特許第6294605号(P6294605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294605
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20180305BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20180305BHJP
   B63C 9/125 20060101ALI20180305BHJP
   B63B 7/08 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
   F16K15/06
   F16K15/14 A
   B63C9/125 100
   !B63B7/08 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-166287(P2013-166287)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34611(P2015-34611A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005393
【氏名又は名称】藤倉航装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀切忠志
(72)【発明者】
【氏名】柿本慎一郎
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−27451(JP,U)
【文献】 特開2001−248740(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3079258(JP,U)
【文献】 実開昭54−153020(JP,U)
【文献】 特開2006−266470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/06
F16K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気吸入口側の筒状のバルブ・ガイド及び給気吐出口からテーパー状に広がるバルブ・シートを備えたバルブ・ハウジングと、
前記バルブ・ガイド内に筒軸方向に移動可能に支持ガイドされ給気吸入口側から給気吐出口側への給気流通を可能とする給気通路を備えたバルブ基部とこのバルブ基部から前記給気吐出口側へ延設されたバルブ・ステムとこのバルブ・ステムに取り付けられ前記給気吐出口外から前記バルブ・シートに接離する弾性封止部とを備えたバルブ可動体と、
前記バルブ基部と前記バルブ・ハウジングとの筒軸方向間に介設され前記バルブ可動体を付勢して前記弾性封止部を前記バルブ・シートに弾接させるスプリングと、
を備え人の口からの給気を前記給気吸入口側から可能とした逆止弁であって、
前記バルブ可動体は、前記弾性封止部に隣接して形成され前記給気吐出口に筒軸方向へ離脱移動可能且つ通気可能に嵌合する肩部を備え、
前記肩部は、前記給気吐出口外から嵌合するように移動するとき該弾性封止部の外周縁よりも先に前記バルブ・シートに当接してガイドされる被ガイド周縁部が前記弾性封止部の筒軸方向反対側に形成されている、
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項1記載の逆止弁であって、
前記肩部は、前記被ガイド周縁部から前記バルブ・ステムに至るテーパー部を備え、
このテーパー部のテーパー率は、前記バルブ・シートと同等に形成された、
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の逆止弁であって、
前記バルブ可動体は、前記肩部が前記給気吐出口に遊嵌する構造とし、又は前記肩部に溝を形成し、若しくは前記給気吐出口に溝を形成し、前記通気可能に嵌合する構造とした、
ことを特徴とする逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気室を備えた救命具等の給気部に使用する逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、救命具等として、特許文献1に記載の図6に示す首掛け式救命具がある。この首掛け式救命具101は、気室103とベルト105とを備えている。気室103は、気体の流入により膨張し、浮力を増大させることができる。ベルト105は、首掛け式救命具101を装着者の腰部に締め付け装着できるようにするものである。
