(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールと、金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i)、および直線状の細孔構造を有する塩基性ゼオライトを含む固体塩基触媒(ii)の少なくとも一種を含む固体塩基触媒(A)とを接触させて前記ヒドロキシアセトンを高沸点化合物に変換する変換工程を有することを特徴とする粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記固体塩基触媒(A)が前記固体塩基触媒(i)を含み、該固体塩基触媒(i)がIIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)、またはIA族もしくはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持したもの(2)であることを特徴とする請求項1に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記固体塩基触媒(A)が前記固体塩基触媒(ii)を含み、該固体塩基触媒(ii)が、直線状の細孔構造を有し、かつIA族またはIIA族の金属元素を含む塩基性ゼオライト(3)であることを特徴とする請求項1に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記固体塩基触媒(A)が前記IIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)を含み、前記IIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)が酸化イットリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記塩基性ゼオライト(3)に用いるゼオライトが8〜12員環ゼオライトであることを特徴とする請求項3に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記塩基性ゼオライト(3)に用いるゼオライトがフェリエライト、モルデナイトおよびZSM-5から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記変換工程を、100〜300℃、かつ大気圧〜3MPaの条件下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
前記変換工程における粗フェノール中のアセトイン濃度(重量基準)の増加量が20ppm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールから請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によりヒドロキシアセトンを低減させる工程を含むことを特徴とする、ヒドロキシアセトンが少ない粗フェノールの製造方法。
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールから請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によりヒドロキシアセトンを低減させる工程と、前記高沸点化合物を蒸留により除去する工程とを含むことを特徴とする高純度フェノールの製造方法。
請求項10に記載の製造方法により高純度フェノールを製造する工程と、前記高純度フェノールを原料として用いてビスフェノール類を製造する工程とを含むことを特徴とするビスフェノール類の製造方法。
【背景技術】
【0002】
クメン法によるフェノール製造方法では、アルキルベンゼンをアルキルアリールヒドロペルオキシドに酸化する工程、アルキルベンゼンの酸化反応生成物を濃縮する工程、その濃縮液を酸触媒でフェノールとケトンとに開裂させる(分解する)工程、酸開裂生成物(酸分解生成物)を中和する工程、および中和後の酸開裂生成物(酸分解生成物)を蒸留してフェノールと不純物とに分離する工程を経てフェノールが製造される。
【0003】
前記アルキルベンゼンがクメンである場合、前記酸開裂生成物(酸分解生成物)は、フェノールおよびアセトンを主成分とし、このほかにα−メチルスチレン、アセトフェノン、クミルフェノール、2−フェニル−2−プロパノール(別名;α−ジメチルフェニルカルビノール)、微量のヒドロキシアセトン(HA)、α−フェニルプロピオンアルデヒド(α−PPA)を始めとする各種カルボニル化合物などの各種副生成物と未反応クメンなどを含有している。
【0004】
フェノールは、たとえばジフェニロールプロパン(別名;ビスフェノールA)に誘導され、このジフェニロールプロパンを原料としてポリカーボネートなどが製造されているが、これらの用途分野においては高純度のフェノールが要求される。
【0005】
高純度フェノールを得るために、酸開裂生成物(酸分解生成物)の中和物からアセトン、クメン、水、α−メチルスチレン等の低沸点物質、およびアセトフェノン、2−フェニル−2−プロパノール等の高沸点物質の大部分を分別蒸留により除去して得られたフェノール留分から、さらにHA等の脂肪族カルボニル化合物およびα−フェニルプロピオンアルデヒド等の芳香族カルボニル化合物が除去されるが、これらのカルボニル化合物の中で特にHAは、フェノールと蒸留分離して除去することが特に難しく、製品フェノールの品質を悪化させている。
