【実施例】
【0166】
実施例1
新規グループ1およびグループ2交差中和抗体:CR9114の同定
末梢血を正常健常ドナーから静脈穿刺によりEDTA抗凝固試料管中に回収した。scFvファージディスプレイライブラリーを、本質的に本明細書に参照により組み込まれる国際公開第2008/028946号パンフレットに記載のとおりに得た。選択は、インフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/99)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H4(A/Duck/HongKong/24/1976)、H5(A/Chicken/Vietnam/28/2003)、H7(A/Netherlands/219/2003)およびH9(A/HongKong/1073/99)の組換えヘマグルチニン(HA)に対して実施した。2つの連続選択ラウンドを個々の一本鎖ファージ抗体の単離前に実施した。第2の選択ラウンド後、個々の大腸菌(E.coli)コロニーを使用してモノクローナルファージ抗体を調製した。上記のスクリーニングにおいて得られた一本鎖ファージ抗体を含有する選択上清を、ELISAにおいて特異性、すなわち、異なるHA抗原への結合についてバリデートした。この目的のため、バキュロウイルス発現組換えH1(A/New Caledonia/20/99)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H5(A/Vietnam/1203/04)H7(A/Netherlands/219/2003)、およびB(B/Ohio/01/2005)HA(Protein Sciences,CT,USA)を、Maxisorp(商標)ELISAプレートにコートした。得られた一本鎖ファージ抗体のうち、一本鎖ファージ抗体SC09−114は、組換えインフルエンザAH1、H3、H5、H7およびインフルエンザBHAに特異的に結合することが示された。SC09−114の結合および特異性をFACS分析によりバリデートした。この目的のため、全長組換えインフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisonsin/67/2005)およびH7(A/Netherlands/219/2003)HAを、PER.C6細胞の表面上で発現させた。SC09−114は、インフルエンザA亜型H1、H3およびH7HAに特異的に結合することが示された。scFvの重鎖および軽鎖可変領域を既に記載(国際公開第2008/028946号パンフレット)のとおりクローニングした。ヒトIgG1重鎖および軽鎖をコードする得られた発現構築物を、293T細胞との組合せで一過的に発現させ、ヒトIgG1抗体CR9114を含有する上清を得、それを標準的な精製手順を使用して産生した。CR9114の重鎖および軽鎖のCDRのアミノ酸配列を表1に挙げる。重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は以下に挙げる。
【0167】
実施例2
CR9114の交差結合反応性
CR9114を、ELISAにおいて結合特異性、すなわち、異なるHA抗原への結合についてバリデートした。この目的のため、バキュロウイルス発現組換えH1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H5(A/Vietnam/1203/04、H7(A/Netherlands/219/2003)およびH9(A/HongKong/1073/99)HA(Protein Sciences,CT,USA)をMaxisorp(商標)ELISAプレートにコートした。対照として、未関連IgGのCR4098を使用した。CR114は、試験された全ての組換えHAに対する異種亜型交差結合活性を有することが示された。表2参照。
【0168】
さらに、抗体を異種亜型結合についてFACS分析により試験した。この目的のため、全長組換えインフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisonsin/67/2005)およびH7(A/Netherlands/219/2003)HAを、PER.C6細胞の表面上で発現させた。細胞をCR9114と1時間インキュベートし、次いでPBS+0.1%のBSAによる3回の洗浄ステップを行った。結合した抗体は、PEコンジュゲート抗ヒト抗体を使用して検出した。対照として、未形質移入PER.C6細胞を使用した。CR9114は、インフルエンザA亜型H1、H3およびH7HAに対する交差結合活性を示したが、野生型PER.C6細胞は示さなかった。表2参照。
【0169】
実施例3
CR9114の交差中和活性
CR9114が複数のインフルエンザA株を遮断し得たか否かを決定するため、追加のインビトロウイルス中和アッセイ(VNA)を実施した。VNAは、MDCK細胞(ATCC CCL−34)について実施した。MDCK細胞をMDCK細胞培養培地(抗生物質、20mMのHepesおよび0.15%(w/v)の重炭酸ナトリウムが補給されたMEM培地(完全MEM培地)に10%(v/v)のウシ胎仔血清が補給されたもの)中で培養した。アッセイにおいて使用されたH1(A/WSN/33、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/IVR−145(A/Solomon Islands/3/2006の高増殖リアソータント)、A/Brisbane/59/2007、A/NYMC/X−181(A/California/07/2009の高増殖リアソータント)、H2(A/Env/MPU3156/05)、H3(A/HongKong/1/68、A/Johannesburg/33/94、A/Panama/2000/1999、A/Hiroshima/52/2005、A/Wisconsin/67/2005およびA/Brisbane/10/2007)、H4(A/WF/HK/MPA892/06)、H5(PR8−H5N1−HK97(A/HongKong/156/97およびA/PR/8/34の6:2リアソータント)およびA/Eurasian Wigeon/MPF461/07)、H6(A/Eurasian Wigeon/MPD411/07)、H7(NIBRG−60(A/Mallard/Netherlands/12/2000の6:2リアソータント)およびPR8−H7N7−NY(A/New York/107/2003(H7N7)およびA/PR/8/34の7:1リアソータント))、H8(A/Eurasian Wigeon/MPH571/08)H9(A/HongKong/1073/99およびA/Chick/HK/SSP176/09)、H10(A/Chick/Germany/N/49)およびH14(PR8−H14N5(A/mallard/Astrakhan/263/1982(H14N5)およびA/PR/8/34の6:2リアソータント))株を全て5.7×10
3TCID50/ml(1ml当たりの50%組織培養感染用量)の力価に希釈し、力価は、SpearmanおよびKarberの方法に従って計算した。IgG調製物(200μg/ml)を完全MEM培地中で4つ組のウェル中で段階的に2倍希釈(1:2〜1:512)した。それぞれのIgG希釈物の25μlを、ウイルス懸濁液(100TCID50/25μl)の25μlと混合し、37℃において1時間インキュベートした。次いで、懸濁液を、50μlの完全MEM培地中でコンフルエントMDCK培養物を含有する96ウェルプレート上に2つ組で移した。使用前、MDCK細胞をMDCK細胞培養培地中で1ウェル当たり3×10
4個の細胞において播種し、細胞がコンフルエントに達するまで増殖させ、300〜350μlのPBS、pH7.4により洗浄し、最後に50μlの完全MEM培地をそれぞれのウェルに添加した。接種した細胞を37℃において3〜4日間培養し、細胞変性効果(CPE)の発現について毎日観察した。CPEを陽性対照と比較した。
【0170】
CR9114は、全ての試験インフルエンザA亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9およびH10ウイルスの代表株に対する異種亜型交差中和活性を有することが示された。表3参照。
【0171】
実施例4
H1HAをベースとするCR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
広域交差中和効力を有するインフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する完全ヒトモノクローナル抗体を事前に同定した。CR6261(国際公開第2008/028946号パンフレットに記載)は、系統発生グループ1のインフルエンザAウイルスに対する広域交差中和活性を有することが示された。さらに、上記のCR9114は、系統発生グループ1および2の両方のインフルエンザAウイルスならびにインフルエンザBウイルスに結合し、中和し得ることが示されている。機能的および構造的分析は、これらの抗体が膜融合プロセスを妨げ、インフルエンザHAタンパク質のステムドメイン中で高度に保存されたエピトープに対して指向されることを明らかにした(Throsby et al.(2008);Ekiert et al.(2009)国際公開第2008/028946号パンフレット、および同時係属出願EP11173953.8号明細書)。
【0172】
本発明をもたらした研究において、これらのエピトープを含有するHAのステムドメインを含む新たな分子を設計し、例えば、広範囲のインフルエンザ株に対する保護を誘導するワクチンとして使用することができるユニバーサルエピトープベース免疫原性ポリペプチドを作出した。本質的には、高度に変異性の免疫優性部分、すなわち、頭部ドメインを最初に全長HA分子から除去して「mini−HA」とも称されるHAステムドメインポリペプチドを作出する。このように、免疫応答は、広域中和抗体についてのエピトープが局在するステムドメインに対して再指向される。抗体CR6261およびCR9114は、新たに作出された分子の正確なフォールディングを調べるため、および中和エピトープの存在を確認するために使用される。
【0173】
したがって、本発明のポリペプチドは、膜近位ステムドメインHA分子の保存エピトープを、膜遠位頭部ドメイン中に存在する優性エピトープの不存在下で免疫系に提示する。この目的のため、頭部ドメインを構成するHA0タンパク質の一次配列の一部を除去し、直接的に、または短いフレキシブル結合配列(「リンカー」)を導入することにより再連結させて鎖の連続性を回復させる。得られた配列を、HA0分子の残留部分の天然三次元構造を安定化する規定の突然変異を導入することによりさらに改変する。
【0174】
ウイルス中のHA分子の機能は、細胞表面受容体シアル酸に結合し、エンドソーム中への取り込み後、ウイルスおよびエンドソーム膜の融合を媒介し、細胞中へのウイルスRNAの放出をもたらすことである。融合プロセスにおける不可欠なステップは、融合ペプチドが曝露されるように分子の二次構造エレメントを再配置するHA分子の大きい立体構造変化である。結果的に、三次構造に関して極めて異なるHA分子の2つの立体構造(融合前および後)が存在する。ウイルスHAタンパク質は融合前状態で主として免疫系に曝露されるため、本発明のポリペプチドがこの立体構造を採用することを確認することが重要である。この要件は、融合前立体構造を安定化させ、同時に融合後立体構造を脱安定化させることにより満たすことができる。この安定化/脱安定化は、必須である。それというのも、融合前立体構造は準安定性であり、融合後立体構造の採用は安定な立体構造、すなわち、低いエネルギー極小をもたらすためである(Chen et al,1995)。
【0175】
この実施例において、H1N1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)からのHAを一次(または野生型)配列としてみなして本発明のポリペプチドを作出する。
【0176】
最初のステップにおいて、本発明のポリペプチドは、59〜291位のHA1配列を除去することにより構築する(番号付与は、配列番号1に示されるHA0配列中の位置を指す。ある実施形態において、HA1部分は、アミノ酸18〜343を含み、HA2部分は、アミノ酸残基344〜565を含み;それというのも、配列番号1は、シグナルペプチドを含み、HA1部分は、18位において開始するためである)。このことは、HA0の残基60から290の除去をもたらす。これらの残基は、GGGG結合配列により置き換えた。次に、融合前および融合後立体構造の両方のそれぞれの残基の接近可能な表面積を、Brugel(Delhaise et al.,1984)により計算した。それぞれの残基の曝露および埋込の程度を、融合前立体構造中で曝露され、融合後立体構造中で埋め込まれる残基に焦点を当てるSamantha et al(2002)に記載のとおり決定した。これらの残基のさらなる分析は、これらのアミノ酸残基の一部を、突然変異が融合前立体構造に対する影響を有さず、融合後立体構造を脱安定化させるように突然変異させることができることを示した。これらの残基は、一般に、疎水性側鎖を有し、融合後立体構造中のコイルドコイルの形成に関与する。これらのアミノ酸残基の親水性アミノ酸への突然変異は、コイルドコイル特性を撹乱し(コイルドコイル中のへリックス間の接触は、一般に、疎水性である)、したがって融合後立体構造を脱安定化させる。
【0177】
この推定に従って、配列のHA2部分において、いくつかの突然変異:Phe406のSerへの(F406S)、Val409のThrへの(V409T)、Leu416のSerへの(L416S)およびTyr502のSerへの(Y502S)突然変異を導入した。これらは、HAの表面から疎水性残基を除去する突然変異である。L416のSまたはTのいずれかへの突然変異は、コンセンサスN−グリコシル化部位(コンセンサス配列は、NX(S/Tである)も導入することに留意すべきである。この位置におけるグリコシル化は、この領域の溶解度をさらに増加させる。さらに、Leu58をThr(L58T)に、Val314をThr(V314T)に、Ile316をThr(I316T)に突然変異させ;これらの突然変異は、全てHA1ドメイン、すなわち、天然HA0鎖の開裂後のHA1に対応する配列の部分中に存在する。最後の2つの突然変異は、側鎖のベータ分枝を維持するが、表面から疎水性残基を除去する。以下に示されるとおり、これらの突然変異の一部を全てのバリアント中に導入し、他を別個のポリペプチド中で試験して突然変異が互いに不所望に影響するか否かを調査した。
【0178】
ポリペプチドの安定性を増加させるため、HAを融合前立体構造で固定するために2つのジスルフィド架橋を調査した。ジスルフィド架橋は、(全長HA分子中で)互いから空間的に適切な距離において存在し、ジスルフィド架橋を形成させるために既に正確な位置においてCベータ原子を有する残基間で形成させる。提案される第1のジスルフィド架橋は、321位(HA1ドメイン)および405位(HA2ドメイン)間に存在する。HA2ドメイン内で、ジスルフィド架橋を413および421位間に作出した。
【0179】
R343位におけるHAの開裂は、立体構造変化が本発明のポリペプチド中で生じ得るために不可欠なステップであるため、Arg(R)のGln(Q)への突然変異を導入することにより開裂部位を除去した。本発明による別の解決策は、ArgをGlnを変化させ、HA2の融合ペプチドの小部分の残基345から350を欠失させることである。これらの(疎水性)配列の除去は、ポリペプチドをさらに安定化させる。
【0180】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2のC末端(配列番号1による番号付与)の細胞質配列および膜貫通配列は、例えば、ワクチンにおいて使用することができる分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に生成されるように除去した。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させた。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加する。本発明によれば、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、以下の配列:
短いリンカーおよびhisタグを含むEGRHHHHHHH(配列番号81)、または
トロンビン開裂部位、三量体化ドメイン、およびhisタグを含むSGRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHH(配列番号82)により置き換えた。
【0181】
上記突然変異を、HAステムポリペプチドの三次元構造中のそれらの機能および局在に従ってクラスターに分類した。全てのポリペプチドは、H1HA配列1〜59および291〜565ならびにR343Q突然変異を、以下の追加の突然変異:L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S(配列番号3;cluster1と命名)とともに含有する。さらに、追加の突然変異を有するバリアントを作製した:
Cluster2:K321C、Q405C(配列番号4)
Cluster3:F413C、E421C(配列番号5)
Cluster4:HA2 Y502S(配列番号6)。
【0182】
さらに、cluster1配列ならびにさらにcluster2および3(配列番号7)またはcluster2、3および4(配列番号8)の突然変異を含有する2つのバリアントを作製した。
【0183】
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、全長配列(配列番号1)およびH1N1A/Puerto Rico/8/1934配列をベースとするSteel et al(2010)により記載された配列(H1−PR8−dH1;配列番号24)を実験に含めた。
【0184】
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(fluorescence associated cell sorting)(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(例えば、CR6261およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。結果を陽性細胞の割合および平均蛍光強度として表現し、
図2に示す。
【0185】
結果は、全ての構築物が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、ポリクローナル血清(抗H1ポリ)との反応が、未形質移入細胞についての約4%と比較して全ての分析細胞の75%以上が陽性であることをもたらすためである。これは、ポリクローナル血清による処理後の全ての構築物について類似する平均蛍光強度(MFI)の値により確認される。標識抗ヒトIgGまたは無関連mAbのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Brisbane/59/2007およびA/Puerto Rico/8/1934全長HAタンパク質の両方は、モノクローナル抗体CR6261、CR6254、CR6328(全てH1HAに結合し、それを中和することが公知;Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)、CR9114(上記)、CR8001(H1HAに結合するが、H1を中和しない;国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)により認識されるが、CR8057(一部のH3株にのみ結合、これも国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)およびCR6307(Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)により認識されない。
【0186】
CR6261エピトープ(Ekiert et al.2009)の不連続および立体構造特徴を考慮すると、全長タンパク質の両方はそれらの天然三次元立体構造で存在することが結論づけられる。この実験において試験される新たに設計された本発明のポリペプチドについて、モノクローナル抗体のパネルによる同一の認識パターン:CR6261、CR6254、CR6328、CR9114およびCR8001による結合が観察されたが、CR6307およびCR8057による結合は観察されなかった。これは、陽性細胞の割合に基づくデータにおいて最も明らかであるが、平均蛍光強度データにおいても観察される。最良の結果は、%陽性細胞および平均蛍光強度の両方に関してminiHA−cluster1について得られる。
【0187】
さらなる改変の追加、例えば、上記のジスルフィド架橋(cluster2および3)およびcluster4のY502S突然変異(またはそれらの組合せは、陽性細胞の割合の減少およびより低い平均強度をもたらした。頭部ドメインを欠失するがさらなる改変を欠くSteel et al.(2010)(配列番号24)により記載された構築物は、この実験において使用される抗体のいずれによってもバックグラウンドレベルを上回って認識されない。したがって、DNA形質移入後にこのタンパク質はそれがHA中で有する天然三次元立体構造でディスプレイされないことが結論づけられる。
【0188】
上記の結果は、HA分子のAへリックスおよび長い骨格へリックス(CD)を連結する残基402から418により形成されるループならびにその周辺区域の親水性特徴を増加させるcluster1突然変異の重要性を指す。本発明のポリペプチドの安定性およびフォールディングに対するcluster1の突然変異の有益な効果をさらに確認するため、miniHA(配列番号2;Steelによるが、A/Brisbaneをベースとするポリペプチド)およびminiHA_cluster1(本発明によるポリペプチド;配列番号3)の別個の実験において比較した(
図3)。
【0189】
miniHA−cluster1が形質移入された細胞の約60%が、CR6261、CR6254、CR6328およびCR9114の結合後に陽性である一方、miniHAによる形質移入(Steelによるが、A/Brisbaneをベースとするポリペプチド;配列番号2)は、バックグラウンドレベル(1〜3%)に極めて近い値をもたらす。本発明者らは、cluster1の突然変異が、これらの突然変異を欠く未改変miniタンパク質(配列番号2)と比較して本発明によるポリペプチドの適切なフォールディングおよび安定性に良好に寄与することを結論づける。
【0190】
Steel et al.は、H1A/Puerto Rico/8/1934およびH3HK68株のHA1のアミノ酸残基53から276を一次配列から欠失させ、これを短いフレキシブルリンカーにより置き換えることにより新たな分子を作出した。この実施例において示されるとおり、これは、ステム領域中の保存エピトープに結合することが既に示された抗体の結合の欠落により証明されるとおり、正確な立体構造を調整しない高度に不安定な分子をもたらす。不正確なフォールディングは、通常は全長HA分子中で球状頭部によりシールドされる大きい区域の溶媒曝露により引き起こされる。この区域は天然で疎水性であるため、分子はもはや安定でなく、したがって適合が必要である。
