【文献】
Viera GH, et al.,Antibacterial effect (in vitro) of Moringa oleifera and Annona muricata against Gram positive and Gram negative bacteria,Revista do Instituto de Medicina Tropical de Sao Paulo,2010年,Vol.52, No.3,p.129-132
【文献】
Mahajan SG, Mehta AA,Immunosuppressive activity of ethanolic extract of seeds of Moringa oleifera Lam. in experimental immune inflammation,Journal of Ethnopharmacology,2010年 5月 6日,Vol.130, No.1,p.183-186
【文献】
Mahajan SG, et al.,Protective Effect of Ethanolic Extract of Seeds of Moringa oleifera Lam. Against Inflammation Associated with Development of Arthritis in Rats,Journal of Immunotoxicology,2007年,Vol.4, No.1,p.39-47
【文献】
Mahajan SG, Mehta AA,Inhibitory Action of Ethanolic Extract of Seeds of Moringa oleifera Lam. On Systemic and Local Anaphylaxis,Journal of Immunotoxicology,2007年,Vol.4, No.4,p.287-294
【文献】
三木 崇絵,新規植物由来油性剤の化粧品への応用,FRAGRANCE JOURNAL,2005年 7月15日,第33巻,第7号,p.47−52
【文献】
Gupta R, et al.,Evaluation of antidiabetic and antioxidant activity of Moringa oleifera in experimental diabetes,Journal of Diabetes,2012年,Vol.4, No.2,p.164-171
【文献】
Francis JA, et al.,Insulin Secretagogues from Moringa oleifera with Cyclooxygenase Enzyme and Lipid Peroxidation Inhibitory Activities,Helvetica Chimica Acta,2004年,Vol.87, No.2,p.317-326
【文献】
編集代表 津田恭介・野上寿,医薬品開発基礎講座 XI 薬剤製造法(上),株式会社地人書館,1971年 7月10日,p.15−16,「(a)浸出溶剤」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[抽出物]
本発明の抽出物は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子から得られる。
【0011】
モリンガ(ワサビノキ)は、ナミビア、マダガスカル、東アフリカと、アラビア半島、インドの熱帯から亜熱帯にかけて生育する落葉性植物である。斯かるモリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物としては、例えば、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)、モリンガ・コンカネンシス(Moringa concanensis)、モリンガ・ドロウハルディ(Moringa drouhardii)等が挙げられる。これらの葉や花、根は、香味野菜、香辛料として使用されている。
【0012】
本発明者らは、上記のモリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子に糖代謝改善作用があることを見出したものである。ここで、本発明において「糖代謝改善作用」とは、血糖値の上昇を抑制する作用、血糖値を低下させる作用を意味する。
【0013】
糖代謝改善作用に優れる抽出物を得る観点から、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物としては、モリンガ・オレイフェラが好ましい。モリンガ・オレイフェラは、インド原産の落葉小高木であり、その学名はMoringa oleifera LAM.(M.pterygosperma)である。モリンガ・オレイフェラにはまた、ホースラディッシュツリー(Horseradish tree)、ベンナッツ(Ben nut)、Malungai(タガログ語)、Sanjanaa(ヒンズー語)などの多くの別名がある。
【0014】
モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子は、生のまま使用してもよく、乾燥後に使用してもよい。また、種子は、外皮が付いたまま使用してもよく、外皮を除去した後に使用してもよい。種子はまた、粉状に粉砕した後に使用してもよい。種子を粉状に粉砕する場合、外皮が付いたままの種子又は外皮を除去した種子を粉砕機(例えばワンダーブレンダー)で粉砕して粉状体とし得る。糖代謝改善作用に優れる抽出物を得る観点から、外皮が付いたままの種子又は外皮を除去した種子を粉砕して得られる粉状体を使用することが好ましい。
【0015】
モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子は市販品を使用してもよい。市販品は、例えば株式会社アイテル等で購入することができる。
【0016】
モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子から糖代謝改善作用を有する抽出物を得るにあたっては、種子を、有機溶媒抽出法及び/又は超臨界抽出法により抽出することが重要である。この点、種子の水性抽出物には有意な糖代謝改善作用は認められない。
【0017】
なお、植物は、種類が異なれば、含有される有効成分が異なることは周知である。また、同種の植物であっても、種子、茎、根等の各部位において含有される有効成分が相違し、作用活性が異なることもよく知られている[例えば、1)厚生労働省、一般用医薬品販売制度「試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)」 第184頁 [online] [平成25年3月4日検索]、インターネット<URL:http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/shiken.html>、2)吉川雅之監修、「薬用食品の開発−薬用・有用植物の機能性食品素材への応用−」、シーエムシー出版、2007年2月、第68頁を参照]。斯かる事情も勘案すれば、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を有機溶媒抽出法及び/又は超臨界抽出法により抽出することによって糖代謝改善作用を有する抽出物を得ることができるという本発明における知見は、たとえモリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物について葉や花、根が香味野菜、香辛料として使用されてきた経緯があったとしても何ら予見し得なかったものである。また、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の葉や花、根には特有のにおいや苦味がある。
【0018】
(有機溶媒抽出法)
好適な一実施形態において、本発明の抽出物は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を有機溶媒で抽出して得られる。
【0019】
抽出に使用される有機溶媒としては、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の炭素数1〜4の1価若しくは多価アルコール)、飽和炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
中でも、糖代謝改善作用に優れる抽出物を得る観点から、有機溶媒としては、低級アルコールが好ましく、炭素数1〜4の1価アルコールがより好ましく、エタノールがさらに好ましい。
【0021】
抽出に使用される有機溶媒は、水を含まないことが望ましいが、少量の水を含んでいてもよい。糖代謝改善作用に優れる抽出物を得る観点から、抽出に使用される有機溶媒中の水の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0022】
抽出は、種子に対する抽出溶媒の質量比(抽出溶媒/種子)が、好ましくは5〜100の範囲、より好ましくは5〜50の範囲となるように実施してよい。
【0023】
抽出温度は、抽出溶媒の融点以上沸点以下の範囲とし得る。抽出溶媒の種類にもよるが、抽出温度は、好ましくは−20℃〜78℃、より好ましくは4℃〜36℃、さらに好ましくは15℃〜30℃である。
【0024】
抽出時間は、特に制限されないが、通常、30分間〜2日間の範囲であり、好ましくは1時間〜1日間の範囲である。
【0025】
抽出は、上記条件の下、攪拌下又は静止状態下で実施してよい。抽出はまた、抽出溶媒を還流させつつ実施してもよい。なお、抽出の回数に特に制限はなく、複数回繰り返してもよい。
【0026】
抽出の後、濾過、遠心分離等により種子残渣を除去し、減圧等により抽出溶媒を除去して、固形物として本発明の抽出物を得ることができる。
【0027】
(超臨界抽出法)
好適な一実施形態において、本発明の抽出物は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を超臨界抽出して得られる。
【0028】
超臨界抽出に使用される溶媒としては、臨界温度が600K以下の溶媒が好ましく、例えば、二酸化炭素、飽和炭化水素(好ましくは炭素数1〜4の飽和炭化水素)、低級アルコール(好ましくは炭素数1〜4の1価アルコール)が挙げられる。斯かる溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。2種以上の溶媒を混合して使用する場合、少なくとも1種の溶媒が超臨界状態になっていればよい。
【0029】
臨界温度が比較的低く、取り扱い性にも優れることから、超臨界抽出に使用される溶媒としては、二酸化炭素が好ましい。
【0030】
超臨界抽出の条件は、使用する溶媒によって異なるが、二酸化炭素を使用する場合、温度40℃〜80℃、圧力15MPa〜45MPa、抽出時間1時間〜6時間とすることが好ましい。
【0031】
二酸化炭素を使用した超臨界抽出では、抽出の後に圧力を低下させることにより、二酸化炭素から抽出物を分離することができる。なお、二酸化炭素に加えて又は二酸化炭素に代えて低級アルコール等の他の溶媒を使用する場合は、抽出の後に圧力を低下させることにより二酸化炭素を分離した後、必要に応じて、減圧等により上記他の溶媒を除去してよい。
【0032】