【0006】
従来の高純度フェノールの製造方法において、このHAを、固体酸触媒を用いてフェノールと反応させて蒸留分離し易くする方法が知られている。例えば粗フェノール(HA200ppm含有)を360℃で活性アルミナ触媒と接触させることにより、HAをフェノールと反応させて2−メチルベンゾフラン(2−MBF)とし、次いで水蒸気蒸留でフェノールと2−メチルベンゾフランを分離することが提案されている(特許文献1)。また粗フェノールを150〜250℃でシリカ・アルミナ触媒と接触させることによって不純物であるカルボニル化合物を他の化合物に転化し、フェノールから蒸留分離する方法が提案されている(特許文献2)。また水を含まない粗フェノールを酸性イオン交換樹脂触媒と80〜150℃で接触させ、不純物であるカルボニル化合物を他の化合物に転化後、フェノールから蒸留分離する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、これらの方法では、粗フェノール中の有用成分であるフェノールおよびα−メチルスチレンが不純物と反応したり、あるいはそれぞれが相互に、または単独で付加反応してクミルフェノールや、オレフィン2量化物を生成して、当該有用成分が無駄に消失するなどの問題点があった。
【0007】
有効成分が失われないようにHAを除去する方法として、HAを塩基触媒と接触させる方法が知られている。HAは塩基触媒によりアルドール縮合してHAよりも沸点の高い化合物(以下「高沸点化合物」ともいう。)に変換され、その高沸点化合物は蒸留操作によりフェノールから容易に分離できる。このような方法としては、前記酸分解生成物の中和物を油水分離して得られた水相と塩基触媒とを接触させる方法がある。すなわちクメンヒドロペルオキシドを酸分解した後、酸触媒を水酸化ナトリウム水溶液等で中和した際に、水相にHAの約半分が分配されるため、この水相のHAをNaOH等の均一系塩基触媒や陰イオン交換樹脂やNa交換したY型ゼオライトといった固体塩基触媒と接触させる(特許文献4)。しかしこの方法では、粗フェノールを含む油相に分配した多量のHAがそのまま残存するという問題点がある。従って、粗フェノールを含む油相を塩基触媒と接触させるという方法もある。この方法では、アセトンが塩基触媒と反応して失われないようにアセトン等の軽沸物を留去してから、油相を塩基触媒と接触させる必要がある(特許文献5、特許文献6、特許文献7)。油相で用いられる塩基触媒としては、再度中和工程や油水分離工程が必要となる均一系の塩基触媒よりも固体塩基触媒の方が有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが研究したところ、油相に分配したHAをNa交換Y型ゼオライトやハイドロタルサイトなどの固体塩基と接触させると、フェノールの品質に多大な悪影響を与え、HA同様に蒸留でフェノールと分離することが困難なアセトインが、新たに多量に副生してしまうことがわかった。
【0010】
このような従来技術における問題点に鑑み、本発明は、不純物としてHAを含む粗フェノール、たとえばクメン法フェノール製造法において、クメンヒドロペルオキシドを酸分解し、中和処理を経て、アセトンを分離した後の粗フェノールから、フェノールを消失させたりアセトインを多量に生成させたりすることなく、HAを低減させる方法を提供すること、HAが少ない粗フェノールの製造方法を提供すること、HAやアセトインが少ない高純度のフェノールを製造する方法を提供すること、およびHAやアセトインが少ない高純度のビスフェノール類を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ある種の固体塩基触媒を用いることで、フェノール品質を悪化させるアセトインを多量に生成させることなく、かつフェノールを消失させることなく、粗フェノール中に不純物として含まれるヒドロキシアセトンを低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち本発明の要旨は、以下の[1]〜[12]にある。
[1]
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールと、金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i)、および直線状の細孔構造を有する塩基性ゼオライトを含む固体塩基触媒(ii)の少なくとも一種を含む固体塩基触媒(A)とを接触させて前記ヒドロキシアセトンを高沸点化合物に変換する変換工程を有することを特徴とする粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0013】
[2]
前記固体塩基触媒(A)が前記固体塩基触媒(i)を含み、該固体塩基触媒(i)がIIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)、またはIA族もしくはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持したもの(2)であることを特徴とする上記[1]に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0014】