【0191】
本発明のポリペプチドにおいて行われた疎水性残基の親水性残基についての交換は、この効果を弱め、HAステムドメインポリペプチドを安定化させる。ステムドメインの天然三次元フォールドのさらなる安定化は、ジスルフィド架橋を適切な位置に導入して天然三次構造中で空間的に近いが一次構造中で離隔される残基を密接に連結させることにより達成される。
【0192】
実施例5
実施例4のHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。比較の理由のため、Steel et al.(2010)によるminiHA設計(mini−PR8;配列番号24)およびA/Puerto Rico/8/1934からの対応する全長タンパク質HAも実験に含めた。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0193】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清をFACSアッセイにより分析した。HEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に、形質移入剤として40マイクロリットルの293transfectinを使用して発現ベクター(1マイクログラム/ml)を形質移入し、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)し、アリコートを構築物特異的血清により処理し、二次抗体により染色し、蛍光結合細胞選別により分析した。結果を
図4に示す。
【0194】
予測されるとおり、%陽性細胞およびMFIにより証明されるとおり、cM2特異的血清(陰性対照)はcM2を認識するが、全長HAもステムドメインポリペプチドも認識しない。対照的に、全長HA特異的血清は、対応する全長HA(配列番号1)を発現する細胞を染色するが、より低いレベル(全長についての約80%に対して約40%の陽性細胞、全長についての約7000に対して約1000のMFI)ではあるが、miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)も染色する。逆も当てはまり;miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)に特異的な血清は、対応する構築物および全長HA(配列番号1)を発現する細胞を認識する。結果を以下の表4にまとめる。
【0195】
miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)についての上記結果と対照的に、全長PR8により免疫化されたマウスから得られた血清は、H1−PR8−dH1(配列番号24)が形質移入された細胞に十分結合しなかった。陽性細胞の割合は、miniHA−cluster1(配列番号3)およびminiHA−cluster1+2(配列番号4)についての40〜50%と比較して約20%であった。結果は、バックグラウンドレベルをわずかに上回る平均蛍光強度において観察されるものにおいても反映される。
【0196】
まとめると、データは、本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。特に、残基402〜418(配列番号1による番号付与)の領域中の改変は、安定な分子を作出するために重要である。
【0197】
実施例6
第2世代のステムドメインポリペプチドの調製
実施例4に記載のステムドメインポリペプチドの平均蛍光強度は、全ての場合において、対応する全長タンパク質について観察されるものよりも低く;実際、最良の設計、miniHA−cluster1(配列番号3)は、モノクローナル抗体との結合後に全長構築物の平均強度の10%のオーダーである強度を有する。これは、細胞表面上のステムドメインポリペプチドの発現および/またはフォールディングが、全長タンパク質について観察されるものよりも低いことならびに設計をさらに改善することができることを示す。第1世代から得られた結果は第1世代構築物の改善が可能であることを示し、したがって、第2の設計ラウンドを開始した。
【0198】
実施例4に記載のポリペプチドは、HA0鎖の同一の欠失、すなわち、残基L60からK290の欠失(mini1;番号付与は、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA0;配列番号1中の位置を指す)をベースとした。このアプローチは、頭部ドメインに目下もはや付着していない長い非構造化ループを作出する。このループは、全タンパク質安定性に寄与しておらず、ポリペプチドの他の部分のフォールディングに影響を与えずにかなり短縮することができることが推定された。3つの追加の欠失を設計し、上記のとおりGGGGリンカー配列により置き換え、上記のcluster1の突然変異と組み合わせた。欠失は、S53からP320(mini2)、H54からI302(mini3)、G56からG317(mini4)である。上記のcluster1と同一の追加の改変(L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S)を導入した。このクラスターに属する残基の一部は、欠失配列の一部であり、したがって、もはや改変することができない(以下参照)。さらに、2つの追加の突然変異を、融合前状態で三量体コイルドコイルを形成する長いへリックスC中で作出した。三量体コイルドコイルは、この構造モチーフの特質である7残基リピート配列の420aおよびd位におけるIleにより安定化されることが当分野において周知である(Suzuki et al.,(2005);Woolfson et al.(2005))。この知見を、Ileを420位(M420I)および427位(V427I)において導入することにより適用した。これらの2つの突然変異およびcluster1の突然変異の組合せをcluster11と命名し;分類のため、組合せを以下に列記する:
Mini1:欠失L60からK290 cluster11:M420I、V427I、L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S
Mini2:欠失S53からP320 cluster11:M420I、V427I、F406S、V409T、L416S
Mini3:欠失H54からI302 cluster11:M420I、V427I、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S
Mini4:欠失G56からG317 cluster11:M420I、V427I、F406S、V409T、L416S
【0199】
ステムドメインポリペプチドの融合前状態をさらに安定化させるため、追加のジスルフィド架橋を324および436位間に導入し(cluster5:R324C、T436C)、異なる欠失突然変異体と組み合わせた。以下の組合せを合成し、上記のFACSアッセイにおいて結合について試験した:
Mini1−cluster11(配列番号9)
Mini2−cluster11(配列番号10)
Mini3−cluster11(配列番号11)
Mini4−cluster11(配列番号12)
Mini1−cluster11+5(配列番号13)
Mini2−cluster11+5(配列番号14)
Mini3−cluster11+5(配列番号15)
Mini4−cluster11+5(配列番号16)
【0200】
比較の理由のため、miniHA−cluster1(配列番号3)も実験に含めた。結果を
図5に示す。
【0201】
全ての場合において、ステムドメインポリペプチドは、ポリクローナル抗H1血清による処理後の陽性細胞の割合(90%以上)により証明されるとおり、HEK293F細胞中への発現ベクターの形質移入後に細胞表面上に存在した。
【0202】
この実験における全てのHAステムドメインポリペプチドは、CR6261、CR6254、CR6328およびCR9114により認識されたが、CR8057により認識されず;最後のものは予測される。それというのも、このmAbは、H3HAに特異的であるためである。しかしながら、異なる抗体について陽性の細胞の割合およびMFIの明確な差が存在する。特性決定された最良の抗体は、エピトープの詳細が公知のCR6261である。エピトープは不連続および立体構造的であり、したがって、この抗体の結合は、HAステムドメインポリペプチドの正確なフォールディングのストリンジェントな試験としてみなすことができる。CR9114は、広域中和性であり、グループ1および2の両方からの株をカバーする(表3)。CR6328およびCR6254のエピトープについて、詳細は公知でないが、%陽性細胞およびMFIについて見出されるより高い値、ならびにデータのより小さい拡散に基づき、これらの抗体の結合は、CR6261よりも感受性が小さい、正確なフォールディングのプローブであると考えられる。
【0203】
陽性細胞の割合を比較(全ての抗体についてのデータを考慮)すると、Mini1から4構築物をランク付けすることができる(最大から最小%)
cluster11との組合せについてMini2>Mini1>Mini4>Mini3および
cluster11+5との組合せについてMini2>Mini1=Mini4>Mini3
【0204】
このランク付けは、MFIに関するデータにおいても反映され、Mini2構築物、S53からP320の欠失がこの組からの正確な立体構造で細胞表面上でディスプレイされる最大レベルのタンパク質をもたらすという結論をもたらす。
【0205】
MiniHA−cluster1(配列番号3)をmini1−cluster11(配列番号9)と比較すると、追加の突然変異M420I、V427Iは、構築物の追加の安定化をもたらすと考えられず;どちらかと言えば、それらは、より低い陽性細胞の割合およびMFI値をもたらすが、差は小さい。
【0206】
ジスルフィド架橋の導入R324C、T436C(cluster5)は、細胞表面上の正確にフォールドされたタンパク質の増加を、mini2−cluster11(配列番号10)およびmini4−cluster11(配列番号12)についてもたらすが、mini1−cluster11(配列番号9)およびmini3−cluster11(配列番号11)については最小の改善をもたらし、または改善をもたらさない。全体的な最良の結果は、mini2−cluster11+5(配列番号14)について得られる。これは、特に、この構築物について全長構築物についての値の約50%であるMFI値から明らかである。
【0207】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列(配列番号1による番号付与)を除去し、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することにより場合により置き換える。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグHHHHHHHを付加することができる。本発明によれば、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、配列番号81または配列番号82により置き換えた。
【0208】
実施例7
第2世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
実施例6のステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、Mini2−cluster11(配列番号10)、Mini1−cluster11+5(配列番号13)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0209】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。全長HA0(配列番号1)、陰性対照cM2およびMini2−cluster11+5(配列番号14)も、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃によりマウスの別個の群に投与した。血清を、A/Brisbane/59/2007株からの全長HAの組換えエクトドメイン(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してElisaにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出した。mAbの3AH1InA134(Hytest,Turku,Finland)を使用して力価を標準曲線と比較してElisa単位/ml(EU/ml)を導いた。
【0210】
28および49日後のElisaの結果を
図6AおよびBにそれぞれ示す。Mini2−cluster11+5(配列番号14)をコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、遺伝子銃を使用する免疫化28および49日後ならびにさらに筋肉内で免疫化した場合に49日後にエクトドメイン全長HAへの明確な結合を示す。Mini2−cluster11(配列番号10)およびMini1−cluster11+5(配列番号13)について、応答は、4匹のマウスのうち1匹について検出された一方、miniHA−cluster1(配列番号3)について結合は検出されなかった。
【0211】
まとめると、データは、本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。特に、残基402〜418(配列番号1による番号付与)の領域中の改変、欠失S53からP320は、ジスルフィド架橋R324C、T436Cとの組合せで、安定な分子を作出するために重要である。
【0212】
実施例8
第3世代ステムドメインポリペプチドの調製
ステムドメインポリペプチドの設計をさらに改善するため、第3の設計ラウンドを実行した。全長HA中で埋め込まれるが、ステムドメインポリペプチド中で埋め込まれない表面の親水性を増加させる追加の突然変異を、413位において導入し、F413G(配列番号1により番号付与)、cluster6と命名した。このクラスターを、mini−2の欠失(S53からP320)、cluster5(R324C、T436C)のジスルフィド架橋およびcluster1(すなわち、F406S、V409T、L416S;配列番号46)またはcluster11(M420I、V427I、F406S、V409T、L416S;配列番号47)のいずれかの突然変異と組み合わせた。mini−2欠失(S53からP320)とcluster1(F406S、V409T、L416S)およびcluster5(R324C、T436C)との組合せも、参照のためにこの実験に含める(配列番号48)。
【0213】
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)が、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418から433位(配列番号44)(配列番号1による番号付与)(の相当物)において導入される。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。
【0214】
配列番号44から配列番号48により記載されるステムドメインポリペプチドの場合において、全てのタンパク質は、ポリクローナル抗H1血清による処理後の陽性細胞の割合(90%以上)により証明されるとおり、HEK293F細胞中への発現ベクターの形質移入後に細胞表面上に存在した。結果を
図7に示す。
【0215】
この実験における全てのHAステムドメインポリペプチドは、miniHA(配列番号2)を除き、CR6261、CR6328およびCR9114により認識されたが、CR8020により認識されず;最後のものは予測される。それというのも、このmAbは、H3HAに特異的であるためである。陽性細胞の割合は、染色にCR6261、CR6328およびCR9114を使用してステムドメインポリペプチドについて約80%であり、ポリクローナル抗H1血清によってのみ認識されるminiHAを除く。ここでも、これは、この特定の構築物の適切なフォールディングの欠損を示す。しかしながら、異なる抗体についてMFIの明確な差が存在する。特性決定された最良の抗体は、エピトープの詳細が公知のCR6261である。エピトープは不連続および立体構造的であり、したがって、この抗体の結合は、HAステムドメインポリペプチドの正確なフォールディングのストリンジェントな試験としてみなすことができる。CR9114は、広域中和性であり、グループ1および2の両方からの株をカバーする(表3)。CR6328のエピトープについて、詳細は公知でないが、全長HAに関する結合試験においてCR6261との競合が観察される。
【0216】
実験において使用されるモノクローナル抗体にかかわらず、H1−mini2−cl11+5(配列番号14)、H1−mini2−cl1+5(配列番号48)、H1−mini2−cl1+5+6(配列番号46)およびH1−mini2−cl11+5+6(配列番号47)についてのMFIは極めて類似する。コンセンサス三量体化ドメイン(配列番号44)残基の包含は、三量体化ドメインを有さない相当配列(すなわち、H1−mini2−cluster1+5+6;配列番号46)と比較してMFIを3から4倍だけ低減させるが、結果は、依然として頭部ドメインの欠失後のステムポリペプチドの改変の不存在下よりも明らかに良好である(miniHA結果参照)。GCN4三量体化配列(配列番号45)の付加は、MFIを全長タンパク質と同等のレベルに増加させる。
【0217】
実施例9
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
上記の手順に従って設計された本発明のポリペプチドは、安定性を増加させるためにさらに改変することができる。このような改変は、単量体および/または二量体種と比べて本発明のポリペプチドの三量体形態の形成を向上させるために導入することができる。上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。
【0218】
本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418から433位(配列番号44)(配列番号1による番号付与)(の相当物)において導入した。あるいは、IEAIEKKIEAIEKKI(配列番号85)を419〜433(配列番号49)において、またはIEAIEKKIEAIEKK(配列番号86)を420〜433(配列番号50)において導入することができる。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。あるいは、MKQIEDKIEEIESK(配列番号87)を420〜433位(配列番号51)において、またはRMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号88)を417〜433位(配列番号52)において導入することができる。同様に、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより増強される(配列番号53)。
【0219】
全てのペプチドは、CR9114およびCR6261に結合することが示された。
【0220】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、上記のとおりシグナル配列および/またはHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有しない。
【0221】
実施例10
H7HAをベースとするCR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
本発明のポリペプチドを設計する上記の手順を、H7にも適用した。この実施例において、血清型H7に基づく本発明のポリペプチドの設計を記載する。H7インフルエンザウイルスA/Mallard/Netherlands/12/2000のHA(配列番号31)を親配列として使用したが、当業者は、他のH7配列の使用も同様に可能であったことを理解する。それというのも、この配列は特にステム領域が十分保存されるためである。
【0222】
配列の第1の改変は、RをQに突然変異(R339Q)させることにより339位(番号付与は、配列番号31を指すにおける開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基341から345(LFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はH7において100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
【0223】
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するためにHA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。H7配列において、欠失は、H7A/Mallard/Netherlands/12/2000(配列番号31)中のR53〜P315(mini2;配列番号33)(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
【0224】
配列番号40は、T54〜C314を欠失するそのような本発明のポリペプチド(mini5;配列番号40)を記載する。上記の欠失は、残基280〜310により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された(上記参照)。
【0225】
頭部ドメインの欠失により、残基394〜414のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。H7HAにおいて、このループは高度に保存される(表7参照)。コンセンサス配列は:LI(E/D/G)KTNQQFELIDNEF(N/T/S)E(I/V)E(Q/K)(配列番号32)である。
【0226】
融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させた。具体的には、402、404、405、409、412位(番号付与は、配列番号31を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
【0227】
F402およびF409位について、Sへの突然変異が好ましいが、他の極性(T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。404位(96%L)について、NまたはSへの突然変異が好ましく;後者のアミノ酸は低頻度ではあるが天然でも生じ、その場合、この位置の突然変異は不要である。他の極性(T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。405位(99%I)について、TまたはDへの突然変異が好ましい。Dも天然で生じ、その場合、この位置の突然変異は不要である。他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。412位(IまたはV)について、Nへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)残基も可能である。したがって、ポリペプチドは上記の突然変異の少なくとも1つを含有する。例えば、配列番号34〜39および41〜43に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも適用した。
