特許第6294641号(P6294641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6294641-液化燃料ガス気化装置 図000002
  • 特許6294641-液化燃料ガス気化装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294641
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】液化燃料ガス気化装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20180305BHJP
   C10L 3/12 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F17C9/02
   C10L3/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-244738(P2013-244738)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-102205(P2015-102205A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大木 和広
(72)【発明者】
【氏名】守谷 和行
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−116195(JP,A)
【文献】 特開2002−090077(JP,A)
【文献】 実開昭56−023878(JP,U)
【文献】 特開2001−116197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
C10L 3/12
F28D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒液を貯留する熱媒槽と、
前記熱媒槽内に配置され燃料ガスを燃焼するバーナの燃焼空間となる燃焼室と、
前記燃焼室に連続し燃料ガスの燃焼により生じた燃焼排ガスと前記熱媒槽の熱媒液との熱交換を行う第1熱交換部と、
該熱媒槽内に配設され一端から気化対象となる液相のガス燃料が流入され、流入した液相のガス燃料と前記熱媒槽の熱媒液とを熱交換して気化させ、他端から気化された燃料ガスを流出させる第2熱交換部と、
前記第1熱交換部に連続して燃焼排ガスを外部に排出する排気筒と、を備えた液化燃料ガス気化装置であって、
前記燃焼室は、前記熱媒槽の底部に設けられ、
前記第1熱交換部は、前記熱媒槽内において前記燃焼室から上方に伸びて形成された配管と、前記配管の内周面に設けられた複数のフィンと、を有し、前記熱媒槽の上部にて前記排気筒と接続され、前記複数のフィンは、前記排気筒側に向かってその面積が次第に大きくされている
ことを特徴とする液化燃料ガス気化装置。
【請求項2】
前記第2熱交換部は、コイル状に形成され、上方に伸びて形成される前記第1熱交換部がコイル軸に位置するように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の液化燃料ガス気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料ガス気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LPG(液化石油ガス)などの液相の液化ガス燃料は、液化燃料ガス気化装置によって気化されて燃料ガスとされる(特許文献1参照)。液化燃料ガス気化装置は、例えば、電気ヒータにより液相の液化ガス燃料を加熱して気化させる方式、あるいは燃料ガスの燃焼熱で加熱した熱媒液により液相の液化ガス燃料を加熱して気化させる方式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−116197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液化燃料ガス気化装置において後者のものは、燃料ガスを燃焼させて熱媒液を加熱し、加熱した熱媒液で液相の液化ガス燃料を更に加熱するという方式である関係上、2回の熱交換を行う必要がある。このため、前者のものに比較して熱交換ロスが大きくなってしまう。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、熱交換ロスを小さくすることが可能な液化燃料ガス気化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液化燃料ガス気化装置は、熱媒液を貯留する熱媒槽と、前記熱媒槽内に配置され燃料ガスを燃焼するバーナの燃焼空間となる燃焼室と、前記燃焼室に連続し燃料ガスの燃焼により生じた燃焼排ガスと前記熱媒槽の熱媒液との熱交換を行う第1熱交換部と、該熱媒槽内に配設され一端から気化対象となる液相のガス燃料が流入され、流入した液相のガス燃料と前記熱媒槽の熱媒液とを熱交換して気化させ、他端から気化された燃料ガスを流出させる第2熱交換部と、前記第1熱交換部に連続して燃焼排ガスを外部に排出する排気筒と、を備えた液化燃料ガス気化装置であって、前記燃焼室は、前記熱媒槽の底部に設けられ、前記第1熱交換部は、前記熱媒槽内において前記燃焼室から上方に伸びて形成された配管と、前記配管の内周面に設けられた複数のフィンと、を有し、前記熱媒槽の上部にて前記排気筒と接続され、前記複数のフィンは、前記排気筒側に向かってその面積が次第に大きくされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の液化燃料ガス気化装置によれば、燃焼排ガスと熱媒液との熱交換を行う第1熱交換部が熱媒槽内において燃焼室から上方に伸びて形成されると共に、熱媒槽の上部にて排気筒と接続されているため、第1熱交換部は、熱媒槽内に収納されることとなり、その距離を長くすることができる。すなわち、一般的に熱媒槽は縦長であることから、第1熱交換部を熱媒槽において上方に伸びて形成することにより、熱交換が行われる距離を稼ぐことができ、熱交換ロスを小さくすることができる。さらに、第1熱交換部は、配管と複数のフィンと、からなり、複数のフィンは、排気筒側に向かってその面積が次第に大きくされているため、燃焼排ガスが出口側である排気筒側に向かうに従って冷却されていくことに対応して、フィンの面積を大きくすることとなり、第1熱交換部の長手方向に亘る熱交換効率の隔たりを小さくすることができる。
