均質剤、及びペプタイザーが挙げられる。促進剤としては、アミン、グアニジン、チオウレア、チウラム、スルフェンアミド、チオカルバメート、キサンテート、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。架橋及び硬化剤としては、過酸化物、硫黄、硫黄ドナー、促進剤、酸化亜鉛、及び脂肪酸が挙げられる。カーボンブラックとしては、クレイ、ベントナイト、二酸化チタン、タルク、硫酸カルシウム、シリカ、シリケート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0100】
本発明の変性カーボンブラックをエラストマーコンポジットのその他の成分と組み合わせるには、従来のいかなる混合手順を用いてもよい。ゴムのコンパウンド化に用いられる典型的な手順は、Maurice Morton, RUBBER TECHNOLOGY 3rd Edition, Van Norstrand Reinhold Company, New York 1987, and 2nd Edition, Van Nordstrand Reinhold Company, New York 1973に記載されている。本発明の変性カーボンブラック生成物及びエラストマーを含む成分の混合物は、好ましくは、120℃から180℃の間の温度にて、熱機械的に一緒に混合される。
【0101】
例えば、本発明のエラストマーコンポジットは、バンバリー、インターメッシュミキサー、押出機などの密閉式ミキサーによる、ミルによる、又はその他の適切な装置を利用することによる一段階又は多段階の混合を例えば用いて均質なブレンドを生成させる適切な技術によって得ることができる。具体的な実施においては、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる1996年9月24日公開の米国特許第5,559,169号に記載のものなどの技術が用いられる。
【0102】
硬化は、本技術分野で公知の技術によって行われてよい。例えば、本発明の変性カーボンブラックは、硫黄硬化、過酸化物硬化などが行われたゴム配合物に用いられてよい。
【0103】
本発明の組成物(例えば、エラストマー又は他の組成物又は調合物)は、選択肢として、高PAHを有するカーボンブラックを含むことができ、又は本発明のカーボンブラックと共に、従来のカーボンブラック(又は任意の他のフィラー又は補強剤)を含むことができる。好ましくは、高PAHカーボンブラック又は従来のカーボンブラックの量は、存在する合計カーボンブラックに対して、ゼロ〜少量、例えば30wt%以下(例えば、0wt%〜30wt%、又は0.01wt%〜10wt%、又は0.01wt%〜1wt%)である。
【0104】
当業者に周知の従来技術を、エラストマー組成物を調製し、そして変性カーボンブラックを取り込むために使用できる。ゴム又はエラストマーコンパウンドの混合は、ゴム混合技術において当業者に公知の方法によって達成できる。例えば、成分は、典型的には、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的段階に続く生産的混合段階において混合される。最終の硬化物は、典型的には「生産的」混合段階と通常呼ばれる最終段階(混合は典型的には温度、又は先行する非生産的混合段階の混合温度より低い究極温度で生じる)において混合される。「非生産的」及び「生産的」混合段階(”non−productive” and ”productive” mix stages)の用語は、ゴム混合技術における当業者に周知である。米国特許第5、763、388号明細書、米国特許第6、048、923号明細書、米国特許第6、841、606号明細書、米国特許第6、646、028号明細書、米国特許第6、929、783号明細書、米国特許第7、101、922号明細書、及び米国特許第7、105、595号明細書中に開示されているもの等の充填されたエラストマー組成物を生産するための湿式マスターバッチ方法はまた、本発明の種々の態様により、カーボンブラックを含有するエラストマー組成物を生産するのに使用でき、そしてこれらの特許は、参照によりその全てを本明細書中に取り込む。
【0105】
エラストマー組成物又は本発明のゴムマトリックスに関して、エラストマー組成物は、本発明の少なくとも1種の変性カーボンブラック及び少なくとも1種のエラストマーを含む。エラストマー組成物は、上記で確認した態様のいずれかにおいて、予め確認された機械的特性の1つ又は2つ以上を有することができる。タイヤ及び工業製品を含む製造の種々の物品は、本発明のエラストマー組成物からなる少なくとも1種の成分を含むことができる。例えば、本発明のエラストマー組成物は、タイヤ、ベルト又はホースの製造において等の補強材料との複合物を生成するために使用できる。好ましくは、本発明の組成物は、タイヤの形態、及び例えば、タイヤのトレッド、ワイヤーコート、ビードコート、サイドウォール、アペックス、チャファー及びプライコートの1種又は2種以上を含むさらに特にタイヤの構成部分である。
【0106】
本発明の変性カーボンブラックは、さまざまな方法で作製され得る。本発明で、低PAH量を有する変性カーボンブラックは、従来のカーボンブラックで使用したのと同じカーボンブラック反応炉を使用して作製され得る。さらに、そのカーボンブラックは、通常、市販のラバーグレードブラック又はタイヤグレードブラックと同じ様式で作製され、そしてそれらには、N234カーボンブラックが含まれる。しかしながら、本発明の方法において、滞留時間及び/又は温度は、カーボンブラックも含む反応流中のPAH種の実質的な破壊(そして、通常カーボンブラックの少なくとも部分的な表面不活性化)をもたらし、次いで、カーボンブラックを含む反応流をクエンチするように調整される。したがって、次のカーボンブラック:カーボンブラックのN100シリーズ、N200シリーズ、N300シリーズ、N400シリーズ、N500シリーズ、N600シリーズ、かつ/又はN700シリーズ、N110〜N990 ASTMカーボンブラック(例えば、N110、N121、N220、N231、N234、N299、N326、N330、N339、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N650、N660、N683、N762、N765、N774、かつ/又はN990)、N220〜N375 ASTMカーボンブラックを作製するのに使用されるプロセスが、ここに採用され得るが、クエンチ前の滞留時間を延長し、かつ/又は反応炉内の温度を高くする。本発明は、強化グレードのカーボンブラックに特に有用である。
【0107】
反応流は、カーボンブラックの表面積の形成後又は成形後(例えば、反応炉後)に反応炉内で高熱に晒されてもよい。それほど好ましくないが、熱処理は、反応炉を既に出た成形前のカーボンブラックに対して行われてもよい。熱処理は、カーボンブラック表面からのPAHを十分破壊、及び/又は阻止するために、1200℃〜1800℃、例えば1300℃〜1700℃、1300℃〜1600℃等の温度であり得る。熱処理は、PAHレベルが、75ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下であるような時間であり得、そしてここで、先に説明したように、表面が不活性化される。この熱処理のための時間は、30分〜4時間以上であり得る。随意に、そして好ましくは、その後のカーボンブラックの表面は、黒鉛化されていない。高熱へのこの暴露は、カーボンブラックに表面積が生じた後に反応炉内で起こり得る。
【0108】
例えば、Cabot Corporation製のVulcan(登録商標)7H Carbon BlackやVulcan(登録商標)J Carbon Blacks、又は他の市販グレードのカーボンブラックを作製するのに使用されるプロセスは、前記の温度に基づいて、及び/又は反応クエンチ前の滞留時間を延長することによって、かつ/若しくはPAH種を破壊若しくは実質的に破壊するために、反応クエンチ前に反応炉内の温度を上げることによって改変され得る。この改変プロセスにおいて、反応クエンチ前の、カーボンブラックを含む反応流の滞留時間は、約10〜約400ミリ秒(ms)、例えば20ms〜300ms、30ms〜300ms、50ms〜300ms、70ms〜300ms、80ms〜300ms、100ms〜400msの等であり得る。滞留時間は、約1,200℃〜約1,800℃(例えば、1,200℃〜1,700℃)の温度にて約10〜約400ミリ秒であり得る。