[3]
前記固体塩基触媒(A)が前記固体塩基触媒(ii)を含み、該固体塩基触媒(ii)が、直線状の細孔構造を有し、かつIA族またはIIA族の金属元素を含む塩基性ゼオライト(3)であることを特徴とする上記[1]に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0015】
[4]
前記固体塩基触媒(A)が前記IIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)を含み、前記IIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物(1)が酸化イットリウムおよび酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[2]に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0016】
[5]
前記塩基性ゼオライト(3)に用いるゼオライトが8〜12員環ゼオライトであることを特徴とする上記[3]に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0017】
[6]
前記塩基性ゼオライト(3)に用いるゼオライトがフェリエライト、モルデナイトおよびZSM-5から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[3]に記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0018】
[7]
前記変換工程を、100〜300℃、かつ大気圧〜3MPaの条件下で行うことを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0019】
[8]
前記変換工程における粗フェノール中のアセトイン濃度(重量基準)の増加量が20ppm以下である、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法。
【0020】
[9]
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールから上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の方法によりヒドロキシアセトンを低減させる工程を含むことを特徴とする、ヒドロキシアセトンが少ない粗フェノールの製造方法。
【0021】
[10]
ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールから上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の方法によりヒドロキシアセトンを低減させる工程と、前記高沸点化合物を蒸留により除去する工程とを含むことを特徴とする高純度フェノールの製造方法。
【0022】
[11]
上記[10]に記載の製造方法により高純度フェノールを製造する工程と、前記高純度フェノールを原料として用いてビスフェノール類を製造する工程とを含むことを特徴とするビスフェノール類の製造方法。
【0023】
[12]
アルキルベンゼンをアルキルアリールヒドロペルオキシドに酸化する工程a、
前記工程aで得られたアルキルベンゼンの酸化反応生成物を濃縮して濃縮液を得る工程b、
前記濃縮液に含まれるアルキルアリールヒドロペルオキシドを酸触媒の存在下でフェノールとケトンとに開裂反応させて酸開裂生成物を得る工程c、
前記酸開裂生成物を中和する工程d、および
中和された前記酸開裂生成物を蒸留してフェノールと不純物とに分離する工程eを含むクメン法による高純度フェノールの製造方法であって、
前記工程eが、中和された前記酸開裂生成物から軽質留分の少なくとも一部を除去してヒドロキシアセトンを含む粗フェノールを調製する工程、このヒドロキシアセトンを含む粗フェノールから上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の方法によりヒドロキシアセトンを低減させる工程、および前記高沸点化合物を蒸留により除去する工程を含む、クメン法による高純度フェノールの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アセトインを多量に生成させることなく、かつ有用成分であるフェノールおよびα−メチルスチレンの消失を抑制しつつ、粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減することができ、さらに、ヒドロキシアセトンおよびアセトインが少ない、粗フェノール、高純度フェノールおよびビスフェノール類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
[粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法]
