特許第6294465号(P6294465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6294465アキシャルエアギャップ型電動機及び電動機用ボビン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294465
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】アキシャルエアギャップ型電動機及び電動機用ボビン
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20180305BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H02K3/46 B
   H02K1/18 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-509915(P2016-509915)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2014083641
(87)【国際公開番号】WO2015145901
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-67458(P2014-67458)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】山崎 克之
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−135541(JP,A)
【文献】 特開2008−118833(JP,A)
【文献】 特開昭56−123746(JP,A)
【文献】 特開2009−239986(JP,A)
【文献】 特開2010−220288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00− 1/18
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の形状を有するティース鉄心と、
該ティース鉄心の外周両端部近傍を少なくとも覆うボビンと、
前記ボビンの前記ティース鉄心外周の両端部近傍を覆う部分近傍に設けられ、前記ティース鉄心の外周と鉛直方向に所定長さ延伸する鍔部と、
前記鍔部の延伸方向先端から更に延伸する少なくとも1つの突起と
、を備える複数のステータコアと、
出力軸の回転方向に沿って、夫々の前記突起の延伸方向先端他のステータコアの前記鍔部の延伸方向端部と接触すると共に前記出力軸の軸心方向を中心として環状に配設させた前記複数のステータコアが、樹脂によって一体モールドされてなるステータと、
前記ティース鉄心の端部側面と所定のエアギャップを介して平面対向する1以上のロータとを少なくとも備えるものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルエアギャップ型電動機であって、
前記ボビンが、前記出力軸の回転方向に延伸する両鍔部に前記突起を少なくとも1つずつ備え、
一方突起の出力軸の軸心方向側面の軸心からの距離と、他方突起の出力軸の軸心方向と反対方向の側面の軸心からの距離とが、概略同一となるものであるアキシャルエアギャップ電動機。
【請求項3】
請求項2に記載のアキシャルエアギャップ型電動機であって、
前記ボビンが、前記出力軸の回転方向に延伸する鍔部に前記突起を少なくとも2つずつ備え、
一方鍔部の少なくとも2つの突起夫々の出力軸軸心方向側面の軸心からの距離と、他方鍔部の少なくとも2つの突起夫々の出力軸の軸心方向と反対方向の側面の軸心からの距離とが、概略同一となるものであるアキシャルエアギャップ電動機。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のアキシャルエアギャップ型電動機であって、
前記ボビンが、前記出力軸の回転方向に延伸する両鍔部に前記突起を少なくとも2つずつ備え、
該両端部の夫々少なくとも2つの突起の1つは、該両端部の軸心側端部近傍に位置し、他の1つは該両端部の径方向外側の端部近傍に位置するものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【請求項5】