【0109】
したがって、本発明は、変性カーボンブラックを製造するための方法に関し、その方法には、若しくは複数の導入位置で、少なくとも1つのカーボンブラックをもたらす原料を反応炉内に導入し、そして、この原料と、高温ガス流とを組み合わせて、反応流中でカーボンブラックとPAH種を形成することが含まれる。反応流は、滞留時間の間、かつPAHを実質的に破壊するのに十分な温度にて、1若しくは複数の導入位置から下流に移動し、その後、カーボンブラックを含む反応流をクエンチする(例えば、反応クエンチ)。今日、標準となっているカーボンブラック製造プロセス、特にゴムグレードのカーボンブラック製造プロセスにおいて、滞留時間、及び/又は温度は、反応流中の実質的にすべてのPAH種を破壊するのに不十分である。しかしながら、先に述べられているように、PAHを破壊するために滞留時間が延長され、かつ/又は温度が上げられたら、通常、これは、カーボンブラックの少なくとも部分的な表面不活性化をもたらし、そしてそれは、バウンドゴムの割合(%)等のカーボンブラック及びエラストマーの1若しくは複数の特性、かつ/又は、例えば応力/歪み及び/若しくは1若しくは複数の表面エネルギー(若しくは界面電位)特性等の他の性能特性に有害に影響を及ぼすであろう。本発明のプロセスにおいて、カーボンブラック反応流からPAHを破壊するプロセスは、先に述べているように、カーボンブラックの少なくとも部分的な表面不活性化をもたらすであろう。
【0110】
通常、従来のカーボンブラック(例えば、ゴムグレードのブラック)を作製する従来のプロセスにおいて、PAH量は、カーボンブラック上に存在していて、かつ重要であり得る。本発明において、反応流中のPAHを実質的に破壊するために滞留時間を延長する一例は、例えば、特定のグレードのカーボンブラックを作製するために一般的に使用される従来の時間から少なくとも25%の滞留時間の延長になるであろう(±10%又は±5%のSTSA)。例えば、(従来のプロセスからの)滞留時間は、25%〜400%以上、例えば45%〜400%以上、50%〜400%以上、75%〜400%以上、100%〜400%以上、125%〜400%以上ほど延長されてもよい。滞留時間のこの延長は、通常、特定のグレードのカーボンブラックのための同じカーボンブラック製造プロセスと比較して、又は同じ(10%以内又は5%以内)STSAを有するカーボンブラックと比較して、滞留時間のさらに10ミリ秒〜300ミリ秒の延長につながり得る。実施例のように、したがって、滞留時間は、30ミリ秒〜400ミリ秒であってもよく、そしてそれは、通常、遅れたクエンチ(例えば、遅れた反応クエンチ)をもたらし、したがって、カーボンブラックを含む反応流は、カーボンブラック上でのPAHの縮合を妨げ、かつ/又はPAHの焼却若しくは破壊をもたらす高温下、反応炉内でより多くの時間(滞留時間)を過ごす。
【0111】
カーボンブラック生成原料は、カーボンブラックを形成させる通常使用されるカーボンブラック生成原料はどれも使用することができる。例えば、炭化水素材料はどれも使用できる。反応条件下で容易に蒸発させることが可能であるカーボンブラック生成炭化水素原料はどれも適した原料であり得る。例えば、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族類、ある種の飽和炭化水素、及びケロシン、ナフタリン、テルペン、エチレンタール、芳香族類運転在庫品などを使用することができる。
【0112】
カーボンブラック生成原料と混合される高温ガス流については、固体、液体及び/又は気体の燃料を限定はされないが例えば空気、酸素、空気と酸素との混合物等の適した酸化体流と接触させることによって形成することができる高温燃焼ガスと見なすことができる。その代わりに、液体あるいは気体の燃料を加えないで予熱酸化体を通過させてもよい。高温ガスを形成するために酸化体流を接触させるのに好適な燃料の例としては天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコール、あるいは灯油などの容易に可燃性のガス、蒸気あるいは液体の流れはどれもが含まれる。通常は、炭素含有成分の含有量の高い燃料、そして特に炭化水素を使用することが好ましい。空気対本発明のカーボンブラックを生成するために用いられる燃料の割合は約1:1(化学量論比)〜無限大であってよい。上述のごとく、高温ガスの形成を促進するために酸化体流は予熱してもよい。
【0113】
本発明は適したカーボンブラック製造用反応炉はどれでも使用して実施することができる。例えば、図2はそのような反応炉の1例の断面図を示す。通常、この種の反応炉は空気のような酸化体と混合される燃焼ガスが必要である。通常、ガス混合物は燃焼室中に導入され、そして任意の適した方法で着火される。ガス流は図2の左から右(A方向)である。一度着火されると、高温ガス混合物は、反応炉を移動させることができ、そしてカーボンブラック製造に適した炭化水素原料と接触させられる。図2において、そして単に1例として、燃料は位置1で導入することができそして酸化体は位置2で導入することができる。他の位置も可能である。第1の位置3(1箇所以上)は、カーボンブラック生成原料の導入位置の一例である。第2及び第3の位置3は、追加的なカーボンブラック生成原料、又は反応炉の温度を高めるための酸化剤の導入位置の例である。位置4は、追加的な随意の酸化剤の一例である。位置5は、反応クエンチに適した位置の一例である。平行な2つの線は、反応炉が任意の長さであり得ることを示す。種々のD数は、反応炉の種々の寸法(又は長さ)を示す。D1〜D8は、任意の適した直径であり得て、そして同一でも異なってよい。例えば、D2は、D1及びD8より小さくてもよく、D1とD8は同一でも異なってよい。ゾーンL1又はゾーンL2は、第1温度ゾーンの例であり、そしてゾーンL3は、第2温度ゾーンの例である。他の反応炉の設計及び形状を用いることができる。例えば、D1、D2、及び/又はD3が同じ又は同様のサイズを有することができる。D5、D6、及び/又はD7が、同じ又は同様のサイズを有することができる。
【0114】
通常は、カーボンブラック生成原料は図2に示される複数の流れ3(L2内の)によって反応炉中に投入することができ、この複数の流れ3は高温燃焼ガスとカーボンブラック生成原料の混合及びせん断の高速化を保証するために高温燃焼ガス流の内部領域中に浸透する。
【0115】
導入されたカーボンブラックもたらす原料は、一つの流れ又は複数の流れ等のあらゆる従来の方法で導入されることができ、かつ原料の導入はいずれの速度であっても生じ得る。複数の流れについて、それぞれの流れの速度は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0116】
カーボンブラックを含む反応混合物が、クエンチされた(すなわち、反応クエンチされた)後に、冷やされたガスは、カーボンブラックが回収されるいずれかの従来の冷却及び分離手段へと下ってくる。ガス流からのカーボンブラックの分離は、沈降分離装置、サイクロン分離装置又はバグフィルター等の従来の手段によって容易に達成される。例えば、水であっても、化学反応を止めるのに好適な他の液体であってもよいクエンチ流体が、注入され得る。カーボンブラックが回収された後に、それは、本明細書中に記載したように、少なくとも1つの化学基をカーボンブラック上に結合、かつ/又は吸着することによって処理(変性)されてもよい。
【0117】
本発明の選択されたカーボンブラックのPAHレベルは、同じSTSA(±10%又は±5%)を有する選択されたカーボンブラックと比較したとき、かつ不活性化のないカーボンブラック表面が生じるか、そうでなければ、(より高い温度、かつ/又は延長された温度を除いて)同じ原子炉条件及び原料を使用した場合に、ppmレベルに基づいて、ppm重量ベースで10%〜50%、20%〜50%、又は30%〜100%以上低減され得る。
【0118】
