(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6294895
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】エンジンの温度を制御するためのガスケットおよびシステム
(51)【国際特許分類】
F02F 11/00 20060101AFI20180305BHJP
F02F 1/10 20060101ALI20180305BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20180305BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20180305BHJP
F16J 15/08 20060101ALN20180305BHJP
【FI】
F02F11/00 D
F02F1/10 B
F01P3/02 M
F01P7/16 505A
F01P7/16 Z
F02F11/00 L
!F16J15/08 F
【請求項の数】46
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-556533(P2015-556533)
(86)(22)【出願日】2014年2月11日
(65)【公表番号】特表2016-513204(P2016-513204A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014052648
(87)【国際公開番号】WO2014124937
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】1302498.9
(32)【優先日】2013年2月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ハッチンス
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0326380(US,A1)
【文献】
特開2010−043555(JP,A)
【文献】
特表昭55−500834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00− 1/42
F02F 7/00
F01P 1/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック、シリンダヘッド、およびシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に配置されたガスケットとを有するエンジンを備えた車両であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
ガスケットは、ガスケット開口部を有し、
ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、
ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限する手段を有し、
流路を選択的に制限する前記手段は、制御ギャップであり、
制御ギャップは、ガスケットがシリンダヘッドとシリンダブロックの間の所定位置にあるとき、ガスケット内に形成されるか、ガスケットにより形成され、
制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、
制御ギャップの下壁は、ガスケットの下層により構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は中間層により構成され、
中間層はガスケットの下層であることを特徴とする車両。
【請求項2】
シリンダブロック、シリンダヘッド、およびシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に配置されたガスケットとを有するエンジンを備えた車両であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
ガスケットは、ガスケット開口部を有し、
ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、
ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限する手段を有し、
流路を選択的に制限する前記手段は、制御ギャップであり、
制御ギャップは、ガスケットがシリンダヘッドとシリンダブロックの間の所定位置にあるとき、ガスケット内に形成されるか、ガスケットにより形成され、
制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁がガスケットの上層により構成され、制御ギャップの下壁がシリンダブロックにより構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、
中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は、第2の層により構成され、
制御ギャップの上壁は、中間層により構成され、
中間層は、ガスケットの上層であることを特徴とする車両。
【請求項3】
制御ギャップの高さは、0.7mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
制御ギャップの高さは、0.2mm〜0.7mmの間であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の車両。
【請求項5】
制御ギャップの高さは、0.3mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項6】
第2の制御ギャップを有し、
第2の制御ギャップは、中間層により構成された上壁と、第2の層により構成された側壁と、シリンダブロックにより構成された下壁とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項7】
第2の制御ギャップを有し、
第2の制御ギャップは、シリンダヘッドにより構成される上壁と、第1の層により構成される側壁と、中間層により構成される下壁とを有することを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項8】
ガスケット開口部は、上側部分および下側部分を有し、
上側部分および下側部分の一方または両方におけるガスケット開口部の形状は、シリンダブロックの内部にある少なくとも1つのボア開口部とシリンダヘッドの内部にある少なくとも1つのボア開口部とを流体連通させるために、細長い形状を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の車両。
【請求項9】
ガスケット開口部の上側部分または下側部分の一方のみが細長い形状を有し、
ガスケット開口部の上側部分または下側部分のうちの他方が、シリンダブロックまたはシリンダヘッドのいずれか一方の内部にあるボア開口部に連通するように構成され、その幅が制御ギャップの幅より小さく、および/または円形断面を有することを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
制御ギャップは、だ円の断面形状を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1に記載の車両。
【請求項11】
制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなる断面形状を有することを特徴とする請求項10に記載の車両。
【請求項12】
制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも2倍であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1に記載の車両。
【請求項13】
制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの10倍であることを特徴とする請求項12に記載の車両。
【請求項14】
制御ギャップの幅が、3mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1に記載の車両。
【請求項15】
制御ギャップの幅が、4mmであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1に記載の車両。
【請求項16】
エンジンの温度を管理するためのシステムを備え、
このシステムは、
i)シリンダヘッドおよびシリンダブロックに連結され、冷却剤を送出するためのポンプであって、システム内の冷却剤の流量を調整できるように制御可能なポンプと、
ii)シリンダブロックおよび/またはシリンダヘッドを通って流れる冷却剤の流れを制限し、許容するように構成されたバルブとを備え、
第1の動作状態にある間、ポンプは第1の流量で動作するように制御可能であり、バルブはシリンダブロックを通って流れる冷却剤の流れを制限し、ガスケットの制御ギャップはシリンダブロックから流出する冷却剤の流れを制限することにより、システムはエンジンがエンジンの駆動温度範囲に達し得るように構成されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1に記載の車両。
【請求項17】
ポンプは、最大流量の出力値を有し、
第1の流量は、最大流量より小さいことを特徴とする請求項16に記載の車両。
【請求項18】
駆動温度範囲は、70℃〜90℃であることを特徴とする請求項16または17に記載の車両。
【請求項19】
システムは、
i)ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上のウォータジャケットおよびボア開口部を通り、閉口状態にあるバルブで中断する第1の流路と、
ii)ポンプから、シリンダヘッドへの第2のインレットに入り、シリンダヘッドの第2のアウトレットから出て、ポンプに帰還する第2の流路と、
iii)ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上のウォータジャケットを通り、シリンダブロックの第1のアウトレットから出て、開口状態にあるバルブを通り、第2の流路の少なくとも一部を通ってポンプに帰還する第3の流路とを有し、
第1の動作状態にあるとき、シリンダブロックからの冷却剤の流出を制限するために、バルブが閉口状態にあり、第1および第2の流路のみが利用可能であり、
第2の動作状態にあるとき、ポンプは第2の流量で動作するように制御可能であり、冷却剤がシリンダブロックに流入し、シリンダブロックから流出できるように、バルブが開口状態にあり、第2および第3の流路が利用可能であり、
第1の流量は、第2の流量より小さいことを特徴とする請求項16〜18のいずれか1に記載の車両。
【請求項20】
流量がより小さいとき、上壁および下壁の間を流れる冷却剤の粘性抵抗は、冷却剤がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流れることを防止する上で大きいことを特徴とする請求項19に記載の車両。