【0228】
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入した。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、H7A/Mallard/Netherlands/12/2000(配列番号36〜39、42、43)中の319および432位(の相当物)間で遺伝子操作した。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
【0229】
上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。三量体コイルドコイルは、この構造モチーフの特質である7残基リピート配列のaおよびd位におけるIleにより安定化されることが当分野において周知である。ここで、この知見を、Ileを419、423、426および430位(配列番号38、43)(の相当物)において導入することにより適用した。あるいは、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列EAIEKKIEAIを、417から426位(配列番号39)(の相当物)において導入する。
【0230】
これらの配列(配列番号33〜43)を、上記の蛍光結合細胞選別アッセイに供した。しかしながら、モノクローナル抗体CR8020も、CR8043も、CR9114も、CR8957も、その結合を検出することができなかった。本発明者らは、これらの配列はこれらの抗体のエピトープを提示せず、結果的に細胞膜上に存在するタンパク質がそれらの天然三次元構造にフォールドされないことを結論づけた。
【0231】
実施例11
H3HAをベースとするCR8020、CR8043およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
第1のステップにおいて、本発明のポリペプチドを表す配列を、親配列としてのH3A/Wisconsin/67/2005からのHA(配列番号89)を使用してSteelら(Steel et al 2010)による記載と類似させて構築した。HAの頭部をアミノ酸D69からアミノ酸K292のHA1の一部の欠失により除去する。
【0232】
これらの残基を3または4つのGlyにより置き換えることができる。4GlyリンカーがSteelらにより試験され、良好な発現結果が生じ、ここで採用してmini−H3(配列番号90)を作出した。全長HAタンパク質についての正常の翻訳後プロセシングステップであるポリペプチド鎖の開裂を防止するため、345位(アルギニン)における開裂部位をグルタミンに突然変異させた(R345Q)。
【0233】
次に、構築されたmini−HAおよび融合後立体構造の両方のそれぞれの残基の接近可能な表面積をBrugelにより計算した。それぞれの残基の曝露および埋込の程度を、Samanthaら(Samantha et al.,2002)に記載のとおり決定した。融合前立体構造中で曝露され、融合後立体構造中で埋め込まれる残基に焦点を当てた。これらの残基のさらなる分析は、これらの一部を、突然変異が融合前立体構造に対する影響を有さず、融合後立体構造を脱安定化させるように改変させることができることが示す。一般に、これらの残基は、疎水性鎖を有し、融合後立体構造中のコイルドコイルの形成に関与する。親水性側鎖を含めるためのこれらの残基の突然変異は、コイルドコイル特性を撹乱し(コイルドコイル中のへリックス間の接触は、一般に、疎水性である)、したがって融合後立体構造を脱安定化させる。融合前立体構造中で曝露され、融合立体構造中で埋め込まれ、突然変異後に融合後立体構造に対する脱安定化効果を有することが予測される残基は、L397、I401およびL425(配列番号89による番号付与)である。ここでは、L397KおよびI401Tを含める。
【0234】
へリックスA(残基383から400)を中央へリックスCD(残基421から470)と連結するループ(Bループ、残基401から420)は、融合後状態の採用時に立体構造を変化させ;それはヘリカルになり、伸長された三量体コイルドコイルの一部である。このリンカーの融合前ループ立体構造を安定化させ、および/またはその融合後立体構造を脱安定化させるため、コイルドコイルのコアの形成に関与する全ての残基を突然変異させることが十分なはずであることが推定された。N405位について、いくつかの突然変異、特に負電荷を担持する残基を設計する(AspおよびGlu、N405D、N405E)。それというのも、この余剰電荷は、融合前立体構造中で観察されるイオンネットワークを強化するためである。中性Alaへの突然変異(N405A)もこの試験に含める。本発明者らはまた、Phe408をThrに、His409をSerに、およびVal418をSerに(配列番号89による番号付与;F408T、H409S、V418S)に突然変異させて頭部ドメインの除去後に新たに曝露される表面の溶解度をさらに増加させた。
【0235】
HAを融合前立体構造で固定するために5つのジスルフィド架橋を設計した。これらの架橋は、互いから空間的に適切な距離において存在し、ジスルフィド架橋を形成させるために既に正確な位置においてCβ原子を有する残基間で形成させる。これらを、320および406位間(A320C、E406C;配列番号89による番号付与)、326および438位間(K326C、S438C)および415および423位間(F415C、Q423C)に導入する。最初の2つは、鎖のHA1およびHA2部分間の架橋である一方、最後のものはBループの頂部を一緒に共有結合的に連結する。K326C、S438Cジスルフィド架橋には、Asp435のAlaへ突然変異(D435A)が付随する。ジスルフィド架橋F347C/N461CおよびS385C/L463CをBommakanti et al(2010)による論文から採択し、それも試験において使用した。
【0236】
新たに曝露される疎水性残基を溶媒から除去するため、いくつかの追加の突然変異を設計する。67位(配列番号89による番号付与)におけるIleをThrに突然変異させる(I67T)。この突然変異は、側鎖のベータ分枝を維持するが、疎水性残基を表面から除去する。同じことは、Ile298のThrへの突然変異(I298T)について述べることができる。別の突然変異を天然配列中の316位のイソロイシンにおいて導入する。直観的に、この残基をThrに突然変異させてベータ分枝を維持するが疎水性を表面から除去することが提案される。しかしながら、この突然変異は、余剰N−グリコシル化部位(314位は、Asnである)の導入をもたらし、したがって、Glnへの突然変異を導入する(I316Q)。
【0237】
Gly495もGluに突然変異させた(G495E)。この突然変異は、イオン架橋を導入するために設計する。それというのも、陽性電荷が周囲に存在するためである。天然でGluをこの位置に有する一部のH3株が既に提供された。
【0238】
HAの重要な残基は345位(Arg)である。それというのも、この残基はプロテアーゼ開裂が生じてタンパク質融合を可能にする位置であるためである。このArgのGlnへの突然変異(R345Q)は、開裂が生じることを防止し、それによりタンパク質を融合前状態で固定する。
【0239】
上記の突然変異を下記のとおりクラスター化した:
Cluster1:I67T、I98T、I316Q、F408T、H409S、V418S
Cluster2:A320C、E406C
Cluster3 K326C、D435A、S438C
Cluster4 L397K、I401T
Cluster5 N405DまたはN405EまたはN405A
Cluster6 F415C、Q423C
Cluster7 G495E
Cluster8 F347C、S385C、N461C、L463C
【0240】
本発明のポリペプチドを得るため、クラスターを下記のスキームに従って欠失D69からK292およびR345Q突然変異と組み合わせた。
H3 Mini−HA cluster1(配列番号91)
H3 Mini−HA cluster1+2(配列番号92)
H3 Mini−HA cluster1+3(配列番号93)
H3 Mini−HA cluster1+4(配列番号94)
H3 Mini−HA cluster1+5N405A(配列番号95)
H3 Mini−HA cluster1+5N405D(配列番号96)
H3 Mini−HA cluster1+5N405E(配列番号97)
H3 Mini−HA cluster1+6(配列番号98)
H3 Mini−HA cluster1+7(配列番号99)
H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405E(配列番号100)
H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405A(配列番号101)H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405D(配列番号102)
H3 Mini−HA cluster1+8(配列番号103)
【0241】
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/Wisconsin/67/2005の全長HA配列、および開裂部位突然変異R343Qを含有するH1A/Brisbane/59/2007の全長HA配列を実験に含めた。
【0242】
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH3HA(Protein Sciences Corp,Meriden,CT,USA)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH3HAまたはH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR8020、CR8043およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR6261(H3HAに結合しないことが公知)およびCR8057(A/Wisconsin/67/2005からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を陽性細胞の割合として表現し、
図8に示す。
【0243】
結果は、全ての構築物が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、H3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての4%未満と比較してH3ベース配列について全ての分析細胞の80〜90%および全長H1配列について50%超が陽性であることをもたらすためである。抗H1ポリクローナルを使用すると、全ての細胞の60〜70%が陽性であり、但し100%アプローチする全長H1配列を除く。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Wisconsin/67/2005およびA/Brisbane/59/2007全長HAタンパク質の両方は、この両方の株を中和し得ることが公知のモノクローナル抗体CR9114により認識される。A/Wisconsin/67/2005全長HAは、CR8020、CR8043、およびCR8057(一部のH3株にのみ結合する、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)にさらに結合するが、CR6261(Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)には結合しない。A/Brisbane/59/2007からの全長HAについては逆のことが当てはまり;それはCR6261に結合するが、CR8020、CR8043およびCR8057には結合しない。
【0244】
配列番号91から配列番号103に記載のポリペプチドは、
図8においてバックグラウンドを上回るシグナルの欠落により証明されるとおり、いずれの場合にもCR8020、CR8043およびCR9114に結合し得ない。したがって、これらの配列は、これらの抗体のエピトープを提示しないこと、および結果的に細胞膜上に存在するタンパク質がそれらの天然三次元構造にフォールドされないことが結論づけられた。
【0245】
実施例12
H3HAをベースとするCR8020、CR8043およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
この実施例において、血清型H3に基づく本発明のさらなるポリペプチドの設計を記載する。H3インフルエンザウイルスA/Wisconsin/67/2005(配列番号89)およびA/HongKong/1/1968(配列番号121)のHAを親配列として使用した。
【0246】
第1の配列の改変は、RをQに突然変異(R345Q)させることにより345位(番号付与は、配列番号89を指すにおける開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基347〜351(IFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はH3において100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
【0247】
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するため、HA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。H3配列において、欠失は、S62〜P322(mini2;配列番号105)、S63〜P305(mini3;配列番号119)およびT64〜T317(mini4;配列番号120(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を63、64、65、66、67位(の相当物)において開始することにより欠失の残基数を減少させることにより、または欠失の長さを増加させるため、57、58、59、60もしくは61位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、317、318、319、320もしくは321位(の相当物)におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、323、324、325、326、もしくは327位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
【0248】
頭部ドメインの欠失により、残基400〜420のBループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。H3HAにおいて、このループは高度に保存される(表9参照)。コンセンサス配列は:401I(E/G)KTNEKFHQIEKEFSEVEGR421(配列番号104;番号付与は、配列番号89を指す)である。融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変しなければならず、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、401、408、411、415、418位(番号付与は、配列番号89を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
【0249】
F408およびF415位について、Sへの突然変異が好ましいが、他の極性(T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。411位(I)について、Tへの突然変異が好ましく;他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有し、したがってこれも本発明に含まれる。418位(V)について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有し、したがって、これも本発明に含まれる。401位(I)について、Rへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、T、N、Q)、荷電(H、K、D、E)またはフレキシブル(G)残基も可能である。したがって、本発明のポリペプチドは上記の突然変異の少なくとも1つを含有する。例えば、配列番号123〜127および129〜131に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
【0250】
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入する。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、H3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の326および438位(の相当物)間で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。代替的なシステイン架橋をH3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の334および393位(の相当物)間にこれらの残基のシステインへの突然変異により作出することができる。一部の場合、321位(の相当物)におけるシステインをグリシンに改変して不所望なジスルフィド架橋の形成を回避する。
【0251】
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKを、421〜441位(の相当物)において導入する。326〜438位のジスルフィド架橋の形成の妨害を回避するため、代替的なより短い配列IEAIEKKIEAIEKKIも421〜435位(の相当物)において使用した。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列RMKQIEDKIEEIESKQKKIENを421〜441位において、またはより短い配列RMKQIEDKIEEIESKを421〜435位において導入することである。
【0252】
本発明のポリペプチドは、得られるポリペプチドが細胞中での発現時に細胞表面上に提示されるようにHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有し得る。他の実施形態において、522位(の相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に産生されるように除去されている。場合により、523、524、525、526、527、528または529(の相当物)から配列を欠失させることによりいくつかの追加の残基を可溶性タンパク質中に含めることができる。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)(「foldon」配列)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加する。
【0253】
HAの重要な残基は345位(Arg)である。それというのも、この残基は、プロテアーゼ開裂が生じてタンパク質融合を可能にする位置であるためである。このArgのGlnへの突然変異(R345Q)は、開裂が生じることを防止し、それによりタンパク質を融合前状態で固定する。
【0254】
上記の突然変異を下記のとおりクラスター化した:
Cluster9 F408S、I411T、F415S
Cluster10 V418G
Cluster11 I401R
Cluster12 K326C、S438C
Cluster13 T334C、I393C
Cluster14 C321G
GCN4 421から441位におけるRMKQIEDKIEEIESKQKKIEN
または421から435位におけるRMKQIEDKIEEIESK
tri 421から441位におけるIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKK
または421から435位におけるIEAIEKKIEAIEKKI
【0255】
H3N2A/Wisconsin/67/2005からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記のクラスターをS62〜P322欠失(mini2;配列番号105)と組み合わせて本発明のポリペプチドを得た。
配列番号105:H3−mini2
配列番号106:H3−mini2−cl9+10
配列番号107:H3−mini2−cl9+11
配列番号108:H3−mini2−cl9+10+11
配列番号109:H3−mini2−cl9+10+11−tri(421〜441位におけるtri配列)
配列番号110:H3−mini2−cl9+10+11−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)
配列番号111:H3−mini2−cl9+10+11+12
配列番号112:H3−mini2−cl9+10+12
配列番号113:H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列)
配列番号114:H3−mini2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短いtri配列)
配列番号115:H3−mini2−cl9+13
配列番号116:H3−mini2−cl9+10+11+13
配列番号117:H3−mini2−cl9+10+11+13−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)
配列番号118:H3−mini2−cl9+10+11+13−tri(421〜441位におけるtri配列)
【0256】
さらに、欠失S63〜P305(mini3)およびT64〜T317(mini4)を、cluster9、10、11および14と組み合わせて本発明のポリペプチドを作出した。
配列番号119:H3−mini3−cl9+10+11+12+14
配列番号120:H3−mini4−cl9+10+11+12+14
【0257】
H3N2A/HongKong/1/1968からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記のクラスターをS62〜P322欠失と組み合わせて本発明のポリペプチドを得た。
配列番号121:H3 Full length A/HongKong/1/1968
配列番号122:HK68H3m2−cl9
配列番号123:HK68H3m2−cl9+10
配列番号124:HK68H3m2−cl9+10+11
配列番号125:HK68H3m2−cl9+10+12
配列番号126:HK68H3m2−cl9+10+11+12
配列番号127:HK68H3m2−cl9+10+11+13
