(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略の平面図である。
液晶表示装置は、液晶表示パネルPNLと、液晶表示パネルPNLを背面側から照明するバックライトBLTと、を備えている。そして液晶表示パネルPNLには、マトリクス状に配置された表示画素PXを含む表示部が設けられている。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る液晶表示装置の液晶表示パネルPNLの表示画素部の断面を示す図である。
【0016】
液晶表示パネルPNLは、アレイ基板100、対向基板200と、この一対の基板100、200間に挟持された液晶層LQとを備えている。
【0017】
対向基板200には、透明絶縁性基板SB2、カラーフィルタ層CF、及びオーバコート層L2が設けられている。カラーフィルタ層CFは、透明絶縁性基板SB2上に配置された赤(R)、緑(G)、青(B)各色の着色層を含んでいる。オーバコート層L2は、カラーフィルタ層CFを覆って設けられ、カラーフィルタ層CFに含まれる物質が液晶層LQへ流出することを防止する。
【0018】
アレイ基板100は、透明絶縁性基板SB1、対向電極(第1電極)COM、及び複数の画素電極(第2電極)PEを備えている。画素電極PEは、窒化シリコン(SiN)等の絶縁層L1を介して対向電極COM上に配置されている。画素電極PEは表示画素PX毎に配置され、スリット状の開口部SLTが形成されている。対向電極COMと画素電極PEとは、例えばITO(Indium Tin Oxide)によって形成された透明電極である。
【0019】
図1に示すように、アレイ基板100は、表示部において、複数の表示画素PXが配列する行に沿って延びる走査線GL(GL1、GL2…)と、複数の表示画素PXが配列する列に沿って延びる信号線SL(SL1、SL2…)と、走査線GLと信号線SLが交差する位置近傍に配置された画素スイッチSWとを備えている。
【0020】
画素スイッチSWは薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を備えている。画素スイッチSWのゲート電極は対応する走査線GLと電気的に接続されている。画素スイッチSWのソース電極は対応する信号線SLと電気的に接続されている。画素スイッチSWのドレイン電極は対応する画素電極PEと電気的に接続されている。
【0021】
アレイ基板100は、複数の表示画素PXを駆動する駆動手段として、ゲートドライバGD(左側GD−Lおよび右側GD−R)とソースドライバSDとを備えている。複数の走査線GLはゲートドライバGDの出力端子と電気的に接続されている。複数の信号線SLはソースドライバSDの出力端子と電気的に接続されている。
【0022】
ゲートドライバGDとソースドライバSDとは、表示部の周囲の領域に配置されている。ゲートドライバGDは複数の走査線GLにオン電圧を順次印加して、選択された走査線GLに電気的に接続された画素スイッチSWのゲート電極にオン電圧を供給する。ゲート電極にオン電圧が供給された画素スイッチSWの、ソース電極−ドレイン電極間が導通する。ソースドライバSDは、複数の信号線SLのそれぞれに対応する出力信号を供給する。信号線SLに供給された信号は、ソース電極−ドレイン電極間が導通した画素スイッチSWを介して対応する画素電極PEに印加される。
【0023】
ゲートドライバGDとソースドライバSDとは、液晶表示パネルPNLの外部に配置された制御回路CTRにより動作を制御される。また制御回路CTRは、対向電極COMに対向電圧Vcomを供給している。さらに制御回路CTRは、バックライトBLTの動作を制御する。
【0024】
制御回路CTRは、通常駆動のほかに駆動電力低減のために間欠駆動の機能を備えている。なお、画素の映像信号書き換えが行われる時間間隔を「フレーム周期」あるいは「1フレーム」と呼び、その逆数を「フレーム周波数」と呼ぶが、本願においては低周波駆動、間欠駆動に関しても、同様に呼ぶものとする。
【0025】
一例として液晶表示装置の標準のフレーム周波数が60Hz(すなわち(1/60)secごとに画素への映像信号の書き換えが行われる)であるとする。動画表示の場合には標準の60Hzでの動作とするが、動画視認性がそれほど重視されない静止画像などを表示する場合には、制御回路CTRは、間欠駆動を実行する。
【0026】