本発明の抽出物は、糖代謝改善作用に優れると共に香味にも優れることから、継続して有効量を摂取し易い。よって、本発明の抽出物を含有する飲食品、医薬品(糖代謝改善剤)は、糖代謝を改善するにあたり、極めて有用である。なお、本発明の抽出物の糖代謝改善作用は、例えば、後述する高血糖モデルマウスを用いて評価することができる。
【0033】
[飲食品]
本発明の抽出物を用いて、糖代謝改善作用を有する飲食品を提供することができる。
【0034】
本発明の抽出物に関しては上述のとおりであるが、糖代謝改善作用の観点から、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物を使用することが好ましい。したがって、好適な一実施形態において、本発明の飲食品は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物を含有する。
【0035】
本発明の飲食品は、本発明の抽出物に加えて、ウコギ科人参、ウコギ科人参の抽出物及び酸処理物、ウコギ科人参に含まれるサポニン及びその代謝産物、パナキサジオール、パナキサトリオール、プロトパナキサジオール、並びにプロトパナキサトリオールから選ばれる1種以上の成分(以下「補助成分」ともいう。)を含有してもよい。
【0036】
本発明の抽出物に加えて、上記補助成分を使用することにより、さらに優れた糖代謝改善作用を奏する飲食品をもたらすことができる。
【0037】
上記補助成分において、ウコギ科人参としては、例えば、御種人参(朝鮮人参、高麗人参とも別称される)、田七人参などが挙げられ、田七人参が好ましい。
【0038】
ウコギ科人参の抽出物としては、水抽出物又は酸処理物の抽出物が好ましく、酸処理物の抽出物がより好ましい。酸処理物の抽出物は、例えば、国際公開第2010/029915号に記載の方法により得られた酸処理物を溶媒抽出して得ることが好ましい。酸処理物の抽出に使用する溶媒は、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の種類、抽出の条件等は、本発明の抽出物について先述したものと同様である。
【0039】
ウコギ科人参の酸処理物は、ウコギ科人参に強酸水溶液を作用させて得ることができる(詳細は後述する)。ウコギ科人参の酸処理物は、本発明の抽出物との組み合わせにおいて、ウコギ科人参そのものよりも優れた糖代謝改善作用をもたらす。ウコギ科人参を酸処理すると、ウコギ科人参に含まれるサポニンから糖がはずれ、パナキサトリオール、パナキサジオール、プロトパナキサトリオール、プロトパナキサジオール等のサポゲニン(アグリコン体)が生成される。これらサポゲニンは、活性成分としてサポニンよりも優れた糖代謝改善作用を発揮すると共に、サポニンよりも体内吸収性に優れる。また、後述する方法によって得られる酸処理物は、安全性が高く、味や取扱い性の点でも優れるため、そのまま、或いは、適宜処理を施した後に、本発明の抽出物と組み合わせて健康食品等の有効成分として好適に利用可能である。
【0040】
ウコギ科人参に含まれるサポニンとしては、例えば、ジンセノサイド−Rb
1、ジンセノサイド−Rd、ジンセノサイド−Rc、ジンセノサイド−Rg
1が挙げられる。
【0041】
パナキサジオール、パナキサトリオール、プロトパナキサジオール、及びプロトパナキサトリオール等のサポゲニンの入手方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、サポニン含有植物、例えばウコギ科人参を原料として、特開2011−12005号公報に記載の方法により得られるサポゲニン含有組成物であってもよく、該サポゲニン含有組成物から単離したサポゲニンであってもよい。
【0042】
中でも、本発明の抽出物との組み合わせにおいて糖代謝改善作用を相乗的に高め得る観点から、補助成分としては、ウコギ科人参の酸処理物を使用することが好ましい。
【0043】
以下、ウコギ科人参の酸処理物の製造方法について説明する。なお、サポゲニン含有組成物は、以下の説明において、「ウコギ科人参」を「サポニン含有植物」と読み替えることにより好適に製造することができる。サポニン含有植物としては、サポニンが含まれる植物であれば特に限定されず、ウコギ科人参等のウコギ科に属する植物の他、例えば、セリ科、ヒメハギ科、キキョウ科、ウリ科、マメ科、ヒユ科、アケビ科、クロウメモドキ科、ユリ科、ヤマノイモ科に属する植物が挙げられる。
【0044】
〔製造方法〕
ウコギ科人参の酸処理物は、例えば国際公開第2010/029915号及び特開2011−12005号公報に記載されるように、ウコギ科人参を強酸水溶液及び低級アルコールの存在下で加水分解処理した後、濾過して得てよい。
【0045】
ウコギ科人参は、天然から採取されたそのままの状態で使用してもよいが、例えば、洗浄、乾燥、裁断、破砕、粉砕等を適宜組み合わせた前処理を施してから使用をすることで、後述する加水分解処理をより効率的に行うことが可能となる。これらの中でも、ウコギ科人参としては、粉砕処理を施した粉末状のものを使用することが好ましい。なお、ウコギ科人参は、市販品を利用してもよい。市販品の具体例としては、田七人参粉末、田七人参水抽出エキス末(共に、松浦薬業株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
以下、酸処理物の粉末を効率的に得る観点から特に好適な製造方法を例示する。
【0047】
好適な一実施形態において、ウコギ科人参の酸処理物は、ウコギ科人参を所定の濃度の強酸水溶液及び低級アルコールの存在下で加水分解処理し(加水分解処理工程)、得られた加水分解処理後の液を中和し(中和工程)、濾過し(濾過工程)、濾別された残渣を乾燥する(乾燥工程)ことにより製造することができる。
【0048】
<加水分解処理工程>
