(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(90)の下面に取り付けられるアウターパン(11)に収容されて、前記エンジン(90)の回転駆動シャフト(91)の下方に位置し、前記エンジン(90)の内側面の下端部から流下するオイルを貯留するインナーパン(20)と、そのインナーパン(20)に取り付けられるバッフルプレート(30)とからなるバッフルプレート付きインナーパン(18)であって、
前記インナーパン(20)に設けられ、前記回転駆動シャフト(91)の径方向で対向する第1と第2の対向側壁(22A,22B)と、
前記バッフルプレート(30)に設けられて、前記インナーパン(20)の前記第1と第2の対向側壁(22A,22B)の間に位置し、オイルを前記インナーパン(20)の底壁上に排出するためのオイル排出部(34B,34C)を有した天井部(33)と、
前記第1と第2の対向側壁(22A,22B)のうち前記回転駆動シャフト(91)の周速が下方を向く側に位置する前記第1の対向側壁(22A)に向かって前記天井部(33)の側部から斜め上方に立ち上がる側部起立壁(40)と、
前記側部起立壁(40)と前記第1の対向側壁(22A)との間に設けられて上下方向に延びる樋構造をなし、前記第1の対向側壁側の内面が、下方に向かうに従って前記天井部(33)に近づくように傾斜したオイルガイド樋(44)とを備えたことを特徴とするバッフルプレート付きインナーパン(18)。
前記側部起立壁(40)の上端部から側方に張り出し、前記回転駆動シャフト(91)の軸方向に並べられ、前記第1の対向側壁(22A)の上端部を上方から覆う複数の棚壁(41)が備えられ、
前記オイルガイド樋(44)は、隣り合う前記棚壁(41)の対向した縁部から垂下した1対のサブ垂下壁(42,42)と、それら1対のサブ垂下壁(42,42)における前記側部起立壁(40)と反対側の縁部同士を連絡しかつ下方に向かうに従って前記天井部(33)に近づくように傾斜したメイン垂下壁(43)とから構成され、
前記棚壁(41)と前記メイン垂下壁(43)の上端部とが、前記第1の対向側壁(22A)の上端部を上方から覆って前記アウターパン(11)の内側面に隣接している請求項1に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)。
前記棚壁(41)には、オイルガイド樋(44)に一端部が連通した溝部(41A)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)。
前記溝部(41A)は、前記オイルガイド樋(44)に向かって下るように傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のバッフルプレート付きインナーパンを使用すると、オイルに多くの気泡が発生して、ポンプによるオイルの吸引効率が低下するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、気泡の発生を抑えたオイルの回収が可能なバッフルプレート付きインナーパンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るバッフルプレート付きインナーパンは、エンジン(90)の下面に取り付けられるアウターパン(11)に収容されて、前記エンジン(90)の回転駆動シャフト(91)の下方に位置し、前記エンジン(90)の内側面の下端部から流下するオイルを貯留するインナーパン(20)と、そのインナーパン(20)に取り付けられるバッフルプレート(30)とからなるバッフルプレート付きインナーパン(18)であって、前記インナーパン(20)に設けられ、前記回転駆動シャフト(91)の径方向で対向する第1と第2の対向側壁(22A,22B)と、
前記バッフルプレート(30)に設けられて、前記インナーパン(20)の前記第1と第2の対向側壁(22A,22B)の間に位置し、オイルを前記インナーパン(20)の底壁上に排出するためのオイル排出部(34B,34C)を有した天井部(33)と、前記第1と第2の対向側壁(22A,22B)のうち前記回転駆動シャフト(91)の周速が下方を向く側に位置する前記第1の対向側壁(22A)に向かって前記天井部(33)の側部から斜め上方に立ち上がる側部起立壁(40)と、前記側部起立壁(40)と前記第1の対向側壁(22A)との間に設けられて上下方向に延びる樋構造をなし、前記第1の対向側壁側の内面が、下方に向かうに従って前記天井部(33)に近づくように傾斜したオイルガイド樋(44)とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、
