特許第6294435号(P6294435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6294435
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20180305BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C02F1/32
   A61L2/10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-217038(P2016-217038)
(22)【出願日】2016年11月7日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋明
(72)【発明者】
【氏名】越智 鉄美
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0008632(US,A1)
【文献】 特開2014−233646(JP,A)
【文献】 特開2003−144913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/32
A61L 2/10
B01J 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源が格納される光源室と、
前記処理流路と前記光源室の間に設けられ、前記紫外光を透過する窓部材と、
前記光源室と連通する光源側圧力調整室と、
前記処理流路と連通する流路側圧力調整室と、
前記光源側圧力調整室と前記流路側圧力調整室の間に設けられ、前記光源室と前記処理流路の圧力差を低減させるように変位可能となるよう構成される隔壁と、を備え、
前記隔壁の変位に伴う前記光源側圧力調整室の容積変化により前記光源室の圧力を調整することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源が格納される光源室と、
前記処理流路と前記光源室の間に設けられ、前記紫外光を透過する窓部材と、
前記処理流路を挟んで前記光源室の反対側に設けられ、前記光源室と連通する圧力調整室と、
前記処理流路と前記圧力調整室の間に設けられ、前記光源室と前記処理流路の圧力差を低減させるように変位可能となるよう構成される隔壁と、を備え、
前記隔壁の変位に伴う前記圧力調整室の容積変化により前記光源室の圧力を調整することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項3】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源が格納される光源室と、
前記処理流路と前記光源室の間に設けられる隔壁であって、少なくとも一部が前記紫外光を透過する窓部材で構成され、前記光源室と前記処理流路の圧力差を低減させるように変位可能となるよう構成される隔壁と、を備え、
前記隔壁の変位に伴う前記光源室の容積変化により前記光源室の圧力を調整することを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項4】
前記隔壁は、前記光源室と前記処理流路の圧力差を低減させるようにスライド移動可能となるよう構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記隔壁は、少なくとも一部が可撓性の材料で構成され、前記光源室と前記処理流路の圧力差を低減させるように変形可能となるよう構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関し、特に、処理対象となる流体に紫外光を照射して殺菌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光には殺菌能力があることが知られており、医療や食品加工の現場などでの殺菌処理に紫外光を照射する装置が用いられている。また、水などの流体に紫外光を照射することで、流体を連続的に殺菌する装置も用いられている。このような装置として、例えば、直管状のパイプの両端部を石英のガラス板で封止し、パイプの外側からガラス板を介してパイプの内部を流れる流体に紫外光を照射する構成が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−233712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体殺菌装置では、処理すべき流体の流体圧に耐えうる流路構造を採用する必要があり、特に、流路と光源の間を仕切るガラス板を耐圧構造とする必要がある。