特許第6294840号(P6294840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6294840-振動計測装置 図000002
  • 特許6294840-振動計測装置 図000003
  • 特許6294840-振動計測装置 図000004
  • 特許6294840-振動計測装置 図000005
  • 特許6294840-振動計測装置 図000006
  • 特許6294840-振動計測装置 図000007
  • 特許6294840-振動計測装置 図000008
  • 特許6294840-振動計測装置 図000009
  • 特許6294840-振動計測装置 図000010
  • 特許6294840-振動計測装置 図000011
  • 特許6294840-振動計測装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294840
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】振動計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20180305BHJP
   G01N 29/36 20060101ALI20180305BHJP
   G01N 29/34 20060101ALI20180305BHJP
   G01N 29/26 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   G01N29/12
   G01N29/36
   G01N29/34
   G01N29/26
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-4958(P2015-4958)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-130683(P2016-130683A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 大介
(72)【発明者】
【氏名】小宮 研一
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−106102(JP,A)
【文献】 特開2012−127897(JP,A)
【文献】 特開2005−315793(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0019153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてパラメトリックスピーカーから出力した音波により前記測定対象物を加振する送波部と、
前記測定対象物に向けてレーザ光を照射し、前記測定対象物から反射したレーザ光を受光し、受光光に基づいて前記測定対象物の振動を計測する光学計測部と、を有し、
前記送波部と前記光学計測部とを一体的に取り付け、前記光学計測部は、前記パラメトリックスピーカーから出力される音波の中心軸に、前記測定対象物に対するレーザ光の投受光光軸を一致させ
前記パラメトリックスピーカーから出力される音波の中心部分に、前記光学計測部からのレーザ光を前記測定対象物に向けて反射させ、前記測定対象物で反射したレーザ光を前記光学計測部に向けて反射させるミラーを配置し、
前記ミラーは、二次元走査ミラーである振動計測装置。
【請求項2】
前記光学計測部は、前記パラメトリックスピーカーから出力される音波の中心部分に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の振動計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、レーザドップラーの原理を用いて振動を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザドップラーの原理を用いて非接触で微小な振動振幅の測定が可能になってきている。この原理は振動する物体にレーザ光を照射すると散乱光にドップラーシフトが起こる。この散乱光と参照光との光のうなり(干渉)を観測することで、前記物体に生じる振動振幅等の情報を得ることが出来る。
【0003】
この原理を応用し能動的に検査対象物へ振動を与え、その振動を観測することにより対象物の状態を把握する検査方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、対象物を非接触で加振させる手段としてパラメトリックスピーカーのような超音波を使うことで鋭い指向性を持たせた音波で対象物を加振させる技術が提案されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2に開示の技術は、対象物に向けて音波を出力する送波部と、振動を光学的に計測する光学計測部とを有する。前記送波部と前記光学計測部とは、任意の位置に設置して用いられる(物理的な位置が異なる)。このため、前記光学計測部と測定対象物との距離や角度に応じて、前記送波部の角度を再調整する必要がある。また、多くのデータを取得して正規化する必要が生じ手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−237561号公報
【特許文献2】特開2014−106102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この明細書に記載に実施形態の目的は、複雑な調整を要することなく測定対象物に生じる振動を光学的に計測できる振動計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書に記載の実施形態の目的を実現する振動計測装置は、測定対象物に向けてパラメトリックスピーカーから出力した音波により前記測定対象物を加振する送波部と、前記測定対象物に向けてレーザ光を照射し、前記測定対象物から反射したレーザ光を受光し、受光光に基づいて前記想定対象物の振動を計測する光学計測部と、を有し、前記送波部と前記光学計測部とを一体的に取り付け、前記光学計測部は、前記パラメトリックスピーカーから出力される音波の中心軸に、前記測定対象物に対するレーザ光の投受光光軸を一致させた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の振動計測装置を示す概略正面図。