配列番号128:HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短いtri配列)
配列番号129:HK68H3m2−cl9+10+11+13−tri(421〜441位におけるtri配列)
配列番号130:HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列)
配列番号131:HK68H3m2−cl9+10+11+13−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)。
【0258】
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/Wisconsin/67/2005、および/またはH3A/HongKong/1/1968の全長HA配列を実験に含めた。
【0259】
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH3HA(Protein Sciences Corp,Meriden,CT,USA)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH3HAまたはH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR8020、CR8043およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR6261(H3HAに結合しないことが公知)およびCR8057(A/Wisconsin/67/2005からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を陽性細胞の割合として表現し、A/Wisconsin/67/2005のH3HAベース配列については
図9に示し、A/HongKong/1/1968のH3HAベース配列については
図10に示す。
【0260】
結果は、全てのA/Wisconsin/67/2005ベース構築物(
図9)が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、H3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての5%未満と比較して全ての分析細胞の約80%以上が陽性であることをもたらすためである。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Wisconsin/67/2005全長HAは、このタンパク質に結合し得ることが公知のモノクローナル抗体CR8020、CR8043、CR8057(一部のH3株にのみ結合する、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)およびCR9114により認識されるが、mAbのCR6261により認識されない。対照的に、ステムドメインポリペプチドのほとんどが、CR8020によっても、CR8043によっても、CR9114によっても認識されないが、いくつかの明らかな例外がある。cluster12突然変異を含むポリペプチドは、CR8020および/またはCR8043により認識された。H3−mini2−cl9+10+11+12(配列番号111)、H3−mini2−cl9+10+12(配列番号112)、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)およびH3−mini2−cl9+10+11+12−tri(配列番号114)は、CR8020(約10〜60%の範囲の陽性細胞の割合)およびCR8043(40〜70%)(矢印により示す)による認識を示す。4つの陽性構築物のうち、このアッセイにおいてH3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)が最大応答を示す。同一の結果が、パネルBにおいて示される平均蛍光強度から得られる(
図9)。H3−mini2−cl9+10+11+12(配列番号111)、H3−mini2−cl9+10+12(配列番号112)、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)およびH3−mini2−cl9+10+11+12−tri(配列番号114)は、CR8020およびCR8043への曝露および染色後にバックグラウンドを十分上回る平均蛍光強度を示し、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)について最大応答を示す。A/Wisconsin/67/2005からのHAをベースとするポリペプチドはいずれも、CR9114を認識し得ない。
【0261】
図10は、全てのA/HongKong/1/1968ベース構築物(
図10)が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、ほとんどの構築物についてのH3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての5%未満と比較して全ての分析細胞の約40〜60%が陽性であることをもたらすためである。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。ポリクローナル血清による処理後のA/HongKong/1/1968からの全長タンパク質についての陽性細胞の割合は低い(約10%)が、CR8020、CR8043およびCR9114の結合から得られる強力なシグナルは、タンパク質が細胞表面上に存在することを示す。CR8057は、A/HongKong/1/1968ベース配列を認識せず、A/Wisconsin/67/2005からの全長タンパク質のみを認識する。4つの構築物(cluster12突然変異を含有)、すなわち、HK68 H3m2−cl9+10+12(配列番号125)、HK68H3m2−cl9+10+11+12(配列番号126)、HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短縮tri配列を含有する配列番号128)およびHK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列を含有する配列番号130)が、%陽性細胞(15%以上)およびバックグラウンドを明確に上回るMFIにより示されるとおり、CR8020およびCR8043により認識される。最大シグナル(MFI)は、HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号130)について得られ;このステムドメインポリペプチド構築物もCR9114への検出可能な結合を示す。
【0262】
まとめると、本発明者らは、上記の方法に従って、本発明のステムドメインポリペプチドをグループ2の血清型、特にH3亜型のインフルエンザAウイルスについて得ることができることを示した。
【0263】
実施例13
保存ステムドメインエピトープを含む可溶性ステムドメインポリペプチドの設計、発現および部分精製
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、得られるポリペプチドが細胞中での発現時に細胞表面上に提示されるようにHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、527、528、529または530位(配列番号1による番号付与)(の相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、細胞中での発現が、例えば、ワクチンにおいて使用することができる分泌(可溶性)ポリペプチドをもたらすように除去した。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列(「foldon」としても公知)、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカー(例えば、GSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL)を介して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って精製後に処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、ヒスチジンタグ(6または7つの連続ヒスチジン)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびヒスチジンタグは、foldon配列を存在させることなく付加する。
【0264】
本発明によれば、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのHA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、短いリンカーおよびヒスチジンタグを含む以下の配列EGRHHHHHHH(配列番号81)により置き換えた。この交換を、配列番号44:H1−mini2−cluster1+5+6−trim(配列番号144:s−H1−mini2−cluster1+5+6−trimをもたらす)、配列番号45:H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145:s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4をもたらす)、配列番号46:mini2−cluster1+5+6(A/Brisbane/59/2007)(配列番号146:s−H1−mini2−cluster1+5+6をもたらす)、配列番号47:mini2−cluster11+5+6(A/Brisbane/59/2007)(配列番号147:s−H1−mini2−cluster11+5+6をもたらす)、配列番号48:mini2−cluster1+5(A/Brisbane/59/2007)(配列番号148:s−H1−mini2−cluster1+5をもたらす)に適用した。
【0265】
同様に、比較の理由のため、交換を配列番号1:H1 Full length(A/Brisbane/59/2007)に適用し、さらにアルギニン343をグルタミンに改変(R343Q突然変異)して配列番号149:s−H1 Full length R343Qを生じさせることによりHA開裂部位を損傷させた。さらに、本発明の2つのポリペプチドを、HA1のN末端およびC末端部分間に異なるリンカーを用いて作出した:s−H1−mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号150)およびs−H1−mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号151)。
【0266】
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004neo中にクローニングした。当分野において周知のプロトコルに従って形質移入剤として\293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞に発現ベクターを形質移入させ、さらに7日間増殖させた。細胞を遠心分離により培養培地から分離し、廃棄した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清をさらなる処理のために回収した。上清をNi−NTAカラム上での固定化金属親和性クロマトグラフィーにより精製して本発明のHisタグ化ポリペプチドを樹脂に結合させ、フロースルーを回収した。カラムを3〜10カラム容量の20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、10mMのイミダゾール(「洗浄液」)、5〜15カラム容量の20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、100mMのイミダゾール(「ストリンジェント洗浄液」)により洗浄し、20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、500mMのイミダゾールにより溶出させた。個々の場合において、緩衝組成物または使用容量を、純度もしくは収量を増加させるように適合させ、または段階勾配に代えて線形勾配を使用した。フラクションを完全に回収し、ポリクローナル抗H1HA血清を検出に使用してSDS−PAGEおよびウエスタンブロット上で分析した(
図11a〜h参照)。結果は、出発物質と比較して溶出物中の本発明のポリペプチドの明確な濃縮を示す。
【0267】
本発明の精製ポリペプチドの適切なフォールディングおよび機能性を確認するため、調製物をモノクローナル抗体CR9114の結合について試験した。この目的のため、タンパク質のC末端におけるHisタグ(6または7つの連続ヒスチジン)に結合し得るモノクローナル抗体を標準的な96ウェルプレート上に、100マイクロリットルの1μg/ml抗体溶液をそれぞれのウェルにアプライし、4℃において一晩インキュベートすることによりコートした。過剰溶液の除去および洗浄後、プレートを150マイクロリットルの2%スキムミルク溶液により室温において1時間ブロッキングした。ブロッキング剤の除去および洗浄後、100マイクロリットルの本発明ポリペプチドの1μg/ml溶液、および対応する全長タンパク質(配列番号149)のエクトドメインを添加し、室温において2時間インキュベートした。本発明の過剰ポリペプチドの除去後、mAbのCR9114、mAbのCR8020(陰性対照)またはウサギ中でH1HAに対して生じたポリクローナル血清(陽性対照)を、2および20μg/ml間で変動する濃度において添加し、室温において2時間インキュベートした。結合は、当分野において周知のプロトコルを使用してHRPコンジュゲート抗ヒト抗体を介して検出した。
【0268】
結果(
図12)は、モノクローナル抗体CR9114が本発明の精製可溶性ポリペプチドおよび全長エクトドメインに結合している(
図12a)一方、モノクローナル抗体CR8020が結合していない(
図12b)ことを示す。ポリクローナル抗H1血清も本発明のポリペプチドおよび全長エクトドメインに極めて類似して結合する(
図12c)。したがって、CR9114の広域中和エピトープは、本発明のポリペプチド中で保存されること、ならびにこのエピトープの不連続および立体構造的性質を考慮すると、ステムドメインは、適切にフォールドされ、天然全長HAの立体構造と同等または極めて類似の三次元立体構造を採用することが結論づけられる。
【0269】
本発明のポリペプチドの調製物は、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット結果から決定されるとおり、サイズが不均一であった。本発明者らは、このバリエーションが個々のタンパク質分子間のタンパク質グリコシル化パターンのバリエーションに起因すると仮定した。これを確認するため、タンパク質調製物の小さいアリコートを3単位のN−グリコシダーゼF(N−結合炭水化物部分をアスパラギン残基から除去する酵素)により37℃において18時間処理し、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより分析した。結果(
図13aおよび13b)は、N−グリコシダーゼによる処理が本発明のポリペプチドの拡散バンドをアミノ酸配列から計算された予測分子量における単一バンドに集めることを示す。これは、観察されたサイズ不均一性が実際にグリコシル化パターンのバリエーションから生じる明確な証拠である。
【0270】
本発明のポリペプチドの調製物をHP−SECによりさらに特性決定した。この目的のため、約40μgの本発明のポリペプチドを、43〜63μlの容量(0.64〜0.93mg/mlのポリペプチドの濃度)で、多角度光散乱検出器に連結されたTosoh TSK−gel G2000 SWxlカラムにアプライした。結果を
図14に示す。メインピーク(滞留時間約8分間)は、本発明のポリペプチドから生じ、より大きい種から十分に分離され、このことは、さらなる精製を達成することができることを示す。多角度光散乱検出器のデータに基づくと、メインピークは、試験される本発明のポリペプチドに応じて50〜80キロダルトンの分子量を有する分子種に対応する(表9参照)。上記のポリペプチドグリコシル化のサイズ不均一性およびバリエーション、ならびに分子の流体力学的形状に対する結果の依存性に照らし、これらの数字は単なる表示として解釈すべきである。
【0271】
実施例14
モノクローナル抗体CR9114、CR6261およびFI6v3の保存ステムドメインエピトープを含む可溶性ステムドメインポリペプチドの発現および部分精製
本発明のポリペプチドの高度に純粋な調製物を得るため、HEK293F細胞に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)をコードする遺伝子を含有する発現ベクターpcDNA2004を形質移入させた。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(配列番号145のアミノ酸1〜17に対応)は、分泌最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。この目的のため、HEK293F細胞(Invitrogen)を300gにおいて5分間スピンダウンさせ、SF1000を介して300mLの予備加温Freestyle(商標)培地中で再懸濁することにより1.0
*10
6vc/mLを播種した。この培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO
2、110rpmにおいて1時間インキュベートした。1時間後、プラスミドDNAを9.9mLのOptimem培地中で300mLの培養容量中1.0μg/mLの濃度にピペッティングした。並行して、440μLの293fectin(登録商標)を9.9mLのOptimem培地中でピペッティングし、室温において5分間インキュベートした。5分後、プラスミドDNA/Optimem混合物を293fectin(登録商標)/Optimem混合物に添加し、室温において20分間インキュベートした。インキュベーション後、プラスミドDNA/293fectin(登録商標)混合物を細胞懸濁液に滴加した。形質移入培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO
2および110rpmにおいてインキュベートした。7日目、細胞を培養培地から遠心分離(3000gにおいて30分間)により分離した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清をさらなる処理のために0.2μmボトルトップフィルター上で濾過した。
【0272】
本発明のポリペプチドの存在を確認するため、上清の小アリコートを、検出のためのhisタグに対して指向されるモノクローナル抗体を使用してウエスタンブロットにより分析した(
図15a)。37〜50kDaの見かけの分子量においていくつかのバンドが観察され、それはタンパク質のアミノ酸組成に基づき計算された分子量に近く、またはそれを上回る。サイズ不均一性は、グリコシル化パターンのバリエーションにより引き起こされる。それというのも、N−グリコシダーゼFによりこのタンパク質を処理して付着N−結合グリカンをタンパク質から除去することが、予測分子量におけるバンドの集合をもたらすことをより早期実験が示しているためである。
【0273】
本発明のポリペプチド上の広域中和エピトープの存在は、広域中和抗体CR6261、CR9114およびFI6v3をプローブとして使用してELISAにより確認した。比較の理由のため、モノクローナル抗体CR8020も陰性対照として実験に含め;この抗体は、グループ2ウイルスからのHA分子(例えば、H3およびH7HA)に結合し得るが、グループ1からのHA分子(例えば、H1およびH5HA)には結合し得ない。この目的のため、タンパク質のC末端におけるHisタグ(6または7つの連続ヒスチジン)に結合し得るモノクローナル抗体を、標準的な96ウェルプレート上に、100マイクロリットルの1μg/ml抗体溶液をそれぞれのウェルにアプライし、4℃において一晩インキュベートすることによりコートした。過剰溶液の除去および洗浄後、プレートを150マイクロリットルの2%スキムミルク溶液により室温において1時間ブロッキングした。ブロッキング剤の除去および洗浄後、100マイクロリットルの上清を添加し、室温において2時間インキュベートした。本発明の過剰のポリペプチドの除去後、mAbのCR9114を添加し、5μg/ml濃度において出発する1:2希釈系列で添加し、室温において2時間インキュベートした。結合は、当分野において周知のプロトコルを使用してHRPコンジュゲート抗ヒト抗体を介して検出した。本発明のポリペプチドへのCR9114、FI6v3およびより小程度でCR6261の明確な結合が観察される一方、CR8020について応答は観察されず、このことは、観察される結合が試験モノクローナル抗体に特異的であることを示す(
図15b)。
【0274】
精製目的のため、250mlの培養上清を5mlのHisトラップカラムにアプライし、75mlの洗浄緩衝液(20mMのTRIS、500mMのNaCl、pH7.8)により洗浄し、段階的勾配のイミダゾール(洗浄緩衝液中10、50、100、200、300および500mM)により溶出させた。クロマトグラム(
図16)は、複数のピークを示し、本発明のポリペプチドは、100mMのイミダゾール(ピークA)および200mMのイミダゾール(ピークB)において溶出する。両方のピークを回収し、濃縮し、さらなる精製のためにサイズ排除カラム(Superdex 200)にアプライした。溶出プロファイルを
図17aおよび17bに示す。フラクションを回収し、SDS−PAGE上で分析した(
図17cおよびd)。ピークAおよびBの両方に由来するフラクション3は、本発明の高度に純粋なポリペプチドを含有する。最終収量は、約10μg/mlの培養上清であった。精製バッチは、エンドトキシン不含であり(5mg/kgにおいて投与;<1EU/mg)において投与;ChromogenicLAL);バイオバーデンは1CFU/50μg未満である。
【0275】
実施例15
インフルエンザBHAをベースとするCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
本発明のポリペプチドを設計する上記の手順をインフルエンザBにも適用した。この実施例において、公知の系統、すなわち、B/Florida/4/2006(B/Yamagata系統)およびB/Malaysia/2506/2004(B/Victoria系統)の両方のウイルス株から採取されるHA配列に基づく本発明のポリペプチドを記載する。当業者は、他のインフルエンザBHA配列の使用も可能であることを理解する。それというのも、この配列は、特にステム領域が十分保存されるためである。したがって、下記による他のインフルエンザBHA配列に由来するポリペプチドも本発明により包含される。
【0276】
