【実施例】
【0041】
1.金ナノプレートを含む懸濁液
(1)金ナノプレート種粒子の懸濁液の作製
100mMのヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)水溶液24gに、50mMの塩化金酸水溶液0.13g、10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液1.5gを撹拌しながら添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中で120分間静置し、金ナノプレート種粒子懸濁液を作製した。作製した懸濁液(原液)の光学特性を
図1に示す。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
金ナノプレート種粒子懸濁液の金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0049質量%であった。この懸濁液の光学特性を
図1に示す。
【0042】
(2)金ナノプレートの懸濁液の作製
(2−1)予備成長を含まない合成
(2−1−1)金ナノプレートの懸濁液(懸濁液A)の作製
50mMのCTAC水溶液36gに強力攪拌子(φ8×38mm)を入れ、500rpmで攪拌し、50mMの塩化金酸水溶液を0.5g、10mMのよう化ナトリウム水溶液を0.3g、そして100mMのL−アスコルビン酸水溶液を0.4g添加した。30秒間攪拌後、金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液を0.3g添加し、5秒間攪拌した。得られた懸濁液をインキュベーター(30℃)内で12時間静置し、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液A)を作製した。この懸濁液の作製に使用したCTAC水溶液からの希釈率により比例計算(ただし、各溶液の比重は1と仮定し、前記金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液中のCTACの量は無視)すると、
懸濁液Aの分散媒中のCTAC濃度は48.0mMと求められた(特に断らない限り、他の実施例でも同様の計算方法を採用した)。
懸濁液Aを超純水で4倍容に希釈したときの懸濁液の色調は青色であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図2に示す。最大吸収を示す波長は648nm(消光度:0.86)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.52であったので、金ナノプレートの純度指数は0.60と計算された。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液A中の金ナノプレートを、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図3に示す。SEM観察より、金ナノプレートの最大長さは50nm、厚さは24nmで、アスペクト比は2.1であることがわかった。
懸濁液AのpHは、室温下(20℃)で測定した結果、2.4であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Aの金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0131質量%であった。
【0043】
(2−2)予備成長を含む合成
(2−2−1)金ナノプレートの懸濁液(懸濁液K)の作製
15mMのCTAC水溶液3.16gを攪拌し、20mMのよう化ナトリウム水溶液を0.004g、50mMの塩化金酸水溶液を0.013g、そして100mMのL−アスコルビン酸水溶液0.013gを添加し、予備成長液を作製した。次いで、51mMのCTAC水溶液40gを攪拌し、20mMのよう化ナトリウム水溶液を0.15g、50mMの塩化金酸水溶液を0.5g、そして100mMのL−アスコルビン酸水溶液0.4gを添加し、本成長液を作製した。予備成長液へ金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液を0.031g添加し、予備成長金ナノプレート懸濁液を作製した。予備成長金ナノプレート懸濁液全量を本成長液へ添加した。得られた懸濁液をインキュベーター(30℃)内で12時間静置し、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液K)を作製した。
懸濁液Kの分散媒中のCTAC濃度は47.2mMと計算された。
懸濁液Kを超純水で4倍容に希釈したときの懸濁液の色調は青色であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図17に示す。最大吸収を示す波長は644nm(消光度:0.94)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.53であったので、金ナノプレートの純度指数は0.56と計算された。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液K中の金ナノプレートを、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図18に示す。また、懸濁液KのpHは、室温下(20℃)で測定した結果、2.5であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Kの金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0114質量%であった。
【0044】
(2−2−2)金ナノプレートの懸濁液(懸濁液L)の作製
上記金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液の添加量を0.031gから0.016gに変更した以外は、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液K)と同様にして、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液L)を作製した。
懸濁液Lの分散媒中のCTAC濃度は47.1mMと計算された。
懸濁液Lを超純水で4倍容に希釈したときの懸濁液の色調は青色であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図19に示す。最大吸収を示す波長は668nm(消光度:0.99)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.48であったので、金ナノプレートの純度指数は0.48と計算された。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液L中の金ナノプレートを、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図20に示す。また、懸濁液LのpHは、室温下(20℃)で測定した結果、2.5であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Lの金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0114質量%であった。