前記側部起立壁(40)の上端部から側方に張り出し、前記回転駆動シャフト(91)の軸方向に並べられ、前記第1の対向側壁(22A)の上端部を上方から覆う複数の棚壁(41)が備えられ、前記オイルガイド樋(44)は、隣り合う前記棚壁(41)の対向した縁部から垂下した1対のサブ垂下壁(42,42)と、それら1対のサブ垂下壁(42,42)における前記側部起立壁(40)と反対側の縁部同士を連絡しかつ下方に向かうに従って前記天井部(33)に近づくように傾斜したメイン垂下壁(43)とから構成され、前記棚壁(41)と前記メイン垂下壁(43)の上端部とが、前記第1の対向側壁(22A)の上端部を上方から覆って前記アウターパン(11)の内側面に隣接しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、棚壁(41)には、オイルガイド樋(44)に一端部が連通した溝部(41A)が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、溝部(41A)は、オイルガイド樋(44)に向かって下るように傾斜しているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れか1の請求項に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、複数のオイルガイド樋(44)と、側部起立壁(40)のうち複数のメイン垂下壁(43)と対向する部分を天井部(33)側に膨出させてなる複数の土手部(45)とを備えたところに特徴を有する。
【0015】
請求項
6の発明は、請求項
2乃至
5の何れか1の請求項に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、エンジン(90)のうちアウターパン(11)が取り付けられるオイルパン取付面(90A)の内縁部が、アウターパン(11)の上端部より内側に張り出し、棚壁(41)とメイン垂下壁(43)の上端部とが、オイルパン取付面(90A)の内縁部に上方から覆われるように配置されたところに特徴を有する。
請求項7の発明は、請求項2乃至6の何れか1の請求項に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、棚壁(41)とメイン垂下壁(43)とには、オイルの気泡を潰すための複数の気泡消滅突起が形成されているところに特徴を有する。
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか1の請求項に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、オイル排出部(34B,34C)にオイルの気泡を潰すためのメッシュを張ったところに特徴を有する。
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、インナーパン(20)の底に貯まったオイルを吸引するための吸引パイプ(50)が、バッフルプレート(30)に一体に設けられているところに特徴を有する。
請求項10の発明は、請求項9に記載のバッフルプレート付きインナーパン(18)において、樹脂製のバッフルプレート(30)と、バッフルプレート(30)のうちインナーパン(20)の底壁(21)と対向する天井部(33)の上面に形成された天井溝(36A)と、天井溝(36A)の上面開口を閉塞する樹脂製の長蓋(48)と、天井溝(36A)の一端の底部から下方に延びた下側パイプ(37)と、長蓋(48)のうち下側パイプ(37)から離れた側の端部から上方に延びた上側パイプ(47)とを備え、天井溝(36A)と長蓋(48)と下側パイプ(37)と上側パイプ(47)とで吸引パイプ(50)を構成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
[請求項
1の発明]
請求項
1のバッフルプレート付きインナーパン(18)では、オイルは、側部起立壁(40)で受け止められて天井部(33)まで流下し、天井部(33)の天井孔(34B,34C)からインナーパン(20)の底壁(21)上へと排出される流下経路と、側部起立壁(40)の外側のオイルガイド樋(44)内に流れ込んでインナーパン(20)の底壁(21)上に排出される流下経路とを含む複数の流下経路を有する。これにより、エンジン(90)から流れ落ちてくるオイルが分散して流れ、バッフルプレート(30)上におけるオイル溜まりの発生が抑えられる。このことで、オイル貯まりにエンジン(90)からオイルが落下して気泡が生じる事態の発生を防ぐことができる。