請求1〜4の何れか一項に記載のアキシャルエアギャップ型電動機であって、
前記ボビンが、前記出力軸の回転方向に対向する鍔部に、前記突起の軸心方向幅と概略同一の幅と、前記突起の延伸方向長さよりも短い奥行きを有する凹部を備え、
前記突起の出力軸の軸心からの距離と、前記凹部の出力軸の軸心からの距離とが、概略同一となるものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【請求項6】
柱状の形状を有するティース鉄心と、
該ティース鉄心の外周両端部近傍を少なくとも覆うボビンと、
前記ボビンの前記ティース鉄心外周の両端部近傍を覆う部分近傍に設けられ、前記ティース鉄心の外周と鉛直方向に所定長さ延伸する鍔部と、
前記鍔部の延伸方向先端から更に延伸する少なくとも1つの突起と
、を備える複数のステータコアと、
出力軸の回転方向に沿って、夫々の前記突起の延伸方向先端が他のステータコアの前記突起の延伸方向先端に接触すると共に前記出力軸の軸心方向を中心として環状に配設させた前記複数のステータコアが、樹脂によって一体モールドされてなるステータと、
前記ティース鉄心の端部側面と所定のエアギャップを介して平面対向する1以上のロータとを少なくとも備えるものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【請求項7】
請求項6に記載のアキシャルエアギャップ型電動機であって、
前記ボビンが、前記一方鍔部突起の先端に、回転方向に延伸する凸部と、前記他方鍔部突起の先端に、前記凸部の径方向幅が概略同一且つ回転方向長さと概略同一若しくは長い奥行きを有する凹部を備えるものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【請求項8】
概略台形形状の側断面を有するティース鉄心の2つの斜辺を互いに対向させ且つ上底側を中心に向けて環状に配置してなる電動機ステータ用のボビンであって、
前記ティース鉄心外周形状に概略一致する内径を有し、前記ティース鉄心を内部に挿入するための内筒部と、
前記ティース鉄心外周に沿ってコイルが巻き回る外筒部と、
該外筒部の周面から前記2つの斜辺の対向方向に所定長さ延伸する鍔部と、を有し
前記鍔部が、該鍔部の延伸方向から更に延伸する凸部少なくとも一つ備え、
該凸部の回転方向先端が、他のボビンの前記鍔部の回転方向端部と接触するものである電動機ステータ用ボビン。
【請求項9】
概略台形状の側断面を有するティース鉄心の2つの斜辺を互いに対向させ且つ上底側を中心に向けて環状に配置してなる電動機ステータ用のボビンであって、
前記ティース鉄心外周形状に概略一致する内径を有し、前記ティース鉄心を内部に挿入するための内筒部と、
前記ティース鉄心外周に沿ってコイルが巻き回る外筒部と、
該外筒部の周面から前記2つの斜辺の対向方向に所定長さ延伸する鍔部と、を有し
前記鍔部が、該鍔部の延伸方向から更に延伸する凸部を少なくとも一つ備え、
該凸部の延伸方向先端が、他のボビンの前記凸部の延伸方向端部と接触するものである電動機ステータ用ボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルエアギャップ型電動機及び電動機用ボビンに係り、特に、固定子を構成するボビンを有するアキシャルエアギャップ型電動機及び電動機用ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の高効率化を進めるにあたり、磁性体としてネオジムマグネット等の希少金属(レアアース)を採用したPM(Permanent Magnet)モータが知られている。希少金属の利用には、価格を始めとした希少性に起因する種々の課題がある。
この点、希少金属を使用しないフェライトマグネットを有効的に使用することで、十分な特性を得ることのできる種々の電動機も知られている。
【0003】
現在主流となっている電動機の構成は、出力軸と同一方向にエアギャップを持つラジアルエアギャップ型電動機であるが、この構成は、出力軸の回転方向に沿ってフェライトマグネットを配置しなければならず、ネオジムマグネットと同一の性能を得るためにはフェライトマグネットの体積を大きくする必要があり、結果、電動機が大型化する。
【0004】
