特許第6294666号(P6294666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6294666制御性T細胞の阻害のための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294666
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】制御性T細胞の阻害のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20180305BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20180305BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180305BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   A61K35/28
   A61K38/00
   A61K38/21
   A61K45/00
   A61P31/00
   A61P35/00
   A61P37/04
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-505048(P2013-505048)
(86)(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公表番号】特表2013-523886(P2013-523886A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011032090
(87)【国際公開番号】WO2011130249
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年3月27日
【審判番号】不服2016-5282(P2016-5282/J1)
【審判請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/323,557
(32)【優先日】2010年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513276477
【氏名又は名称】イミュノバティブ セラピーズ,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハー−ノイ マイケル
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 前田 佳与子
【審判官】 穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/133651号(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/135199号(WO,A2)
【文献】 特表2007−500217号公報(JP,A)
【文献】 特表2009−533430号公報(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/000474号(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126940号(WO,A1)
【文献】 特表2009−521409号公報(JP,A)
【文献】 特表2013−514365号公報(JP,A)
【文献】 Har−Noy, M. et al.,Leuk. Res., 2009, vol.33, no.4, p.525−538
【文献】 臨床免疫, 2006, vol.45, no.6, p.688−692
【文献】 Eur. J. Immunol., 2009, vol.39, no.5, p.1241−1251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00-39/44
A61K35/00-35/76
CA/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるTreg細胞の免疫抑制活性を低減するのに用いられる同種異系Th1細胞を含む治療用組成物であって、
前記治療用組成物は、抗TGF−β抗体をさらに含み、
前記治療用組成物は、疾患抗原のシャペロンリッチ細胞可溶化物をさらに含み、
前記同種異系Th1細胞は、同種異系emTh−1(エフェクター/メモリーTh1)細胞であり、
IFN−γによって仲介される前記Treg細胞の活性の低減と阻害との少なくとも一方を行うことが、i)前記患者における疾患抗原の免疫寛容を低下させるか、ii)患者における疾病に対する治療効果を生じさせるか、iii)患者における免疫抑制機能を低減させる、組成物。
【請求項2】
前記Treg細胞はCD4+CD25+FoxP3+である請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記Treg細胞の抑制活性は、ナイーブT細胞(CD4CD25−FoxP3−)のiTreg細胞への転換を低減することにより阻害される請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記Treg細胞の抑制活性は、nTreg細胞の阻害によることである請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記治療用組成物はIFN−γをさらに含むか、前記治療用組成物はCD40Lをさらに含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記疾患は癌であるか、前記疾患は感染症である請求項1に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
癌免疫療法の主な目的は、先天性免疫反応と適応性免疫反応の活性化により腫瘍の排除を促進することであり、免疫寛容メカニズムを克服すると同時に腫瘍特異的リンパ球を誘導する二重の能力を付与されたワクチン接種戦略の進展に依存する。癌免疫療法の使用は、適切に設計された癌ワクチンで腫瘍排除、及び長期寛解を潜在的にもたらすことができる。悪性細胞を標的化し正常細胞を回避するという免疫療法における特異性はまた、最小限の毒性につながることもできる。
【0002】
免疫反応は一般的に、Th1(Tヘルパー)反応とTh2反応の2つの極性反応によって説明される。Th1反応は細胞性免疫を媒介し、免疫を媒介した腫瘍根絶において重要であり、Th2反応は液性免疫を媒介する。Th2反応は、いくつかの感染症に対して保護することができるが、抗腫瘍反応にとっては望ましくない。Th1反応およびTh2反応は逆調節性であり、増加したTh1反応はTh2反応を下方調節し、その逆も同様である。
【0003】
Th1免疫は腫瘍の根絶に不可欠であるが、ある患者においてはTh1環境の存在下で腫瘍が成長し続けることができる。従って、腫瘍は、保護的なTh1反応をうまく抑制し回避することができる。成功した免疫療法は、Th1環境を促進し、また腫瘍回避メカニズムも無効にし、正常組織の免疫破壊を防止する自己寛容回路に対抗しなければならない。
【0004】
抗腫瘍免疫を阻害するメカニズムの多くは、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞(Treg)の活性化の結果である。これらのTreg細胞は、腫瘍誘発耐性の発生と存続に大きく貢献し、初期の腫瘍進行における独占的な免疫回避メカニズムである。腫瘍進行の間に観察されるTreg亢進は、自然発生のTreg(nTreg)の増殖、またはCD4+CD25-FoxP3-T細胞のCD4+CD25+FoxP3+Treg(iTreg)への転換の結果であり得る。Tregは、エフェクターCD4+、CD8+、およびナチュラルキラー(NK)細胞の機能を抑制することにより、並びに樹状細胞の活性化を阻害することにより、免疫反応を弱める。Tregは、免疫細胞による腫瘍根絶の主要な障壁の一つであるため、薬剤または抗体を用いて腫瘍の治療的除去または腫瘍の機能不活性化は、癌免疫療法への反応を向上させる。しかし、Tregの選択的な排除または不活性化は、Tregのような細胞が、活性化した通常の非抑制T細胞と同一の表面マーカーを有するため、大きな課題となる。抗体をベースとしたアプローチは、例えば、Tregと活性化エフェクターTリンパ球の両方を見分けることなく標的とする。
【0005】
