特許第6294456号(P6294456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294456
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】修飾されたドセタキセルリポソーム製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20180305BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   A61K31/337
   A61K9/127
   A61K47/24
   A61K47/28
   A61P35/00
【請求項の数】33
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2016-502155(P2016-502155)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-513655(P2016-513655A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】US2014026483
(87)【国際公開番号】WO2014160392
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/779,902
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595181003
【氏名又は名称】マリンクロッド エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】マッギー, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブラックレッジ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】グラパーハウス, マーガレット
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−523643(JP,A)
【文献】 特表2006−508126(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/101587(WO,A1)
【文献】 特表2011−509947(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0231066(US,A1)
【文献】 The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,1999年,Vol.289, No.2,p.1128-1133
【文献】 Journal of Controlled Release,1998年,Vol.53,p.275-279
【文献】 Nature Biotechnology,1999年 8月,Vol.17,p.775-779
【文献】 Biochimica et Biophysica Acta,1999年,Vol.1420,p.153-167
【文献】 Journal of Controlled Release,2012年,Vol.160,p.117-134
【文献】 MEMBRANE,2013年 1月 1日,Vol.38, No.1,p.51-56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームタキサンを調製する方法であって、該方法は、
a)ホスファチジルコリン脂質およびステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含む内部区画を封入し;
b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;次いで、
)該負荷されたリポソームおよびポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質を含む混合物を形成し、ここで、ホスファチジルコリン脂質およびステロールの合計と該PEG−脂質との比が、約1000:1(モル:モル)〜約20:1(モル:モル)であり、該PEG−脂質の該脂質二重層への挿入を可能とするために、約30〜60分間約50℃〜約60℃まで該混合物を加熱し
それによりリポソームタキサンを形成することを含
ここで、該ステロールがコレステロールであり、該リポソームが、35モル%〜50モル%のコレステロールを含有し、
該PEG−脂質の挿入の結果、該リポソーム中の全脂質の2モル%〜8モル%のPEG脂質をもたらされる、方法。
【請求項2】
前記リポソームタキサンが、0.12〜0.25の薬物対脂質比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リポソームタキサンが、0.14〜0.19の薬物対脂質比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
記コレステロール、脂質の量に対して約3重量%〜45重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
記コレステロール、脂質の量に対して約40重量%〜45重量%の量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
リポソームタキサンを調製する方法であって、該方法は、
a)ホスファチジルコリン脂質およびコレステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含む内部区画を封入し;
b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;次いで、
c)該負荷されたリポソームおよびポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質)を含む混合物を形成し、ここで、ホスファチジルコリン脂質およびコレステロールの合計と該PEG−脂質との比が、約1000:1(モル:モル)〜約20:1(モル:モル)であり、該PEG−脂質の該脂質二重層への挿入を可能とするために、約30〜60分間約50℃〜約60℃まで該混合物を加熱し;
それによりリポソームタキサンを形成することを含み、
前記第一のリポソームが、DSPC/DSPE/Chol、45/10/45;DOPC/Chol、55/45;DOPC/Chol、65/35;HSPC/Chol、55/45;DSPC/Chol、55/45;DMPC/Chol、55/45;DSPC/Chol、65/35;DPPC/Chol、55/45;SOPC/Chol、55/45;POPC/Chol、55/45;HSPC/Chol、65/35よりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され;前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約1.9重量%〜約5.0重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、方法。
【請求項7】
前記第一のリポソームが、SOPC/CholおよびPOPC/Cholよりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され、コレステロールは約42〜48モル%の量で存在し、前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約重量%〜約重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リポソームタキサンを調製する方法であって、該方法は、
a)ホスファチジルコリン脂質およびコレステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含む内部区画を封入し;
b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;次いで、
c)該負荷されたリポソームおよびポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質)を含む混合物を形成し、ここで、ホスファチジルコリン脂質およびコレステロールの合計と該PEG−脂質との比が、約1000:1(モル:モル)〜約20:1(モル:モル)であり、該PEG−脂質の該脂質二重層への挿入を可能とするために、約30〜60分間約50℃〜約60℃まで該混合物を加熱し;
それによりリポソームタキサンを形成することを含み、
前記第一のリポソームが、DOPC/Chol、HSPC/Chol、DSPC/Chol、およびDPPC/Cholよりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され、コレステロールは約3〜48モル%の量で存在し、前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約重量%〜約重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、方法。
【請求項9】
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基が、5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ペンタノイル、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイル、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)−プロピオノイル、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタノイル、5−モルホリノ−ペンタノイル、4−モルホリノ−ブタノイル、3−モルホリノ−プロピオノイル、2−モルホリノ−エタノイル、5−(ピペリジン−1−イル)ペンタノイル、4−(ピペリジン−1−イル)ブタノイル、3−(ピペリジン−1−イル)プロピオノイル、および2−(ピペリジン−1−イル)−エタノイルよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基が4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ホスファチジルコリン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、およびそれらの混合物よりなる群から選択され、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記脂質二重層がDSPCおよびコレステロールを含み、DSPC:コレステロール比が約55:45(モル:モル)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のリポソームの前記内部区画が水性硫酸アンモニウムを含む、請求項1〜1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のリポソームの負荷が、該第一のリポソームの前記内部区画における前記タキサンの蓄積を可能とするのに十分な条件下で、該第一のリポソームおよび該タキサンもしくはその薬学的に許容され得る塩を含む水溶液を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程b)が、約50℃〜約70℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程b)が、前記タキサンの重量に対する前記ホスファチジルコリンおよび前記ステロールの合わせた重量の比が約1:0.01〜約1:1であるように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記タキサンの重量に対する前記ホスファチジルコリンおよび前記ステロールの合わせた重量の比が約1:0.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記PEG−脂質がジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記PEG−脂質が、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2000)およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG5000)よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約35:1(モル:モル)〜約25:1(モル:モル)である、請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約33:1(モル:モル)である、請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約27:1(モル:モル)である、請求項に記載の方法。
【請求項23】
工程c)における前記混合物からのリポソームタキサンを、封入されていないタキサンおよび挿入されていないPEG−脂質を実質的に含まない水溶液に交換することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記リポソームタキサンを凍結乾燥することをさらに含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
リポソームを含むがんの処置用の組成物であって、該リポソームが:
i)ホスファチジルコリン脂質;
ii)ステロール;
iii)PEG−脂質;および
iv)タキサンまたはその薬学的に許容され得る塩
を含み;
該タキサンが2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルであって;
該PEG−脂質が該リポソーム中の全脂質の2モル%〜8モル%を構成
ここで、該ステロールがコレステロールであり、該リポソームが、35モル%〜50モル%のコレステロールを含有し、
5℃で貯蔵した場合、該リポソームからのドセタキセルの放出が、該PEG−脂質を有さないリポソームと比較して約1/20に減少する、組成物。
【請求項26】
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)が、5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ペンタン酸、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)−プロピオン酸、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタン酸、5−モルホリノ−ペンタン酸、4−モルホリノ−ブタン酸、3−モルホリノ−プロピオン酸、2−モルホリノ−エタン酸、5−(ピペリジン−1−イル)ペンタン酸、4−(ピペリジン−1−イル)ブタン酸、3−(ピペリジン−1−イル)プロピオン酸、および2−(ピペリジン−1−イル)エタン酸よりなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)が、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ホスファチジルコリン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、およびそれらの混合物よりなる群から選択され;前記ステロールがコレステロールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記PEG−脂質が、ジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
前記PEG−脂質が、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000]よりなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
リポソームを含むがんの処置用の組成物であって、該リポソームが:
i)ホスファチジルコリン脂質;
ii)ステロール;
iii)PEG−脂質;および
iv)タキサンまたはその薬学的に許容され得る塩
を含み;
該タキサンが2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルであって;
該PEG−脂質が該リポソーム中の全脂質の2モル%〜8モル%を構成し、
ここで、該ステロールがコレステロールであり、
前記リポソームが、約50モル%〜約70モル%の、DPPCおよびDSPCよりなる群から選択されるホスファチジルコリン脂質、ならびに約5モル%〜約45モル%のコレステロールを含
5℃で貯蔵した場合、該リポソームからのドセタキセルの放出が、該PEG−脂質を有さないリポソームと比較して約1/20に減少する、組成物。
【請求項32】
前記リポソームが、約53モル%のDSPC、約44モル%のコレステロール、および約3モル%のPEG−脂質を含み、前記PEG−脂質がジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]である、請求項3に記載の組成物。
【請求項33】
がんの処置を必要とする被験体において、がんを処置するための、請求項25〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月13日に出願された米国仮特許出願第61/779,902号の優先権の利益を主張し、当該出願の内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究開発下でなされた発明に対する権利に関する陳述
適用されず
【0003】
「配列表」、表、またはコンパクトディスクで提出されたコンピュータプログラム一覧の添付書類に対する言及
適用されず
【背景技術】
【0004】