即ち、オイルの気泡の発生を抑えたオイルの回収が可能になる。また、エンジン(90)から流れ落ちてくるオイルの流下量が位置によって異なる場合に、オイルの流下量が比較的多い部位にオイルガイド樋(44)を配置すれば、オイル溜まりの発生をより確実に防ぐことができる。
[請求項2の発明]
請求項2のバッフルプレート付きインナーパン(18)が有するバッフルプレート(30)は、回転駆動シャフト(91)の周速が下方を向く側に位置するインナーパン(20)の上端部(詳細には、第1の対向側壁(22A)の上端部)を、棚壁(41)とメイン垂下壁(43)の上端部とが上方から覆うので、オイルがインナーパン(20)とアウターパン(11)の隙間に流れ込むことが防がれる。
【0018】
[請求項3及び4の発明]
請求項3のバッフルプレート付きインナーパン(18)では、棚壁(41)に形成された溝部(41A)でオイルを受けてオイルガイド樋(44)に流入させることができる。また、請求項4の構成では、溝部(41A)がオイルガイド樋(44)に向かって下るように傾斜しているので、オイルがスムーズにオイルガイド樋(44)に流れる。
【0019】
[請求項5の発明]
請求項5の構成によれば、側部起立壁(40)のうち隣り合った棚壁(41)同士の間を天井部(33)側に膨出させて土手部(45)を形成したことで、オイルガイド樋(44)への入り口が大きくなり、オイルガイド樋(44)へのオイルの取り込みが容易になる。
【0022】
[請求項
6の発明]
請求項
6のバッフルプレート付きインナーパン(18)のように、エンジン(90)のうちアウターパン(11)が取り付けられるオイルパン取付面(90A)の内縁部が、アウターパン(11)の上端部より内側に張り出している場合に、棚壁(41)と前記メイン垂下壁(43)の上端部をオイルパン取付面(90A)の内縁部に上方から覆われるように配置することで、エンジン(90)から流れ落ちてきたオイルがインナーパン(20)とアウターパン(11)との間に入り込むことを防ぐことができ、インナーパン(20)内により多くオイルを集めることができる。
[請求項7及び8の発明]
請求項7及び8の構成では、オイルに気泡が生じても、棚壁(41)とメイン垂下壁(43)とに形成された複数の気泡消滅突起やオイル排出部(34B,34C)に張られたメッシュによって気泡を潰して減らすことができる。
[請求項9及び10の発明]
請求項9のバッフルプレート付きインナーパン(18)によれば、インナーパン(20)の底に貯まったオイルを吸引するための吸引パイプ(50)が、バッフルプレート(30)に一体に設けられているので、部品点数を減らすことができる。また、請求項10の構成のように、バッフルプレート(30)を樹脂製とし、インナーパン(20)の天井部(33)と、天井部(33)に形成された天井溝(36A)と、天井溝(36A)の上面開口を閉塞する長蓋(48)と、天井溝(36A)の一端から下方に延びた下側パイプ(37)と、長蓋(48)のうち下側パイプ(37)から離れた側の端部から上方に延びた上側パイプ(47)とを備えて、天井溝(36A)と長蓋(48)と下側パイプ(37)と上側パイプ(47)とで吸引パイプ(50)を構成することで、吸引パイプ(50)を一体に備えたバッフルプレート(30)を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1に示す二槽オイルパン10は、エンジン90の下端部に組み付けられ、その内部にはオイルが貯留されている。オイルは、エンジン90に一体に設けられた図示しないポンプによって吸い上げられてエンジン90の内部に供給される。エンジン90の内部に供給されたオイルは、回転駆動シャフト91(具体的には、クランクシャフト)等の各部を潤滑及び冷却しながら流下し、エンジン90の下端部から垂れて二槽オイルパン10に回収される。
【0025】
二槽オイルパン10は、最外部を構成するアウターパン11と、アウターパン11の内側に組み付けられた本発明のバッフルプレート付きインナーパン18とから構成されている。アウターパン11は、金属製(例えば、アルミニウム鋳造品)で上面が開放した略容器形状をなしている。また、アウターパン11は、回転駆動シャフト91の軸方向に、