CRCL(シャペロンリッチ細胞可溶化物)を含有する抗癌ワクチンの使用は、免疫賦活性効果を提供することがわかっている。CRCLは、等電点電気泳動法により、腫瘍細胞可溶化物から生成される。CRCLで処理された樹状細胞とマクロファージは、Treg阻害に対抗し、炎症誘発性サイトカインの産生と免疫賦活性能力を保持する。しかし、CRCLへの暴露後もTregの生存、FoxP3の発現および免疫抑制機能は保持されるため、CRCLのTregへの直接的な影響はないように思われる。
【0006】
いくつかの化学療法剤(例えば、シクロホスファミド、イマチニブメシル酸塩)は、癌ワクチンの有効性をさらに高めるTreg機能の負の調節物質として記載されてきた。また、同種異系T細胞の養子免疫伝達も、宿主免疫細胞にアジュバント「危険」シグナルを提供することにより、腫瘍免疫療法の有効性を高め得る。腫瘍免疫療法の有効性を高め得る効果は、活性化Tリンパ球によるサイトカイン産生が部分的に原因になり、保護的な1型免疫反応の発生を促進する。しかし、IFN−γを含むI型サイトカインのTregへの効果は、一貫性を欠いている。細胞媒介免疫の重要なエフェクターサイトカインとして、外因性または自己分泌IFN−γは、Tregの生成を負に調節することができる。この概念と平行して、他の研究において、IFN−γが活性化誘発細胞死を促進すること、およびIFN−γのようなサイトカインは、内因性経路および外因性経路に依存したアポトーシスを促進することによりエフェクターT細胞の亢進および存続を調節し得ることわかっている。
[概要]
一態様では、本発明は、患者における疾患の免疫寛容を抑制する方法に関する。本方法は、同種異系Th1細胞を含む治療用組成物を患者に投与することによりTreg細胞の免疫抑制活性を低減することを含み、Treg細胞の活性を低減および/または阻害することは、患者における疾患抗原の免疫寛容を低下させる。
【0007】
別の態様では、本発明は、患者における治療的免疫効果を刺激する方法に関する。本方法は、同種異系Th1細胞を含む治療用組成物を患者に投与することによりTreg細胞の免疫抑制活性を低減することを含み、Treg細胞の活性を低減および/または阻害することは、患者における疾患に対する治療効果が誘発する。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、患者における免疫抑制機能を弱める方法に関する。本方法は、同種異系Th1細胞を含む治療用組成物を患者に投与することによりTreg細胞の免疫抑制活性を低減することを含み、Treg細胞の活性を低減および/または阻害することにより、患者における免疫抑制機能を低下させる。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、活性化したTh1細胞と疾患抗原源を投与することを含む、免疫寛容を抑制し、疾患患者における治療効果を促進する方法に関し、Th1細胞と疾患抗原は同一箇所に投与される。
【0010】
さらなる別の態様では、本発明は、疾患抗原源とアジュバントを含む組成物に関し、疾患抗原はシャペロンタンパク質内に含有され、アジュバントは活性化同種異系Th1細胞を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】ナイーブT細胞を様々な腫瘍細胞株と再懸濁して活性化emTh−1細胞で処理した場合のFoxP3発現への効果を示すドットプロットである。
図1B】ナイーブT細胞を様々な腫瘍細胞株と再懸濁して活性化emTh−1細胞で処理した場合のFoxP3発現への効果を示す棒グラフである。
図2A】ナイーブT細胞を、emTh−1上清の存在下又は不存在下にて、TGF−β1を用いて又は用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズを用いて培養した場合の、FoxP3発現への効果を示すドットプロットである。
図2B】ナイーブT細胞を、emTh−1上清の存在下又は不存在下にて、TGF−β1を用いて又は用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズを用いて培養した場合の、FoxP3発現への効果を示すヒストグラムである。
図2C】総CD4+Tリンパ球中のCD4+CD25-FoxP3-活性化T細胞の割合を示す棒グラフである。
図2D図2Aに示されたように培養細胞中の転写因子FoxP3、Tbet、およびGATA−3の発現を示すドットプロットである。
図2E】示された濃度のemTh−1上清を用いた場合の、図2Aに示されたように培養細胞中のFoxP3の発現の棒グラフである。
図2F】emTh−1上清の存在下において生成された残留FoxP3発現細胞の免疫抑制活性の棒グラフである。
図2G】転換されたiTreg細胞の抑制活性を阻害するemTh−1上清を示す棒グラフである。
図3A】マウスIFN−γに対する遮断抗体を用いた又は用いない、emTh−1上清の存在下又は不存在下での、TGF−β1を用いた又は用いない、T細胞増殖刺激用ビーズを用いたナイーブT細胞を示す棒グラフである。
図3B】マウスTNF−αに対する遮断抗体を用いた又は用いない、emTh−1上清の存在下又は不存在下での、TGF−β1を用いた又は用いない、T細胞増殖刺激用ビーズを用いたナイーブT細胞を示す棒グラフである。
図3C】IFN−γR-/-マウス脾臓から単離され、図3Aに記載されているように培養されたナイーブTリンパ球中のFoxP3発現のドットプロットである。
図3D】IFN−γR-/-マウス脾臓から単離され図3Aに記載されているように培養されたFoxP3発現細胞の割合を示す棒グラフである。
図4A】emTh−1によって阻害されたnTreg(CD4+CD25+Treg)免疫抑制機能を示すプロットである。
図4B】emTh−1によって阻害されたnTreg(CD4+CD25+Treg)免疫抑制機能を示す棒グラフである。
図4C】emTh−1によって阻害されたnTreg(CD4+CD25+Treg)免疫抑制機能を示す棒グラフである。
図4D図4Aに記載された細胞におけるIFN−γ濃度を示す棒グラフである。
図4E】ヒトemTh−1上清は、ヒトTreg抑制機能を低下させ、Treg媒介阻害に対するエフェクターT細胞耐性を促進することを示すプロットである。
図4F】ヒトemTh−1上清は、ヒトTreg抑制機能を低下させ、Treg媒介阻害に対するエフェクターT細胞耐性を促進することを示すプロットである。
図5A】12B1細胞を注入され、CRCL、emTh−1、又はCRCLとemTh−1との両方の組み合わせを投与されたナイーブBalb/cマウスへのワクチンの効果を示すグラフである。
図5B】12B1細胞を注入され、CRCL、emTh−1、又はCRCLとemTh−1との両方の組み合わせを投与されたナイーブBalb/cマウスへのワクチンの効果を示すグラフである。
図5C】12B1細胞を注入され、CRCLとemTh−1との両方の組み合わせ、又はCRCL、emTh−1および抗アシアロGM1抗体を投与されたナイーブBalb/cマウスへのワクチンの効果を示すグラフである。
図5D】B16細胞を注入され、emTh−1とB16 CRCLとの組み合わせを投与されたC57BL/6マウスへのワクチンの効果を示すグラフである。
図6A-6D】マウスにおける腫瘍体積を示すプロットであり、emTh−1とCRCLの免疫療法によって誘発された腫瘍特異的免疫を表している。
図7A】emTh−1とCRCLの免疫療法の抗腫瘍Tリンパ球への効果を示す棒グラフである。
図7B】emTh−1細胞はナイーブTリンパ球の分化をin vivoでTregよりもCD4+CD25+FoxP3-エフェクターT細胞の方に傾けることを示すドットプロットである。
図7C】emTh−1細胞はin vivoでTreg抑制機能を弱めることを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[詳細な説明]
本発明は、疾患抗原の免疫寛容を抑制すること、及び/又は患者における腫瘍免疫回避メカニズムを無効にする方法を含む。また、本方法は、疾患抗原に対する免疫、特にTh1免疫を刺激することも含む。免疫寛容の抑制と抗疾患抗原免疫の刺激との両方は、疾患抗原源及び同種異系Th1細胞、好ましくはアジュバントとしての活性化された同種異系Th1細胞を含む治療用組成物の投与により発生されることができる。一般的に、同種異系Th1細胞は、活性化したエフェクター/メモリーTh1(emTh−1)細胞である。また、この治療用組成物は、疾患関連抗原及び/又は疾患関連抗原を含有する可溶化物、好ましくはシャペロンリッチ細胞可溶化物(CRCL)等の疾患組織から単離されたシャペロンタンパク質の混合物、も含むことができる