処理される流体が高圧の場合、その圧力に耐えられるようガラス板の厚みを大きくしなければならない。一方で、ガラス板の厚みを大きくすると、厚いガラス板を透過することにより紫外光の損失が増加し、流体に照射される紫外光強度が低下してしまう。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、流路内を流れる流体への紫外光の照射効率を高めた流体殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が流れる処理流路と、処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源が格納される光源室と、処理流路と光源室の間に設けられ、紫外光を透過する窓部材と、処理流路の圧力と光源室の圧力の差を低減させるよう光源室の圧力を調整する圧力調整機構と、を備える。
【0007】
この態様によると、処理流路内の流体の圧力に応じて光源室の圧力が調整されるため、窓部材の両面に加わる圧力差を低減することができる。これにより、処理流路内の圧力に応じて光源室内の圧力が調整されないために比較的大きな圧力差が窓部材に加わってしまう場合に比べて厚みの小さい窓部材を採用することができ、流体への紫外光の照射効率を高めることができる。
【0008】
圧力調整機構は、処理流路と光源室の圧力差に応じて変位可能となるよう構成される隔壁を有し、隔壁の変位に伴う容積変化を用いて光源室の圧力を調整してもよい。
【0009】
圧力調整機構は、光源室と連通する光源側圧力調整室と、処理流路と連通する流路側圧力調整室とを有し、光源側圧力調整室と流路側圧力調整室の間に隔壁が設けられ、隔壁の変位に伴う光源側圧力調整室の容積変化を用いて光源室の圧力を調整してもよい。
【0010】
圧力調整機構は、光源室と連通する圧力調整室を有し、圧力調整室と処理流路の間に隔壁が設けられ、隔壁の変位に伴う圧力調整室の容積変化を用いて光源室の圧力を調整してもよい。
【0011】
圧力調整室は、処理流路を挟んで光源室の反対側に配置されてもよい。
【0012】
隔壁は、処理流路と光源室の間に設けられ、隔壁の少なくとも一部が窓部材となるよう構成されており、圧力調整機構は、隔壁の変位に伴う光源室の容積変化を用いて光源室の圧力を調整してもよい。
【0013】
光源室は、大気圧よりも高い圧力の気体が封入されてもよい。
【0014】
圧力調整機構は、光源室を加圧および減圧する加減圧装置と、処理流路の圧力を測定する流路圧力計と、流路圧力計の計測結果に基づいて加減圧装置の動作を制御する制御装置とを有してもよい。
【0015】
加減圧装置は、光源室を加圧するポンプと、光源室を減圧するバルブと、光源室の圧力を測定する光源室圧力計とを含んでもよい。制御装置は、流路圧力計と光源室圧力計の計測結果の差が低減されるよう加減圧装置を動作させてもよい。
【0016】
処理流路と光源室の圧力差が所定の閾値を超えた場合にアラートを出力する制御装置を備えてもよい。
【0017】
本発明の別の態様の流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が所定の動作圧力範囲内で流れるよう設計される処理流路と、処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源が格納される光源室と、処理流路と光源室の間に設けられ、紫外光を透過する窓部材と、を備える。光源室は、処理流路が設置される雰囲気圧とは異なる圧力であって、処理流路の動作圧力範囲の中間値と雰囲気圧との間のいずれかの圧力の気体が封入される。
【0018】
この態様によると、処理流路内を所定の動作圧力範囲の流体が流れる間、窓部材は、処理流路側から流体圧を受けるとともに、光源室側から動作圧力範囲の中間値と雰囲気圧との間の圧力を受ける。そのため、光源室内の気圧が雰囲気圧下である場合と比べて窓部材の両面に加わる圧力差を低減することができる。これにより、流体が流れているときの光源室内が雰囲気圧である場合に比べて厚みの小さい窓部材を採用することができ、流体への紫外光の照射効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、雰囲気圧と異なる圧力の流体を処理する場合であっても、流体に照射される紫外光強度を高めて殺菌能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2】変形例に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