タキソテール(登録商標)(ドセタキセル)およびタキソール(登録商標)(パクリタキセル)は、市場において最も広く処方される抗がん薬物であって、高度に可変(ドセタキセル)で非線形(パクリタキセル)の薬物動態、製剤ビークルに関連する深刻な過敏反応(クレモフォールEL、Tween80)、および投与量制限的骨髄抑制および神経毒性を含めた、多数の薬理学的および毒物学的関心事に関連する。タキソテール(登録商標)の場合、薬物動態における大きな変動性は、毒性および有効性の顕著な変動性、ならびに非結合薬物への全身の曝露に相関する血液学的毒性を引き起こす。加えて、タキサンの治療活性は、腫瘍細胞の薬物曝露の持続時間と共に増加するので、市販のタキサン製剤の投与量制限的毒性は、それらの治療的潜在能力を実質的に制限する。がん細胞によるタンパク質トランスポーターポンプのアップレギュレーションなどの原因による薬物に対する耐性は、タキサンベースの療法をさらに複雑にしかねない。従って、減少した毒性および改良された有効性を持つタキサンベースの化学療法に対する要望が存在する。本発明は、この要望および他の要望に取り組むものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様において、本発明は、がんの処置用の組成物を提供する。該組成物は、ホスファチジルコリン脂質、ステロール、ポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質)、およびタキサンまたはその薬学的に許容され得る塩を含有するリポソームを含む。タキサンは、2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルであり、PEG−脂質はリポソーム中の全脂質の2〜8モル%を構成する。
【0006】
第二の態様において、本発明は、リポソームタキサンを調製する方法を提供する。該方法は、a)ホスファチジルコリン脂質およびステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は、水溶液を含む内部区画を封入し;b)該第一のリポソームに、タキサンまたはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルであり;次いで、c)PEG−脂質の該脂質二重層への挿入を可能とするのに十分な条件下で、該負荷されたリポソームおよび該PEG−脂質を含有する混合物を形成することを含む。
【0007】
第三の態様において、本発明はがんを処置する方法を提供する。該方法は、本発明のリポソームタキサンを、投与を必要とする被験体に投与することを含む。
本発明は、例えば、以下の項目も提供される。
(項目1)
リポソームタキサンを調製する方法であって、
a)ホスファチジルコリン脂質およびステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含む内部区画を封入し;
b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;次いで、
c)ポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質)の該脂質二重層への挿入を可能とするのに十分な条件下で、該負荷されたリポソームおよび該PEG−脂質を含む混合物を形成し;
それによりリポソームタキサンを形成することを含む、方法。
(項目2)
前記リポソームタキサンが、0.12〜0.25の薬物対脂質比を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記リポソームタキサンが、0.14〜0.19の薬物対脂質比を有する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記リポソームタキサンに存在する前記ステロールがコレステロールであって、脂質の量に対して約30重量%〜45重量%の量で存在する、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記リポソームタキサンに存在する前記ステロールがコレステロールであって、脂質の量に対して約40重量%〜45重量%の量で存在する、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記第一のリポソームが、DSPC/DSPE/Chol、45/10/45;DOPC/Chol、55/45;DOPC/Chol、65/35;HSPC/Chol、55/45;DSPC/Chol、55/45;DMPC/Chol、55/45;DSPC/Chol、65/35;DPPC/Chol、55/45;SOPC/Chol、55/45;POPC/Chol、55/45;HSPC/Chol、65/35よりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され;前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約1.9重量%〜約5.0重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記第一のリポソームが、SOPC/CholおよびPOPC/Cholよりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され、コレステロールは約42〜48モル%の量で存在し、前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約1.9重量%〜約5.0重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記第一のリポソームが、DOPC/Chol、HSPC/Chol、DSPC/Chol、およびDPPC/Cholよりなる群から選択される脂質コレステロールの組合せから形成され、コレステロールは約30〜48モル%の量で存在し、前記PEG−脂質の挿入の結果、脂質、コレステロールおよびPEG−脂質の合わせた量に対して約1.9重量%〜約5.0重量%のPEG−脂質の量がもたらされる、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基が、5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ペンタノイル、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイル、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)−プロピオノイル、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタノイル、5−モルホリノ−ペンタノイル、4−モルホリノ−ブタノイル、3−モルホリノ−プロピオノイル、2−モルホリノ−エタノイル、5−(ピペリジン−1−イル)ペンタノイル、4−(ピペリジン−1−イル)ブタノイル、3−(ピペリジン−1−イル)プロピオノイル、および2−(ピペリジン−1−イル)−エタノイルよりなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基が4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイルである、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記ホスファチジルコリン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、およびそれらの混合物よりなる群から選択され;前記ステロールがコレステロールである、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記脂質二重層がDSPCおよびコレステロールを含み、DSPC:コレステロール比が約55:45(モル:モル)である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記脂質二重層がDSPCおよびコレステロールを含み、DSPC:コレステロール比が約70:30(モル:モル)である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記第一のリポソームの前記内部区画が水性硫酸アンモニウムを含む、項目1〜13のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記第一のリポソームの負荷が、該第一のリポソームの前記内部区画における前記タキサンの蓄積を可能とするのに十分な条件下で、該第一のリポソームおよび該タキサンもしくはその薬学的に許容され得る塩を含む水溶液を形成することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
工程b)が、約50℃〜約70℃の温度で行われる、項目15に記載の方法。
(項目17)
工程b)が、前記タキサンの重量に対する前記ホスファチジルコリンおよび前記ステロールの合わせた重量の比が約1:0.01〜約1:1であるように行われる、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記タキサンの重量に対する前記ホスファチジルコリンおよび前記ステロールの合わせた重量の比が約1:0.2である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記PEG−脂質がジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記PEG−脂質が、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2000)およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG5000)よりなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
工程c)が、前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約1000:1(モル:モル)〜約20:1(モル:モル)であるように行われる、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約35:1(モル:モル)〜約25:1(モル:モル)である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約33:1(モル:モル)である、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約27:1(モル:モル)である、項目21に記載の方法。
(項目25)
工程c)が、約35℃〜約70℃の温度で行われる、項目1〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
工程c)が、約50℃〜約55℃の温度で行われる、項目25に記載の方法。
(項目27)
工程c)における前記混合物からのリポソームタキサンを、封入されていないタキサンおよび挿入されていないPEG−脂質を実質的に含まない水溶液に交換することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記リポソームタキサンを凍結乾燥することをさらに含む、項目1〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
項目1〜28のいずれか1項に記載の方法に従って調製されたリポソームタキサン。
(項目30)
がんを処置する方法であって、項目1〜28のいずれか1項に記載の方法に従って調製されたリポソームタキサンを、それを必要とする被験体に投与することを含む方法。
(項目31)
リポソームを含むがんの処置用の組成物であって、該リポソームが:
i)ホスファチジルコリン脂質;
ii)ステロール;
iii)PEG−脂質;および
iv)タキサンまたはその薬学的に許容され得る塩
を含み;
該タキサンが2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルであって;
該PEG−脂質が該リポソーム中の全脂質の2〜8モル%を構成する、組成物。
(項目32)
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)が、5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ペンタン酸、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)−プロピオン酸、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタン酸、5−モルホリノ−ペンタン酸、4−モルホリノ−ブタン酸、3−モルホリノ−プロピオン酸、2−モルホリノ−エタン酸、5−(ピペリジン−1−イル)ペンタン酸、4−(ピペリジン−1−イル)ブタン酸、3−(ピペリジン−1−イル)プロピオン酸、および2−(ピペリジン−1−イル)エタン酸よりなる群から選択される、項目31に記載の組成物。
(項目33)
前記ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)が、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸である、項目31に記載の組成物。
(項目34)
前記ホスファチジルコリン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、およびそれらの混合物よりなる群から選択され;前記ステロールがコレステロールである、項目31に記載の組成物。
(項目35)
前記PEG−脂質が、ジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]である、項目31に記載の組成物。
(項目36)
前記PEG−脂質が、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000]よりなる群から選択される、項目31に記載の組成物。
(項目37)
前記リポソームが、約50モル%〜約70モル%の、DPPCおよびDSPCよりなる群から選択されるホスファチジルコリン脂質、ならびに約25モル%〜約45モル%のコレステロールを含む、項目31に記載の組成物。
(項目38)
前記リポソームが、約53モル%のDSPC、約44モル%のコレステロール、および約3モル%のPEG−脂質を含み、前記PEG−脂質がジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]である、項目37に記載の組成物。
(項目39)
前記リポソームが、約66モル%のDSPC、約30モル%のコレステロール、および約4モル%のPEG−脂質を含み、前記PEG−脂質がジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]である、項目37に記載の組成物。
(項目40)
がんを処置する方法であって、項目31〜39のいずれか1項に従って調製されたリポソームタキサンを、それを必要とする被験体に投与することを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、TD−1、TD−1リポソーム、およびPEG化TD−1リポソームの、PC3異種移植片を持つマウスへの投与後の、血漿からのTD−1(A)およびドセタキセル(B)のクリアランスを示す。
【0009】
図2図2は、PEG化TD−1リポソームの、A549異種移植片を持つマウスへの投与後の、血漿からのTD−1のクリアランスを示す。データは、3匹のマウスの平均値±標準誤差として、または3匹未満のマウスの場合、平均値または単一の値として表される。
【0010】
図3図3は、TD−1、TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームの、PC3異種移植片を持つマウスへの投与後の、腫瘍におけるTD−1(A)およびドセタキセル(B)のレベルを示す。データは、3匹のマウスの平均値±標準誤差として表される。
【0011】
図4図4は、PEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの、A549ヒトNSCLC異種移植片を持つマウスへの投与後の、腫瘍におけるTD−1(A)およびドセタキセル(B)のレベルを示す。データは、3匹のマウスの平均値±標準誤差として、または3匹未満のマウスであれば、平均値または単一の値として表される。
【0012】
図5図5は、40mg/kg(A)および144mg/kg(B)PEG化TD−1リポソームの、A549ヒトNSCLC異種移植片を持つマウスへの投与後の、組織におけるTD−1のレベルを示す。データは、3匹のマウスの平均値±標準誤差として、または3匹未満のマウスの場合、平均値または単一の値として表される。
【0013】
図6図6は、40mg/kg(A)および144mg/kg(B)PEG化TD−1リポソームの、A549ヒトNSCLC異種移植片を持つマウスへの投与後の、組織におけるドセタキセルのレベルを示す。データは、3匹のマウスの平均値±標準誤差として、または3匹未満のマウスの場合、平均値または単一の値として表される。
【0014】
図7図7(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、ヒトA253(頭頸部)腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。データは平均値±標準誤差として表される(n=5〜10)。処置後31日目に、PEG化TD−1リポソーム(90mg/kg)処置マウスは、生理食塩水(対照)またはドセタキセル(30mg/kg)処置マウスよりも有意に小さな腫瘍を有する。*、p<0.05、一元配置ANOVA後のニューマン=コイルス(Newman−Keuls)事後検定。図7(B)は、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセルまたは生理食塩水で処置したA253(頭頸部)異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのカプラン−マイヤー(Kaplan−Meier)生存プロットを示す。PEG化TD−1リポソーム(90mg/kg)は、ドセタキセルおよび対照よりも有意に大きく生存を増加させた。*、p<0.05、マンテル−コックス(Mantel−Cox)、log−ランク検定。各群は、腫瘍を持つ10匹の雌マウスで開始した。