本発明において、免疫寛容の抑制方法は、Treg細胞の抑制活性を弱めることを含むことができる。本方法は、ナイーブT細胞(CD4+CD25−FoxP3−)から、本願においてiTregと称されるTreg細胞(CD4+CD25−FoxP3+)への転換を阻害することができる。自然発生のTreg(nTreg)細胞とiTreg細胞との両方の抑制活性を、低下または排除することができる。本発明の方法は、有利には、Tregの免疫抑制活性を阻害すると同時に、患者における通常のエフェクターTリンパ球の機能を促進する。治療用組成物のTregへの阻害活性は、IFN−γに依存し、IFN−γは、好ましい組成物において宿主先天性免疫細胞と宿主適応性免疫細胞からIFN−γの生成を次には増加するemTh1細胞によって生成される。
【0013】
本願でいう「免疫寛容の抑制」は、任意の自己寛容を含む疾患抗原の存在に寛容する患者の免疫システムの能力を抑制すること、及び/又は患者の免疫システムによる腫瘍回避の抑制に関する。
【0014】
本願に記載された方法は、患者における様々な疾患を治療するために用いられることができる。疾患は、癌性または非癌性であることができる。癌性疾患は、腫瘍を生成する癌、ならびに血液系腫瘍等の腫瘍を生成しない癌を含むことができる。非癌性疾患は、例えば、1つ以上の病原体を原因とする疾患を含むことができる。腫瘍は、乳房、肺、肝臓、胃、皮膚、膵臓等を含む患者の種々の場所に存在し得る。患者は、ヒトまたは非ヒトであることができる。
【0015】
本発明の方法は、治療用組成物を患者に投与することを含むことができ、治療用組成物の投与は、患者の免疫システムによる疾患および/または疾患抗原の寛容を抑制することができる。治療用組成物の患者への投与は、患者における腫瘍回避機構を無効にすることができ、より望ましい腫瘍根絶に導くことができる。好ましくは、治療用組成物の投与は、CD4+CD25+FoxP3+であるTreg細胞の活性を抑制することができる。本願でいう「Treg」細胞は、CD4+CD25+FoxP3+であり、及びnTregとiTregとの両方を含む制御性T細胞に関する。本願でいうナイーブT細胞は、CD4+CD25−FoxP3−であるT細胞である。
【0016】
本発明の方法は、Treg細胞の活性を様々な方法で抑制することを含む。Treg細胞の活性の抑制は、例えば、ナイーブT細胞のiTreg細胞への転換を阻害することによってなることができる。本方法は、例えば、FoxP3の活性を調節することによりナイーブ細胞のTreg細胞への転換を妨げる、本願に記載された治療用組成物の投与を含むことができる。FoxP3は、免疫抑制活性の原因となることができる細胞のマーカーである転写因子である。細胞のFoxP3の不在または反転は、細胞が抑制機能を実行しないことを暗示するものである。
【0017】
また、本発明の方法は、免疫寛容の抑制を高めるために、患者のnTreg細胞を負に調節することもできる。患者は、刺激に反応してナイーブT細胞から誘発されるiTreg細胞に加え、nTreg細胞を有することができる。また、本発明の方法で使用される治療用組成物は、患者におけるnTreg及び/又はiTregの活性も抑制し得る。
【0018】
また、本方法は、Treg細胞の活性を抑制するためのIFN−γの投与、及び/又はCD40Lの包含も含むことができる。IFN−γ及び/又はCD40Lは、治療用組成物の一部として使用されることができる。治療用組成物においてIFN−γ及び/又はCD40Lの使用は、エフェクターTリンパ球の活性を妨げることなくTregの免疫抑制活性を遮断することができる。好ましくは、IFN−γは活性化Th1細胞から自然に生成され、それによって活性化Th1細胞のような細胞は表面にCD40Lを発現し、宿主免疫細胞中のIL−12の発現を上方制御することができ、宿主IFN−γ生成の増加につながる。
【0019】
また、本発明の方法は、ナイーブT細胞の分化をCD4+CD25+Tbet+GATA3−表現型(Tbet+細胞)に傾けることも含むことができる。治療用組成物の投与は、ナイーブT細胞の患者におけるTh1免疫環境を表すTbet+細胞への転換に傾けることができる。Tbet+の存在は、Th1環境の促進につながることができ、Treg細胞の生成から離れた促進のため免疫寛容活性の抑制につながることができる。
【0020】
本発明は、上記の方法で記載されているように、Treg細胞の活性を抑制する治療用組成物を投与することを含む。治療用組成物は、生きている免疫細胞を含むことができ、少なくとも一部はT細胞である。T細胞は、好ましくは、Th1表現型(IFN−γを生成しIL−4を生成しないCD4+T細胞)のエフェクター/メモリーT細胞(CD45RO+、CD62LLo)である。エフェクター/メモリーTh1細胞は、患者に処方及び導入時に活性化され、本願においてemTh−1細胞と称される。好ましい活性化方法は、T細胞上でのCD3とCD28の表面分子の架橋結合による。また、他の活性化方法も本発明の範囲内である。emTh−1細胞は、好ましくは活性化されるとCD40Lを発現し、大量の炎症性サイトカイン(例えばIFN−γ、GM−CSF、及びTNF−α等)を生成する。このようなemTh−1は、好ましくは患者と同種異系である。emTh−1の活性化は、例えば、Har−Noyへの米国特許第7,435,592号に記載されているように行われることができ、Har−Noyへの米国特許第7,402,431号に記載のように緩衝液で投与のために製剤化されることができる。これらの特許はいずれも参照として本願に組み込まれる。活性化emTh−1細胞は、本願に記載された治療用組成物で使用されることができる。このような活性化emTh1細胞は、イスラエルのイムノベイティブ セラピーズ 社(Immunovative Therapies, Ltd.)からALLOSTIMの名称にて入手可能である。活性化emTh−1細胞のような細胞と同様の機能特性を示すその他の活性化同種異系T細胞も、本発明の範囲内である。本発明の治療用組成物は、活性化emTh−1細胞を含むこととして記載されるが、他の方法を用いて調製されるが同様の機能特性を有する細胞を含有する治療用組成物はすべて、本発明の範囲内である。また、IFN−γやCD40L分子等の、emTh−1細胞の非生存成分も、本発明の範囲内である。
【0021】
emTh−1細胞に加えて、治療用組成物は、患者におけるTh1環境の維持を高め、及び/又は患者による疾患抗原の免疫寛容を抑制する他の成分を含むことができる。いくつかの好ましい実施形態では、治療用組成物は、疾患と関連する抗原も含むことができる。治療用組成物は、1つ以上の疾患抗原を含むことができる。2つ以上の抗原が組成物中に含まれる場合、抗原は同一の抗原源からは又は異なる抗原原からであってもよい。任意の抗原源は、製剤中で使用されることができ、例えば、このような抗原源は、生きた細胞からまたは生物体から供給されることができ、源物質は、細胞全体もしくは生物体またはそれら由来の可溶化物として使用される、照射不活性化された(または他の不活性化方法で不活性化された)、凍結/解凍可溶化物であることができる。いくつかの好ましい実施形態において、腫瘍細胞または腫瘍細胞可溶化物は、抗原の細胞源物質として機能することができろ。その細胞源物質は、自己もしくは同種異系細胞源または細胞株由来であることができる。また、抗原は抗原をコードする裸のDNAまたはRNAからも供給されることができる。核物質は、単独で使用されることができ、またはウイルスベクターへ組み込まれることができる。抗原源の別の例は、抗原を模倣する抗イディオタイプ抗体もしくは抗原を模倣する抗イディオタイプ抗体の部分、または抗原の構造を模倣する他の方法である。抗原パルスされた、またはトランスフェクトされた樹状細胞(DC)も、医薬品組成物における抗原源であることができる。DCを、ペプチドもしくはタンパク質全体、組換え型タンパク質、または抗原をコードするmRNAもしくはDNAでパルスすることができ、またはDCを、抗原を含有する細胞と融合することもでき、またはDCを、抗原を含有するレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス等のウイルスベクターでトランスフェクトすることができ、またはこれらの抗原源成分を、DCを用いずに単独で使用することもできる。
【0022】
また、1つ以上の腫瘍関連抗原(TAA)は医薬品組成物で使用されることもでき、TAAの例としては、MART−1、gp100、チロシナーゼ、MelanA、TRP−1、CDK−4等の腫瘍特異的変異遺伝子産物、β−カテニン、MUM−1、p53およびras(K−rasおよびH−ras)等の癌遺伝子、MAGE、GAGE、およびNY−ESO1等の癌精巣抗原、MUC1等の過剰発現自己抗原、サイクリンB1、Her2−neu、CEA、WT、p53、SART−1、PRAME、p15、およびHPV E7等のウイルス抗原、EBV由来抗原およびテロメラーゼを含む。