この方法でのカーボンブラックの製造は、従来の方法、例えば米国特許第6、926、877号明細書;米国特許第6、485、693号明細書;米国特許第6、273、142号明細書;米国特許第6、024、135号明細書;米国特許第6、348、181号明細書;米国特許第6、156、837号明細書;米国特許第6、086、841号明細書;及び米国特許第5、190、739号明細書等に記載された従来方法に、そこに記載された相違点又は変更点を加えて、従来のファーネスカーボンブラック反応炉で行うことができる。
【0119】
本発明の変性カーボンブラックを、従来のカーボンブラックと同じようとで用いることができる。本発明の1種以上の種類の変性カーボンブラックを、任意の配合物、組成物、又は用途において用いることができる。
【0120】
本発明の変性カーボンブラックは、例えば、タイヤにおけるもの等のゴム加流物の調製において有用である。タイヤの生産において、満足な耐摩耗性及びヒステリシス性能を有するタイヤを生成するカーボンブラックを利用することが一般的に望ましい。タイヤの溝の摩耗特性は、耐摩耗性に関連する。耐摩耗性が高いほど、タイヤは、すり減らずにより長いマイルで持続するであろう。ゴムコンパウンドのヒステリシスは、ゴムコンパウンドを変形させるために適用されたエネルギーと、ゴムコンパウンドがその初期の変形されていない状態に回復するにつれて放出されるエネルギーとの相違を意味する。より低いヒステリシス値を有するタイヤは、転がり抵抗を低下させ、したがってタイヤを利用した乗り物の燃料消費を低下させることができる。したがって、タイヤにより高い耐摩耗性及びより低いヒステリシスを与えることができるカーボンブラックが特に望ましい。
【0121】
《1》
約70m/g〜約250m/gのSTSAを有し、かつアニールされた表面を有する変性カーボンブラックであって、少なくとも1種の化学基を結合かつ/又は吸着しているファーネスカーボンブラックである、変性カーボンブラック。
《2》
前記ファーネスカーボンブラックが、強化グレードのカーボンブラックである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《3》
75ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《4》
50ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《5》
20ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《6》
10ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《7》
5ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《8》
1ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《9》
0.001ppm〜5ppmのPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《10》
75ppm以下のPAH含量を有する変性カーボンブラックであって、前記PAHがPAH22含有量に基づいて決定され、ファーネスカーボンブラックであり、かつ少なくとも1種の化学基を結合かつ/又は吸着しているカーボンブラックを含む、変性カーボンブラック。
《11》
10ppm以下のPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《12》
0.001ppm〜8ppmのPAH含量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《13》
表面が不活性化されている、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《14》
結合した又は吸着した化学基を有さず、同等のSTSAを有するカーボンブラックと比較して、表面活性特性の少なくとも1つが、少なくとも10%低下しているカーボンブラックの強化グレードである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《15》
前記表面活性特性が、前記変性カーボンブラックを含むエラストマーコンポジットのバウンドゴム含量として測定される、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《16》
前記表面活性特性が、少なくとも1つの強化性能特性である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《17》
前記強化性能特性が、応力/歪みである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《18》
前記強化性能特性が、少なくとも1つの界面電位特性である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《19》
前記カーボンブラックが、アニールされている、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《20》
強化グレードのカーボンブラックである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《21》
少なくとも1つの化学基を結合しているカーボンブラックを含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《22》
少なくとも1つの化学基を吸着しているカーボンブラックを含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《23》
前記吸着している基が、以下のトリアゾ−ルである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化16】

【化17】
又はその互変異性体
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、同一又は異なっていて、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、又はCFであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《24》
前記トリアゾ−ルが、以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化18】
又はその互変異性体
(式中、Eは、wが2から8であるS、SSO、SSO、SOSO、SOSOである)。
《25》
前記トリアゾ−ルが以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化19】
又はその互変異性体。
《26》
前記トリアゾ−ルが以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化20】
又はその互変異性体
(式中、Yは、H又はNHである)。
《27》
3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐チオール、3‐アミノ‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イルジスルフィド、1,2,4‐トリアゾール‐3‐チオール、もしくは1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルジスルフィド、又はこれらのいずれかの組み合わせを、その上に吸着して有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《28》
以下のピラゾ−ルを吸着して有している、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化21】

【化22】
又はその互変異性体
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