図2の如く、深底部11Aと浅底部11Bとを並べて備えている。なお、アウターパン11における回転駆動シャフト91の軸方向の一端部と他端部とには、それぞれ回転駆動シャフト91を回転可能に支持する第1と第2のシャフト支持部品92,93が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、エンジン90の側壁のうち回転駆動シャフト91の径方向で対向する第1と第2の対向側壁94A,94Bは、上下方向に対して僅かに傾斜しており、第1と第2の対向側壁94A,94Bの下端のオイルパン取付面90Aが互いに面一になって概ね斜め下方を向いている。これに対応してアウターパン11の側壁13のうち回転駆動シャフト91の径方向で対向する第1と第2の対向側壁13A,13Bも垂直方向に対して同じ方向に僅かに傾斜し、第1と第2の対向側壁13A,13Bの上端のエンジン取付面11Cも互いに面一になって斜め上方を向いている。そして、アウターパン11のエンジン取付面11Cがエンジン90のオイルパン取付面90Aに重ねられた状態に取り付けられている。また、回転駆動シャフト91は、
図1における反時計回り方向に回転するようになっていて、回転駆動シャフト91に注がれたオイルの大部分が、
図1における左側、即ち、エンジン90の第1の対向側壁94A側から流れ落ちるようになっている。
【0027】
また、エンジン90のうち第1及び第2の各対向側壁94A,94Bとオイルパン取付面90Aとの角部は、アウターパン11における第1と第2の対向側壁13A,13Bの内面より内側にずれた配置になっている。即ち、エンジン90のうち第1及び第2の各対向側壁94A,94Bの下端のオイルパン取付面90Aにおける内縁部は、アウターパン11の上端より内側に張り出している。そして、後述するバッフルプレート30の上端部が、オイルパン取付面90Aの内縁部の下方に配置されている。
【0028】
アウターパン11の深底部11Aの底壁14は、
図1及び
図2に示すように、略水平になっている。また、アウターパン11の深底部11Aには、図示しないドレイン孔が貫通形成されている。ドレイン孔には、アウターパン11の外側からドレインボルトが挿入されており、そのドレインボルトを抜き取ることで、二槽オイルパン10内のオイルを外部へ排出させることができる。アウターパン11の主要部分の説明は以上である。
【0029】
次に、バッフルプレート付きインナーパン18について説明する。バッフルプレート付きインナーパン18は、インナーパン20にバッフルプレート30の一部を嵌合してアッシ化したものである。インナーパン20及びバッフルプレート30は何れも、樹脂(熱可塑性樹脂。具体的には、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂)を、射出成形や熱成形等の公知な樹脂成形法により成形した樹脂成形品である。以下、バッフルプレート付きインナーパン18を「インナーアッシ18」という。
【0030】
図1、
図2及び
図4に示すように、インナーパン20は、アウターパン11の深底部11A内に収容された上面開放の容器形状をなしている。これにより、二槽オイルパン10の内部が、インナーパン20の内側の内側貯留室16と、内側貯留室16を包囲した外側貯留室17とに仕切られている。また、
図2及び
図4に示すように、インナーパン20の側壁22の上端縁には、部分的にグロメット20Gが取り付けられていて、そのグロメット20Gがアウターパン11とインナーパン20の上端部との間に密着している。さらには、
図1に示すように、インナーパン20の側壁22のうち回転駆動シャフト91の径方向で対向する第1と第2の対向側壁22A,22Bは、アウターパン11の第1と第2の対向側壁13A,13Bと同様に垂直方向に対して傾斜していて、アウターパン11の第1と第2の対向側壁13A,13Bの内側に隣接している。また、インナーパン20の第1及び第2の対向側壁22A,22Bの上端は、アウターパン11の第1と第2の対向側壁13A,13Bにおける上端寄り位置に配置されている。なお、インナーパン20の第1と第2の対向側壁22A,22Bのうち高い方の第2の対向側壁22Bの上端には、グロメット20Gが取り付けられていない。
【0031】