【0023】
好ましい実施形態において、抗原性成分は、死んだ感染組織または腫瘍から単離された、1つ以上のシャペロンタンパク質(熱ショックタンパク質としても知られる)を含むことができる。熱ショックタンパク質(HSP)は、細菌性、真菌性、および寄生虫性病原体に対する免疫反応の主要な標的に含まれる。腫瘍由来熱ショックタンパク質(hsp)−ペプチド複合体(特にhsp70およびgrp94/gp96)は、有効なワクチンとして機能することが実証されており、動物およびヒトにおいて抗腫瘍免疫反応を生じさせる。このアプローチは、多くの細胞プロセスにおける分子シャペロンとしての機能を担う、ストレスタンパク質のペプチド結合特性を利用する。
【0024】
細胞外環境におけるあるシャペロンも、シャペロンポリペプチド能力、および宿主の免疫システム、特にプロフェッショナル抗原提示細胞と相互作用する能力のために、先天性免疫および適応性免疫を調節可能でもあることができる。腫瘍由来のHSPワクチン接種は、抗腫瘍応答を誘発し、免疫抑制メカニズムを下方制御することができる。HSPの免疫原性は、HSPが結合する抗原性ペプチドに由来されることができる。
【0025】
抗原源として使用するためのシャペロンタンパク質の単離の好ましい方法は、米国特許第6,875,849号においてKatsantisによって記載される。さらなる方法は、米国特許第6,797,480号;同第6,187,312号;同第6,162,436号;同第6,139,841号;同第6,136,315号;および同第5,837,251号においてSrivastavaによって記載される。また、HSPを、ペプチド、細胞全体、または細胞可溶化物を含む抗原でパルスすることができる。
【0026】
一実施形態において、腫瘍由来シャペロンリッチ細胞可溶化物(CRCL)は、抗原源として使用され、下記の実施例において記載されるように自由溶液等電点電気泳動(FS−IEF)技術を用いて、腫瘍可溶化物から主要なシャペロンタンパク質を濃縮することによって得られる。自由溶液等電点電気泳動(FS−IEF)技術は、従来の技術と比較して、最大5倍から20倍多い抗原性物質をより短時間で得るための迅速かつ効率的な手順である。潜在的に限られた腫瘍源からの高い収率に関して、および腫瘍の採取から患者の治療までの迅速なターンアラウンドタイムに関して、臨床的な観点から、複数のシャペロン複合体濃縮のFS−IEF法が望ましくなることがある。
【0027】
さらに、ワクチンにおいて通常使用される抗原も、本発明の医薬品組成物で使用することができ、単独で使用され、または担体タンパク質等の担体要素に結合しても使用される、生きた弱毒化微生物全体、不活性化微生物、組換え型ペプチドおよびタンパク質、糖タンパク質、糖脂質、リポペプチド、合成ペプチド、または破裂した微生物、多糖類等の、微生物全体または微生物の一部を含む。
【0028】
一般的に、疾患の治療または予防のために使用できる任意の抗原または抗原の組み合わせは、医薬品組成物において使用されることができる。また、感染性病原体由来の抗原は、抗原源として機能することができ、本願で疾患を引き起こす抗原と称され得る。抗原源となることができる疾患の例としては、ジフテリア、破傷風、ポリオ、狂犬病、百日咳、A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎、EBV、CMV、ヘルペス1およびヘルペス2、黄熱、腸チフス、水疱、痘瘡(天然痘)、麻疹、耳下腺炎、風疹、日本脳炎、髄膜炎、インフルエンザ、肺炎球菌感染、ロタウイルス感染、AIDS(HIV1およびHIV2)、癌、HTLV1およびHTLV2、梅毒、HPV、結核、ライム病、RSV感染、トリパノソーマ症、デング熱、マラリア、炭疽、エボラウイルス、野兎病、エルシニア、西ナイルウイルス、クラミジア、淋菌、肺炎球菌、カタル球菌、黄色ブドウ球菌、またはヘモフィルスインフルエンザB型菌を原因とする細菌性の病気、マラリア、リーシュマニア症、リステリア症等がある。
【0029】
一つの好ましい実施形態では、治療用組成物は、emTh−1と、さらにCRCL可溶化物を含む。emTh−1細胞とCRCL可溶化物は個別にTh1免疫を促進するが、emTh−1細胞の追加は、Th1免疫の発達を増大させ、さらにTreg活性の抑制を促進するためのアジュバントを提供する。加えて、emTh−1細胞とCRCL可溶化物のような2つの成分が、その組み合わせがいずれかの成分を単独で用いるより効果的であるように治療用組成物中で組み合わされる時、相乗応答が見られる。
【0030】
治療用組成物は、Treg細胞の免疫寛容活性の低減または阻害に干渉可能なその他の成分または因子をさらに含み得る。一実施形態では、治療用組成物は、外因性IFN−γを含んでもよい。IFN−γは、精製されたIFN−γまたは組換え型IFN−γであってもよい。治療用組成物は、また抗TGF−β抗体も含み得る。TGF−βは、一般的に、Treg細胞活性を高める。治療用組成物における抗TGF−β抗体を含有し、Treg細胞の活性を低減することができる。
【0031】
治療用組成物は、非経口、皮内、筋肉内、皮下または粘膜経路等の通常使用される全ての経路を介して投与され得る。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、結節内または腫瘍内に投与され得る。同種異系emTh−1細胞は、好ましくは、意図的なHLAミスマッチドナーに由来される。治療用組成物における好ましい用量は、皮内経路用では少なくとも約1×107細胞、より好ましくは、静脈内経路用に約5×107〜1×109細胞である。所望の免疫反応を主として生成することができるこの範囲外の用量も、本発明の範囲内である。
【0032】
治療用組成物は、1回以上投与され得、投与ごとに異なる経路を用いてもよい。2回以上投与する場合、治療用組成物の2回目の投与は、1回目の投与後少なくとも3日後、好ましくは少なくとも7〜14日後に投与され得る。さらなる用量の治療用組成物を必要に応じて投与してもよい。一つの好ましい実施形態では、最初にemTh−1細胞を皮内に投与し、次にCRCL組成物を同じ場所に皮内に投与する。このような皮内注射は、約3〜10日の間隔をおいて約3〜6回繰り返される。次に、このワクチン接種スケジュールによって生成されたメモリー細胞を活性化するため、emTh−1細胞単独の静脈内注射にて投与することができる。
【0033】
また、本発明は、同種異系Th1細胞を含む治療用組成物を患者に投与することによりTreg細胞の免疫抑制活性を低減することを含む、患者における治療免疫効果を刺激する方法を含み、Treg細胞の活性を低減及び/又は阻害することは、患者における疾患に対する治療効果を誘発する。また、本発明は、同種異系Th1細胞を含む治療用組成物を患者に投与することによりTreg細胞の免疫抑制活性を低減することを含む、患者における免疫抑制機能を弱める方法を含み、Treg細胞の活性を低減及び/又は阻害することは、患者における免疫抑制活性を低下させる。
[実施例]
材料および方法
マウス−特定病原体を含まない条件下でマウスを収容し、アリゾナ大学動物実験委員会(University of Arizona Institutional Animal Care and Use Committee)のガイドラインに従って飼育した。国立がん研究所(メリーランド州ベセスダ)から、メスのBALB/c(H2d)、C57BL6(H2b)、重症複合免疫不全症SCID(H2d)およびNude(H2d)マウスを入手した。ジャクソン免疫研究所(Jackson Immunoresearch Laboratories)(カリフォルニア州サクラメント)から、IFN−γ−受容体-/-(H2d)マウスを購入した。ジャクソン免疫研究所から、内因性プロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)とFoxP3を共発現するFoxP3−EGFP(H2d)マウスを入手した。GFP発現は、FoxP3+Tregの正確な同定および単離を可能にする。ジャクソン免疫研究所から、コンジェニックThy1.1マウス(Cby.PL(B6)−Thy1a/ScrJ)を入手した。これらの動物は、Tリンパ球特異的Thy1.1対立遺伝子を持っている。Thy1.2マウスからのドナーT細胞は、抗=Thy1.2抗体を用いて、レシピエントThy1.1マウスT細胞と区別されることができる。6〜8週齢のマウスを使用した。