図2図1に示す振動計測装置による振動計測方法を示す図。
図3】不具合となる振動計測方法を示す図。
図4】振動測定装置の回路ブロック図。
図5図4の送波部の回路ブロック図。
図6図4の光学計測部の回路ブロック図。
図7図4の振動測定装置の動作の流れを説明するフローチャート。
図8】第2実施形態の振動計測装置を示す概略正面図。
図9図8に示す振動計測装置による振動計測方法を示す図。
図10】第3実施形態の振動計測装置を示す概略正面図。
図11図10のA−A線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の画像形成装置を図面に基づいて説明する。
【0011】
第1実施形態
図1は第1実施形態の振動計測装置を示す概略正面図、図2図1に示す振動計測装置による第1振動計測方法を示す図、図3図1に示す振動計測装置による第2振動計測方法を示す図である。図4は振動計測装置に設けられる駆動部の回路ブロック図、図5図4の送波部の回路ブロック図、図6図4の光学計測部の回路ブロック図、図7図4の振動測定装置の動作の流れを説明するフローチャートである。
【0012】
図1において、振動計測装置1は、送波部3Aと光学計測部5と、送波部3Aと光学計測部5とを駆動する駆動部7(図4参照)を有する。
【0013】
送波部3は、パラメトリックスピーカー31を有し、パラメットリックスピーカー31より超音波を高い指向性を持って前方に送波する。送波部3のパラメットリックスピーカー31は、複数の超音波振動子32を例えば正六角形の平面に密集状態に配置して構成される。なお、正六角形に限定されるものではなく、他の多角形、真円状あるいは楕円状等の円状等であっても良い。
【0014】
光学計測部5は、レーザドップラーの原理を用いて測定対象物に生じる微小な振動振幅を非接触で測定する。レーザドップラーの原理は、振動する測定対象物体にレーザ光を照射すると、測定対象物体から反射する散乱光にドップラーシフトが起こる。この散乱光と参照光との光のうなり(干渉)を観測することで、測定対象物体に生じる振動振幅等の情報を得る。
【0015】
振動する測定対象物から反射した光の波を測定するとき、測定した波の周波数シフトは、振動する測定対象物体に生じる振動の速度をV、照射された光の波長をλとすると、(2・V)/λで表される。
【0016】
本実施形態において、測定対象物を非接触で加振させる手段として送波部3が用いられる。送波部3はパラメトリックスピーカー31より超音波領域の音波を鋭い指向性を持たせて測定対象物を加振させる。そして、同時に加振させた測定対象物に対して光学計測部5を用いて光学的に振動を計測する。なお、送波部3のパラメトリックスピーカー31から出力する音波は、超音波領域の周波数に例えば可聴域の周波数の音波を加える。可聴域の周波数の音波は大きなエネルギーを有しているため、測定対象物を加振することができる。
【0017】
本実施形態において、送波部3のパラメトリックスピーカー31一側面33に光学計測部5を一体的に固定配置する。一体型にすることにより測定対象物や対象箇所が異なっても送波部3と光学計測部5の位置調整を行うことなく、簡便に測定を行うことが出来る。
【0018】
図2(a)(b)と、図3(a)(b)とは、測定対象物2と、振動計測装置1との距離が異なる。なお、図2(a)(b)、図3(a)(b)は、送波部3のパラメトリックスピーカー31のスピーカー面を示すために上面を向いた図を示しているが、実際には測定対象物2側に向いている。また、光学計測部5のレーザ射出面と、測定対象物2から反射したレーザ光を受光する受光面も実際には測定対象物2側に向いている。
【0019】
図2(a)(b)は光学計測部5からのレーザ光が測定対象物2に対して直角に照射される場合を示す。図2(a)と図2(b)において、送波部3から出力される超音波が届く指向性の範囲は、破線D1,D2の範囲内である。図2(a)のように振動計測装置1と測定対象物2との対向距離が短いと、光学計測部5から測定対象物2に照射されるレーザ光は、超音波が届く指向性の端にある。図2(b)のように、振動計測装置1と測定対象物2との対向距離が長いと、光学計測部5から測定対象物2に照射されるレーザ光は、超音波が届く指向性の範囲内に存在する。
【0020】
したがって、図2(a)と図2(b)では、測定対象物2に対し、計測部5からのレーザ光は同じ位置に照射される。しかし、レーザ光の照射位置に対する送波部3から出力される超音波の当たる当たり具合、つまり加振具合が異なってしまい、安定した再現性を得ることが難しい。
【0021】
これに対し、図3(a)(b)のように、図2(a)(b)と同様に、送波部3から測定対象物2に向けて超音波を出力した場合、光学計測部5のレーザ光の出射光軸L1と、受光部の入射光軸L2とを角度a、角度bのように変更する。また、送波部3から測定対象物2に向けて出力される音波の中心をL0とする。
【0022】
角度a、角度bは、共にレーザ光の出射光軸L1と入射光軸L2が、音波の中心L0が測定対象物2に当たる中心点Oに一致する。光学計測部3のレーザ光の出射光軸L1と、受光部の入射光軸L2とを角度a、角度bのように変更する手段として、光学計測部3のレーザ光の出射光軸L1と、受光部の入射光軸L2との角度を二次元走査ミラーにより調節する機構を例示できる。
【0023】
なお、レーザ光の出射光軸L1を音波の中心L0が測定対象物2に当たる中心点Oに一致させる方法として、レーザポインタを前記中心点Oに照射する方法を提示できる。この方法では、レーザポインタで示された位置にレーザ光の出射光軸L1を位置合わせする。
【0024】
したがって、振動計測装置1と測定対象物2との距離が長くてもまた短くても、測定対象物2に当たる音波の中心Oに光学計測部5の出射光軸L1と入射光軸L2を一致させることができる。このため、測定対象物2に発生する振動を安定して計測することができる。
【0025】