性能を確保しつつ電動機の大型化を防止する電動機として、例えば、特許文献1に開示されるように、アキシャルエアギャップ型電動機が知られている。アキシャルエアギャップ型電動機は、出力軸方向と鉛直となる径方向にマグネットを大きく配置する構成であることから、出力軸方向の長さが短くなるという所謂扁平化を可能とし、電動機の大型化を防止することができる。
【0005】
ここで、特許文献1が開示するアキシャルギャップ型電動機のステータは、以下の構成となる。先ず概略台形筒形状のティース鉄心の周囲に樹脂成形によってインシュレータ(ボビン)を一体的に設け、インシュレータの周りにコイルを巻き回して複数のポールメンバを得る。その後、複数のポールメンバを、筒状のティースを回転軸方向に向けて環状(ドーナツ状)に隙間なく並べ、最後に環状に並べた全てのポールメンバ全体を樹脂のインサート成形によってモールドし、環状に一体化されたステータを得るようになっている。
【0006】
また、特許文献2は、特許文献1と概略同様の構成のアキシャルエアギャップ型電動機のステータであって、複数ポールメンバを環状に並べる際に、インシュレータ内径側端部の一方角に、隣接するポールメンバのインシュレータと連結するためのフック部と、他方角部に逆隣りのポールメンバに設けられたフックと係止するためのフック溝部を設け、インシュレータ同士が隙間なく密接に連結される構成とし、その後、全体を樹脂モールドして得られるステータを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−282989号公報
【特許文献2】特開2008−118833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、環状に並べたステータコアやポールメンバを樹脂モールドするのは、以下の理由による。即ち積層されたコアと巻線部間の絶縁を確実に行うとともに、巻かれたコイルが崩れることのないように巻線部を固定できる絶縁構成を必要とするためである。
この点、特許文献1及び2に開示されるステータは、隣接する各ポールメンバ同士が密着して連結され、各コイル部間といった狭小部分や流路形状が複雑となる部分には樹脂が侵入する入口が限定され、十分に行き渡らない虞がある。
【0009】
このような問題に対しては、圧入する樹脂の圧力を高くすることで解決できるともいえるが、高圧力によって各ステータコアが移動し、配列が乱れる虞もあるし、高圧力の封入でも十分に行き渡らない場合もある。配列の乱れはコイル同士の接触や磁束のアンバランスを招来し、性能や信頼に著しく影響する虞がある。一般に電動機を大型化するにつれて樹脂の封入圧力や量が大となり、より大きな問題となる。
高圧力の圧入による環状整列の乱れに対応するために、引用文献1や2のインシュレータやフックの強度を増加させることも考えられる。しかしながら、それに見合う厚さや構成を確保すれば、コスト増や相対的なボビンの大型化、ひいては電動機軸長の伸長を招来することになる
樹脂封入に際し、樹脂モールドを効率的に行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。即ち柱状の形状を有するティース鉄心と、該ティース鉄心の外周両端部近傍を少なくとも覆うボビンと、前記ボビンの前記ティース鉄心外周の両端部近傍を覆う部分近傍に設けられ、前記ティース鉄心の外周と鉛直方向に所定長さ延伸する鍔部と、前記鍔部の延伸方向先端から更に延伸する少なくとも1つの突起と、を備える複数のステータコアと、出力軸の回転方向に沿って、夫々の前記突起の延伸方向先端他のステータコアの前記鍔部の延伸方向端部と接触すると共に前記出力軸の軸心方向を中心として環状に配設させた前記複数のステータコアが、樹脂によって一体モールドされてなるステータと、前記ティース鉄心の端部側面と所定のエアギャップを介して平面対向する1以上のロータとを少なくとも備えるものであるアキシャルエアギャップ型電動機。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、環状配置された各ステータコアの間に空隙が形成され、細部にまで十分に樹脂が充填された樹脂モールドステータを有するアキシャルエアギャップ型電動機を得ることがきる。
本発明の他の課題や効果は、以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した一実施の形態であるアキシャルエアギャップ型電動機の概要構成を示す部分側断面図である。