図3】変形例に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
図4】第2の実施の形態に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
図5】第3の実施の形態に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。流体殺菌装置10は、処理容器20と、光源30と、窓部材32と、圧力調整機構40とを備える。光源30は、処理容器20により囲われる処理流路12の内部に向けて紫外光を照射し、処理流路12を流れる流体(水など)に紫外光を照射して殺菌処理を施す。
【0023】
処理容器20は、処理流路12および光源室14を区画する。処理容器20は、第1端壁21と、第2端壁22と、側壁23と、流出管26と、流入管27とを有する。第1端壁21の近傍には、光源30が収容される光源室14が設けられる。側壁23は、第1端壁21から第2端壁22に向けて軸方向に延在する。側壁23は、筒状部材であり、例えば円筒形状を有する。側壁23には、流出管26と流入管27が設けられる。流出管26および流入管27は、処理流路12と連通する。流出管26は、窓部材32の近傍に設けられ、流入管27は、第2端壁22の近傍に設けられる。処理容器20の内面25は、紫外光反射性を有する材料で構成され、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂材料やアルミニウム(Al)などの金属材料が用いられる。
【0024】
光源30は、紫外光を発する発光素子を含むいわゆるUV−LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)光源である。光源に含まれる発光素子は、その中心波長またはピーク波長が約200nm〜350nmの範囲に含まれ、殺菌効率の高い波長である260nm〜270nm付近の紫外光を発することが好ましい。このような紫外光LEDとして、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたものが知られている。
【0025】
光源30は、窓部材32に近接して設けられ、窓部材32を介して処理流路12の内部に軸方向に紫外光を照射するよう配置される。光源30は、発光素子の配光角を調整するための調整機構を含んでもよい。調整機構は、例えば、光源30に含まれる発光素子の指向角または配向角が60度以上、90度以上または120度以上である場合に、その出射角を調整して配向角が30度以下となるようにする。調整機構は、レンズなどの透過型の光学系で構成されてもよいし、凹面鏡などの反射型の光学系で構成されてもい。
【0026】
窓部材32は、処理流路12と光源室14の間を仕切るように設けられる。窓部材32は、例えば、処理容器20の側壁23に設けられる凹部24に嵌め込まれる。窓部材32と凹部24の隙間にはシール部材34が設けられる。これにより、処理流路12を流れる流体に対して、光源室14が封止ないし密閉されるようにする。窓部材32は、石英(SiO)やサファイア(Al)、非晶質のフッ素系樹脂などの紫外光の透過率が高い部材で構成される。
【0027】
圧力調整機構40は、圧力調整容器42と、隔壁44と、流路接続管46と、光源室接続管48とを有する。圧力調整機構40は、窓部材32の両面に加わる圧力差を低減し、処理流路12の流体圧による窓部材32の損傷を防ぐために設けられる。
【0028】
圧力調整容器42は、処理容器20とは別に設けられる容器である。隔壁44は、圧力調整容器42の内部に設けられ、圧力調整容器42の内部を流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18に仕切る。隔壁44は、スライド部材45を介して圧力調整容器42の内面に取り付けられており、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18が隣接する方向(図面の矢印方向)にスライド可能となるよう構成される。スライド部材45は、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18の間が隔壁44により封止ないし密閉された状態のまま隔壁44がスライド移動可能となるよう構成される。スライド部材45は、例えば、ピストンシール用のシール部材などにより構成される。