本発明に係る粗フェノール中のヒドロキシアセトンを低減させる方法(以下「本発明に係るHAの低減方法」ともいう。)は、ヒドロキシアセトンを含む粗フェノールと、後述する固体塩基触媒(i)および固体塩基触媒(ii)の少なくとも一種を含む固体塩基触媒(A)とを接触させてヒドロキシアセトンを高沸点化合物に変換する変換工程を有することを特徴としている。なお、固体塩基触媒(A)と接触させる前の粗フェノールを、以下「未処理粗フェノール」ともいう。
【0026】
本発明に係るHAの低減方法は、クメン法によるフェノールの製造方法に適用することができる。クメン法によるフェノールの製造方法は、前述のとおり、アルキルベンゼン(例:クメン)をアルキルアリールヒドロペルオキシド(例:クメンヒドロペルオキシド)に酸化する工程、前記工程で得られたアルキルベンゼンの酸化反応生成物を濃縮して濃縮液を得る工程、その濃縮液に含まれるアルキルアリールヒドロペルオキシドを酸触媒でフェノールとケトンに開裂反応させて酸開裂生成物を得る工程、その酸開裂生成物を中和する工程、中和後の酸開裂生成物を蒸留してフェノールと不純物とに分離する工程を経てフェノールが製造される。この中和後の酸開裂生成物から軽質留分(たとえばアセトン、クメン、α-メチルスチレン)の大部分を取り除いた残分(以下「クメン法における粗フェノール」ともいう。)は、本発明に係るHAの低減方法で使用される前記未処理粗フェノールに相当し、後述する本発明に係る高純度フェノールの製造方法の原料としても使用できる。
【0027】
前記未処理粗フェノールは、フェノールの他、フェノールから分離され、除去されるべき成分、すなわち不純物を含有する。前記未処理粗フェノール中のフェノールの含有率は、通常80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%である。
【0028】
前記未処理粗フェノールは、不純物としてHAの他に、前記クメン法における粗フェノールが含有するカルボニル化合物をさらに含有していてもよい。
前記カルボニル化合物としては、例えば芳香族カルボニル化合物および脂肪族カルボニル化合物等が挙げられる。前記芳香族カルボニル化合物としては、α−フェニルプロピオンアルデヒド(α−PPA)、アセトフェノン(Anone)、ベンズアルデヒド(BAD)等が挙げられる。前記脂肪族カルボニル化合物としては、HA、メシチルオキシド(MO)等が挙げられる。前記未処理粗フェノールはHA以外のカルボニル化合物を1種含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。本発明に係るHAの低減方法は、前記未処理粗フェノールとして、脂肪族カルボニル化合物としてのHA、メシチルオキシド(MO)および/または芳香族カルボニル化合物としてのα−フェニルプロピオンアルデヒド(α−PPA)を不純物として含む粗フェノールが用いられる場合に有効である。
【0029】
前記未処理粗フェノール中のカルボニル化合物(HAを含む。)の含有率は、通常1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。
粗フェノールに含まれるカルボニル化合物以外の不純物としては、粗フェノールの生成方法により様々であり、特に制限はないが、例えばアセトン、α−メチルスチレン、クミルフェノール、2−フェニル−2−プロパノール、α−メチルスチレンの2量体(2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン)および粗フェノールの生成に用いた原料の未反応物などが挙げられる。これらの不純物は、一般に前記カルボニル化合物に比べて、フェノールから分離、除去することが容易である。これらの不純物は、蒸留等により前記未処理粗フェノールから除去しておいてもよい。
【0030】
前記未処理粗フェノール中に、カルボニル化合物以外の不純物が含まれる場合には、その含有率は、通常0.9〜20重量%、好ましくは0.9〜10重量%である。
前記「クメン法における粗フェノール」の組成を例示すると以下のとおりである。なお、当該組成範囲はあくまでも例示を目的としたものであって、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
フェノール 87.0 〜 95.6重量%
クメン 1.0 〜 0.1重量%
α−メチルスチレン 2.0 〜 0.1重量%
ヒドロキシアセトン 0.5 〜 0.1重量%
α−フェニルプロピオンアルデヒド 0.5 〜 0.1重量%
アセトフェノン 4.0 〜 2.0重量%
2−フェニル−2−プロパノール 1.0 〜 0.5重量%
その他の高沸点成分 4.0 〜 1.5重量%
【0031】
上記のクメンおよびα−メチルスチレンは軽質留分として、アセトフェノン、2−フェニル−2−プロパノールおよびその他の高沸点成分は重質留分として、蒸留により比較的容易にフェノールから分離できる。
【0032】
上記不純物のうち、α−メチルスチレンは工業的に有用な物質であるので、工業的に利用可能な状態でフェノールから分離、除去されることが好ましい。またアセトフェノンにも、工業製品としての価値がある。
【0033】
<固体塩基触媒(A)>