図2】本実施形態のアキシャルエアギャップ型電動機の部分構成を模式的に示した斜視図である。
図3図3(a)は、本実施形態のステータコアの概要構成を模式的に示す斜視図である。図3(b)は、本実施形態のボビンの概要構成を模式的に示す斜視図である。
図4図4(a)は、第1実施形態のボビンの鍔部を示す正面模式図であり、図4(b)は、その斜視図である。図4(c)は、第1実施形態のボビンの鍔部を示す背面模式図であり、図7(d)は、その斜視図である。
図5図5(a)は、第1実施形態のボビンを隣接配置する様を示す正面模式図であり、図5(b)は、その斜視図である。
図6】第1実施形態にボビンを環状配置した様を示す模式図である。
図7図7(a)は、本発明の第2実施形態のボビンの鍔部を模式的に示す正面図であり、図7(b)は、その斜視図である。図7(c)は、第2実施形態のボビンの鍔部を示す背面模式図であり、図7(d)は、その斜視図である。
図8図8(a)は、第1実施形態のボビンを隣接配置する様を示す正面模式図であり、図68(b)は、その斜視図である。
図9図9(a)〜(e)は、本実施形態の突起の変形例を模式的に示す正面図である。
図10】図(a)〜(c)は、本実施形態の突起の他の変形例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明を適用した一実施形態であるアキシャルエアギャップ型電動機1について詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1に、第1実施形態のアキシャルエアギャップ型電動機1の部分側断面図を示す。また、図2に、アキシャルエアギャップ型電動機1のステータ2と、それに対向する2面に夫々配置されたロータ3A、3Bの構成のみ部分的に表した模式図を示す。
【0014】
アキシャルエアギャップ型電動機1は、ハウジンング5内において、モータの出力軸4の軸線を中心として環状に配置されたステータ2と、ステータ3の出力軸方向の両面に、所定の空隙(エアギャップ)を有して対向的に配置された一対のロータ3A及び3Bとを備える。
【0015】
ステータ2は、図2に示すごとく、概略台形筒状の複数のステータコア6(本実施形態では12個/12スロット)を有する。環状に配置されたステータコア6同士の強度確保や、隣接するコイルとの絶縁等の理由により、これらステータコア6全てを覆うように樹脂モールドされることで、ステータ2が一体的に構成されるようになっている。また、ステータ2の樹脂モールド時には、概略筒状の内径を有するハウジング5内に一方のモールド用金型(不図示)が挿入され、ステータコア6が金型の所定の位置に環状に配置される。その後、ハウジング5の反対の開口から他方金型が挿入されて樹脂が封入される。ステータ2がモールディングされるのと同時に、ステータ2の外周面がモータハウジング5の内周面に直接、樹脂成形によって支持固定されるようになっている。
なお、モールドの手法はこれに限るものではなく、ステータ2だけをハウジング5外で別に一体モールド成形してもよい。この場合、ハウジング5の内部又は外部からボルトなどでステータ2を固定する等が考えられる。
【0016】
図3(a)に、ステータコア6の構成を模式的に示す。ステータコア6は、ボビン7、積層鉄心8及びコイル9を少なくとも備えてなる。
積層鉄心8は、徐々に幅が大となるように成形された金属板が径方向に順次積層されてなる概略台形若しくは三角柱状の形状を有する鉄心である。なお、鉄心の断面形状には、概略台形や三角形以外にも、延長方向に交点を有する2つの斜辺を有する断面が含まれる。
金属板としては、鉄等であってもよいが、本実施形態ではアモルファスを含有する金属をテープ状に薄板化し、順次回転方向幅を大にして積層することで積層鉄心8を得るようになっている。
なお、本発明は積層式の鉄心に限るものではなく、鋳造式や圧粉による鉄心であってもよい。
【0017】
図3(b)に、ボビン7の構成を模式的に示す。ボビン7は、台形柱形状である積層鉄心外周の形状に概略一致する内径となる内筒部を有する台形筒形状の本体部7Aと、本体部7の両端部に設けられて、本体部7Aの外筒部と鉛直の全周方向に渡って所定長さ延伸する鍔部7Bとからなる。本体部7Aは、積層鉄心8の外径と概略同一或いは若干大きい内径を有し、積層鉄心を挿入した際、積層鉄心8の外周両端部(即ち外周上で出力軸4の延伸方向の両端部)近傍を覆うことができる長さを有する。ボビン7は、コイルと鉄心の絶縁を確保できるものであれば種々の素材を適用できるが、一般には樹脂成形によって提供される。本実施形態でも樹脂からなるものとする。