【0045】
(2−2−3)金ナノプレートの懸濁液(懸濁液M)の作製
上記金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液の添加量を0.031gから0.062gに変更した以外は、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液K)と同様にして、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液M)を作製した。
懸濁液Mの分散媒中のCTAC濃度は47.1mMと計算された。
懸濁液Mを超純水で4倍容に希釈したときの懸濁液の色調は青色であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図21に示す。最大吸収を示す波長は628nm(消光度:0.84)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.59であったので、金ナノプレートの純度指数は0.70と計算された。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液M中の金ナノプレートを、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図22に示す。また、懸濁液MのpHは、室温下(20℃)で測定した結果、2.4であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Mの金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0114質量%であった。
【0046】
(2−2−4)金ナノプレートの懸濁液(懸濁液N)の作製
上記金ナノプレート種粒子懸濁液の10倍希釈溶液の添加量を0.031gから0.155gに変更した以外は、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液K)と同様にして、金ナノプレートの懸濁液(懸濁液N)を作製した。
懸濁液Nの分散媒中のCTAC濃度は47.0mMと計算された。
懸濁液Nを超純水で4倍容に希釈したときの懸濁液の色調は紫色であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図23に示す。消光スペクトルの内、最大吸収を示す波長の長波長側に有るピークの位置(金ナノプレート由来のピーク)は602nm(消光度:0.58)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.64であったので、金ナノプレートの純度指数は1.10と計算された。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液N中の金ナノプレートを、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図24に示す。また、懸濁液NのpHは、室温下(20℃)で測定した結果、2.4であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Nの金含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0114質量%であった。
【0047】
(3)懸濁液の精製
(3−1)懸濁液Aの精製(懸濁液Bの作製)
懸濁液A30gに、1.0MのCTAC水溶液を4.0g注入して攪拌した。30℃で、12時間静置し、上澄み液を除去した。沈殿物を50mMのCTAC水溶液20gで分散し、懸濁液Aの精製物(懸濁液B)を作製した。
懸濁液Bの分散媒中のCTAC濃度は50mMとみなした(再分散時に使用した分散媒におけるCTAC濃度)。
懸濁液Bを超純水で4倍容に稀釈したときの懸濁液の色調はシアン調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図4Aに示す。最大吸収を示す波長は644nm(消光度:0.61)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.22であったので、金ナノプレートの純度指数は0.36と計算された。消光度比率より、懸濁液Bの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0079質量%であった。最大吸収波長における消光度の高さを合せるために測定波長域すべての消光度に1.41を乗算した懸濁液Bの消光スペクトル(実線)と、上記懸濁液Aの消光スペクトル(破線)との比較を
図4Bに示す。懸濁液Bの消光スペクトルでは、プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度が、39%減少していた。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液B中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図5に示す。SEM観察より、金ナノプレートの最大長さは52nm、厚さは19nmで、アスペクト比は2.7であることがわかった。
懸濁液B中の金ナノプレートのゼータ電位は+41.4 ± 1.2であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
また、上記懸濁液Aの沈殿物を50mMのCTAC水溶液0.02gで分散し、懸濁液Aの精製物(懸濁液W)を作製した時、金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して7.9質量%であった。
【0048】
(3−2)懸濁液Kの精製(懸濁液Oの作製)
懸濁液K30gに、1.0MのCTAC水溶液を4.0g注入して攪拌した。30℃で、12時間静置し、上澄み液を除去した。沈殿物を50mMのCTAC水溶液20gで分散し、懸濁液Kの精製物(懸濁液O)を作製した。
懸濁液Oの分散媒中のCTAC濃度は50mMとみなした。