B/Florida/4/2006のHA配列の第1の改変は、R(または限定数の場合においてK)をQに突然変異(R361Q)させることにより361位(番号付与は、配列番号132を指す)における開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基363から367(GFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はインフルエンザBからのHAにおいて100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
【0277】
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するため、HA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。B配列において、欠失は、B/Florida/4/2006(配列番号132)中のP51〜I336(m2;配列番号133)(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
【0278】
配列番号133は、欠失P51〜I332(m2;配列番号133)を含有するこのような本発明のポリペプチドを記載する。上記の欠失は、P51およびN58間ならびにE306〜I337の残基により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された(上記参照)。
【0279】
頭部ドメインの欠失により、残基416〜436のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。BHAにおいて、このループは高度に保存される(表10参照)。コンセンサス配列は:LSELEVKNLQRLSGAMDELHNである。
【0280】
融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、421、424、427、434位(番号付与は、配列番号132を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
【0281】
V421およびL427について、Tへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。424位について、Sへの突然変異が好ましい。他の極性(N、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。L434位について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有する。上記の突然変異の少なくとも1つを含有するポリペプチドを作製した。例えば、配列番号134〜136に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
【0282】
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入した。この目的のため、ジスルフィド架橋をポリペプチド中で、好ましくは、B/Florida/4/2006(配列番号134〜136)からのHA中のK340およびS454位間(の相当物)で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
【0283】
ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。GCN4に由来する三量体コイルドコイルの形成を支持する配列、RRMKQIEDKIEEILSKIを436〜452位(配列番号135)(の相当物)において、またはRMKQIEDKIEEILSKIを436〜451位(配列番号136)において導入する。
【0284】
同一の手順をB/Malaysia/2506/2004(配列番号137)からのHAについて行ってポリペプチドを提供した。B/Florida/4/2006からのHAと比較して、このHAは、178位において挿入された追加のアスパラギン残基を有し、それは2つの配列のアラインメントにおいて容易に把握することができる。結果的に、開裂部位は362位において存在し、開裂を防止するための対応する突然変異はR362Qである。この場合における頭部領域を除去するための欠失は、例えば、P51〜I337(m2;配列番号138)である。ここでも、配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
【0285】
配列番号138は、欠失P51〜I332(m2;配列番号138)を含有するこのようなポリペプチドを記載する。上記の欠失は、P51〜N58ならびにE307〜I338の残基により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された(上記参照)。
【0286】
頭部ドメインの欠失により、残基L420〜H436のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。BHAにおいて、このループは高度に保存される(表x参照)。コンセンサス配列は:LSELEVKNLQRLSGAMDELHNである。
【0287】
融合前立体構造のこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、422、425、428、435位(番号付与は、配列番号137を指す)における突然変異を試験した。
【0288】
V422およびL428位について、Tへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。425位について、Sへの突然変異が好ましい。他の極性(N、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。L435位について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有する。上記の突然変異の少なくとも1つを含有するポリペプチドを作製した。例えば、配列番号139〜141に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
【0289】
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入する。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、B/Malaysia/2506/2004(配列番号139〜141)からのHA中のK341およびS455位(の相当物)間で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
【0290】
上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。GCN4に由来する三量体コイルドコイルの形成を支持する配列、RRMKQIEDKIEEILSKIを437〜453位(配列番号135)(の相当物)において、またはRMKQIEDKIEEILSKIを437〜452位(配列番号136)において導入する。
【0291】
インフルエンザBヘマグルチニンをベースとするポリペプチド配列番号133〜136および138〜141を、CR9114のエピトープの存在について上記の蛍光結合細胞選別により試験した。しかしながら、これらの構築物についてmAbのCR9114の結合は観察されなかった。
【0292】
実施例16
第3世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、マウスをA/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、Mini3−cluster11(配列番号11)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0293】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、A/Brisbane/59/2007およびA/California/07/2009株からの全長HAの組換えエクトドメイン(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してElisaにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出する。mAbの3AH1InA134(Hytest,Turku,Finland)を使用して力価を標準曲線と比較してElisa単位/ml(EU/ml)を導く。
【0294】
上記の免疫化スケジュールにより誘導された同種全長タンパク質のエクトドメインに対するIgG応答の時間経過を
図18に示す。高い応答は、4週間後に全長タンパク質をコードするDNA(配列番号1)により免疫化されたマウスについて既に観察することができる。応答は、7週間における力価の増加から示されるとおり、ブースト注射により増加される。本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードするDNAによる免疫化は、7週目における力価から証明されるとおり、ブースター免疫化時にさらに増加される中間力価をもたらす。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいて検出可能な応答をもたらさない。
【0295】
図19は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)および異種株H1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドをコードするDNA本発明のポリペプチドをコードするmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードするDNAにより誘導された抗体は、同種および異種株に由来するヘマグルチニンのエクトドメインに同等に十分結合する。対照的に、全長タンパク質(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、同種ヘマグルチニンに対しては高い力価をもたらす(本発明のポリペプチドをコードするDNAによる免疫化について観察される力価よりも1桁を超えて高い)が、異種ヘマグルチニンのエクトドメインに対しては低い力価をもたらす。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいてヘマグルチニンエクトドメインのいずれに対しても検出可能な応答をもたらさない。
【0296】
まとめると、本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)に対して生じた抗体は、全長ヘマグルチニンを認識し得る。これらのエピトープは、ヘマグルチニンステムドメイン上に局在し、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニン間で保存されることが必要である。
【0297】
実施例17
第3世代HAステムドメインポリペプチドmini2−cluster1+5+6−GCN4の免疫原性
本発明のステムドメインポリペプチドの免疫原性をさらに評価するため、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)コードする発現ベクターによりマウスを1回免疫化し(プライム)、精製タンパク質s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)により3週間間隔において2回ブーストした。比較の理由のため、別個の群を、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびA/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)をコードする発現ベクターによる3週間間隔の免疫化において3回免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0298】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、1日目に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードする1000μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により、および21および42日目に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145;100μgの精製タンパク質)により10μgのMatrix−Mをアジュバント添加して筋肉内(i.m.)免疫化した。1つの群は、第2および第3の免疫化を皮下で受けた一方、別の群は、第2および第3の免疫化を筋肉内で受けた。さらに第3の群を、上記のとおり1日目に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードする100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)によりプライミングし、21および41日目に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145;100μgの精製タンパク質)にMontanide ISA−720(1:1v/v)をアジュバント添加するブースター免疫化を受けた。比較のため、1、21および42日目に、4匹のマウス(BALB\c)の群を、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)またはcM2をコードする100μgの構築物により筋肉内で免疫化し、100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)によりアジュバント添加した。
【0299】
49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009、H5N1A/Vietnam/1203/2004およびH3N2A/HongKong//1968株からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。
図20は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(パネルD)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドmini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAによる免疫化により誘導された抗体は、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009およびより少程度でH5N1A/Vietnam/1203/2004のHAを認識し得る。A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化により誘発された抗体は、同種タンパク質を極めて十分に認識するが、
図17BおよびCにおいてより低い力価により証明されるとおり、H1N1A/California/07/2009からの異種HA、およびH5N1A/Vietnam/1203/2004からの異種亜型HAをそれほど認識しない。mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45;プライム)をコードするDNAにより免疫化され、次いでs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)タンパク質によりブースター免疫化されたマウスの群は、同種H1N1A/Brisbane/59/2007、異種H1N1A/California/07/2009および異種亜型H5N1A/Vietnam/1203/2004に由来するHAのエクトドメイン対して高い力価を示す。
【0300】
図20Dは、H3N2A/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対する7週目におけるIgG応答を示す。インフルエンザグループ1に属する株のH1N1A/Brisbane/59/2007のHAに由来するmini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)とは異なり、H3N2A/HongKong/1/1968はインフルエンザグループ2に属し、したがって、この実験において使用される本発明のポリペプチドを設計するために使用される親配列から系統発生的に遠い。mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)またはH1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号1)をコードするDNAによる3回の免疫化は、この抗原に対するELISAにより検出可能なIgGレベルをもたらさない。対照的に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAにより免疫化し、次いで精製タンパク質s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)により2回ブースター免疫化することは、H3N2A/HongKong/1/1968からのHAに対して高い力価をもたらす。この結果は、使用される免疫化経路(すなわち、筋肉内と皮下)ともタンパク質ブースト免疫化に添加されるアジュバント(Matrix−MまたはMontanide ISA−720)とも無関係に得られる。
【0301】
まとめると、本発明のポリペプチドによる免疫化は、広範のインフルエンザ株、例としてインフルエンザグループ1からの同種、異種、および異種亜型株ならびにインフルエンザグループ2からの株からのHAを認識し得るIgGを誘発し得る。対照的に、全長HAによる免疫化は、同種株のHAに対する高い力価、異種および異種亜型株に対する低減された力価ならびにインフルエンザグループ2からの株についての検出限界未満のIgGレベルをもたらす。
【0302】
実施例18
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
上記の手順に従って設計された本発明のポリペプチドは、安定性を増加させるためにさらに改変することができる。このような改変は、単量体および/または二量体種と比べて本発明のポリペプチドの三量体形態の形成を向上させるために導入することができる。上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は三量体形態の安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体の形成により媒介される。ステムドメイン中のコイルドコイルモチーフの増強により、より安定な三量体形態を達成することができる。
【0303】
本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418〜433位(配列番号44)(配列番号1による番号付与)(の相当物)において導入する。あるいは、IEAIEKKIEAIEKKI(配列番号85)を419〜433(配列番号49)において、またはIEAIEKKIEAIEKK(配列番号86)を420〜433(配列番号50)において導入することができる。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。あるいは、MKQIEDKIEEIESK(配列番号87)を420〜433位(配列番号51)において、またはRMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号88)を417〜433位(配列番号52)において導入することができる。同様に、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより増強することができる(配列番号53)。
【0304】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、H1HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(配列番号1による番号付与)(またはそれらの相当物)からHA2のC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが産生されるように除去する。可溶性ポリペプチドは、上記のとおりさらに安定化することができる。
【0305】
リンカーバリアントの説明
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列(配列番号44〜46;配列番号49〜53および配列番号152〜157をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、全長配列(配列番号1)およびcM2をコードする発現ベクターを実験に含めた。
【0306】
形質移入剤として40μlの293−transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し;アリコート化し(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR6261、CR9114、CR9020およびCR8020)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。結果を、陽性細胞の割合および平均蛍光強度として表現し、
図21に示す。
【0307】
結果は、ポリクローナル抗H1血清からの陽性応答により証明されるとおり、全ての試験バリアントが細胞表面上で発現されることを示す。H3HA特異的抗体CR8020は、実験に含まれる構築物のいずれも認識しない一方、H1HAの頭部ドメインに結合するCR9020は、全長タンパク質のみに明確に認識する。本発明の全てのポリペプチド、および全長タンパク質はCR6261およびCR9114により認識され、このことは、対応するエピトープが本発明のポリペプチド中に野生型タンパク質と同一の立体構造で存在することを示す。へリックスCD(
図1参照)中に含まれる追加の三量体モチーフを有する本発明のポリペプチドのうち、GCN4由来配列の配列番号84、87および88を含有する配列番号45、51および52は、それぞれ、配列番号83、85および86のコンセンサス三量体配列を含有する配列番号44、49および50と同等以上の応答(MFI)をもたらす。
【0308】
本発明のポリペプチド中のアミノ酸52および321(番号付与は、配列番号1を指す)を連結するリンカーの組成のバリエーションは、モノクローナル抗体CR6261およびCR9114の認識の大きい変化をもたらさない。最大変化は、配列番号46中のGGGGをHNGKにより置き換えた場合(配列番号152をもたらす)に観察され、それは、CR6261に対するいくぶん低い応答をもたらすが、CR9114に対する応答に影響しない。リンカーの除去および配列番号1のアミノ酸53〜56(SHNG)の導入、すなわち、リンカーを配列番号46(配列番号153をもたらす)、配列番号45(配列番号154をもたらす)または配列番号50(配列番号155をもたらす)中に有さない本発明のポリペプチドの作出は、FACSアッセイにおける応答に影響を与えず、このことはリンカー配列が重要でないことを示す。