加水分解処理工程において、ウコギ科人参に所定の濃度の強酸水溶液を作用させ、ウコギ科人参中のサポニンを加水分解し、サポゲニンを生成させる。
【0049】
前記強酸水溶液としては、強酸を含む水溶液であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸を含む水溶液が好ましく、塩酸を含む水溶液が特に好適である。前記強酸水溶液における酸の濃度は、0.01mol/L〜4mol/Lであり、中でも、0.5mol/L〜3mol/Lであることが好ましい。前記酸の濃度が、0.01mol/L未満であると、加水分解が不十分で効率よくサポゲニンが生成されないという問題が生じ、4mol/Lを超えると、加水分解が進み過ぎたり、コスト的に不利であるという問題が生じる。一方、前記酸の濃度が、前記好ましい範囲内であると、十分な加水分解による効率の良いサポゲニン生成の点で、有利である。
【0050】
前記強酸水溶液は、ウコギ科人参に対して、2〜20倍容量を使用することが好ましい。前記強酸水溶液の使用量が、ウコギ科人参に対して、2倍容量未満であると、ウコギ科人参が十分に浸らず加水分解処理が不十分になること等があり、20倍容量を超えると、コスト的に不利になること等がある。
【0051】
−低級アルコールの使用−
なお、前記加水分解処理は、低級アルコールの存在下で行うことがより好ましい。低級アルコールを使用することにより、ウコギ科人参と、前記強酸水溶液との親和性を向上させ、効率よく加水分解を進めることが可能となる。また、低級アルコールを使用することにより、得られる酸処理物の、味や取扱い性を高めることができる点でも、有利である。
前記低級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、メタノール、エタノール、プロパノールが好ましく、安全性の点からエタノールが特に好適である。
【0052】
加水分解処理工程における低級アルコールの使用量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加水分解液総量に対して、1〜80容量%であることが好ましく、10〜50容量%であることがより好ましく、20〜40容量%であることが更に好ましい。低級アルコールの使用量が、加水分解液総量に対して、1容量%未満であると、効率よくサポゲニンが生成されないこと等があり、80容量%を超えると、効率よくサポゲニンが生成されないことや、コスト的に不利になること等がある。一方、低級アルコールの使用量が、前記更に好ましい範囲内であると、効率の良いサポゲニンの生成の点で、有利である。なお、前記「加水分解液総量」とは、前記強酸水溶液、及び、前記低級アルコールを含めた全反応液量をいう。
【0053】
なお、前記加水分解液総量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウコギ科人参に対し、2〜20倍容量とすることが好ましい。加水分解液総量が、ウコギ科人参に対して、2倍容量未満であると、ウコギ科人参が十分に浸らず加水分解処理が不十分になること等があり、20倍容量を超えると、コスト的に不利になること等がある。
【0054】
加水分解処理工程における処理温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。前記処理温度が、60℃未満であると、加水分解が不十分で効率よくサポゲニンが生成されないこと等があり、100℃を超えると、特殊な製造設備が必要となり、コスト的に不利になること等がある。一方、前記処理温度が、前記より好ましい範囲内であると、効率の良いサポゲニンの生成の点で、有利である。
【0055】
また、加水分解処理工程における処理時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間〜24時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。前記処理時間が、30分間未満であると、加水分解が不十分で効率よくサポゲニンが生成されないこと等があり、24時間を超えると、反応が進みすぎたり、コスト的に不利になること等がある。一方、前記処理時間が、前記より好ましい範囲内であると、効率の良いサポゲニンの生成の点で、有利である。
【0056】
<中和工程>
中和工程において、加水分解処理後の液を中和する。
中和は、特に制限はなく、公知の手法により行うことができ、例えば、加水分解処理後の液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基の水溶液を適宜加えることにより、行うことができる。なお、中和工程は、中和後のpHが5〜8となるように実施することが好ましい。
【0057】
<濾過工程>
濾過工程において、前記中和工程で得られた液を濾過し、濾液と残渣とに分離する。
濾過は、特に制限はなく、公知の手法により行うことができる。なお、濾過後は、更に塩がなくなるまで水洗を繰り返してもよい。
【0058】
−加水処理−
前記加水分解処理を低級アルコールの存在下で行った場合、サポゲニン含有量の高い酸処理物を得る観点から、濾過前に、中和工程で得られた液に水を加えて液中の低級アルコール濃度を下げることが好ましい。この場合、添加する水の量は多いほど良いが、中和工程で得られた液中の低級アルコール濃度が低くなるように、具体的には、50容量%以下となるように添加することが好ましく、30容量%以下となるように添加することがより好ましく、10容量%以下となるように添加することが更に好ましい。
