(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも吸収体を含む吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられ、上層不織布と下層不織布との間に上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って複数の弾性伸縮部材が配置された外装シートとから構成された使い捨て紙おむつにおいて、
前記吸収性本体は、少なくとも前記吸収体の周縁に沿った接合領域にて前記外装シートに接合され、この接合領域より内側に外装シートと接合されない非接合領域が形成され、
少なくとも背側に配置された前記弾性伸縮部材は、外装シートの側縁部から前記吸収体の周縁に沿った接合領域を越えて前記非接合領域まで延在して配置されるとともに、前記吸収体の周縁に沿った接合領域内のおむつ幅方向中央部において、おむつ長手方向端部側に配置された前記弾性伸縮部材が、おむつ長手方向に沿っておむつ幅方向に略等幅に画成された端部側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されるとともに、おむつ長手方向中央側に配置された前記弾性伸縮部材が、前記端部側非活性化領域より幅広に画成された中央側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【背景技術】
【0002】
従来より、
図12に示されるように、パンツ式の使い捨て紙おむつ50として、吸収体53を含む吸収性本体51と、この吸収性本体51の外面側に一体的に設けられた外装シート52とからなり、製品状態で前記外装シート52の前身頃と後身頃とを両側部において接合することによりウエスト開口部WO及び左右一対のレッグ開口部LO、LOを形成したものが知られている。
【0003】
前記外装シート52としては、上層不織布54と下層不織布55とがホットメルト接着剤などによって接着された2層構造の不織布シートとされ、前記上層不織布54と下層不織布55との間であって、前身頃および後身頃のウエスト部及び胴周り部に、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って複数の弾性伸縮部材56、56…を配置したものが用いられるのが一般的であり、これによってウエスト部及び胴周り部にシャーリングが形成され、身体へのフィット性が高められている。
【0004】
ところが、従来の使い捨て紙おむつ50では、
図12に示されるように、外装シート51に配置された弾性伸縮部材のうち、吸収体と重なる部分のほとんどの弾性伸縮部材の伸縮性を非活性化することによって、弾性伸縮部材の収縮力が作用しないようにし、吸収性本体の表面がほぼ平坦になるようにしていた。このため、吸収性本体の表面が肌面に密着せず、身体との間に隙間ができやすい構造であった。特に、背側部分においては、尿や軟便が流れ漏れる問題が生じていた。
【0005】
身体とのフィット性を向上させる技術として、たとえば下記特許文献1では、吸収体の中央部の少なくとも一部において、吸収体の長手方向に延び、且つ、前端部側に向けて、スリットを形成する両壁面が吸収体の側縁に向けて広がるように構成することにより、吸収性物品を着用した際に、股下部分に配置される吸収体の幅が縮小し、股下部分における弛み等の過剰な膨らみや皺を抑制しつつ、前半身側や後半身側が着用者の体に適切にフィットして、良好な着用感を得ることができるようにした吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、股下部分における着用感を向上させた技術が開示されるものの、背側や腹側の身体との隙間を改善する技術については記載されていなかった。特に、背側においては、尿や軟便等が漏れやすいにもかかわらず、前述のとおり、吸収性本体と身体との密着性が低いため、漏れが発生しやすいことが指摘されていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、身体との隙間をなくし、尿や軟便が流れ漏れるのを防止した使い捨て紙おむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも吸収体を含む吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられ、上層不織布と下層不織布との間に上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って複数の弾性伸縮部材が配置された外装シートとから構成された使い捨て紙おむつにおいて、
前記吸収性本体は、少なくとも前記吸収体の周縁に沿った接合領域にて前記外装シートに接合され
、この接合領域より内側に外装シートと接合されない非接合領域
が形成され、
少なくとも背側に配置された前記弾性伸縮部材は、
