(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294698
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】化粧複合板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27M 3/00 20060101AFI20180305BHJP
B27D 5/00 20060101ALI20180305BHJP
B32B 21/06 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
B27M3/00 N
B27D5/00
B32B21/06
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-28127(P2014-28127)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-150816(P2015-150816A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104640
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋司
(72)【発明者】
【氏名】原田 和信
(72)【発明者】
【氏名】糸井 健
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−023909(JP,A)
【文献】
特開2008−254397(JP,A)
【文献】
特開2000−186266(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0220271(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0038062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00
B27D 5/00
B32B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板の表面に接着剤を塗布する工程と、
接着剤が塗布された合板の上に木質繊維板又は樹脂含浸紙を載置する工程と、
接着剤を介して合板、木質繊維板又は樹脂含浸紙が積層された積層体を熱圧することなく、合板の上に接着剤を介して載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面に接着剤をロールコータを用いて塗布する工程と、
接着剤が塗布された木質繊維板又は樹脂含浸紙の上に表面化粧材を載置する工程と、
接着剤を介して合板、木質繊維板又は樹脂含浸紙、表面化粧材が順次積層された積層体を熱圧する工程とを備え、
合板の表面には、25000〜72000mPa・s/2〜30℃の粘度を有する、変性酢酸ビニル系の水性接着剤または水性ビニルウレタン樹脂系接着剤を、その塗布量が8.0〜9.0g/尺2になるように塗布し、
木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面には、25000〜30000mPa・s/2〜30℃の粘度を有する、SBR系接着剤または尿素メラミン樹脂系接着剤を塗布したことを特徴とする化粧複合板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床材、壁材等の建築材料や家具材料として使用される化粧複合板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図8に示すように、合板51、木質繊維板(以下、MDFという。)52及び突板等の表面化粧材53を順次積層してなる化粧複合板50については、通常、以下に示すような方法で製造されている。まず、
図9(a)に示すように、合板51の表面に接着剤a1を介してMDF52を載置し、これを、同図(b)に示すように、圧締することによって合板にMDFが接着固定された複合板を製造した後、
図10(a)に示すように、この複合板CPの表面(MDF52の表面)に接着剤a2を介して表面化粧材53を載置し、同図(b)に示すように、これを圧締することによって複合板CPに表面化粧材53を接着固定することで化粧複合板50を製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−224705号公報
【特許文献2】特開2008−254397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように2段階の圧締工程を経て化粧複合板50を製造する場合は、通常、合板51にMDF52を貼着するための1回目の圧締工程と、合板51にMDF52が接着固定された複合板CPに表面化粧材53を貼着する2回目の圧締工程とは別ラインで行われるので、合板51にMDF52が接着固定された複合板CPを、1回目の圧締処理ラインから2回目の圧締処理ラインへ搬送するための搬送費用が必要になると共に、2回分の圧締処理費用が必要になるため、低コストで効率よく化粧複合板50を製造することができなかった。
【0005】
このため、
図11(a)〜(c)に示すように、合板51の表面に接着剤a1を塗布した後、その合板51の上にMDF52を載置し、さらに、そのMDF52の表面に接着剤a2を塗布した後、そのMDF52の上に表面化粧材53を載置して圧締するといった具合に、1回の圧締工程で、合板、MDF及び表面化粧材を同時に貼り合わせることが望まれている。