【0029】
流路接続管46は、処理流路12と流路側圧力調整室16を接続する配管である。流路接続管46は、処理流路12と流路側圧力調整室16を連通させ、処理流路12と流路側圧力調整室16の内部の圧力が等しくなるようにする。光源室接続管48は、光源室14と光源側圧力調整室18を接続する配管である。光源室接続管48は、光源室14と光源側圧力調整室18を連通させ、光源室14と光源側圧力調整室18の内部の圧力が等しくなるようにする。
【0030】
光源室14および光源側圧力調整室18は、窓部材32およびシール部材34と、隔壁44およびスライド部材45とにより密閉された空間となる。光源室14および光源側圧力調整室18には、空気や窒素(N)といった気体が封入される。光源室14には、処理流路12からの流体の漏れを検知するセンサが設けられてもよい。光源室14が設けられる漏れ検知センサは、例えば、流体の漏れを検知した場合にアラートを出力するよう構成される。
【0031】
隔壁44は、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18の圧力差、つまり、処理流路12と光源室14の圧力差に応じてスライド移動して変位する。隔壁44が変位すると、光源側圧力調整室18の容積が変化し、容積変化に伴って光源室14および光源側圧力調整室18の気圧が変化する。光源側圧力調整室18の容積が小さくなるように隔壁44が変位すると、光源側圧力調整室18の気体が圧縮されて圧力が上昇する。一方、光源側圧力調整室18の容積が大きくなるように隔壁44が変位すると、光源側圧力調整室18の気圧が低下する。このようにして、隔壁44は、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18の圧力差を低下させるように変位し、処理流路12と光源室14の圧力差が小さくなるように光源室14の圧力を調整する。
【0032】
圧力調整機構40は、第1圧力と第2圧力の間の範囲で圧力調整可能となるように構成される。第1圧力は、光源側圧力調整室18の容積が最大となるときの光源室14および光源側圧力調整室18の気圧に対応する。第2圧力は、光源側圧力調整室18の容積が最小となるときの光源室14および光源側圧力調整室18の気圧に対応する。第1圧力の値は、特に問わないが、大気圧(約0.1MPa)の近傍の値であることが好ましい。第1圧力値を大気圧近傍とすることで、流体殺菌装置10の非使用時において、処理流路12と光源室14の圧力差を極力小さくできる。なお、流体殺菌装置10が設置される環境が大気圧と異なる所定の雰囲気圧である場合、第1圧力は雰囲気圧に近い値であってもよい。
【0033】
一方、第2圧力の値は、処理対象とする流体の流体圧に応じて決められ、例えば、大気圧の2倍〜100倍(約0.2MPa〜10MPa)程度の値が設定される。第2圧力値を処理対象とする流体の上限圧以上にすることで、流体殺菌装置10の使用時において、処理流路12と光源室14の圧力差を極力小さくし、実質的にゼロにすることができる。なお、第2圧力値は、処理対象とする流体の上限圧未満であってもよい。流体殺菌装置10の使用時において、処理流路12の圧力より低い圧力までしか光源室14の圧力が調整できなかったとしても、光源室14が大気圧である場合に比べて処理流路12と光源室14の間の圧力差を緩和できるからである。
【0034】
以上のように構成される流体殺菌装置10の動作について説明する。流体殺菌装置10の使用時において処理流路12の内部に流体が導入されると、処理流路12の内部の流体圧に応じて流路側圧力調整室16の圧力が上昇し、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18の圧力差を緩和するように隔壁44が変位する。その結果、処理流路12の流体圧の上昇に伴って光源室14の圧力が上昇し、光源室14の圧力が流体圧または第2圧力値となる。光源30は、窓部材32を介して処理流路12を流れる流体に紫外光を照射して殺菌処理を施す。
【0035】
処理流路12の流体の流れが止まって流体圧が低下すると、流路側圧力調整室16の圧力が低下し、流路側圧力調整室16と光源側圧力調整室18の圧力差を緩和するように隔壁44が変位する。その結果、処理流路12の流体圧の低下に伴って光源室14の圧力が低下する。流体殺菌装置10の非使用時において処理流路12が空になって大気圧になると、光源室14の圧力が大気圧または第1圧力値となる。このようにして、流体殺菌装置10の使用時および非使用時の双方において、処理流路12と光源室14の圧力差が緩和されるように圧力調整機構40が作動する。