【請求項21】
第2の動作状態にあるとき、シリンダブロックが駆動温度範囲内の温度を有し、
バルブを開口し、冷却剤が1つまたはそれ以上のウォータジャケットに流入し、ウォータジャケットから流出できるようにすることにより、シリンダヘッド、シリンダ、および/またはシリンダブロックの温度が、駆動温度範囲内に維持されることを特徴とする請求項19または20に記載の車両。
【請求項22】
上壁、下壁、および/または側壁は、粗面化され、形成され、成形され、凹凸を有し、または摂動部を有することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1に記載の車両。
【請求項23】
シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンのためのガスケット内を流れる冷却剤の流路を制御する方法であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路をガスケット内に形成するような寸法を有して構成された開口部を提供するステップと、
ii)ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、ガスケット開口部を介し、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的に通過させることができるように、流路を選択的に制限するように配置構成された制御ギャップを形成するステップと、
ガスケット開口部の制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、
制御ギャップの下壁は、ガスケットの下層により構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は中間層により構成され、
中間層はガスケットの下層であることを特徴とする方法。
【請求項24】
シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンのためのガスケット内を流れる冷却剤の流路を制御する方法であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路をガスケット内に形成するような寸法を有して構成された開口部を提供するステップと、
ii)ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、ガスケット開口部を介し、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的に通過させることができるように、流路を選択的に制限するように配置構成された制御ギャップを形成するステップと、
ガスケット開口部の制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁がガスケットの上層により構成され、制御ギャップの下壁がシリンダブロックにより構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、
中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は、第2の層により構成され、
制御ギャップの上壁は、中間層により構成され、
中間層は、ガスケットの上層であることを特徴とする方法。
【請求項25】
制御ギャップの高さは、0.2mm〜0.7mmの間であり、および/または
制御ギャップは、細長い制御ギャップであることを特徴とする請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなるだ円の断面形状を有し、
制御ギャップの幅が、3mm〜5mmであることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1に記載の方法。
【請求項27】
シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンの温度を制御する方法であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成された開口部を有するガスケットを、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配置するステップを有し、
温度および流量に依存して、ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、ガスケットを介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を制限する手段を有し、
この方法は、さらに
ii)異なる流量で制御可能なポンプを用いて、冷却剤を第1の流量で送出するステップと、
iii)シリンダブロック内に流れる冷却剤の流れを制限するバルブを用いるステップとを有し、
前記手段は、制御ギャップであり、
制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、
制御ギャップの下壁は、ガスケットの下層により構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は中間層により構成され、
中間層はガスケットの下層であることを特徴とする方法。
【請求項28】
シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンの温度を制御する方法であって、
シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成された開口部を有するガスケットを、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配置するステップを有し、
温度および流量に依存して、ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、ガスケットを介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を制限する手段を有し、
この方法は、さらに
ii)異なる流量で制御可能なポンプを用いて、冷却剤を第1の流量で送出するステップと、
iii)シリンダブロック内に流れる冷却剤の流れを制限するバルブを用いるステップとを有し、
前記手段は、制御ギャップであり、
制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁がガスケットの上層により構成され、制御ギャップの下壁がシリンダブロックにより構成され、
ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、
第1の層は中間層の上方に配置され、
中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は、第2の層により構成され、
制御ギャップの上壁は、中間層により構成され、
中間層は、ガスケットの上層であることを特徴とする方法。
【請求項29】
i)冷却剤を第1、第2、および第3の流路に送出するステップと、
i−a)第1の流路は、ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の通路を通り、閉口状態にあるバルブで中断するものと定義され、
i−b)第2の流路は、ポンプから、シリンダヘッドへの第2のインレットに入り、シリンダヘッドの第2のアウトレットから出て、ポンプに帰還するものと定義され、
i−c)第3の流路は、ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の通路を通り、シリンダブロックの第1のアウトレットから出て、開口状態にあるバルブを通り、ポンプに帰還し、および/またはガスケットを介してシリンダブロックから出て、第2の流路の少なくとも一部を通ってポンプに帰還するものと定義され、
ii)バルブを制御して閉口状態と開口状態を選択するステップと、
iii)第1の動作状態にあるとき、ポンプを第1の流量で動作するように制御し、シリンダブロックからの冷却剤の流出を制限し、第1および第2の流路のみが利用可能となるようにバルブを閉じるステップと、
iv)第2の動作状態にあるとき、ポンプを第2の流量で動作するように制御し、第2および第3の流路が利用可能となり、冷却剤がシリンダブロックに流入し、シリンダブロックから流出できるように、バルブを開くステップとを有し、
ポンプを制御する前記ステップは、システムの第1の動作状態にあるとき、第1の流量を第2の流量より小さくして、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配置されたガスケットの制御ギャップを通って流れる冷却剤の流れを防止することを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
より小さい第1の流量において、冷却剤は、シリンダブロックから、ガスケットの制御ギャップを介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部から流出できないことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1の動作状態にあるとき、シリンダブロックは駆動温度範囲以下の始動温度を有し、 バルブおよびガスケット開口部の制御ギャップを用いて冷却剤の流れを制限することにより、シリンダブロックを駆動温度範囲内の温度まで昇温させることを特徴とする請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
ガスケット開口部を有するエンジン用ガスケットであって、
シリンダヘッドとシリンダブロックの間の所定位置にあるとき、制御ギャップを有するように構成されるか、制御ギャップを形成するように構成され、
ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、
ガスはガスケットの内部にある開口部を通って自由に通過させる一方、冷却剤はガスケットの内部にある開口部を通って制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限するように配置構成され、
ガスケットの制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下で使用されるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、
制御ギャップの下壁は、ガスケットの下層により構成され、
ガスケットは、少なくともガスケット開口部の近傍において3層以上からなり、
第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は中間層により構成され、
中間層は、ガスケットの下層であることを特徴とするガスケット。
【請求項33】
ガスケット開口部を有するエンジン用ガスケットであって、