振動計測装置1の駆動部7は、図4に示すように、音声信号入力部71、制御信号入力部72、制御部及び演算部73、表示部74を有する。音声信号入力部71は、送波部3に例えば可聴域の周波数の信号(音声信号)を出力する。制御信号入力部72に入力された制御信号を基に、制御部及び演算部73で送波部3や光学計測部5の制御や演算を行い、結果を表示部74で表示する。
【0026】
送波部3は、図5に示すように、音声信号入力部71からの可聴域周波数の音声信号を処理する音声処理部301と、超音波発信機305からの超音波周波数に音声処理部301からの音声信号を加えて変調する変調部302と、音声処理部301と超音波発信機305の出力タイミング等を制御する制御部304と、変調部302の出力を増幅する信号増幅器303と、信号増幅器303で増幅された超音波信号が入力するパラメトリックスピーカー31を有する。音声信号入力部71には、音声入力部80から音声(可聴域周波数)信号が入力する。すなわち、変調部302から出力される変調信号は、高い指向性を有すると共に大きな振幅を有する。
【0027】
光学計測部5は、図9に示すように、制御信号51が入力するレーザドライバー52と、レーザドライバー52により駆動されてレーザ光LAを測定対象物に向けて出射するレーザダイオード53と、測定対象物から反射した反射光LBを受光するフォトダイオード54と、フォトダイオード54で受光した受信信号増幅する信号増幅器55と、信号増幅器55で増幅した信号が入力されるドップラー周波数検出部56と、ドップラー周波数検出部56で検出した振動成分に基づいて振動データ、速度データ、変位データを演算する演算部57とを有する。演算部57で求めた各種のデータは表示部74に表示される。
【0028】
振動計測装置1の動作を図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0029】
本処理が開始されると、Act1において、送波部3のパラメトリックスピーカー31から音波を測定対象物2に向けて照射し、測定対象物2を加振させ、Act2に進む。
【0030】
Act2において、光学計測部5の測定用のレーザダイオード53を駆動し、定電流モードでレーザを発光させ、測定対象物2に照射し、Act3に進む。
【0031】
Act3において、測定対象物2からの反射光LBをフォトダイオード54で受光し、Act4に進む。
【0032】
Act4において、フォトダイオード54に流れる微量な電流信号を電圧信号に変換した後に信号増幅器55で増幅させ、Act5に進む。
【0033】
Act5において、信号増幅器55で増幅された信号をドップラー周波数検出部56でフーリエ解析により検出し、さらに演算部57で演算処理を行って振動成分を抽出して、振動データ、速度データ、変位データを演算し、Act6に進む。
【0034】
Act6において、振動データ、速度データ、変位データを表示部74に表示する。
【0035】
第2実施形態
図8は第2実施形態の振動計測装置を示す概略正面図、図9図8に示す振動計測装置による振動計測方法を示す図である。
【0036】
第2実施形態の振動計測装置1は、送波部3のパラメトリックスピーカー35の中央部分に設けた空所部36に光学計測部5を配置した構成としている。本実施形態のパラメトリックスピーカー35は、六角形の平面の中央部分に設けた空所部36を除いて複数の超音波振動子32を密に配置する。また、光学計測部5は空所部36に振動吸収部37を介して保持され、パラメトリックスピーカー35で発生する振動を吸収する。したがって、光学計測部5にはパラメトリックスピーカー35で発生した振動が伝達されず、振動を高精度に計測することができる。
【0037】
本実施形態では、送波部3の出力の中心と光学計測部5のレーザ光の出射。入射光軸を同一軸線上に配置した一体型としている。すなわち、パラメトリックスピーカー35から出力される音声が測定対象物2に照射される中心点Oに、光学計測部5の出射光軸L1が一致する。
【0038】
したがって、図9(a)、(b)に示すように、測定対象物2と振動計測装置1との対向距離が短くても、また長くても、常に送波部3の中心Oでレーザの出力と受光の軸L1、L2を揃えて対象物の振動を測定することが出来る。
【0039】
第3実施形態
図10は第3実施形態の振動計測装置を示す概略正面図、図11図10のA−A線矢視断面図である。
【0040】
本実施形態は、第2の実施形態の変形例である。
【0041】
図8の第2の実施形態では、送波部3のパラメトリックスピーカー35の中央部分に設けた空所部36に光学計測部5を配置している。これに対し、本実施形態では、空所部36に二次元走査ミラー58を配置する。
【0042】
二次元走査ミラー58は、支点軸59を中心に矢印B,C方向に回転可能で、任意の回転角度θに保持可能としている。二次元走査ミラー58に向けてレーザダイオード53からレーザ光が照射される。図11は、二次元走査ミラー58の回転角度θが45度の場合を示し、二次元走査ミラー58で反射したレーザ光の出射光軸L1は、パラメトリックスピーカー35の中心線L0と一致する。
【0043】
また、二次元走査ミラー58の回転角度θを変更しながらレーザ光の送受信を行うことで、測定対象物2に対し、パラメトリックスピーカー35による加振範囲内での振動を計測することができる。
【0044】
すなわち、送波部3のパラメトリックスピーカー35の中心に光学計測部内の走査機構である1次元、もしくは2次元の走査ミラー58の中心が来るように配置しているので、測定対象物2を二次元状に計測する場合においても、送波部3の中心を起点として走査するため、測定対象物2に対する音源の距離や方向に限らず、安定した計測を行うことが可能となる。
【0045】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施できる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0046】
1 振動計測装置
2 測定対象物
3 送波部
31 パラメトリックスピーカー
5 光学計測部
7 駆動部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11