制御回路CTRは、(1/60)secをかけて書き込み動作(画面の上から下までの走査)を行った後に、例えば(1/60)sec、(3/60)sec、(7/60)sec、あるいは(59/60)secの休止期間を設ける。休止期間において制御回路CTRの書き込み動作を停止すればその間の回路消費電力は実質0になり、書き込み時も含めた時間平均としての回路消費電力はそれぞれ、1/2、1/4、1/8、あるいは1/60に低減される。
【0027】
本実施の形態に係る液晶表示装置は、対向電極COMと画素電極PEとに印加される電圧の電位差により、液晶層LQに電界を生じさせ、液晶層に含まれる液晶分子の配向方向を制御するFFS(Fringe−Field Switching)モードの液晶表示装置である。液晶分子の配向方向により、バックライトBLTから出射される光の透過光量が制御される。
【0028】
図2に示すように、画素電極PEと対向電極COMとが絶縁層L1を挟んで対向する部分には、容量成分Cs0が発生する。この他に液晶層LQ内に回り込む電界に対応する補助容量成分Cs1および液晶容量Clcも存在する。画素電極PEと対向電極COM間に存在する全容量をCsと表すと、
図1に示すようにTFTのドレインと対向電極COMの間に容量Csを挟みこんだ等価回路で表現することができる。
【0029】
次に、フリッカを低減するための駆動方式について説明する。
【0030】
液晶材料は長時間DC電圧を印加しておくとチャージアップにより表示特性に経時変化が生じるため、1フレーム毎に正負極性を反転させてDC平均がほぼ0になるようにして駆動するフレーム駆動が一般的である。しかし、正負での応答特性(輝度−電圧特性)にずれがあると正負フレームでの輝度が異なり、1フレーム毎に明暗の差が生じてフリッカ(ちらつき)が発生する。信号の正負平均(DC平均値)に微小なオフセット電圧を加えたり、対向電極電位を調整したりすることでフリッカを極小化することは可能であるが、経時的な輝度−電圧特性のシフトや階調間の最適条件のずれなども完全に吸収してフリッカを皆無にすることは困難である。
【0031】
このようなフリッカを低減するための手段として、例えばライン反転、カラム反転、ドット反転などの反転駆動が知られている。例えばライン反転では、時間的な正負極性反転の位相を1行毎に逆にして分布させることにより、正負での輝度応答の差を巨視的に相殺して、フリッカが視認されないようにすることができる。カラム反転やドット反転も同様であり、前者は1列毎に、後者は市松パターン状に正負極性反転の位相を逆にすることでフリッカが視認されないようにすることができる。
【0032】
これらの反転方式のうちライン反転とドット反転は画面走査時に1ライン毎に極性反転しながら画素への書き込みを行うため、1H期間(1水平周期)毎にパネル内の信号線の充放電を行う必要があり、回路消費電力が大きくなる。一方、カラム反転は行方向の極性反転が無いため回路消費電力低減という観点で有利である。モバイル用液晶表示装置においては製品仕様に応じて各種反転方式が採用されるが、電力低減という観点ではカラム反転方式が最も望ましい。
【0033】
続いて、液晶表示装置の輝度応答波形について説明する。上述のような間欠駆動方式では各画素PXに画素電圧を書き込んだ後、その画素電圧を長時間保持することが必要である。そのため、TFTのオフリーク電流による輝度変化の対策が必要となる。
【0034】
図3は、本実施の形態に係る液晶表示装置の輝度変化の一例を示す図である。
図3(a)は、画素電圧Vd、信号線電圧Vs、ゲート電圧Vgの推移を示し、
図3(b)は、液晶の輝度の推移を示す図である。
【0035】
1フレームの走査期間において、ソースドライバSDは、信号線SLに画像信号に対応する信号線電圧Vsを出力する。続いて、ゲートドライバGDは、走査線GLにTFTをオンするゲート電圧Vgを出力する。これによって、画素電圧Vdは、信号線電圧Vsと等しくなり、この結果画素の輝度は所望の値となる。
【0036】
1フレームの休止期間においては、ゲート電圧VgはTFTをオフするレベルとなり、短期的には画素電圧Vdは信号線電圧Vsに保持される。しかし、休止期間が長期にわたる場合は、TFTのオフリーク電流(例えば、TFTのドレインからソースに漏洩して流れる電流)により画素電圧Vdは低下する。この結果、休止中において画素の輝度は低下する。
【0037】
次のフレームが開始され、新たな信号線電圧Vsによって画素電圧Vdが書き換えられると、画素の輝度は所望の値に復帰する。なお、
図3(a)では、次のフレームにおいて画素電圧Vdの極性が変化しているがこれはフレーム反転駆動を行っているためである。このTFTオフリーク電流による輝度変化がフレーム毎に繰り返されることでフリッカが視認される。