【0036】
本実施の形態によれば、流体殺菌装置10の使用時および非使用時において、圧力調整機構40により処理流路12と光源室14の圧力差が緩和されるため、圧力差に起因して窓部材32に加わる力を常時小さくできる。これにより、処理流路12を流れる流体圧に耐えうるように窓部材32の厚さを大きくする必要がなくなり、高圧の流体を処理する場合であっても窓部材32を薄くできる。窓部材32を薄くすることで、窓部材32を透過する紫外光の損失を抑え、処理流路12を流れる流体に照射される紫外光強度を高めることができる。また、窓部材32を薄くすることで、窓部材32およびシール部材34のコストを下げることができる。
【0037】
本実施の形態では、大気圧または雰囲気圧よりも流体の動作圧力範囲が高い場合について示したが、変形例においては、動作圧力範囲に大気圧または雰囲気圧が含まれてもよいし、動作圧力範囲が大気圧または雰囲気圧より低くてもよい。このような場合であっても、処理流路12と光源室14の圧力差を低減させるよう圧力調整機構40を作動させることにより、窓部材32に加わる圧力差の最大値を低減し、圧力調整がなされない場合と比較して薄い窓部材32を採用することができる。
【0038】
(変形例1)
図2は、変形例1に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例に係る流体殺菌装置10は、圧力調整機構40の代わりに別の圧力調整機構50を備える。圧力調整機構50は、処理容器20の内部に区画される圧力調整室17を用いて光源室14の圧力を調整するよう構成される。以下、本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
圧力調整機構50は、隔壁54と、接続管58とを有する。隔壁54は、処理容器20の内部において処理流路12と圧力調整室17の間を仕切るように設けられる。したがって、圧力調整室17は、第2端壁22、側壁23および隔壁54により区画され、処理流路12を挟んで光源室14と反対側の位置に設けられる。
【0040】
隔壁54は、スライド部材55を介して処理容器20の内面25に取り付けられる。隔壁54は、第2端壁22の近傍に設けられ、第2端壁22と流入管27の間で処理容器20の軸方向(図面の矢印方向)にスライド可能となるよう構成される。流入管27の近傍の内面25には、ストッパ57が設けられる。ストッパ57は、流入管27の位置を超えて第2端壁22から離れる方向に隔壁54が移動しないよう隔壁54の変位を規制する。隔壁54は、紫外光の反射率が高い部材で構成されてもよく、例えば、隔壁54のうち光源30と対向する対向面54aが紫外光の反射率が高い部材で構成されてもよい。
【0041】
接続管58は、光源室14と圧力調整室17を接続し、光源室14と圧力調整室17の圧力が等しくなるようにする。接続管58は、処理容器20の側壁23に沿って軸方向に延在し、第1端壁21に設けられる光源室14と、第2端壁22に設けられる圧力調整室17とを接続する。接続管58は、図示されるように処理容器20の外部に設けられる。なお、接続管58は、処理容器20と一体化されるように構成されてもよく、例えば、処理容器20の側壁23に埋め込まれていてもよい。
【0042】
本変形例によれば、処理流路12と圧力調整室17の圧力差に応じて隔壁54が変位して圧力調整室17の容積が変化することにより、光源室14および圧力調整室17の圧力が調整される。したがって、本変形例においても、流体殺菌装置10の使用時および非使用時において、処理流路12と光源室14の圧力差が低減するように光源室14の圧力を調整できる。
【0043】
(変形例2)
図3は、変形例2に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例に係る流体殺菌装置10は、圧力調整機構40の代わりに圧力調整機構60を備える。圧力調整機構60は、窓部材32を移動可能に構成することで、光源室14が圧力調整室として機能するようにしている。以下、本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