【0034】
同種異系活性化emTh−1細胞の調製−Har−NoyらのLeukemia Research(2009)33:525−538およびHar−NoyらのLeukemia Research(2008)32:1903−1913に記載されているように、in vitroでemTh−1細胞を生成および活性化した。C57BL/6マウスから脾臓細胞を採取し、赤血球を溶解する溶解塩化アンモニウム−カリウム(ACK)緩衝液で処理した。次に、CD4+マイクロビーズとautoMACS(商標)分離装置(ミルテニーバイオテク(Miltenyi Biotec)、カリフォルニア州オーバーン)を使用して、CD4+T細胞を単離した。積極的および消極的に選択された細胞を各画分の純度を評価するためにフローサイトメトリーで手順どおりに分析した。10%加熱不活性化ウシ胎仔血清(ジェミニ バイオ−プロダクツ(Gemini Bio−products)、カリフォルニア州ウッドランド)を補充したRPMI培地(ジブコ(Gibco)/BRL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)で、抗CD3および抗CD28をコーティングした常磁性ビーズ(CD3/CD28T細胞増殖刺激用ビーズ、ダイナル/インビトロジェン(Dynal/Invitrogen))を初期ビーズ:CD4+細胞比3:1で使用し、さらに20IU/mLの組み替えマウス(rm)IL−2、20ng/mLのrmIL−7、10ng/mLのrmIL−12(ペプロテック(Peprotech)、ニュージャージー州)、および10μg/mLの抗マウスIL−4mAb(ベクトン デッキンソン(Becton Dickenson))の存在下で、上記CD4+リンパ球を増殖させた。細胞密度を一定(0.5−1×106細胞/mL)に維持するため、rmIL−2、rmIL−7、抗IL−4mAbおよびCD3/CD28ビーズを含有するさらなる完全培地を、上記の培地に3日目〜6日目に毎日添加した。細胞が増殖するにつれてビーズ:細胞比が1:1に維持されるように、添加するビーズの量を算出した。6日間の培養後、CD4+T細胞の増殖は、0日目にプレートに入れられた最初の細胞数の約60〜100倍であった。6日目に細胞を採取し、物理的破砕および磁石上の通過によりビーズを回収した。これらの細胞は、新鮮なまま使用されたか、または将来使用するために液体窒素内で保管された。同様の手順に従って、C57BL/6マウスからemTh−1細胞を生成した。
【0035】
リンパ球分離培地(1.077;ユーロバイオ(Eurobio))を使用して密度勾配遠心分離により単離された健康なドナー末梢血リンパ球から、ヒトemTh−1細胞を生成した。次に、ヒトCD4マイクロビーズ(ミルテニーバイオテク(Miltenyi Biotec))を使ってT細胞を単離し、20IU/mLの組み換えヒトIL−2(rhIL−2)、20ng/mLのrhIL−7、10ng/mLのrhIL−12(ペプロテック(Peprotech))、および10g/mLの抗ヒトIL−4mAb(BD バイオ−サイエンス(Bio− sciences))の存在下で、ヒトT細胞増殖刺激用ビーズ(ダイナビーズ(Dynabeads);インビトロジェン(Invitrogen))で培養した。ヒトCD4T細胞培養物は、マウス細胞のために上述の段落に記載されるように維持された。ヒト研究は、治験審査委員会(Institutional Review Board)(IRB00005448;FWA00004218)によって承認され、ヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを得た。
【0036】
磁気細胞選別−BALB/cまたはC57BL6マウスから単離された脾臓を採取し、解離した。取扱説明書(ミルテニーバイオテク(Miltenyi Biotec)、カリフォルニア州オーバーン)に従って、マウスCD4+CD62L+ナイーブT細胞またはCD4+CD25+制御性T細胞の単離キットおよびautoMACS(商標)分離装置を用いて、磁気細胞選別によりCD4+CD62L+、CD4+CD25+およびCD4+CD25-Tリンパ球を精製した。この技術により単離されたCD4+CD25+Tリンパ球は、高レベルの転写因子FoxP3を発現し、免疫抑制特性を持っている。
【0037】
CD4+CD62L+T細胞のCD4+CD25+FoxP3+Tregへの転換−上述のようにCD4+CD25-CD62L+ナイーブT細胞をBalb/cマウス脾細胞から単離し、96ウェルプレート(1ウェル当たり100細胞)にて完全培地で培養し、抗CD3/抗CD28T細胞増殖刺激用ビーズ(ダイナビーズ(Dynabeads)、インビトロジェン(Invitrogen))をTリンパ球:ビーズ比1:1で、TGF−β(5ng/ml)の存在下で72時間37℃にて活性化した。いくつかのウェルは、同種異系の活性化CD4+emTh−1細胞の上清で処理された。CD4+CD25+FoxP3+およびCD4+CD25+FoxP3-細胞の割合は、フローサイトメトリー分析で決定された。
【0038】
フローサイトメトリー分析および抗体−3%加熱不活性化ウシ胎児血清と0.09%アジ化ナトリウム(シグマ ケミカル(Sigma Chemical))を含有するPBSで細胞(〜106)を洗浄し、最初にFc受容体遮断Ab(BD バイオサイエンシーズ(Biosciences) ファーミンゲン(Pharmingen)、カリフォルニア州サンディエゴ)で5分間、次に蛍光色素共役Abの適切な組み合わせの飽和量で40分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、ファックス キャリバー(FACS calibur)(ベクトン ディッキンソン イムノサイトメトリー システムズ(Becton Dickinson Immunocytometry Systems)、カルフォルニア州サンノゼ)を用いて分析した。各サンプルについて最低10,000事象を収集し、セルクエスト プロ(CellQwest Pro)ソフトウェア(ベクトン ディッキンソン イムノサイトメトリー システムズ(Becton Dickinson Immunocytometry Systems))を使用してデータ分析を行った。FoxP3検出のため、磁気細胞選別によって精製されたCD4+CD25+もしくはCD4+CD25-T細胞またはin vitroで生成された転換CD4+CD25+Tregを固定し、透過させ、取扱説明書(クローン(Clone) FJK−16、イーバイオサイエンス(eBioscience)、カリフォルニア州サンディエゴ)に従ってアロフィコシアニン(APC)抗マウスFoxP3染色セットを使用して染色し、フローサイトメトリーで分析した。CD4+CD25+Tregを監視するため、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)共役抗CD4(ラットIgG2b;BD バイオサイエンシーズ(Biosciences)ファーミンゲン(Pharmingen))抗体とフィコエリトリン(PE)共役抗CD25(ラットIgG1;BD バイオサイエンシーズ(Biosciences)ファーミンゲン(Pharmingen))抗体を使用して細胞を最初に染色した。その後、上述のようにイーバイオサイエンス(eBioscience)のFoxP3染色セットを使用して細胞を染色した。転写因子TbetおよびGata−3の発現(それぞれTh−1細胞およびTh−2細胞により発現される)は、抗マウスTbet−フィリコエリトリンおよび抗マウスGata−3−フィコエリトリンモノクローナル抗体(BD バイオサイエンシーズ(Biosciences)ファーミンゲン(Pharmingen))を用いて、細胞内染色により評価された。アイソタイプコントロール抗体は、BD バイオサイエンシーズ(Biosciences) ファーミンゲン(Pharmingen)(PE共役ラットIgG1、FITC共役ラットIgG2a)またはイーバイオサイエンス(eBioscience)(APC共役ラットIgG1)から購入された。
【0039】