【0038】
なお、
図3(b)に示す輝度は、所望の輝度が1となるように規格化して表している。この規格化された輝度がTFTのオフリーク電流により低下する量を、規格化輝度振幅PP値と呼ぶ。
【0039】
ところで、一般に人間の視覚におけるフリッカ視認感度は周波数依存を持つことが知られており、同振幅の輝度変動であっても周波数が低くなるほどフリッカとして視認されやすいという特徴がある。
【0040】
図4は、フリッカが視認されない規格化輝度振幅PP値の上限値とフレーム周波数との関係を主観評価により求めて表した図である。フレーム周波数が40Hzを超えるところでグラフが急峻に立ち上がっている。これはフレーム周波数が40Hzより大きい周波数であれば輝度振幅が大きくてもフリッカとして視認されないが、フレーム周波数が40Hz以下の周波数では輝度振幅が小さくてもフリッカとして視認されることを示している。
【0041】
この主観評価の結果を参照すると、仮に
図3(b)の振幅の輝度変動がある場合、一般的なフレーム周波数60Hzの場合にはフリッカが視認されなくても40Hz以下にまで下げるとフリッカが視認されると考えられる。
【0042】
図5は、リーク電流の異なるTFTについて生じる輝度振幅を、
図4に示す特性図に重ねて表した図である。曲線Aは、リーク電流(I(off))が1×10
−15(A)の場合のフレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。曲線Bは、従来使用していたTFTの特性であって、リーク電流(I(off))が1×10
−13(A)の場合のフレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。曲線Cは、リーク電流(I(off))が1×10
−12(A)の場合のフレーム周波数と輝度振幅との関係を示している。
【0043】
曲線A−Cの内、フリッカが視認されない上限値を示す特性曲線Lよりも上の領域内でフリッカが視認される。リーク電流が増加するにつれて高いフレーム周波数においてもフリッカが視認されることがわかる。また曲線B(従来のTFT)では、40Hz以下のフレーム周波数で、フリッカが視認されている。1Hzでフリッカが視認されないためには、曲線Aに示すように、リーク電流が1×10
−15(A)以下となることが条件である。
【0044】
従って、
図5に基づいて、使用するフレーム周波数帯に応じて使用するTFTを選定することで、フリッカが視認されないようにすることができる。
【0045】
ここで、低周波駆動時における輝度変動の対応を検討する際に使用する対称成分と反対称成分とについて説明する。
【0046】
図6は、本実施の形態の液晶表示装置における対称成分と反対称成分とを説明するための図である。
【0047】
図6(a)は、フレーム周期50msec(フレーム周波数20Hz)で駆動したときの1画素の輝度応答である。図中の縦軸は輝度を表し、横軸は時間を表している。なお、輝度は、平均値が1となるように規格化している。画素に書き込まれる映像信号の極性は1フレーム毎に反転しており、それぞれ矢印で示した区間が負フレームおよび正フレームに対応する。
【0048】
図6(a)に示す輝度応答では、正フレームでは輝度値が約1.3まで上昇するが、負フレームでは輝度値が約0.8まで下降し、正負フレームで輝度が大きく異なっている。これは、正極の電圧と負極の電圧とで液晶の応答が異なるためである。
【0049】
ここで、対称成分とは、正フレームの輝度波形と負フレームの輝度波形との平均の波形である。フレーム毎に同じ波形(対称な波形)が繰り返すため、対称成分なる名称が付されている。
図6(b)に対称成分の例を示している。もし、対称波形がフラット(平坦)な特性である場合は、平均化されることでフラットな特性になることを表しているため、上述のようにライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動することにより輝度振幅がない(フリッカが生じない)として視認され得る。しかし、対称成分の波形はフラットな特性でない。従って、対称成分は、反転駆動によっても解消されない成分である。
【0050】
一方、反対称成分とは、正フレームの輝度波形と負フレームの輝度波形との平均の波形をもとめ、この平均の波形を0として(基準として)表した波形である。従って、正の波形と負の波形とが現れる。このことから反対称成分なる名称が付されている。