シリンダヘッドとシリンダブロックの間の所定位置にあるとき、制御ギャップを有するように構成されるか、制御ギャップを形成するように構成され、
ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、
ガスはガスケットの内部にある開口部を通って自由に通過させる一方、冷却剤はガスケットの内部にある開口部を通って制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限するように配置構成され、
ガスケットの制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、エンジンの駆動温度範囲以下で使用されるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止または制限するような寸法を有し、
制御ギャップの上壁は、ガスケットの上層により構成され、
制御ギャップの下壁は、シリンダブロックにより構成され、
ガスケットは、少なくともガスケット開口部の近傍において3層以上からなり、
第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、
制御ギャップの側壁は第2の層により構成され、
制御ギャップの上壁は中間層により構成され、
中間層はガスケットの上層であることを特徴とするガスケット。
【請求項34】
制御ギャップの高さは、0.7mm以下であることを特徴とする請求項32または33に記載のガスケット。
【請求項35】
制御ギャップの高さは、0.2mm〜0.7mmの間であることを特徴とする請求項32〜34のいずれか1に記載のガスケット。
【請求項36】
制御ギャップの最大高さは、0.3mmであることを特徴とする請求項35に記載のガスケット。
【請求項37】
第2の制御ギャップを有し、
第2の制御ギャップは、中間層により構成された上壁と、第2の層により構成された側壁と、シリンダブロックにより構成された下壁とを有することを特徴とする請求項32に記載のガスケット。
【請求項38】
第2の制御ギャップを有し、
第2の制御ギャップは、シリンダヘッドにより構成される上壁と、第1の層により構成された側壁と、中間層により構成された下壁とからなることを特徴とする請求項33に記載のガスケット。
【請求項39】
ガスケット開口部は、上側部分および下側部分を有し、
ガスケット開口部の形状は、上側部分および下側部分の一方または両方において、シリンダブロックの内部にある少なくとも1つのボア開口部とシリンダヘッドの内部にある少なくとも1つのボア開口部とを流体連通させるために、細長い形状を有することを特徴とする請求項32〜38のいずれか1に記載のガスケット。
【請求項40】
ガスケット開口部の上側部分または下側部分の一方だけが細長く、ガスケット開口部の下側部分または上側部分の他方は、シリンダブロックまたはシリンダヘッドの内部に設けたボア開口部と連通し、制御ギャップの幅より小さい幅を有し、および/または円形の断面形状を有することを特徴とする請求項39に記載のガスケット。
【請求項41】
制御ギャップの断面形状は、だ円であることを特徴とする請求項32〜40のいずれか1に記載のガスケット。
【請求項42】
制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなる断面形状を有することを特徴とする請求項41に記載のガスケット。
【請求項43】
制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも2倍であることを特徴とする請求項32〜42のいずれか1に記載のガスケット。
【請求項44】
制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも10倍であることを特徴とする請求項43に記載のガスケット。
【請求項45】
制御ギャップの幅が、3mm〜5mmであることを特徴とする請求項32〜44のいずれか1に記載のガスケット。
【請求項46】
制御ギャップの幅が、4mmであることを特徴とする請求項32〜45のいずれか1に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのためのガスケット、およびエンジンの温度を制御するためのガスケットを備えたシステムに関する。特に(ただしこれに限定するものではないが)、本発明は、シリンダブロックとシリンダヘッドの間にクーラント(冷却剤)が制限的に流れることを許容するとともに、シリンダブロックとシリンダヘッドの間にガスが自由に流れることを許容するように配置構成された制御ギャップを有するガスケットに関する。さらに特には(ただしこれに限定するものではないが)、本発明は、(これに限定するものではないが、ウォームアップ段階中にシステムにより案内されるクーラントの量を制限(規制)または制御することにより、1つまたはそれ以上のシリンダ、および/またはシリンダヘッド、および/またはシリンダブロック等の)エンジンの1つまたはそれ以上の構成部品のために暖機段階(ウォームアップ段階)を提供するガスケットを備えたスプリット(分割された)冷却システムに関する。
【0002】
本発明に係る態様は、車両、方法、ガスケット、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
ガスケット(ヘッドガスケットともいう。)は、シリンダブロック(エンジンブロックともいう。)と、内燃エンジン内のシリンダヘッドとの間に配置される。ガスケットは、シリンダ、オイル流路開口部、およびクーラント流路開口部の周囲をシール(封止)するために設けられている。ウォータジャケットの周囲のクーラントフローを用いて、エンジンブロックや、シリンダ、ピストン、ピストンリング、ピストンのための潤滑剤を含む他の構成部品を冷却する。ガスケットは、たとえばガスケットをシリンダブロックに(ボルト等を用いて)固定できるように、特定のエンジンデザインに適応し、シリンダや、他の開口部球は貫通孔と同様、オイル流路開口部およびウォータ通路開口部に対してシール(封止)するように形成される。
【0004】
シリンダブロックおよびシリンダヘッドは、典型的には、鋳造部品であり、鋳造プロセス中に形成される付加的で冗長な鋳造レッグ(鋳造脚部)または鋳造孔を有する。これらの冗長な鋳造レッグは、穴または孔として形成され、シリンダヘッドとシリンダブロックの間の接合部付近に配置される。これらの冗長鋳造レッグは、充填、ブロック(遮断)、またはシール(封止)することができるが、そうすることにより追加的な製造コストが必要となる。ブロックせずに放置すると、ガスおよび/またはクーラント液がこれらの冗長鋳造レッグに集まることがある。シリンダヘッドとシリンダブロックの表面にある鋳造脚部の開口部は、クーラント液および/またはガスが冗長鋳造レッグに出入りするポイントを与える。エンジンの温度が上昇すると、これらの冗長鋳造レッグ内のクーラントおよびガスの制御できない漏れが生じる程度まで、クーラントおよびガスの圧力が増大することがある。こうした漏れは、エンジンの動作および使用寿命に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
製造時、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの冗長鋳造レッグおよび表面開口部の寸法、形状、および配置位置は、製造公差範囲内に入る。冗長鋳造レッグの表面開口部の正確な寸法、形状、および配置位置は、製造後まで知ることはできない。これらの製造時の許容誤差(公差)に起因して、シリンダヘッドのレッグ鋳造の開口部を、対応するシリンダブロックのレッグ鋳造の開口部の上方に正確に位置合わせ、重ね合わせすることができない。実際のところ、シリンダブロックの開口部およびシリンダブロックの開口部は、互いに位置ずれし、部分的にのみ重ね合わされるか、まったく重ね合わされないことがある。
【0006】
典型的に、既知の内燃エンジンのための冷却システムは、エンジンにより駆動されるポンプを備える。冷却システムがエンジンにより駆動されるので、冷却システムは、エンジンが始動するとすぐに動作する。ただし、燃料効率を最適化し、エンジンの構成部品の消耗を最小限に抑えるために、エンジンにとっては温まった後に、冷却システムを動作させる方がよい。エンジンを始動させてすぐに冷却システムを動作させると、エンジンが温まり(ウォームアップし)、最適な駆動温度に達するまでの時間が長くなる。したがって、この動作は、エンジンの燃料効率を低減するとともに、エンジンの使用寿命を短くすることになる。特に重要なことは、ピストンおよびピストンリングの周りの潤滑剤の温度である。潤滑剤が最適温度より低いときにエンジンを駆動させると、エンジンに悪影響を与えることがある。
【0007】
本発明は、既知のガスケットに付随する問題に対処し、これを少なくとも低減する改善されたガスケットを提供しようとするものである。また本発明は、制御可能なポンプと組み合わせたガスケットを用いた、エンジンのための改善された冷却システムを提供する。本発明は、これに限定するものではないが、たとえばエンジンにおける発電機のための用途等、動力車両用途のためのエンジンの外側にある有利な用途を有する。
【0008】
本願に記載のクーラント(冷却剤)の用語は、具体的には、これに限定するものではないが、水、クーラント(たとえばエチレングリコール)、および水とクーラントの混合液等の任意の適当な温度管理液体を意味するために用いられる。以下の明細書を読めば理解されるように、「クーラント」および「水」は、エンジンを冷却させるために循環させる液体および/または流体を意味するために用いられる。さらに、本願開示内容の有利な態様において、クーラントは、始動しようとするエンジンを温めることができるように、
流量をゼロまたはきわめて小さい値に維持される。「クーラント」の用語は、温度を下げる物質または液体に限定することを意図するものではなく、むしろ適当ならば、温度を上げるか、または温度を維持する物質または液体に限定することを意図するものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は、添付したクレームで定義されたガスケット、方法、プログラム、および車両を提供するものである。
【0010】
保護を求める本発明に係る態様によれば、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に配置されたガスケットとを有するエンジンを備えた車両が提供される。シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、ガスケットは、ガスケット開口部を有し、ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限する手段を有する。
【0011】
任意的には、前記手段は制御ギャップである。
【0012】