懸濁液Oを超純水で4倍容に稀釈したときの懸濁液の色調はシアン調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図25Aに示す。最大吸収を示す波長は644nm(消光度:0.80)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.29であったので、金ナノプレートの純度指数は0.36と計算された。消光度比率より、懸濁液Oの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0085質量%であった。最大吸収波長における消光度の高さを合せるために測定波長域すべての消光度に1.18を乗算した懸濁液Oの消光スペクトル(実線)と、上記懸濁液Kの消光スペクトル(破線)との比較を
図25Bに示す。懸濁液Oの消光スペクトルでは、プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度が、36%減少していた。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液O中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図26Aに示す。鮮明な像を観察するため、懸濁液Oにチオール末端ポリエチレングリコール(Mw:20,000)を添加し、透過走査電子顕微鏡(STEM)観察を行った結果を
図26Bに示す。SEM、STEM観察より、金ナノプレートの最大長さは65nm、厚さは31nmで、アスペクト比は2.1であることがわかった。
懸濁液O中の金ナノプレートのゼータ電位は+42.0 ± 1.5であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
【0049】
(3−3)懸濁液Lの精製(懸濁液Pの作製)
懸濁液L30gに、1.0MのCTAC水溶液を注入して攪拌した。注入量は懸濁液Lの上澄みが赤紫色になる量とした。30℃で、12時間静置し、赤紫色の上澄み液を除去した。沈殿物を50mMのCTAC水溶液30gで分散し、懸濁液Lの精製物(懸濁液P)を作製した。
懸濁液Pの分散媒中のCTAC濃度は50mMとみなした。
懸濁液Pを超純水で4倍容に稀釈したときの懸濁液の色調は薄水色調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図27Aに示す。最大吸収を示す波長は668nm(消光度:0.58)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.17であったので、金ナノプレートの純度指数は0.29と計算された。消光度比率より、懸濁液Pの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0059質量%であった。最大吸収波長における消光度の高さを合せるために測定波長域すべての消光度に1.70を乗算した懸濁液Pの消光スペクトル(実線)と、上記懸濁液Lの消光スペクトル(破線)との比較を
図27Bに示す。懸濁液Pの消光スペクトルでは、プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度が、40%減少していた。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図28Aに示す。鮮明な像を観察するため、懸濁液Pにチオール末端ポリエチレングリコール(Mw:20,000)を添加し、透過走査電子顕微鏡(STEM)観察を行った結果を
図28Bに示す。SEM、STEM観察より、金ナノプレートの最大長さは91nm、厚さは41nmで、アスペクト比は2.2であることがわかった。
懸濁液P中の金ナノプレートのゼータ電位は+41.6 ± 2.0であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
【0050】
(3−4)懸濁液Mの精製(懸濁液Qの作製)
懸濁液M30gに、1.0MのCTAC水溶液を注入して攪拌した。注入量は懸濁液Mの上澄みが赤紫色になる量とした。30℃で、12時間静置し、赤紫色の上澄み液を除去した。沈殿物を50mMのCTAC水溶液30gで分散し、懸濁液Mの精製物(懸濁液Q)を作製した。
懸濁液Qの分散媒中のCTAC濃度は50mMとみなした。
懸濁液Qを超純水で4倍容に稀釈したときの懸濁液の色調は薄水色調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図29Aに示す。最大吸収を示す波長は628nm(消光度:0.69)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.31であったので、金ナノプレートの純度指数は0.45と計算された。消光度比率より、懸濁液Qの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0080質量%であった。最大吸収波長における消光度の高さを合せるために測定波長域すべての消光度に1.22を乗算した懸濁液Qの消光スペクトル(実線)と、上記懸濁液Mの消光スペクトル(破線)との比較を
図29Bに示す。懸濁液Qの消光スペクトルでは、プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度が、36%減少していた。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図30Aに示す。鮮明な像を観察するため、懸濁液Qにチオール末端ポリエチレングリコール(Mw:20,000)を添加し、透過走査電子顕微鏡(STEM)観察を行った結果を
図30Bに示す。SEM、STEM観察より、金ナノプレートの最大長さは54nm、厚さは27nmで、アスペクト比は2.0であることがわかった。
懸濁液Q中の金ナノプレートのゼータ電位は+42.1± 1.0であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
【0051】
(3−5)懸濁液Nの精製(懸濁液Rの作製)
懸濁液N30gに、1.0MのCTAC水溶液を注入して攪拌した。注入量は懸濁液Nの上澄みが赤紫色になる量とした。30℃で、12時間静置し、赤紫色の上澄み液を除去した。沈殿物を50mMのCTAC水溶液30gで分散し、懸濁液Nの精製物(懸濁液R)を作製した。
懸濁液Rの分散媒中のCTAC濃度は50mMとみなした。
懸濁液Rを超純水で4倍容に稀釈したときの懸濁液の色調は薄水色調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図31Aに示す。最大吸収を示す波長は602nm(消光度:0.28)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.16であったので、金ナノプレートの純度指数は0.57と計算された。消光度比率より、懸濁液Rの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0041質量%であった。最大吸収波長における消光度の高さを合せるために測定波長域すべての消光度に2.06を乗算した懸濁液Rの消光スペクトル(実線)と、上記懸濁液Nの消光スペクトル(破線)との比較を