図6(c)に反対称成分の例を示している。もし、反対称成分が基準線に対して対称な特性である場合は、上述のようにライン反転、カラム反転、ドット反転などで駆動することにより輝度振幅がない(フリッカが生じない)として視認される。反対称成分は基準線に対して対称である。従って、反対称成分は、反転駆動によって解消可能な成分である。
【0051】
上述の検討結果からTFTリークによる輝度変動は対称成分であり、従って反転駆動によって解消することができない。
【0052】
以上、低周波駆動時においてフリッカが視認される原因であるTFTリークについて説明した。しかし、フリッカが視認される原因には、このTFTリークの他にセルに起因するものが存在する。発明者らはセル起因のフリッカを低減するための検討を重ね、フリッカ発生に液晶及び配向膜のインピーダンスが影響していることを明らかにした。
【0053】
図7は、本実施の形態の液晶表示装置における液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因する液晶保持電圧の変化を説明するための図である。
【0054】
図7(a)に示す液晶パネルの等価回路のモデルでは、画素電極PEと対向電極COMとが対向する部分に存在する保持容量Cs、液晶層LQ内に回り込む電界に対応する配向膜の容量C2、及び液晶容量Clで構成されている。また、液晶容量Cl、容量C2に並列にそれぞれ抵抗R1、R2が設けられている。なお、保持容量Cs、容量C2、液晶容量Clは、それぞれ
図2に示す容量成分Cs0、Cs1およびClcに対応している。
【0055】
次に、
図7(b)を参照しつつ、液晶及び配向膜のインピーダンス不整合に起因する液晶保持電圧の変化を説明する。
【0056】
ケース1では、液晶及び配向膜のインピーダンスが不整合(R1・C1<R2・C2)である。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電するが、放電によるV1+V2の減衰分を補うように保持容量Csから電荷が供給される。しかし、放電による電荷減少は液晶保持電圧V1側が大きいのに対し、電荷供給は等量に配分されるため、V1は時間と共に減少し、V2は時間とともに増大する。従って、ケース1では液晶保持電圧は減衰し、輝度変動が生ずる。
【0057】
ケース2では、液晶及び配向膜のインピーダンスが整合(R1・C1≒R2・C2)している。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電するが、インピーダンスが整合しているため、放電の時定数が同じである。このため、放電による電荷減少と保持容量Csからの電荷供給とがバランスし、V1及びV2は一定の状態を維持する。従って、ケース2では、輝度変動が低減しフリッカが改善する。
【0058】
ケース3では、液晶及び配向膜のインピーダンスが不整合(R1・C1>R2・C2)である。この場合、TFTがOFFとなり画素電圧保持状態になると、液晶、配向膜はそれぞれ独立に放電するが、放電によるV1+V2の減衰分を補うように保持容量Csから電荷が供給される。しかし、放電による電荷減少は配向膜電圧V2側が大きいのに対し、電荷供給は等量に配分されるため、V2は時間と共に減少し、V1は時間とともに増大する。従って、ケース3では液晶保持電圧は増加し、輝度変動が生ずる。
【0059】
以上の回路モデルに基づき液晶保持電圧の変化をシミュレーション計算によって確認した。
【0060】
図8は、本実施の形態の液晶表示装置におけるシミュレーションに用いた回路モデルと、計算条件とを示す図である。
図8(a)は、回路モデルを示し、
図8(b)は、計算条件を示している。なお、計算条件では間欠駆動としてフレーム周期0.5秒(フレーム周波数2Hz)を使用した。
【0061】
図9は、本実施の形態の液晶表示装置における保持期間の液晶印加電圧変化率のシミュレーション結果を示す図である。
図9では、配向膜抵抗率と液晶抵抗率とに対応して液晶印加電圧変化率を示している。なお、液晶印加電圧変化率は、保持期間において低下または増加した液晶印加電圧の割合を表す指数であり、(Vf−Vi)/Viとして定義される値である。
【0062】
図9の中央部は、液晶印加電圧変化率が最も小さい領域である。配向膜抵抗率が小さくなるにつれて、実線の矢印で示すように液晶印加電圧変化率は増加する。液晶抵抗率が小さくなるにつれて、点線の矢印で示すように液晶印加電圧変化率は減少する。このシミュレーション結果からも、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合することによって1フレーム内の輝度変動を低減できることがわかる。