【0008】
また、液化燃料ガス気化装置において、前記第2熱交換部は、コイル状に形成され、上方に伸びて形成される前記第1熱交換部がコイル軸に位置するように設けられていることが好ましい。
【0009】
この液化燃料ガス気化装置によれば、第2熱交換部は、上方に伸びて形成される第1熱交換部がコイル軸に位置するように設けられているため、第2熱交換部は、第1熱交換部にて加熱された直後の熱媒液と熱交換し易い位置に設けられることとなり、一層熱交換ロスを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換ロスを小さくすることが可能な液化燃料ガス気化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る液化燃料ガス気化装置を示す構成図である。
図2】熱交換部付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る液化燃料ガス気化装置100を示す構成図である。図1に示すように、液化燃料ガス気化装置100は、水槽(熱媒槽)1と、伝熱管(第2熱交換部)2と、調整弁3と、流入管4と、流出管5と、サーモ弁6と、感温部7とを備えている。
【0016】
水槽1は、熱媒液である水を貯留するものである。伝熱管2は、コイル状に形成された配管であって、一端に調整弁3を介して液相の液化ガス燃料(以下液相のガス燃料という)を導入する流入管4が接続され、他端に気化された液化燃料ガス(以下燃料ガスという)を排出する流出管5が接続されている。この伝熱管2は、流入管4を通じて導入される液相のガス燃料と熱媒液とを熱交換することにより、液相のガス燃料を加熱して気化させる。
【0017】
液相のガス燃料の流入管4は、図示していない液化燃料ガス貯蔵槽(液状態の燃料を貯蔵するもの)に接続されている。また、燃料ガスの流出管5は、図示していない燃料ガスの使用機器等に接続されている。
【0018】
サーモ弁6は、流入管4の調整弁上流側に設けられ、水槽1の貯留水中に挿入された感温部7による検出水温が設定温度以上になった場合に弁開動作するものである。すなわち、サーモ弁6は、水槽1内の貯留水が低温であり液相のガス燃料を気化できない場合には、弁閉状態となり液相のガス燃料が流出管5に至ってしまう事態を防止する構造となっている。
【0019】
また、液化燃料ガス気化装置100は、燃焼室8と、バーナ9と、送風機10と、燃料ガス供給管11と、制御弁12とを備えている。
【0020】
燃焼室8は、水槽1内の底部に設けられ、燃料ガスを燃焼する空間部として機能するものである。この燃焼室8にはバーナ9が接続されると共に、送風機10と燃料ガス供給管11とが接続されている。送風機10は、燃焼室8に空気を送り込む装置である。燃料ガス供給管11は、燃焼室8に燃料ガスを送り込むための配管である。燃料ガス供給管11には、燃料ガスの供給及び非供給並びに流量を調整する制御弁12が設置されている。また、燃料ガス供給管11は、流出管5に接続されており、本装置100により気化された燃料ガスを導入する構成となっている。なお、燃料ガス供給管11は、流出管5に接続される場合に限らず、他のガス供給装置等を接続されていてもよい。
【0021】
バーナ9は、燃料ガス供給管11を介して送り込まれた燃料ガスを燃焼させるものである。また、本実施形態において燃焼室8は、図1に示すように、水槽1の横方向距離の半分程度の長さを有しており、比較的燃焼室8が広い構造となっている。このため、本実施形態においてバーナ9は、火炎長が短いセラミックバーナを用いる必要が無く、ブラストバーナにより構成されている。
【0022】
さらに、液化燃料ガス気化装置100は、熱交換部(第1熱交換部)13と、排気筒14と、温度スイッチ15と、水位スイッチ16と、制御盤17と、電源盤18とを備えている。
【0023】
図2は、熱交換部13付近の拡大断面図である。熱交換部13は、燃焼室8から上方に向けて伸びる配管13aとその内周面に設けられた複数のフィン13bからなるヒータパイプによって構成されており、図1に示すように、コイル状の伝熱管2のコイル軸付近を通っている。この熱交換部13では水槽1内の貯留水と燃焼排ガスとの熱交換が複数のフィン13bによって促進されることとなる。さらに、本実施形態において複数のフィン13bは、排気筒側、すなわち出口側に向かってその面積が次第に大きくされている。なお、配管13aは、水槽1の上部にて排気筒14と接続されている。
【0024】
再度、図1を参照する。排気筒14は、熱交換部13に連続して水槽1の上部側に設けられる配管である。燃焼排ガスはこの排気筒14から外部に放出されることとなる。また、排気筒14の先端には、傘14aが設けられており、排気筒14に雨水等が浸入し難い構成となっている。
【0025】