【0003】
気室103には、樹脂などの給気パイプ107が結合され、給気パイプ107の自由端側を装着者が口にくわえて給気できるようになっている。給気パイプ107の自由端側には、逆止弁109が差し込み装着され、気室103から給気パイプ107を通した給気の漏れを封止する。
【0004】
したがって、装着者は、気室103の膨張による浮力で、頭部を水面へ浮上させることができる。
【0005】
図7は、逆止弁の半断面図、図8(A)は、バルブ可動体により給気吐出口が正しく閉止された状態の一部省略の断面図、(B)は、バルブ可動体が傾いた状態の一部省略の断面図である。
【0006】
図7図8のように、逆止弁109は、バルブ・ハウジング111とバルブ可動体113とスプリング115とを備えている。
【0007】
バルブ・ハウジング111は、給気吸入口116側の筒状のバルブ・ガイド117及び給気吐出口119からテーパー状に広がるバルブ・シート121を備えている。
【0008】
バルブ可動体113は、吸気通路123を備えたバルブ基部125とバルブ・ステム127とゴム製などの弾性封止部129とからなっている。
【0009】
したがって、装着者が、給気パイプ107をくわえ、逆止弁109の給気吸入口116側から息を矢印Aのように吹き込むと給気通路123を通る給気が給気吐出口119から弾性封止部129に到達する。この給気の到達により弾性封止部129が圧力を受け、スプリング115の付勢力に抗してバルブ可動体113が筒軸方向に移動し、弾性封止部129の外周縁129aとバルブ・シート121との間から気室103内側へ空気供給され、気室103が膨張する。
【0010】
気室103内の空気圧Pが弾性封止部127に作用すると、図8(A)のように弾性封止部129の外周縁129aがバルブ・シート121に密着し逆止弁として機能する。
【0011】
しかし、バルブ可動体113がバルブ・ハウジング111に対して筒軸方向に移動することを可能とするため、バルブ可動体113のバルブ基部125とバルブ・ハウジング111との間に多少のガタがあり、図8(B)のようにバルブ可動体113が傾き、弾性封止部129の外周縁129aとバルブ・シート121との間の摩擦が影響して傾いた状態のままとなり、矢印Bのように気室103からの空気の漏れを招く恐れがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】特開2006−15817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする問題点は、バルブ可動体が傾いて気室からの空気の漏れを招く恐れがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、バルブ可動体の傾きを抑制し、気室からの空気の漏れを規制することを可能とするため、給気吸入口側の筒状のバルブ・ガイド及び給気吐出口からテーパー状に広がるバルブ・シートを備えたバルブ・ハウジングと、前記バルブ・ガイド内に筒軸方向に移動可能に支持ガイドされ給気吸入口側から給気吐出口側への給気流通を可能とする給気通路を備えたバルブ基部とこのバルブ基部から前記給気吐出口側へ延設されたバルブ・ステムとこのバルブ・ステムに取り付けられ前記給気吐出口外から前記バルブ・シートに接離する弾性封止部とを備えたバルブ可動体と、前記バルブ基部と前記バルブ・ハウジングとの筒軸方向間に介設され前記バルブ可動体を付勢して前記弾性封止部を前記バルブ・シートに弾接させるスプリングと、を備え人の口からの給気を前記給気吸入口側から可能とした逆止弁であって、前記バルブ可動体は、前記弾性封止部に隣接して形成され前記給気吐出口に筒軸方向へ離脱移動可能且つ通気可能に嵌合する肩部を備え、前記肩部は、前記給気吐出口外から嵌合するように移動するとき該弾性封止部の外周縁よりも先に前記バルブ・シートに当接してガイドされる被ガイド周縁部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記手段としたため、被ガイド周縁部が弾性封止部の外周縁よりも同時又は先に前記バルブ・シートに当接してガイドされ、バルブ可動体の傾きを抑制することができる。このため、弾性封止部の外周縁がバルブ・シートに正しく密着して逆止弁として正しく機能し、気室からの空気の漏れを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は、バルブ可動体により給気吐出口が正しく閉止された状態の一部省略の断面図、(B)は、バルブ可動体が一時的に傾いた状態の一部省略の断面図である。(実施例1)