インナーパン20の側壁22には、上下方向の中間位置に内側貯留室16と外側貯留室17とを連通する複数の室間連通孔22Cが貫通形成され、内側貯留室16内のオイルが一定量以上になると、室間連通孔22Cを通って内側貯留室16から外側貯留室17へとオイルが移動する。また、インナーパン20には、底壁21の一部を窪ませて底皿部21Aが形成され、さらに、底壁21のうち底皿部21Aの側方部分には内側ドレイン孔21Cが貫通形成されている。底壁21の下面には、内側ドレイン孔21Cを覆うように弁体ホルダ23が取り付けられ、その弁体ホルダ23内に弁体24が上下動可能に収容されている。そして、弁体ホルダ23に形成された連通孔23Cによって弁体ホルダ23内と外側貯留室17とが連通していて、外側貯留室17がオイルで満たされている状態で、弁体24が浮力によって内側ドレイン孔21Cを閉塞する。また、外側貯留室17のオイルが抜き取られてその液位が低下すると、弁体24が降下して内側ドレイン孔21Cが開放され、内側貯留室16から外側貯留室17へとオイルが流出する。なお、上記した弁構造は一例であり、その他の弁構造でもよい。
【0032】
インナーパン20の主要部分の説明は以上である。次に、バッフルプレートについて説明する。バッフルプレート30は、
図5に全体が示されており、車両が急加速、急制動又は急旋回したり、坂道走行状態になった場合に、インナーパン20内でオイルが片寄ることを規制することを主要目的として設けられ、そのためにバッフルプレート30には、
図1に示すように、インナーパン20の第1と第2の対向側壁22A,22Bの間における上下方向の中間位置に、インナーパン20の底壁21と対向する天井部33が備えられている。また、このバッフルプレート30には、天井部33の側部からインナーパン20の第1の対向側壁22Aに向かって斜め上方に立ち上がり、第1の対向側壁22Aの上部にまで延びた側部起立壁40と、天井部33の側部からインナーパン20の第2の対向側壁22Bに向かって僅かに上方に傾斜して、天井部33側の端部から第2の対向側壁22Bまでの距離の略3分の1延びた側部傾斜壁31とが備えられている。
【0033】
以下、第1と第2の対向側壁22A,22Bの対向方向を横方向H1、横方向H1と直交する回転駆動シャフト91(
図1参照)の軸方向を前後方向H2とし、前記したアウターパン11の浅底部11B側を後側、その反対側を前側ということとしてバッフルプレート30の詳細について説明する。
【0034】
天井部33は、
図3に示すように、インナーパン20の深底部11Aのうち第2の対向側壁22B側の浅底部11B寄り部分を除く全体を覆っている。また、天井部33の一部は、側部起立壁40側でアウターパン11の浅底部11B上に重ねられている。さらに、
図5に示すように、天井部33全体は、横方向H1の中央に向かうに従って下方側に若干撓むように丸みを帯びた形状になっている。
【0035】
天井部33には、横方向H1及び前後方向H2の両方向で略中央となる位置から前側における第1の対向側壁22A寄りの位置に亘って延びた蓋受容溝35が形成されている。
図6に示すように、蓋受容溝35は、天井部33の一部を段付き状に陥没させてなり、蓋受容溝35の底部36は長円形をなしている。そして、その蓋受容溝35の底部36の外縁部36Bに
図5に示した長蓋48が振動溶着されている。また、
図6に示すように、蓋受容溝35には、底部36のうち外縁部36Bを除いた部分を陥没させて断面円弧状の天井溝36Aが形成されている。一方、長蓋48は、
図5に示すように、ドーム状に上方に膨らんだ構造をなしている。これにより、蓋受容溝35の底部36と長蓋48とから中間パイプ部48Cが形成されている。また、底部36Aの後端部から下方に下側パイプ部37が垂下され、その下側パイプ部37の下端部が
図1に示すように、インナーパン20の底皿部21A内に突入した状態になっている。一方、
図5に示すように、長蓋48の前端部からは上側パイプ47が上方に延びている。そして、中間パイプ部48Cと下側パイプ部37と上側パイプ47とから本発明に係る吸引パイプ50が構成されている。なお、上側パイプ47の上端部は、
図3に示すように、第2のシャフト支持部品93側に曲がっていて、上側パイプ47から側方に張り出したフランジ部49が第2のシャフト支持部品93が有する図示しない流路の開口縁に螺子止めされている。
【0036】
側部起立壁40は、アウターパン11の第1の対向側壁13Aにおける前後方向H2の前端寄り位置から後端寄り位置の範囲で、第1の対向側壁13Aの内面上部を覆っている。そして、側部起立壁40は、
