(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294417
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】光半導体装置および光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20180305BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L23/02 C
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-171230(P2016-171230)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-37581(P2018-37581A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 啓慈
(72)【発明者】
【氏名】石黒 永孝
(72)【発明者】
【氏名】浦 健太
【審査官】
吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−018873(JP,A)
【文献】
特開昭62−217639(JP,A)
【文献】
実開平02−125345(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0014711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 23/02−23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口する凹部を有するパッケージ基板と、
前記凹部に収容される光半導体素子と、
前記凹部の開口を覆うように配置される窓部材と、
前記パッケージ基板と前記窓部材の間を封止する封止構造と、を備え、
前記封止構造は、前記パッケージ基板の上面に枠状に設けられる第1金属層と、前記窓部材の内面に枠状に設けられる第2金属層と、前記第1金属層と前記第2金属層の間に設けられる金属接合部とを有し、
前記パッケージ基板と前記窓部材とが重なる方向の平面視において、前記窓部材の外形寸法は、前記パッケージ基板の外形寸法より小さく、前記第1金属層と前記第2金属層の外形寸法差は、前記窓部材と前記パッケージ基板の外形寸法差よりも大きく、前記パッケージ基板の外周よりも内側に前記窓部材が配置され、
前記封止構造は、前記第1金属層および前記第2金属層の一方が設けられる領域内に前記第1金属層および前記第2金属層の他方の全体が位置するよう構成されることを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
前記第1金属層の外形寸法は、前記窓部材の外形寸法よりも小さく、前記窓部材と前記第1金属層の外形寸法差は、前記窓部材と前記パッケージ基板の外形寸法差よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記封止構造は、前記第1金属層が設けられる領域内に前記第2金属層の全体が位置し、前記第2金属層を挟んだ両側に前記金属接合部が位置するよう構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記第1金属層の外形寸法は前記第2金属層の外形寸法より大きく、前記第1金属層の内形寸法は前記第2金属層の内形寸法より小さく、前記第1金属層と前記第2金属層の内形寸法差は前記第1金属層と前記第2金属層の外形寸法差より大きいことを特徴とする請求項3に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属層の外形寸法と内形寸法の差は、前記第2金属層の外形寸法と内形寸法の差の2倍以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記窓部材は、前記パッケージ基板よりも熱膨張係数の小さい材料で構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記光半導体素子は深紫外光を発する発光素子であり、前記窓部材は石英ガラスで構成され、前記金属接合部は金錫(AuSn)を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項8】
上面に開口する凹部を有するパッケージ基板であって前記上面に枠状の第1金属層が設けられるパッケージ基板の前記凹部に光半導体素子を収容するステップと、
内面に枠状の第2金属層が設けられる窓部材を前記凹部の開口を覆うように配置するステップと、
前記第1金属層と前記第2金属層の間に配置される金属接合材を加熱して前記パッケージ基板と前記窓部材の間を封止するステップと、を備え、
前記パッケージ基板と前記窓部材とが重なる方向の平面視において、前記窓部材の外形寸法は、前記パッケージ基板の外形寸法より小さく、前記第1金属層と前記第2金属層の外形寸法差は、前記窓部材と前記パッケージ基板の外形寸法差よりも大きく、