外装シートの側縁部から前記吸収体の周縁に沿った接合領域を越えて前記非接合領域
まで延在して配置されるとともに、
前記吸収体の周縁に沿った接合領域内のおむつ幅方向中央部において、おむつ長手方向端部側に配置された前記弾性伸縮部材が、おむつ長手方向に沿っておむつ幅方向に略等幅に画成された端部側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されるとともに、おむつ長手方向中央側に配置された前記弾性伸縮部材が、前記端部側非活性化領域より幅広に画成された中央側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されていることを特徴とする使い捨て紙おむが提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収性本体を少なくとも吸収体の周縁に沿った接合領域にて前記外装シートに接合するとともに、この接合領域より内側に非接合領域が形成された条件の下で、少なくとも背側において、前記弾性伸縮部材を
外装シートの側縁部から前記吸収体の周縁に沿った接合領域を越えて前記非接合領域まで延在して配置することによって、外装シートに吸収性本体をおむつ幅方向に収縮させる収縮力を作用させ、吸収性本体のおむつ幅方向の所定の領域がおむつ長手方向に沿って肌面側に膨出する変形を生じさせるようにしている。
【0011】
具体的には、少なくとも背側に配置された前記弾性伸縮部材は、おむつ幅方向中央部において、おむつ長手方向端部側に配置された弾性伸縮部材が、おむつ長手方向に沿っておむつ幅方向に略等幅に画成された端部側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されるようにするとともに、おむつ長手方向中央側に配置された弾性伸縮部材が、前記端部側非活性化領域より幅広に画成された中央側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されるようにしている。これによって、前記非接合領域内においておむつ幅方向両側で弾性伸縮部材の収縮力が作用し、中央部で収縮力が作用しなくなるため、吸収性本体のおむつ幅方向両側がそれぞれおむつ長手方向に沿って肌面側に膨出する変形を生じるようになる。また、このおむつ幅方向両側の収縮力は、外装シートのおむつ長手方向端部側(端部側非活性化領域の側)で強く作用し、おむつ長手方向中央側(中央側非活性化領域の側)でこれより弱く作用するため、吸収性本体がおむつ長手方向端部側で肌面側に高く膨出し、おむつ長手方向中央側で低く膨出する変形を生じるようになる。更に、弾性伸縮部材の収縮力によって外装シート全体が幅方向に収縮することによって、吸収性本体が幅方向に収縮する結果、前述の吸収性本体の両側が肌側に膨出するのに加えて、吸収性本体のおむつ幅方向中央部も肌側に膨出するようになる。吸収性本体がこのように変形することにより、吸収性本体の幅方向中央部の膨出領域が臀部の溝に入り込むように密着するとともに、幅方向両側の膨出領域が肌面に密着するため、身体との隙間が小さくなり、尿や軟便が流れ漏れるのが防止できるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、少なくとも吸収体を含む吸収性本体と、この吸収性本体の外面側に一体的に設けられ、上層不織布と下層不織布との間に上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って複数の弾性伸縮部材が配置された外装シートとから構成された使い捨て紙おむつにおいて、
前記吸収性本体は、前記吸収体の周縁に沿った接合領域にて前記外装シートに接合されるとともに、この吸収体の周縁に沿った接合領域の内側であって左右それぞれの側に長手方向に沿って設けられた線状の接合領域にて接合され、幅方向両側部及び幅方向中央部にそれぞれ外装シートと接合されない前記非接合領域が形成され、
少なくとも背側に配置された前記弾性伸縮部材は、外装シートの側縁部から前記吸収体の周縁に沿った接合領域を越えてその内側の領域まで延在して配置されるとともに、前記吸収体の周縁に沿った接合領域内のおむつ幅方向中央部において、おむつ長手方向端部側に配置された前記弾性伸縮部材が、おむつ長手方向に沿っておむつ幅方向に略等幅に画成された端部側非活性化領域にて伸縮性を非活性化されるとともに、おむつ長手方向中央側に配置された前記弾性伸縮部材が、前記端部側非活性化領域より幅広に画成された中央側非活性化領域にて伸縮性を非活性化され、かつ前記長手方向に沿って設けられた線状の接合領域は、前記端部非活性化領域の両側に位置していることを特徴とする使い捨て紙おむつが提供される。
【0013】
上記請求項
2記載の発明では、吸収性本体の膨出領域が形成される幅方向両側部及び幅方向中央部にそれぞれ前記非接合領域を形成することにより、これらの領域で吸収性本体が変形できるようにしている。