T細胞増殖および抑制分析−CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞は、ミルテニー(Miltenyi)単離キットを用いて、脾細胞およびリンパ節細胞から精製された。細胞は、完全培地で、または活性化emTh−1細胞上清を用いて、37℃にて96ウェルプレート内で48時間培養され、プレートに接着された抗CD3、可溶性抗CD28およびIL−2で活性化された。その他の実験では、処理されていない、または活性化emTh−1細胞上清で前処理された、または新たに単離された、CD4+CD25-T細胞(1×105)は、処理済みまたは未処理のCD4+CD25+T細胞(1×105)とともに、丸底の96ウェルプレート内で48時間共培養された。抗CD3/CD28T細胞増殖刺激用ビーズ−ダイナビーズ(Dynabeads)を全ての共培養物中に加えた(細胞/ビーズ=1/1)。次に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)(マサチューセッツ州のミリポア コーポレーション(Millipore Corporation))をさらに12時間加えた。次に、細胞を固定化し、取扱説明書(マサチューセッツ州のミリポア コーポレーション(Millipore Corporation))に従ってBrdUの取り込みを酵素結合免疫吸着法(ELISA)で検出した。培養物は6連で設定された。
【0040】
1.077リンパ球分離溶液を用いた密度勾配遠心分離により単離されたヒト末梢血リンパ球を用いて、同様の実験を行った。ヒト制御性T細胞単離キット(ミルテニー バイオテック(Miltenyi Biotec))を使用して、全末梢血単核球細胞からCD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を精製した。完全培地にて、またはヒトemTh−1上清を用いて、細胞を24時間96ウェルプレートで37℃で培養し、プレートに接着された抗CD3(5ng/ml)、可溶性抗CD28(5ng/mL)、およびIL−2(20IU/mL)で活性化した。次に、取扱説明書(インビトロジェン(Invitrogen))に従ってセルトレイス バイオレット(CellTrace Violet)細胞増殖キットを使用し、CD4+CD25-応答T細胞を染色した。製造業者により指示されているように、標識された細胞を、ヒト抗CD3/CD28T細胞増殖刺激用ビーズ(細胞:ビーズ比1:1)でCD4+CD25+T細胞(1×105)とともに共培養し、72時間後にフローサイトメトリーにより細胞分裂を分析した。
[0070] ELISAによるサイトカイン生成の検出−取扱説明書(イーバイオサイエンス(eBiosciences))に従って、酵素結合免疫吸着法(ELISA)キットを使用し、細胞培養物上清中のIFN−γおよびTNF−αの濃度を決定した。
【0041】
12B1白血病細胞および腫瘍生成−ヒトbcr−abl(b32)融合遺伝子を用いてBALB/c骨髄細胞のレトロウイルス形質転換により、マウス白血病細胞株12B1を得た。マウス白血病細胞株12B1のような細胞は、p210bcr−ablタンパク質を発現する。これは、侵攻性の白血病であり、尾静脈注射後100細胞で100%致死量(LD100)である。10%加熱不活性化ウシ胎児血清(ジェミニ バイオ−ブロダクツ(Gemini Bio−products)、カリフォルニア州ウッドランド)を補充したRPMI培地(ジブコ(Gibco)/BRL、メリーランド州ゲイザースバーグ)で、細胞を培養した(37℃、5%CO2)。Wei Chen医師(クリーブランド クリニック(Cleveland Clinic)、オハイオ州クリーブランド)から12B1細胞を入手し、手順に従って試験を行い、マイコプラズマ汚染がないことを確認した。
【0042】
腫瘍を生成するため、最初にPBS(ジブコ(Gibco)/BRL)で12B1細胞を3回洗浄し、次に計数し、濃度を5×104細胞/mLに調節した。メスBALB/cマウスは右鼠径部に0.1mL(5×103細胞)を皮下に注射され、腫瘍の進行を監視した。
【0043】
CRCLの調製−12B1腫瘍由来CRCLを調製した。簡潔に、洗剤含有緩衝液中で腫瘍組織を均質化し、得られた高速上清にロトフォー(Rotofor)装置(バイオ−ラッド(Bio−Rad))で定電力15WにてFS−IEFを実施した。画分を採取し、シャペロンタンパク質の含有量を分析した。関心のある画分をプールし、透析、洗剤除去、および遠心分離濃縮によりワクチンとして調製した。CRCL調製物に含有される内毒素レベルは、取扱説明書に従ってカブトガニ・アメボサイト・ライセート(Limulus Amebocyte Lysate(LAL))分析キット(カムブレックス バイオ サイエンス(Cambrex Bio Science)、メリーランド州ウォーカーズビル)を使用して決定した。CRCL中の内毒素レベルは、培地対照における内毒素レベルより低かった(<0.01EU/μg)。12B1 CRCLは、マウスのin vivoワクチン接種に使用された。
【0044】
in vivoの腫瘍成長および組み合わせ免疫療法−0日目にBALB/cマウスは右鼠径部に5×103の生存12B1細胞を注射された。同種異系(C57BL6)活性化CD4+細胞(105細胞/マウス)または12B1由来CRCLワクチン(25μg/マウス)または細胞+CRCLを、3日目、7日目、14日目に投与した。本治療は、右足蹠に合計体積100μl投与された。腫瘍成長を一日おきに監視し、腫瘍体積が4000mm3に達したときにマウスを安楽死させた。様々な治療グループ間で無腫瘍生存率を比較した。
【0045】
in vivoの免疫細胞の枯渇−抗アシアロGM1抗体(25μl/マウス、PBSで1/8に希釈、ワコー ケミカルズ(Wako Chemicals)、日本、大阪)を1日前、3日目、5日目に腹腔内注射することにより、マウスはNK細胞を枯渇された。
【0046】
統計−カプランマイヤー曲線を生成し、ログランク統計によって分析し、生存率および各治療グループ間の差異を決定した。その他の実験では、スチューデントのt検定を使ってグループ間の有意差(p<XXXX)を決定した。
【0047】
磁気活性化細胞選別を用いて、マウス脾臓からCD4+CD25-CD62L+ナイーブT細胞を単離した。細胞は、T細胞増殖刺激用ビーズ(細胞:ビーズ比1:1)により活性化され、様々な腫瘍細胞株(12B1、B16、4T1)からの培地に再懸濁され、emTh−1細胞の上清で処理された。図1Aにおいて、処理された細胞は96ウェルプレートで37℃にて72時間インキュベートされ、フローサイトメトリー分析を用いてFoxP3発現を決定した。図1Bは、3つの独立した実験からプールされたデータを示す。データをグラフ化し、スチューデントのt検定は、データの図を分析するために使用された。
【0048】
図1Aおよび1Bに示されているように、Th−1細胞上清は、腫瘍細胞またはin vitroのTGFβによって誘発された、ナイーブCD4+CD25-FoxP3-T細胞からのCD4+CD25+FoxP3+Tregの分化を弱めた。Treg亢進は、CD4+CD25-FoxP3-T細胞のCD4+CD25+FoxP3+への転換、または自然発生のTregの増殖の結果であり得る。Treg抑制機能の誘発には転写因子FoxP3が必要とされ、当該非制御性細胞における発現は、当該非制御性細胞を免疫抑制細胞に転換する。エフェクター−メモリーTh−1細胞により生成される可溶性因子の役割を検証した。詳細には、TGF−βが、様々なin vivoのTGF−β分泌腫瘍により誘発されたナイーブT細胞からのTregの生成を負に制御し得るかどうか検証するために、研究を行った。12B1、B16黒色腫および4T1細胞は、培養でTGF−βを分泌することができることが公知である。12B1、B16黒色腫および4T1細胞のような3つの腫瘍細胞株のいずれかを用いてナイーブCD4+CD62L+T細胞の培養は、FoxP3+T細胞への分化を引き起こした(図1A)。しかし、腫瘍誘発FoxP3発現は、培養中に活性化emTh−1細胞の上清の存在により、有意に減少した(図1A、1B)。
【0049】
emTh−1上清(emTh-1 sup)の存在下又は不存在下にて、TGF−β(5ng/mL)を用いて又は用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズ(細胞:ビーズ比1:1)を用いて、CD4+CD25-CD62L+ナイーブT細胞を72時間培養した。次に、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。図2Aおよび図2Bは、10の独立した実験からの代表的なドットプロットまたはヒストグラムプロットである。図Cは、総CD4+Tリンパ球中のCD4+CD25+FoxP3-で活性化したT細胞の割合である。P<.01、emTh−1上清を用いずに培養された細胞と比べて有意の差。図2Dは、処理されたTGF−β1を用いて又は用いずに、またはemTh−1 supを用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズを用いて72時間培養されたCD4+CD25-CD62L+T細胞において決定された、転写因子FoxP3、TbetおよびGATA−3の発現である。3つの実験の代表的な結果を図2Dに示す。