前記配置するステップは、前記パッケージ基板と前記窓部材とが重なる方向の平面視において、前記パッケージ基板の外周よりも内側に前記窓部材を配置することにより、前記第1金属層および前記第2金属層の一方が設けられる領域内に前記第1金属層および前記第2金属層の他方の全体が位置するよう位置合わせすることを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記封止するステップは、前記パッケージ基板と前記窓部材の間で荷重を加えながら前記金属接合材を加熱するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記封止するステップは、前記金属接合材の加熱後に前記パッケージ基板と前記窓部材の間で荷重を加えながら前記金属接合材を冷却するステップを含むことを特徴とする請求項8または9に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記金属接合材は、前記第1金属層または前記第2金属層に対応した枠形状を有する金錫(AuSn)の金属板であることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記金属接合材は、10μ以上50μm以下の厚さであることを特徴とする請求項11に記載の光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関し、特に、光半導体素子を有する光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色光を出力する発光ダイオードやレーザダイオード等の半導体発光素子が実用化されており、さらに波長の短い深紫外光を出力する発光素子の開発が進められている。深紫外光は高い殺菌能力を有することから、深紫外光の出力が可能な半導体発光素子は、医療や食品加工の現場における水銀フリーの殺菌用光源として注目されている。また、出力波長を問わず、より発光強度の高い半導体発光素子の開発が進められている。
【0003】
発光素子は、外部環境から素子を保護するためのパッケージ内に収容される。例えば、発光素子が実装される基板と、その基板上に配置されるガラス蓋とを共晶接合することで発光素子が封止される。このとき、基板およびガラス蓋の材料として線膨張係数ができるだけ近似した材料が選定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−69977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光素子を収容するパッケージの窓部材は、発光波長の透過率が高い材料であることが好ましいが、発光素子の発光波長によっては選択可能な窓部材の材料が限られてしまう。その結果、共晶接合するパッケージ基板と窓部材の熱膨張係数を近似させることが難しいかもしれない。パッケージ基板および窓部材に熱膨張係数の異なる材料を用いる場合であっても信頼性の高い封止構造が得られることが望ましい。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、光半導体素子を有する光半導体装置の信頼性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光半導体装置は、上面に開口する凹部を有するパッケージ基板と、凹部に収容される光半導体素子と、凹部の開口を覆うように配置される窓部材と、パッケージ基板と窓部材の間を封止する封止構造と、を備える。封止構造は、パッケージ基板の上面に枠状に設けられる第1金属層と、窓部材の内面に枠状に設けられる第2金属層と、第1金属層と第2金属層の間に設けられる金属接合部とを有し、第1金属層および第2金属層の一方が設けられる領域内に第1金属層および第2金属層の他方の全体が位置するよう構成される。
【0008】
この態様によると、相対的に広い一方の金属層の領域内に相対的に狭い他方の金属層の全体が位置するよう構成されるため、一方の金属層と他方の金属層がずれて配置される場合と比べて双方の金属層が重なる範囲を大きくできる。これにより、双方の金属層が重畳して接合される範囲を大きくして封止性を高めることができる。また、双方の金属層が重なる範囲を大きくすることで、いずれかの金属層に沿って金属接合部が薄くフィレット状に形成される範囲を小さくできる。これにより、熱膨張係数の差に起因する応力が薄いフィレットに集中して窓部材に割れや欠けが生じるのを防ぐことができる。
【0009】
封止構造は、第1金属層が設けられる領域内に第2金属層の全体が位置するよう構成されてもよい。
【0010】
封止構造は、第2金属層を挟んだ両側に金属接合部が位置するよう構成されてもよい。
【0011】
第1金属層の外形寸法は第2金属層の外形寸法より大きく、第1金属層の内形寸法は第2金属層の内形寸法より小さく、第1金属層と第2金属層の内形寸法差は第1金属層と第2金属層の外形寸法差より大きい。
【0012】
第1金属層の外形寸法と内形寸法の差は、第2金属層の外形寸法と内形寸法の差の2倍以上であってもよい。
【0013】
窓部材は、パッケージ基板よりも熱膨張係数の小さい材料で構成されてもよい。
【0014】