任意的には、ガスケット開口部の制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、制御ギャップの高さは、特定の動作温度にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力は、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止し、少なくとも極力抑えるような寸法を有する。上壁と下壁の間の距離が均一でない場合、制御ギャップの高さを最大高さ、最小高さ、または平均高さとして定義してもよい。
【0013】
任意的には、制御ギャップの高さは、約0.7mm以下である。
【0014】
任意的には、制御ギャップの高さは、約0.2mm〜約0.7mmの間であり、または約0.3mmである。
【0015】
任意的には、制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドまたはガスケットの上層により構成され、制御ギャップの下壁は、シリンダブロックまたはガスケットの下層により構成される。
【0016】
任意的には、ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、制御ギャップの側壁は、第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は、中間材料層により構成される。
【0017】
任意的には、ガスケットは、ガスケット開口部の少なくとも近傍において3つまたはそれ以上の層を有し、第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、制御ギャップの上壁は、中間材料層により構成され、制御ギャップの側壁は、中間材料層により構成され、制御ギャップの下壁は、シリンダブロックにより構成される。
【0018】
任意的には、ガスケット開口部は2つの領域を有し、いずれか一方または両方の領域は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部の相対的な配置位置に関係なく、制御ギャップとして機能することができ、第1の制御ギャップは、シリンダヘッドにより構成される上壁と、中間材料層により構成される下壁とを有し、第2の制御ギャップは、中間材料層により構成される上壁と、中間材料層により構成される側壁と、シリンダブロックにより構成される下壁とを有する。
【0019】
任意的には、ガスケットは、単一の材料層を有し、制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、制御ギャップの下壁は、ガスケットの単一の材料層の凹部により構成される。制御ギャップの側壁は、単一の材料層により構成される。
【0020】
任意的には、ガスケットは、単一の材料層を有し、制御ギャップの上壁は、ガスケットの単一の材料層の凹部により構成され、制御ギャップの下壁は、シリンダブロックにより構成される。
【0021】
任意的には、ガスケットは、第1および第2の材料層を有し、第1の材料層は、第2の材料層上に配置され、制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドにより構成され、制御ギャップの側壁は、第1および第2の材料層により構成され、制御ギャップの下壁は、第2の材料層の上側表面により構成される。
【0022】
任意的には、ガスケットは、第1および第2の材料層を有し、第1の材料層は、第2の材料層上に配置され、制御ギャップの上壁は、第1の材料層の下側表面により構成され、制御ギャップの側壁は、第2の材料層により構成され、制御ギャップの下壁は、シリンダブロックにより構成される。
【0023】
任意的には、ガスケット開口部は、上側部分および下側部分を有し、上側部分および下側部分の一方または両方におけるガスケット開口部の形状は、シリンダブロックの内部にある少なくとも1つのボア開口部とシリンダヘッドの内部にある少なくとも1つのボア開口部とを流体連通させるために、ほぼ細長い形状を有する。こうして、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部の相対的な配置位置に関係なく、2つの開口部の間の流体連通を実現するように形成され、配置され、構成される(ただし、シリンダヘッドおよびシリンダブロックは期待され製造公差内で製造される必要がある。)。
【0024】
任意的には、ガスケット開口部の上側部分または下側部分のみが細長い形状を有し、ガスケット開口部の上側部分または下側部分のうちの他方が、シリンダブロックまたはシリンダヘッドのいずれか一方の内部にあるボア開口部に連通するように構成され、その幅が制御ギャップの幅より小さく、および/またはほぼ円形断面を有する。
【0025】
任意的には、制御ギャップは、少なくともほぼだ円の断面形状を有する。
【0026】
任意的には、制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなる断面形状を有する。
【0027】
任意的には、制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも2倍である。
【0028】
任意的には、制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも10倍である。
【0029】
任意的には、制御ギャップの幅が、約3mm〜約5mmである。
【0030】
任意的には、制御ギャップの幅が、約4mmである。
【0031】
さらに任意の特徴として、エンジンの温度を管理するためのシステムを備え、このシステムは、
i)シリンダヘッドおよびシリンダブロックに連結され、冷却剤を送出するためのポンプであって、システム内の冷却剤の
流量を調整できるように制御可能なポンプと、
ii)シリンダブロックおよび/またはシリンダヘッドを通って流れる冷却剤の流れを制限し、許容するように構成されたバルブとを備え、
第1の動作状態にある間、ポンプは第1の
流量で動作するように制御可能であり、バルブはシリンダブロックを通って流れる冷却剤の流れを制限し、ガスケットの制御ギャップはシリンダブロックからボア開口部を介して流出する冷却剤の流れを制限することにより、システムはエンジンが第1の駆動温度に達し得るように構成される。
【0032】
任意的には、ポンプは、最大
流量の出力値を有し、第1の
流量は最大
流量より小さい。
【0033】
任意的には、第1の駆動温度は、約70℃〜約90℃である。
【0034】
任意的には、システムは、
i)ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の冷却剤通路(ウォータジャケット)およびボア開口部を通り、閉口状態にあるバルブで中断する第1の流路と、
ii)ポンプから、シリンダヘッドへの第2のインレットに入り、シリンダヘッドの第2のアウトレットから出て、ポンプに帰還する第2の流路と、
iii)ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の冷却剤通路(ウォータジャケット)を通り、シリンダブロックの第1のアウトレットから出て、開口状態にあるバルブを通り、第2の流路の少なくとも一部を通ってポンプに帰還する第3の流路とを有し、
第1の動作状態にあるとき、シリンダブロックからの冷却剤の流出を制限するために、バルブが閉口状態にあり、第1および第2の流路のみが利用可能であり、
第2の動作状態にあるとき、ポンプは第2の
流量で動作するように制御可能であり、冷却剤がシリンダブロックに流入し、シリンダブロックから流出できるように、バルブが開口状態にあり、第2および第3の流路が利用可能であり、
第1の
流量は、第2の
流量より小さい。
【0035】
任意的には、
流量がより小さいとき、上壁および下壁の間を流れる冷却剤の粘性抵抗は、冷却剤がガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にある開口部へ流れることを防止する上で実質的に大きい。
【0036】
任意的には、第2の動作状態にあるとき、シリンダブロックが少なくとも実質的に駆動温度範囲内の温度を有し、バルブを開口し、冷却剤が1つまたはそれ以上の冷却剤通路(ウォータジャケット)に流入し、冷却剤通路(ウォータジャケット)から流出できるようにすることにより、シリンダヘッド、シリンダ、および/またはシリンダブロックの温度が、少なくとも実質的に駆動温度範囲内に維持される。
【0037】
任意的には、冷却剤は、水、冷却剤、および水と冷却剤の混合物からなる群から選択される。
【0038】
任意的には、上壁、下壁、および/または側壁は、粗面化され、形成され、成形され、凹凸を有し、または摂動部を有する。
【0039】
保護を求める本発明に係る別の態様によれば、シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンのためのガスケット内を流れる冷却剤の流路を制御する方法が提供され、シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路をガスケット内に形成するような寸法を有して構成されたガスケット開口部を提供するステップと、
ii)ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、シリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的に通過させることができるように、流路を選択的に制限するように配置構成された制御ギャップを形成するステップと、
ガスケット開口部の制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、
制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、
制御ギャップの高さは、特定の動作温度にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止し、少なくとも極力抑えるような寸法を有する。
【0040】
任意的には、制御ギャップの高さは、約0.2mm〜約0.7mmの間であり、任意的には約0.3mmであり、および/または制御ギャップは、細長い制御ギャップである。
【0041】
任意的には、制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなる少なくともほぼだ円の断面形状を有し、制御ギャップの幅が、約3mm〜約5mmであり、任意的には約4mmである。
【0042】
保護を求める本発明に係るさらに別の態様によれば、シリンダブロックおよびシリンダヘッドを備えたエンジンの温度を制御する方法が提供され、シリンダブロックおよびシリンダヘッドはそれぞれ、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部にあるボア開口部と連通する少なくとも1つのボア開口部を有し、
この方法は、
i)シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成された開口部を有するガスケットを、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配置するステップを有し、
ガスケットは、温度および