図2A〜2Gのデータは、TGF−βに誘発された、ナイーブT細胞のFoxP3+Tリンパ球への転換を、emTh−1上清が有意に阻害したことを示す(図2Aおよび図2B)。さらに、活性化エフェクター(CD25+FoxP3-)細胞数は、同種異系emTh−1上清により補完された(図2C)。効果は投与量に依存して見られた(図2E)。FoxP3EGFP−トランスジェニックマウスから単離されたナイーブCD4+CD25-FoxP3-T細胞の、TGF−βに誘発された転換が、emTh−1上清の存在下又は不存在下にて行われた。次に、GFP陽性(即ち、FoxP3発現)細胞を選別し、GFP陽性(即ち、FoxP3発現)細胞の抑制活性を評価した。その結果、これらの残留FoxP3発現iTregの機能を弱めることが実証された(図2F)。加えて、すでに転換されたFoxP3+iTregに添加されたemTh−1上清は、その免疫抑制機能を有意に弱めた(図2G)。
【0050】
エフェクター−メモリーTh−1上清を評価して、エフェクター−メモリーTh−1上清が、TGF−β誘発Foxp3+T細胞分化を炎症促進性細胞系統へ傾けるか否かを検証した。Th1またはTh2細胞によってそれぞれ転写因子T−betおよびGATA−3が主として発現される。フローサイトメトリー分析は、TGF−βプラスTh−1細胞上清の存在下で72時間培養した後に得られたCD4+T細胞の大半が低レベルのGata−3とFoxP3を発現したことを示した。得られた細胞のほとんどが、Th−1極性化と一致したTbet陽性表現型を示した(図2D)。従って、これらの結果から、emTh−1細胞は、ナイーブT細胞のTGF−βに依存した極性化をFoxP3+Tregから炎症促進性Th−1系統に切り換えることができる可溶性因子を生成することを示した。
【0051】
マウスIFN−γ(図3A)またはマウスTNF−α(図3B)に対する遮断抗体を用いて又は用いずに、emTh−1上清の存在下又は不存在下にて、TGF−β1を用いて又は用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズを用いて、CD4+CD25-CD62L+ナイーブT細胞を72時間培養した。図3Cおよび3Dにおいて、IFN−γR-/-マウス脾臓からCD4+CD25-CD62L+ナイーブT細胞を単離し、TGF−β1で処理したemTh−1上清の存在下又は不存在下にて、およびemTh−1上清の存在下又は不存在下にて、TGF−β1を用いて又は用いずに、T細胞増殖刺激用ビーズを用いて72時間培養した。FoxP3発現細胞の割合は、フローサイトメーターにより決定された。
【0052】
Th−1細胞により生成された主要なサイトカインの関与を検証した。Th−1細胞培養物からの上清に高レベルのIFN−γおよびTNF−αが検出された。遮断抗体を用いて、TNF−αではなくIFN−γの中和が、emTh−1上清の効果を無効にし、ナイーブ細胞のFoxP3発現T細胞へのTGF−β誘発転換を回復させた(図3Aおよび3B)。このデータは、TNF−αではなく、組換え型IFN−γが、FoxP3+T細胞のTGF−β誘発生成の負の調節を弱めたことを示した(図3Aおよび3B)。これらの結果は、IFN−γR-/-マウスを使用して確認された。図3Cおよび3Dに示されたデータは、IFN−γR-/-マウスから単離されたCD4+ナイーブT細胞のFoxP3+T細胞への転換が、Th−1細胞上清によって修正されなかったことを示した(図3Cおよび3D)。従って、IFN−γは、FoxP3+Tリンパ球生成のTh−1媒介阻害を担う主要なメカニズムを表した。
【0053】
図4Aにおいて、CD4+CD25+nTregは、BALB/cマウスリンパ系組織から単離され、emTh−1上清を用いて又は用いずに、プレートに接着された抗CD3(5ng/mL)、可溶性抗CD28(5ng/mL)、およびIL−2(20IU/mL)とともに、示された時間培養された。次に、フローサイトメトリーを用いてFoxP3発現量を決定した。図4Bにおいて、emTh−1上清を用いて又は用いずに、プレートに接着された抗CD3、可溶性抗CD28、およびIL−2とともに、CD4+CD25+nTregを48時間培養した。次に、完全培地で細胞を大規模に洗浄した。未処理nTreg(CD25-+未処理nTreg)の不存在下(CD25-)または存在下で、またはemTh−1上清で処理されたnTreg(CD25-[nTreg]emTh-1sup)の存在下で、応答CD4+CD25-Tリンパ球を抗CD3/抗CD28T細胞増殖用ビーズを用いて刺激した。応答CD4+CD25-Tリンパ球増殖量は、BrdU取り込み分析を用いて48時間後に決定された。NS、有意ではない;P<.001、未処理Tregとともに培養された応答CD25-T細胞と比較して有意な差。図4Cにおいて、CD4+CD25-Tリンパ球は、最初にemTh−1上清で48時間処理され([CD25-emTh-1sup)または処理されず(未処理CD25-)、完全培地で大規模に洗浄され、新たに単離されたCD4+CD25+nTreg(+nTreg)と48時間共培養された。次に、BrdU組み込み分析を用いて、応答CD25-T細胞の増殖量を決定した。P<.001。図4Dにおいて、図4Cで記載されるように共培養物におけるIFN−γ濃度を評価した。
【0054】
図4Eにおいて、ヒトPBMCからCD4+CD25+Tregを単離し、ヒトemTh−1細胞上清に24時間曝した。次にセル トレイス バイオレット(Cell Trace Violet)で標識されたCD25-応答T細胞を、未処理Treg(CD25-+未処理Treg)またはemTh−1で前処理したTreg(CD25-+[Treg]emTh-1sup)に加えた。図4Fにおいて、ヒトCD4+CD25-Tリンパ球は、最初にemTh−1上清で処理され([CD25-emTh-1sup)または処理されず(未処理CD25-)、次にセル トレイス バイオレット(Cell Trace Violet)で標識され、新たに単離されたCD4+CD25+Treg(+Treg)と共培養された。材料および方法に記載されるようにフローサイトメトリー分析を用いて、応答CD25-T細胞増殖量を決定した。
【0055】
図4Aにおける結果は、nTregにおけるFoxP3発現がemTh−1上清によって弱められなかったことを実証した。マウスリンパ系組織から単離されたnTregは、抗CD3および抗CD28抗体ならびにIL−2を用いて活性化された。細胞は、完全培地またはemTh−1上清のいずれかで48時間培養され、次に新たに単離されたCD4+CD25-細胞とさらに48時間共培養される前に洗浄された。emTh−1上清で処理された又は処理されていないnTregのCD4+CD25-細胞増殖を阻害する能力は、BrdU組み込み分析を用いて分析された。そのデータは、emTh−1上清(図4B)またはIFN−γが、CD4+CD25+通常T細胞の増殖を抑制するTregの能力を阻害したことを示した。末梢血リンパ球から単離されたヒトCD4+CD25+TregおよびCD4+CD25-応答T細胞を使用した場合も、同様の結果が得られた(図4E)。
【0056】
emTh−1上清とともにT細胞を48時間インキュベートし、次に、新たに単離されたCD4+CD25+FoxP3+nTregと共培養した。emTh−1上清で前処理されたCD4+CD25-T細胞のIFN−γ(図4D)の増殖(図4C)および生成のいずれも、Tregによって抑制されなかった。emTh−1上清で前インキュベートされたヒトCD4+CD25+応答T細胞をヒトCD4+CD25+Tregに曝した場合も、同様の結果が得られた(図4F)。これらのデータは、emTh−1細胞がTregの阻害機能を弱めるだけでなく、Treg媒介阻害に対するエフェクターT細胞の耐性も誘発することを示した。
【0057】