前記中和工程で得られた液中の低級アルコール濃度が、50容量%を超えたまま濾過に供すると、生成されたサポゲニンが低級アルコールに溶解して濾液として排出されてしまい、残渣中のサポゲニン含有量が減少してしまう点で不利となる。一方、前記中和工程で得られた液中の低級アルコール濃度を、前記更に好ましい範囲内とすると、より残渣中のサポゲニン含有率を高めることができる点で、有利である。
【0059】
−減圧濃縮処理−
また、サポゲニン含有量の高い酸処理物を得る観点から、濾過前に、中和工程で得られた液を減圧濃縮させることが好ましい。減圧濃縮により低級アルコールを留去することで、液中の低級アルコール濃度を下げることができる。この場合、濃縮温度は70℃以下が好ましく、40℃〜50℃がより好ましい。減圧濃縮は、低級アルコール濃度が好ましくは50容量%以下、より好ましくは30容量%以下、更に好ましくは10容量%以下となるように実施することが好適である。前記中和工程で得られた液を、該液中の低級アルコール濃度が50容量%を超えたまま濾過に供すると、生成されたサポゲニンが低級アルコールに溶解して濾液として排出されてしまい、残渣中のサポゲニン含有量が減少してしまう点で不利となる。一方、前記中和工程で得られた液を、該液中の低級アルコール濃度が前記更に好ましい範囲内とした後に濾過に供すると、より残渣中のサポゲニン含有率を高めることができる点で、有利である。
また、前記減圧濃縮処理と、前記加水処理とは、それぞれ単独の工程として濾過前に行ってもよいが、一連の工程として行ってもよい。一連の工程として行う場合、前記減圧濃縮処理の後に前記加水処理を行う。
【0060】
<乾燥工程>
乾燥工程において、前記濾過工程で得られた残渣を乾燥し、酸処理物を得る。
乾燥は、特に制限はなく、公知の手法により行うことができ、例えば、凍結乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥など通常の方法が利用できる。
【0061】
以上、ウコギ科人参の酸処理物を製造するための好適な方法について説明した。上記の方法では、ウコギ科人参の酸処理物の粉末を好適に製造することができ、得られる酸処理物はサポゲニン含有量が高いことを特徴とする。先述のとおり、上記の方法において、「ウコギ科人参」を「サポニン含有植物」と読み替えることにより、ウコギ科人参以外のサポニン含有植物からもサポゲニン含有組成物を好適に製造することができる。こうして得られたサポゲニン含有組成物も、本発明の抽出物との組み合わせにおいて優れた糖代謝改善作用をもたらすことができ、本発明の抽出物の補助成分として好適である。
【0062】
好適な一実施形態において、本発明の飲食品は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物と、上記補助成分とを含有する。
【0063】
本発明の飲食品における、本発明の抽出物と上記補助成分との質量比(本発明の抽出物:補助成分)は、補助成分の種類によって最適な比は異なるが、好ましくは1:0.01〜100、より好ましくは1:0.1〜30である。なお、補助成分として上記の複数の成分を使用する場合、該複数の成分の合計質量に基づき計算した質量比が上記範囲にあればよい。
【0064】
本発明の飲食品は、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、油性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤などの任意成分の中から、最終製品である飲食品の剤形に応じたものを1種以上選択することができる。
【0065】
油性成分としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
【0066】
賦形剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール等の合成高分子、ゼラチン、アラビアゴム末、プルラン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キタンサンガム等の多糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチおよびその誘導体、乳糖、果糖、ブドウ糖、白糖、トレハロース、パラチノース、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノース、粉末還元麦芽糖水飴、マルチトール等の糖類および糖アルコール類、軽質無水ケイ酸、微粒酸化ケイ素、酸化チタン、水酸化アルミニウムゲル等の無機賦形剤等が挙げられる。
【0067】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン等が挙げられる。
【0068】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0069】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸等が挙げられる。
【0070】
本発明の飲食品の剤形としては、例えば、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。例えば、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料など)、菓子類(クッキー、ケーキ、ガム、キャンディー、タブレット、グミ、饅頭、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベットなど)、水産加工品(かまぼこ、ちくわ、はんぺんなど)、畜産加工品(ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ウィンナー、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリーム、マーガリン、発酵乳など)、スープ(粉末状スープ、液状スープなど)、主食類(ご飯類、麺(乾麺、生麺)、パン、シリアルなど)、調味料(マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、ソース、たれ、しょうゆなど)が挙げられる。