【0015】
図8図8(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、ヒトA549NSCLC腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。データは、平均値±標準誤差として表される(n=5〜10)。PEG化TD−1リポソーム(90mg/kg)は、処置後70日目に、対照またはドセタキセル(10、20、および30mg/kg)と比較して、腫瘍成長を有意に阻害した。*、p<0.05、ANOVA、続いての、Neuman−Keuls事後検定。図8(B)は、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセルまたは生理食塩水で処置された、A549NSCLC異種移植片腫瘍を持つマウスのカプラン−マイヤー生存プロットを示す。各群は、腫瘍を持つ10匹の雌マウスで開始した。
【0016】
図9図9(A)は、ヌードマウスにおける、A549ヒトNSCLC腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。被験物質は、0および21日目に投与された。PEG化TD−1リポソーム(60および90mg/kg)およびドセタキセル(18および27mg/kg)の投与の結果、最初の処置から37日後に、生理食塩水よりも有意に小さな腫瘍がもたらされた。*、p<0.05。PEG化TD−1リポソーム(60および90mg/kg)での処置の結果、処置から37および56日後に、比較的許容される投与量のドセタキセル(18および27mg/kg)よりも有意に小さな腫瘍がもたらされた。#、p<0.05。一元配置ANOVA後のNewman−Keuls事後検定。データは、5〜10匹のマウスの平均値±標準誤差として表される。図9(B)は、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセルまたは生理食塩水で処置された、A549NSCLC異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのカプラン−マイヤー生存プロットを示す。全ての投与量レベルのPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルは、生理食塩水と比較して生存を有意に増加させた。p<0.05、マンテル−コックス、log−ランク検定。各群は、腫瘍を持つ10匹の雌マウスで開始した。
【0017】
図10図10(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、ヒトPC3(前立腺)腫瘍異種移植片に対するTD−1リポソーム、PEG化TD−1リポソーム、およびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。全ての処置群は、単回のIV投与から36日後に、生理食塩水よりも有意に小さな腫瘍を示した。19mg/kgのPEG化TD−1リポソームでの処置は、ドセタキセル(9mg/kg)およびTD−1リポソーム(30mg/kg)の等毒性投与量よりも有意に小さな腫瘍を引き起こした。*、p<0.05。PEG化TD−1リポソーム(38mg/kg)は、処置後79日目に、比較的許容される投与量において、ドセタキセル(18mg/kg)よりも小さな腫瘍を引き起こした。#、p<0.05。一元配置ANOVA後のNewman−Keuls事後検定。データは、3〜6匹のマウスの平均として表される。図10(B)は、TD−1リポソーム、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセルまたは生理食塩水で処置された、ヒトPC3(前立腺)異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのカプラン−マイヤー生存プロットを示す。18および27mg/kgのドセタキセル処置、および全ての処置投与量のTD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームは、生理食塩水よりも有意に多く生存を増加させた。p<0.05、マンテル−コックス、log−ランク検定。各群は、腫瘍を持つ5〜6匹の雄マウスで開始した。
【0018】
図11図11(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、MDA−MB−435/PTK7(ヒト乳房)腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。経時的なメジアン腫瘍体積(mm)は、被験物質の単回のIV投与後に示される。データは、4〜8匹のマウスのメジアンとして表される。図11(B)は、ドセタキセル、PEG化TD−1リポソーム、または生理食塩水の単回の投与で処置された、MDA−MB−435/PTK7(ヒト乳房)異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのパーセント生存を示すカプラン−マイヤー生存プロットを示す。各群は、腫瘍を持つ8匹の雌マウスで開始した。
【0019】
図12図12(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、HT1080/PTK7ヒト線維肉腫腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。経時的な平均腫瘍体積(mm)は、ドセタキセル、PEG化TD−1リポソーム、または生理食塩水の単回のIV投与後に示される。PEG化TD−1リポソーム(30、60および90mg/kg)での処置およびドセタキセル(27mg/kg)処置は、処置後14日目に、生理食塩水よりも有意に小さな腫瘍を引き起こした。*、p<0.05。PEG化TD−1リポソーム(60および90mg/kg)の投与の結果、処置後21日目に、対応する等毒性投与量でドセタキセル(18および27mg/kg)よりも有意に小さな腫瘍がもたらされた。**、p<0.05。PEG化TD−1リポソーム(90mg/kg)の投与の結果、処置後30日目に、比較的許容される投与量でのドセタキセル(27mg/kg)よりも有意に小さな腫瘍がもたらされた。#、p<0.05。一元配置ANOVA後のNewman−Keuls事後検定。データは、5〜10匹のマウスの平均値±標準誤差として表される。図12(B)は、ドセタキセル、PEG化TD−1リポソーム、または生理食塩水で処置された、HT1080/PTK7ヒト線維肉腫異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのカプラン−マイヤー生存プロットを示す。全ての投与量レベルのPEG化TD−1リポソームは、生理食塩水よりも有意に大きく生存を増加させ、*、p<0.05、そして、90mg/kgのPEG化TD−1リポソームは、ドセタキセル(全ての投与量レベル)よりも有意に大きく生存を増加させた。#、p<0.05、マンテル−コックス、log−ランク検定。各群は、腫瘍を持つ10匹の雌マウスで開始した。
【0020】
図13図13(A)は、無胸腺ヌードマウスにおける、A431ヒト類表皮腫瘍異種移植片に対するPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルの抗腫瘍効果を示す。経時的な平均腫瘍体積(mm)は、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセルまたは生理食塩水の単回のIV投与後に示される。全ての投与量レベルのPEG化TD−1リポソームおよびドセタキセルは、処置後7日目に、生理食塩水よりも有意に小さな腫瘍を引き起こした。PEG化TD−1リポソーム(60m/kg)は、20または30mg/kgのいずれかのドセタキセルでの処置よりも有意に小さな腫瘍を引き起こした。*、p<0.05。投与後17日目に、PEG化TD−1リポソーム(60および90mg/kg)で処置した群は、ドセタキセル(20mg/kg)よりも有意に小さな腫瘍を示した。#、p<0.05。一元配置ANOVA後のNewman−Keuls事後検定。データは、4〜8匹のマウスの平均値±標準誤差として表される。図13(B)は、PEG化TD−1リポソーム、ドセタキセル、または生理食塩水で処置された、A431ヒト(類表皮)異種移植片腫瘍を持つ無胸腺ヌードマウスのパーセント生存を示すカプラン−マイヤー生存プロットを示す。全ての投与量レベルのPEG化TD−1リポソームは、生理食塩水およびドセタキセル(20および30mg/kg)よりも有意に多く生存を増大させた。p<0.05、マンテル−コックス、log−ランク検定。各群は、腫瘍を持つ8匹の雌マウスで開始した。
【0021】
図14A図14(A)、14(B)、および14(C)は、特許請求される組成物および方法を開発するために評価された組成物の表を提供する。記載欄で提供される比率は、(本明細書に記載されるタキサンの負荷に先立って、かつPEG−脂質の添加に先立って)第一のリポソームを調製するための最初の比率である。PC(ホスファチジルコリン脂質)、Chol(コレステロール)およびDSPE−PEG2000のパーセンテージを、最終の組成物の組み立て(assembly)に続いてモル%で提供する。
図14B図14(A)、14(B)、および14(C)は、特許請求される組成物および方法を開発するために評価された組成物の表を提供する。記載欄で提供される比率は、(本明細書に記載されるタキサンの負荷に先立って、かつPEG−脂質の添加に先立って)第一のリポソームを調製するための最初の比率である。PC(ホスファチジルコリン脂質)、Chol(コレステロール)およびDSPE−PEG2000のパーセンテージを、最終の組成物の組み立て(assembly)に続いてモル%で提供する。
図14C図14(A)、14(B)、および14(C)は、特許請求される組成物および方法を開発するために評価された組成物の表を提供する。記載欄で提供される比率は、(本明細書に記載されるタキサンの負荷に先立って、かつPEG−脂質の添加に先立って)第一のリポソームを調製するための最初の比率である。PC(ホスファチジルコリン脂質)、Chol(コレステロール)およびDSPE−PEG2000のパーセンテージを、最終の組成物の組み立て(assembly)に続いてモル%で提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.概要
本発明は、新規なリポソームタキサン、ならびにタキサンのリポソーム中への封入、およびそれに続くポリ(エチレングリコール)官能化脂質のリポソーム中への組込みのための多工程のワンポット法を提供する。本明細書中に記載される方法によって調製されるリポソームタキサンは、貯蔵安定性、イン・ビボ循環時間、およびイン・ビボ有効性の増大を含めたいくつかの利点を示す。リポソームタキサンは、本明細書中において記載されるようにがんの処置に有用である。
【0023】
II.定義
本明細書中で用いる場合、用語「リポソーム」は、脂質二重層によって包まれたあらゆる区画を含む。用語リポソームは、単一の脂質二重層よりなり、一般に約20〜約400nmの範囲の直径を有する単層小胞を含む。リポソームは、一般に1〜10μmの範囲の直径を有する多層であってもよい。いくつかの実施態様において、リポソームは、多層小胞(MLV;大きさが約1μm〜約10μm)、大型単層小胞(LUV;大きさが数百ナノメートル〜約10μm)、および小型単層小胞(SUV;大きさが約20nm〜約200nm)を含むことができる。
【0024】
本明細書中で用いる場合、用語「ホスファチジルコリン脂質」とは、コリン頭部基(すなわち、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)を有するジアシルグリセリドリン脂質をいう。ホスファチジルコリン脂質中のアシル基は、一般に、6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸に由来する。ホスファチジルコリン脂質は、合成および天然由来の1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含むことができる。
【0025】
本明細書中で用いる場合、用語「ステロール」とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するステロイドをいう。ステロイドは、縮合四環ゴナン環系の存在によって特徴付けられる。ステロールは、限定されるものではないが、コレステロール(すなわち、2,15−ジメチル−14−(1,5−ジメチルヘキシル)テトラシクロ[8.7.0.02,7.011,15]ヘプタコス−7−エン−5−オール;Chemical Abstracts Services登録番号57−88−5)を含む。
【0026】
本明細書中で用いる場合、用語「PEG−脂質」とは、疎水性または両親媒性脂質部分に共有結合したポリ(エチレングリコール)ポリマーをいう。該脂質部分は、脂肪、ワックス、ステロイド、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、リン脂質、およびスフィンゴ脂質を含むことができる。好ましいPEG−脂質は、ジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]およびN−アシル−スフィンゴシン−1−{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}を含む。PEG−脂質中のPEGの分子量は、一般に、約500〜約5000ダルトン(Da:g/モル)である。PEG−脂質中のPEGは線状または分岐状構造を有することができる。
【0027】
本明細書中で用いる場合、用語「タキサン」とは、もともとはイチイ(Taxus属)から単離された、これもタキサンと呼ばれる、ジテルペン天然産物と同様な構造的骨格を有する化合物をいう。タキサンは、一般に、縮合した6/8/6三環炭素骨格によって特徴付けられ、該グループは天然産物および合成誘導体を含む。タキサンの例としては、限定されるものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルが挙げられる。本発明のある種のタキサンは、三環タキサンコアから延びる3−フェニルプロピオネート(phenypropionate)側鎖の2’ヒドロキシル基においてエステル部分を含む。
【0028】
本明細書中で用いる場合、用語「ヘテロシクリル」とは、3〜12個の環員およびN、OおよびSの1〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和環系をいう。ヘテロ原子は、限定されるものではないが、−S(O)−および−S(O)−のように、酸化されていてもよい。ヘテロシクリル基は、3〜6、4〜6、5〜6、3〜8、4〜8、5〜8、6〜8、3〜9、3〜10、3〜11、または3〜12個の環員のような、あらゆる数の環原子を含むことができる。1、2、3、または4、あるいは1〜2、1〜3、1〜4、2〜3、2〜4、または3〜4のようなあらゆる適切な数のヘテロ原子も、ヘテロシクリル基に含むことができる。ヘテロシクリルは、限定されるものではないが、4−メチルピペラジニル、モルホリノ、およびピペリジニルを含む。
【0029】
本明細書中で用いる場合、用語「アルカン酸」とは、2〜5個の炭素原子を含有するカルボン酸をいう。アルカン酸は、線状または分岐状であってよい。アルカン酸の例としては、限定されるものではないが、酢酸、プロピオン酸、およびブタン酸が挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる場合、用語「モルパーセント」および「モル%」とは、リポソームの所定の脂質成分のモル数を全ての脂質成分の合計モル数で割ったものをいう。明示的に述べない限り、リポソームの脂質成分についてモル%を計算する場合に、活性剤、希釈剤、または他の成分の量は含まれない。
【0031】
本明細書中で用いる場合、用語「負荷」とは、タキサンのリポソーム中への蓄積を行うことをいう。タキサンは、リポソームの水性内部に封入することができるか、あるいは脂質二重層に包埋することができる。リポソームは受動的に負荷することができ、ここで、該タキサンはリポソーム調製の間に用いられる溶液中に含まれる。別法として、リポソームは、リポソーム二重層を横切る化学勾配(例えば、pHまたはイオン勾配)を確立し、水性外部からリポソーム内部へのタキサンの移動を引き起こすことによって遠隔的に負荷することができる。
【0032】
本明細書中で用いる場合、用語「挿入」とは、脂質成分のリポソーム二重層への包埋をいう。一般に、PEG−脂質のような両親媒性脂質は、両親媒性脂質の疎水性部分と二重層の疎水性内部との間のファンデルワールス相互作用によって溶液から二重層へ移動する。
【0033】
本明細書中で用いる場合、用語「組成物」とは、特定量の特定成分を含む生成物、ならびに特定量の特定成分の組合せから直接的にまたは間接的に得られるあらゆる生成物をいう。本発明の医薬組成物は、一般に、本明細書中に記載されたリポソームタキサンおよび薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤を含有する。「薬学的に許容され得る」とは、担体、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合しなければならず、かつその受容者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0034】