なお、切欠き7Cは、コイルの引出線9aを引き出すためのものである。
ステータコア6は、ボビン7の本体部7Aの内径側に積層鉄心8が挿入され、本体部7の外周且つ両端の鍔部7Bの間にコイル9が巻き回されて構成される。なお、本実施形態では、コイル9は鍔部7Bの回転方向における所定長さと程同じ程度までコイル9を巻き回すようになっているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
ボビン7の鍔部7Bは、回転方向の両端部に、本実施形態の特徴の1つである突起10aを夫々1つずつ備える。
図4、5及び6は、ボビン7のうち主として鍔部7Bのみの構成を表わす。図4(a)正面図、(b)正面斜視図、(c)背面図、(d)背面斜視図に示す様に、突起10aは、鍔部7Bの回転方向側端部上で、回転方向に所定長さ延伸しており又出力軸4から径方向に夫々異なる距離離間した位置に設けられるようになっている。具体的には、図4(c)に示す様に、一方の突起10aの軸心方向側面から軸心Xまでの距離と、他方の突起10aの軸心方向と反対方向の側面から軸心までの距離が、概略同一(L1)となる関係で配設されている。これによりステータ6を環状に並べた際、ステータコア6の一方側突起10a側面が、隣接するステータコア6の他方側突起10a側面と径方向に係止するようになる。なお、本実施形態では、突起10aの径方向幅は全て同一としているため、鍔部7Bの回転方向側端部上で、一方の突起10aを他方の突起10aの径方向幅分だけ径方向にずれた位置に設ける構成としている。
【0019】
かかる構成は、図5(a)、(b)に示す様に、ステータコア6を環状に整列させた際、突起10aが隣接するボビン7の鍔部7B側端部と接触することで、ステータコア6同士の間にギャップ11を形成することになる。また、突起10a同士が径方向に係止することで、ステータコア6同士の径方向へのズレを抑止する。即ち図6に示すように、全てのステータコア6を環状整列させると、係止された夫々の突起10aが互いに全てのステータコア6の突起10aの径方向ズレに対する応力を発生させるようになっている。
【0020】
このようにして形成されたギャップ11によって、隣接するステータコア6同士の絶縁距離を確保したり、モールド型内で整列したステータコア6の上方(及び/又は下方)から封入される樹脂を夫々のステータコア6間(特に、コイル9間)に十分に行き渡らせる流路を確保したりすることができる。また、突起10a同士の係止によって、樹脂封入時の圧力に対するステータコア6同士のズレを防止することができる。
【0021】
以上のように、第1実施形態によれば、環状に整列させたボビン7に配置された突起10aが、ステータコア6の径方向移動位置を補完し合うことで位置決めが確実になり、樹脂モールド時のステータコア6の配列の乱れを防止し、更に、ボビン7の鍔の間にできるギャップが樹脂の流路として有効的に作用し、大容量であっても樹脂モールド成形を的確且つ効率的にするという効果がある。
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、ボビン鍔部7Bの回転方向両端部上に、夫々突起10bを複数備えることを特徴の1つとする例である。
図7(a)〜(d)に、第2実施形態の鍔部7B部分のみを示す。(a)正面図、(b)正面斜視図、(c)背面図、(d)背面斜視図に示す様に、突起10bは、鍔部7Bの回転方向両端部上に2つ設けられる。夫々の突起10bは、鍔部7Bの回転方向側端部上で、回転方向に所定長さ延伸しており又出力軸4から径方向に夫々異なる距離離間した位置に設けられるようになっている。具体的には、図7(c)に示す様に、図面左側の径方向外側の突起10bの軸心方向側面から軸心Xまでの距離L1と、図面左側の径方向外側の突起10bの軸心方向と反対方向の側面から軸心までの距離L1が、概略同一となる関係で配設されている。軸心側の左右突起10bも同様である(L2)。