圧力調整機構60は、隔壁64を備える。隔壁64は、処理容器20の内部において処理流路12と光源室14の間を仕切るように設けられる。隔壁64には窓部材32が設けられており、隔壁64の少なくとも一部が紫外光を透過する材料で構成される。隔壁64は、スライド部材65を介して処理容器20の内面25に取り付けられ、光源30と流出管26の間で処理容器20の軸方向(図面の矢印方向)にスライド可能となるよう構成される。光源30の近傍には第1ストッパ67aが設けられ、第1ストッパ67aにより隔壁64が光源30に接触しないように規制される。また、流出管26の近傍には第2ストッパ67bが設けられ、流出管26の位置を超えて第1端壁21から離れる方向に隔壁64が移動しないよう隔壁64の変位が規制される。
【0045】
本変形例によれば、窓部材32としての機能を兼ねる隔壁64が変位することにより光源室14の容積が変化し、光源室14の圧力が調整される。したがって、本変形例においても、流体殺菌装置10の使用時および非使用時において、処理流路12と光源室14の圧力差が低減するように光源室14の圧力を調整できる。
【0046】
(変形例3)
上述の実施の形態および変形例では、隔壁がスライド移動することにより圧力調整室の容積を変化させる構成について示した。さらなる変形例では、別の構造により圧力調整室の容積が可変となるよう構成されてもよい。例えば、隔壁を可撓性の材料で構成し、隔壁が変形することにより圧力調整室の容積が可変となるよう構成してもよい。例えば、隔壁にダイヤフラム構造を使用し、ダイヤフラムの変形により圧力調整室の容積を変化させてもよい。つまり、隔壁の変形により隔壁の少なくとも一部が変位して圧力調整室の容積が変化するよう構成されてもよい。
【0047】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る流体殺菌装置110の構成を概略的に示す断面図である。流体殺菌装置110は、処理容器20と、光源30と、窓部材32と、圧力調整機構70とを備える。圧力調整機構70は、加減圧装置72と、制御装置80と、流路圧力計88とを有する。本実施の形態では、処理流路12の圧力値に応じて加減圧装置72を作動させることにより光源室14の圧力を調整するよう構成される。以下、流体殺菌装置110について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
加減圧装置72は、加圧ポンプ74と、減圧バルブ76と、光源室圧力計78とを含む。加減圧装置72は、光源室14と連通する光源室接続管84に接続されている。加圧ポンプ74は、加圧された空気や窒素ガスを光源室接続管84を介して光源室14に供給し、光源室14を加圧するよう構成される。減圧バルブ76は、加圧された光源室14をベントして光源室14の圧力を下げるよう構成される。光源室圧力計78は、光源室14の圧力を計測する。流路圧力計88は、流路接続管82を介して処理流路12に接続され、処理流路12の流体圧を計測する。加圧ポンプ74、減圧バルブ76、光源室圧力計78および流路圧力計88は、制御装置80に接続されており、制御装置80からの指令にしたがって作動する。
【0049】
制御装置80は、流路圧力計88が計測する処理流路12の圧力値に応じて、加減圧装置72の動作を制御する。制御装置80は、処理流路12の圧力値が上昇する場合、加圧ポンプ74を作動させて光源室14を加圧し、処理流路12と光源室14の圧力差が低減されるようにする。制御装置80は、処理流路12の圧力値が低下する場合、減圧バルブ76を作動させて光源室14を減圧し、処理流路12と光源室14の圧力差が低減されるようにする。制御装置80は、例えば、光源室圧力計78の圧力値と流路圧力計88の圧力値の差が小さくなるように加圧ポンプ74および減圧バルブ76をフィードバック制御する。
【0050】
制御装置80は、加減圧装置72が正常に動作しない場合に異常を示すアラートを出力してもよい。制御装置80は、例えば、処理流路12と光源室14の圧力差が所定の閾値を超えた場合にアラートを出力する。これにより、窓部材32が損傷を受けたり、シール部材34による封止が損なわれたりするおそれがある旨を通知してもよい。
【0051】
本実施の形態によれば、流路圧力計88の圧力値に応じて、加減圧装置72を作動させることにより、光源室14の圧力を調整することができる。したがって、本実施の形態によれば、処理流路12の流体圧が高くなる場合であっても、処理流路12と光源室14の圧力差が低減するように光源室14の圧力を調整できる。
【0052】
(第3の実施の形態)
図5は、第3の実施の形態に係る流体殺菌装置210の構成を概略的に示す断面図である。流体殺菌装置210は、処理容器20と、光源30と、窓部材32と、バルブ90とを備える。本実施の形態では、上述の実施の形態および変形例にて示したような圧力調整機構が設けられず、光源室14の圧力が一定値に維持される。光源室14にはバルブ90が接続されており、光源室14には所定の圧力の気体が封入される。本実施の形態では、光源室14に所定の圧力の気体を封入することにより、窓部材32に加わる圧力差の最大値が緩和されるようにする。