前記固体塩基触媒(A)は、金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i)および直線状の細孔構造を有する塩基性ゼオライトを含む固体塩基触媒(ii)の少なくとも一種を含んでいる。
【0034】
前記固体塩基触媒(A)としては、HAを低減させる効果が特に高いという観点からは、後述するMgOおよびY
2O
3が好ましい。また、触媒が消失し難いという観点からは、後述する酸化ナトリウムをシリカゲルに担持した触媒が好ましい。
【0035】
前記固体塩基触媒(A)の形状は特に限定されないが、工業的に入手が容易なタブレット状およびヌードル状のものが推奨される。また、そのサイズは、前記変換工程に使用する反応塔の内径等により決定すればよく、略円形の断面を有する形状のものであれば、好ましくは円の直径2〜6mm、かつ高さ(略円形の断面に直交する方向の長さ)2〜6mm程度である。
【0036】
(金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i))
前記未処理粗フェノールを、塩基性が強い固体塩基触媒と接触させると、まず、HAが環化や脱水反応を伴いながら複雑な構造を持つ高沸点化合物が形成され、次いで、HAから誘導された高沸点化合物の分解反応によりHAにメチル基が付加したような構造を持つアセトインが生成すると考えられる。本発明者らが行った実験では、1%のHA水溶液に均一系の強い塩基触媒であるNaOHをpH12になるように加え、90℃で2時間処理するとHAの90%が転化するが、転化したHAに対してモル比で4%ものアセトインが副生することがわかっている。フェノールの品質へのアセトインの影響は、特にフェノールの色相試験において、フェノールの品質へのHAの影響よりも一桁大きく、アセトインが生成したのではHAを低減できたとしてもフェノールの品質上問題となる場合がある。
【0037】
一方、HAの高沸点化合物への変換反応に金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i)を用いることで、HAを低減させ、かつアセトインの生成を抑制できる。
金属酸化物を含む弱塩基性の固体塩基触媒(i)としては、以下の(1)IIA族もしくはIIIB族の金属元素の酸化物、および(2)IA族もしくはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持したものが挙げられる。
【0038】
(1)IIA族またはIIIB族の酸化物
前記固体塩基触媒(i)としては、IIA族またはIIIB族の金属元素の酸化物が挙げられ、具体的にはMgO、SrO、BaO、Se
2O
3、Y
2O
3、CeO
2等が挙げられる。この中でも、MgOおよびY
2O
3が好ましい。
【0039】
IIA族またはIIIB族の酸化物の製造方法は、特に限定されないが、含浸法、初期湿潤法、スプレー法、共沈法、ゾル・ゲル法、熱分解法(塩化物、有機金属、有機酸塩など)など、どのような方法でも構わない。酸化物の前駆体としては、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩、硝酸塩など金属酸化物の製造方法に適したものを利用できる。たとえば酸化イットリウムは、沈殿法もしくは共沈法によって生成された水酸化イットリウムを高温で分解する方法、市販の酢酸イットリウム、硝酸イットリウム、炭酸イットリウムなどを高温で分解する方法などにより製造できる。
【0040】
(2)IA族またはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持したもの
前記固体塩基触媒(i)としては、IA族またはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持したものも挙げられる。
【0041】
シリカゲルに担持するIA族の酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウムが挙げられる。この中で、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウムが塩基性の観点で好ましい。また、酸化ナトリウムがさらに好ましい。
【0042】
シリカゲルに担持するIIA族の金属元素の酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムが挙げられる。この中で、酸化マグネシウム、酸化カルシウムが塩基性の観点で好ましい。また、酸化マグネシウムがさらに好ましい。
【0043】
担体のシリカゲルとしては、吸着剤として一般的に用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、実験化学講座9,無機化合物の合成と精製(昭和33年12月20日発行,丸善株式会社)513ページに記載された6つの方法で製造された全てのシリカゲルが挙げられる。本発明で用いられるシリカゲルとしては、比表面積が50〜900m
2/gであり、且つ細孔容積が0.3〜1.8ml/gであるシリカゲルが好ましく、中でも比表面積50〜200m