【0006】
しかしながら、通常、板材に対する接着剤の塗布作業は、
図12に示すように、コーティングロールCR、ドクターロールDR及びバックアップロールBRを備えたロールコータRCのコーティングロールCRとバックアップロールBRとによって板材Pを挟み込んで送出することによって行われるので、合板51の上に接着剤を介して載置されたMDF52の表面にさらに接着剤を塗布するために、接着剤を介してMDF52が載置されただけの合板51をロールコータRCのコーティングロールCRとバックアップロールBRとによって挟み込んで送出すると、合板51に接着固定されていないMDF52が合板51に対して位置ずれするおそれがあり、しかも、MDF52が一旦位置ずれすると、その位置ずれを修正することは難しいことから、上述したように、MDF52を合板51に一旦接着固定した後に表面化粧材53を貼着せざるを得ず、1回の圧締工程で化粧複合板50を量産することは、現実的に不可能であった。
【0007】
そこで、この発明の課題は、1回の圧締工程で化粧複合板を量産することができる化粧複合板を製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、合板の表面に接着剤を塗布する工程と、接着剤が塗布された合板の上に木質繊維板又は樹脂含浸紙を載置する工程と、
接着剤を介して合板、木質繊維板又は樹脂含浸紙が積層された積層体を熱圧することなく、合板の上に接着剤を介して載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面に接着剤をロールコータを用いて塗布する工程と、接着剤が塗布された木質繊維板又は樹脂含浸紙の上に表面化粧材を載置する工程と、接着剤を介して合板、木質繊維板又は樹脂含浸紙、表面化粧材が順次積層された積層体を熱圧する工程とを備え、合板の表面
には、25000〜72000mPa・s/2〜30℃の粘度を有
する、変性酢酸ビニル系の水性接着剤または水性ビニルウレタン樹脂系接着剤を、そ
の塗布量
が8.0〜9.0g/尺
2に
なるように塗布し、木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面には、25000〜30000mPa・s/2〜30℃の粘度を有する、SBR系接着剤または尿素メラミン樹脂系接着剤を塗布したことを特徴とする化粧複合板の製造方法を提供するものである。
【0009】
なお、合板の表面に塗布する接着剤の粘度を25000〜72000mPa・s/2〜30℃に設定したのは、粘度が25000mPa・s/2〜30℃を下回ると、合板の上に接着剤を介して載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面に接着剤をロールコータを用いて塗布する際に、合板の上に載置した木質繊維板又は樹脂含浸紙をその位置に保持することが難しく、粘度が72000mPa・s/2〜30℃を上回ると、均一に塗布することができず、塗布ムラが発生するおそれがあるからである。
【0010】
また、合板の表面に塗布する接着剤の塗布量を8.0〜9.0g/尺
2に設定したのは、塗布量が9.0g/尺
2を上回ると、合板の上に接着剤を介して載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面に接着剤をロールコータを用いて塗布する際の圧力によって、合板の上に載置した木質繊維板又は樹脂含浸紙が位置ずれし易く、塗布量が8.0g/尺
2を下回ると、十分な接着力を確保することができず、木質繊維板又は樹脂含浸紙が剥離するおそれがある。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項1に係る発明の化粧複合板の製造方法では、合板の表面に塗布する接着剤が、25000〜72000mPa・s/2〜30℃の粘度を有し、その接着剤の塗布量が8.0〜9.0g/尺
2に設定されているので、
接着剤を介して合板、木質繊維板又は樹脂含浸紙が積層された積層体を熱圧することなく、合板の上に接着剤を介して載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙の表面に接着剤をロールコータを用いて塗布する際、合板の上に載置された木質繊維板又は樹脂含浸紙が位置ずれしにくく、1回の圧締工程で化粧複合板を効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明に係る化粧複合板の製造方法を示す工程図である。
【
図2】同上の化粧複合板の製造方法における接着剤塗布工程〔1〕を示す概略図である。
【
図3】(a)、(b)は同上の化粧複合板の製造方法における表層材載置工程を示す概略図である。
【
図4】同上の化粧複合板の製造方法における接着剤塗布工程〔2〕を示す概略図である。
【
図5】(a)、(b)は同上の化粧複合板の製造方法における表面化粧材載置工程を示す概略図である。
【
図6】(a)、(b)は同上の化粧複合板の製造方法における熱圧工程を示す概略図である。
【
図7】同上の製造方法によって製造される化粧複合板を示す側面図である。
【
図9】(a)、(b)は化粧複合板の従来の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】(a)、(b)は化粧複合板の従来の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】(a)〜(c)は従来から望まれている化粧複合板の製造工程を示す工程図である。
【