X及びYは、独立して、H、NH、SH、NHNH、CHO、COOR、COOH、CONR、CN、CH、OH、NDD’、もしくはCFであるか、又はYは、Rであり、ここで、X及びYの各々は、同一又は異なっており;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHの場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルであり、
Eは、複数硫黄含有基である)。
《29》
前記吸着している基が以下である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
a)少なくとも1種のトリアゾール;
b)少なくとも1種のピラゾール;又は
これらのいずれかの組み合わせ、
ここで、前記変性フィラーは、エラストマー組成物中に存在する場合、修飾されていない前記フィラーと比較して、耐摩耗性が改善される。
《30》
a)が存在し、かつそれが1,2,4−トリアゾ−ルである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《31》
a)又はb)が、硫黄含有置換基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《32》
それに結合した少なくとも1つの化学基をさらに含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《33》
前記化学基が、少なくとも1つの有機基である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《34》
前記有機基が以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
a)少なくとも1つのトリアゾール;
b)少なくとも1つのピラゾール;
c)少なくとも1つのイミダゾール;又は、
これらのいずれかの組み合わせ。
《35》
前記有機基が、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化23】
又はその互変異性体
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
Xは、前記フィラーへの結合を含み
Yは、H、アルキル、アリール、又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;かつ
Qは、(C3/4)、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6である)。
《36》
前記有機基が、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化24】

【化25】
又はその互変異性体
(式中、Zは、アルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、RがHである場合、1から8の整数であり、それ以外の場合、kは、2から8であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《37》
前記有機基が、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化26】
又はその互変異性体
(式中、少なくとも1つのXが、前記結合であり、その他のXが、H、NH、又はOHである)。
《38》
前記有機基が、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化27】
又はその互変異性体
(式中、EはSであり、
Xは、H、OH、もしくはNHであるか、又は前記フィラーへの結合を含み、且つ、
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含む)。
《39》
前記トリアゾールが、前記カーボンブラックに結合し、1,2,4‐トリアゾール‐3‐イル基である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《40》
前記トリアゾールが、前記カーボンブラックに結合し、3‐メルカプト‐1,2,4‐トリアゾール‐5‐イル基である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《41》
前記有機基が、前記カーボンブラックに結合しているイミダゾールである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《42》
前記ピラゾールが、前記カーボンブラックに結合しており、かつ以下を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化28】

【化29】
又はその互変異性体
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
各Xは、前記フィラーへの結合、H、アルキル、アリール、又はNHを含むが、ただし、少なくとも1つのXは、結合を含み;
Yは、H又はNHであり;
Aは、SR、SSOH、SONRR、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びRは、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC−C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;かつ
Eは、複数硫黄含有基である)。
《43》
前記有機基が、脂肪族基又は芳香族基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《44》
前記有機基が、次の官能基を少なくとも有するアルキル基又は芳香族基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORである(ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C12炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機もしくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数である)。
《45》
前記有機基が、式AyAr−を有する芳香族基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック(式中、Arは、芳香族基であり、Aは、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORであり、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機もしくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数であり、yは、1から前記芳香族基中の−CH基の総数までの整数である)。
《46》
前記化学基が結合しており、かつ式AyAr−を有する芳香族基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック(式中、Arは、芳香族基であり、Aは、R、OR、COR、COOR、OCOR、カルボン酸塩、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホン酸塩、NR(COR)、CONR、NO、PO、ホスホン酸塩、リン酸塩 N=NR、NR、PR、SR、SSOH、SSO塩、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、2‐(1,3‐ジチオラニル)、SOR、又はSORであり、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていて、独立して、水素、分岐鎖状又は非分岐鎖状、置換又は無置換、飽和又は不飽和のC‐C100炭化水素であり、kは、1〜8の範囲の整数であり、Xは、ハロゲン化物、又は無機もしくは有機酸由来のアニオンであり、Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、wは、2から6の整数であり、x及びzは、独立して、1から6の整数であり、yは、1から前記芳香族基中の−CH基の総数までの整数である)。