【0071】
本発明の飲食品は、健康食品、機能性食品、健康食品、健康補助食品(サプリメント)、栄養補助食品、特定保健用食品、医療用食品、病者用食品、乳児用食品、介護用食品、高齢者用食品等の飲食品として利用することもできる。
【0072】
本発明の飲食品の摂取量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、本発明の飲食品を摂取する対象者の年齢、状態などの種々の要因に応じて適宜決定してよい。所望の糖代謝改善効果を得るためには、本発明の抽出物の摂取量として、好ましくは0.1mg/日以上、より好ましくは10mg/日以上、さらに好ましくは45mg/日以上となるように、本発明の飲食品を摂取することが好適である。本発明の飲食品の摂取量の上限は特に制限されないが、多量に摂取しても糖代謝改善効果の向上にはそれ以上寄与しないため、本発明の抽出物の摂取量として、好ましくは10g/日以下、より好ましくは800mg/日以下、さらに好ましくは180mg/日以下となるように、本発明の飲食品を摂取することが好適である。好適な一実施形態において、本発明の飲食品の摂取量は、本発明の抽出物の摂取量として、好ましくは0.1mg/日〜10g/日、より好ましくは10mg/日〜800mg/日、さらに好ましくは45mg/日〜180mg/日となるように決定し得る。
【0073】
近年、糖尿病の病態は、空腹時の血糖値に基づいて、1)正常域、2)正常高値、3)境界域、及び4)糖尿病域の4つに分類されるようになってきている。各病態分類と空腹時の血糖値との関係を以下に示す。
1)正常域 :100mg/dL未満
2)正常高値:100mg/dL以上110mg/dL未満
3)境界域 :110mg/dL以上126mg/dL未満
4)糖尿病域:126mg/dL以上
【0074】
本発明の飲食品の摂取対象者は特に制限されないが、空腹時の血糖値が上記の2)正常高値、3)境界域、4)糖尿病域のいずれかにある者が好適であり、空腹時の血糖値が上記の2)正常高値、3)境界域のいずれかにある者がより好適である。
【0075】
なお、本発明の効果が奏される限り、本発明の飲食品はヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、トリ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。
【0076】
[糖代謝改善剤]
本発明の糖代謝改善剤は、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子及び/又は本発明の抽出物を有効成分として含有する。
【0077】
本発明の糖代謝改善剤の糖代謝改善作用としては、先述のとおり、血糖値の上昇を抑制する作用、血糖値を低下させる作用が挙げられる。したがって、一実施形態において、本発明の糖代謝改善剤は血糖値上昇抑制剤として機能する。他の実施形態において、本発明の糖代謝改善剤は血糖値低下剤として機能する。
【0078】
本発明の糖代謝改善剤が含有し得る抽出物に関しては上述のとおりであるが、糖代謝改善作用の観点から、モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物を使用することが好ましい。
【0079】
したがって、好適な一実施形態において、本発明の糖代謝改善剤は、(A)モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子及び(B)モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物からなる群から選択される1種以上を有効成分として含有する。
【0080】
(A)成分として使用されるモリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子は、生のまま使用してもよく、乾燥後に使用してもよい。また、種子は、外皮が付いたまま使用してもよく、外皮を除去した後に使用してもよい。種子はまた、粉状に粉砕した後に使用してもよい。種子を粉状に粉砕する場合、外皮が付いたままの種子又は外皮を除去した種子を粉砕機(例えばワンダーブレンダー)で粉砕して粉状体とし得る。使用性、製剤化の観点から、(A)成分としては、外皮が付いたままの種子又は外皮を除去した種子を粉砕して得られる粉状体を使用することが好ましい。
【0081】
糖代謝改善作用の観点から、本発明の糖代謝改善剤は、(B)モリンガ属(ワサビノキ属)に属する植物の種子を低級アルコールで抽出して得られる抽出物を有効成分として含有することが好ましい。
【0082】
本発明の糖代謝改善剤における上記(A)成分、(B)成分の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択してよい。
【0083】
本発明の糖代謝改善剤は、上記(A)成分、(B)成分に加えて、他の成分を含有してよい。他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、薬理学的に許容される担体が挙げられる。
【0084】
薬理学的に許容される担体は、本発明の糖代謝改善剤の剤形などに応じて適宜選択してよく、例えば、エタノール、水、デンプンなどが挙げられる。
【0085】
本発明の糖代謝改善剤はまた、飲食品について説明した上記の補助成分、任意成分を含有してもよい。