図31Bに示す。懸濁液Rの消光スペクトルでは、プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度が、48%減少していた。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。得られた懸濁液中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図32Aに示す。鮮明な像を観察するため、懸濁液Rにチオール末端ポリエチレングリコール(Mw:20,000)を添加し、透過走査電子顕微鏡(STEM)観察を行った結果を
図32Bに示す。SEM、STEM観察より、金ナノプレートの最大長さは37nm、厚さは19nmで、アスペクト比は1.9であることがわかった。
懸濁液R中の金ナノプレートのゼータ電位は+41.1± 1.8であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
【0052】
(4)PSS被覆金ナノプレートの懸濁液(懸濁液C〜E)の作製(懸濁液Bの分散媒中のCTAC濃度の低減)
上記(3)で作製した懸濁液Bを40mL遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)して金ナノプレートを沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、遠沈管底部の金ナノプレートに20μMのポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)(Na−PSS)水溶液を39.6mL添加して再分散させ、PSS被覆金ナノプレート中間体1懸濁液(懸濁液C)を作製した。
懸濁液Cの分散媒中のCTAC濃度は0.50mMと計算され、
PSS濃度は20μMとみなした(再分散時に使用した分散媒におけるPSS濃度)。懸濁液C中の金ナノプレートのゼータ電位は−51.0 ± 0.7であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。
懸濁液Cを遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)してPSS被覆金ナノプレート中間体1を沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、遠沈管底部のPSS被覆金ナノプレート中間体1に20μMのPSS水溶液を39.6mL添加して再分散させ、PSS被覆金ナノプレート中間体2懸濁液(懸濁液D)を作製した。
懸濁液Dの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-2mMと計算され、
PSS濃度は20μMとみなした。懸濁液D中の金ナノプレートのゼータ電位は−51.0 ± 0.4であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。懸濁液Dを遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)してPSS被覆金ナノプレート中間体2を沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、PSS被覆金ナノプレート中間体2に20μMのPSS水溶液を39.6mL添加して再分散させ、PSS被覆金ナノプレート懸濁液(懸濁液E)を作製した。
懸濁液Eの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-4mMと計算され、
PSS濃度は20μMとみなした。懸濁液E中の金ナノプレートのゼータ電位は−54.5 ± 2.0であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。PSS被覆金ナノプレートの懸濁液のpHは、室温下(20℃)で測定した結果、7.0であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Eを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調はシアン調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図6に示す。最大吸収を示す波長は638nm(消光度:0.64)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.25であったので、金ナノプレートの純度指数は0.39と計算された。消光度比率より、懸濁液Eの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0085質量%であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
懸濁液E中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図7に示す。SEM観察より、金ナノプレートの最大長さは53nm、厚さは19nmで、アスペクト比は2.8であることがわかった。
【0053】
(5)クエン酸被覆金ナノプレート懸濁液の作製
(5−1)クエン酸被覆金ナノプレート懸濁液(懸濁液F〜H)の作製(PSS被覆金ナノプレート水懸濁液E中のCTAC濃度の低減及びPSS濃度の低減)
上記(4)で作製したPSS被覆金ナノプレート水懸濁液(懸濁液E)の40mLを遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)してPSS被覆金ナノプレートを沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、遠沈管底部のPSS被覆金ナノプレートに4.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液を39.6mL添加して再分散させ、クエン酸被覆金ナノプレート中間体1懸濁液(懸濁液F)を作製した。
懸濁液Fの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-6mMと計算され、
PSS濃度は0.20μMと計算された。懸濁液F中の金ナノプレートのゼータ電位は−47.5 ± 1.0であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。懸濁液Fを遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)してクエン酸被覆金ナノプレート中間体1を沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、遠沈管底部のクエン酸被覆金ナノプレート中間体1に4.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液39.6mLを添加して再分散させ、クエン酸被覆金ナノプレート中間体2懸濁液(懸濁液G)を作製した。