0日目にナイーブBALB/cマウスは右鼠径部に5×103の生きている12B1細胞を注射された。図5Aにおいて、3日目、7日目および14日目にワクチン接種を行った。本治療は、「材料および方法」で記載されているように、右足蹠に投与された。マウスの生存を監視し、カプランマイヤープロットにて表示した。図5Bにおいて、0日目にSCIDマウスは右鼠径部に5×103の生きている12B1細胞を注射され、3日目、7日目および14日目に足蹠注射により、PBS、活性化emTh−1または活性化emTh−1+CRCLの組み合わせのいずれかで治療された。図5Cにおいて、免疫適格Balb/cマウスは腫瘍細胞を注射され、3日目、7日目および14日目に、PBS、または活性化emTh−1+CRCLの組み合わせのいずれかで治療された。いくつかのマウスグループにおいて、「材料および方法」で記載されているように、1日前、3日目および5日目に抗アシアロGM1抗体の腹腔内注射を用いて、NK細胞を枯渇させた。全ての実験において、マウスの生存を監視し、カプランマイヤープロットにて表示した。図5Dにおいて、0日目にC57BL/6マウスは5×105のB16細胞を注射された。次に、B16由来CRCLプラスemTh−1+B16 CRCLを用いて動物を治療した(3日、5日および7日)。材料および方法で記載されているように、腫瘍体積を毎日監視した。カプランマイヤー分析を用いて動物の生存率を示した。
【0058】
腫瘍特異的免疫を誘発するために、同種異系エフェクター−メモリーTh−1細胞をベースとした免疫療法を、同一タイプの腫瘍に由来したCRCLのような個人化されたワクチンと組み合わせることが可能か否かについて検証し評価した。図5の結果に示されるように、同種異系emTh−1細胞は、in vivoで安全に送達され、シャペロンリッチ細胞可溶化物(CRCL)と効率的に組み合わされ、12B1白血病のマウスを治療することができる。ナイーブBalb/cマウスにおける確立された12B1腫瘍が使用され、エフェクター−メモリーTh−1細胞をベースとした免疫療法をCRCLワクチン接種戦略と効率的に組み合わせることにより、治療された動物の無腫瘍生存率が有意になることができることを確認した(図5A)。B16由来CRCLプラスBALB/cマウスから生成されたemTh−1細胞で処理された、B16腫瘍を持つC57BL/6マウスからなるB16黒色腫モデルを使用して、同様の結果が得られた(図5Dを参照)。
【0059】
SCIDマウスとNUDEマウスを使用することにより、CRCLプラス活性化emTh−1で誘発された抗腫瘍応答におけるT細胞の役割を定義した。上記の記載されるように、腫瘍細胞接種後3、7、14日後に、CRCLプラス活性化emTh−1で12B1腫瘍を持つSCIDマウスを処理した。CRCLプラス活性化emTh−1の免疫療法は、12B1腫瘍を持つSCIDマウスの生存率を向上させなかった(図5B)。同様の結果がNUDEマウスを使用して得られた。これらのデータは、同種異系Th−1プラスCRCLを組み合わせた、12B1腫瘍に対する免疫療法の保護効果は、T細胞媒介免疫反応に依存することを示した。これらのデータと一致して、免疫適格マウスにおいて抗アシアロGM1抗体を用いてin vivoでNK細胞の枯渇は、同種異系Th−1プラスCRCL処理の治療的有効性を有意には弱めなかった。このことは、組み合わせ処理によって誘発される抗腫瘍免疫反応においてNK細胞は主要な役割を果たしていないことを示す(図5C)。従って、同種異系活性化emTh−1細胞をCRCLワクチンと組み合わせることをベースとした免疫療法の腫瘍保護効果は、Tリンパ球に依存する。
【0060】
図5に関して説明されるように、ナイーブBALB/cマウスは0日目に5x103の12B1細胞を(右鼠径部において皮下に)注射され、ワクチン接種された。次に、45日目に、生存している腫瘍を持たないマウスに、5x103の12B1細胞を右鼠径部において皮下に再注射され、1x106のA20細胞を左鼠径部において皮下に投与された。1日おきに腫瘍体積を決定した。図6Aにおいて、A20腫瘍体積を対照マウスで測定した。図6Bにおいて、A20腫瘍体積をemTh−1プラスCRCLで処理されたマウスで測定した。図3Cにおいて、12B1体積を対照グループで測定した。図3Dにおいて、12B1腫瘍体積をemTh−1プラスCRCLで処理された動物で測定した。結果は、2つの独立した実験を代表している。
【0061】
CRCLプラス同種異系活性化emTh−1細胞で処理された生存マウスは、右鼠径部に親12B1腫瘍細胞を、および対向する鼠径部に無関係のB細胞白血病(A20、H−2D)を、再注射された。処理グループと対照グループの双方で、8匹のマウス全てにおいてA20腫瘍が発生した(図6Aおよび6B)。CRCLプラス同種異系エフェクター−メモリーTh−1細胞グループでは、8匹のマウスのうち5匹が12B1腫瘍再接種から保護され、2匹が腫瘍成長の遅れを示した。一方、全ての対照マウスは12B1腫瘍を発生した(図6Cおよび6D)。このように、これらの結果は、CRCLプラス同種異系活性化emTh−1細胞からなる組み合わせ免疫療法は、治療された動物の大半において長期間継続する腫瘍特異性免疫を誘発することを示す。
【0062】
図7Aにおいて、emTh−1プラスCRCLの免疫療法は、腫瘍特異的キラーTリンパ球を誘発する。B16腫瘍を持つマウスは、材料および方法で記載されるように、対照PBSを注射されるか、またはB16由来CRCLと同種異系emTh−1細胞で処理された。最後のワクチン接種から7日目に、脾細胞を採取し、CRCL(25マイクログラム/mL)と50U/mLのIL−2を用いて3日間インキュベートした。次に、Tリンパ球をナイロンウールカラム上で精製し、示されているように、B16腫瘍細胞または無関係の4T1乳癌細胞標的のいずれかとともに36時間インキュベートした(エフェクターT細胞対標的腫瘍細胞比20:1)。細胞毒性を決定した。対照T、PBSを注射されたマウスからのTリンパ球を用いて培養された腫瘍細胞;+T[emTh−1]、CRCLプラスemTh−1で処理されたマウスからのTリンパ球を用いて培養された腫瘍細胞。図7Bにおいて、emTh−1細胞は、CD4+CD25-FoxP3-ナイーブTリンパ球の分化を、in vivoのTregよりむしろCD4+CD25+FoxP3-エフェクターT細胞の方に傾けた。Thy1.2 FoxP3EGFPトランスジェニックBALB/cマウスから単離されたCD4+CD25-FoxP3-ナイーブTリンパ球(107細胞)を、12B1腫瘍を持つコンジェニックThy1.1 BALB/cマウスに移植した。動物は、emTh−1細胞(+emTh−1細胞)または対照PBS(emTh−1細胞は無し)で処理された。レシピエントThy1.1マウスの内因性T細胞は、Thy1.1抗原を発現するが、Thy1.2抗原は発現しない。これにより、Thy1.1マウスにおけるThy1.2 Tリンパ球の特定の追跡と同定を許す。脾臓を採取して解離し、移植されたナイーブThy1.2 CD4+CD25-FoxP3-T細胞の、in vivoでのGFP+(FoxP3発現)Tregへの転換を、フローサイトメトリーを用いてCD4+T細胞個体群上にゲーティング後にThy1.2 GFP+細胞の頻度を評価することによって決定した。図7Cにおいて、emTh−1細胞は、in vivoのTreg抑制機能を弱めた。応答CD4+CD25-Tリンパ球は、処理されていない腫瘍を持つマウス(CD25-+[Treg]未処理)またはemTh−1で処理された腫瘍を持つマウス(CD25-+[Treg]emTh−1)の流入領域リンパ節から単離されたTregの不存在(CD25-)下または存在下で、抗CD3/抗CD28T細胞増殖刺激用ビーズを用いて刺激された。応答CD4+CD25-Tリンパ球増殖量は、BrdU取り込み分析を用いて48時間後に決定された。
【0063】
CRCLプラスemTh−1細胞で処理されたマウスから単離されたT細胞の抗腫瘍機能を分析した。組み合わせ治療を受けた動物の脾臓から精製されたリンパ球は、親腫瘍細胞を特異的に殺すことができたが、無関係の標的癌細胞を殺すことはできなかった(図7A)。emTh−1細胞は、12B1腫瘍を持つコンジェニックThy1.1マウスに移植されたナイーブThy1.2 CD4+CD25-FoxP3-Tリンパ球の分化を、Thy1.2 CD4+CD25+FoxP3+TregよりもむしろThy1.2 CD4+CD25+FoxP3-エフェクターT細胞に傾けることができた(図7B)。加えて、emTh−1細胞で処理された腫瘍を持つ動物から単離されたTregの抑制機能は有意に低下した(図7C)。このことは、in vitroで観察された、emTh−1細胞のTregへの効果は、in vivoでも生じることを確認し、さらに、emTh−1細胞がCRCLワクチン接種の有効性を増加させるメカニズムは腫瘍誘発Tregの阻害に関与することを実証した。
【0064】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細を変更し得ることを理解するであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A-6D】
図7A
図7B
図7C