図2】バルブ基部を示す概略断面図である。(実施例1)
図3】給気吐出口部分の断面図である。(実施例1)
図4】給気吐出口部分の変形例に係る断面図である。(実施例1)
図5】給気吐出口部分の他の変形例に係る断面図である。(実施例1)
図6】首掛け式救命具の全体図である。(従来例)
図7】逆止弁の半断面図である。(従来例)
図8】(A)は、バルブ可動体により給気吐出口が正しく閉止された状態の一部省略の断面図、(B)は、バルブ可動体が傾いた状態の一部省略の断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0017】
バルブ可動体の傾きを抑制し、気室からの空気の漏れを規制することを可能にするという目的を、給気吸入口側の筒状のバルブ・ガイド及び給気吐出口からテーパー状に広がるバルブ・シートを備えたバルブ・ハウジングと、前記バルブ・ガイド内に筒軸方向に移動可能に支持ガイドされ給気吸入口側から給気吐出口側への給気流通を可能とする給気通路を備えたバルブ基部とこのバルブ基部から前記給気吐出口側へ延設されたバルブ・ステムとこのバルブ・ステムに取り付けられ前記給気吐出口外から前記バルブ・シートに接離する弾性封止部とを備えたバルブ可動体と、前記バルブ基部と前記バルブ・ハウジングとの筒軸方向間に介設され前記バルブ可動体を付勢して前記弾性封止部を前記バルブ・シートに弾接させるスプリングとを備えた逆止弁であって、前記バルブ可動体は、前記弾性封止部に隣接して形成され前記給気吐出口に筒軸方向へ離脱移動可能且つ通気可能に嵌合する肩部を備え、前記肩部は、前記弾性封止部の筒軸方向反対側に該弾性封止部の外周縁よりも同時又は先に前記バルブ・シートに当接してガイドされる被ガイド周縁部を備えたことを特徴とする。
【0018】
前記肩部は、前記被ガイド周縁部から前記バルブ・ステムに至るテーパー部を備え、このテーパー部のテーパー率は、前記バルブ・シートと同等に形成されてもよい。
【0019】
前記バルブ可動体は、前記肩部が前記給気吐出口に遊嵌する構造とし、又は前記肩部に溝を形成し、若しくは前記給気吐出口に溝を形成し、前記通気可能に嵌合する構造としてもよい。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明実施例1に係り、(A)は、バルブ可動体により給気吐出口が正しく閉止された状態の一部省略の断面図、(B)は、バルブ可動体が一時的に傾いた状態の一部省略の断面図、図2は、バルブ基部を示す概略断面図、図3は、給気吐出口部分の断面図、図4は、給気吐出口部分の変形例に係る断面図、図5は、給気吐出口部分の他の変形例に係る断面図である。
【0021】
図1の本実施例の逆止弁1も、基本的な構造は図7図8の逆止弁109と同様であり、又取り付け位置も図6の首掛け式救命具101の給気パイプ107に同様に取り付けられる。したがって、本実施例も、首掛け式救命具101については図6を用いる。
【0022】
図1のように、本実施例の逆止弁1も、バルブ・ハウジング3とバルブ可動体5とスプリング7とを備えている。
【0023】
バルブ・ハウジング3は、給気吸入口9側の筒状のバルブ・ガイド11及び給気吐出口13からテーパー状に広がるバルブ・シート15を備えている。
【0024】
バルブ可動体5は、バルブ基部17とバルブ・ステム19とパッキン21とからなっている。
【0025】
図2のように、バルブ基部17は、バルブ・ステム19の軸方向の一端部に4枚の羽根部23を放射方向へ配置して構成したものである。バルブ基部17は、4枚の羽根部23においてバルブ・ガイド11内に筒軸方向に移動可能に支持ガイドされている。このバルブ基部17は、4枚の羽根部23間において、給気吸入口9側から給気吐出口13側への給気流通を可能とする給気通路25を構成する。
【0026】
バルブ・ステム19は、バルブ基部17から給気吐出口13側へ延設されている。
【0027】
弾性封止部としてのパッキン21は、ゴムなどの弾性体で形成され、バルブ・ステム19の他端部に取り付けられている。このパッキン21は、外周縁21aがバルブ・シート15に接離するようになっている。外周縁21aがバルブ・シート15に弾接して給気吐出口13を閉止する。
【0028】