本明細書中で用いる場合、用語「がん」とは、ヒトのがんおよび癌、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病、および固形がんおよびリンパ性がんを含めた状態をいう。様々なタイプのがんの例としては、限定されるものではないが、肺がん(例えば、非小細胞肺がんまたはNSCLC)、卵巣がん、前立腺がん、結腸直腸がん、肝臓がん(すなわち、肝癌)、腎臓がん(すなわち、腎臓細胞癌)、膀胱がん、乳がん、甲状腺がん、胸膜がん、膵臓がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、肛門がん、膵臓がん、胆管がん、胃腸カルチノイド腫瘍、食道がん、胆嚢がん、虫垂がん、小腸がん、胃(胃の)がん、中枢神経系のがん、皮膚がん、絨毛癌、頭頸部がん、血液がん、骨原性肉腫、線維肉腫、神経芽細胞腫、膠腫、メラノーマ、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小細胞リンパ腫、大細胞リンパ腫、単球性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、および多発性骨髄腫が挙げられる。
【0035】
本明細書中で用いる場合、用語「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、症状の緩和;軽快;縮小、またはがんまたはがん症状を患者にとってより許容できるものとするようなあらゆる客観的または主観的パラメータを含めた、がんまたはがんの症状の処置または軽減における成功のあらゆる兆候をいう。症状の処置または軽減は、例えば、理学的検査または臨床検査の結果を含めた、あらゆる客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
【0036】
本明細書中で用いる場合、用語「投与する」、「投与された」、または「投与すること」とは、本発明のリポソーム組成物を投与する方法をいう。本発明のリポソーム組成物は、非経口、静脈内、皮内、筋肉内、または腹腔内を含めた種々の方法で投与することができる。リポソーム組成物は、組成物または製剤の一部として投与することもできる。
【0037】
本明細書中で用いる場合、用語「被験体」とは、一生のいずれかの段階におけるいずれかの哺乳動物、特にヒトをいう。
【0038】
本明細書中で用いる場合、用語「約」は、特定の値を修飾するのに用いられる場合、その数値の前後の近い範囲を示す。「X」が値である場合、例えば、「約X」は、0.9X〜1.1Xの値、より好ましくは、0.95X〜1.05Xの値を示す。「約X」へのあらゆる言及は、少なくとも値X、0.9X、0.91X、0.92X、0.93X、0.94X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、1.05X、1.06X、1.07X、1.08X、1.09X、および1.1Xを具体的に示す。
【0039】
III.本発明の実施態様
第一の態様において、本発明は、がんの処置用の組成物を提供する。該組成物は、ホスファチジルコリン脂質、ステロール、PEG−脂質、およびタキサンまたはその薬学的に許容され得る塩を含有するリポソームを含む。タキサンは、ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)でエステル化されており、PEG−脂質はリポソーム中の全脂質の2〜8モル%を構成する。
【0040】
タキサン
いくつかの実施態様において、タキサンは式Iによる化合物、またはその薬学的に許容され得る塩である。
【化1】
【0041】
式Iの化合物では、Rはフェニルおよびt−ブトキシから選択され;RはH、アセチルおよびメチルから選択され;RはH、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイルおよびメチルから選択され;RはHおよびヘテロシクリル−C2−5アルカノイルから選択される。RおよびRの少なくとも一方はH以外である。
【0042】
式Iの化合物は、乳がん、卵巣がん、および肺がんを含めた種々のがんの処置のための化学療法剤として有用である。式Iはパクリタキセル誘導体を含み、ここで、Rはフェニルである。パクリタキセルそれ自体は、完全な化学合成ならびに10−デアセチルバッカチンIII(10−DAB;以下の式II)を使用する半合成方法を含めた種々の方法によって得ることができる。10−DABはタイヘイヨウイチイおよびヨーロッパイチイ(各々、Taxus brevifoliaおよびTaxus baccata)から単離することができ、パクリタキセル、および限定されるものではないが、ドセタキセル(すなわち、R=t−ブトキシ;R、R、R=H)およびカバジタキセルの既知の方法による調製のための出発材料として用いることができる。半合成方法によるタキサン調製が、完全な合成によるタキサン調製に加えて、本発明での使用で考えられる。
【化2】
【0043】
上記のように、がん療法のための、パクリタキセルおよびドセタキセルを含めたタキサンの使用は、不十分な溶解性による低い生物学的利用性によって、ならびに高い毒性によって制限され得る。これらの欠点を矯正するために種々の戦略が使用されてきた。例えば、種々の極性の部分による、三環コアのC7およびC10官能基における、またはC13側鎖のC2’ヒドロキシル基におけるタキサン骨格の誘導体化を用いて、タキサンベースの薬物の生物学的利用性を改変することができる(例えば、米国特許第6,482,850号;米国特許第6,541,508号;米国特許第5,608,087号;および米国特許第5,824,701号参照)。
【0044】
タキサンのリポソームへの組込みは、生物学的利用性を改善し、タキサンの毒性を低下させることができる。本発明においては、弱塩基部分によるタキサン骨格の修飾は、修飾を行わなければ難水溶性であるタキサンのリポソームの水性内部への活発な負荷を促進することができる。一般に、弱塩基部分は、N−メチル−ピペラジノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ビス−ピペリジノ基またはジメチルアミノ基などのイオン化可能なアミノ基を含むことができる。いくつかの実施態様において、弱塩基部分はN−メチル−ピペラジノ基である。
【0045】
タキサンは、誘導体の活性が遊離薬物の活性と実質的に同等であるように、意図された治療活性には必須でない領域において誘導体化することができる。例えば、いくつかの態様において、弱塩基誘導体は、バッカチン骨格の7−OH基において誘導体化されたタキサンドセタキセルを含む。いくつかの実施態様において、ドセタキセル活性に必須である2’−OH基において誘導体化されたドセタキセル誘導体が提供される。
【0046】
従って、本発明のいくつかの実施態様は、タキサンまたはその薬学的に許容され得る塩を含有するリポソームを提供し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)によってエステル化されたドセタキセルである(すなわち、タキサンは、Rがt−ブトキシであり;RがHであり;RがHであり;Rがヘテロシクリル−C2−5アルカノイルである式Iの化合物である)。いくつかの実施態様において、ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)は、5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ペンタン酸、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸、3−(4−メチルピペラジン−1−イル)−プロピオン酸、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−エタン酸、5−モルホリノ−ペンタン酸、4−モルホリノ−ブタン酸、3−モルホリノ−プロピオン酸、2−モルホリノ−エタン酸、5−(ピペリジン−1−イル)ペンタン酸、4−(ピペリジン−1−イル)ブタン酸、3−(ピペリジン−1−イル)プロピオン酸、および2−(ピペリジン−1−イル)エタン酸から選択される。いくつかの実施態様において、ヘテロシクリル−(C2−5アルカン酸)は4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタン酸である。
【0047】
リポソーム
本発明のリポソームは、上記のようにカチオン性脂質、双性イオン性脂質、中性脂質、またはアニオン性脂質を含めたあらゆる適切な脂質も含有することができる。適切な脂質は、脂肪、ワックス、ステロイド、コレステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、カチオン性またはアニオン性脂質、誘導体化脂質等を含むことができる。
【0048】
一般に、本発明のリポソームは、少なくとも1つのホスファチジルコリン脂質(PC)を含有する。適切なホスファチジルコリン脂質は、飽和PCおよび不飽和PCを含む。
【0049】
飽和PCの例としては、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ジミリストイルホスファチジルコリン;DMPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ジステアロイルホスファチジルコリン;DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ジパルミトイルホスファチジルコリン;DPPC)、1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MPPC)、1−パルミトイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PMPC)、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MSPC)、1−パルミトイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PSPC)、1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SPPC)、および1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SMPC)が挙げられる。
【0050】
不飽和PCの例としては、限定されるものではないが、1,2−ジミリストレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジミリステライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミテライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジペトロセレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン;POPC)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(SOPC)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−オレオイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(OMPC)、1−オレオイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(OPPC)、および1−オレオイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(OSPC)が挙げられる。
【0051】
卵PC、心臓抽出物、脳抽出物、肝臓抽出物、大豆PC、および水素添加大豆PC(HSPC)などの脂質抽出物も本発明で有用である。
【0052】
本明細書中で提供される組成物は、いくつかの実施態様において、実質的に(以下に記載される添加されたタキサンおよびPEG−脂質との)PC/コレステロール混合物からなる。いくつかの実施態様において、リポソーム組成物は、実質的にホスファチジルコリン脂質、またはホスファチジルコリン脂質とコレステロール、PEG−脂質およびタキサンとの混合物からなる。なお他の実施態様において、リポソーム組成物は、実質的に、単一タイプのホスファチジルコリンとコレステロール、PEG−脂質およびタキサンからなる。いくつかの実施態様において、単一タイプのホスファチジルコリン脂質が用いられる場合、それはDOPC、DSPC、HSPC、DPPC、POPCおよびSOPCから選択される。
【0053】
いくつかの実施態様において、ホスファチジルコリン脂質は、DPPC、DSPC、HSPC、およびそれらの混合物よりなる群から選択される。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、50〜65モル%のホスファチジルコリン脂質もしくはホスファチジルコリン脂質の混合物、または45〜70モル%のホスファチジルコリン脂質もしくはホスファチジルコリン脂質の混合物を含有するリポソームを含む。リポソームは、例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65モル%のホスファチジルコリンを含有することができる。いくつかの実施態様において、リポソームは約55モル%のホスファチジルコリンを含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは約53モル%のホスファチジルコリンを含有する。
【0054】
低量、またはホスファチジルコリン脂質未満の量で一般に用いられる他の適切なリン脂質は、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスファチジルイノシトール(PI)を含む。リン脂質の例としては、限定されるものではないが、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−トランスPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、ジエライドイルホスホエタノールアミン(トランスDOPE)、およびカルジオリピンが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施態様において、リン脂質は、さらなる誘導体化のための反応性官能基を含むことができる。そのような反応性脂質の例としては、限定されるものではないが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(DOPE−mal)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン−N−スクシニル(スクシニル−PE)が挙げられる。
【0056】
本発明のリポソームは、縮合四環ゴナン環系の存在によって特徴付けられるステロイドを含有することができる。ステロイドの例としては、限定されるものではないが、コール酸、プロゲステロン、コルチゾン、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、およびエストラジオールおよびコレステロールなどのステロールが挙げられる。合成ステロイドおよびその誘導体もまた本発明における使用で考えられる。
【0057】
一般に、リポソームは少なくとも1つのステロールを含有する。いくつかの実施態様において、ステロールはコレステロール(すなわち、2,15−ジメチル−14−(1,5−ジメチルヘキシル)テトラシクロ[8.7.0.02,7.011,15]ヘプタコス−7−エン−5−オール)である。いくつかの実施態様において、リポソームは約30〜50モル%のコレステロール、または約30〜45モル%のコレステロールを含有することができる。リポソームは、例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45モル%のコレステロールを含有することができる。いくつかの実施態様において、リポソームは30〜40モル%のコレステロールを含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは40〜45モル%のコレステロールを含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは45モル%のコレステロールを含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは44モル%のコレステロールを含有する。
【0058】
本発明のリポソームは、任意の適切なポリ(エチレングリコール)−脂質誘導体(PEG−脂質)を含むことができる。いくつかの実施態様において、PEG−脂質はジアシル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]である。PEG−脂質中のポリ(エチレングリコール)の分子量は、一般に、約500Da〜約5000Daの範囲である。ポリ(エチレングリコール)は、例えば、750Da、1000Da、2000Da、または5000Daの分子量を有することができる。いくつかの実施態様において、PEG−脂質は、ジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG−2000)およびジステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−5000](DSPE−PEG−5000)から選択される。いくつかの実施態様において、PEG−脂質はDSPE−PEG−2000である。
【0059】
一般に、本発明の組成物は、2〜8モル%のPEG−脂質を含有するリポソームを含む。リポソームは、例えば、2、3、4、5、6、7または8モル%のPEG−脂質を含有することができる。いくつかの実施態様において、リポソームは2〜6モル%のPEG−脂質を含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは3モル%のPEG−脂質を含有する。いくつかの実施態様において、リポソームは3モル%のDSPE−PEG−2000を含有する。
【0060】