光半導体素子は深紫外光を発する発光素子であり、窓部材は石英ガラスで構成され、金属接合部は金錫(AuSn)を含んでもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、光半導体装置の製造方法である。この方法は、上面に開口する凹部を有するパッケージ基板であって上面に枠状の第1金属層が設けられるパッケージ基板の凹部に光半導体素子を収容するステップと、内面に枠状の第2金属層が設けられる窓部材を凹部の開口を覆うように配置するステップと、第1金属層と第2金属層の間に配置される金属接合材を加熱してパッケージ基板と窓部材の間を封止するステップと、を備える。配置するステップは、第1金属層および第2金属層の一方が設けられる領域内に第1金属層および第2金属層の他方の全体が位置するよう位置合わせするステップを含む。
【0016】
この態様によると、相対的に広い一方の金属層の領域内に相対的に狭い他方の金属層の全体が位置するよう位置合わせされるため、一方の金属層と他方の金属層がずれて配置される場合と比べて双方の金属層が重なる範囲を大きくできる。これにより、双方の金属層が重畳して接合される範囲を大きくして封止性を高めることができる。また、双方の金属層が重なる範囲を大きくすることで、いずれかの金属層に沿って金属接合部が薄くフィレット状に形成される範囲を小さくできる。これにより、熱膨張係数の差に起因する応力が薄いフィレットに集中して窓部材に割れや欠けが生じるのを防ぐことができる。
【0017】
封止するステップは、パッケージ基板と窓部材の間で荷重を加えながら金属接合材を加熱するステップを含んでもよい。
【0018】
封止するステップは、金属接合材の加熱後にパッケージ基板と窓部材の間で荷重を加えながら金属接合材を冷却するステップを含んでもよい。
【0019】
金属接合材は、第1金属層または第2金属層に対応した枠形状を有する金錫(AuSn)の金属板であってもよい。
【0020】
金属接合材は、10μ以上50μm以下の厚さであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光半導体素子を有する光半導体装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態に係る発光装置を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の発光装置を概略的に示す上面図である。
【
図3】実施の形態に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】発光装置の製造工程を概略的に示す断面図である。
【
図5】比較例に係る発光装置の封止構造を概略的に示す断面図である。
【
図6】実施の形態に係る発光装置の封止構造を概略的に示す断面図である。
【
図7】変形例に係る発光装置を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は必ずしも実際の装置の寸法比と一致しない。
【0024】
図1は、実施の形態に係る発光装置10を概略的に示す断面図であり、
図2は、
図1の発光装置10を概略的に示す上面図である。発光装置10は、発光素子20と、パッケージ基板30と、窓部材40と、封止構造50とを備える。発光装置10は、光半導体素子である発光素子20を有する光半導体装置である。
【0025】
発光素子20は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成されるLED(Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、発光素子20は、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料で構成される。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm〜350nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0026】
発光素子20は、半導体積層構造22と、光出射面24と、第1素子電極26と、第2素子電極27とを有する。
【0027】
半導体積層構造22は、光出射面24となる基板上に積層されるテンプレート層、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層などを含む。発光素子20が深紫外光を出力するように構成される場合、光出射面24となる基板としてサファイア(Al
2O
3)基板が用いられ、半導体積層構造22のテンプレート層として窒化アルミニウム(AlN)層が用いられる。また、半導体積層構造22のクラッド層や活性層はAlGaN系半導体材料で構成される。
【0028】
第1素子電極26および第2素子電極27は、半導体積層構造22の活性層にキャリアを供給するための電極であり、それぞれがアノード電極またはカソード電極である。第1素子電極26および第2素子電極27は、光出射面24と反対側に設けられる。第1素子電極26は、基板30の第1内側電極36に取り付けられ、第2素子電極27は、基板30の第2内側電極37に取り付けられる。
【0029】
パッケージ基板30は、上面31と下面32を有する矩形状の部材である。パッケージ基板30は、アルミナ(Al
2O
3)や窒化アルミニウム(AlN)などを含むセラミック基板であり、いわゆる高温焼成セラミック多層基板(HTCC、High Temperature Co-fired Ceramic)である。
【0030】