すなわち、請求項1記載の発明では、接合領域は吸収体の周縁に沿って設けられていたが、これに加えて、端部側非活性化領域の両側にそれぞれ長手方向に沿って線状に接合部を設けてもよい。これによって、幅方向両側及び中央部にそれぞれ非接合領域が形成されるようになる。
【0014】
請求項
3に係る本発明として、前記中央側非活性化領域は、前記端部側非活性化領域から漸次拡幅するように形成されている請求項1
、2いずれかに記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0015】
請求項
4に係る本発明として、前記中央側非活性化領域は、前記端部側非活性化領域より幅広で且つおむつ長手方向に沿うおむつ幅方向に略等幅で形成されている請求項1
、2いずれかに記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0016】
上記請求項
3、4記載の発明は、前記中央側非活性化領域の形態例を示したものである。
【0017】
請求項
5に係る本発明として、前記吸収体は、前記端部側非活性化領域の両側に、肌面側から非肌面側にかけて貫通する開口部又は吸収体の厚みを薄くした凹部が設けられている請求項1〜
4いずれかに記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0018】
上記請求項
5記載の発明では、前記開口部又は凹部を設けることによって、この開口部や凹部に尿や軟便などを一時貯留して後側に流れ漏れるのを防止するとともに、この開口部を基点として吸収体が凹凸形状に変形しやすくなるようにしている。
【0019】
請求項
6に係る本発明として、前記開口部又は凹部は、前記端部側非活性化領域の両側におむつ幅方向に離間して左右対称で設けられている請求項4記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0020】
上記請求項
6記載の発明では、前記開口部又は凹部を、前記端部側非活性化領域の両側におむつ幅方向に離間して左右対称で設けることにより、吸収性本体のおむつ幅方向両側及び中央部に形成される膨出領域がこの開口部を基点として形成されやすくなる。
【0021】
請求項
7に係る本発明として、上下方向に間隔をおいて配置された前記弾性伸縮部材は、1本又は複数本おきに、前記吸収体の側縁部又はその近傍より中央側が伸縮性を非活性化されている請求項1〜
6いずれかに記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0022】
上記請求項
7記載の発明では、上下方向に間隔をおいて配置された前記弾性伸縮部材のうち、1本又は複数本おきに、前記吸収体の側縁部又はその近傍より中央側を伸縮性を非活性化することにより、弾性伸縮部材の収縮力を調整し、吸収性本体が肌側に突出する高さを調整している。
【0023】
請求項
8に係る本発明として、前記吸収体は、少なくとも背側の長手方向端縁の外形線が、内側の凸部と外側の凸部とからなる波状に形成されている請求項1〜
7いずれかに記載の使い捨て紙おむつが提供される。
【0024】
上記請求項
8記載の発明では、前記吸収体の背側の長手方向端縁の外形線を波状に形成することにより、外側の凸部と内側の凸部との剛性差により、前記内側の凸部を基点として吸収体が凹凸状に変形しやすくしている。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、身体との隙間がなくなり、尿や軟便が流れ漏れるのが防止できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
図1乃至
図3に示されるように、本使い捨て紙おむつ1(以下、単におむつともいう。)は、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなる防水シート12との間に、不織布やクレープ紙などからなる包被シート14によって囲繞された綿状パルプなどの吸収体13を介在させるとともに、表面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成された吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に一体的に設けられた外装シート20とからなり、製品状態で、
図4に示されるように、おむつ長手方向中央部で前記外装シート20の前身頃Fと後身頃Bとが重ね合わされ、両側端の接合縁部21、22で接合されることによりウエスト開口部WO及び左右一対のレッグ開口部LO、LOが形成された構造のパンツ型おむつである。
【0029】
以下、前記使い捨て紙おむつ1の構造について具体的に詳述する。
【0030】
(吸収性本体10の構造)
先ず最初に、前記吸収性本体10の構造の一例について