本発明のリポソームは、一般にホスファチジルコリン脂質の量よりも少ない量である、いくらかの量のカチオン性脂質を含むこともできる。カチオン性脂質は、生理学的条件下で、正電荷を持つ官能基を含有する。カチオン性脂質は、限定されるものではないが、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)およびN,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)を含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施態様において、リポソームは、約50モル%〜約70モル%のDSPCおよび約25モル%〜約45モル%のコレステロールを含む。いくつかの実施態様において、リポソームは約53モル%のDSPC、約44モル%のコレステロールおよび約3モル%のDSPE−PEG−2000を含む。いくつかの実施態様において、リポソームは、約66モル%のDSPC、約30モル%のコレステロールおよび約4モル%のDSPE−PEG−2000を含む。
【0062】
診断剤
本発明のリポソームは、診断剤を含有してもよい。本発明で用いられる診断剤は、例えば、以下の文献中に提供される当該分野で既知のいかなる診断剤も含むことができる:Armstrongら、Diagnostic Imaging、第5版、Blackwell Publishing(2004);Torchilin,V.P.編、Targeted Delivery of Imaging Agents、CRC Press(1995);Vallabhajosula,S.、Molecular Imaging:Radiopharmaceuticals for PET and SPECT、Springer(2009)。診断剤は、限定されるものではないが、ガンマ線放射性、放射性、エコー源性、光学的、蛍光性、吸収性、磁性または断層撮影法シグナルを含む検出可能なシグナルを提供する、および/または増強する剤としての方法を含めた、種々の方法によって検出することができる。診断剤を撮像するための技術は、限定されるものではないが、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴映像法(MRI)、光学的撮像、陽電子放射型断層撮影法(PET)、コンピュータ断層撮影法(CT)、x線撮像、ガンマ線撮像等を含むことができる。診断剤は、例えば、リポソームに包埋する、または封入することを含めた、種々の方法で治療リポソームと会合させることができる。
【0063】
いくつかの実施態様において、診断剤は、種々の診断用撮像技術に用いられる金属イオンに結合するキレーターを含むことができる。典型的なキレーターは、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、[4−(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1−イル)メチル]安息香酸(CPTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、イミノジ酢酸(IDA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)(DOTP)、1,4,8,11−テトラアザシクロドデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、およびその誘導体を含む。
【0064】
放射性同位体も、本明細書中に記載された診断剤のいくつかに組み込むことができ、ガンマ線、陽電子、ベータおよびアルファ粒子およびX線を発する放射性核種を含むことができる。適切な放射性核種は、限定されるものではないが、225Ac、72As、211At、11B、128Ba、212Bi、75Br、77Br、14C、109Cd、62Cu、64Cu、67Cu、18F、67Ga、68Ga、H、123I、125I、130I、131I、111In、177Lu、13N、15O、32P、33P、212Pb、103Pd、186Re、188Re、47Sc、153Sm、89Sr、99mTc、88Yおよび90Yを含む。ある実施態様において、放射性剤は、111In−DTPA、99mTc(CO)−DTPA、99mTc(CO)−ENPy2、62/64/67Cu−TETA、99mTc(CO)−IDA、および99mTc(CO)トリアミン(環状または線状)を含むことができる。他の実施態様においては、該剤は、DOTA、および111In、177Lu、153Sm、88/90Y、62/64/67Cu、または67/68Gaを伴うその種々の類似体を含むことができる。いくつかの実施態様において、リポソームは、以下の文献で提供されるようなDTPA−脂質などの、キレートに付着した脂質の組込みによって放射性標識することができる:Phillipsら、Wiley Interdisciplinary Reviews:Nanomedicine and Nanobiotechnology、1(1):69−83(2008);Torchilin,V.P.& Weissig,V.編 Liposomes第2版:Oxford Univ.Press(2003);Elbayoumi,T.A.& Torchilin,V.P.、Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging 33:1196−1205(2006);Mougin−Degraef,M.ら、Int’l J.Pharmaceutics 344:110−117(2007)。
【0065】
他の実施態様において、診断剤は、蛍光剤、リン光剤、化学発光剤等などの光学剤を含むことができる。多数の剤(例えば、色素、プローブ、ラベル、またはインジケーター)が当該分野で既知であり、本発明で用いることができる。(例えば、Invitrogen、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、第10版(2005)参照)。蛍光剤は、種々の有機および/または無機小分子あるいは種々の蛍光タンパク質およびその誘導体を含むことができる。例えば、蛍光剤は、限定されるものではないが、シアニン、フタロシアニン、ポルフィリン、インドシアニン、ローダミン、フェノキサジン、フェニルキサンテン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フルオレセイン、ベンゾポルフィリン、スクアライン、ジピロロピリミドン、テトラセン、キノリン、ピラジン、コリン、クロコニウム、アクリドン、フェナントリジン、ローダミン、アクリジン、アントラキノン、カルコゲノピリリウム類似体、クロリン、ナフタロシアニン、メチン色素、インドレニウム色素、アゾ化合物、アズレン、アザアズレン、トリフェニルメタン色素、インドール、ベンゾインドール、インドカルボシアニン、ベンゾインドカルボシアニン、および4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセンの一般構造を有するBODIPYTM誘導体、および/またはこれらのいずれかのコンジュゲートおよび/または誘導体を含むことができる。用いることができる他の剤は、限定されるものではないが、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン−ポリアスパラギン酸コンジュゲート、フルオレセイン−ポリグルタミン酸コンジュゲート、フルオレセイン−ポリアルギニンコンジュゲート、インドシアニングリーン、インドシアニンドデカアスパラギン酸コンジュゲート、インドシアニン−ポリアスパラギン酸コンジュゲート、イソスルファンブルー、インドールジスルホネート、ベンゾインドールジスルホネート、ビス(エチルカルボキシメチル)インドシアニン、ビス(ペンチルカルボキシルメチル)インドシアニン、ポリヒドロキシインドールスルホネート、ポリヒドロキシベンゾインドールスルホネート、リジッドヘテロ原子インドールスルホネート、インドシアニンビスプロパン酸、インドシアニンビスヘキサン酸、3,6−ジシアノ−2,5−[(N,N,N’,N’−テトラキス(カルボキシメチル)アミノ]ピラジン、3,6−[(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ピラジン−2,5−ジカルボン酸、3,6−ビス(N−アザテジノ)ピラジン−2,5−ジカルボン酸、3,6−ビス(N−モルホリノ)ピラジン−2,5−ジカルボン酸、3,6−ビス(N−ピペラジノ)ピラジン−2,5−ジカルボン酸、3,6−ビス(N−チオモルホリノ)ピラジン−2,5−ジカルボン酸、3,6−ビス(N−チオモルホリノ)ピラジン−2,5−ジカルボン酸S−オキシド、2,5−ジシアノ−3,6−(N−チオモルホリノ)ピラジンS,S−ジオキシド、インドカルボシアニンテトラスルホネート、クロロインドカルボシアニン、および3,6−ジアミノピラジン−2,5−ジカルボン酸を含む。
【0066】
当業者であれば、用いる特定の光学剤は、励起に用いる波長、皮膚組織下の深さ、および当該分野で一般によく知られている他の因子によって決まり得ることを認識する。例えば、光学剤のための最適な吸収または励起極大は、使用される剤によって変動し得るが、一般には、本発明の光学剤は、電磁スペクトルの紫外(UV)、可視、または赤外(IR)領域の光を吸収し、またはそのような光によって励起される。例えば、近IRを吸収し、かつそこにおいて発光する色素(約700〜900nm、例えば、インドシアニン)が好ましい。内視鏡方法を用いる局所的可視化のためには、可視領域において吸収する任意の色素が適切である。
【0067】
いくつかの実施態様において、本発明のプロセスで使用される非イオン化放射線の波長の範囲は、約350nm〜約1200nmであり得る。1つの典型的な実施態様において、蛍光剤は、電磁スペクトルの可視部分の青色領域(約430nm〜約500nm)において波長を有する光によって励起でき、かつ電磁スペクトルの可視部分の緑色領域(約520nm〜約565nm)における波長で発光する。例えば、フルオレセイン色素は、約488nmの波長を持つ光で励起することができ、約520nmの発光波長を有する。別の例として、3,6−ジアミノピラジン−2,5−ジカルボン酸は、約470nmの波長を有する光で励起することができ、約532nmの波長で蛍光を発する。別の実施態様において、光学剤の励起および発光波長は、電磁スペクトルの近−赤外領域に入ってもよい。例えば、インドシアニングリーンなどのインドシアニン色素は、約780nmの波長を持つ光で励起することができ、約830nmの発光波長を有する。
【0068】
なお他の実施態様において、診断剤は、限定されるものではないが、例えば、ヨウ素ベースのx線造影剤、超常磁性酸化鉄(SPIO)、ガドリニウムまたはマンガンの錯体等を含めた、当該分野で一般によく知られた磁気共鳴(MR)およびx線造影剤を含むことができる(例えば、Armstrongら、Diagnostic Imaging、第5版、Blackwell Publishing(2004)参照)。いくつかの実施態様において、診断剤は、磁気共鳴(MR)撮像剤を含むことができる。典型的な磁気共鳴剤は、限定されるものではないが、常磁性剤、超常磁性剤等を含む。典型的な常磁性剤は、限定されるものではないが、ガドペンテト酸、ガドテル酸、ガドジアミド、ガドリニウム、ガドテリドール、マンガホジピール、ガドベルセタミド、クエン酸第二鉄アンモニウム、ガドベン酸、ガドブトロール、ガドキセト酸を含むことができる。超常磁性剤は、限定されるものではないが、超常磁性酸化鉄およびフェリステンを含むことができる。ある実施態様において、診断剤は、例えば、以下の文献に提供されるx線造影剤を含むことができる:H.S Thomsen、R.N.MullerおよびR.F.Mattrey編、Trends in Contrast Media(Berlin:Springer−Verlag,1999);P.Dawson、D.CosgroveおよびR.Grainger編、Textbook of Contrast Media(ISIS Medical Media 1999);Torchilin,V.P.、Curr.Pharm.Biotech.1:183−215(2000);Bogdanov,A.A.ら、Adv.Drug Del.Rev.37:279−293(1999);Sachse,Aら、Investigative Radiology 32(1):44−50(1997)。x線造影剤の例としては、限定されるものではないが、イオパミドール、イオメプロール、イオヘキソール、イオペントール、イオプロマイド、イオシミド、イオベルゾール、イオトロラン、イオタスル、イオジキサノール、イオデシモール、イオグルカミド、イオグルニド、イオグラミド、イオサルコール、イオキシラン、イオパミロン、メトリザマイド、イオビトリドールおよびイオシメノールが挙げられる。ある実施態様において、x線造影剤は、イオパミドール、イオメプロール、イオプロマイド、イオヘキソール、イオペントール、イオベルゾール、イオビトリドール、イオジキサノール、イオトロランおよびイオシメノールを含むことができる。
【0069】
標的化剤
いくつかの場合において、標的部位におけるリポソームの蓄積は、がん組織などのある種の組織の増強された透過性および滞留特性によるものであり得る。そのような様式での蓄積は、しばしば、部分的にはリポソームの大きさのためもたらされ、特殊な標的化の機能性を必要としないことがある。他の場合には、本発明のリポソームは、標的化剤を含むこともできる。一般に、本発明の標的化剤は、器官、組織、細胞、細胞外マトリックス、または細胞内領域と関連する標的などの関心対象であるいかなる標的とも関連させることができる。ある実施態様において、標的は、がん性疾患などの特定の病状と関連させることができる。いくつかの実施態様において、標的化成分は、受容体などのただ1つの標的に対して特異的であり得る。適切な標的は、限定されるものではないが、DNA、RNAなどの核酸、またはその修飾された誘導体を含むことができる。適切な標的は、限定されるものではないが、細胞外タンパク質、受容体、細胞表面受容体、腫瘍マーカー、膜貫通タンパク質、酵素、または抗体などのタンパク質も含むことができる。適切な標的は、例えば、細胞の表面に存在し得る単糖、二糖、または多糖などの炭水化物を含むことができる。
【0070】
ある実施態様において、標的化剤は、標的リガンド(例えば、RGD含有ペプチド)、標的リガンドの小分子ミミック(例えば、ペプチドミメティックリガンド)または特定の標的に対して特異的な抗体または抗体断片を含むことができる。いくつかの実施態様において、標的化剤は、葉酸誘導体、B−12誘導体、インテグリンRGDペプチド、NGR誘導体、ソマトスタチン誘導体、またはソマトスタチン受容体に結合するペプチド、例えば、オクトレオチドおよびオクトレオテート等をさらに含むことができる。本発明の標的化剤はアプタマーを含むことができる。アプタマーは、関心対象である標的と会合し、またはそれに結合するように設計することができる。アプタマーは、例えば、DNA、RNA、および/またはペプチドよりなることができ、アプタマーのある種の態様は、当該分野でよく知られている(例えば、Klussman,S.編、The Aptamer Handbook、Wiley−VCH(2006);Nissenbaum,E.T.、Trends in Biotech.26(8):442−449(2008)参照)。
【0071】
リポソームタキサンを調製する方法
第二の態様において、本発明は、リポソームタキサンを調製する方法を提供する。当業者に知られた多数の技術を用いて、リポソームを調製し、タキサンを負荷することができる。脂質小胞は、例えば、(適切な容器中で脂質と有機溶媒との混合物の蒸発によって調製された)乾燥した脂質フィルムを水または水性緩衝液で水和させることによって調製することができる。脂質フィルムの水和は、典型的には、多層小胞(MLV)の懸濁液をもたらす。別法として、MLVは、C1−4アルカノールなどの適切な溶媒中の脂質の溶液を水または水性緩衝液で希釈することによって形成することができる。単層小胞は、超音波処理、または規定された細孔径を持つ膜を通す押出しによってMLVから形成することができる。タキサンの封入は、薬物を、MLV形成中にフィルム水和または脂質希釈に用いる水溶液に含めることによって行うことができる。タキサンは、「遠隔負荷」技術を用いて、予め形成された小胞中に封入することもできる。遠隔負荷は、タキサンを外部溶液から小胞の内部へ駆動する、小胞膜のいずれかの側でのpHまたはイオン勾配の確立を含む。
【0072】
従って、本発明のいくつかの実施態様は、a)ホスファチジルコリン脂質およびステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含有する内部を封入し;b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;c)PEG−脂質を該脂質二重層に組み込むことを含む、リポソームタキサンを調製する方法を提供する。
【0073】
本発明の方法で用いられるタキサンおよび脂質は、一般に、上記の通りである。しかしながら、リポソームタキサンへの経路は、部分的には、具体的なタキサンおよび脂質の同定、および用いられる量および組合せによって決まる。例えば、タキサンは、リポソーム調製の種々の段階において小胞中に封入することができる。いくつかの実施態様において、第一のリポソームは、脂質二重層がDSPCおよびコレステロールを含み、DSPC:コレステロール比が約55:45(モル:モル)であるように形成される。いくつかの実施態様において、第一のリポソームは、脂質二重層がDSPCおよびコレステロールを含み、DSPC:コレステロール比が約70:30(モル:モル)であるように形成される。いくつかの実施態様において、第一のリポソームの内部は水性硫酸アンモニウム緩衝液を含有する。第一のリポソームの負荷は、第一のリポソームの内部区画中へのタキサンの蓄積を可能とするのに十分な条件下で、第一のリポソームおよびタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を形成することを含むことができる。
【0074】