パッケージ基板30の上面31には、発光素子20を収容するための凹部34が設けられる。凹部34の底面には、発光素子20を取り付けるための第1内側電極36および第2内側電極37が設けられる。パッケージ基板30の下面32には、発光装置10を外部基板などに実装するための第1外側電極38および第2外側電極39が設けられる。
【0031】
窓部材40は、凹部34の開口を覆うように設けられる板状の保護部材である。窓部材40は、発光素子20が発する紫外光を透過する材料で構成され、例えば、ガラス、石英、水晶、サファイアなどを用いることができる。窓部材40は、特に深紫外光の透過率が高く、耐熱性および気密性の高い材料で構成されることが好ましく、パッケージ基板30に比べて熱膨張係数の小さい材料で構成されることが好ましい。このような特性を備える材料として、石英ガラスを窓部材40に用いることが望ましい。発光素子20が発する紫外光は、窓部材40を介して窓部材40の外面43からパッケージの外部へと出力される。
【0032】
封止構造50は、第1金属層51と、第2金属層52と、金属接合部53とを有する。
【0033】
第1金属層51は、パッケージ基板30の上面31に枠状に設けられる。第1金属層51は、矩形のパッケージ基板30に対応した矩形枠形状を有し、四隅がR面取りされている。第1金属層51は、例えばセラミック基板へのメタライズ処理により形成される。第1金属層51は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等を含む基材にニッケル(Ni)や金(Au)等がメッキされて形成され、例えば、W/Ni/Auの積層構造を有する。第1金属層51は、金属接合部53と接合される。
【0034】
第2金属層52は、窓部材40の内面44に枠状に設けられる。第2金属層52は、矩形の窓部材40に対応した矩形枠形状を有し、四隅がR面取りされている。第2金属層52は、真空蒸着やスパッタリングなどの方法により形成される。第2金属層52は、窓部材40の内面44上にチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)が順に積層される多層膜である。なお、チタンの代わりにクロム(Cr)を用いてもよいし、白金(Pt)の代わりに銅(Cu)およびニッケル(Ni)を用いてもよい。第2金属層52は、金属接合部53と接合される。
【0035】
金属接合部53は、第1金属層51と第2金属層52の間に設けられ、パッケージの外周部においてパッケージ基板30と窓部材40の間を接合して封止する。金属接合部53は、第1金属層51と第2金属層52の間を充填するとともに、第2金属層52を挟んだ両側(パッケージの内側および外側の双方)に位置するよう構成される。金属接合部53は、低融点の金属材料で構成され、例えば金錫(AuSn)や銀錫(AgSn)の合金を含む。金属接合部53は、溶融状態において第1金属層51と第2金属層52の間に広がって共晶接合を形成する。金属接合部53は、高い封止信頼性を有するとともに溶融温度が300℃以下の低温となるように、錫(Sn)の含有量が20%wt〜24%wtの金錫で構成されることが好ましい。
【0036】
封止構造50は、第1金属層51の上に第2金属層52の全体が重なるよう構成され、第1金属層51が設けられる領域内に第2金属層52の全体が位置するよう構成されている。つまり、第1金属層51が設けられていない領域上に第2金属層52が位置しないように構成され、第1金属層51と第2金属層52がずれて配置されていない。具体的には、第1金属層51および第2金属層52のそれぞれの外形寸法および内形寸法が下記に詳述されるような所定のサイズに調整される。
【0037】
図2は、第1金属層51および第2金属層52の寸法を概略的に示す。図示されるように、第1金属層51の外形寸法w
11は、第2金属層52の外形寸法w
21よりも大きく、第1金属層51の内形寸法w
12は、第2金属層52の内形寸法w
22よりも小さい。したがって、第1金属層51の外形寸法w
11と内形寸法w
12の差に対応する幅w
13は、第2金属層52の外形寸法w
21と内形寸法w
22の差に対応する幅w
23よりも大きい。また、第1金属層51の幅w
13は、第2金属層52の幅w
23の2倍以上となるよう構成されている。
【0038】
ある実施例において、パッケージ基板30の外形寸法w
10は3.5mmであり、第1金属層51の外形寸法w
11は3.2mmであり、第1金属層51の内形寸法w
12は2.3mmであり、第1金属層51の幅w
13は0.45mmである。また、窓部材40の外形寸法w
20は3.4mmであり、第2金属層52の外形寸法w
21は3.0mmであり、第2金属層52の内形寸法w
22は2.6mmであり、第2金属層52の幅w
23は0.2mmである。この実施例において、第1金属層51と第2金属層52の内形寸法差(0.3mm)は、第1金属層51と第2金属層52の外形寸法差(0.2mm)より大きい。
【0039】
つづいて、発光装置10の製造方法について説明する。
図3は、実施の形態に係る発光装置10の製造方法を示すフローチャートである。パッケージ基板30の凹部34に発光素子20を収容し(S10)、パッケージ基板30の第1金属層51と窓部材40の第2金属層52を位置合わせして第1金属層51と第2金属層52の間に金属接合材56(後述の
図4参照)が配置されるようにする(S12)。つづいて、パッケージ基板30と窓部材40の間で荷重をかけながら金属接合材を加熱して溶融状態とする(S14)。その後、パッケージ基板30と窓部材40の間で荷重をかけながら金属接合部53を冷却して固化させる(S16)。