図1乃至
図3に基づいて詳述する。
【0031】
吸収性本体10は、前述したように、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなる防水シート12との間に、包被シート14によって囲繞された綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
【0032】
前記吸収体13は、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。この吸収体13は、形状保持と透液性トップシート11を透過した体液の拡散性向上のために包被シート14によって囲繞されている。なお、前記吸収体13としては、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を用いるのが望ましい。
【0033】
前記吸収体13は、次の剛度試験によって求めた剛性が5〜50cN/50mm、好ましくは15〜35cN/50mmである。
<剛度試験>
剛性(剛度)は、JIS K 7171(プラスチック−曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、吸収体前後方向(長手方向)の曲げ剛性を測定する。試験片は、吸収体13から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重−たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0034】
前記吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性トップシート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側(非肌当接面側)まで延在している。
【0035】
前記吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う防水シート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0036】
一方、前記立体ギャザーBSを形成するギャザー不織布15は、
図2に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が用いられ、前記透液性トップシート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。
【0037】
前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性部材16、16…と、起立基端部及び中間部にそれぞれ糸状弾性伸縮部材17、17とが配設されている。前記糸状弾性部材16、16…は、製品状態において
図2に示されるように、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。また、前記防水シート12は、前記二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、立体ギャザーBSにおいて防漏壁を構成するようになっている。
【0038】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も前記透液性トップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法によって得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらに前記ギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0039】
(外装シート20の構造)
外装シート20は、
図1乃至
図3に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、前記上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性伸縮部材24、25が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々レッグ開口部LOを形成するために凹状の切欠き部が形成され、全体として擬似砂時計形状を成している。
【0040】
本発明に係る外装シート20においては、前記弾性伸縮部材として、
図1に示されるように、前記ウエスト開口部WOに配置されたウエスト部弾性伸縮部材24,24…と、前身頃F及び後身頃Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰周り弾性伸縮部材25,25…とを備えるものである。
【0041】