負荷条件は、一般に、外部水溶液中よりも、第一のリポソームの内部においてより高い硫酸アンモニウム濃度を含む。いくつかの実施態様において、負荷工程は、リポソーム中の脂質成分のうちの1つ以上のゲル−流体間相転移温度(T)を超える温度で行われる。負荷は、例えば、約50、約55、約60、約65または約70℃で行うことができる。いくつかの実施態様において、負荷工程は、約50℃〜約70℃の温度で行われる。負荷は、任意の適切な量のタキサンを用いて行うことができる。一般に、タキサンは、タキサンの重量に対するリポソーム中のホスファチジルコリンおよびステロールの合わせた重量の比が約1:0.01〜約1:1であるような量で用いられる。タキサンの重量に対する合わせたホスファチジルコリン/ステロールの比は、例えば、約1:0.01、約1:0.05、約1:0.10、約1:0.15、約1:0.20、約1:0.25、約1:0.30、約1:0.35、約1:0.40、約1:0.45、約1:0.50、約1:0.55、約1:0.60、約1:0.65、約1:0.70、約1:0.75、約1:0.80、約1:0.85、約1:0.90、約1:0.95、または約1:1であり得る。いくつかの実施態様において、負荷工程は、タキサンの重量に対するホスファチジルコリンおよびステロールの合わせた重量の比が、約1:0.01〜約1:1であるように行われる。ある実施態様において、タキサンの重量に対するホスファチジルコリンおよびステロールの合わせた重量の比は、約1:0.05〜約1:0.5である。いくつかの実施態様において、タキサンの重量に対するホスファチジルコリンおよびステロールの合わせた重量の比は、約1:0.2である。負荷工程は、所望のレベルにおけるリポソーム内部へのタキサンの蓄積を可能とするのに十分ないかなる量の時間にわたって行うこともできる。
【0075】
PEG−脂質は、リポソーム調製の種々の段階において脂質小胞に組み込むこともできる。例えば、PEG−脂質を含有するMLVは、タキサンの負荷に先立って調製することができる。別法として、PEG−脂質は、小胞のタキサンの負荷の後に脂質二重層へ挿入することができる。PEG−脂質は、SUVの押出しに先立ってMLVに挿入することができるか、あるいはPEG−脂質は、予め形成されたSUVに挿入することができる。
【0076】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、リポソームタキサンを調製する方法を提供し、ここで、該方法は、a)ホスファチジルコリン脂質およびステロールを含む脂質二重層を有する第一のリポソームを形成し、ここで、該脂質二重層は水溶液を含む内部区画を封入し;b)該第一のリポソームにタキサン、またはその薬学的に許容され得る塩を負荷して、負荷されたリポソームを形成し、ここで、該タキサンは、2’−O−位でヘテロシクリル−(C2−5アルカノイル)基によってエステル化されたドセタキセルであり;c)ポリ(エチレングリコール)−リン脂質コンジュゲート(PEG−脂質)の該脂質二重層への挿入を可能とするのに十分な条件下で、該負荷されたリポソームおよび該PEG−脂質を含有する混合物を形成することを含む。
【0077】
ある実施態様において、PEG−脂質の挿入は、約35〜70℃の温度で行われる。負荷は、例えば、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、または約70℃で行うことができる。いくつかの実施態様において、PEG−脂質の挿入は、約50℃〜約55℃の温度で行われる。挿入は、任意の適切な量のPEG−脂質を用いて行うことができる。一般に、PEG−脂質は、PEG−脂質のモル数に対するホスファチジルコリンおよびステロールの合わせたモル数の比が約1000:1〜約20:1であるような量で用いられる。PEG脂質に対する合わせたホスファチジルコリン/ステロールのモル比は、例えば、約1000:1、約950:1、約900:1、約850:1、約800:1、約750:1、約700:1、約650:1、約600:1、約550:1、約500:1、約450:1、約400:1、約350:1、約300:1、約250:1、約200:1、約150:1、約100:1、約50:1、または約20:1であり得る。いくつかの実施態様において、負荷工程は、PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比が約1000:1〜約20:1(モル:モル)であるように行われる。いくつかの実施態様において、PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比は、約100:1〜約20:1(モル:モル)である。いくつかの実施態様において、PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比は、約35:1(モル:モル)〜約25:1(モル:モル)である。いくつかの実施態様において、PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比は、約33:1(モル)モルである。いくつかの実施態様において、PEG−脂質に対する合わせたホスファチジルコリンおよびステロールの比は、約27:1(モル:モル)である。
【0078】
当業者に知られた多数の追加の調製技術を本発明の方法に含めることができる。リポソームは、透析、サイズ排除クロマトグラフィー、透析濾過、および限外濾過を含めた技術によって種々の緩衝液に交換することができる。緩衝液の交換を用いて、封入されていないタキサンおよび他の不要な可溶性材料を組成物から除去することができる。水性緩衝液およびある種の有機溶媒は、凍結乾燥によってリポソームから除去することができる。いくつかの実施態様において、本発明の方法は、工程c)における混合物からのリポソームタキサンを、封入されていないタキサンおよび挿入されていないPEG−脂質を実質的に含まない水溶液に交換することを含む。いくつかの実施態様において、該方法は、リポソームタキサンを凍結乾燥することを含む。
【0079】
がんを処置する方法
別の態様において、本発明は、がんを処置する方法を提供する。該方法は、上記のリポソームタキサンを含有する組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。がんの処置のための治療的使用において、本発明のリポソーム組成物は、タキサンの初期投与量が1日当たり約0.001mg/kg〜約1000mg/kgの範囲であるように投与することができる。約0.01〜500mg/kg、または約0.1〜200mg/kg、または約1〜100mg/kg、または約10〜50mg/kg、または約10mg/kg、または約5mg/kg、または約2.5mg/kg、または約1mg/kgの日投与量を用いることができる。
【0080】
投与量は、患者の要求、処置されるがんのタイプおよび重症度、および使用されるリポソーム組成物によって変化し得る。例えば、投与量は、特定の患者において診断されたがんのタイプおよびステージを考慮して経験的に決定することができる。患者に投与される投与量は、経時的に患者における有益な治療的応答に影響を及ぼすのに十分なものとすべきである。投与量の大きさは、特定の患者における特定のリポソーム組成物の投与に伴うあらゆる有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。特定の状況のために適切な投与量の決定は、開業医の技量の範囲内のものである。一般に、処置は、リポソーム組成物の最適投与量未満であるより小さな投与量で開始される。その後、投与量を状況下での最適な効果に到達するまで、小さな増分ずつ増加させる。便宜上、毎日の投与量の合計は、所望であれば、該日の間に少量ずつに分割して投与してよい。
【0081】
本明細書に記載された方法は、特に、(血液学的悪性疾患とは反対に)器官および組織のがん、理想的には上皮がんである固形腫瘍がん(固形腫瘍)に適用される。固形腫瘍がんの例としては、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん(CRC)、食道がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肺がん、メラノーマ、神経内分泌がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんおよび腎臓がんが挙げられる。実施態様の1つの群において、本発明の方法による処置に適した固形腫瘍がんは、CRC、乳がんおよび前立腺がんから選択される。実施態様の別の群において、本発明の方法は、例えば、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病を含む血液学的悪性疾患の処置に適用される。
【0082】
該組成物は、本発明の方法において単独で、あるいは他の治療剤と組み合わせて投与してよい。追加の剤は、限定されるものではないが、アバスチン、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、または他のタキサンを含めた抗がん剤または細胞毒性剤であり得る。追加の抗がん剤は、限定されるものではないが、20−エピ−1,25 ジヒドロキシビタミンD3,4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、全−tkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラフォリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、アントラマイシン、抗背側化形態形成タンパク質−1(anti−dorsalizing morphogenetic protein−1)、抗エストロゲン、抗ネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子調節剤、アポトーシス制御因子、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、ベータラクタム誘導体、ベータ−アレチン、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、塩酸ビサントレン、ビスアジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ジメシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3、カルムスチン、カム700、軟骨由来阻害剤、塩酸カルビシン、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、シス−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベスシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、クラシンA、シクロペンタントラキノン(cyclopentanthraquinone)、シクロホスファミド、シクロプロタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、デュアゾマイシン(duazomycin)、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキセート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロミチン、塩酸エフロミチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフール、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子療法ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン(floxuridine)、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride)、フルオロウラシル、フルオロシタビン、ホルフェニメクス、フォルメスタン、フォスキドン、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセタミド、ヒドロキシ尿素、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イホスファミド、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫刺激ペプチド、インスリン様成長因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロンアルファ−2A、インターフェロンアルファ−2B、インターフェロンアルファ−N1、インターフェロンアルファ−N3、インターフェロンベータ−IA、インターフェロンガンマ−IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩酸イリノテカン、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球アルファインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、ロイプロレリン、レバミゾール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7(lissoclinamide 7)、ロバプラチン、ロムブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、メイタンシン(maytansine)、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メイタンシン(maytansine)、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン(mitocarcin)、ミトクロミン(mitocromin)、ミトギリン(mitogillin)、マイトグアゾン(mitoguazone)、ミトラクトール(mitolactol)、ミトマルシン(mitomalcin)、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル(mitosper)、ミトタン、マイトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、モノホスホリル脂質a/ミオバクテリア細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、多発性腫瘍サプレッサー1ベースの療法、マスタード抗がん剤、ミカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチップ(nagrestip)、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素調節剤、ニトロキシド抗酸化剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n−置換ベンズアミド、06−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカインインデューサ、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペグアスパルガーゼ(pegaspargase)、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルフォスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤、タンパク質Aベースの免疫調節剤、プロテインキナーゼC阻害剤、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、プルプリン、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、レニウムRE186エチドロネート、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RIIレチナミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメクス(roquinimex)、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、サルクヌ(sarcnu)、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI 1ミメティックス、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達調節剤、シムトラゼン、一本鎖抗原結合タンパク質、シゾフラン、ソブゾキサン、ボロカプテートナトリウム(sodium borocaptate)、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルホサートナトリウム、スパルホス酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンギスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、
ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル(sulofenur)、超活性血管作用性腸ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオダイド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、サリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチンミメティック、チマルファシン、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、二塩化チタノセン、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトトレキセート、グルクロン酸トリメトトレキセート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルフォスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、または塩酸ゾルビシンを含むことができる。