流量に依存して、ガスはシリンダブロックの内部にあるボア開口部を介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ自由に通過させる一方、冷却剤は、ガスケットの制御ギャップを介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ制限的にのみ通過させることができるように流路を制限するように配置構成された制御ギャップを有し、
この方法は、さらに
ii)異なる
流量で制御可能なポンプを用いて、冷却剤を第1の
流量で送出するステップと、
iii)シリンダブロック内に流れる冷却剤の流れを制限するバルブを用いるステップとを有する。
【0043】
任意的には、この方法は、さらに
i)冷却剤を第1、第2、および第3の流路に送出するステップと、
i−a)第1の流路は、ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の冷却剤通路を通り、閉口状態にあるバルブで中断するものと定義され、
i−b)第2の流路は、ポンプから、シリンダヘッドへの第2のインレットに入り、シリンダヘッドの第2のアウトレットから出て、ポンプに帰還するものと定義され、
i−c)第3の流路は、ポンプから、シリンダブロックへの第1のインレットに入り、シリンダブロックの内部に形成された1つまたはそれ以上の冷却剤通路を通り、シリンダブロックの第1のアウトレットから出て、開口状態にあるバルブを通り、ポンプに帰還し、および/またはガスケットを介してシリンダブロックから出て、第2の流路の少なくとも一部を通ってポンプに帰還するものと定義され、
ii)バルブを制御して閉口状態と開口状態を選択するステップと、
iii)第1の動作状態にあるとき、ポンプを第1の
流量で動作するように制御し、シリンダブロックからの冷却剤の流出を制限し、第1および第2の流路のみが利用可能となるようにバルブを閉じるステップと、
iv)第2の動作状態にあるとき、ポンプを第2の
流量で動作するように制御し、第2および第3の流路が利用可能となり、冷却剤がシリンダブロックに流入し、シリンダブロックから流出できるように、バルブを開くステップとを有し、
ポンプを制御する前記ステップは、システムの第1の動作状態にあるとき、第1の
流量を第2の
流量より小さくして、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配置されたガスケットの制御ギャップを通って流れる冷却剤の流れを防止する。
【0044】
任意的には、より小さい第1の
流量において、冷却剤は、シリンダブロックから、ガスケットの制御ギャップを介して、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部から流出できない。
【0045】
任意的には、第1の動作状態にあるとき、シリンダブロックは駆動温度範囲以下の始動温度を有し、バルブおよびガスケット開口部の制御ギャップを用いて冷却剤の流れを制限することにより、シリンダブロックを少なくとも実質的に駆動温度範囲内まで昇温させる。
【0046】
保護を求める本発明に係るさらに別の態様によれば、ガスケット開口部を有するエンジン用ガスケットが提供され、このガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックの間の所定位置にあるとき、制御ギャップを有するように構成されるか、制御ギャップを形成するように構成され、ガスケット開口部は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部との間の流路を形成するような寸法を有して構成され、ガスはガスケットの内部にある開口部を通って自由に通過させる一方、冷却剤はガスケットの内部にある開口部を通って制限的にのみ通過させることができるように、ガスケットは流路を選択的に制限するように配置構成される。
【0047】
任意的には、ガスケットの制御ギャップは、上壁、下壁、および側壁を有し、制御ギャップの高さは、上壁と下壁の間の距離で定義され、制御ギャップの高さは、特定の動作温度にあるとき、上壁と下壁の間を通過する冷却剤の粘性抵抗力が、ガスケット開口部からシリンダヘッドの内部にあるボア開口部へ流出する冷却剤の流れを防止し、少なくとも極力抑えるような寸法を有する。
【0048】
任意的には、制御ギャップの高さは、約0.7mm以下である。
【0049】
任意的には、制御ギャップの高さは、約0.2mm〜約0.7mmの間である。
【0050】
任意的には、制御ギャップの最大高さは、約0.3mmである。
【0051】
任意的には、制御ギャップの上壁は、シリンダヘッドまたはガスケットの上層により構成され、制御ギャップの下壁は、シリンダブロックまたはガスケットの下層により構成される。
【0052】
任意的には、ガスケットは、少なくともガスケット開口部の近傍において3層以上からなり、第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、制御ギャップの上壁はシリンダヘッドにより構成され、制御ギャップの側壁は第1の層により構成され、制御ギャップの下壁は中間材料層により構成される。
【0053】
任意的には、ガスケットは、少なくともガスケット開口部の近傍において3層以上からなり、第1の層は中間層の上方に配置され、中間層は第2の層の上方に配置され、制御ギャップの上壁は中間材料層により構成され、制御ギャップの側壁は第2の材料層により構成され、制御ギャップの下壁はシリンダブロックにより構成される。
【0054】
任意的には、ガスケット開口部は2つの領域を有し、一方または両方の領域は、シリンダヘッドの内部にあるボア開口部とシリンダブロックの内部にあるボア開口部の相対的な配置位置に無関係に制御ギャップとして機能し、第1の制御ギャップは、第1の層により構成された側壁と、中間材料層により構成された下壁とからなり、第2の制御ギャップは、中間材料層により構成された上壁と、第2の材料層により構成された側壁とからなる。
【0055】
任意的には、ガスケットは、第1および第2の材料層からなり、第1の材料層は第2の材料層の上方に配置され、制御ギャップの側壁は第1の材料層により構成され、制御ギャップの下壁は第2の材料層の上側表面により構成される。
【0056】
任意的には、ガスケットは、第1および第2の材料層からなり、第1の材料層は第2の材料層の上方に配置され、制御ギャップの上壁は第1の材料層の下側表面により構成され、制御ギャップの側壁は第2の材料層により構成される。
【0057】
任意的には、ガスケット開口部は、上側部分および下側部分を有し、ガスケット開口部の形状は、上側部分および下側部分の一方または両方において、シリンダブロックの内部にある少なくとも1つのボア開口部とシリンダヘッドの内部にある少なくとも1つのボア開口部とを流体連通させるために、ほぼ細長い形状を有する。
【0058】
任意的には、ガスケット開口部の上側部分または下側部分の一方だけが細長く、ガスケット開口部の他方の下側部分または上側部分は、シリンダブロックまたはシリンダヘッドの内部に設けたボア開口部と連通し、制御ギャップの幅より実質的に小さい幅を有し、および/またはほぼ円形の断面形状を有する。
【0059】
任意的には、制御ギャップの断面形状は、少なくともほぼだ円である。
【0060】
任意的には、制御ギャップは、2つの平行で直線的な辺と、2つの対向する半円端部とからなる断面形状を有する。
【0061】
任意的には、制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも2倍である。
【0062】
任意的には、制御ギャップの幅が、制御ギャップの高さの少なくとも10倍である。
【0063】
任意的には、制御ギャップの幅が、約3mm〜約5mmである。
【0064】
任意的には、制御ギャップの幅が、約4mmである。
【0065】
保護を求める本発明に係るさらに別の態様によれば、車両に搭載されたプログラムが提供され、このプログラムは、上記段落にて説明した方法を実行するものである。
【0066】
本願の範囲において、上記段落、クレーム、および/または以下の詳細な説明、および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、特徴、および変形例は、独立して、または任意に組み合わせて採用できることが想定される。たとえば実施形態に関連して説明した特徴は、特に矛盾するものでなければすべての実施形態に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
添付図面を参照しながら、本発明に係る1つまたはそれ以上の実施形態を単なる具体例として以下説明する。
【
図1】ガスケットの一部を示す平面図であって、ガスケットの線図はシリンダブロックを示す線図の上にシリンダヘッドを示す線図を重ね合わせて示し、シリンダヘッドを示す線図はガスケットの上に重ね合わせて示したものである。
【
図1A】
図1の拡大断面図であって、シリンダヘッドの鋳造ボアに対する開口部およびシリンダブロックの鋳造ボアに対する開口部と少なくとも部分的に重なり合うガスケット開口部を示す。
【
図2】
図1のガスケットの一部の拡大平面図である。
【
図3】シリンダヘッドおよびシリンダブロックの一部の間に配置された
図1、
図1A、および
図2に示すガスケットの概略的な断面図である。
【
図4】シリンダヘッドおよびシリンダブロックの一部の間に配置された
図1、
図1A、および
図2に示すガスケットの別の概略的な断面図である。
【
図5A】さらに別の実施形態に係る二重層のガスケットのガスケット開口部および制御ギャップを概略的に示す断面図である。
【
図5B】さらに別の実施形態に係る単一層のガスケットのガスケット開口部および制御ギャップを概略的に示す断面図である。
【
図5C】さらに別の実施形態に係る三重層のガスケットのガスケット開口部および制御ギャップを概略的に示す断面図である。
【
図5D】さらに別の実施形態に係る三重層のガスケットのガスケット開口部および制御ギャップを概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の態様に係るガスケットを用いた本願開示内容の任意的な態様に係る温度管理システムの概略図である。
【
図6A】第2の流路を通って流れる冷却剤の流れを追加的に強調した
図6の概略図である。
【
図6B】第2および第3の流路を通って流れる冷却剤の流れを追加的に強調した
図6の概略図である(シリンダブロックからシリンダヘッドに流れる冷却座の流れを示すボア30内の追加的な矢印を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の特定の実施形態に係る温度管理システム(温度制御システム)、ガスケット、およびそのシステムを備えた車両について、以下詳細に説明する。理解されるように、開示された実施形態は、本発明に係る特定の態様が実現される単なる具体例であり、本発明を具現化できるすべての実施例の網羅的なリストを示すものではない。実際のところ、理解されるように、本願明細書で開示された温度管理システム、ガスケット、およびそのシステムを備えた車両は、さまざまな択一的な態様で具現化することができる。図面は、必ずしも同一縮尺比で表されておらず、特定の構成部品が誇張されて、または極力抑えられて表されている。本願開示内容が曖昧となることを避けるために、既知の構成部品、材料、または方法については、必ずしも詳細には説明しない。任意の特定の構造的および機能的な詳細内容は、本発明を制限するものと解釈されるべきでなく、クレームのための基本例、およびさまざまな手法で本発明を実施できるように当業者に教示するための代表的な基本例と解釈されるべきである。