【0086】
本発明の糖代謝改善剤の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、本発明の糖代謝改善剤は経口投与剤であることがより好ましい。
【0087】
本発明の糖代謝改善剤が経口投与剤である際の剤形としては、例えば、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、液状(液剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。
【0088】
本発明の糖代謝改善剤の投与量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、投与対象である生体の年齢、状態などの種々の要因に応じて適宜決定してよい。所望の糖代謝改善効果を得るためには、(A)成分の投与量として、好ましくは0.3mg/日以上、より好ましくは30mg/日以上、さらに好ましくは150mg/日以上となるように、あるいは(B)成分の投与量として、好ましくは0.1mg/日以上、より好ましくは10mg/日以上、さらに好ましくは45mg/日以上となるように、本発明の糖代謝改善剤を投与することが好適である。本発明の糖代謝改善剤の投与量の上限は特に制限されないが、多量に投与しても糖代謝改善効果の向上にはそれ以上寄与しないため、(A)成分の投与量として、好ましくは50g/日以下、より好ましくは4g/日以下、さらに好ましくは900mg/日以下となるように、あるいは(B)成分の投与量として、好ましくは10g/日以下、より好ましくは800mg/日以下、さらに好ましくは180mg/日以下となるように、本発明の糖代謝改善剤を投与することが好適である。好適な一実施形態において、本発明の糖代謝改善剤の投与量は、(A)成分の投与量として、好ましくは0.3mg/日〜50g/日、より好ましくは30mg/日〜4g/日、さらに好ましくは150mg/日〜900mg/日となるように、あるいは(B)成分の投与量として、好ましくは0.1mg/日〜10g/日、より好ましくは10mg/日〜800mg/日、さらに好ましくは45mg/日〜180mg/日となるように決定し得る。
【0089】
本発明の糖代謝改善剤の投与対象は特に制限されないが、空腹時の血糖値が上記の2)正常高値、3)境界域、4)糖尿病域のいずれかにある者が好適であり、空腹時の血糖値が上記の2)正常高値、3)境界域のいずれかにある者がより好適である。
【0090】
なお、本発明の効果が奏される限り、本発明の糖代謝改善剤はヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、トリ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。
【0091】
糖代謝改善作用を評価する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択してよい。糖代謝改善作用を評価する方法としては、例えば、高血糖モデルマウスにより評価する方法が挙げられる。
【0092】
高血糖モデルマウスにより評価する方法としては、特に制限はないが、例えば、通常食や高脂肪食に本発明の糖代謝改善剤を配合した餌を高血糖モデルマウスに与えつつ一定期間飼育し、飼育後の血糖値を測定する方法が挙げられる。
【0093】
高血糖モデルマウスとしては、例えば、KKAyマウス(日本クレア株式会社)、ZDFラット(日本チャールスリバー株式会社)などが挙げられる。例えば、通常食としては特に制限はなく、CE−2(日本クレア株式会社)などの市販品を用いてもよい。また、高脂肪食としては、特に制限はなく、例えば、Quick−Fat(日本クレア株式会社)などの市販品を用いてもよい。
【0094】
高血糖モデルマウスの飼育期間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択してよいが、例えば、4日間〜65日間とし得る。なお、高血糖モデルマウスに与える本発明の糖代謝改善剤の量は、(A)成分の量として0.03mg/日〜400mg/日、あるいは(B)成分の量として0.01mg/日〜100mg/日となる範囲が好ましい。これは、体重60kgのヒトの投与量に換算した場合、(B)成分の量として20mg/日〜200g/日に相当する。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。下記実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0096】
下記実施例で高脂肪食に配合した各試料を下記にまとめて示す。
<モリンガ種子の粉砕物>
モリンガ種子の粉砕物は、モリンガ・オレイフェラの種子(インド産PKMI;株式会社アイテル)を、粉砕機(ワンダーブレンダー;大阪ケミカル(株))を用いて粉砕することにより得た。
<モリンガ種子の熱水抽出物>
モリンガ種子の粉砕物1gに蒸留水10mLを加え、90℃にて2時間攪拌した後、ろ紙を用いてろ過した。得られた抽出液を凍結乾燥させて、モリンガ種子の熱水抽出物を得た。
<モリンガ種子のエタノール抽出物>
モリンガ種子の粉砕物1gに99.5%エタノール(試薬特級;和光純薬製)を10mL加え、室温(25℃)で2時間攪拌した後、ろ紙を用いてろ過した。得られた抽出液をロータリーエバポレーター(東京理化器械製)により減圧乾固して、モリンガ種子のエタノール抽出物を得た。
<田七人参の酸処理物>