【実施例】
【0083】
IV.実施例
実施例1 リポソームタキサンの調製
緩衝液および試薬の調製
300mMスクロース透析溶液の調製。102.69gのスクロースを秤量し、1Lメスフラスコに加えた。該フラスコにDI水を4分の3充填し、固体が溶解するまで振盪することによって混合した。DI水を室温で加えて、スクロースを所望の濃度とし、蓋をしたフラスコを繰り返し倒立させることによって混合した。溶液を真空によって0.2μmの47mmナイロン膜を通して濾過し、2〜5℃で貯蔵した。
【0084】
350mM硫酸アンモニウム緩衝溶液の調製。23.13gの硫酸アンモニウムを秤量し、クラスAの500mLメスフラスコに加えた。該フラスコにDI水を4分の3充填し、固体が溶解するまで振盪することによって混合した。DI水を室温で加えて、硫酸アンモニウムを所望の濃度とし、蓋をしたフラスコを繰り返し倒立させることによって混合した。溶液を、真空によって0.2μmの47mmナイロン膜を通して濾過し、2〜5℃で貯蔵した。
【0085】
350mM硫酸アンモニウム/100mMスクロース緩衝溶液の調製。34.24gのスクロースおよび46.24gの硫酸アンモニウムを秤量し、1LのクラスAメスフラスコに加えた。該フラスコにDI水を4分の3充填し、固体が溶解するまで振盪することによって混合した。DI水を室温で加えて、該溶液を所望の濃度とし、蓋をしたフラスコを繰り返し倒立させることによって混合した。溶液を、真空によって0.2μmの47mmナイロン膜を通して濾過し、2〜5℃で貯蔵した。
【0086】
脂質溶媒和。DSPC(1.785g)およびコレステロール(0.715g)を清浄なガラス秤量漏斗中で秤量した。該材料を清浄な1L丸底フラスコに充填した。15mLのエタノールを、室温で、クラスAメスピペットを用いて加えた。丸底フラスコを、60℃でロータリーエバポレーター水浴に連結した。全ての材料が完全に溶解するまで(約30分)、該フラスコを真空無しで該浴中で150RPMおよび60℃で回転させた。脂質溶液を溶媒和後に60℃の温度に維持した。85mLの硫酸アンモニウム/スクロースをクラスAメスシリンダー中で測定し、パラフィルムで被覆し、水浴を用いて60℃まで加熱した。
【0087】
リポソームの調製
1L丸底フラスコをロータリーエバポレーターから取り出した。加熱された85mLの硫酸アンモニウム/スクロースを、激しく渦を巻いている状態で、フラスコに排出した。混合物を、ロータリーエバポレーター浴上のフラスコ中で、60℃で30分間回転させた。次いで、フラスコを取り出し、直ちに押出しを開始した。
【0088】
押出し。4つのガラス血清瓶およびストッパーを、エタノールで3回すすぎ、UHP窒素で乾燥することによって準備した。試料添加まで該瓶に蓋をした。100mLの押出機を1つのドレインディスクとともに組み立て、2つの0.2μmのヌクレオポア膜を押出機の濾過ベースに加えた。70℃に加熱したDI水100mLの通過を完了することによって、押出機を浄化した。リポソーム溶液を、1Lフラスコから、70℃まで加熱した押出機に排出した。リポソームを押し出し、250mLのガラスビーカー中まで通過させた。該200nm膜を2枚の100nm膜で置き換え、系を清浄な250mLのビーカーに一回パージした。押出しは、清浄なビーカーを用いて10回繰り返した。最終のリポソーム試料を清浄化した血清瓶に回収し、蓋をし、密閉し、室温まで冷却した。リポソームを2〜5℃で貯蔵した。
【0089】
透析濾過。Spectrum KrossFlo Unit透析濾過装置を、100ml/分の流量および3Psiの膜貫通圧力で、95℃まで加熱した1Lの0.1N NaOHで清浄化した。500mLを溶出させた後に流れを逆とし、流れをさらに500mLにわたって継続した。試料リザーバを充填し、少なくとも3回置き換え、すすぐ前に系をパージして乾燥させた。埃および屑をイソプロパノールワイプで配管外部から清浄化した。滅菌した0.1μmの25mmPVDFシリンジフィルターを、空気取入口濾過のためにGL45媒体瓶蓋に挿入した。系を、100mL/分および3Psiの膜貫通圧力で、室温で1LのDI水ですすいだ。試料リザーバを充填し、DI水で少なくとも3回置き換えた。室温で300mMスクロースで系をパージする前に、系をパージして乾燥させた。試料リザーバを空にし、エタノールで3回、およびDI水で3回すすいだ(1回のすすぎ当たり約10mL)。押し出されたリポソーム試料を室温で試料リザーバに加えた。
【0090】
500kDaカットオフのmPES中空繊維モジュール、100.0±1.0mL/分のポンプ速度、3.0±1.0PsiのTMP、−0.3≦0.0PsiのPp、および5.0±1.0PsiのPfを用いて、透析濾過を開始した。透析濾過は、濾液の体積が残余分の体積のほぼ30倍に到達するまで継続した。試料をリザーバから取り出し、清浄な血清瓶中に排出した。試料を0.2μmの25mmシリンジフィルターを通して清浄な血清瓶中に濾過した。次いで、最初の3つの溶出させた液滴を処分しながら、試料を0.1μmの25mm滅菌無機シリンジフィルターを通して清浄な血清瓶中に濾過した。試料に蓋をし、密閉し、2〜5℃で貯蔵した。押出しに続いて、試料を、粒径、pH、脂質濃度、およびアンモニウム濃度の点において特性評価した。
【0091】
2’O−4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−ブタノイル−ドセタキセル(TD−1)の遠隔負荷およびDSPE−PEG−2000の挿入
遠隔負荷手法。ドセタキセル誘導体TD−1(386mg、WO 2009/141738 A2に記載されたように調製)を、2つのゴムストッパー、温度制御熱電対用のアダプター、および撹拌棒を嵌合させた500mLの3ツ口丸底フラスコ中に秤量した。TD−1を190mLの10mM酢酸緩衝化スクロース溶液(pH5.5)に溶解させ、溶液のpHを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて5.5〜5.6に調整した。適度に撹拌しつつ、加熱マントルを用いて、溶液を65℃まで加熱した。
【0092】
第二の500mLの丸底フラスコに、リポソーム硫酸アンモニウム試料(1.932gの合計脂質)を加えた。リポソームを酢酸塩緩衝化スクロースで196mLの最終体積まで希釈し、pHを5.5に調整した。熱電対制御加熱マントルを用いて、混合物を65℃まで加熱し、TD−1の溶液中に注いだ。加熱を15分間継続し、次いで、温度を55℃まで低下させた。リポソームの試料を大きさおよびpH分析のために回収した。
【0093】
DSPE−PEG−2000の挿入。DSPE−PEG−2000(290mg)を8mLの酢酸塩緩衝化スクロースに溶解させ、加熱されたリポソーム溶液に加えた。混合物を55℃に30分間維持した。加熱マントルを取り除き、混合物を周囲温度まで放冷した。リポソームの試料を大きさおよびpH分析のために回収した。
【0094】
透析濾過。透析濾過装置は、上記の20mM酢酸塩/300mMスクロース緩衝液で平衡化させた。250mLのリポソーム混合物をリザーバに加え、限外濾過によって約50mLの合計体積まで濃縮した。残存するリポソーム混合物を加え、50mLまで濃縮した。限外濾液を、少なくとも15体積の20mM酢酸塩/300mMのスクロース、pH5.50に対して透析濾過した。リポソームを60mLまで濃縮し、大きさおよびpH分析のためにサンプリングした。試料を、TD−1、ドセタキセル、DSPC、コレステロール、DSPE−PEG−2000およびlyso−DSPCの定量のために分析した。最終リポソーム調製物を、ブチルゴムストッパーおよび圧着シールを備えた透明な血清バイアル中で5℃で貯蔵した。
【0095】
上記の方法に従って調製したリポソーム調製物を、様々な条件下で貯蔵し、表1にまとめたように粒径および薬物放出の点において分析した。リポソームを非PEG化試料と比較した。リポソームのPEG化は、貯蔵時にリポソームから漏出することが観察された薬物のレベルによって評価したところ、リポソーム完全性における予期せぬ利得をもたらした。凍結時のPEG化リポソームからのTD−1の漏出は、非PEG化リポソームに関して、ほぼ大きさの順に低減した。驚くべきことには、5℃における貯蔵時のPEG化リポソームからのTD−1の漏出は、22倍を超えて低減した。
【表1】
【0096】
実施例2 リポソームタキサン組成物へのPEG−脂質挿入の制御
熱挿入工程としてのDSPE−PEG(2000)の組込みは、薬物負荷後に最もよく確立されることが判明した。DSPE−PEG(2000)の挿入のための温度および時間の注意深い制御は、適切なPEG化を提供することが判明し、種々のロットからの詳細を表3に記載する。全ての場合において、PEG化TD−1リポソームの最終滅菌は、全ての入ってくる原料を注意深く制御して、0.2ミクロンフィルターを通す濾過によって行った。
【0097】
空のリポソームを、TD−1での負荷およびPEGの挿入のために上記のように調製して、最終のPEG化TD−1リポソームを形成した。以下の表は、生じた材料のロットおよび用いたPEG挿入条件についての種々のパラメータを比較する。
【表2】
【表3】
【表4】
【0098】
上記の7ロットについてのプロセスパラメータにおける主要な有意な変動が、DSPE−PEG(2000)の薬物負荷リポソームへの組込みの間に起こった。表3および表4に示されるように、PEG化は、挿入に用いられた温度および時間によって決まった。より低い温度(例えば、50℃)またはより短い時間(例えば、30分の保持時間)は、薬物生成物におけるより低いDSPE−PEG(2000)をもたらし(例えば、ロット2では28.2%のPEG組込みおよびロット3では45.3%のPEG組込み)、他方、高温(例えば、62℃)は、薬物物質の封入(45.8%)を犠牲にしてより高いPEG組込み(80.5%)を提供し、これにより薬物生成物におけるより低い薬物対脂質比がもたらされる。60分間での55℃までの加熱は、薬物負荷およびPEG組込み(各々、表に記載された最終の4バッチについて65〜87%および68〜90%)の両方の良好な収率を提供することが示された。
【0099】
実施例3 リポソームタキサン誘導体の生体内分布、比較の結果
2つの薬物動態および組織分布の研究を、腫瘍を持つマウスにおいて完了し、PEG化TD−1リポソームをドセタキセルと比較する。
【0100】
PEG化TD−1リポソームの静脈内投与の結果、遊離薬物として注射された同等の量のドセタキセルよりも10倍大きなドセタキセルへの全身曝露がもたらされた。TD−1およびドセタキセルの両方が、PEG化TD−1リポソームの静脈内注射後にPC3およびA549腫瘍の両方に蓄積した。TD−1およびドセタキセルの濃度は、投与後72時間までゆっくりと増加し、観察期間(21日まで)全体を通じて腫瘍中に留まった。対照的に、ドセタキセルの静脈内注射の結果、最初は腫瘍における高い濃度がもたらされたが、これは7日間の期間にわたって減少し、次いで、検出レベル未満に降下した。
【0101】
腫瘍組織中への蓄積へ加えて、TD−1およびドセタキセルは、PEG化TD−1リポソームの投与後に肝臓、脾臓および腎臓にも蓄積した。これらの組織は、遅い組込みおよび安定な持続する滞留時間を伴う腫瘍と同様な生体内分布パターンを示した。対照的に、遊離ドセタキセルは、これらの組織に集まらず、注射から24時間以内に検出レベル未満まで降下した。ドセタキセルの濃度は24時間を通じて肺組織において検出可能であったが、分析測定は、骨格筋組織におけるドセタキセルの存在を検出しなかった。
【0102】
高投与量のPEG化TD−1リポソーム(144mg/kg)における腫瘍中のTD−1およびドセタキセル濃度の遅れた増加は、より低い投与量において、または他の組織において見出された挙動と合致せず、大きさが顕著に収縮した腫瘍における長い薬物曝露に起因する計算上の誤った結果であり得る。
【0103】
非PEG化およびPEG化リポソームの両方におけるTD−1の封入は、より低いピーク血漿中濃度(Cmax)を生じさせる一方で、非封入TD−1およびドセタキセルの両方と比較して、ドセタキセルへの全身曝露(AUC)を増加させた。
【0104】
マウスにおける薬物動態調査は、より低いピーク血中レベルで、腫瘍内での活性な薬物ドセタキセルへのより大きくかつより持続した曝露の点で利点を実証する。これは、増大した毒性なしに、ヒト患者における増強された抗腫瘍活性の可能性を示唆する。
【0105】
方法
設計 血漿中薬物動態および分布を、各々、PC3細胞(ヒト前立腺がん)を皮下移植した雄無胸腺ヌードマウスで研究した。一旦腫瘍が100〜300mmの体積に到達したところで、動物を5つの群に無作為に分けた。各動物には、表5に示されるように、単一の静脈内投与量のドセタキセル、封入されていないTD−1、非PEG化TD−1リポソーム、またはPEG化TD−1リポソームが与えられた。
【表5】
【0106】
3匹の動物を注射後5分、および1、4、24、48、72、120および168時間で殺した。血液試料を、各時点において薬物動態分析のために採取した。TD−1およびドセタキセルの薬物動態パラメータを、非区画分析モデリングによって、Phoenix WinNonLinソフトウエアを用いて計算した。
【0107】
結果
TD−1の血漿中濃度は、図1Aに示されるように、経時的に減少した。どの形態の封入薬物と比較しても、封入されていないTD−1は、低い全身曝露(AUC)、迅速なクリアランスおよび大体積の分布を示した(表6)。
【表6】
【0108】
TD−1の投与量は、リポソーム製剤(TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソーム)についてより高かったが、11から30mg/kgへの投与量の増加の結果、封入TD−1についての全身曝露の3600〜4900倍の増加がもたらされた。加えて、TD−1の封入はクリアランスを示し、非封入製剤と比較して分布の体積を制限した。これらのデータは、TD−1のリポソーム形態が長時間にわたって血漿中に残ることを示す。30から60mg/kgへのPEG化TD−1リポソーム投与量の増加は、CmaxおよびTD−1に対する全身曝露を増加させたが、クリアランス、最終の半減期または分布の体積を改変しなかった。
【0109】
ドセタキセルの血漿中濃度は、経時的に減少した(図1B)。酸性または保護された条件(封入)下では安定であるが、TD−1は、中性のpHおよび非保護条件下では容易に加水分解して、ドセタキセルを形成する。非封入TD−1およびドセタキセルは、同様なドセタキセル濃度−時間曲線を呈し、濃度は48時間後に検出レベル未満まで降下した。封入TD−1の投与後に、ドセタキセル濃度もまた降下したが、減少の速度は遊離薬物と比較して遅くなった。ドセタキセルの定量可能な濃度は、各々、30および60mg/kgの後に、120および168時間にわたって生じた。
【0110】
遊離薬物として、ドセタキセルおよびTD−1は、TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームと比較して、比較的小さな全身曝露、迅速なクリアランス、および大体積の分布の薬物動態パラメータを有する血漿中ドセタキセル濃度を生じた(表7)。
【表7】
【0111】
ドセタキセルおよび非封入TD−1の両方は、同様な血漿中ドセタキセル濃度を呈し、これは、TD−1のドセタキセルへの変換に合致する。より遅いクリアランスは半減期を増加させ、PEG化TD−1リポソームによって提供されたドセタキセルの増大した全身曝露は、封入TD−1が、リポソームからの継続的放出およびドセタキセルへの変換のためのリザーバとして働くことを示す。
【0112】
A549異種移植片を持つマウスにおける薬物動態
血漿薬物動態および分布を、各々、A549細胞(ヒト非小細胞肺がん)を皮下移植した雌無胸腺ヌードマウスにおいて研究した。一旦腫瘍が100〜300mmの体積に到達したところで、動物を4つの群に無作為に分けた。各動物には、表8に示されるように、単一の静脈内投与量のドセタキセルまたはPEG化TD−1リポソームを与えた。
【表8】
【0113】
3匹の動物を、注射後1、4、24、72(3日)、168(7日)、216(9日)、336(14日)、432(18日)および504時間(21日)で殺した。血液試料を、各時点において薬物動態分析のために採取した。TD−1およびドセタキセルの薬物動態パラメータを、非区画分析モデリングによって、Phoenix WinNonLinソフトウエアを用いて計算した。
【0114】
TD−1の血漿中濃度は、図2に示されるように、経時的に減少した。40mg/kgの投与量においては、TD−1の濃度は、リポソーム投与後168時間にわたって定量の限界(0.025μg/mL)を超えたままであった;他方、144mg/kgの投薬の後に、TD−1は、リポソーム投与後の全3週間の観察期間にわたって検出された。CmaxおよびTD−1への全身曝露(血漿中AUC)は、PEG化TD−1リポソームの投与量の増加に伴って増加した(表9)。
【表9】
【0115】
PEG化TD−1リポソームの静脈内注射後に、ドセタキセルの血漿中濃度は経時的にゆっくりと減少し、各々、40および144mg/kgの投薬後3および7日にわたって検出の限界を超えたままであった。対照的に、遊離薬物として投与されたドセタキセルは、4時間にわたってのみ検出可能であった。PEG化TD−1リポソーム(40mg/kg)は、ドセタキセル(50mg/kg)それ自体の投与からの濃度と同様なCmaxドセタキセル濃度を呈したが、曝露はAUCの点において、ほぼ10倍大きかった(表10)。
【表10】
【0116】
PEG化TD−1リポソームに由来するドセタキセルは、遊離薬物として投与されたドセタキセルと比較して、より小体積の分布に制限されているようであった。PEG化TD−1リポソームから生じたドセタキセルの血漿中濃度は、投与後3日間にわたって、血液中で測定されたTD−1の濃度のほぼ1%であった。
【0117】
PC3異種移植片を持つマウスにおける組織分布