温度スイッチ15は、水槽1の側面に設けられ、水槽1内の水温を検出するものである。水位スイッチ16は、水槽1の上面部に設けられ、水槽1内の水位を検出するものである。制御盤17は、本装置100の全体を制御するものであり、例えば温度スイッチ15からの信号に応じて、水槽1内の水温を所定温度(例えば70℃)に保つように、バーナ9、送風機10及び制御弁12を制御する。また、制御盤17は、水位スイッチ16からの信号に応じて、水位がやや減少した1段目において警報を出力し、水位が大幅に減少した2段目においてバーナ9による燃焼を停止させる。電源盤18は、制御盤17に対して制御電力を供給するものであり、可燃性ガスが存在しない非危険場所に設置されている。
【0026】
また、液化燃料ガス気化装置100は、過熱防止スイッチ19と、温度計・水位計20と、風圧スイッチ21と、排ガス温度スイッチ22とを備えている。
【0027】
過熱防止スイッチ19は、温度スイッチ15と同様に水槽1内の水温を検出するものであって、スイッチのオンオフ温度が温度スイッチ15と異なっている。すなわち、過熱防止スイッチ19の検出温度は異常加熱温度(例えば85℃)に設定されており、制御盤17は、過熱防止スイッチ19により異常加熱温度が検出された場合には、バーナ9による燃焼を停止させる。
【0028】
温度計・水位計20は、作業者等が目視により水温や水位を視認可能に表示するものである。風圧スイッチ21は、送風機10の送風圧を検出するものである。制御盤17は、風圧スイッチ21からの信号により送風圧が極端に低下したと判断できる場合には、バーナ9による燃焼を停止させる。
【0029】
排ガス温度スイッチ22は、排気筒14の側面に設けられ、燃焼排ガスの温度を検出するものである。制御盤17は、排ガス温度スイッチ22により燃焼排ガスの異常加熱温度(例えば200℃)を検出した場合には、バーナ9による燃焼を停止させる。
【0030】
次に、本実施形態に係る液化燃料ガス気化装置100により液相のガス燃料が気化する際の詳細について説明する。まず、バーナ9が点火され燃焼室8において高温の燃焼排ガスが発生する。燃焼排ガスは、熱交換部13に至り、熱交換部13の複数の放熱フィン13bを介して水槽1の水を熱交換される。
【0031】
ここで、熱交換部13は、水槽1内において燃焼室8から上方に伸びて配置されている。一般的に水槽1は縦長であることから、熱交換部13を上方に伸びて形成することにより、熱交換が行われる距離を稼ぐことができ、効率良く水槽1内の水を加熱することとなる。
【0032】
また、配管13a内の複数のフィン13bは、出口側に向かってその面積が次第に大きくなっていることから、燃焼排ガスが冷却されていくことに対応してフィン13bの面積が大きくなり、熱交換部13の長手方向に亘る熱交換効率の隔たりを小さくすることとなる。
【0033】
水槽1内の水が設定温度まで加熱されると、サーモ弁6が開き、液相のガス燃料が調整弁3を介して伝熱管2に導入される。そして、液相のガス燃料は伝熱管2において水槽1内の水と熱交換されて気化されることなる。
【0034】
ここで、伝熱管2は上方に伸びて形成される熱交換部13がコイル軸に位置するように設けられている。このため、伝熱管2には、熱交換部13にて加熱された直後の水と熱交換し易い位置に設けられることとなり、効率良く液相のガス燃料を気化させることとなる。
【0035】
そして、気化された燃料ガスは、燃料ガスの使用機器等に供給されることとなる。
【0036】
このようにして、本実施形態に係る液化燃料ガス気化装置100によれば、燃焼排ガスと熱媒液との熱交換を行う熱交換部13が水槽1内において燃焼室8から上方に伸びて形成されると共に、水槽1の上部にて排気筒14と接続されているため、熱交換部13は、水槽1内に収納されることとなり、その距離を長くすることができる。すなわち、一般的に水槽1は縦長であることから、熱交換部13を水槽1において上方に伸びて形成することにより、熱交換が行われる距離を稼ぐことができ、熱交換ロスを小さくすることができる。
【0037】
また、伝熱管2は、上方に伸びて形成される熱交換部13がコイル軸に位置するように設けられているため、伝熱管2は、熱交換部13にて加熱された直後の熱媒液と熱交換し易い位置に設けられることとなり、一層熱交換ロスを小さくすることができる。
【0038】
また、熱交換部13は、配管13aと複数のフィン13bと、からなり、複数のフィン13bは、排気筒14側に向かってその面積が次第に大きくされているため、燃焼排ガスが出口側である排気筒14側に向かうに従って冷却されていくことに対応して、フィン13bの面積を大きくすることとなり、熱交換部13の長手方向に亘る熱交換効率の隔たりを小さくすることができる。
【0039】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0040】
例えば、上記実施形態において熱交換部13はコイル状の伝熱管2のコイル軸を通過する構成となっているが、これに限るものではない。例えば熱交換部13は燃焼室8から側方に伸びて形成され、水槽1の側方に排気筒14が設置される構成であってもよい。
【0041】
さらに、放熱フィン13bの面積は配管13aの長手方向に亘って同じとなっていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…水槽(熱媒槽)
2…伝熱管(第2熱交換部)
3…調整弁
4…流入管
5…流出管
6…サーモ弁
7…感温部
8…燃焼室
9…バーナ
10…送風機
11…燃料ガス供給管
12…制御弁
13…熱交換部(第1熱交換部)
14…排気筒
15…温度スイッチ
16…水位スイッチ
17…制御盤
18…電源盤
19…加熱防止スイッチ
20…温度計・水位計
21…風圧スイッチ
22…排ガス温度スイッチ
100…液化燃料ガス気化装置
図1
図2