【0069】
図1〜
図4を参照して、例示した実施形態に係るガスケット112を説明する。
図1は、ガスケット112の一部を線画で示し、内燃エンジン(図示せず)のシリンダブロック116およびシリンダヘッド110の輪郭を示す。
図2は、ガスケット112の一部の上部から見た図を示し、
図3および
図4は、シリンダブロック116の一部とシリンダヘッド110の一部との間に配設されたガスケット112の概略的な断面を示す。シリンダブロック116は、流路144の1つまたはそれ以上のネットワークから構成されるウォータジャケット144(水被膜部、
図4参照)を備え、ウォータジャケットは、シリンダブロック内に鋳造され、シリンダ114の周囲に配置される。ウォータジャケット144は、温度制御流体(たとえばクーラント、水、またはクーラントと水の混合物)を保持することができる流路のネットワークを提供する。(
図6、
図6A、および
図6Bは、破線で追加的な流路44を示し、流路44が配置される平面と、
図6、
図6A、および
図6Bの概略的な断面図で示すように、シリンダブロック116が通る平面とは必ずしも同一面にはないことを示す。)
【0070】
ガスケット112は、任意的には1つまたはそれ以上の層を有し、
図1〜
図4に示すガスケット112において、上方外側層112a、中間層112b、および下方外側層112cからなる3つの層を有する。層112a,112b,112cは、同一の材料または異なる材料で形成してもよい。ガスケット112は、一連のシリンダ開口部132と、シリンダブロック116内に形成されるシリンダ114の周囲を封止するためのシーリング部材(封止部材)118とを有する(シーリング部材118については
図2を、シリンダ114については
図4を参照されたい。)外側層112a,112cのうちの一方または両方は、圧力により変形可能であり、その層構造(V状断面構造)によりシリンダ114の周囲を封止することができる。ガスケット112は、たとえばガスケットを貫通するように一体に成形された孔または開口(図示せず)等、ガスケット112をシリンダヘッド110および/またはシリンダブロック116に固定する手段を有し、こうした孔または開口にボルトまたはその他の機械的な固定部品を挿入することができる。任意的には、ガスケット112は、シリンダブロック116内の主要クーラント流路とシリンダヘッド110内の主要クーラント流路とを連通させるために設けられた1つまたはそれ以上のクーラント開口部135を有する。任意的には、ガスケット112は、1つまたはそれ以上のオイル流路開口部135bを有する。
【0071】
さらにガスケット112は、1つまたはそれ以上のガスケット開口部123を有する。ガスケット開口部123は、鋳造プロセス中にシリンダブロック116内に形成された「冗長な」鋳造レッグすなわち鋳造ボア145のボア開口部と、シリンダヘッド110内に形成された「冗長な」鋳造レッグすなわち鋳造ボア130のボア開口部131とを連通させるように配設されている。「冗長な」鋳造レッグ鋳造ボア145,130は、鋳造プロセスを用いて製造したシリンダヘッド110およびシリンダブロック116の製造時に形成される。「冗長な」鋳造レッグすなわち鋳造ボア145,130は、鋳造プロセスの結果として形成され、冷却システムまたはウォータジャケット144の流路と流体連通することができる。したがって、シリンダブロック116内のボアまたは孔145は、クーラントおよび/またはガスを含むことができる。
【0072】
ガスは、シリンダブロック116内のボアすなわち鋳造レッグ145内に集まり、滞留することを防止することができ、本願開示内容に記載のガスケット112内に有利に設けられたガス開口部123を介して、ガスを排出することができる。ガスがシリンダ114内に漏れることを防止するために、ガスをシリンダヘッド110内に直接的に制御しつつ排出することができる。したがって、1つまたはそれ以上のガスケット開口部123は、シリンダブロック116内に形成された鋳造レッグ開口部146と、ガスをシリンダヘッド110内に形成された鋳造レッグ開口部131との間の流体連通を実現し、好適には、ガスがシリンダブロック116からシリンダヘッド110へ自由に流れるような寸法、形状、および構造を有する。ガスケット112は、冗長な鋳造レッグすなわち鋳造ボア145と冗長な鋳造レッグすなわち鋳造ボア130を連通する制限流路を実現する。このようにガスケット112を用いて、シリンダブロック116の冗長な鋳造レッグすなわち鋳造ボア145から出て、シリンダヘッド110の冗長な鋳造レッグすなわち鋳造ボア130に入る流体(ガスおよび液体)のフローを制御および管理することができる。
【0073】
製造時、シリンダブロック116の鋳造レッグ145およびその開口部146の寸法、形状、および配置位置は、製造公差範囲内に入る。製造されたシリンダブロック116の鋳造レッグ145およびその開口部146の正確な寸法、形状、および配置位置は、製造後まで知ることはできない。同様に、シリンダヘッド110の鋳造レッグ130およびその開口部131の寸法、形状、および配置位置は、製造公差範囲内に入るが、シリンダヘッド110の鋳造レッグ130およびその開口部131の正確な寸法、形状、および配置位置は、製造後まで知ることはできない。したがって、シリンダヘッド110の開口部131は、シリンダブロック116の開口部146の上方に正確に位置合わせ、または重ね合わせることができない。実際のところ、シリンダヘッド110の開口部131とシリンダブロック116の開口部146は、互いに位置ずれし、部分的にのみ重ね合わされるか、まったく重ね合わされないことがある。有利にも、本願開示内容に記載のガスケット112には、細長い形状を有するガスケット開口部123が設けられ、このガスケット開口部は、有益にも(これらの鋳造レッグの両方が製造時の公差範囲内で製造された場合)、鋳造レッグ130,145の寸法、形状、および配置位置に関係なく、シリンダブロック116の鋳造レッグ145とシリンダヘッド110の鋳造レッグ130との間における流体連通を実現するものである。これは、
図1および
図1Aに図示され、ガスケット112の細長い開口部123は、シリンダヘッド110のほぼ円形形状の開口部131およびシリンダブロック116の開口部146(一点鎖線で図示)に重複する(または重なり合う)ように図示されている。ガスケット112のガスケット開口部123の通常形状が細長く、および/または形状が延伸する(たとえば実質的な長だ円)ことに起因して、開口部123は、シリンダブロック116およびシリンダヘッド110の(位置合わせされず)位置ずれが生じる可能性のある開口部146,131の間における流体連通を実現することができる。
【0074】
さらに
図3を参照すると、ガスケット112の開口部123は、制御ギャップ120を有し、制御ギャップは、上壁103、下壁105、側壁106a,106bにより構成される。制御ギャップ120の高さxは、上壁103と下壁105の間の(最大、最小、または平均の)距離として定義される。特定の動作温度およびクーラント
流量において、上壁103と下壁105の間に流れるクーラントの粘性抵抗が、ガスケット開口部123の上側部分107からシリンダヘッド110の孔130内へのクーラントフロー(流れ)を防止または少なくとも極力抑えるのに十分となるように、制御ギャップ120の高さxが寸法設計される。制御ギャップ開口部123は幅yを有してもよい(
図3)。任意的には、幅yは約2mm〜約6mmの範囲であってもよく、好適には、ただし任意的には、約4mmであってもよい。任意的には、ガスケット112の制御ギャップ120の断面形状は、2つの平行で直線的な辺および2つの半円形の端部で構成されている。
【0075】
ここで制御ギャップ120の構造を考えると、(制御ギャップ120は細長いことが好ましく、任意的には実質的に長だ円の断面形状を有するので)、高さより実質的に長く、薄い「トンネル」が形成されることが好ましい。こうしてクーラントの薄い層が制御ギャップ120の硬い壁の間に流れ、粘性抵抗力は、極めて大きくなり、制御ギャップ120に流れるクーラントを制限し、クーラントがシリンダヘッド110の鋳造レッグすなわち鋳造孔130に到達することを防止することができる。
【0076】
図示した実施形態において、制御ギャップ120の上壁103は、シリンダヘッド110により構成されている。別の実施形態では、上壁は、ガスケット112の上側層により構成される。
図3に示す実施形態では、制御ギャップ120の下壁105は、ガスケット112の中間層112bにより構成されている。別の実施形態では、下壁は、シリンダブロック116またはガスケット112の下側材料層により構成される。好適には、ただし任意的ではあるが、図示したように、ガスケット112は、3つまたはそれ以上の層112a,112b,112cで構成されている。ガスケットの全体的構成は、好適には一様なマルチレイヤ(複数層)構造を有するが、別の想定される実施形態では、ガスケットは、少なくともガスケット開口部123に近接した位置においてマルチレイヤ構造を有する。第1の層112aは、中間層112bの上方に配設され、中間層112bは、第2の層112cの上方に配設されている。制御ギャップ120の上壁103は、シリンダヘッド110により構成され、制御ギャップ120の側壁106a,106bは、第1の層112aにより構成され、制御ギャップ120の下壁105は、中間材料層112bにより構成されている。
【0077】
ガスケット開口部123は上側部分107と下側部分108とを含み、シリンダブロック116に設けられた少なくとも1つのボア開口部146と、シリンダヘッド110に設けられた少なくとも1つのボア開口部131とを流体連通させるために、上側部分107と下側部分108の一方または両方におけるガスケット開口部123の形状は、一般に細長い。このように、シリンダブロックの開口部146およびシリンダヘッドの開口部131の正確な配置位置とは関係なく、ガスケット開口部123は、一対の開口部146,131を連通させるように形成され、配置構成される(ただし、シリンダヘッド110の開口部131およびシリンダブロック116の開口部146が予定された製造公差範囲内で製造される必要はある。)。