2/gであり、且つ細孔容積0.7〜1.8ml/gであるシリカゲルがより好ましい。このようなシリカゲルは、公知の方法〔例えば、特開平9−30809号公報、または、赤崎ら,東ソー研究・技術報告 第45巻,65−69(2001)に記載の方法〕によって調製してもよく、市販品であってもよい。このような市販品としては、後掲する実施例において用いた、富士シリシア株式会社製の触媒担体用シリカであるキャリアクト(CARiACT)を例示することができる。
【0044】
IA族またはIIA族の金属元素の酸化物をシリカゲルに担持する方法は、特に限定されないが、IA族またはIIA族の金属元素の塩(水酸化物、塩化物、炭酸塩、有機酸塩など)の水溶液や、この塩を有機溶剤に溶解させた液を担体のシリカゲルに含浸し、次いでこれらを焼成することによりIA族またはIIA族の金属元素の酸化物を形成するという方法が挙げられる。具体的には、たとえば、所望の担持量に相当する酢酸ナトリウム等のナトリウムの塩を担体のシリカゲルの細孔容積と同量になるように水に溶解させた液を調整し、これをスポイト等でシリカゲルに含浸させ、乾燥した後、空気気流下500℃程度で焼成することで酸化ナトリウムをシリカゲル上に担持することができる。
【0045】
IA族またはIIA族の酸化物のシリカゲルへの担持量は、特に限定はされないが、これらをシリカゲル表面に均一に分散させるためには、酸化物およびシリカゲルの合計の重量に対して、通常は1〜30%、好ましくは3〜15%である。
【0046】
(直線状の細孔構造を有する塩基性ゼオライトを含む固体塩基触媒(ii))
前記固体塩基触媒(A)としては、直線状の細孔構造を有する塩基性ゼオライトを含む固体塩基触媒(ii)も挙げられる。このゼオライトとしては、直線状の細孔構造を有するゼオライトであって、かつIA族またはIIA族の金属元素(すなわち、アルカリ金属またはアルカリ土類金属)を含む塩基性ゼオライト(3)が挙げられ、細孔の入口における直径と内部空洞の結晶学的直径とは、通常、同程度である。
【0047】
本発明において「直線状の細孔構造を有するゼオライト」とは、細孔としてトンネル型の一次元細孔を有するゼオライト、および前記一次元細孔が交差した二次元細孔を有するゼオライトをいう。前記直線状の細孔構造には、部分的な歪やジグザグ構造を有する細孔構造も含まれる。また、細孔の入口における直径と内部空洞の結晶学的直径とが同程度であることが望ましいが、局所的に細孔が太いまたは細い場合もありうる。
【0048】
上述のようにアセトインはHAにメチル基が付加した構造を持つことから、HAが高次に多量化、環化して複雑な構造となった高沸点化合物が分解することで生成すると考えられる。たとえば、X型、Y型またはベータ型のゼオライトのように、3次元細孔を有し内部に大きな空間を持つゼオライトの場合、細孔内部でHAの高次な多量化、環化が起こり、その結果、HAから誘導された高沸点化合物から分解したアセトインが生じると考えられる。
【0049】
ゼオライトの具体例としては、フェリエライト、モルデナイトおよびZSM−5が挙げられる。
なお、小さな8員環の細孔により10〜12員環の一次元細孔が連結される構造をとるモルデナイトのようなゼオライトも、前記「直線状の細孔構造を有するゼオライト」に含まれる。
【0050】
ゼオライトとしては、HAの分子サイズに近い細孔径を有する8〜12員環のゼオライトが好ましく、中でも10〜12員環のゼオライトが好ましい。
ゼオライトは、骨格がSiO
2およびAl
2O
3から構成され、通常プロトン型の固体酸触媒として用いることが多いが、前記塩基性ゼオライト(3)はプロトン部がアルカリ金属やアルカリ土類金属にイオン交換されたものである。前記塩基性ゼオライト(3)としては、一般的なゼオライトの合成法である水熱合成法において、用いられるアルカリ金属の水酸化物のアルカリ金属がそのままイオン交換サイトに残ったものをそのまま使用できる。
【0051】
このようなゼオライトとしては市販品を使用してもよい。市販品の具体例としては、東ソー製Na型モルデナイトのHSZ−642NAA、HSZ−640NAA、東ソー製Na型やK型のフェリエライトであるHSZ−770NAA、HSZ−720KOA等が挙げられる。これらの多くはNa型のものである。
【0052】
Na型のゼオライト中のNaは、他のアルカリ金属やアルカリ土類金属にイオン交換されていてもよい。
イオン交換は例えば以下の様な方法で行うことができる。目的とするアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物または硝酸塩の0.5mol/lの水溶液を準備し、これにNa型ゼオライトを浸し、85〜90℃の湯浴上で20時間(約1時間毎によくふりまぜる)保持することで、イオン交換を行う。その後、生成物を脱イオン水で充分に洗浄し、120℃、10時間乾燥することで目的としたアルカリ金属、アルカリ土類金属にイオン交換した触媒が得られる。
【0053】
<変換工程>
本発明に係るHAの低減方法では、前記未処理粗フェノールと前記固体塩基触媒(A)とを接触させてヒドロキシアセトンを高沸点化合物に変換する変換工程を実施する。
【0054】
この変換工程を実施するための反応装置としては、バッチ式反応装置、固定床連続反応装置、流動床連続反応および移動床連続反応装置等を挙げることができる。設備が簡単である点では、固定床連続反応装置を使用することが望ましい。