上記の血漿中レベルおよび薬物動態計算に加えて、組織分布も評価した。表5に記載された各動物から採取され、かつ分析前に凍結された組織は:腫瘍、肝臓、脾臓、および腎臓を含むものであった。ドセタキセルで処置されたマウスからの組織を、ドセタキセルレベルについて分析した。TD−1、TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームで処置されたマウスからの組織を、ドセタキセルおよびTD−1レベルの両方について分析した。
【0118】
リポソーム製剤では、TD−1の濃度は、最初は、PC3腫瘍組織において増加し、その後、該濃度は168時間の観察期間にわたってかなり一定に留まった(図3A)。対照的に、非封入TD−1の投与後におけるTD−1の腫瘍濃度は、ほぼ24時間にわたって濃度が降下し、観察期間の残りにわたって非常に低い濃度に留まった。
【0119】
腫瘍中のドセタキセルの濃度は、TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームの投与後48〜72時間にわたってゆっくりと増加し、次いで、観察期間の残りにわたって比較的安定なままであった(図3B)。非封入TD−1の投与後、ドセタキセルの腫瘍濃度は迅速に増加し、観察期間にわたって上昇したままであった。遊離薬物としてのドセタキセルの投与の結果、腫瘍中のドセタキセルの高い濃度の迅速な開始がもたらされた。封入投与量のほぼ2/3で投与したが、遊離ドセタキセルの投与の結果、封入製剤よりもより高くより早い濃度、および注射後120および168時間における同様な濃度がもたらされた。
【0120】
ドセタキセル、非封入TD−1、非PEG化TD−1リポソームおよびPEG化TD−1リポソームの投与の後、肝臓、脾臓および腎臓は、ドセタキセルおよびTD−1の両方を含有した(表11)。脾臓は、全ての試験した製剤について、肝臓および腎臓よりもドセタキセルに対するより大きな曝露(AUC)を有する傾向があった。肝臓、脾臓、および腎臓は、非PEG化TD−1リポソームと比較して、PEG化TD−1リポソームの投与後に、ドセタキセルに対するより少ない曝露を有した。データは、クリアランスの器官によるPEG化リポソームのより少ない取込みと合致する。
【表11】
【0121】
A549異種移植片を持つマウスにおける組織分布
血漿中レベルおよび薬物動態計算に加えて、組織分布の評価を、(表8におけるように)PEG化TD−1リポソームの投与後に、A549ヒトNSCLC腫瘍を持つマウスで行った。TD−1は、長期間にわたって、A549腫瘍に蓄積した(図4A)。TD−1の濃度は、注射後の最初の24時間にわたってゆっくりと増加した。24時間後に、TD−1の濃度は、低投与量では経時的に下方に移行する傾向があった。高い投与量では、濃度は、投与後ほぼ14日にわたって幾分安定なままであり、次いで、増加する傾向があったが、変動も増加した。TD−1の濃度は、21日の観測期間にわたって、定量の下限(2.0μg/g)を超えたままであった。
【0122】
封入されていないTD−1の投与と同様に、PEG化TD−1リポソームの投与の結果、低投与量(40mg/kg)について最初の7日間にわたって、および高投与量(144mg/kg)について9日間にわたって、A549腫瘍におけるドセタキセルの濃度の増加がもたらされた。最初のピーク後に、ドセタキセル濃度はわずかに減少し、次いで、低投与量の後の21日間の観察期間の残りにわたって安定なままであった(図4B)。PEG化TD−1リポソームの高用量の後、ドセタキセルの濃度は、わずかに減少し、投与から18および21日後に再度増加した。対照的に、ドセタキセルの静脈内注射は、注射直後にピークとなり、次いで、経時的に減少し、9日後、定量レベル(1.0μg/g)未満に降下した。
【0123】
同等の投与量において、PEG化TD−1リポソーム(40mg/kg)は、ドセタキセル(50mg/kg)それ自体の投与よりも3.9倍大きなドセタキセルの腫瘍曝露(AUC)を呈した(表12)。
【表12】
【0124】
腫瘍において、(封入されていないTD−1の投与後のドセタキセルのレベルのパーセントとして表した)PEG化TD−1リポソームの投与後のドセタキセルレベルは、特に、より低い投与量において3〜7日後に増加し、レベルは21日後に55%に到達した。比率は、他の組織において概ね安定であり、肝臓および脾臓における1〜2%程度から腎臓における3〜5%までの範囲であった。
【0125】
肝臓、脾臓、腎臓、肺および骨格筋組織におけるTD−1のレベルは、2つのカテゴリーに該当するようであったた(図5)。肝臓、脾臓および腎臓は、腫瘍と同様のパターンを示し、最初の72時間にわたって取込みは遅く、濃度は3週間の期間の残りにわたってゆっくりと減少した。肺および骨格筋組織は、注射直後に最高の濃度を含有し、これは、各々、ほぼ72および24時間後に検出レベルに近い濃度まで減少した。
【0126】
ほぼ9日後に、骨格筋組織におけるTD−1濃度は、PEG化TD−1リポソームの40mg/kg投与量についての定量レベル未満まで降下した。TD−1についての取込みおよび分布の同様なパターンが、144mg/kgの投与量でのPEG化TD−1リポソームの投与後に起こった。高投与量のPEG化TD−1リポソームの後に、肺および骨格筋組織は、観察期間を通じて測定可能な濃度のTD−1を保持したが、濃度は、特に、168〜504時間のプラトー期間にわたって、腫瘍、肝臓、脾臓および腎臓で見出された濃度よりも低い傾向があった。TD−1の定量の限界は、肝臓、腎臓、脾臓および肺については0.5μg/gであり、骨格筋については2.0μg/gであった。
【0127】
TD−1に関しては、取込みおよび排除パターンは、PEG化TD−1リポソームに由来するドセタキセルについての2つのカテゴリーに該当した(図6)。40または144mg/kgの投与量でのPEG化TD−1リポソームは、骨格筋組織において定量可能な量のドセタキセルを生じなかった。ドセタキセルについての定量の限界は、肝臓、腎臓、脾臓および肺については0.5μg/gであり、骨格筋については1.0μg/gであった。ドセタキセル(50mg/kg)の投与は、短い期間の間だけ組織に分布した。ドセタキセルの濃度は、216時間(9日)にわたって測定可能なレベルのドセタキセルを保持した腫瘍を除いて、組織のほとんどについて24時間後に定量の限界未満まで降下した。
【0128】
実施例4 イン・ビボ腫瘍モデル、比較の結果
一連の研究を完了し、免疫不全マウスに移植された種々の腫瘍細胞系に対する活性を調べ、PEG化TD−1リポソームの活性をドセタキセルと比較した。研究は大まかには同様の設計のものであった。腫瘍細胞系をヌード(免疫不全)マウスの脇腹に皮下移植し、一定の大きさまで成長させた。腫瘍が成長しなかったマウスは除いた。マウスを、生理食塩水(対照、全ての研究で含めた)またはドセタキセルまたはPEG化TD−1リポソームのいずれかを受けるように割り当て、ゆっくりとしたボーラス静脈内注射によって設計された処置を投与した。それぞれの場合において、可能な場合、投与量は、同等のレベルの毒性/耐性を提供するものとして選択した。TD−1の最高投与量は、通常、投与できる体積によって制限された。腫瘍の体積を分析して、腫瘍の成長の遅延(TGD)および部分的退行を決定した。マウスが最初の体重から20%減少するか、または瀕死の状態になった場合、あるいはマウスの腫瘍体積が2500mmを超え、または腫瘍が潰瘍となった場合、マウスを研究から取り除いた。マウスの最初のコーホートの半分未満が残っていれば、その群は、グラフ化せず、あるいはさらなる腫瘍の分析に含めなかった。しかしながら、全ての残存する動物を、生存中観察期間の完了まで追跡し、生存分析に含めた。これらの研究の様々な特徴を表13にまとめる。
【表13】
【0129】
全ての研究は、PEG化TD−1リポソームが、これらの異種移植片モデルにおいて活性な抗腫瘍剤として作用し、比較的許容される投与量のドセタキセルと比較して、有意により大きな抗腫瘍活性を保有することを示す。
【0130】
A253頭頸部癌モデルでの研究からのデータは、生理食塩水対照またはドセタキセルと比較して、90mg/kgのPEG化TD−1リポソームの投与の結果、腫瘍体積の有意な(p<0.05)減少がもたらされ、腫瘍の成長が81%だけ阻害され、腫瘍の成長の遅延が17日だけ増加したことを示す(表14)。対照またはドセタキセルと比較して、生存の有意な(p<0.05)増加があった。ドセタキセルは、A253腫瘍体積を有意に減少させることや、マウスにおける生存を延長することはなかった。PEG化TD−1リポソームの抗腫瘍応答は、毒性が観察されることなく起こった。全ての動物は、明らかな毒性(体重減少)なしに80日の投与後観察期間に耐え、実験の間に観察された決定的に処置に関連した死亡はなかった。腫瘍の成長および生存に対する効果を図7に示す。
【表14】
【0131】
A549非小細胞肺癌(NSCLC)モデルでの研究からのデータは、生理食塩水対照またはドセタキセルと比較して、90mg/kgのPEG化TD−1リポソームの投与の結果、腫瘍体積の有意な減少がもたらされ(p<0.05)、腫瘍成長が89%だけ阻害され(腫瘍成長阻害、TGI、%)、動物の40%において部分的な腫瘍退行が引き起こされた(表15)。対照的に、ドセタキセルの投与は、A549腫瘍体積を有意に減少させることや、マウスにおける生存を延長することはなかった。PEG化TD−1リポソームの抗腫瘍応答は、毒性が観察されることなく起こった。全ての動物は、明らかな毒性(体重減少)なしに80日の投与後観察期間に耐え、実験の間に観察された決定的に処置に関連した死亡はなかった。腫瘍成長および生存に対する効果を図8に示す。
【表15】
【0132】
同様の結果が、21日おいて与えた2回の投与量の後で同じNSCLCモデルで得られた。60または90mg/kgのPEG化TD−1リポソームの投与の結果、18または27mg/kgのドセタキセル、または生理食塩水で処置したマウスと比較して、有意に小さな腫瘍体積がもたらされた。18および27mg/kgのドセタキセルもまた腫瘍成長を阻害したが、PEG化TD−1リポソームは、TGD(腫瘍成長遅延)および部分的な腫瘍退行パラメータによって決定したところ、より大きな抗腫瘍効果を呈した(表16)。PEG化TD−1リポソームは、生理食塩水と比較して、評価した各投与量において生存を増加させ、60および90mg/kg投与量レベルの両方が、全ての投与量のドセタキセルと比較して、メジアン生存を増加させた。腫瘍成長に対する効果を図9に示す。
【表16】
【0133】
PC3前立腺腫瘍モデルでの研究からのデータは、PEG化TD−1リポソームが、等毒性投与量で与えられた場合に、ドセタキセルよりも大きな抗腫瘍活性を保有することを示す。単回投与量のPEG化TD−1リポソーム(19、38、または57mg/kg)は、生理食塩水で処置したマウスと比較して、腫瘍体積の有意な(p<0.05)減少を引き起こした。18および27mg/kgのドセタキセルもまた腫瘍成長を阻害したが、PEG化TD−1リポソームは、TGDおよび部分的腫瘍退行によって決定したところ、より大きな抗腫瘍効果を呈した(表17)。PEG化TD−1リポソームは、評価した各投与量において有意に(p<0.05)生存を増加させ、57mg/kgのPEG化TD−1リポソームは、全ての投与量のドセタキセルよりも有意に(p<0.05)大きく生存を増加させた。注目すべきことには、PEG化TD−1リポソームは、非PEG化TD−1リポソームよりも大きな腫瘍体積阻害を示した。19mg/kgのPEG化TD−1リポソームでの処置は、等毒性投与量のドセタキセル(9mg/kg)およびTD−1リポソーム(30mg/kg)よりも有意に小さな腫瘍を引き起こした。*、p<0.05。腫瘍成長および生存に対する効果を図10に示す。
【表17】
【0134】
MDA−MB−435/PTK7ヒト乳房異種移植片での研究からのデータは、単回投与量のPEG化TD−1リポソーム(30、60、または90mg/kg)の投与の結果、生理食塩水と比較して、より小さなメジアン腫瘍体積がもたらされたことを示す。18および27mg/kgのドセタキセルもまた腫瘍成長を阻害したが、PEG化TD−1リポソームは、TGD、%TGI、および部分的腫瘍退行パラメータによって決定したところ、より大きな抗腫瘍効果を呈した(表18)。PEG化TD−1リポソームは、評価した各投与量において生存を増加させ、60および90mg/kgのPEG化TD−1リポソームの両方が、全ての投与量のドセタキセルと比較して生存を増加させた。腫瘍成長および生存に対する効果を図11に示す。
【表18】
【0135】
HT1080/PTK7ヒト線維肉腫腫瘍に対して試験した場合、単回投与量のPEG化TD−1リポソーム(30、60、または90mg/kg)の投与の結果、生理食塩水で処置したマウスと比較して、腫瘍体積の有意な(p<0.05)減少がもたらされた。ドセタキセル(27mg/kg)もまた腫瘍成長を阻害したが、PEG化TD−1リポソームは、TGI、TGDおよび部分的腫瘍退行パラメータによって決定したところ、より大きな抗腫瘍効果を呈した(表19)。PEG化TD−1リポソームは、評価した各投与量において有意に(p<0.05)生存を増加させ、生理食塩水の2〜3倍、メジアン生存を増加させた。対照的に、ドセタキセルは生存を有意に増加させなかった。腫瘍成長および生存に対する効果を図12に示す。
【表19】
【0136】
A431ヒト類表皮腫瘍異種移植片での研究からのデータは、単回投与量のPEG化TD−1リポソーム(60または90mg/kg)の投与の結果、生理食塩水で処置した動物と比較して、腫瘍体積の有意な(p<0.05)減少がもたらされたことを示す。20および30mg/kgのドセタキセルもまた腫瘍成長を阻害したが、PEG化TD−1リポソームは、TGDおよび部分的腫瘍退行によって決定したところ、より大きな抗腫瘍効果を呈した(表20)。PEG化TD−1リポソーム(30、60、または90mg/kg)の各処置は、生理食塩水および全ての投与量レベルのドセタキセルよりも有意に(p<0.05)大きく生存を増加させた。腫瘍成長および生存に対する効果を図13に示す。
【表20】
【0137】
脂質組成物分析の結果:
記載された遠隔負荷技術によるリポソームTD−1(MP−3528)の調製を、一連の脂質組成物について評価してきた。これらの組成物は、TD−1の有意な喪失または加水分解なしにDSPE−PEGの挿入を可能としつつ、封入TD−1を供給する広範囲な製剤を評価するために選択された。これらの製剤の調製のための方法論は以下のようにまとめることができる:
1)封入された硫酸アンモニウムを含有する小胞の調製
a.脂質をアルコール(EtOHに溶解させ、これを、次いで、硫酸アンモニウムの水溶液に加えた。
b.得られた小胞を押し出して、よく規定された粒径を得た。
c.透析濾過を行って、封入されていない硫酸アンモニウムを除去した。
2)MP−3528の硫酸アンモニウム小胞への遠隔負荷
3)遠隔負荷されたMP−3528を含有する小胞へのDSPE−PEGの挿入
4)ヒスチジン/食塩水緩衝液に対する透析濾過
【0138】
この研究のために選択した脂質は:ジ−アルキル−グリセロ−ホスファチジルコリンの鎖長の差(C14−C18)、ジ−アルキル−グリセロ−ホスファチジルコリンの脂肪酸における不飽和、混合物中のモル%コレステロールについての変動、およびDSPE−PEGにおけるPEGの鎖長を含めた、種々の特徴を含むものであった。
【0139】
TD−1(MP−3528)のリポソーム製剤の調製の成功は、以下によって判定した:
1)薬物対全脂質比よって測定されたMP−3528の封入。より高い値は、小胞への遠隔負荷のより高いレベルを示す(0.1未満の値は、最適未満の遠隔負荷、またはDSPE−PEG挿入工程の間における薬物の喪失のいずれかを示す)。
2)製剤から放出されたMP−3528の%(%遊離)。%遊離のより高い値は、薬物の滞留が乏しいことを示唆する(>25%)。
3)ドセタキセルの%。低い値は、プロドラッグの有意な加水分解(>5%)なしに調製が成功したことを示す。
4)加工の間における小胞完全性の示度としての小胞の粒径(120nmよりも大きな粒径は、加工の間における許容できない変化を示唆する)
5)DSPE−PEGの、MP−3528の遠隔負荷後における小胞への組込み(低値<1モル%は乏しい組込みを示す)
【0140】
図14は、評価された組成物の表を提供する。
【0141】
結果:
約45%(モル)以上のコレステロールを含有する調製された全ての製剤は、結果として、上記基準を満足する組成物をもたらした(実施例1、2、5、6、7、8、10)。混合された不飽和、飽和PC(SOPCおよびPOPC)は、%遊離薬物に関して許容され得る結果(実施例11〜13)を与え、負電荷を持つDSPGを含有するもの(実施例16)も同様であった。
【0142】
25%(モル)のコレステロールレベルで調べた全ての製剤は、上記基準の少なくとも1つを満たさない組成物を与えた(実施例3、18および21)。一般に、これらの製剤は、不十分な薬物組込み(実施例18および21)または「遊離」であった薬物の%(実施例3)によって影響され、いくつかの場合においては、DSPE−PEGの組込みがほとんど〜全く無かった(実施例18および21)。
【0143】
中間的なコレステロールレベル(35%モル)は、>C16の鎖長を含有するPCで許容され得る組成物を与え、ここで、両方の鎖は飽和または不飽和のいずれかであった(実施例4、9、14)。いくつかの実施例において、POPC、SOPC、DPPCおよびDMPCは許容され得る組成物を生じなかった(実施例15、17、19および20)。POPCおよびSOPCの実施例(15および17)は、許容され得ないレベルの「遊離」薬物を有し、他方、DPPCおよびDMPCの実施例(19および20)は、適切な量の薬物を含有しなかった。
【0144】
DSPE−PEG(2000)またはDSPE−PEG(5000)のいずれかの使用は、許容され得ることが示された(DSPE−PEG(5000)については、実施例8)。
【0145】
ここまで、明瞭性および理解の目的で、説明および例によって幾分詳細に記載してきたが、当業者であれば、ある種の変形および変更を添付の特許請求の範囲内で実施することができることを十分に理解するはずである。加えて、本明細書中で提供された各文献は、あたかも各文献が引用により個々に組み込まれるのと同等な程度に、引用によりその全体が組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C