前記外装シート20と吸収性本体10とを接合するに際しては、少なくとも前記吸収体13の周縁に沿った所定の接合領域30でホットメルト接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、それ以外の領域では接合されない非接合領域31とされている。
図4に示される例では、前記吸収体13の周縁に沿った接合領域30にて接合し、この接合領域30より内側では吸収性本体10と外装シート20とを接合しない非接合領域31とされている。すなわち、従来の使い捨て紙おむつ50では、
図12に示されるように、吸収性本体10のほぼ全面において外装シート20に接合するようにしていたが、本使い捨て紙おむつ1では、吸収体13の外縁に沿って吸収体13を周回するように設けられた所定幅の接合領域30にて接合するようにし、これより内側に非接合領域31を形成している。
【0042】
前記非接合領域31のおむつ幅方向の寸法は、吸収体13の幅寸法の30%以上、60%以下とするのが好ましい。また、吸収体13の外縁に沿って帯状に延びる接合領域30の幅は、吸収体13の幅寸法の20%以上、35%以下とするのがよい。
【0043】
(弾性伸縮部材24、25について)
背側(後身頃B)に配置された弾性伸縮部材24、25(以下、代表的に「弾性伸縮部材25」と記す。)は、
図1及び
図4に示されるように、外装シート20の側縁部から吸収性本体10との接合領域30を越えて非接合領域31まで延在して連続的に配置されている。この非接合領域31内のおむつ幅方向中央部において、おむつ長手方向端部側(ウエスト開口部WO側)に配置された前記弾性伸縮部材25が、おむつ長手方向に沿っておむつ幅方向に略等幅に画成された端部側非活性化領域32にて伸縮性を非活性化されるとともに、この端部側非活性化領域32と連続するおむつ長手方向中央側に配置された前記弾性伸縮部材25が、前記端部側非活性化領域32より幅広に画成された中央側非活性化領域33にて伸縮性を非活性化されている。すなわち、端部側非活性化領域32のおむつ幅方向両側には、前記接合領域30より内側に延在した弾性伸縮部材25が、中央側非活性化領域33のおむつ幅方向両側に前記接合領域30より内側に延在した弾性伸縮部材25の長さより長く配置されている。
【0044】
このように、弾性伸縮部材25を接合領域30より内側の非接合領域31まで延在して配置することによって、外装シート20に幅方向両側の前記接合領域30、30を基点とした吸収性本体10をおむつ幅方向に収縮させる収縮力が作用するようになり、吸収性本体10のおむつ幅方向の所定の領域がおむつ長手方向に沿って肌面側に膨出するようになる。具体的には、
図5に示されるように、前記非接合領域31内のおむつ幅方向両側で、弾性伸縮部材25の収縮力が作用し、中央部(前記非活性化領域32、33)で収縮力が作用しないため、吸収性本体10のおむつ幅方向両側にそれぞれ、おむつ長手方向に沿って肌面側に膨出する膨出領域34、34が形成されるようになる。更に、弾性伸縮部材25、25…の収縮力によって外装シート20全体が幅方向に収縮することによって吸収性本体10が幅方向に収縮する結果、前述の吸収性本体10の両側が膨出するのに加えて、吸収性本体10のおむつ幅方向中央部にも、おむつ長手方向に沿って肌面側に膨出する膨出領域34が形成されるようになる。吸収性本体10のおむつ幅方向両側及び幅方向中央部にそれぞれ、膨出領域34、34…が形成されることにより、吸収性本体10の幅方向中央部の膨出領域34が臀部の溝に入り込むように密着するとともに、幅方向両側の膨出領域34、34が肌面に密着するため、身体との隙間が小さくなり、尿や軟便が流れ漏れるのが防止できるようになる。
【0045】
また、吸収性本体10の幅方向両側に形成される膨出領域34、34は、外装シート20のおむつ長手方向端部側(端部側非活性化領域32側)で収縮力が強く作用し、おむつ長手方向中央側(中央側非活性化領域33側)で収縮力がこれより弱く作用するので、吸収性本体10がおむつ長手方向端部側(端部側非活性化領域32側)で肌面側に高く膨出し、おむつ長手方向中央側(中央側非活性化領域33側)で低くなる。すなわち、前記中央側非活性化領域33を端部側非活性化領域32より幅広に形成し、おむつ長手方向中央側の収縮力を小さくすることによって、吸収性本体10の凹凸状の変形が股下側にまで拡大するのを防止している。
図5中では、膨出領域34として、おむつ長手方向端部側を幅広に区画し、おむつ長手方向中央側を幅狭に区画した台形状に描くことによって、肌面側に膨出する範囲と、肌面側への膨出高さがおむつ長手方向端部側で高く、中央側で低いことを表している。また、これとは逆に幅方向中央部の膨出領域34は、おむつ長手方向中央側で膨出高さが高く、おむつ長手方向端部側で膨出高さが低く形成され、おむつ長手方向中央側が臀部溝に深く入り込むようになっている。吸収性本体10がこのように変形することにより、膨出領域34が肌面に密着し、身体との隙間が小さくなるため、尿や軟便が流れ漏れるのが防止できるようになる。