【0040】
図4は、発光装置10の製造工程を概略的に示す断面図であり、金属接合材56を配置してパッケージ基板30および窓部材40を位置合わせする工程を示している。パッケージ基板30および窓部材40は、第1金属層51の領域上に第2金属層52が全体が位置するように位置合わせされる。例えば、パッケージ基板30と窓部材40の中心位置が揃うように位置合わせすることにより第1金属層51の上に第2金属層52の全体を配置することができる。その他、パッケージ基板30の四隅のいずれかと窓部材40の四隅のいずれかが揃うように位置合わせしてもよい。この場合、上述した寸法の実施例によれば、パッケージ基板30と窓部材40の中心位置が±50μmの範囲でずれてしまうが、そのずれがあったとしても、第1金属層51の上に第2金属層52の全体が位置するように配置することができる。
【0041】
位置合わせされた第1金属層51と第2金属層52の間には金属接合材56が配置される。金属接合材56は、第2金属層52に対応した矩形枠形状を有する金錫のプリフォームである。金属接合材56は、例えば、第2金属層52と同じ外形寸法および内形寸法を有する。金属接合材56は、第1金属層51または第2金属層52にあらかじめ仮止めされていてもよい。金属接合材56の厚さは10〜50μm程度であり、好ましくは15〜30μm程度である。このような形状および厚さのプリフォームを用いて荷重60をかけながら封止することで、厚さが5〜20μm程度の金属接合部53を形成することができる。なお、封止時に加える荷重60は50g以上であり、好ましくは100g以上、より好ましくは200g以上である。
【0042】
金属接合材56を加熱溶融させる工程は、窒素(N
2)などの不活性ガスの雰囲気下でなされることが好ましい。これにより、溶融状態となった金錫プリフォームの酸化を防ぐとともに、パッケージの内部に不活性ガスを充填できる。しかしながら、本実施の形態に係る加熱溶融工程は、酸素(O
2)を含む乾燥空気の雰囲気下でなされてもよい。荷重をかけながら金錫プリフォームを加熱溶融させることで、第1金属層51と第2金属層52の間での金属接合材56の酸化を防ぎつつ封止することが可能となる。
【0043】
つづいて、本実施の形態が奏する効果について比較例を参照しながら説明する。
図5は、比較例に係る封止構造150を概略的に示す断面図である。本比較例は、窓部材40の第2金属層52が上述の実施の形態と同様に構成される一方、パッケージ基板30の第1金属層151の外形寸法w
41が上述の実施の形態より小さくなるよう構成されている。具体的には、第1金属層151の外形寸法w
41が第2金属層52の外形寸法w
21とほぼ等しい。第1金属層151の内形寸法w
42は上述の実施の形態と同様であるため、第1金属層151の幅w
43は上述の実施の形態よりも小さい。
【0044】
比較例において、精度良くパッケージ基板130と窓部材40を位置合わせすることができれば、第1金属層151の上に第2金属層52の全体が位置するようにできるかもしれない。しかしながら、製造時の寸法誤差や位置合わせの精度等により微妙な位置ずれが生じることがあり、その結果、
図5に示されるように第1金属層151と第2金属層52が互いに部分的に重畳するような形態でずれて配置されうる。例えば、パッケージ基板130と窓部材40の端面が揃う(図示される寸法d=0となる)ように配置されると、第1金属層151の範囲の外側に第2金属層52がはみ出してしまう。
【0045】
このようにずれた状態で第1金属層151と第2金属層52の間を接合すると、第1フィレット153aおよび第2フィレット153bを含む金属接合部153が形成される。第1フィレット153aは、第1金属層151の上に形成されるフィレットであり、第1金属層151と第2金属層52が重畳する範囲よりも内側に形成される。第2フィレット153bは、第2金属層52の上に形成されるフィレットであり、第1金属層151と第2金属層52が重畳する範囲よりも外側に形成される。このような第1フィレット153aおよび第2フィレット153bは、第1金属層151と第2金属層52のずれが大きくなるほど、その幅が大きくなり厚さが薄くなる。また、パッケージ基板130と窓部材40の間に適切な荷重をかけずに封止すると、フィレット形状を適切に制御できないためにフィレットの幅が増大しうる。
【0046】
このように金属接合部が薄くフィレット状に形成されると、その箇所が剥がれの起点となって封止性が損なわれることが発明者らの知見により分かっている。特に、窓部材40の第2金属層52に沿って形成される第2フィレット153bの幅が大きくなると、第2フィレット153bが形成される箇所を起点として窓部材40に亀裂が生じやすくなることが分かっている。したがって、本比較例に示すように、第1金属層151と第2金属層52の間に位置ずれが生じると気密封止を保つことができず、パッケージの信頼性が低下してしまう。
【0047】
図6は、実施の形態に係る封止構造50を概略的に示す断面図である。本図では、パッケージ基板30と窓部材40の端面が揃う(図示される寸法d=0となる)ように配置され、パッケージ基板30と窓部材40の中心位置がずれている場合を示している。本実施の形態によれば、第1金属層51の外形寸法w
11が第2金属層52の外形寸法w