【0309】
配列番号156は、配列番号46から、突然変異I337N、I340NおよびF352Yを導入することによりに誘導する一方、配列番号157は、353位における追加の突然変異、すなわち、I353Nを含有する。これらの突然変異は、
図21に示されるFACSアッセイにおけるCR6261およびCR9114に対する応答の改善をもたらさない。
【0310】
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(配列番号1による番号付与)(またはそれらの相当物)からHA2のC末端の細胞質配列および膜貫通配列を除去し、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することにより場合により置き換える。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、HisタグHHHHHHHを付加することができる。本発明によれば、アミノ酸配列は、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、配列番号81または配列番号82により置き換えた。
【0311】
実施例19
第3世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、Mini3−cluster11(配列番号11)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0312】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009およびH5N1A/Vietnam/1203/2004株からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。
【0313】
図22は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)および異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)からの全長ヘマグルチニンに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドMini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)をコードするDNAによる免疫化により誘導された抗体は、同種H1N1A/Brisbane/59/2007および異種H1N1A/California/07/2009株に由来するヘマグルチニンのエクトドメインに同等に十分結合する(
図22AおよびB)。最大力価は、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)およびmini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)について観察される。対照的に、全長タンパク質(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、同種ヘマグルチニンに対しては高い力価をもたらす(本発明のポリペプチドをコードするDNAによる免疫化について観察される力価よりも1桁を超えて高い)が、異種ヘマグルチニンのエクトドメインに対しては低い力価をもたらす(1桁を超える)。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいてヘマグルチニンエクトドメインのいずれに対しても検出可能な応答をもたらさない。
【0314】
H5N1A/Vietnam/1203/2004からの異種亜型ヘマグルチニンのエクトドメインに対する力価(
図22C)は、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)についての明確な応答を示す。観察可能な力価はまた、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAによる免疫化後の4匹のマウスのうち2匹について、およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)について4匹のマウスのうち1匹について得られる。驚くべきことに、本発明者らは、Mini3−cluster11(配列番号11)およびMini2−cluster11+5(配列番号14)をコードするDNAによる免疫化後に検出可能な力価も見出す。最初の構築物は、同種および異種H1HAに対するいかなる検出可能な抗体力価も誘導しなかった一方、最後のものは、穏やかな応答のみを誘導した(
図22AおよびB)。この実験における全ての構築物の配列およびH5HAの比較は、長いCDへリックスの膜遠位末端において局在する推定直鎖エピトープを示す(
図1参照)。配列番号11中の175位および配列番号14中の156位におけるメチオニンのイソロイシンへの突然変異は、直鎖配列ERRIENLNKK(配列番号11中の172〜181位;配列番号14中の153〜162位)をもたらす。この配列は、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHA中にも存在するが、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からのHA中には存在せず、そこで対応する配列はそれぞれERRMENLNKKおよびEKRIENLNKKである。
【0315】
まとめると、本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)に対して生じた抗体は、全長ヘマグルチニンを認識し得る。これらの抗体のエピトープは、ヘマグルチニンステムドメイン上に局在するはずであり、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニン間で保存される。mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、およびより小程度でmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)およびmini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)をコードするDNAによる免疫化を介して誘発された抗体も、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHAのエクトドメインを認識し得る。本発明のポリペプチドは、Mini3−cluster11(配列番号11)は、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHAのエクトドメインを認識する抗体を誘導し得る。
【0316】
実施例20
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドを設計する一般的方法
上記の結果に基づき、本発明のポリペプチドをインフルエンザウイルスHA0配列から、特に血清型H1のインフルエンザHA0配列から作出する一般的方法を定義する。この方法は、以下のステップを含む:
1.HA1〜HA2の開裂部位の除去。この除去は、P1位におけるR(わずかな場合においてK)のQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1中の343位)の命名法の説明については、Sun et al,2010参照。Qへの突然変異が好ましいが、S、T、N、DまたはEも代替例である。
2.配列番号1からのアミノ酸53〜320、または他のインフルエンザウイルスからのHA中の相当位置を欠失させることによる頭部ドメインの除去。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に、またはフレキシブルリンカーを導入することにより結合させることができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を54、55、56、57もしくは58位(の相当物)において開始することにより、または欠失の長さを増加させるため、47、48、49、50、51、もしくは52位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、315、316、317、318もしくは319位(の相当物)におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、321、322、323、324、もしくは325位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
3.H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の残基402〜418(の相当物)により形成されるループ(AへリックスおよびCDへリックス間)の溶解度を増加させて改変HAの融合前立体構造の安定性を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させること。このループは、以下の表6において確認することができるとおり、H1配列中で高度に保存される。これは、例えば、前記ループ中のアミノ酸I、L、FまたはV残基を親水性相当物により置き換えることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。グリシンへの突然変異は、融合後立体構造を脱安定化させる。それというのも、このアミノ酸の高いフレキシビリティがこのHA配列の一部により形成され得る融合後へリックスの安定性の減少をもたらすためである。血清型H1のインフルエンザHAの残基402〜418のループを記載するコンセンサス配列は、(配列番号17)MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)である。本発明のポリペプチドにおいて、406、409、413位および/または416位におけるアミノ酸(または配列アラインメントから決定されたそれらの相当物)は、極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)アミノ酸である。L416のSまたはTのいずれかへの突然変異もコンセンサスN−グリコシル化部位(コンセンサス配列は、NX(S/T)である)を導入することに留意すべきである。この位置におけるアスパラギンのグリコシル化は、この領域の溶解度をさらに増加させる。これらの部位における突然変異の組合せも可能であり、例えば、配列番号10および配列番号14中のF406S、V409T、L416Sである。一部の場合、コンセンサスアミノ酸を回復させるための突然変異が好ましく、例えば、VもしくはMが404位(Tへ)、Vが408位(Aへ)もしくは410位(Gへ)またはIが414位(Nへ)における場合であり;これらの特定のアミノ酸を有する配列の発生率は極めて低い。本発明のポリペプチドを特性決定する上記の突然変異の概要を表6に挙げる。
4.ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中に、好ましくは、H1A/Brisbane/59/2007中の324および436位(の相当物)のアミノ酸間に導入すること;配列番号13〜16。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
【0317】
上記の本発明による一般的方法を使用して、本発明のポリペプチドをH1N1A/California/04/2009(配列番号159)、H1N1A/California/07/2009(配列番号56)、H1N1A/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)、およびH1N1A/Texas/36/1991(配列番号64)のHA0配列をベースとして作出した。さらに、この方法をグループ1の一部である別の亜型、すなわち、H5からのHAに、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHA(配列番号158)を使用して適用した。
【0318】
H1mini−HAA/California/07/2009(配列番号160)を、以下によりH1FLHAA/California/07/2009(配列番号56)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R344Q(番号付与は、配列番号56を指す。
2.残基K53からP321を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK322(番号付与は、配列番号56を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号56中の残基403〜419)中でセリン残基を407、417位において(F407S、L417S;番号付与は、配列番号2を指す)、トレオニンを410位において(V410T;番号付与は、配列番号56を指す)およびグリシン残基を414位において(F414G;番号付与は、配列番号2を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基リジン325およびトレオニン437をシステインに突然変異させることにより導入すること(K325C、T437C;番号付与は、配列番号56を指す)
5.追加の安定化エレメントを、419KRIENLNKKVDDGFLD434(番号付与は、配列番号56を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
【0319】
A/California/04/2009からの全長HA(配列番号159)をベースとするmini−HA配列は、同一の様式で作出することができ、H1mini−HAA/California/07/2009(配列番号160)の配列と同一である。
【0320】
同様に、H1mini−HAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号161)を、以下によりH1FLHAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R343Q(番号付与は、配列番号78を指す)
2.残基K53からP320を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK321(番号付与は、配列番号78を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号78中の残基402〜418)中でセリン残基を406、416位において(F406S、L416S;番号付与は、配列番号78を指す)トレオニンを409位において(V409T;番号付与は、配列番号78を指す)およびグリシン残基を413位において(F413G;番号付与は、配列番号78を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基アルギニン324およびトレオニン436をシステインに突然変異させることにより導入すること(R324C、T436C;番号付与は、配列番号78を指す)
5.追加の安定化エレメントを、418KRMENLNNKVDDGFLD433(番号付与は、配列番号78を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
【0321】
H1mini−HAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号161)とH1FLHAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)との間の追加の差は、397位であり、全長タンパク質(配列番号78)中でセリンであるが、配列番号161の本発明のポリペプチド中でトレオニンである(S397T突然変異)。これは、A/Puerto Rico/8/1934配列中の天然変異であり、したがって、この突然変異を含有する配列も本発明に含まれる。
【0322】
H1mini−HAA/Texas/36/1991(配列番号162)を、以下によりH1FLHAA/Texas/36/1991(配列番号64)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R344Q(番号付与は、配列番号64を指す)
2.残基S53からP321を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK322(番号付与は、配列番号64を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号64中の残基403〜419)中でセリン残基を407、417位において(F407S、L417S;番号付与は、配列番号64を指す)、トレオニンを410位において(V410T;番号付与は、配列番号64を指す)およびグリシン残基を414位において(F414G;番号付与は、配列番号64を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基アルギニン325およびトレオニン437をシステインに突然変異させることにより導入すること(R325C、T437C;番号付与は、配列番号64を指す)
5.追加の安定化エレメントを、419RRMENLNKKVDDGFLD434(番号付与は、配列番号64を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
【0323】
H5mini−HAA/Vietnam/1203/2004(配列番号163)を、以下によりH5FLHAA/Vietnam/1203/2004(配列番号158)から作出する。
1.開裂部位の除去。H5FLHAA/Vietnam/1203/2004(配列番号158)は、多塩基開裂部位(341RRRKKR346)を含有するため、単一部位突然変異は、タンパク質開裂を防止するため十分でない。代わりに341RRRKK345を欠失させ、R346Q突然変異を導入する。
2.残基K52からP319を欠失させ、GGGGリンカーをK51およびK320(番号付与は、配列番号158を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号158中の残基405〜421)中でセリン残基を409、419位において(F409S、L419S;番号付与は、配列番号158を指す)、トレオニンを412位において(V412T;番号付与は、配列番号158を指す)およびグリシン残基を416位において(F416G;番号付与は、配列番号158を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基リジン323およびトレオニン439をシステインに突然変異させることにより導入すること(K323C、T439C;番号付与は、配列番号158を指す)
5.追加の安定化エレメントを、421RRIENLNKKMEDGFLDV437(番号付与は、配列番号158を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQIにより置き換えることにより導入した。
【0324】
当業者に一般に公知の方法を使用して配列番号56、160、78、161、162、158および163のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/HongKong/1/1968の全長HA配列(配列番号121)、および追加の開裂部位突然変異R343Qを有するH1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)の全長HA配列を実験に含めた。
【0325】
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10
6個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し;アリコート化し(0.3ml、約3
*10
5個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HA(Sino Biological Inc.Beijing,China)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、細胞を細胞表面上の本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質中のステムドメインに結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR6261、CR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR8020(H1およびH5HAに結合しないことが公知)およびCR9020(H1A/Brisbane/59/2007からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を、陽性細胞の割合および平均蛍光強度(MFI)として表現し、
図23に示す。
【0326】
ポリクローナル抗H1血清による形質移入細胞の処理は、全長HA(黒色のバー)について20〜80%の陽性細胞およびmini−HAについて40〜50%の陽性細胞をもたらす。陰性対照FLH3A/HongKong/1/1968およびcM2は、極めて少数の陽性細胞を示すにすぎない。このことは、全てのH1全長HAタンパク質について明確に検出可能なシグナルを示す平均蛍光強度(下パネル)により反映される。全長H5HAについてのシグナルは低いままであり;しかしながら、このことは、ポリクローナルH1血清による認識の低減との組合せでのより少数の形質移入細胞により説明することができる。陰性対照FLA/HongKong/1/1968およびcM2は、バックグラウンドレベルにおける強度を示す。
【0327】
強力なグループ1ステムバインダーであることが公知のCR6261およびCR9114は両方とも、多数の陽性細胞(約50〜約95%)および高いMFIにより示されるとおり、全てのグループ1全長HAおよびmini−HAタンパク質を認識する。このことは、これらの抗体の中和エピトープがmini−HAタンパク質中に存在する強力な証拠であり、このことは、全長HA中のHAステムドメインの天然構造に強く共通する三次元構造を示す。予測されるとおり、陰性対照CR8020(グループ2HAに特異的)は、H1およびH5全長HAにもH1およびH5mini−HAにも結合せず、このことは、mini−HAタンパク質へのCR6261/CR9114中和抗体の観察される結合がa特異的タンパク質−タンパク質相互作用から生じないことを示す。A/HongKong/1/1968からの全長H3HAとCR9114またはCR8020との間の結合は、陽性細胞の割合およびMFIの両方から明確に観察され、より早期の観察と一致し、これらのモノクローナル抗体の機能性を証明する。同様に、陰性対照抗体CR9020(A/Brisbane/59/2007についてのHA頭部バインダー)は、A/Brisbane/59/2007からのHAを除きmini−HAも全長HAタンパク質も認識せず、このことは、CR6261およびCR9114間で観察される結合の特異性をさらに裏付ける。