図3に示す構成において、ガスケット開口部123の上側部分107は、その形状が細長い。ガスケット開口部123の下側部分108は、シリンダブロック116の鋳造レッグ開口部146に連通するように構成され、制御ギャップ120の幅yより実質的に小さい幅を有する。任意的には、鋳造レッグ開口部146は、ほぼ円形の断面形状を有する。想定されるように、別の実施形態では、ガスケット開口部123を対向するように構成してもよい。想定されるように、こうした実施形態では、ガスケット開口部123の下側部分108の形状は細長く、ガスケット開口部123の上側部分107は、シリンダヘッド110の鋳造レッグ開口部130と連通するように構成されるものであるが、制御ギャップ120の幅yより実質的に小さい幅を有し、ほぼ円形の断面形状を有してもよい。
【0078】
使用時、ガスケット112の外側層112cは、シリンダヘッド110とシリンダブロック116の間に配置されたとき(このときガスケット112は有効なシーリングを構成することができる。)、いくぶん圧縮される(すなわち形状が変化する)ように構成してもよい。ただし、ガスケット112のもう一方の外側層および/またはガスケット112の中間層112bは、圧縮されないことが好ましい。このようにして、制御ギャップ120の高さxを維持し、好適には約0.7mm以下に維持される。任意的には、外側層112a,112cおよび中間層112bのすべてをスチール(鋼)で構成してもよく、圧縮されない。
【0079】
さらに図示された実施形態に係るガスケット212の開口部223の制御ギャップ220が
図5Aの断面図に図示されており、二重層ガスケット212からなる制御ギャップ220が概略的に図示されている。制御ギャップ220は、シリンダヘッド(図示せず)の直近に配置された上方外側層212aに形成されている。ガスケット開口部223は、第1の材料層212aと第2の材料層212bとを有する。第1の層212aは、第2の層212bの上面上に配置され、制御ギャップ220の上壁203がシリンダヘッドにより構成され、制御ギャップ220の側壁206a,206bが第1の材料層212aにより構成され、制御ギャップ220の上壁203が第2の材料層212bの上面により構成されている。
【0080】
任意的には、他の想定される実施形態では、ガスケットが第1および第2の材料層からなり、第1の層が第2の層の上に配置され、制御ギャップの上壁が第1の材料層の下面により構成され、制御ギャップ220の側壁が第2の材料層により構成され、制御ギャップの下壁がシリンダブロックにより構成される。
【0081】
図5Bにおいて、単一層ガスケット312が概略的に図示されており、制御ギャップ320は、単一層ガスケット312内に一体化した凹部として形成されている。任意的には、ガスケット312は、単一材料層312aを有し、制御ギャップ320の上壁303がシリンダヘッドにより構成され、制御ギャップ320の下壁305が単一材料層の凹部により構成される。
【0082】
別の想定される実施形態では、ガスケットは、単一材料層を有し、制御ギャップの上壁が単一材料層の凹部により構成され、制御ギャップの下壁がシリンダブロックにより構成される。
【0083】
図5Cにおいて、別の想定される変形例に係るガスケット312が図示されており、このガスケット312は、複数の制御ギャップを有し、とりわけ2つの制御ギャップ320a,320bを有する。上側制御ギャップ320aは、マルチレイヤ(複数層)構造のガスケット312の上方外側層312a内に形成されている。下側制御ギャップ320bは、マルチレイヤ(複数層)構造のガスケット312の下方外側層312c内に形成されている。複数の制御ギャップ320a,320bを設けることにより、シリンダブロック316の鋳造レッグ345からシリンダヘッド310の鋳造レッグ330へのクーラントのフロー(流れ)を制限するガスケット312の機能を向上させることができる。別の想定されるガスケット構成では、複数の制御ギャップが設けられ、マルチレイヤ構造のガスケットの最も外側の層に配置されてもよいし、配置されていなくてもよい。
【0084】
図5Dでは、さらに別の想定される変形例に係るガスケット412が図示されており、制御ギャップ420の複数の表面が処理され、無秩序化され、凸凹にし、不規則に形成し、粗面化し、制御ギャップ420内のクーラントのフロー(流れ)をさらに制限するように成形または仕上げられている。任意的には、制御ギャップ420の底面405は(3層構造における中間層412bの上面により構成されるものであってもよい)、均一の大きさおよび分布を有するか、もしくは有さない一連のランプ(こぶ)またはバンプ(突起)を有する。これらのランプ(こぶ)またはバンプ(突起)は、摂動部ともいい、クーラントの温度が低い場合、および/またはクーラントの
流量が小さい場合、エンジンおよび1つまたはそれ以上のエンジン部品が最適動作温度範囲まで(摂動部を有さない場合に比して)より迅速に十分にウォームアップされる(温められる)ように、制御ギャップ420のフロー(流れ)を抑制するように作用する。
【0085】
駆動に伴いエンジンブロック116の温度が上昇し、許容可能な動作範囲内にエンジン温度を維持するために冷却システムが必要となる。エンジンを冷えた状態から始動するとき、エンジン内の潤滑液(たとえばシリンダ114内で移動するピストンの周囲に配置されたオイル162等、
図4参照。)は、その温度があまりに低く、効率的または最適な状態で動作させることはできない。この理由およびその他の理由から、エンジンを迅速にウォームアップできることが好ましい。典型的には、エンジンが始動するとすぐに、冷却システムは作動するので、エンジンは直ちに冷却されることになる。しかしながら、最適な駆動温度に達するまでの十分な時間が経過するまで、冷却システムが十分に動作することを遅らせることが好ましい。これを実現するために、クーラントの流れを遅延または抑制し、水通路開口部135を閉じて遮断し、または制限することができる。さらに、エンジンをより迅速にウォームアップできるように、制御ギャップ120を用いて、鋳造ボア開口部146,131を自由に流れるクーラントを制限的に制御することが有利である。クーラントの自由な流れを制限することにより、クーラントは、シリンダブロック116内に滞留し、エンジン駆動により加熱される。したがって、エンジン内の潤滑液および他のエンジン部品は、より迅速にウォームアップすることができる。エンジンが十分な駆動温度(その温度はエンジン設計によって異なる)になるまでウォームアップすると、クーラントは再び自由に流れることができ、エンジン温度を安全な温度範囲内に制御し、維持するように冷却システムを効率的に機能させるためには、クーラントの自由な流れが必要となる。この時点で、ガスケット112内の制御ギャップ120はクーラントの流れを許容する。
【0086】
ウォームアップ段階中にクーラントの流れを制限するために、本願開示内容に記載のガスケット112は、有利にも、制御ギャップ120を有する。制御ギャップ120は、ガスケット開口部123内に形成される。制御ギャップ120は、クーラントの自由な流れを抑制する比較的に薄い流路を画定する。制御ギャップ120の上壁103および下壁105の硬い表面により画定された境界面は、クーラント液が制御ギャップ120の上壁103および下壁105を通過しようとするとき、クーラント液の粘性抵抗力に起因する効果をクーラントの流れにもたらす。エンジンの温度が低いとき、クーラント液の粘性は十分に高く、その粘性抵抗力は、クーラント液を制御ギャップ120内に保持し、(鋳造レッグまたは鋳造孔130を介した)シリンダヘッドへの自由な流れを制限する上で十分に大きい。ガスの粘性は、十分に小さく、開口部123に形成された制御ギャップ120を介して自由に通過することができるので、ガスの任意の
流量および温度において、開口部123を介してシリンダヘッド110の鋳造レッグ130から排気することができる。より高い温度では、クーラントの粘性は低減し、クーラントの流れの性質も同様に変化し、クーラントは制御ギャップ120の中を自由に流れることができる。これは、クーラントが制御ギャップ120を通って流れるのに十分な温度に達すると、エンジンが「ウォームアップ」され、駆動温度に達するためであるので有利なことである。
2つの極端な場合(クーラントが制御ギャップ120の中をまったく流れない場合と、制御ギャップ120を通って自由に流れる場合)の間において、ある程度のクーラントが制御ギャップ120から漏れ出すことはあるが、それでもクーラント液の流れが実質的に制限されるので、エンジンはより迅速にウォームアップすることができる。
【0087】
本願開示内容に係るさらに別の実施形態では、温度管理システム100が提供される。可能ならば同様の参照符号を用いて上記説明し、上述の符号で引用した構成要素を図示する。ただし、明細書の先の部分で上記説明した構成要素と、以下説明する冷却システムの構成要素とを区別するために、参照符号は先のものから「100」を差引いたものを用いることがある。
【0088】
図6は、車両(図示せず)の内燃エンジン(一部のみ図示)のための温度管理システム100を概略的に示す。温度管理システム100のほとんどの動作状態において、温度管理システム100は冷却システムとして機能する。ただし、第1の動作モード中(すなわちエンジンのウォームアップ段階中ともいう。)、温度管理システム100が冷却システムとして機能することは好ましくなく、温度管理システム100は、初期の始動段階時では、温度維持システムまたは加熱システムとして機能することが有利である。本願明細書を通して、冷却システム100と温度管理システム100の用語は、置換可能に用いられるが、理解されるように、適当な場合には、冷却システム100は、温度維持システムおよび/または加熱システムも同様に含むものと解釈されるべきである。
【0089】
温度管理システム100は、内燃エンジンのシリンダブロック16(ブロックともいう。)およびシリンダヘッド10(ヘッドともいう。)の内部で用いられ、これと一体に形成される。シリンダブロック16および/またはシリンダヘッド10はそれぞれ鋳造部品であってもよく、任意的にはアルミニウムで鋳造されたものであってもよい。シリンダブロック16は、ピストンロッド42に連結されたピストンを収容するための1つまたはそれ以上のシリンダ14を有する(図示された実施例では、4つのシリンダがインライン4気筒構成すなわち直列4気筒構成に配置され、別の実施形態では他の構成およびピストン数が想到される。)。ピストン60は(広く知られているように)、たとえばオイル等の潤滑剤62に支援されて、シリンダ14内を移動でき、潤滑剤はピストン60の周囲に保持され、任意的には1つまたはそれ以上のピストンリング(図示せず)により保持されている。
【0090】
第1の動作状態すなわちウォームアップ段階中、内燃エンジンは十分な量の熱を生成していないので、エンジン構造を保護するために、シリンダブロック16および/またはシリンダ14および/またはシリンダヘッド10を冷却する必要はない。内燃エンジンのための既知の冷却システムにおいて、冷却システムはエンジンにより駆動され、エンジンが始動するとすぐに冷却システムとして機能する。しかしながら、有利なことに、本発明に係るシステム100は、ウォームアップ段階中、温度管理システムにより、エンジンブロック16およびその構成部品(たとえば潤滑剤62)が燃料の燃焼で生成される熱エネルギを保持し、シリンダをたとえば約70℃〜約90℃の最適な駆動温度に維持することができるように構成されている。
【0091】