これによりステータ6を環状に並べた際、ステータコア6の一方側突起10a側面が、隣接するステータコア6の他方側突起10b側面と径方向に係止するようになる。なお、本実施形態では、突起10bの径方向幅は全て同一としているため、鍔部7Bの回転方向側端部上で、一方の突起10bを他方の突起10bの径方向幅分だけ径方向にずれた位置に設ける構成としている。
【0022】
例えば、出力軸の軸線を中心としたステータ外径が大きいモータの場合、鍔部7Bの突起が左右それぞれ1箇所では強度が不十分となることも考えられる。更には、モールド時に封入する樹脂の封入圧力がより大となる場合もあり、鍔部7Bの突起が左右それぞれ1箇所ではステータコア6のズレ防止に不十分となることも考えられる。そこで、突起を複数箇所に設けることで強度確保やモールド時のズレ防止をより確実に実現することができる。
【0023】
なお、突起10bは、左右で異なる数(例えば一方に2つ、他方に1つ或いは3つ)などでもよい。また、第2実施形態では、左右2つの突起10bがそれぞれ、径方向に他方突起10bの径方向長さ分だけズレる様に構成したが、軸心側と外周側の左右両突起10bの関係を逆にするようにしてもよい。即ちステータコア6を環状に配置した際、鍔部7Bの一方端部の2つの突起10bが、隣接するステータコア6の鍔部7Bの他方端部が備える2つの突起10bの間(若しくはその逆)に配置されるようにしてもよい。この場合、夫々の突起10bが軸心側及び外周側の両方のズレに対する応力を発揮することが期待できる。
【0024】
〔突起の変形例〕
第1及び第2実施形態では突起の数及び位置について主に説明したが、以下に、突起同士が径方向に係止しない態様や他の係止の態様について変形例を説明する。
図9(a)〜(e)に、変形例における突起の構成を示す。各図は、隣接するステータコア6の対向する鍔部7B及びそれの回転方向端部に備えられる突起を出力軸方向から部分的に表わした模式図である。
【0025】
図9(a)は、隣接するステータコア6夫々の突起10cが、鍔部7Bの回転方向端部上で出力軸から径方向に等距離の位置に備えられる例を示す。ステータコア6同士の径方向ズレが問題とならないような場合には、樹脂を封入するためのギャップ11を確保する構成を比較的容易に実現することができる。更に、突起10cの頭頂部同士を接触させるため、ギャップ11の幅が同じであれば、第1、第2実施形態の突起10a、10bよりも回転方向長さを短く(半分等)にできるため、突起自体の強度もその分向上することが期待できる。
【0026】
また、図9(b)に示す様に、突起10c自体の径方向長さを第1、第2実施形態の突起10aや10bよりも長くする態様でもよい。この場合、接触した突起10cの夫々の頭頂部間に発生する径方向摩擦力も増加し、モールド後のステータ2の強度増加及び樹脂封入時のステータコア6同士の径方向ズレ等の更なる防止を期待することができる。
【0027】
図9(c)〜(e)は、一方ステータコア6の鍔部7Bには突起10cを設け、それと対向する他方ステータコア6の鍔部7Bに、突起10cと径方向に係止する凹部13を備える点を特徴の1つとする。突起10cを凹部13に嵌めるように接合することで、1つの突起10cが、ステータコア6の軸心方向及び外周方向の両方に関するズレに対する応力を発生させる。これにより、ステータコアより一層のズレ防止効果及び強度確保効果を得ることができる。
特に、図9(d)及び(e)の例は、凹部13の径方向両側に回転方向への延伸部14を更に備える。延伸部14によって、突起10cと、凹部13との接合や係止をより一層支持することを期待できる。
更に、図9(e)の例は、突起10cの根元側を先端よりも径方向に長くした突起支持部15を備える。ギャップ11の間隔をより長く必要とする場合、突起10cの強度がより確保されることが期待できる。
【0028】
図10(a)〜(c)に、突起10cや凹凸13自体の形状の他の例を示す。突起10c等が概略円弧形状をしていてもよい。図9に示す各例と同様の効果を得ることができるのはもとより、エッジが無い分部品取扱いの安全性等が向上するという効果を期待できる。
【0029】
最後に、本実施形態のボビン7を製造する方法について説明する。上述の実施形態では、金型への樹脂の射出成形によってボビン7を得ることとしたが、3次元造形機によってボビン7自体やボビン7を樹脂によって射出成型するための金型自体を積層造形したり、切削RP装置によって切削加工したりすることで得ることも可能である。