【0046】
前記端部側非活性化領域32は、前記非接合領域31内の弾性伸縮部材25を、おむつ幅方向中央部において、一定幅でおむつ長手方向に所定長さに亘って伸縮性を非活性化した略矩形状の領域である。前記端部側非活性化領域32のおむつ長手方向の長さL1は、50mm以上、70mm以下が好ましく、おむつ幅方向の幅W1は、10mm以上、30mm以下が好ましい。
【0047】
ここで、弾性伸縮部材25が「伸縮性を非活性化される」とは、後述の不連続化手段によって弾性伸縮部材を所定の間隔で細かく切断したり、弾性伸縮部材を所定の区間に亘って連続して上層不織布20A及び下層不織布20Bに接着したりすることにより、弾性伸縮部材の伸縮力が機能しない状態又は機能を大幅に低下させた状態にすることである。弾性伸縮部材を細かく切断するには、例えば、弾性伸縮部材を1〜10mmの間隔で、好ましくは1〜5mmの間隔で、所定のカットパターンによって切断するようにする。
【0048】
前記弾性伸縮部材25…を切断し不連続化するには、外装シート20を連続させた外装シート用連続シートを製造した後、表面に凸部が形成されこの凸部にカッターを複数個配列したカッターロールと、このカッターロールと対向する対向ロールとの間に前記外装シート用連続シートを通過させ、この外装シート用連続シートの弾性伸縮部材25…を前記カッターロールの凸部および対向ロール間での加圧および加熱の内の少なくとも一方により切断するものである。対向ロールは、両ロールの回転によってカッター部が下がり、カッターロールのカッター部のみと当接するように、カッターロールと離間させておくと良い。
【0049】
前記中央側非活性化領域33は、
図4に示される例では、前記端部側非活性化領域32から連続して漸次拡幅するように弾性伸縮部材25の伸縮性を非活性化した領域である。前記中央側非活性化領域33は、おむつ長手方向中央側端のおむつ幅方向幅W2が、非接合領域31の幅を超えない範囲で、90mm以上、100mm以下とするのがよい。
【0050】
また、前記端部側非活性化領域32及び中央側非活性化領域33を合計したおむつ長手方向の長さは、おむつのサイズによっても異なるが、140mm以上、160mm以下とするのが好ましい。
【0051】
なお、従来のおむつでは、
図12に示されるように、吸収性本体10のほぼ全面が外装シート20に接合されるとともに、弾性伸縮部材56、56…が吸収体と重なる台形状の領域において伸縮性を非活性化されるのが一般的であった。この領域の寸法は、おむつのサイズによっても異なるが、上辺の長さ57が70〜80mm、下辺の長さが90〜100mm、高さが140〜160mm程度が一般的である。従って、本おむつでは、従来のものに比べて非活性化領域をかなり小さく形成したものであり、弾性伸縮部材25の収縮力を吸収性本体10の所定部位に作用させるようにしたものである。
【0052】
図6に示されるように、上下方向に間隔をおいて配置された弾性伸縮部材25、25…は、1本又は複数本おきに、前記吸収体13の側縁部又はその近傍より中央側の伸縮性を非活性化するようにしてもよい。つまり、1本又は数本おきに弾性伸縮部材25が吸収体13の側縁部で伸縮性を非活性化され、非接合領域31にまで延在させないようにすることにより、非接合領域31内にて弾性伸縮部材25の収縮力が作用しないようにしている。これによって、全体として弾性伸縮部材25、25…の収縮力が作用しすぎるのを抑制し、吸収性本体10が肌側に突出する高さが調整できるようになる。前記非活性化領域32、33まで延在させる弾性伸縮部材25の割合は、この領域に配置される弾性伸縮部材25の総数に対して65%以上であればよい。例えば、
図6では、2本おきに吸収体13の側縁部又はその近傍より中央側を伸縮性を非活性化することにより、非活性化領域32、33まで延在させる弾性伸縮部材25の本数を3本に2本の割合としている。
【0053】
図7に示されるように、前記吸収体13は、少なくとも背側(後身頃B側)の長手方向端縁の外形線が、内側の凸部35と外側の凸部36とを交互に配置した波状としてもよい。これによって、内側の凸部35と外側の凸部36との剛性差により、内側の凸部35を基点として吸収性本体10が変形しやすくなり、前記弾性伸縮部材25の収縮力と連動させることにより吸収性本体10が凹凸形状に変形するのが補助できるようになる。
【0054】
前記波状の外形線は、
図7に示されるように、幅方向両側部及び幅方向中央部でそれぞれ外側の凸部36が形成され、これらの中間にそれぞれ内側の凸部35が形成された波状とすることが好ましい。これによって、前記内側の凸部35を基点としてこれより外側が肌側に膨出する変形が生じやすくなり、膨出領域34が形成されやすくなる。
【0055】
また、
図8及び