【0055】
前記変換工程を実施する際の温度は、通常100〜300℃、好ましくは130〜250℃である。
前記変換工程を実施する際の圧力は、通常0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。
前記変換工程を実施する時間は、前記変換がバッチ反応の場合、通常1〜20時間である。
【0056】
また、前記変換が連続式反応の場合、固体塩基触媒(A)の単位容積あたりの前記未処理粗フェノールの供給速度(LHSV)は、0.5hr
-1以上20hr
-1以下であることが望ましく、1hr
-1以上10hr
-1以下であることがより望ましい。本発明において連続反応装置を用いる場合、使用される反応器は、単一の反応器であっても、複数の反応器でもよい。特に複数の反応器である場合、直列に反応器を設置することにより、反応条件をより精密に制御できる。
【0057】
前記変換工程を経た粗フェノールにおいて、ヒドロキシアセトンの濃度は、通常0.01重量%以上1.0重量%以下であり、好ましくは0.7重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、その下限値は、0.05重量%であってもよく、0.1重量%であってもよい。
【0058】
前記変換工程におけるアセトインの増加量(すなわち、(固体塩基触媒(A)と接触させた後の粗フェノール中のアセトイン濃度(重量基準))−(固体塩基触媒(A)と接触させる前の粗フェノール(未処理粗フェノール)中のアセトイン濃度(重量基準)))は、好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下である。これらは、ガスクロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、たとえば後述する実施例で採用した条件または同等の条件を採用することができる。
【0059】
[高純度フェノールの製造方法等]
本発明に係るヒドロキシアセトンが少ない粗フェノールの製造方法は、HAを含む粗フェノールから本発明に係るHAの低減方法によりHAを低減させる工程を含むことを特徴としている。
【0060】
また本発明に係る高純度フェノールの製造方法は、HAを含む粗フェノールから本発明に係るHAの低減方法によりHAを低減させる工程と、この工程でHAから誘導された高沸点化合物を蒸留により除去する工程とを含むことを特徴としている。この高沸点化合物はフェノールと融点の差が大きいので、蒸留により容易にフェノールから分離、除去できる。蒸留は常法に基づき実施することができる。
【0061】
本発明に係るHAの低減方法を経た粗フェノール中のHAおよびアセトインの量は少なく、また粗フェノールに含まれるHAおよびアセトイン以外の不純物は、前述のとおり、蒸留等により容易に除去することができる。
【0062】
なお、「高純度」という文言は、前記粗フェノールよりも不純物が少ないという意味で用いられており、高純度フェノール中の不純物濃度(重量基準)は、たとえば500ppm以下である。また、本発明に係るHAの低減方法を経た粗フェノール中のアセトイン濃度、および高純度フェノール中のアセトインの濃度は、好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下である。これらは、ガスクロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、たとえば後述する実施例で採用した条件または同等の条件を採用することができる。
【0063】
本発明に係る高純度フェノールの製造方法によれば、HA、およびフェノールの品質を大きく悪化させるアセトインが少ない高純度フェノールを製造することができる。
さらに本発明に係る高純度フェノールの製造方法によれば、有用成分であるフェノールおよびα−メチルスチレンが不純物と反応したり、それぞれが相互に、または単独で付加反応したりすることを抑制しつつ、高純度フェノールを製造することができる。このため、有用成分であるα−メチルスチレンを工業的に利用可能な状態でフェノールから分離、除去して高純度フェノールを製造することが可能になる。
【0064】
本発明に係るビスフェノール類の製造方法は、本発明に係る高純度フェノールの製造方法を実施する工程と、前記高純度フェノールを原料として用いてビスフェノール類を製造する工程とを含むことを特徴としている。
【0065】
本発明に係るビスフェノール類の製造方法は、原料となるフェノールを、本発明に係る高純度フェノールの製造方法により製造する点を除けば、従来公知のビスフェノール類の製造方法に基づいて実施することができる。
前記ビスフェノール類としては、たとえば2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンが挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、カルボニル化合物の転化率、アセトインの生成量はガスクロマトグラフィーでの分析値から算出した。
【0067】