図6に示すように前後方向H2の中間位置では、天井部33の側部からから丸みを帯びて徐々に上方に立ち上がっている。また、側部起立壁40の前端側では、蓋受容溝35の内側面から立ち上がり、側部起立壁40の後端部では、天井部33より側部起立壁40が後方に張り出している。また、側部起立壁40には、前後方向H2の両端部と中央部とに土手部45が形成されている。各土手部45は、側部起立壁40の一部を上下方向に延びた稜線を有するように天井部33側に膨出させてなる。より具体的には、土手部45は、幅方向の中央に、稜線に沿って延びかつ回転駆動シャフト91(
図1参照)の中心軸と平行になった尾根部45Aを有し、その尾根部45Aの両側に尾根部45Aから下るように傾斜した裾部45B,45Bを備えている。また、土手部45の幅は、下方に向かうに従って狭くなっている。さらに、中央の土手部45は、その後方の裾部45Bが天井部33まで、尾根部45Aと前方の裾部45Bとが側部傾斜壁31側まで、連続して延びている。また、前端の土手部45は、側部傾斜壁31側まで延びて、天井部33の蓋受容溝35によって途中部分を分断されている。
【0037】
側部起立壁40のうち隣り合った土手部45,45の間部分は、湾曲ガイド部46になっている。湾曲ガイド部46は、土手部45とは逆に、下方に向かうに従って幅広になっている。また、湾曲ガイド部46の上限方向の中間部と下端部とには、幅方向の略全体に亘ってオイル排出口46A,46Bが形成されている。
【0038】
側部起立壁40の外側には、前端と中央の土手部45,45と対向する位置にオイルガイド樋44,44がそれぞれ形成されると共に、後端の土手部45と対向する位置に、オイルガイド樋44とは構造が若干異なる補助オイルガイド樋44Sが形成されている。具体的には、側部起立壁40の上端部には、その前後方向H2の両端部と、各湾曲ガイド部46とから外側に張り出した棚壁41が形成されている。そして、オイルガイド樋44は、前端の土手部45の外側でその土手部45を挟んで隣り合った棚壁41,41の間と、中央の土手部45の外側でその土手部45を挟んで隣り合った棚壁41,41の間とにそれぞれ配置され、それら隣り合った棚壁41,41の対向した縁部から下方に垂下した1対のサブ垂下壁42,42と、それら1対のサブ垂下壁42,42のうち土手部45と反対側の縁部同士を連絡するメイン垂下壁43とから構成されている。そして、オイルガイド樋44は、天井部33より下方まで延び、オイルガイド樋44のメイン垂下壁43は、
図7に示すように、下方に向かうに従って天井部33側に向かうように傾斜し、さらに、下端寄り位置で天井部33側に屈曲している。また、メイン垂下壁43のうち屈曲部分より下側の下端傾斜部43Eは、オイルガイド樋44と土手部45とに囲まれたオイル受入口45Kに下方から対向している。さらに、土手部45の上端部から外側に折り返されるように折返壁44Wが垂下されてサブ垂下壁42,42の間を連絡していて、その折返壁44Wの下端部と下端傾斜部43Eの下端部との間がオイル排出口44Kになっている。
【0039】
一方、
図6に示すように、補助オイルガイド樋44Sは、対向した1対のサブ垂下壁42,42とそれらを連絡するメイン垂下壁43とから構成されている点は、上述したオイルガイド樋44と同じだ
が、そのオイル排出口44A
(図8参照)は、隣のオイルガイド樋44側を向いている。詳細には、
図8に示すように、補助オイルガイド樋44Sのオイルガイド樋44とは反対側のサブ垂下壁42は、棚壁41の縁部から下方に垂下し、略中央でオイルガイド樋44側に向けて屈曲している。サブ垂下壁42のうち屈曲部分より下側の下端傾斜部42Eは、前後方向H2における補助オイルガイド樋44Sの中央付近まで延びている。また、下端傾斜部42Eの下端部は、アウターパン11における浅底部11Bの上方に位置している。一方、オイルガイド樋44側のサブ垂下壁42は、棚壁41の縁部から下方に垂下し、対向したサブ垂下壁42の略3分の1の長さになっている。そして、それらサブ垂下壁42,42の下端部の間がオイル排出口44Aになっている。
【0040】
図6に示すように、棚壁41のうち側部起立壁40と反対側の端部からは上方に外部側壁41Tが起立していて、メイン垂下壁43の上端部と外部側壁41Tとが連続した状態に繋がっている。また、メイン垂下壁43及び外部側壁41Tには、アウターパン11の内側面に形成された突部に合わせて複数の側面凹部40Uが形成されている。さらに、前端
と中央の土手部45の外側のオイルガイド樋44,44では、メイン垂下壁43の上端寄り位置にクランク状屈曲部43Dが形成されて、クランク状屈曲部43Dより下側が天井部33側にずらされている。そして、