懸濁液Gの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-8mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-2μMと計算された。懸濁液G中の金ナノプレートのゼータ電位は−44.2 ± 1.7であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。懸濁液Gを遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)してクエン酸被覆金ナノプレート中間体2を沈殿させ、上澄み液39.6mLを除去した。その後、クエン酸被覆金ナノプレート中間体2に4.5mMのクエン酸水溶液を39.6mL添加して再分散させ、クエン酸被覆金ナノプレート懸濁液(懸濁液H)を作製した。
懸濁液Hの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-10mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-4μMと計算された。懸濁液H中の金ナノプレートのゼータ電位は−42.2 ± 1.4であった。ゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。懸濁液HのpHを室温下(20℃)で測定した結果、pH8.4であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
懸濁液Hを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調はシアン調であった。この4倍希釈懸濁液の光学特性を
図8に示す。最大吸収を示す波長は638nm(消光度:0.33)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.14であったので、金ナノプレートの純度指数は0.42と計算された。消光度比率より、懸濁液Hの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0045質量%であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
懸濁液H中の金ナノプレートを超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図9に示す。SEM観察より、金ナノプレートの最大長さは55nm、厚さは19nmで、アスペクト比は2.9であることがわかった。
【0054】
(5−2)クエン酸被覆金ナノプレート懸濁液(懸濁液S〜V)の作製
金ナノプレート懸濁液Bを懸濁液Hとする上記工程を、懸濁液O〜Rについても同様に実施し、クエン酸被覆金ナノプレート懸濁液(懸濁液S〜V)を作製した。
懸濁液S
懸濁液Sの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-10mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-4μMと計算された。懸濁液S中の金ナノプレートのゼータ電位は−41.5 ± 0.5であった。懸濁液SのpHを室温下(20℃)で測定した結果、pH7.9であった。懸濁液Sを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調はシアン調であった。最大吸収を示す波長は634nm(消光度:0.32)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.12であったので、金ナノプレートの純度指数は0.38と計算された。消光度比率より、懸濁液Sの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0034質量%であった。
懸濁液T
懸濁液Tの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-10mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-4μMと計算された。懸濁液T中の金ナノプレートのゼータ電位は−42.2 ± 1.2であった。懸濁液TのpHを室温下(20℃)で測定した結果、pH8.2であった。懸濁液Tを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調は薄水色調であった。最大吸収を示す波長は658nm(消光度:0.23)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.07であったので、金ナノプレートの純度指数は0.30と計算された。消光度比率より、懸濁液Tの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0023質量%であった。
懸濁液U
懸濁液Uの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-10mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-4μMと計算された。懸濁液U中の金ナノプレートのゼータ電位は−41.7 ± 2.7であった。懸濁液UのpHを室温下(20℃)で測定した結果、pH8.1であった。懸濁液Uを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調は青色調であった。最大吸収を示す波長は618nm(消光度:0.28)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.13であったので、金ナノプレートの純度指数は0.46と計算された。消光度比率より、懸濁液Uの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0033質量%であった。
懸濁液V
懸濁液Vの分散媒中のCTAC濃度は0.50×10-10mMと計算され、
PSS濃度は0.20×10-4μMと計算された。懸濁液V中の金ナノプレートのゼータ電位は−40.8 ± 1.5であった。懸濁液VのpHを室温下(20℃)で測定した結果、pH8.2であった。懸濁液Vを超純水で4倍容に希釈した懸濁液の色調は青色調であった。最大吸収を示す波長は592nm(消光度:0.11)であった。プレート状ではない多面体又は球状の金ナノ粒子の最大吸収波長である540nmの消光度は0.07であったので、金ナノプレートの純度指数は0.64と計算された。消光度比率より、懸濁液Uの金含有率の概算値は、懸濁液の総質量に対して0.0017質量%であった。