GC分析条件は、以下のとおりである。(株)島津製作所製GC−2014の装置を用い、検出器にFIDを、GCカラムにDB−WAX(60m、内径0.25m、膜厚0.25μm)、キャリアガスにHeを用いた。インジェクション温度及びデテクション温度を250℃、入口圧を157kPa、線速を23cm/秒に設定した。50℃から昇温を始め、5℃/分の昇温速度で240℃まで昇温し、240℃で100分保持した後に、測定を実施した。
【0068】
カルボニル化合物の転化率とは、反応前のカルボニル化合物の量に対する、そのカルボニル化合物の反応による減少量のモル比(%)を意味する。
アセトインの生成量とは、反応後の反応液中のアセトイン濃度(重量基準、ppm)を意味する。
【0069】
〔実施例1〕
フィードポンプ、高圧窒素マスフロー、電気炉、触媒充填部分を有する反応器、背圧弁を設置した固定床反応装置を用い、ダウンフローによる加圧液相流通反応を行った。内径1cmのSUS316製反応器に、固体塩基触媒として、Y
2O
3を20MPaで圧縮成型後、250〜500μmに分級したものを2.0g充填した。反応器内を窒素ガスで0.5MPaまで加圧した後、反応器に窒素を10ml/分で導入し、ヒドロキシアセトン(HA)1800ppm、メシチルオキシド(MO)500ppm、α−フェニルプロピオンアルデヒド(α−PPA)1300ppm、α−メチルスチレン(α−MS)500ppm、2−フェニル−2−プロパノール(Cnol)6000ppm、アセトフェノン(Anone)2.41重量%およびその他不純物、ならびにフェノール91.8重量%を含有する粗フェノールを5.0g/hで供給し、250℃で固体塩基触媒と接触させた。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインは検出されず(GCの検出限界値2ppm)、HA転化率は99.5%、MO転化率31.9%、α−PPA転化率は97.5%およびAnone転化率は2.0%であった。また、反応前後のフェノールの濃度(PH濃度)には、ガスクロマトグラフィーの分析精度の範囲内で差が認められなかった。結果を表1に示す。
【0070】
〔実施例2〕
(Na/SiO
2の調製)
固体塩基触媒として、Journal of Catalysis、204巻、358頁、2001年を参考に、pore−filling法でNa/SiO
2触媒を調製した。酢酸ナトリウム4.69gを蒸留水23.9gに溶解した液をスポイトでシリカゲル(富士シリシア製キャリアクトQ−30、細孔容積1.0ml/g)26.30gに滴下し全体的に含浸させた。このシリカゲルを焼成炉に入れ、100℃で2時間乾燥し、次いで1時間かけて500℃まで昇温し、5時間焼成することで、Naとして4.5重量%担持された酸化ナトリウムが担持されたシリカゲル(Na/SiO
2)29.09gを得た。
【0071】
(反応評価)
上記のように調製したNa/SiO
2をY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインは検出されず、HA転化率は79.8%であった。結果を表1に示す。
【0072】
〔実施例3〕
MgOをY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインは検出されず、HA転化率は79.0%であった。結果を表1に示す。
【0073】
〔実施例4〕
東ソー製Na交換モルデナイト型ゼオライト(HSZ−640NAA)をY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインは検出されず、HA転化率は52.9%であった。結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例5〕
東ソー製のNaとKで交換されたフェリエライト型ゼオライト(HSZ−720KOA)をY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインは検出されず、HA転化率は45.6%であった。結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例1〕
協和化学工業製ハイドロタルサイト(KW−500SH)を550℃で5時間焼成し、20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したものをY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインが60ppm含まれ、HA転化率は90.1%であった。結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例2〕
東ソー製Na交換Y型ゼオライト(HSZ−320NAA)を20MPaで圧縮成型後、250〜500μmへ分級したものをY
2O
3の替わりに用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。粗フェノールの供給開始から20時間後の反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アセトインが50ppm含まれ、HA転化率は50.1%であった。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】