図1に示すように、側部起立壁40のうちクランク状屈曲部43Dより上側部分がアウターパン11における深底部11Aの内面に宛がわれ、クランク状屈曲部43Dの下側にインナーパン20の第1の対向側壁22Aの上端部が配置されている。また、
図6に示すように、棚壁41には、その一部を陥没させて溝部41Aが形成され、それら複数の溝部41Aは、オイルガイド樋44又は補助オイルガイド樋44Sに向かって下るように傾斜している。この溝部41Aにより、エンジン90から流れ落ちるオイルを、オイルガイド樋44及び補助オイルガイド樋44Sにスムーズに取り込むことができる。
【0041】
なお、
図6に示すように、バッフルプレート30の天井部33には、蓋受容溝35の内側面に沿って複数の天井孔34Cが形成されると共に、蓋受容溝35より前側の平坦部分に長孔状の天井孔34Bが形成されている。また、天井部33の後端部には、バッフルプレート30をインナーパン20にボルトで固定するための取付孔33Eが形成され、さらに、その取付孔33Eの横には、インナーパン20をアウターパン11にボルトで固定する操作を行うための操作孔34Aが形成されている。また、側部起立壁40の後端部には、バッフルプレート30をアウターパン11にボルト固定するための取付孔33Fが形成されている。
【0042】
本実施形態のインナーアッシ18の構成に関する説明は以上である。次に、このインナーアッシ18の作用効果について説明する。本実施形態のインナーアッシ18においては、エンジン90から流れ落ちるオイルの大部分は、エンジン90の回転駆動シャフト91の周速が下方を向く側を通過する。これに対し、本実施形態では、回転駆動シャフト91の周速が下方を向く側に位置するインナーパン20の第1の対向側壁22Aの上端部を、バッフルプレート30の棚壁41とオイルガイド樋44の一部とで上方から覆っているので、オイルがインナーパン20とアウターパン11の隙間に流れ込むことが防がれる。しかも、エンジン90のうちアウターパン11の内側面から内側に張り出したオイルパン取付面90Aに上方から覆われる位置にバッフルプレート30の棚壁41等が配置されているので、このことによっても、エンジン90から流れ落ちてきたオイルがインナーパン20とアウターパン11との間に入り込むことを防ぐことができる。
【0043】
また、バッフルプレート30における側部起立壁40及びオイルガイド樋44のメイン垂下壁43がアウターパン11より上方位置からインナーパン20の内側となる位置に向かって斜め下方に延びているので、エンジン90から流れ落ちてくるオイルを、側部起立壁40及びメイン垂下壁43の傾斜で受け流し、オイルの落下の勢いを吸収することができる。これにより、オイルの気泡の発生が抑えられる。
【0044】
さらには、バッフルプレート30には、オイルが側部起立壁40から天井部33へと流れて天井孔34B,34Cからインナーパン20の底壁21上へと排出される流下経路と、オイルがオイルガイド樋44を通って天井部33の下方でインナーパン20の底壁21上に排出される流下経路と、湾曲ガイド部46を流れてオイル排出口46A,46Bからインナーパン20の底壁21上に流れる流下経路を含む複数の流下経路が備えられている。これにより、エンジン90から流れ落ちてくるオイルが分散して流れ、バッフルプレート30上におけるオイル溜まりの発生が抑えられる。このことで、オイル貯まりにエンジン90からオイルが落下して気泡が生じる事態の発生を防ぐことができる。また、エンジン90から流れ落ちてくるオイルの流下量が前後方向H2の位置によって異なる場合に、オイルの流下量が比較的多い部位にオイルガイド樋44を配置することで、オイル溜まりの発生をより確実に防ぐことができる。
【0045】
これらにより本実施形態のバッフルプレート30付きインナーパン20によれば、気泡の発生を抑えたオイルの回収が可能になる。また、インナーパン20の底に貯まったオイルを吸引するための吸引パイプ50が、バッフルプレート30に一体に設けられているので、部品点数を減らすことができる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
(1)前記実施形態のインナーアッシ18において、側部起立壁40やメイン垂下壁43等のオイルが流下する部分に、オイルの気泡を潰すための複数の気泡消滅突起を形成してもよい。
【0048】
(2)また前記実施形態のインナーアッシ18において、オイル排出口34C,46A,46B等にオイルの気泡を潰すためのメッシュを張った構成にしてもよい。