懸濁液S〜Vのゼータ電位測定は大塚電子株式会社のPhotal ELS−Zを用いた。懸濁液S〜VのpH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。懸濁液S〜Vの光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。また、懸濁液S〜Vの懸濁液の光学特性を
図33、最大吸収波長の消光度を1.0とした際の光学特性を
図34に示す。
【0055】
2.金被覆銀ナノプレートを含む懸濁液
(1)銀ナノプレート種粒子の作製
2.5mMのクエン酸三ナトリウム水溶液20mLに、0.5g/Lの分子量70,000ポリスチレンスルホン酸水溶液1mLと、10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液1.2mLとを添加し、次いで、20mL/分で攪拌しながら、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中で60分間静置し、銀ナノプレート種粒子の懸濁液を作製した。
作製した懸濁液(原液)の光学特性を
図10に示す。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。銀ナノプレート種粒子の最大吸収波長は、球状銀ナノ粒子のLSPR由来の最大吸収波長に相当する396nm(消光度3.3)であった。なお、本発明の消光度とは懸濁液を分光光度計で測定した際の吸光度の値である。また、超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図11に示す。SEM観察より、粒子径は主に3nm以上、10nm未満の粒子(アスペクト比は約1.0)であることがわかった。
【0056】
(2)銀ナノプレートの作製
超純水200mLに、10mMのアスコルビン酸水溶液4.5mLを添加し、上記(1)で作製した銀ナノプレート種粒子の懸濁液2mLをさらに添加した。得られた溶液に、0.5mMの硝酸銀水溶液120mLを30mL/分で攪拌しながら添加した。硝酸銀水溶液の添加が終了した4分後に攪拌を停止し、25mMのクエン酸三ナトリウム水溶液20mLを添加し、得られた溶液を大気雰囲気下のインキュベーター(30℃)中で100時間静置し、銀ナノプレートの懸濁液を作製した。
作製した懸濁液を超純水で4倍容に希釈した懸濁液の光学特性を
図12に示す。最大吸収を示す波長は618nm(消光度1.20)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。懸濁液中の銀ナノプレートをSEMにより観察したところ、銀ナノプレートの平均粒子径は50nmであり、平均厚さは10nmで、アスペクト比は5.0であることがわかった。SEM観察写真の解析には株式会社日立製作所製の超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70を用いた。
【0057】
(3)金被覆銀ナノプレートの作製(色調:シアン)
上記(2)で作製した銀ナノプレートの懸濁液120mLに、0.125mMのポリビニルピロリドン(PVP)(分子量:40,000)の水溶液9.1mLを添加し、0.5Mのアスコルビン酸水溶液1.6mLを添加した後、0.14mMの塩化金酸水溶液9.6mLを0.5mL/分で攪拌しながら添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中に24時間静置し、銀ナノプレートの表面が金で被覆された金被覆銀ナノプレートの懸濁液を作製した。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液の主要分散媒は水であった。この懸濁液に含まれる金被覆銀ナノプレートは、主面の最大長(粒子径)の平均が50nmの三角形状を含む多角形状、円形状であるプレートの混合物であり、厚さの平均は10nmであった。また、当該金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は0.30nmであった。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpHは、室温下(20℃)で4.0であった。pH測定は株式会社堀場製作所のTwin pHメータ B−212(ガラス電極法)を用いた。
金被覆銀ナノプレートの懸濁液の銀含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0016質量%であった。
【0058】
(4)金被覆銀ナノプレートの懸濁液のpH調整
上記(3)で得られた懸濁液の1.95mLに、200mMのリン酸緩衝生理食塩水(二価イオンを含まない;以下、「PBS(−)緩衝液」ということもある)0.05mLおよび190mMの炭酸ナトリウム水溶液0.025mLを攪拌しながら添加し、pH調整された金被覆銀ナノプレートの懸濁液(懸濁液I)を作製した。
懸濁液Iを超純水で3.4倍容に希釈した懸濁液の光学特性を
図13に示す。最大吸収を示す波長は628nm(消光度1.07)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
懸濁液Iの主要分散媒は水であった。
懸濁液Iに含まれる金被覆銀ナノプレートは、三角形状を含む多角形状であるプレートと円形状であるプレートとの混合物であり、主面の最大長の平均は50nmで、厚さの平均は10nmであった。また、懸濁液Iに含まれる金被覆銀ナノプレートにおける金の厚さの平均は0.30nmであった。超高分解能分析走査電子顕微鏡SU−70(株式会社日立製作所製)により、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った結果を
図14に示す。
懸濁液Iの3倍希釈溶液の色調はシアンであった。
懸濁液IのpHは、室温下(20℃)で7.3であった。
懸濁液Iの銀含有率は、懸濁液の総質量に対して0.0015質量%であった。
【0059】
3.PVP安定化球状金ナノ粒子の懸濁液
(1)PVP安定化球状金ナノ粒子懸濁液の作製
市販の球状金ナノ粒子(粒子径:40nm、濃度:0.0068質量%)12mLに0.125mMのポリビニルピロリドン(PVP)(分子量:40,000)の水溶液0.91mLを攪拌しながら添加した。得られた溶液をインキュベーター(30℃)中に24時間静置し、PVP安定化球状金ナノ粒子懸濁液を作製した。
(2)PVP安定化球状金ナノ粒子懸濁液のpH調整
(1)で得られた懸濁液Jの1.95mLに200mMのPBS緩衝液0.05mLおよび190mMの炭酸ナトリウム水溶液0.025mLを攪拌しながら添加し、pH調整されたPVP安定化球状金ナノ粒子懸濁液(懸濁液J)を作製した。
調製した懸濁液Jを超純水で3.8倍容に希釈した水懸濁液の光学特性を
図15に示す。最大吸収を示す波長は522nm(消光度0.38)であった。光学特性の測定は、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを用い、光路長:1cm及び測定波長:190−1300nmの条件下で行われた。