《47》
前記Arが、トリアゾール基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《48》
前記Arが、ピラゾール基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《49》
前記Arが、イミダゾール基を含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《50》
前記有機基が、少なくとも1つのアミノメチルフェニル基である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《51》
前記有機基が、X−C−S−S−C−Xであり、ここで、少なくとも一方のXは、前記フィラーへの結合であり、他方のXは、前記カーボンブラックへの結合又は官能基である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《52》
前記有機基が、少なくとも1つの芳香族スルフィド又はポリスルフィドを含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《53》
カーボンブラック表面積(m)あたり0.01〜10マイクロモルのヘテロ環基吸着量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《54》
カーボンブラック表面積(m)あたり0.01〜6マイクロモルのヘテロ環基結合量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《55》
変性されていないが同じPAH含量及び実質的に同等のSTSAを有するカーボンブラックと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合に、前記変性カーボンブラックの耐摩耗性が向上する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《56》
前記耐摩耗性が、少なくとも10%向上する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《57》
前記耐摩耗性が、少なくとも50%向上する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《58》
前記耐摩耗性が、少なくとも75%向上する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《59》
前記耐摩耗性が、少なくとも100%向上する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《60》
変性されていないが同じPAH含量及びSTSAを有するカーボンブラックと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合、前記変性カーボンブラックの耐摩耗性が向上し、かつ前記エラストマー組成物中に存在する場合、変性されていないが同じPAH含量を有するカーボンブラックと比較して、前記変性カーボンブラックのヒステリシスが改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《61》
前記ヒステリシスが、少なくとも5%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《62》
前記ヒステリシスが、少なくとも10%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《63》
前記ヒステリシスが、少なくとも20%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《64》
前記耐摩耗性が、少なくとも10%向上し、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも5%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《65》
前記耐摩耗性が、少なくとも50%向上し、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも10%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《66》
前記耐摩耗性が、少なくとも75%向上し、かつ前記ヒステリシスが、少なくとも15%改善(低減)する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《67》
前記化学基が結合しており、かつ以下のトリアゾ−ルを含む、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化30】

【化31】
、又はその互変異性体
(式中、Zはアルキレン基であり、ここで、bは、0又は1であり;
少なくとも1つのXは、前記フィラーへの結合を含み、及び残りのXのいずれも、前記フィラーへの結合、又は官能基を含み;
Aは、SR、SSOH、SONRR’、SOSR、SNRR’、SNQ、SONQ、CONQ、S‐(1,4‐ピペラジンジイル)‐SR、2‐(1,3‐ジチアニル)、もしくは2‐(1,3‐ジチオラニル)である官能基であるか;又は、1つ以上の前記官能基で置換された直鎖状、分岐鎖状、芳香族、もしくは環状炭化水素基であり;
ここで、R及びR’は、同一又は異なっていてよく、水素;分岐鎖状又は非分岐鎖状でC‐C12の無置換又は置換アルキル、アルケニル、アルキニル;無置換又は置換アリール;無置換又は置換ヘテロアリール;無置換又は置換アルキルアリール;無置換もしくは置換アリールアルキル、アリーレン、ヘテロアリーレン、又はアルキルアリーレンであり;
kは、1から8の整数であり;
Qは、(CH、(CHO(CH、(CHNR(CH、又は(CHS(CHであり、ここで、xは、1から6であり、zは、1から6であり、wは、2から6であり;
Eは、複数硫黄含有基であり;かつ
前記トリアゾールは、NDD’置換基によってN置換されていてもよく、この場合、D及びD’は、同一又は異なっていて、H又はC‐Cアルキルである)。
《68》
前記トリアゾ−ルが、以下である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化32】
又はその互変異性体。
《69》
前記トリアゾ−ルが、以下である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック:
【化33】
又はその互変異性体。
《70》
カーボンブラック表面積(m)あたり0.1〜6モルの結合量を有する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《71》
未変性のカーボンブラックと比較して、エラストマー組成物中に存在する場合に、前記変性カーボンブラックがヒステリシスを改善する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《72》
前記ヒステリシスが、少なくとも5%低減する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《73》
前記ヒステリシスが、少なくとも10%低減する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《74》
前記ヒステリシスが、少なくとも20%低減する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《75》
前記化学基が結合したAr(CH(CHAr’であり、ここでAr及びAr’は、同じでもよく異なっていてもよく、アリーレン又はヘテロアリーレンであり;kは、1〜8の整数であり;qは0〜4の整数であり;かつrは0〜4の整数である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《76》
Ar及びAr’が、アリーレンであり;kが1〜8の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《77》