【0053】
光源室14に封入される気体の圧力値は、処理流路12を流れる流体の動作圧力範囲の中間値と処理流路12の設置場所の雰囲気圧との間の値である。例えば、処理流路12を流れる流体の動作圧力範囲が0.3MPa〜0.5MPaであり、処理流路12が設置される雰囲気圧が大気圧(約0.1MPa)であれば、光源室14には0.1MPa〜0.4MPaの間の気体が封入される。光源室14の圧力値は、窓部材32に加わる圧力差の最大値が小さくなるように設定されることが好ましく、例えば、処理流路12の動作圧力範囲の上限または下限(限界値)と、雰囲気圧との中間付近の値が設定される。例えば、光源室14の圧力値は、処理流路12の動作圧力範囲の限界値と雰囲気圧との中間値の0.5倍〜1.5倍程度の値が設定されてもよい。
【0054】
処理流路12の雰囲気圧は、大気圧であってもよいし、大気圧より低くてもよいし、大気圧より高くてもよい。また、処理流路12を流れる流体の動作圧力範囲は、処理流路12が設置される雰囲気圧を含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、処理流路12の動作圧力範囲が雰囲気圧よりも低い場合には、光源室14の圧力は雰囲気圧より低くてもよい。光源室14の圧力値は、雰囲気圧と異なる値であってもよいし、雰囲気圧と同じ値であってもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、光源室14が所定の圧力に設定され、かつ、処理流路12を流れる流体の動作圧力範囲と雰囲気圧の間の圧力となっているため、窓部材32の両面にかかる圧力差の最大値を低減できる。例えば、流体の動作圧力範囲が0.3MPa〜0.5MPaであり、光源室14の圧力が0.3MPaであれば、処理流路12を流体が流れている間に窓部材32に加わる圧力差は最大で0.2MPaとなる。また、処理流路12が空になって雰囲気圧(例えば、大気圧である約0.1MPa)となる場合も、窓部材32に加わる圧力差は約0.2MPaとなる。その結果、窓部材32の両面に加わる圧力の最大値を流体圧の上限値よりも小さくできる。これにより、光源室14が所定圧力に設定されない場合と比べて、圧力差に起因して窓部材32に加わる力の最大値を小さくできる。したがって、本実施の形態によれば、流体の動作圧力範囲と雰囲気圧の差が大きい流体を処理する場合であっても、厚みの小さい窓部材32を用いることが可能となる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0057】
上述の実施の形態および変形例では、流体に紫外光を照射して殺菌処理を施すための装置として説明した。さらなる変形例においては、紫外光の照射により流体に含まれる有機物を分解させる浄化処理に本流体殺菌装置を用いてもよい。
【0058】
さらなる変形例においては、上述の実施の形態または変形例にて示した流れの方向と逆向きに流体を流してもよい。つまり、流入口と流出口をそれぞれ逆に用いてもよい。例えば、図1に示す第1の実施の形態において、符号27で示される流通口を流出口として使用し、符号26で示される流通口を流入口として使用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10,110,210…流体殺菌装置、12…処理流路、14…光源室、16…流路側圧力調整室、17…圧力調整室、18…光源側圧力調整室、30…光源、32…窓部材、40…圧力調整機構、44…隔壁、45…スライド部材、50…圧力調整機構、54…隔壁、55…スライド部材、60…圧力調整機構、64…隔壁、65…スライド部材、70…圧力調整機構、72…加減圧装置、74…加圧ポンプ、76…減圧バルブ、78…光源室圧力計、80…制御装置、88…流路圧力計。
【要約】
【課題】流路内を流れる流体への紫外光の照射効率を高めた流体殺菌装置を提供する。
【解決手段】流体殺菌装置10は、殺菌対象の流体が流れる処理流路12と、処理流路12内の流体に向けて紫外光を照射する光源30が格納される光源室14と、処理流路12と光源室14の間に設けられ、紫外光を透過する窓部材32と、処理流路12の圧力と光源室14の圧力の差を低減させるよう光源室14の圧力を調整する圧力調整機構40と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5