懸濁液の主要分散媒は水であった。
懸濁液Jに含まれる球状金ナノ粒子は、平均粒子径が40nmであった。
懸濁液Jの色調は赤色であった。
懸濁液JのpHは、室温下(20℃)で7.0であった。
懸濁液Jの金含有率は、懸濁液の総質量に対して質量0.0061質量%であった。
【0060】
4.イムノクロマト試験
実施例及び比較例の各懸濁液を下記手順のイムノクロマト試験を用いて、試験結果を評価した。
(1)イムノクロマト試験に使用する展開液の作製(金ナノプレートの各種懸濁液への特異的結合物質の担持;検出試薬の標識)
1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度50μg/mLのB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)に対する抗体(品名:Goat anti HBsAg、製造元:Arista Biologicals,Inc.)(イムノクロマト法における検出抗体)の溶液0.2mLと、金ナノプレートの各種懸濁液(懸濁液A〜H、S〜V)1.8mLとを混合し、得られた混合物を室温下で60分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.4mMの末端がチオール基で修飾されたポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT ME−020SH(分子量:2,000、NOF CORPORATION製)の溶液0.044mLを添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.5mMのウシ血清アルブミン(品名:Bovine Serum Albumin、略称:BSA、分子量:66kDa、製造元:Sigma−Aldrich)の溶液を0.100mL添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、この懸濁液を遠心分離(8,000×g、30℃、10分間)して抗体−金ナノプレート複合体を沈殿させ、上澄み液1.90mLを除去した。その後、抗体−金ナノプレート複合体に、1mMのPBS(−)緩衝液(4.9μMのBSA含有)を0.40mL添加して再分散させ、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを使用して消光度(Extinction)が1.0になるように調整し、展開液を作製した。
【0061】
(2)イムノクロマト試験に使用する展開液の作製(金被覆銀ナノプレートへの特異的結合物質の担持(検出試薬の標識))
1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度50μg/mLのB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)に対する抗体(品名:Goat anti HBsAg、製造元:Arista Biologicals,Inc.)(イムノクロマト法における検出抗体)の溶液0.2mLと、金被覆銀ナノプレート懸濁液(懸濁液I)1.8mLとを混合し、得られた混合物を室温下で60分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.4mMの末端がチオール基で修飾されたポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT ME−020SH(分子量:2,000、NOF CORPORATION製)の溶液0.044mLを添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.5mMのウシ血清アルブミン(品名:Bovine Serum Albumin、略称:BSA、分子量:66kDa、製造元:Sigma−Aldrich)の溶液0.100mLを添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、この懸濁液を遠心分離(26,000×g、30℃、10分間)して抗体−金被覆銀ナノプレート複合体を沈殿させ、上澄み液1.90mLを除去した。その後、抗体−金被覆銀ナノプレート複合体に、1mMのPBS(−)緩衝液(4.9μMのBSA含有)を1.90mL添加して再分散させ、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを使用して消光度(Extinction)が1.0になるように調整し、展開液I(色調:シアン)を作製した。
【0062】
(3)イムノクロマト試験に使用する展開液の作製(球状金ナノ粒子への特異的結合物質の担持;検出試薬の標識)
1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度50μg/mLのB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)に対する抗体(品名:Goat anti HBsAg、製造元:Arista Biologicals,Inc.)(イムノクロマト法における検出抗体)の溶液0.2mLと、PVP安定化球状金ナノ粒子懸濁液(懸濁液J)1.8mLとを混合し、得られた混合物を室温下で60分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.8mMの末端がチオール基で修飾されたポリエチレングリコールであるSUNBRIGHT ME−020SH(分子量:2,000、NOF CORPORATION製)の溶液0.044mLを添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、1mMのPBS(−)緩衝液中における濃度0.5mMのウシ血清アルブミン(品名:Bovine Serum Albumin、略称:BSA、分子量:66kDa、製造元:Sigma−Aldrich)の溶液0.100mLを添加し、得られた懸濁液を室温下で30分間振とうした。次いで、この懸濁液を遠心分離(4200×g、30℃、10分間)して抗体−球状金ナノ粒子複合体を沈殿させ、上澄み液1.90mLを除去した。その後、抗体−球状金ナノ粒子複合体に、1mMのPBS(−)緩衝液(4.9μMのBSA含有)を1.90mL添加して再分散させ、株式会社島津製作所製の紫外可視近赤外分光光度計MPC3100UV−3100PCを使用して消光度(Extinction)が1.0になるように調整し、展開液J(色調:赤色)を作製した。
【0063】
使用した金ナノプレートの懸濁液の物性と作製された展開液との関係を、次の表1に示す。懸濁液及び展開液のそれぞれについて、C〜H及びS〜Vが本発明の実施例に相当し、A、B、I、及びJが比較例に相当する。
【表1】
【0064】
(4)イムノクロマト試験