21よりも大きいため、製造時の寸法誤差や位置合わせの精度等による位置ずれを吸収し、第1金属層51が設けられる範囲内に第2金属層52の全体を位置させることができる。その結果、双方の金属層が重畳して接合される範囲を最大化することができる。また、封止時に荷重をかけることにより第1金属層51と第2金属層52の間に形成される金属接合部53の形状を適切に制御し、比較例に示すような薄いフィレットの形成を抑制できる。本実施の形態によれば、薄いフィレットに起因する窓部材40の亀裂の発生を防ぐとともに、双方の金属層を重畳させて強固に接合できるため、気密封止を好適に保つことができる。
【0048】
本実施の形態によれば、パッケージ基板30と窓部材40の熱膨張係数が異なる場合であっても良好な気密性を維持できる。例えば、パッケージ基板30として窒化アルミニウム(熱膨張係数:4.6×10
−6/℃)を使用し、窓部材40として石英ガラス(線膨張係数:0.6×10
−6/℃)を使用し、2000回の温度サイクル試験(−40℃/85℃)を実施したところ、窓部材40の割れや剥離はみられなかった。石英ガラスは、AlNやAl
2O
3などのセラミック材料より熱膨張係数が小さいため、金属接合材を加熱溶融した後に冷却される過程においてパッケージ基板30から圧縮応力を受けることとなる。一般にガラスは圧縮応力に強い特性を有するため、熱膨張係数の小さい石英ガラスを用いることにより、割れや剥離に対して強いパッケージ構造を実現できる。
【0049】
本実施の形態によれば、第1金属層51と第2金属層52の外形寸法差(例えば0.2mm)に対し、第1金属層51と第2金属層52の内形寸法差(例えば0.3mm)を大きくすることで、金属接合部53の内形側のフィレット形状を再現性よく形成できる。パッケージ基板30の上面31および第1金属層51は、製造上の都合等により平坦性が低い場合があり、場所に応じて微細な凹凸が生じていることがある。その結果、凹凸の形成位置によっては、溶融状態の金属接合材56がパッケージの内側に流れ込みやすい場所や、パッケージの外側に流れ込みやすい場所が生じることがある。そうすると、パッケージ基板30の上面31の全周にわたって適切なフィレット形状を再現できなくなるかもしれない。本実施の形態では、第1金属層51と第2金属層52の内形寸法差を大きくすることで、溶融状態の金属接合材が相対的に内側に流れ込みやすくなるようにできる。これにより、パッケージの内側に適切なフィレット形状が形成されるようにして、封止性の高いパッケージ構造を実現することができる。
【0050】
図7は、変形例に係る発光装置210の構成を概略的に示す断面図である。本変形例は、パッケージ基板30に設けられる第1金属層251よりも窓部材40に設けられる第2金属層252が大きくなるよう形成される点で上述の実施の形態と相違する。つまり、本変形例では、第2金属層252が設けられる領域内に第1金属層251の全体が位置するように構成される。以下、発光装置210について上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
発光装置210は、発光素子20と、パッケージ基板30と、窓部材40と、封止構造250とを備える。封止構造250は、第1金属層251と、第2金属層252と、金属接合部253とを有する。
【0052】
第1金属層251は、例えば、上述の実施の形態に係る第2金属層52と同等の形状および寸法を有するように形成され、第2金属層252は、例えば、上述の実施の形態に係る第1金属層51と同様の形状および寸法を有するように形成される。第1金属層251の外形寸法は、第2金属層252の外形寸法より小さく、第1金属層251の内形寸法は、第2金属層252の内形寸法より大きい。また、第2金属層252の幅は、第1金属層251の幅の2倍以上となるよう構成される。本変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができるため、パッケージ内の気密封止を好適に保つことができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0054】
上述の実施の形態および変形例では、発光装置のパッケージ内に発光素子のみを含める場合を示した。さらなる変形例においては、付加的な機能を持たせるために発光素子以外の電子部品をパッケージ内に組み込むこととしてもよい。例えば、電気的サージから発光素子を保護するためのツェナーダイオードを筐体内に組み込むこととしてもよい。また、発光素子が出力する光の波長を変換するための蛍光体を組み込んでもよいし、発光素子が発する光の配向を制御するための光学素子を組み込んでもよい。
【0055】
上述の実施の形態および変形例では、半導体発光素子をパッケージ内に封止した発光装置について示した。さらなる変形例においては、受光素子を封止するために上述の封止構造を用いてもよい。例えば、深紫外光を受光するための受光素子の封止に上述のパッケージ構造を用いてもよい。つまり、上記パッケージを光半導体素子の封止に用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…発光装置、20…発光素子、30…パッケージ基板、31…上面、34…凹部、40…窓部材、44…内面、50…封止構造、51…第1金属層、52…第2金属層、53…金属接合部、56…金属接合材。