田七人参粉末(松浦薬業株式会社製)1kgを、5.9質量%塩酸(2mol/L塩酸)1.585L、99.9質量%エタノール水溶液2.37L、水6.045Lの混合液に懸濁し、ゆっくり攪拌しながら80℃で6時間加熱して酸加水分解処理を行った。次いで、得られた混合液を氷上で冷却した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7.0となるように中和した。中和後の液を、吸引ろ過した。得られた残渣を加温減圧乾燥して、180gの粉末(田七人参の酸処理物)を得た。
【0097】
実施例1
市販高脂肪食(商品名:Quick−Fat、日本クレア株式会社製)に対し、下記表1に示す各試料を1%配合した餌を用い、自由摂取により、高血糖モデルマウス(KKAyマウス(日本クレア株式会社)、4週齢♂、4〜5匹/群)を7日間飼育した(以下「試料配合群」ともいう。)。コントロールは、試料無配合の餌(すなわち、上記市販高脂肪食のみ)を用いた(以下「試料無配合群」ともいう。)。
各群について、飼育前(投与前)の血糖値と飼育後(投与後)の血糖値を、ワンタッチウルトラ(ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製)により測定した。測定は、午前10時に実施し、平均値を各群の血糖値として採用した。データのばらつきは標準誤差で示し、統計解析はスチューデントT検定により行った。結果を表1及び
図1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1及び
図1より、試料無配合群(コントロール)では、飼育前(投与前)と比較して、7日間で有意に血糖値が上昇した。モリンガ種子熱水抽出物を配合した餌を与えた試料配合群では、試料無配合群と同程度に血糖値が上昇した。
モリンガ種子粉砕物を配合した餌を与えた試料配合群では、試料無配合群に対して5%以上10%未満の危険率で有意傾向をもって血糖値の上昇が抑制された。
モリンガ種子エタノール抽出物を配合した餌を与えた試料配合群では、試料無配合群、モリンガ種子熱水抽出物配合群に対して5%未満の危険率で有意に血糖値の上昇が抑制された。更に、モリンガ種子破砕物配合群に対しても5%未満の危険率で有意に血糖値の上昇が抑制された。
以上の結果から、モリンガ種子には血糖値の上昇抑制効果があり、エタノール抽出物にはモリンガ種子破砕物よりも高い血糖値の上昇抑制効果があることが認められた。
【0100】
実施例2
市販通常食(商品名:CE−2、日本クレア株式会社製)に対し、下記表2に示す各試料1%(固形物換算)を配合した餌を用い、自由摂取により、高血糖モデルマウス(KKAyマウス(日本クレア株式会社)、4週齢♂、6〜7匹/群)を35日間飼育した。なお、モリンガ種子エタノール抽出物と田七人参酸処理物の組み合わせを使用する試料配合群に関しては、モリンガ種子エタノール抽出物1%(固形物換算)、田七人参酸処理物1%(固形物換算)の計2%の試料を配合した餌を用いた。また、コントロールは、試料無配合の餌(すなわち、上記市販通常食のみ)を用いた。
各群について、投与前(投与0日目)の血糖値と、投与後(投与1〜35日目)の血糖値を、ワンタッチウルトラ(ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製)により測定した。測定は、午前10時に実施し、平均値を各群の血糖値として採用した。データのばらつきは標準誤差で示し、統計解析はスチューデントT検定により行った。結果を表2及び
図2に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
表2及び
図2より、試料無配合群(コントロール)では、投与前(投与0日目)の血糖値(「初期値」ともいう。)と比較して、投与日数が増すにつれて血糖値が上昇した。
モリンガ種子エタノール抽出物配合群及び田七人参酸処理物配合群(以下、まとめて「単独試料配合群」ともいう。)は、投与28日目及び35日目において、試料無配合群に対して5%以下の危険率で有意傾向をもって低い血糖値を示した。
モリンガ種子エタノール抽出物と田七人参酸処理物の組み合わせを配合した餌を与えた試料配合群(以下、「組み合わせ試料配合群」ともいう。)は、投与後(投与14日目、21日目、28日目及び35日目)の全ての測定において、試料無配合群に対して5%の危険率で有意傾向をもって低い血糖値を示した。組み合わせ試料配合群はまた、投与28日目及び35日目において、単独試料配合群に対して5%以下の危険率で有意傾向をもって低い血糖値を示した。さらに、単独試料配合群が投与35日目において初期値に対して5%以下の危険率で有意傾向をもって高い血糖値を示したのに対し、組み合わせ試料配合群は投与35日目においても初期値に対して低い血糖値を示した。
【0103】
上記のとおり、単独試料配合群は試料無配合群に対して低い血糖値を示すものの、投与日数が増すにつれて血糖値は上昇し、初期値よりも高い血糖値を示すようになった。これに対し、組み合わせ試料配合群は、投与日数が増しても血糖値の上昇は認められないばかりか、有意ではないものの初期値に対して低い血糖値を示した。
【0104】
試料無配合群における投与0日目から投与35日目までの血糖値の上昇率を100%とするとき、単独試料配合群の投与0日目から投与35日目までの血糖値の上昇率は40%程度、組み合わせ試料配合群の投与0日目から投与35日目までの血糖値の上昇率は−9%程度であった。単独試料配合群の血糖値の上昇率の結果に基づくと、モリンガ種子エタノール抽出物と田七人参酸処理物とを組み合わせて使用した場合に考えられる血糖値の上昇率の相加的結果は16%(=40%×40%)であり、組み合わせ試料配合群について確認された血糖値の上昇率(−9%程度)とは大きな隔たりがある。すなわち、モリンガ種子エタノール抽出物と田七人参酸処理物とを組み合わせて投与すると、血糖値の上昇抑制効果が相乗的に奏されることが確認された。