【0063】
なお、フリッカが視認されない1フレーム内の輝度傾斜の絶対値の上限値を主観評価により求めると0.03を得た。従って、
図9に示すシミュレーション結果に基づいて、配向膜及び液晶の抵抗率(Ω・cm)を選定することで、1フレーム内の傾斜輝度の絶対値を0.03以下とすることができる。
【0064】
以上、説明したことから、フレーム周波数、TFTオフリーク電流、液晶及び配向膜のインピーダンスを組み合わせることでフリッカを低減する液晶表示装置を実現することができる。
【0065】
図10は、本実施の形態の液晶表示装置におけるフリッカを低減する構成を示す図である。
【0066】
図10のケース1及びケース2は、フレーム周波数が1〜10Hzの場合である。このときは、
図5で示したように、TFTオフリーク電流が1×10
−15A以下であるTFTを使用し、さらに、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合させることにより、フリッカを低減することができる。
【0067】
図11は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース1とケース2の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース1、ケース2に示す領域では、輝度変化率の絶対値が0.01以下である。ケース1では、液晶の抵抗率5×10
13〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率5×10
13〜5×10
14Ω・cmである。ケース2では、液晶の抵抗率1×10
13〜5×10
13Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
13〜5×10
13Ω・cmである。
【0068】
図10のケース3及びケース4は、フレーム周波数が10〜20Hzの場合である。このときは、
図5で示したように、TFTオフリーク電流が1×10
−15A以下であるTFTを使用し、さらに、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合させることにより、フリッカを低減することができる。
【0069】
図12は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース3とケース4の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース3、ケース4に示す領域では、輝度変化率の絶対値が0.03以下である。ケース3では、液晶の抵抗率5×10
12〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率5×10
12〜5×10
14Ω・cmである。ケース4では、液晶の抵抗率1×10
12〜5×10
12Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
12〜5×10
12Ω・cmである。
【0070】
図10のケース5及びケース6は、フレーム周波数が10〜20Hzの場合で、かつTFTオフリーク電流が1×10
−15〜1×10
−14Aである。このケースでは、
図5に示すように輝度振幅値が大きくなるためフリッカが視認される。そのため、
図7のケース3に示すように液晶の保持電圧が増加するように液晶及び配向膜のインピーダンスを設定する。これによって、TFTオフリークによる輝度の低下を、液晶及び配向膜のインピーダンス不整合による輝度の増加によって補償することにより、フリッカを低減することができる。
【0071】
図13は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース5とケース6の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース5、ケース6に示す領域(実線で囲まれた領域)では、ケース3、ケース4に示す領域(点線で囲まれた領域)が左の方向にシフトしている。即ち、配向膜の抵抗率を低く設定することによって輝度を増加させている。ケース5では、液晶の抵抗率5×10
12〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率5×10
11〜5×10
13Ω・cmである。ケース6では、液晶の抵抗率1×10