図16に示す手順により、B型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)を被験物質としたイムノクロマト試験を、抗HBs抗体(捕獲抗体)を直線状(
図16の検出ライン)に固定化したイムノクロマト試験紙を用いて行った。
イムノクロマト試験紙はイムノクロマト試験紙の受託作製会社(有限会社バイオデバイステクノロジー)より購入したものを使用した。捕獲抗体を直線状に固定する際、捕獲抗体を5mM PBS(−)緩衝液で濃度1mg/mLに調整したものを使用した。
第1展開液(
図16(a)で用いる展開液)は、1mMのPBS(−)緩衝液中におけるHBs抗原(品名:HBsAg Protein(Subtype adr)、製造元:Fitzgerald Industries International Inc.)の溶液であった。第1展開液として、HBs抗原の濃度が6.0μM、0.6μM、0.06μM、0.006μM、0M(ブランク)の溶液を用意した。
第2展開液は1mMのPBS(−)緩衝液であった。
第3展開液(
図16(c)で用いる展開液)は、上述の展開液A〜Jである。
【0065】
具体的な試験手順は以下の通りであった。
イムノクロマト試験紙に、第1展開液15μLを展開させた(
図16(a))。第1展開液の展開により、HBs抗原が試験紙の検出ライン上に固定化された捕獲抗体によって捕獲される(
図16(b))。
次いで、第2展開液30μLを展開させて、イムノクロマト試験紙上の余剰抗原の洗浄を行った。
最後に、第3展開液60μLを展開させた(
図16(c))。第3展開液の展開により、試験紙の検出ライン上で捕獲されたHBs抗原へ検出抗体(抗体−PSS被覆金ナノプレート複合体など)が結合する(
図16(d))。
同一の手順をHBs濃度の異なる第1展開液ごとに繰り返した。
【0066】
(5)イムノクロマト試験の目視判定による評価
第3展開液展開後の検出ラインにおける金属ナノ粒子の着色を目視で確認することにより、HBs抗原の有無を判定した。結果を次の表2に示す。
【表2】
++:検出ラインにおける濃い着色を確認できた。
+:検出ラインにおける着色を確認できた。
−:検出ラインにおける着色を確認できなかった。
【0067】
(6)イムノクロマト試験の輝度解析による評価
第3展開液展開後のイムノクロマト試験紙をスキャニング(装置名:Cano Scan LiDE500F、製造元:キヤノン株式会社)し、検出ライン(捕獲抗体の固定化部分)の最低輝度と、検出ライン以外の部分(対照領域)の最低輝度とを画像解析ソフト(Image−J:アメリカ国立衛生研究所でWayne Rasbandが開発したオープン・ソースで公有の画像処理ソフトウェア(http://imagej.nih.gov/ij/))を用いて数値化した。最低輝度は、検出ラインと対照領域における異なる5箇所の輝度をそれぞれ1回ずつ測定し、得られた数値の中央値を採用した。輝度差(検出ラインの最低輝度−対照領域の最低輝度)を計算し、結果を次の表3に示す。
【0068】
【表3】
各展開液の欄の数値は輝度差を示す。
【0069】
(7)イムノクロマト試験後の乾燥耐性試験
第1展開液中のHBs抗原濃度が6.0μMであり、第3の展開液展開後のイムノクロマト試験紙を温度20℃、湿度50%の室内で乾燥させた。乾燥開始時(0時間)、乾燥開始後24時間、48時間、168時間、720時間、720時間、2160時間経過時にイムノクロマト試験紙をスキャニング(装置名:Cano Scan LiDE500F、製造元:キヤノン株式会社)し、得られた画像をビットマップ画像編集ソフトウェアのAdobe Photoshopで取り込み、検出ライン、及び対象領域(検出ライン又は検出ライン以外の部分)のCIELAB D50を測定した。検出ラインと対象領域の色差(ΔE)を、次の式1より算出した。
(式1)色差算出式
ΔE=√(ΔL
2+Δa
2+Δb
2)
ΔL=L
1−L
2
Δa=a
1−a
2
Δb=b
1−b
2
(補色空間の一種であるLab色空間において、L値は明度を示し、a値及びb値は色味の強弱を示す。a値がプラスのときは赤味を示し、マイナスのとき緑味を示す。b値がプラスのときは黄味を示し、マイナスのときは青紫味を示す。式1中、L
1は検出ラインのL値、L
2は対照領域のL値、a
1は検出ラインのa値、a
2は対照領域のa値、b
1は検出ラインのb値、そして、b
2は対照領域のb値をそれぞれ意味する。)
【0070】
色差算出結果を次の表4に示す。
【表4】
N.D.:データなし
【0071】
イムノクロマト試験において、抗体を担持していない金ナノプレートを含む第3展開液を使用しても検出ラインの着色は観察されず、輝度差も生じていなかったが(データは掲載せず)、懸濁液C〜H又はS〜Vに由来する抗体を担持した金ナノプレートを含む第3展開液を使用すると、抗体を担持した金被覆銀ナノプレートや抗体を担持した球状の金ナノ粒子を含む第3展開液を使用した場合と同様に、目視で判定可能な明瞭なラインが観察され、顕著な輝度差も測定された。特に、前記金ナノプレートを使用した場合には、速やかに検出ラインが出現した。これに対して、懸濁液A及びBに由来する抗体を担持した金ナノプレートを含む第3展開液を使用すると、検出ラインの着色は観察されず、輝度差も生じていなかった。これは、CTACが、金ナノプレート上への抗体の担持を阻害したからであると考えられる。すなわち、CTACのヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオンが金ナノプレート表面で二重層を形成することで、当該カチオンが金ナノプレートの最表面を覆い、ゼータ電位がプラスになると、抗体もプラスの電荷を有しているため、金ナノプレートと抗体とが反発し合い、金ナノプレート上への抗体の担持が阻害される。一方、ポリアニオン系高分子であるPSSを用いた処理や、それに次ぐクエン酸処理を施すことで、組成物中のCTACの濃度を低減させるとともに、金ナノプレート表面をこれらの物質で覆うと、金ナノプレートのゼータ電位がマイナスとなり、当該金ナノプレート上に抗体を担持させることが可能となる。
本実施例のイムノクロマト試験と同様の結果は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などの他の被験物質を対象としたイムノクロマト試験においても得ることができたので、本発明の利点は、特定の実施態様に限定されるべきものではないと理解される。
【0072】
以上より、金ナノプレートの平均アスペクト比(金ナノプレートの最大長さを厚さで割った値)が1より大きく10以下の範囲になるように金ナノプレートを作製し、N+(R)4(各Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される)で表される第四級アンモニウムカチオンの濃度が1mM以下になるように組成物を作製すれば、可視光域に最大吸収波長を有し、かつ、抗体などの被験物質に対する特異的結合物質を容易に担持することのできる金ナノプレートを含む組成物を提供することができることがわかった。