これを実現するために、温度管理システム100は、(上述したような)制御ギャップ20を有するガスケット12を備え、ガスケットは、少なくともウォームアップ段階中、1つまたはそれ以上の鋳造レッグ、鋳造孔、または排出孔130からのクーラントの流出を制限するように構成されている。このシステム100は、異なる
流量を出力するよう構成された制御可能なポンプ40を備える。
【0092】
ポンプ40は、ウォームアップ段階中、小さいまたはゼロの
流量を出力するように制御可能である。ポンプ40は、これにより出力される
流量が徐々に(たとえば段階的に、またはほとんど連続的に変化する程度に頻繁に段階的に)増大するように制御することができる。このようにポンプ40は、ウォームアップ状態と最大冷却状態の間で、制御可能で漸次的に調整することができる。ウォームアップ状態と最大冷却状態の間で、ポンプ40は、これらの状態の範囲で制御可能であってもよい。ポンプ40は、ウォームアップ状態にあるとき、ゼロまたは小さい
流量を出力する。ポンプ40は、最大冷却状態にあるとき、最大の
流量を出力する。このようにポンプ40は、少なくとも2つの異なる
流量で動作するように構成され、たとえばポンプ周波数または(往復運度ポンプの場合)ピストンストロークの長さを調整し、あるいはモータ速度を調整することにより、(遠心ポンプ40のブレードまたはパドルの上方に配置されたスリーブを用いて)ポンプを物理的に遅延させて、異なる
流量で動作する。こうして、ポンプ40から出力される
流量を制御することができる。
【0093】
有利にも、
流量が小さいとき、ガスケット12,112,212,312,412の制御ギャップ20,120,220,320,420を通過しようとするクーラントの粘性抵抗力の効果は、調整可能なポンプ40から出力される小さい
流量とともに増大し、制御ギャップ20,120,220,320,420は、クーラントがガスケット12,112,212,312,412を通ってシリンダブロック116からシリンダヘッド110へ流れることを制限することに対して相乗効果を呈する。
【0094】
図6をより詳細に参照すると、(典型的にはクーラント液の態様にある)クーラントがポンプ40からシリンダブロック16へ供給できるように、図示された温度管理システム100は、シリンダブロックに設けられた第1のインレット(入口)46を有する。シリンダブロック16は、この図示された実施形態では、シリンダブロック16内に形成された1つまたはそれ以上のウォータジャケット通路44に接続された1つまたはそれ以上の孔または鋳造レッグ45を有する。第1のアウトレット(出口)52が設けられ、任意的には、第1のインレット46に対してシリンダブロック16の対向側面に設けられる。クーラントは、1つまたはそれ以上のウォータジャケット通路44から出て、アウトレット52から出ることができる。バルブ54を第1のアウトレット52に隣接して設け、閉口状態において、バルブ54は、ポンプ40から、シリンダブロック16内の1つまたはそれ以上のウォータジャケット通路44を介して閉口バルブ54まで延びる流路を中断させることができる。この流路を第1の流路102という。
【0095】
シリンダヘッド10は、クーラントがポンプ40からシリンダヘッド10を通り、帰還パイプ21を介してポンプ40に戻ることを可能にする別の流路104(第3の流路104という。)を有する。シリンダヘッド10は、クーラントをポンプ40からシリンダヘッド10内に形成されたウォータジャケットに送出できるように設けられた第2のインレット(入口)48および第2のアウトレット(出口)50を有する。また流路104は、1つまたはそれ以上の流出孔すなわち鋳造孔30を有する。
【0096】
ガスケット12は、シリンダヘッド10とシリンダブロック16の間に配置される。ガスケット12は、(上述したように)シリンダ14とバルブ36の周囲をシーリング(封止)するための一連のシール開口部32を有する。制御ギャップ20はそれぞれ、シリンダブロック16の孔またはボア45と、(上述したような)シリンダヘッド10の孔またはボア45との間の制限通路を提供するように構成される。さらに、このシステム100は、温度制御流体から熱を取り除くための熱交換器または放熱器(図示せず)を有してもよい。
【0097】
図6Aおよび
図6Bに示すように、このシステム100は、以下の3つの流路が利用可能であるように構成されている。
i)ポンプ40から、シリンダブロック16への第1のインレット46に入り、シリンダブロック16内に形成された1つまたはそれ以上のシリンダジャケット44を通り、バルブ54で中断する第1の流路102(
図6A参照)。
ii)ポンプ40から、シリンダヘッド10への第2のインレット48に入り、1つまたはそれ以上の孔またはボアまたはレッグ30を通って、第2のアウトレット50を介してシリンダヘッド10から出て、(放熱器を通過する)帰還パイプ21を介してポンプ40に帰還する第2の流路104(
図6Aおよび
図6B参照)。
iii)ポンプ40から、シリンダブロック16への第1のインレット46に入り、シリンダブロック16内に形成された1つまたはそれ以上のシリンダジャケット44を通り、シリンダブロック16の第1のアウトレット52から出て、バルブ54を通り、帰還パイプ21を介してポンプ40に帰還し、1つまたはそれ以上の孔またはボア45を通り、ガスケット23の制御ギャップ20を通り、第2の流路の一部を通ってポンプ40に帰還する第3の流路106(
図6B参照)。
【0098】
ピストン60のシリンダ14内での滑動を支援する上での潤滑剤62の有効性は、少なくとも部分的には潤滑剤の温度により決定される。したがって、初期の始動段階にある期間、たとえば約5分であってもよいが、本願開示内容によれば、潤滑剤62を温め、または加熱することができる。これを実現するためには、初期始動段階中、ウォータジャケット44内のクーラントが流れることを制限する。したがってクーラントは、システム100内で循環するより冷たい温度管理液体と置換されず、温度管理液体が放熱器により冷却されることはない。これを実現するために、バルブ54を閉じ、ポンプ40をより小さい
流量で駆動して、第1の流路102を用いる。バルブ54を閉じているので、クーラントの循環および流れは制限される。さらに、クーラントがシリンダヘッド10内へ流れることを防ぐ点で、ガスケット12の制御ギャップ20は、第1の
流量がより小さいとき、よりいっそう効果的である。これは、
流量(速度)が小さいほど、1つまたはそれ以上の制御ギャップ20内にある温度管理液体の粘性抵抗効果は大きくなり、制御ギャップ20からすべての温度管理液体が流出することを防ぐのに十分に強くなるためである。これにより、ウォームアップ段階中、冷却剤が循環しないため冷却されず、1つまたはそれ以上のウォータジャケット44に含まれる冷却剤が昇温し、少なくとも潤滑剤62に近接する各シリンダ14の周囲において、潤滑剤に対する(冷却ジャケットではなく)保温ジャケットを提供することができる。
【0099】
潤滑剤62が好適な温度に達し、および/または所定の時間(たとえば約5分間)が経過すると、システム100は、クーラントが第2および第3の流路104,106を通ってシステム100の周囲を循環し、放熱器により冷却され、エンジンを冷却するように動作できるように構成される。バルブ54を開いて(開口させて)、第2および第3の流路104,106を用いる。
【0100】
理解されるように、本発明の範疇において、さまざまな変形例が想到され、たとえば
シリンダヘッドの鋳造ボアと、これにほぼ対向してシリンダブロックに配置され、任意的には寸法の異なる鋳造レッグとの間を連通させる制御ギャップの有利な特徴を、独立して、たとえば調整可能に制御されるポンプ等の本発明の他の追加的な有益な態様を用いることなく、利用することができる。
【0101】
さらに、冗長鋳造ボアを連通させるガスケットに対して、制御ギャップに関連付けて、本発明について説明してきたが、理解されるように、本願開示内容に係る制御ギャップは、他のタイプの液体を、他のタイプの流路間で、他のタイプの用途において制限的または選択的に利用することができる。
【0102】
本発明の他の実施形態において、想定されるように、シリンダヘッドおよび/またはシリンダブロックは、たとえばスチール(鋼)等のアルミニウム以外の材料で構成してもよい。本発明の他の実施形態では、想定されるように、シリンダヘッドおよび/またはシリンダブロックは、互いに異なる材料で形成してもよい。
【0103】
他の実施形態において、想定されるように、ガスケット開口部は2つの領域を有し、いずれか一方または両方の領域は、シリンダヘッドにあるレッグ開口部とシリンダブロックにあるレッグ開口部の相対的な配置位置に関係なく、制御ギャップとして機能することができる。たとえばシリンダヘッドの開口部とシリンダブロックの開口部の位置がずれる傾向とは関係なく、第1の制御ギャップは、クーラントの流れを止めるのに効果的であってもよく、または第2の制御ギャップを利用してもよい。想定される実施形態において、第1の制御ギャップは、シリンダヘッドにより構成される上壁と、第1の層により構成される側壁と、中間材料層により構成される下壁とを有し、第2の制御ギャップは、中間材料層により構成される上壁と、中間材料層により構成される側壁と、シリンダブロックにより構成される下壁とを有する。
【0104】
本願明細書で用いられる「ボア」、「鋳造ボア」、「レッグ」、「鋳造レッグ」、「孔」、「流出孔」は、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの内部の形成物を意味する。こうした形成物は、通常、円筒断面形状を有し、その径は、一定または不定であってもよく、中空内部にはガスおよび/またはクーラントが集まるものであってもよい。これらの形成物は、シリンダヘッドおよびシリンダブロックのウォータジャケット(冷却システムの一部を構成する流路ネットワーク)の一部を構成するものでも、構成しないものであってもよい。「ボア」の用語が用いられる文脈において、ピストンが往復運動するシリンダとは異なるものである。シリンダは、シリンダボアまたはピストンボアを意味する場合があるが、いずれの用語もいくつかの文脈において「ボア」と短縮されることがある。
【0105】
理解されるように、本願開示内容に記載のガスケットは、冗長な鋳造ボアである冗長な中空形成物を有する内燃エンジンにおいて有益な実用性を有する。冗長な鋳造ボアは、鋳造金型がレッグ、突起物、または突出物を有し、これらの隆起物が反転して、シリンダヘッドおよび/またはシリンダブロックのボア、孔、中空物等の形成物を形成する。
【符号の説明】
【0106】
103…上壁、105…下壁、106a,106b…側壁、110…シリンダヘッド、112…ガスケット、112a…上方外側層、112b…中間層、112c…下方外側層、116…シリンダブロック、118…シーリング部材(封止部材)、120…制御ギャップ、123…ガスケット開口部、130…冗長な鋳造レッグ(鋳造ボア)、131…開口部、132…シリンダ開口部、135…クーラント開口部、135b…オイル流路開口部、144…ウォータジャケット(流路)、145…冗長な鋳造レッグ(鋳造ボア)、146…開口部。