【0328】
まとめると、HA頭部ドメインの不存在下で中和CR6261およびCR9114抗体により認識されるエピトープを含有することが示された本発明の4つの新規HA由来ポリペプチドを作出した。
【0329】
実施例21
本発明のポリペプチドによるマウスにおける致死インフルエンザチャレンジに対する保護
本発明のポリペプチドがマウスを他の場合に致死性のインフルエンザウイルスへの曝露時の死亡から保護する免疫応答を誘導し得るか否かを決定するため、インフルエンザチャレンジ実験を実施した。配列番号78、161、45および6、ならびに開裂部位を除去するための追加のR343Q突然変異を含有するA/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号1)をコードする発現ベクターによりマウスを筋肉内で免疫化した。cM2をコードする発現ベクターを陰性対照として含めた。免疫化は、50μgの発現構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)を使用して以下の試験プロトコルに従って実施した。
【0330】
試験プロトコル
1日目 採血。
0日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
21日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
28日目 採血。
42日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
47日目 採血。
48日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の計測。
49日目 致死用量のインフルエンザウイルス感染によるチャレンジ(経鼻)。
49日目 残留接種材料をウイルスの逆力価測定(back titration)に利用する。
49〜70日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の毎日の計測。
臨床スコア≧3を有する動物を1日2回モニタリングする。
臨床スコア≧4または体温’’32℃を有する動物を、どの動物が最初に該当しようとも、試験から直ちに除去する。
70日目 全てのマウスの安楽死。
群1〜6:PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1)によるチャレンジ
群1:配列番号78
群2:配列番号161
群3:配列番号1R343Q
群4:配列番号45
群5:配列番号6
群6:空のベクター
1群当たり10匹のマウス。合計60匹のマウス。BALB/c。
【0331】
材料および方法:
ウイルス株および源:
インフルエンザウイルス株PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1)は、Virapur(San Diego)から供給された。原液1×10e8 pfu/ml バッチ#E2004B。
貯蔵条件:−75℃±10℃。フリーザー:−86℃UCTフリーザー。Thermo Form.Fisher Scientific。
【0332】
動物:
マウス、BALB/c(特定病原体不在;SPF)、雌、試験0日目に6〜8週齢約17〜19グラム。Charles River Laboratoriesから供給され、「耳識別」により識別する。全ての動物を馴化させ、実験の開始前11日間維持した。
【0333】
DNA投与
接種材料再構成の方法
上記列記の適切なDNA配合物を調製し、アリコート化し、−20℃において貯蔵した。1つの構築物当たり1つのアリコートを注射直前に室温に解凍し、注射器中に抜き取り、注射した。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
【0334】
用量レベルおよび投与方法
マウスを、体重1kg当たり9.75mgのXylasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:763.02)および48.75mgのKetasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:668.51)を用いて腹腔内注射により麻酔した。G29針を有する0.5mlの注射器を使用して50μlのDNA溶液をそれぞれの後足の大腿四頭筋中に筋肉内(i.m.)注射し、1匹のマウス当たり100μlの注射合計容量を生じさせた。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
【0335】
ウイルス投与:
接種材料再構成の方法
ウイルス材料を−75℃±10℃において貯蔵し、投与前に解凍した。解凍したら、材料を低温PBS(4℃)中で、A/PR/8/34チャレンジについて5LD50/50μlに対応させて希釈した。希釈ウイルスをマウスへの投与まで氷上で保持した。
【0336】
用量レベルおよび投与方法
動物を、1kgの体重当たり9.75mgのXylasolおよび48.75mgのKetasolを用いて腹腔内注射により麻酔し、それぞれの動物は50μlのウイルス溶液を鼻腔内により受けた。未使用材料は逆力価測定のために実験室に戻した。
【0337】
採血および血清調製
上記の試験プロトコルに規定された日数において、血液試料を採取した(中間採血:眼窩後カニューレ挿入を介する100〜150μl、心臓穿刺を介する最終採血:約300〜500μl)。血清を、この血液から14000gにおける5分間の遠心分離により単離し、輸送までドライアイス上で−20℃において貯蔵した。
【0338】
臨床スコアリング
ウイルスチャレンジ後の臨床徴候を、スコアリング系(健常マウスについて1点;不快感の徴候、例として、わずかな立毛、歩容のわずかな変化および歩行の増加を示すマウスについて2点;強い立毛、腹部収縮、歩容変化、不活動期間、呼吸速度の増加および時々の水泡音(弾発音/有響ノイズ)の徴候を示すマウスについて3点;前述の群の特徴の増大を有するが、活動をほとんど示さず、瀕死になるマウスについて4点;死亡マウスについて5点)によりスコアリングした。動物を、それらが3のスコアを受ける限り1日2回調査した。スコアリングは単一調査者により実施し、部分的に2つのスコアにより表わされる症状を有するマウスはスコア+/−0.5であった。
【0339】
秤量
全ての動物を、48日目から開始して毎日秤量した(確認番号2216)。動物を、死亡の場合において試験終了前、すなわち、試験からの除去時においても秤量した。体重をグラム(g)で記録した。
【0340】
ウイルス逆力価測定
投与されるウイルスの用量は、動物の接種が完了した後に残留する接種材料からの8つのレプリケート試料を力価測定することにより決定した。ウイルス逆力価測定のため、「Current Protocols in Immunology,Animal Models of Infectious Disease 19.11.7」に概略されたプロトコルに従ってTCID50計測を利用した。
【0341】
結果:
試験を、技術的困難なしで、定義された試験プロトコルと一致させて実施した。インフルエンザウイルス株PR8(A/Puerto Rico8/34,H1N1)の接種材料の逆力価測定は、以下のTCID50:PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1):3.2×104TCID50/mlをもたらした。
【0342】
図24Aは、この実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。本発明のポリペプチド配列番号45、6および161をコードするDNAによる免疫化は、致死用量のインフルエンザにより感染されたマウスの50、40および40%の生存率をそれぞれもたらし、このことは、本発明のポリペプチドによる免疫化が保護免疫応答を実際に誘導し得ることを示す。対照的に、空のベクター対照により免疫化されたマウスは全て、ウイルスチャレンジから8日後に感染により死亡する。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号78)をコードするDNAによる免疫化は、致死チャレンジから全ての動物を完全に保護する(すなわち、100%の生存率)一方、追加の開裂部位突然変異(R343Q;番号付与は、配列番号1を指す)を含有する異種株A/Brisbane/59/2007に由来する全長HA(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、感染動物の90%の生存率をもたらす。
【0343】
生存曲線から得られる結果は、
図24Bおよび24Cにおいて示されるそれぞれの群についての平均体重変化および臨床スコア中央値においても反映される。本発明のポリペプチド配列番号45、6および161により免疫化された動物は、最大25〜30%の体重損失を示すが、感染後9日後に生存する動物は体重増加を示す。配列番号45により免疫化された動物については、4から3への臨床スコアの降下も観察される。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号78)をコードするDNAにより免疫化された動物は体重損失を示さない一方、追加の開裂部位突然変異(R343Q;番号付与は、配列番号1を指す)を含有する異種株A/Brisbane/59/2007に由来する全長HA(配列番号1)をコードするDNAにより免疫化された動物は体重損失および臨床症状を経験するが、生存動物は完全にカバーする。最大体重損失および臨床症状は、空のベクターにより免疫化された対照群について観察され、それらの動物の生存の欠落と一致する。
【0344】
まとめると、本発明のポリペプチド配列番号6、45および78は、マウスにおけるH1N1A/Puerto Rico/8/1934による致死チャレンジに対する保護応答を誘導し得る。本発明のポリペプチド配列番号6および45はチャレンジ株と異種のHA分子に由来する一方、配列番号78は、同種インフルエンザ株に由来することに留意される。したがって、本発明のポリペプチドは、同種および異種のインフルエンザ感染の両方に対する保護を誘導し得る。
【0345】
実施例22
代表的なH1N1HA配列のパネルの選択およびそれらの配列をベースとする本発明のポリペプチドの設計
実施例20に記載の設計方法の広い適用可能性を示すため、この方法を、H1N1ウイルスにおいて見出される天然配列変異の大部分をカバーする選択HA0配列のパネルに適用した。この実施例における公知のヒトH1N1HA配列のプールからの代表的なHA配列のパネルの選択は、最大の代表性を有する最少数の株を選択する目的を有する。この目的を達成するため、インフルエンザウイルス配列データベース中に存在するヒトH1N1インフルエンザウイルスのHA配列間の全ての差を定量し、これらの差の構造を調査し、均一な下位群を同定した。このような群のそれぞれから、パネルに寄与する最も代表的な配列を選択した。
【0346】
この手順の初期ステップは、考慮される配列データベース中のそれぞれのペアまたは配列間の差の定量である。逆PAM250(rPAM250)行列(Xu,2004)を使用してそれぞれのアミノ酸位置における差を定量する。次いで、ユークリッド加算を使用してそのペアについての合計差を定量する。全てのペアワイズ差を使用して差の対称n×n行列(nは、考慮されるウイルス株の数と等しい)を形成する。
【0347】
主座標分析(PCA)を使用して差の行列を構造化する(Higgins,1992)。PCAは、次元縮小に基づく。入力行列は、n次元空間(nは、考慮される株の数と等しい)中の分布とみなす。次いで、変異性を分析し、ほとんど(または全て)の変異性をカバーするために最少の次元が要求されるように構造化する。結果は、m次元座標系(mは、ほとんどまたは全ての変異性をカバーするための次元数である)であり、最大変異は第1の軸上であり、次いで減少する。全ての考慮される配列をその座標系内に配置する。二または三次元のみが必要とされる場合、結果は、完全に2Dまたは3Dグラフでそれぞれプロットすることができ、そこで株間の差を可視化することができる。より多くの次元が必要とされる場合、さらに3Dプロットを第1の3つの軸から構築することができるが、そのグラフは全ての変異性をカバーするものではない。それというのも、変異の一部は第四およびより高次元中に存在するためである。
【0348】
次いで、階層およびk平均クラスタリングの両方を使用してm次元空間中の配列をクラスタリングする。群内の平均連結を使用して類似の内部変異性を有する群を得、単一株クラスターの大部分を回避する。クラスタリングは、1(1つのクラスター中の全ての株)において開始し、n(それ自体のクラスターを形成するそれぞれの株)まで全てのレベルにおいて行う。それぞれのクラスターから、最も中心的な株を最も代表的なものとして選択する。次いで、最も中心的な株の組は、そのレベルクラスタリングについての代表株のパネルを形成する。クラスタリングのそれぞれのレベルについて、カバレッジ(または説明される変異の割合)を、それぞれの株の座標系の中心までの平方距離の合計と比較してそれぞれの株のその中心株までの平方距離の合計をコンピュータ処理することにより推定する。次いで、達成すべきカバレッジの最少レベルを、代表パネルの最少要求サイズになるように設定する。
【0349】
さらに、XuのrPAM250行列に、(挿入または欠失に起因して)2つの配列の一方がある位置上にギャップを有した場合、小さい値を差について割り当てた。さらに、重み因子を手順に含めて年間を通した分離株の数の大きい差を説明した。この変異は、部分的には真の発生変異であり、部分的にはサーベイランス/認識の異なるレベルにより駆動されるとみなした。したがって、重み因子を、特定の年の観察の数の平方根により割ったものにおいて設定した。この重み因子は、クラスター分析および中心点の選択の間に、およびカバーされる変異のレベルの推定においてm次元空間を構築する場合に考慮した。
【0350】
この実施例においては、本発明のポリペプチドをコードするHAの一部からなる構築配列を使用する。構築配列の2つの異なる組を作出した。第1の組において、シグナル配列(例えば、アミノ酸1〜18)、アミノ酸53〜320(HA頭部ドメイン)、膜貫通配列(アミノ酸530からC末端アミノ酸)(番号付与は、配列番号1を指す)または他の配列中のこれらの位置の相当物を除外して天然配列を考慮した。第2の組において、406、409、416、324、436、413位(またはそれらの相当位置)におけるアミノ酸も考慮しなかった。それというのも、これらは実施例20に記載の一般的方法に従って改変されるためである。さらに、実施例9に記載の本発明のポリペプチド中のGCN4ベース安定化配列の付加を反映する419〜433位(の相当物)も第2の組において考慮しなかった。
【0351】
上記の方法を使用して、配列変異の75%をカバーする7つのHA配列を構築配列組1から選択し、配列変異の74%をカバーする8つのHA配列を構築配列組2から選択した。株を表10に列記する。選択配列の3つが両方の組において現れるため、13のユニークHA配列が残留する。これらの配列を使用して実施例20に記載の方法に従って本発明のポリペプチドを設計した。さらに、安定化GCN4配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、実施例9に記載のとおり、419〜433位(番号付与は、配列番号1を指す)の相当物において導入する。H1N1A/Memphis/20/1978およびH1N1A/USSR/92/1977のHA配列に基づき設計された本発明のポリペプチドは同一であり、A/Wisconsin/629−D01415/2009およびH1N1A/Sydney/DD3−55/2010のHA配列に基づき設計された本発明のポリペプチドと同様である。したがって、合計10の本発明のユニークポリペプチドを設計し、これらの配列のアラインメントを
図25に示す。
【0352】
本発明のポリペプチド配列番号164〜配列番号173、ならびにA/Brisbane/59/2007のHA配列をベースとする本発明のポリペプチド配列番号45および追加の開裂部位R343Qを有する対応する全長HA配列番号1をコードするDNAを発現ベクターpcDNA2004中で含有する発現ベクターをHEK293F細胞の形質移入に使用し、細胞を上記のとおりFACSにより分析した。ヒトモノクローナル抗体CR6261、CR9114およびCR8020に加え、さらにインフルエンザAH1およびH2株を中和することが公知(Okuna et al.,1993)のマウスモノクローナル抗体C179を実験に含めた。結果を
図26に示す。
【0353】
本発明の全てのポリペプチドおよびA/Brisbane/59/2007の全長配列は、細胞表面上で発現され、広域中和抗体CR6261、CR9114およびC179により認識されるが、CR8020により認識されない。最後のものは、インフルエンザAグループ2からのHAにのみ結合することが公知である。抗体CR6261、CR9114およびC179の結合は、広域中和エピトープが本発明のポリペプチド中で十分保存されることを示す。これらの配列中でカバーされる配列変異を考慮すると、このことは、広域中和エピトープを含有する本発明のポリペプチドを生成する本発明者らの設計方法の一般的な適用可能性の明確な証拠である。
【0354】
実施例23
本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)の特性決定
本発明の精製ポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)を、実施例13に記載のとおりに得た。CR6261およびCR9114の立体構造的エピトープの存在を確認するため、これらの抗体と精製タンパク質との結合をバイオレイヤー干渉法(Octet Red
384,Forte Bio)により試験した。この目的のため、ビオチン化CR6261、CR9114およびCR8020をストレプトアビジンコートセンサ上で固定化し、センサを最初に本発明の精製ポリペプチド(250nM)の溶液に曝露させて会合速度を計測し、次いで洗浄溶液に曝露させて解離速度を計測した。比較の理由のため、実験を全長タンパク質(配列番号149)を用いてその三量体および単量体形態の両方で繰り返した。結果を
図27に示す。
【0355】
固定化されたCR6261は、溶液中のこれらのタンパク質への曝露後の明確な応答により証明されるとおり、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのエクトドメインの単量体および三量体形態の両方を認識する(
図27A)。三量体タンパク質について観察される応答は、同一配列を有する単量体について観察されるものよりも大きく(約1.3nmと0.9)、三量体と比較して小さいサイズの単量体により(少なくとも部分的に)引き起こされる効果である。s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)へのCR6261の結合は、約0.25nmの最大応答をもたらす。洗浄溶液への曝露時、複合体の解離が3つ全ての分析物について観察され、本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)について観察される放出最速であり、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号149)のエクトドメインの三量体形態について最も遅い。
【0356】
CR6261と同様に、固定化CR9114も、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのエクトドメインの三量体および単量体形態の両方、ならびに本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)を認識する。応答は、3つ全ての分析物についてCR6261(三量体、単量体全長HA(配列番号149)およびステムドメインポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)について、それぞれ1.5、1.4および0.8nm)と比較して強力であり、3つ全ての場合において洗浄緩衝液への複合体の曝露時に抗原の放出は最小または検出不可能である。CR8020について、応答は、分析物のいずれについても観察されず、この抗体のインフルエンザグループ2ステムドメイン特異性と一致した。
【0357】
精製ステムドメインポリペプチドへのCR6261およびCR9114の結合をさらに特性決定するため、力価測定を実施した。この目的のため、固定化CR6261含有センサを、それぞれ500、250、125、63、31、16および8nMの濃度におけるs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)溶液に曝露させ、14000s後の最終応答を記録した。応答をステムドメインポリペプチド濃度の関数としてプロットし、定常状態1:1結合モデルへのフィットを実施し、CR6261/ステムドメインポリペプチド複合体について約190nMの解離定数K
dを生じさせた、
図28A。同様に、固定化CR9114により改変されたセンサを、それぞれ80、40、20、10、5、2.5および1.3nMの濃度におけるs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)に曝露させ、10800s後の最終応答を記録した。ステムドメインポリペプチド濃度の関数としての最終応答のフィッティングにより、CR9114/ステムドメインポリペプチド複合体について5.4nMのK
d値を生じさせた(
図28B)。
【0358】
まとめると、本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)は、広域中和モノクローナル抗体CR6261およびCR9114に結合し得、このことは、このステムドメインポリペプチド中の対応する中和エピトープの存在を裏付ける。
【0359】
実施例24
本発明のポリペプチドによるマウスにおける致死インフルエンザチャレンジに対する保護
本発明のポリペプチドがマウスを他の場合に致死性のインフルエンザウイルスへの曝露時に死亡から保護する免疫応答を誘導し得るか否かを決定するため、インフルエンザチャレンジ実験を実施した。H3全長A/HongKong/1/1968(配列番号121)、HK68H3m2−cl9+10+11(配列番号124)およびHK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4配列番号130をコードする発現ベクターによりマウスを筋肉内で免疫化した。免疫化を、50μgの発現構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)を以下の試験プロトコルに従って使用して実施した。
【0360】
試験プロトコル
1日目 採血。
0日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
21日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
28日目 採血。
42日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
47日目 採血。