Ar及びAr’が、フェニレンであり;kが2〜4の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《78》
k=2である、請求項75に記載の変性カーボンブラック。
《79》
Ar及びAr’が、ヘテロアリーレンであり;kが1〜8の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《80》
Ar及びAr’が、ベンゾチアゾリレンであり;kが2〜4の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《81》
k=2である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《82》
前記化学基がAr(CH(CHAr’であり、ここでArは、アリーレン又はヘテロアリーレンであり;Ar’はアリール又はヘテロアリールであり;kは、1〜8の整数であり;qは0〜4の整数であり;かつrは0〜4の整数である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《83》
Arがアリーレンであり、Ar’がアリールであり、kが1〜8の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《84》
Arがフェニレンであり、Ar’がフェニルであり、kが2〜4の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《85》
Arがフェニレンであり、Ar’がヘテロアリールであり、kが1〜8の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《86》
Arがフェニレンであり、Ar’がベンゾチアゾリレルであり、kが2〜4の整数であり;かつq及びrが0である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《87》
前記化学基が-(C)-S-(C)-NHであり、kが2〜8の整数である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《88》
前記化学基が-(C)-S-(C)-NHであり、kが2である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《89》
前記カーボンブラックが、黒鉛化されていない、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック。
《90》
上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラック及び少なくとも1種のエラストマーを含有している、エラストマー組成物。
《91》
上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載のエラストマー組成物を含む、製造物品。
《92》
タイヤ又はその構成部品である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の物品。
《93》
タイヤトレッド又はタイヤサイドウォールである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の物品。
《94》
次を含む、エラストマー組成物の耐摩耗性を向上するための方法:上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラックの少なくとも1種を前記エラストマー組成物中に硬化前に導入すること。
《95》
次を含む、エラストマー組成物のヒステリシスを改善(低減)するための方法:上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラックの少なくとも1種を前記エラストマー組成物中に硬化前に導入すること。
《96》
次を含む、エラストマー組成物の耐摩耗性を向上し、かつヒステリシスを低減するための方法:上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の変性カーボンブラックの少なくとも1種を前記エラストマー組成物中に硬化前に導入すること。
《97》
以下の工程を含む、変性カーボンブラックの製造方法:
1以上の導入箇所において少なくとも1種のカーボンブラック生成原料を反応器に導入し、前記少なくとも1種のカーボンブラック生成原料をホットガスの流と混合して、前記1以上の導入箇所から下流を移動する反応流中に、カーボンブラック及びPAH種を形成する工程、及び前記PAH種を実質的に破壊するのに十分な温度に前記反応流を付し、そして前記カーボンブラックを含有する前記反応流の反応クエンチする工程;
75ppm以下のPAH22を有する前記カーボンブラックを、前記反応クエンチ工程後に回収する工程;並びに
1以上の化学基を前記カーボンブラックに結合及び/又は吸着させる工程。
《98》
以下の工程を含む、変性カーボンブラックの製造方法:
1以上の導入箇所において少なくとも1種のカーボンブラック生成原料を反応器に導入し、前記少なくとも1種のカーボンブラック生成原料をホットガスの流と混合して、前記1以上の導入箇所から下流を移動する反応流中に、カーボンブラック及びPAH種を形成する工程、及び前記PAH種を実質的に破壊し、かつ前記カーボンブラックの表面を少なくとも部分的に不活性化するのに十分な温度に前記反応流を付し、そして前記カーボンブラックを含有する前記反応流の反応クエンチする工程;
75ppm以下のPAH22を有する前記カーボンブラックを、前記反応クエンチ工程後に回収する工程;並びに
1以上の化学基を前記カーボンブラックに結合及び/又は吸着させて、表面の不活性化によって失われた1以上の特性を少なくとも部分的に復元させて、前記変性カーボンブラックを形成する工程。
《99》
前記滞留時間が、10〜500msである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の方法。
《100》
前記滞留時間が、約1200℃〜約1800℃の温度で30〜300msである、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の方法。
《101》
前記温度を、カーボンブラックの表面積が形成され、かつ反応クエンチの前に、前記反応流に1種以上の酸化剤含有流を導入することによって達成する、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の方法。
《102》
以下の工程を含む、変性カーボンブラックの製造方法:
75ppm超のPAH含量を有する出発カーボンブラックを、30分〜4時間の時間で、1200℃〜1800℃の温度処理に付して、カーボンブラックをアニールし、そして前記PAHを実質的に破壊することで、50ppm以下の低下させたPAH含量とする工程;及び
1以上の化学基を前記カーボンブラックに結合及び/又は吸着させる工程。
《103》
前記低下させたPAH含量が、10ppm以下である、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の方法。
《104》
前記出発カーボンブラックが、前記温度処理の間に、表面不活性化される、上記又は下記の実施態様/特徴/態様に記載の方法。
【0122】
本発明として、上記又は下記の文章及び/又は段落の様々な特徴又は実施態様の任意の組合せを含めることができる。ここで開示された特徴の任意の組合せを、本発明の一部として考えることができ、組合せ可能な特徴に対して限定は意図されない。
【0123】
本発明は、本発明の例示となることを目的とする以下の実施例によって、さらに明らかにされるであろう。
【実施例】
【0124】