12〜5×10
12Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
11〜5×10
11Ω・cmである。
【0072】
図10のケース7及びケース8は、フレーム周波数が10〜20Hzの場合で、かつTFTオフリーク電流が1×10
−14〜1×10
−13Aである。このケースでは、
図5に示すように輝度振幅値が大きくなるためフリッカが視認される。そのため、
図7のケース3に示すように液晶の保持電圧が増加するように液晶及び配向膜のインピーダンスを設定する。これによって、TFTオフリークによる輝度の低下を、液晶及び配向膜のインピーダンス不整合による輝度の増加によって補償することにより、フリッカを低減することができる。
【0073】
図14は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース7とケース8の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース7、ケース8に示す領域(実線で囲まれた領域)では、ケース3、ケース4に示す領域(点線で囲まれた領域)が更に左の方向にシフトしている。即ち、配向膜の抵抗率をより低く設定することによって輝度をより増加させている。ケース7では、液晶の抵抗率5×10
12〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
11〜1×10
13Ω・cmである。ケース8では、液晶の抵抗率1×10
12〜5×10
12Ω・cm、配向膜の抵抗率5×10
10〜1×10
11Ω・cmである。
【0074】
図10のケース9は、フレーム周波数が1〜10Hzの場合である。このときは、
図5で示したように、TFTオフリーク電流が1×10
−15A以下であるTFTを使用し、さらに、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合させることにより、フリッカを低減することができる。
【0075】
図15は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース9の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース9に示す領域では、輝度変化率の絶対値が0.01以下である。ケース9では、液晶の抵抗率5×10
13〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
14〜5×10
14Ω・cmである。ケース1と比較して、配向膜の抵抗率の下限値を高く設定することで、配向膜の抵抗の経時変動が生じた場合にも、良好なフリッカ特性を維持することができる。
【0076】
発明者らは、パネル周辺部からの水分侵入によって配向膜の抵抗が低下することを明らかにした。パネル周辺部からの水分侵入は有効表示領域以外に設置された周辺シール材料が細く設定された場合に顕著になる。シール材の幅が1.5mm以下の場合において、ケース9記載の液晶および配向膜の抵抗率に設定することで、高湿度環境など厳しい環境条件においても、輝度変化率の絶対値を0.01以下とすることが可能となった。
【0077】
図10のケース10は、フレーム周波数が10〜20Hzの場合である。このときは、
図5で示したように、TFTオフリーク電流が1×10
−15A以下であるTFTを使用し、さらに、液晶及び配向膜のインピーダンスを整合させることにより、フリッカを低減することができる。
【0078】
図16は、本実施の形態の液晶表示装置におけるケース10の液晶及び配向膜のインピーダンスの領域を示す図である。ケース10に示す領域では、輝度変化率の絶対値が0.03以下である。ケース3では、液晶の抵抗率5×10
12〜5×10
14Ω・cm、配向膜の抵抗率1×10
13〜5×10
14Ω・cmである。ケース10はケース9同様、シール材の幅が1.5mm以下の場合において有効である。すなわち、高湿度環境等、パネル周辺部からの水分侵入に対して厳しい環境条件においても、輝度変化率の絶対値が0.03以下とすることが可能であった。
【0079】
以上説明したように、フレーム周波数、TFTオフリーク電流、液晶及び配向膜のインピーダンスを組み合わせることでフリッカを抑制する液晶表示装置を実現することができる。
【0080】
上述のいくつかの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。