【0030】
積層造形としては、光造形方式、粉末焼結積層造形方式、インクジェット方式、樹脂溶解積層方式、石膏パウダー方式、シート成形方式、フィルム転写イメージ積層方式及び金属光造形複合加工方式等が適用できる。
上記積層造形や切削加工用のデータは、CADやCGソフトウェア又は3Dスキャナで生成した3DデータをCAMによってNCデータに加工することで生成される。該データを3次元造形機又は切削RP装置に入力することで三次元造形が行われる。なお、CAD/CAMソフトウェアによって、3Dデータから直接NCデータを生成してもよい。
【0031】
また、ボビン7やその樹脂射出成型用金型を得る方法として、3Dデータ又はNCデータを作成したデータ提供者やサービサーが、インターネット等の通信線を介して所定のファイル形式で配信可能とし、ユーザが当該データを3D造形機やそれを制御するコンピュータ等にダウンロード又はクラウド型サービスとしてアクセスし、3次元造形機で成形出力することでボビン7を製造することもできる。なお、データ提供者が3DデータやNCデータを不揮発性の記録媒体に記録して、ユーザに提供する方法も可能である。
【0032】
このような製造方法による本実施形態のボビン7の一態様を示せば、概略台形形状の側断面を有するティース鉄心の2つの斜辺を互いに対向させ且つ上底側を中心に向けて環状に配置してなる電動機ステータ用のボビンを製造する方法であって、前記ティース鉄心ティース鉄心外周形状に概略一致する内径を有し、前記ティース鉄心を内部に挿入するための内筒部と、前記ティース鉄心外周に沿ってコイルが巻き回される外筒部と、該外筒部の周面から前記2つの斜辺の対向方向に所定長さ延伸し、少なくとも一部が、前記コイルの積厚よりも長い凸状部を有する三次元データに基づいて三次元造形機で製造する方法である。
【0033】
更に、他の態様を示せば、概略台形形状の側断面を有するティース鉄心の2つの斜辺を互いに対向させ且つ上底側を中心に向けて環状に配置してなる電動機ステータ用のボビンを製造する為の方法であって、前記ティース鉄心ティース鉄心外周形状に概略一致する内径を有し、前記ティース鉄心を内部に挿入するための内筒部と、前記ティース鉄心外周に沿ってコイルが巻き回される外筒部と、該外筒部の周面から前記2つの斜辺の対向方向に所定長さ延伸し、少なくとも一部が、前記コイルの積厚よりも長い凸状部を有する三次元データを、通信線を介して伝送・配信する方法である。
【0034】
以上のように、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記種々の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、ボビン7が本体部7Aと、鍔部7Bとから主に構成される例について述べたが、本体部7Aが軸方向の中央付近で分割される構成であってもよいし、本体部7Aが軸方向に極短く、例えば図4の鍔部7Bの部分模式図に示すように、殆ど鍔部7Bだけで構成される態様であってもよい。この場合、積層鉄心8の外周には、絶縁用のテープや塗料の塗布し、コイル9との絶縁を行うように構成するのが好ましい。或いはコイル外表面に塗布された絶縁剤が、より絶縁性があるものであれば絶縁テープ等は必須でなくてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、ボビン7の出力軸方向両端部に突起を設ける構成としたが、出力軸方向一方端部の鍔部のみに突起を設け、空隙11を形成するようにすることも可能である。
【0036】
また、本実施形態では、空隙11を確保するために突起10a、10b、10cを用いる構成としたが、鍔部7Bの一部の回転方向長さを長くした凸状部として構成した場合も突起10a、10b、10cの同等物であるといえる。
【符号の説明】
【0037】
1…アキシャルエアギャップ型電動機、2…ステータ、3…ロータ、4…出力軸、5…ハウジング、6…ステータコア、7…ボビン、7A…本体部、7B…鍔部、7C…切欠き、8…積層鉄心、9…コイル、9a…引出し線、10a、10b、10c…突起、11…ギャップ、13…凹部、14…延伸部、15…突起支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10