スプリング7は、バルブ基部17とバルブ・ハウジング3との筒軸方向間に介設されバルブ可動体5を給気吸入口9側へ付勢してパッキン21をバルブ・シート15に弾接させるものである。
【0029】
一方、本発明実施例の特徴的な部分は、バルブ可動体5が、パッキン21に隣接して備えた肩部27を備え、この肩部27に被ガイド周縁部29を備えている。
【0030】
肩部27は、パッキン21取り付け用の頭部31及び首部33に連続して形成され、断面円形に形成され、図1図3のように、給気吐出口13に筒軸方向へ離脱移動可能且つ通気可能に嵌合する。
【0031】
バルブ可動体5は、肩部27が給気吐出口13に通気可能に嵌合する構造として、肩部27が給気吐出口13に遊嵌する構造とした。つまり、肩部27と給気吐出口13との間に適度な隙間35形成されている。給気吐出口13は、内周面を備え、肩部27を安定的にガイドするようになっている。
【0032】
肩部27が給気吐出口13に通気可能に嵌合する構造としては、その他、図4のように肩部27に筒軸方向の溝37を形成し、或いは図5のように給気吐出口13に筒軸方向の溝39を形成する構造としてもよい。
【0033】
被ガイド周縁部29は、パッキン21に対して肩部27の筒軸方向反対側の端部に形成されている。被ガイド周縁部29は、バルブ可動体5の肩部27が給気吐出口13外から給気吐出口13に嵌合するように移動するとき、パッキン21の外周縁21aと先にバルブ・シート15に当接してガイドされるようになっている。被ガイド周縁部29とバルブ・シート15との間の摩擦係数は、パッキン21とバルブ・シート15との間の摩擦係数よりも低く形成され、被ガイド周縁部29がバルブ・シート15に当接すると容易に滑るように構成されている。このため、被ガイド周縁部29側を含むバルブ・ステム19は、樹脂などで形成されている。被ガイド周縁部29がバルブ・シート15に当接すると容易に滑る限り、バルブ・ステム19側の材質は限定されず、金属、その他で形成することもできる。
【0034】
図1のように、被ガイド周縁部29からバルブ・ステム19に至ってテーパー部41が形成されている。このテーパー部41のテーパー率は、バルブ・シート15と同等に形成されている。ただし、テーパー部41のテーパー率は、バルブ・シート15よりも大きく、又は小さく形成することもできる。
【0035】
したがって、装着者が、給気パイプ107(図6)をくわえ、逆止弁1の給気吸入口9側から息を矢印Aのように吹き込むと給気通路25を通る給気が給気吐出口13からパッキン21に到達する。この給気の到達によりパッキン21が圧力を受け、スプリング7の付勢力に抗してバルブ可動体5が筒軸方向に移動し、パッキン21の外周縁21aとバルブ・シート15との間から給気が気室103(図6)内へ供給され、気室103が膨張する。
【0036】
気室103内の空気圧Pがパッキン21に作用すると、図1(A)のようにパッキン21の外周縁21aがバルブ・シート15に密着し逆止弁として機能する。
【0037】
バルブ可動体5が傾いて移動するとき、本実施例においては、図1(B)のように被ガイド周縁部29及びテーパー部41がバルブ・シート15に当接してガイドされ、肩部27の外周が給気吐出口13に嵌合し、図1(A)の状態となる。
【0038】
したがって、バルブ可動体5が傾いた状態のままパッキン21の外周縁21aがバルブ・シート15に密着固定されることはなく、パッキン21の外周縁21aをバルブ・シート15に正しく密着させることができる。
【0039】
[その他]
逆止弁1は、ウエストポーチ式救命具、その他の救命具、救命具以外のものにも同様に採用可能である。
【0040】
被ガイド周縁部29は、バルブ可動体5の肩部27が給気吐出口13外から給気吐出口13に嵌合するように移動するとき、パッキン21の外周縁21aよりも先にバルブ・シート15に当接してガイドされるものであれば、形状等は特に限定されない。図1(B)の状態で、被ガイド周縁部29のみがバルブ・シート15にガイドされる構造でもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 逆止弁
3 バルブ・ハウジング
5 バルブ可動体
7 スプリング
9 給気吸入口
11 バルブ・ハウジング
13 給気吐出口
15 バルブ・シート
17 バルブ基部
19 バルブ・ステム
21 弾性封止部
21a 弾性封止部の外周縁
27 肩部
29 被ガイド周縁部
41 テーパー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8