図9に示されるように、前記吸収体13は、前記端部側非活性化領域32の両側にそれぞれ、肌面側から非肌面側にかけて貫通する開口部37、37がおむつ幅方向に離間して左右対称で設けられるようにすることができる。前記開口部37、37を端部側非活性化領域32の両側におむつ幅方向に離間して左右対称で設けることによって、この開口部37に尿や軟便などが一時貯留され、後側に流れ漏れるのがより一層防止できるとともに、この開口部37を基点として、吸収体13が凹凸形状に変形しやすくなる。
【0056】
前記開口部37の形状は、図示例の楕円形の他に、円形や多角形など種々の形状で形成することができる。前記開口部37のおむつ長手方向の長さは、40mm以上、60mm以下とするのがよい。また、前記開口36を設ける位置は、背側(後身頃B側)のおむつ長手方向端部から80mm以内の範囲に設けるようにする。この80mm以内の範囲が吸収性本体10が凹凸状に変形する範囲であるので、この範囲に設けるのが好ましい。
【0057】
左右対称に配置された開口部37、37は、
図8に示されるように、おむつ長手方向の端部側よりおむつ長手方向中央側の方が離間幅を広くしたハの字状に配置するのが好ましい。これによって、吸収性本体10のおむつ幅方向両側及び頂部に形成される膨出領域34、34…がこれら開口部37、37を谷として山形に形成されやすくなり、山と谷の落差が明確に形成されるようになる。ハの字状の配向方向は、谷の方向とほぼ同じ角度であって、膨出領域34、34…が膨出する立ち上がりの基点となる方向とほぼ同じ角度で形成するのが好ましい。前記開口部37を谷の底部に設けることによって、この谷に沿って流れる尿や軟便を確実に捕捉することができるようになる。
【0058】
前記開口部37を設けるに際しては、前記吸収体13のおむつ長手方向端縁の外形線を波状に形成した上で、波状の外形線のうち内側の凸部35とおむつ長手方向に重なる位置に形成することにより、吸収性本体10をより一層凹凸形状に変形させやすくすることができる。
【0059】
前記開口部37を設ける場合、前記立体ギャザーBSは、前記開口部37のおむつ幅方向外側端部又はこれよりおむつ幅方向外側の位置を起立基端とするように設けるのが好ましい。これにより、立体ギャザーBSで堰き止められた体液を開口部37に確実に一時貯留させることができるようになる。より好ましくは、立体ギャザーBSの起立基端と、開口部37のおむつ幅方向の外側端部とがおむつ幅方向にほぼ一致する位置に設けるのがよい。
【0060】
前記中央側非活性化領域33は、
図10に示されるように、前記端部側非活性化領域32より幅広で且つおむつ長手方向に沿うおむつ幅方向に略等幅に形成することも可能である。この場合、中央側非活性化領域33は、端部側非活性化領域32と中央側非活性化領域33との境界部分で、弾性伸縮部材25の伸縮性を非活性化する長さが急激に長くなるとともに、おむつ長手方向中央側端部まで一定幅の略矩形状に形成されている。前記中央側非活性化領域33のおむつ幅方向の幅は、おむつサイズによっても異なるが、90mm以上、100mm以下とするのがよい。
【0061】
ところで、前記弾性伸縮部材25は、自然長を100%としたとき250%〜290%(自然長の2.5倍〜2.9倍)の伸長状態で配置するのがよい。弾性伸縮部材25の太さは、310dt〜620dtが好ましい。また、前記弾性伸縮部材25は、1〜10mmの間隔で、特に1〜5mmの間隔で配置することが好ましい。配置する弾性伸縮部材25の伸長率や太さを調整することにより、外装シート20の収縮力を調整することができる。
【0062】
また、おむつの着用感悪化を防止するため、端部側非活性化領域32にて伸縮性を非活性化された弾性伸縮部材25の残留収縮力が、中央側非活性化領域33にて伸縮性を非活性化された弾性伸縮部材25の残留収縮力とほぼ同等又は5%以内の差異であることが好ましい。
【0063】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、背側(後身頃B側)に配置された弾性伸縮部材25の非活性化領域を規定し、吸収性本体10の背側部分を所定の凹凸形状に変形させるようにしたが、腹側(前身頃F側)に配置された弾性伸縮部材25についても同様に非活性化領域等を設けることにより、吸収性本体10の腹側部分を所定の凹凸形状に変形させるようにしてもよい。
(2)上記形態例では、接合領域30は、吸収体13の周縁に沿って設けられていたが、
図11に示されるように、これに加えて、端部側非活性化領域32の両側にそれぞれ長手方向に沿って設けてもよい。すなわち、前記膨出領域34、34…の中間部に肌側に凹部となる部分に沿って接合領域30を設けている。これによって、幅方向両側及び中央部にそれぞれ非接合領域31が形成されるようになる。
(3)上記形態例では、吸収体13の端部側非活性化領域32の両側に、肌面側から非肌面側にかけて貫通する開口部37を設けていたが、これに代えて、吸収体13の厚みを薄くすることにより肌面側が窪んだ凹部を設けるようにしてもよい。