この研究に含まれるカーボンブラックサンプルは、ファーネスプロセス(J.B.Donnet、R.C.Bansal、M.J.Wang、「Carbon Black」、SCIENCE AND TECHNOLOGY、2nd Edition、Marcel Dekker、NY、1993;及びMJ.Wang、CA.Gray、S.A.Reznek、K.Mahmud^ Y.Kutsovsky、「Carbon Black」in KIRK−OTHMER ENCYLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、John Willey&Sons、2005、4、761を参照のこと)を用いて、Cabot Corporationによって製造された材料である。カーボンブラックの特性は、ASTM(ASTM D1765−03S tandard Classification System for Carbon Blacks Used in Rubber Productsを参照のこと)及びCabotの仕様(ウェブサイトwww.cabot−corp.comを参照のこと’)によって規定されている。
【0125】
カーボンブラックを、ASTM(ASTM D3191−02Standard Test Methods for Carbon Black in SBR−Recipe and Evaluation Proceduresを参照のこと)によってSBRゴムコンパウンド中で評価した。典型的なゴム混合プロセス及びテストは、Maurice Morton、RUBBER TECHNOLOGY、3rd Edition、Van Norstrand Reinhold Company、New York、1987、及び2nd Edition、Van Norstrand Reinhold Company、New York(1973)に記載されている。バウンドラバーの試験は、G.Kraus、RUBBER CHEM TECHN、V38、1070(1965)及びS.Wolff、M−J Wang、E−H Tan、RUBBER CHEM TECHN、V66、163(1993)に記載されている。最大tanδは、ゴムのヒステリシス(転がり抵抗)の尺度である。これは、ねじれ歪みモード(歪み)で運転したARES/Rheometrics Dynamic Spectrometer II(RDS II、Rheometrics、Inc.、N.J.)を使用してテストした。測定を、0℃、0.2〜120%の範囲の二重歪み振幅(DSA)を用いた歪みスイープ、10Hzの一定周波数で行った。耐摩耗性を、Cabot Abrader(米国特許第4、995、197号明細書を参照のこと)を使用してテストした。
【0126】
PAH濃度の試験を、図1に示すように、22の個々のPAHを、GCMS分析を用いて、トルエンによる抽出を含むCabotの手順に従って行った。この方法は、21C.F.R.part17B、FDA FEDERAL REGISTER、V62、#90.May9、1997に記載されている。
【0127】
例1:熱処理したカーボンブラック(CB−2)
80m/gのヨウ素価、75m/gのSTSA表面積、及び102mL/100gのOANを有するCabot Corporationによって製造されたカーボンブラックのサンプル(CB−1)(1.5Kg)を、チューブ炉で1400Cまで加熱し、1400Cにて2時間維持し、次に、室温まで冷まして、76m/gのSTSA表面積を有するアニールしたカーボンブラック(CB−2)を形成させた。加熱速度は2C/分であり、そして、冷却時間は、約24時間であった。いくつかのバッチを調製し、そして、使用前に一緒に混合した。すべての加熱運転を、アルゴン雰囲気下で実施した。
【0128】
例2:変性カーボンブラック生成物(CB−3)の調製
20LのRossミキサーに、11.26Kgの水、2.50kgの例1のカーボンブラック(CB−2)、及び1330gの、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−イルジスルフィドスルファート塩の0.235mmol/g溶液を入れた。70Cまで加熱した後に、216gの、水中のNaNOの20%溶液を、10分間かけて加えた。その混合物を、70Cにて1時間撹拌し、室温に冷ました。40%のNaOH水溶液(37.6g)を加え、その混合物をさらに5分間撹拌した。その混合物を、濾過し、そして、生成物を、電導度が約4800uS/cmになるまで水で洗浄した。生成物を100Cで乾かした。メタノールを用いたSoxhlet抽出に一晩かけたカーボンブラック生成物のサンプルは、例1のカーボンブラックの0.86%のSと比較して、1.11%のSを有していた。
【0129】
例3:変性カーボンブラック生成物(CB−4)の調製
49gの水中に5.18gのNaNOの溶液を、70Cにて約5分間の時間をかけて、300gの例1のカーボンブラック(CB−2)、2600gの水、9.31gの4,4’−ビス(アミノフェニルジスルフィド、及び3.69gの濃HSOの撹拌混合物に加えた。混合を70Cにて60分間続けた。そして、混合物を室温に冷ました。生成物を、濾過で回収し、3Lの水で洗浄し、そして、70Cにて減圧下で乾かした。メタノールを用いたSoxhlet抽出に一晩かけたカーボンブラック生成物のサンプルは、例1のカーボンブラックの0.86%のSと比較して、1.64%のSを有していた。その生成物を、類似の条件で調製した第二のバッチと混合した。
【0130】
例4:変性カーボンブラック生成物(CB−7)の調製
20LのRossミキサーに、11.26Kgの水、3.00kgのカーボンブラック(CB−2)、及び1596gの、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−イルジスルフィドスルファート塩の0.235mmol/g溶液を入れた。このカーボンブラックは、139m/gのSTSA表面積、165のヨウ素価、96mL/100gのOAN、及び0.85ppmのPAH含量を有していた。70Cまで加熱した後に、259gの、水中のNaNOの20%溶液を、10分間かけて加えた。その混合物を、70Cにて1時間撹拌し、室温に冷ました。40%のNaOH水溶液(37.6g)を加え、その混合物をさらに5分間撹拌した。その混合物を、濾過し、そして、生成物を、電導度が約4700uS/cmになるまで水で洗浄した。生成物を100Cで乾かした。メタノールを用いたSoxhlet抽出に一晩かけたカーボンブラック生成物のサンプルは、未処理のカーボンブラックの0.63%のSと比較して、0.97%のSを有していた。この例で変性させたカーボンブラックは、反応クエンチングを反応炉内の29ftにて代わりに起こす延長によって、反応クエンチが遅れ、そして、これがアニールの原因となったことを除いて、Cabot Corporationの市販のVULCAN 7Hカーボンブラックと同じ反応炉型で、かつ同じタイプのプロセスによって(パイロットプラント量で)形成した。アニールしたカーボンブラックは、CB−6である。139m/gのSTSA、138のヨウ素価及び100cc/100gのOANを有する通常の(すなわち、6ftでの)反応クエンチカーボンブラック(無アニールバージョンCB−5)を、比較目的で製造し、そして、試験した。
【0131】
例5:エラストマー配合物の調製と試験
実験では、本発明の変性カーボンブラックを、25%のスチレン、50%のビニルブタジエン、及び25%の油分量(sSBR)調合物を有する溶液ポリマー化スチレン−ブタジエンコポリマーの状態、及び天然ゴム(NR)配合物の状態で使用して、本発明の変性カーボンブラックを使用する利益を示した。以下の試験を、表中のデータのために使用した:
−100%弾性率(Mpa);SBR中のカーボンブラックのためのASTM D412−06標準テスト法調合及び評価手順。
−300%弾性率(Mpa);SBR中のカーボンブラックのためのASTM D412−06標準テスト法調合及び評価手順。
−300%弾性率/100%弾性率(M300%/M100%)の比;SBR中のカーボンブラックのためのASTM D412−06標準テスト法調合及び評価手順。
−バウンドゴム(%);S.Wolff、M−J Wang、E−H Tan、Rubber Chem Techn、v66、163(1993)。
−ねじれ歪みモード(剪断)で操作したARES/Rheometrics Dynamic Spectrometer II (RDS II、Rheometrics、Inc.,NJ)でテストした0℃での最大tanδ。測定を、0℃、10Hzの一定周波数で、0.2〜120%の範囲で二重振幅歪(DSA)を用いて、歪みスイープで行った。