図12】板材に対する接着剤の塗布工程で使用される一般的なロールコータを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化粧複合板の製造方法について、図面を参照して説明するが、本発明の化粧複合板の製造方法はこの実施例に限定されるものではない。
【0014】
図7に示すように、製造しようとする化粧複合板1は、厚さ9mmの5プライ合板からなる木質基材11の上面に、厚さ2.7mmのMDFからなる表層材12及び厚さ0.25mmの突板からなる表面化粧材13が、水性接着剤WA、WBによって、順次積層接着されたものであり、
図1に示すように、1本の製造ライン上において、接着剤塗布工程〔1〕、表層材載置工程、接着剤塗布工程〔2〕、表面化粧材載置工程、熱圧工程からなる一連の工程を経て製造される。
【0015】
まず、
図2に示すように、木質基材11を、ロールコータRCのコーティングロールCRとバックアップロールBRとの間に通すことによって、その上面に水性接着剤WAを塗布する(接着剤塗布工程〔1〕)。水性接着剤WAとしては、粘度が25000〜72000mPa・s/2〜30℃に調整された変性酢酸ビニル系の接着剤を使用し、その塗布量は、8.0〜9.0g/尺
2である。
【0016】
続いて、
図3(a)、(b)に示すように、水性接着剤WAが塗布された木質基材11の上面に厚さ2.7mmのMDFからなる表層材12を載置する(表層材載置工程)。ここで、木質基材11に対して表層材12が位置ずれしている場合は、その位置ずれを修正しておく必要がある。特に、本実施例においては、表層材12を構成しているMDFの厚みが2.7mmと比較的厚いので、表層材12の位置ずれを修正する際に表層材12が破損しにくいという利点がある。
【0017】
次に、
図4に示すように、水性接着剤WAを介して表層材12が載置された木質基材11を、ロールコータRCのコーティングロールCRとバックアップロールBRとの間に通すことによって、その上面に、粘度が25000〜30000mPa・s/2〜30℃のSBR系の水性接着剤WBを8.5g/尺
2塗布し後(接着剤塗布工程〔2〕)、
図5(a)、(b)に示すように、表層材12の上面に厚さ0.25mmの突板からなる表面化粧材13を載置する。
【0018】
このようにして、水性接着剤WA、WBを介して表層材12及び表面化粧材13が順次載置された木質基材11を、
図6(a)、(b)に示すように、熱板HPで挟み込み、105〜115℃、6〜7kgf/cm
2の圧力で70〜80秒間熱圧すると、
図7に示す化粧複合板1が出来上がる。
【0019】
以上のように、この化粧複合板の製造方法では、木質基材11の表面に塗布する水性接着剤WAが、25000〜72000mPa・s/2〜30℃の粘度を有し、その塗布量が8.0〜9.0g/尺
2に設定されているので、木質基材11の上に水性接着剤WAを介して載置された表層材12の表面に水性接着剤WBをロールコータRCを用いて塗布する際、木質基材11の上に載置された表層材12が位置ずれしにくい。
【0020】
従って、表層材12の表面に水性接着剤WBを塗布する前に、水性接着剤WAを介して表層材12が載置された木質基材11を圧締することによって表層材12を木質基材11に予め接着固定しておく必要がなく、上述したように、1本の製造ライン上において、木質基材11、表層材12及び表面化粧材13を順次積層し、1回の圧締工程によって、木質基材11、表層材12及び表面化粧材13を接着一体化することができるので、木質基材に表層材を貼着するための1回目の圧締工程と、木質基材に表層材が接着固定された複合板に表面化粧材を貼着するための2回目の圧締工程とを別ラインで行わざるを得なかった従来の製造方法とは異なり、複合板を1回目の圧締処理ラインから2回目の圧締処理ラインへ搬送するための搬送費用が不要になると共に、1回分の圧締処理費用で済むので、化粧複合板1を効率よく低コストで製造することができる。
【0021】
なお、上述した実施例では、木質基材11の上面に塗布する水性接着剤WAとして、変性酢酸ビニル系の水性接着剤を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、水性ビニルウレタン樹脂系の接着剤を使用することも可能である。ただし、使用する接着剤は、25000〜72000mPa・s/2〜30℃の範囲内の粘度に調整しておく必要があり、塗布量も、8.0〜9.0g/尺
2の範囲内でなければならない。
【0022】
また、上述した実施例では、表層材12の上面に塗布する水性接着剤WBとして、SBR系の接着剤を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、尿素メラミン樹脂系の接着剤を使用することも可能である。
【0023】
また、上述した実施例では、表層材12として、厚さ2.7mmのMDFを使用しているが、MDFの厚みは特に限定されず、MDFに替えて、樹脂含浸紙を使用することも可能である。
【0024】
また、上述した実施例では、表面化粧材13として、ブナ、オーク、樺、栗等からなる突板を使用しているが、これに限定されるものではなく、種々の化粧シートを使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、床材、壁材等の建築材料や家具材料として使用される化粧複合板を製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 化粧複合板
11 木質基材
12 表層材
13 表面化粧材
BR バックアップロール
CR コーティングロール
DR ドクターロール
HP 熱板
RC ロールコータ
WA、WB 水性接着剤