48日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の計測。
49日目 致死用量のインフルエンザウイルス感染によるチャレンジ(経鼻)。
49日目 残留接種材料をウイルスの逆力価測定に利用する。
49〜70日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の毎日の計測。
臨床スコア≧3を有する動物を1日2回モニタリングする。
臨床スコア≧4または体温’’32℃を有する動物を、どの動物が最初に該当しようとも、試験から直ちに除去する。
70日目 全てのマウスの安楽死。
群7〜10:HK68(A/HongKong/1/68、H3N2)によるチャレンジ
群7:配列番号121
群8:配列番号130
群9:配列番号124
群10:空のベクター
1群当たり10匹のマウス。合計40匹のマウス。BALB/c。
【0361】
材料および方法:
ウイルス株および源
インフルエンザウイルス株HK68(A/HongKong/1/68)を、Prof J.Katz(Center for Disease Control and Prevention,Atlanta,GA,USA)により提供し、次いでVirapur(San Diego)により増殖させた。ウイルスをマウス肺中で複数回継代してマウスにおける病原性を向上させた。このウイルスについての好適な参照は、Frace et al.,Vaccine 1999;17:2237である。原液3×10e8 pfu/ml。バッチ#F1109A。
貯蔵条件:−75℃±10℃。フリーザー:−86℃UCTフリーザー。Thermo Form.Fisher Scientific。
【0362】
動物:
マウス、BALB/c(特定病原体不在;SPF)、雌、試験0日目に6〜8週齢約17〜19グラム。Charles River Laboratoriesから供給され、「耳識別」により識別する。全ての動物を馴化させ、実験の開始前11日間維持した。
【0363】
DNA投与
接種材料再構成の方法
上記列記の適切なDNA配合物を調製し、アリコート化し、−20℃において貯蔵した。1つの構築物当たり1つのアリコートを注射直前に室温に解凍し、注射器中に抜き取り、注射した。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
【0364】
用量レベルおよび投与方法
マウスを、体重1kg当たり9.75mgのXylasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:763.02)および48.75mgのKetasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:668.51)を用いて腹腔内注射により麻酔した。G29針を有する0.5mlの注射器を使用して50μlのDNA溶液をそれぞれの後足の大腿四頭筋中に筋肉内(i.m.)注射し、1匹のマウス当たり100μlの注射合計容量を生じさせた。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
【0365】
ウイルス投与:
接種材料再構成の方法
ウイルス材料を−75℃±10℃において貯蔵し、投与前に解凍した。解凍したら、材料を低温PBS(4℃)中で、A/HK/1/68チャレンジについて10LD50/50μlに対応させて希釈した。希釈ウイルスをマウスへの投与まで氷上で保持した。
【0366】
用量レベルおよび投与方法
動物を、1kgの体重当たり9.75mgのXylasolおよび48.75mgのKetasolを用いて腹腔内注射により麻酔し、それぞれの動物は50μlのウイルス溶液を鼻腔内により受けた。未使用材料は逆力価測定のために実験室に戻した。
【0367】
採血および血清調製
上記の試験プロトコルに規定された日数において、血液試料を採取した(中間採血:眼窩後カニューレ挿入を介する100〜150μl、心臓穿刺を介する最終採血:約300〜500μl)。血清を、この血液から14000gにおける5分間の遠心分離により単離し、輸送までドライアイス上で−20℃において貯蔵した。
【0368】
臨床スコアリング
ウイルスチャレンジ後の臨床徴候を、スコアリング系(健常マウスについて1点;不快感の徴候、例として、わずかな立毛、歩容のわずかな変化および歩行の増加を示すマウスについて2点;強い立毛、腹部収縮、歩容変化、不活動期間、呼吸速度の増加および時々の水泡音(弾発音/有響ノイズ)の徴候を示すマウスについて3点;前述の群の特徴の増大を有するが、活動をほとんど示さず、瀕死になるマウスについて4点;死亡マウスについて5点)によりスコアリングした。動物を、それらが3のスコアを受ける限り1日2回調査した。スコアリングは単一調査者により実施し、部分的に2つのスコアにより表わされる症状を有するマウスはスコア+/−0.5であった。
【0369】
秤量
全ての動物を、48日目から開始して毎日秤量した(確認番号2216)。動物を、死亡の場合において試験終了前、すなわち、試験からの除去時においても秤量した。体重をグラム(g)で記録した。
【0370】
ウイルス逆力価測定
投与されるウイルスの用量は、動物の接種が完了した後に残留する接種材料からの8つのレプリケート試料を力価測定することにより決定した。ウイルス逆力価測定のため、「Current Protocols in Immunology,Animal Models of Infectious Disease 19.11.7」に概略されたプロトコルに従ってTCID50計測を利用した。
【0371】
結果:
試験を、技術的困難なしで、定義された試験プロトコルと一致させて実施した。インフルエンザウイルス株HK68(A/HongKong/1/68、H3N2)の接種材料の逆力価測定は、以下のTCID50:HK68(A/HongKong/1/68):1×10
3TCID50/mlをもたらした。
【0372】
図29は、ELISAにより測定された49日目におけるA/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対するIgG応答を示す。本発明のポリペプチドを配列番号124および配列番号130をコードするDNAによる免疫化は、H3HAHK68エクトドメインに対する明確に検出可能な応答を誘導する一方、空のベクター陰性対照について応答は検出されない。予測されるとおり、最大応答は、H3全長A/HongKong/1/1968(配列番号121)による免疫化について観察される。
【0373】
図30Aは、この実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。本発明のポリペプチド配列番号124および130をコードするDNAによる免疫化は、致死用量のインフルエンザにより感染されたマウスの40および20%の生存率をそれぞれもたらし、このことは、本発明のポリペプチドによる免疫化が保護免疫応答を実際に誘導し得ることを示す。対照的に、空のベクター対照により免疫化されたマウスは全て、ウイルスチャレンジから10日後に感染により全て死亡する。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号121)をコードするDNAによる免疫化は、致死チャレンジから全ての動物を完全に保護する(すなわち、100%の生存率)。
【0374】
生存曲線から得られる結果は、
図30Bおよび30Cにおいて示されるそれぞれの群についての平均体重変化および臨床スコア中央値においても反映される。本発明のポリペプチド配列番号124および130をコードするDNAにより免疫化された動物は、最大20%の体重損失を示すが、感染後9日後に生存する動物は体重増加を示す。全長HA(配列番号121)をコードするDNAにより免疫化されたマウスは、体重損失を示さない。最大体重損失および臨床症状は、空のベクターにより免疫化された対照群について観察され、それらの動物の生存の欠落と一致する。
【0375】
まとめると、本発明のポリペプチド配列番号124および130は、免疫原性であり、マウスにおけるH3N2A/HongKong/1/1968による致死チャレンジに対する保護応答を誘導し得る。
【0376】
実施例25
H3HAをベースとするステムドメインポリペプチドの設計および特性決定
実施例12に記載のステムドメインポリペプチドをさらに改善するため、構築物の追加の組を設計した。53および334位(T53C、G334C;cluster16)ならびに39および51位(G39C−E51C;cluster17)(番号付与は、配列番号121を指す)における安定化ジスルフィド架橋の形成を可能とするシステイン突然変異の2つの追加の組を設計した。さらに420〜421位の間、すなわち、長いCDへリックス(
図1参照)のN末端側において挿入すべき2つの配列を設計した。挿入配列を、それらが三量体分子中の個々の単量体間の単量体間ジスルフィド架橋の形成を容易にするように設計した。2つの異なる配列、すなわち、NATGGCCGG(Cluster18)およびGSGKCCGG(Cluster19)を設計した。cluster18の配列は、ステムドメインポリペプチド中にグリコシル化部位(すなわち、NAT)を導入する配列も含む。一部の場合、グリコシル化部位は、417〜419位においてもNATへの突然変異により導入する。A/HongKong/1/1968からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記の改変をS62〜P322欠失と組み合わせて以下のステムドメインポリペプチドを得た:
配列番号174:H3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T−CG7−1
配列番号175:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+18+GCN4T
配列番号176:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+16+CG7−GCN4T
配列番号177:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+19+GCN4T
配列番号178:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+17+CG7−GCN4T
配列番号179:H3HK68mini2a−linker2+cl9_+10+12+GCN4T
【0377】
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。細胞表面上での発現およびモノクローナル抗体の結合を、上記のとおり蛍光結合細胞選別により分析した。比較の理由のため、さらに、開裂部位中のR345Q突然変異をさらに含有するH3N2A/HongKong/1/1968(配列番号121)の全長HA、および配列番号130(HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4)ならびに陰性対照cM2も実験に含めた。
【0378】
図31は、この実験の結果を示す。ポリクローナル抗H3血清について観察される応答(MFI、パネルA;陽性細胞の割合、パネルB)により証明されるとおり、全ての構築物が細胞表面上で発現される。CR8043およびCR8020の結合は、配列番号174、175、176、177、178、179、121および130について観察され、このことは、cluster16の突然変異がそれらの抗体の立体構造的エピトープの安定化に寄与しないことを示す。mAbのCR9114について、バックグラウンドを上回る結合は、配列番号174:H3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T−CG7−1およびより小程度で配列番号177:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+17+CG7−GCN4Tについてのみ観察することができる。両方の配列は、Bループ中の追加のグリコシル化部位を含有し、このことは、CR9114の立体構造的中和エピトープに対するこの改変の安定化効果を示す。
【0379】
まとめると、本発明者らは、上記の方法に従って、本発明のステムドメインポリペプチドをグループ2の血清型、特にH3亜型について得ることができることを示した。これらのステムドメインポリペプチドのさらなる安定化は、Bループ中のグリコシル化部位を導入することにより達成することができる。これらの配列も本発明により包含される。
【0380】
実施例26
H3HAをベースとするHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)からの全長H3、配列番号105:H3−mini2、配列番号108:H3−mini2−cl9+10+11、配列番号112:H3−mini2−cl9+10+12、配列番号111:H3−mini2−cl9+10+11+12、配列番号114:H3−mini2−cl9+10+11+12−tri、配列番号113:H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4、配列番号119:H3−mini3−cl9+10+11+12+14、配列番号120:H3−mini4−cl9+10+11+12+14をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0381】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。陰性対照プラスミドcM2を、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃により投与した。A/Wisconsin/67/2005およびA/HongKong/1/1968からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用して血清をELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。49日後のA/Wisconsin/67/2005、A/HongKong/1/1968およびA/Perth/16/2009からのHAを使用するELISAの結果を
図32A、BおよびCにそれぞれ示す。この実験に含められるステムドメインポリペプチドをコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、A/Wisconsin/67/2005からの同種全長HAおよび類似の程度でA/HongKong/1/1968からの異種全長HAを認識し得る。対照的に、A/Wisconsin/67/2005からの全長HA(配列番号89)により免疫化されたマウスから得られた血清は、A/HongKong/1/1968およびA/Perth/16/2009からの異種HAよりも同種HAに対する高い応答を示す。
【0382】
まとめると、データは、H3HAに由来する本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。
【0383】
実施例27
A/HongKong/1/1968のH3HAをベースとするHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/HongKong/1/1968からの全長H3(配列番号121)、配列番号124:HK68H3m2−cl9+10+11、配列番号125:HK68H3m2−cl9+10+12、配列番号126:HK68H3m2−cl9+10+11+12、配列番号128:HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri、配列番号130:HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
【0384】
4匹のマウス(BALB\c)の群を、100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。陰性対照プラスミドcM2を、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃により投与した。血清を、A/HongKong/1/1968からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。
【0385】
49日後のA/HongKong/1/1968からのHAを使用するELISAの結果を
図33に示す。この実験に含められるステムドメインポリペプチドをコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、A/HongKong/1/1968からの同種全長HAを認識し得る。予測されるとおり、全長HAをコードするDNAによる免疫化は、同種HAタンパク質に対しては高い抗体力価をもたらす一方、cM2をコードする陰性対照発現ベクターによる免疫化は、A/HongKong/1/1968の全長HAを認識する抗体を誘導しない。
【0386】
まとめると、データは、H3HAに由来する本発明のポリペプチドが全長H3HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。
【0387】
実施例28
グループ1およびグループ2インフルエンザウイルスを中和する抗体を誘発し得るH1HAをベースとする別のステムドメインポリペプチドの設計
実施例4および6は、広域中和CR6261抗体のエピトープを安定的に曝露させるH1配列をベースとするポリペプチドを開示する。CR6261がもっぱら系統発生グループ1からのインフルエンザウイルスを中和するという事実を考慮すると、このエピトープに対して設計されたポリペプチドは、系統発生グループ2インフルエンザウイルスに対する強力な反応を誘発し得ない。このような広域交差中和抗体を誘導する本発明によるポリペプチドを設計する別の手法は、エピトープ中の重要なアミノ酸の構造および生化学的特徴に関してH3HA配列により密接に類似するH1HA配列バリアントを使用することである。グループ特異的抗体および分子(CR6261、F10およびHB36)ならびに結晶化panインフルエンザ抗体FI6(Corti et al,2011)の構造間の比較に基づき、本発明者らは、グループ1−グループ2T49N(HA2)突然変異を立体衝突の導入なしでFI6によってのみ提供することができることを見出した。HA2の49位におけるアスパラギンは、NCBIインフルエンザデータベース:A/swine/Hubei/S1/2009(ACY06623)およびA/swine/Haseluenne/IDT2617/2003(ABV60697)の2つのグループ1ウイルス中に存在する。したがって、一実施形態において、実施例4、6および9に開示される本発明の基礎を構成するH1配列は、それらのN49含有HA配列のものである。あるいは、実施例4、6および9に記載の本発明による配列は、TをNアミノ酸に変化させるためのHA2中の49位における追加の突然変異を有する。表7は、本発明のポリペプチドのための出発配列として使用することができる例示的H1HA配列の配列アラインメントを示す。
【0388】
配列番号180は、突然変異T392N(番号付与は、配列番号1を指す)により配列番号45に由来する。配列番号1中のT392は、上記のとおりHA2中の49位におけるトレオニンに対応する。当業者に周知の方法を使用して、本発明のこのポリペプチドをコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。CR9114およびCR6261の中和エピトープの存在を、上記のとおり蛍光結合細胞選別により確認した。結果を
図34に示す。配列番号180についてのMFIは、CR6261およびCR9114結合について配列番号45および配列番号1について観察されるMFIと同等である一方、CR9020(全長HA分子の頭部領域に結合することが公知)は、配列番号1のみを認識し、CR8020(インフルエンザAグループ2のHAに特異的)は、配列番号180も、配列番号1も、配列番号45も認識しない。陰性対照cM2は、この実験において使用されるモノクローナル抗体のいずれによっても認識されない。
【0389】
まとめると、突然変異T392Nを含有する配列番号180は、CR6261およびCR9114の中和エピトープを含む。
【0390】
実施例29
膜貫通配列を欠く本発明の追加のポリペプチドの設計
天然形態のインフルエンザHAは、細胞またはウイルス膜上で三量体として存在する。ある実施形態において、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に生成されるように細胞内および膜貫通配列を除去する。HAの分泌エクトドメインを発現させ、精製する方法は記載されている(例えば、Dopheide et al 2009;Ekiert et al 2009,2011;Stevens et al 2004,2006;Wilson et al 1981参照)。当業者は、これらの方法を本発明のステムドメインポリペプチドに直接適用して分泌(可溶性)ポリペプチドの発現を達成することもできることを理解する。したがって、これらのポリペプチドも本発明に包含される。例えば、グループ1インフルエンザウイルスのHA配列に由来する本発明のポリペプチドの場合、本発明の可溶性ポリペプチドは、残基514(の相当物)からC末端(番号付与は、配列番号1を指す)のポリペプチド配列の欠失により作出することができる。あるいは、追加の残基を本発明のポリペプチド中に、例えば、残基515、516、517、518、519、520、521または522から配列を欠失させることにより含めることができる。場合によりhisタグ配列(HHHHHHまたはHHHHHHH)を精製目的のため、場合によりリンカーを介して連結させて付加することができる。場合により、リンカーは、精製後にhisタグを除去するためのタンパク質分解開裂部位を含有し得る。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、例えば、foldon配列を導入することによりさらに安定化させることができる。上記のとおり得られたポリペプチドも本発明に包含される。
【0391】
配列番号181〜185は、H1N1A/Brisbane/59/2007のHA配列に由来する本発明の可溶性ポリペプチドの配列を示す。同様に、配列番号186〜187は、H3N2A/HongKong/1/1968のHA配列に由来する本発明の可溶性ポリペプチドの配列を示す。当業者は、例えば、H1、H3、H5亜型の他のインフルエンザAワクチン株の他のHA配列に由来する本発明のポリペプチドについての相当配列を設計することができることを理解する。C末端の6つのヒスチジンを精製目的のために付着させることも当業者には明確である。このタグを使用しない他の精製方法が存在するため、6つのヒスチジン配列は任意選択であり、この精製タグを欠く配列も本発明に包含される。
【0392】
【表1】
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【0393】
【表2】
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【0394】
【表3】
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