【0132】
sSBR配合物及びNR配合物を、表1及び2に説明する。本明細書中に使用するエラストマーコンポジットは、a)対照カーボンブラック(無アニール又は「そのまま」)、又はb)本発明による低PAHを有するアニールしたカーボンブラック(しかし、結合又は吸着している化学基がない)、及びc)(アニールされるか、又はPAH含量物を取り除くために処理され、続いてそれに結合かつ/又は吸着させた化学基を有するように処理した)本発明による変性カーボンブラックのうちのいずれかに、ポリマーを混合することによって調製した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
(表中に説明している)エラストマーコンポジットで使用する成分は、Brabender Plasti−コーダーEPL−VミキサーによるsSBR配合物のための三段階混合又はNR配合物のための二段階混合に従って混合した。第一段階は、50rpmのローター速度及び50Cの開始温度にて、ポリマーとカーボンブラックを加え、続いて、硬化剤を除いた残りの成分を加え、そして、140Cの温度まで上げることを伴い、その材料は、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用して粉砕される。第二段階は、80rpmのローター速度及び50Cの開始温度でただ混合することが続き、その温度を150Cにした。そして、この場合も先と同様に、材料を、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用して粉砕した。そして、混合の第三段階は、50rpmのローター速度及び50Cの開始温度にて硬化剤の添加を行い、その温度を110Cまで上げた。この場合も先と同様に、材料を、4回のクロスカット及び2本のエンドロールを使用してす粉砕した。
【0136】
指示した開放型ミルを通す前に、第一段階の成分を合計30分間混合した。第一段階の混合からの粉砕したコンパウンドを、第二段階の混合前に室温にて少なくとも2時間保持した。同様に、指示した開放型ミルを通す前に、第二段階における成分を合計30分間混合した。第二段階混合からの粉砕したコンパウンドを、第三段階の混合前に室温にて少なくとも2時間保持した。そして、硬化剤を第三段階で60分間混合した。
二段階の粉砕では、この手順は、表2の配合物を使用したことを除いて、Brabenderミキサーを使用したASTM D3192に従った。
【0137】
表3は、エラストマー配合物に使用したカーボンブラックを説明している。エラストマー配合物において、「対照」カーボンブラック(アニーリングなし、及び結合/吸着している基なし)が存在するか、カーボンブラックは「アニールされたのみ」(結合/吸着した基なし)であるか、又はカーボンブラックはアニールされ、かつ結合又は吸着している化学基を有する(本発明)かのいずれかであることが知られている。
【0138】
【表3】
【0139】
表3では、計測されたのであれば、STSA、OAN、I2No、Spec20、PAH、及びBaPの測定値を、カーボンブラックについて提供している。STSA、OAN、及びI2Noを、ASTM D1765−10に従って計測する。Spec 20(トルエン変色)は、ASTM1618−99(2011)に従って計測した。PAHは、PAH2の計測値であり、そして、BaPは、当該出願で規定されている。
【0140】
CB−1カーボンブラックは、Cabot Corporationによって、それらのカーボンブラック反応炉のうちの1つで製造されたファーネスカーボンブラックである。CB−1カーボンブラックは、PAHレベルを低下させる処理を伴わず、かつ結合又は吸着している化学基を有さない「そのまま」のカーボンブラックである。CB−1を、PAHレベルを低下させるための処理の効果、及びラバー特性(又は他の強化特性)を示すための対照として使用した。
【0141】
(例1の)CB−2カーボンブラックは、表3に示すとおりPAHレベルを有意に低減した炉内での1400Cにて2時間の高熱処理に晒したCB−1カーボンブラックであった。表からも分かるように、例えば、熱処理の効果を反映して、有意に上昇したI2Noによって示されるとおり、表面活性が大いに影響を受けた(不活性化された)。
以下で表4及び表5に示すCB−2カーボンブラックは、次に、例2に記載のとおり、化学基を結合又は吸着するように処理して、CB−3を得たか、あるいは、例3に記載のとおりCB−4を得た。様々なCB1〜7を用いたいくつかの実験を以下の表中に示すとおり繰り返したことが知られている。
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
同様に、CB−5カーボンブラックは、Cabot Corporation製の市販のカーボンブラックに類似していた。このカーボンブラックは、PAH種を破壊するための処理を伴わない、かつ結合又は吸着している化学基を有さない「そのまま」のカーボンブラックである。CB−5カーボンブラックを、PAH種を破壊するための処理の効果、及びラバー特性(又は他の強化特性)を示すための対照として使用した。
【0145】
そして、クエンチ長を6ftから29ftに延長したことを除いて、CB−5カーボンブラックを製造するのに使用したのと同じ技術に従った。これは、表3−CB−6に示されているPAHレベルの低減をもたらした。表からも分かるように、例えば、遅れたクエンチの効果を反映して、有意に上昇したI2Noによって示されるとおり、表面活性が大いに影響を受けた(不活性化された)。
次に、CB−6を、例4に記載のとおり、化学基を結合又は吸着するように処理して、CB−7を形成した。
エラストマー配合物(sSBR又はNR)を、これらのブラックのうちの1つを使用して調製し、そして、バウンドゴム、ヒステリシス、及び強度(M300/M100)を計測した。結果は、sSBR配合物については表4に、そして、NR配合物については表5に説明した。
【0146】
表から分かるように、バウンドゴムによって示される表面活性は、PAH(CB−2又はCB−6)の破壊(さらに、結合/吸着している化学基がないこと)によって劇的に低下した。そして、化学基の結合/吸着により、バウンドゴムは、それぞれの例(CB−3、CB−4、及びCB−7)において、少なくとも部分的に復元した。同じ効果は、強度(M300/M100)にも見られた。ヒステリシスに関して、また、tanδ60Cは、化学基の結合/吸着により、少なくとも部分的に復元された。(化学基の結合/吸着が全くない)CB−2及びCB−6が、エラストマー配合物中の強化ブラックとして容認できないと考えられたのに対して、同じブラックではあるが、化学基の結合/吸着により処理されたものは、許容できる強化ブラックと見なされ、かつそのように示されたことが知られている。
【0147】
したがって、本発明により、実施例に示されているとおり、許容される界面活性特性を有する低PAHカーボンブラックは、表面をアニールし、そして、表面活性を少なくとも部分的に復元するように化学基を結合、かつ/又は吸着することを伴う本発明の2段階プロセスを使用することで作製できる。
【0148】
出願人は、この開示内容に全ての引用文献の内容全体を取り込む。さらに、量、濃度、又は他の値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値として表されているときには、これは、範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、任意の上限範囲又は好ましい値と任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解されるべきである。数値範囲が挙げられている場合には、特に断りのない限り、範囲は、その終点、及びその範囲以内の全ての整数及び端数を含むものとする。本発明の範囲は、数値範囲を定義したときに挙げられた具体的な値に限定されるものではない。
【0149】
本発明のその他の実施態様は、本明細書を考察し、本明細書中に開示された本発明を実施することから、当業者に明らかになる。本明細書及び例は、添付の特許請求の範囲及びこれと同等のものによって示される本発明の真の範囲及び思想を有する単なる一例と考えられるものとする。
図1
図2