(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜3は、本発明のドアの第1実施形態を示している。本ドアは、玄関用のドアであって、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1に蝶番15により室外側に開くように取付けた戸2とを備える。戸2は、
図3に示すように、左右方向の中央部に縦長の長方形の採光窓10を備えている。
【0008】
枠1は、アルミニウム合金の押出形材で形成した上枠1aと下枠1bと左右の竪枠1c,1dとを枠組みして形成してある。枠1は、
図1,2に示すように、内周側面の室内側寄りの位置に気密材ホルダー16が内周側に突出して形成してあり、気密材ホルダー16に気密材3が室外側に向けて取付けてあり、気密材3は戸1の室内側面の外周縁部に当接して枠1と戸2の間の隙間を塞いでいる。気密材3は、火災の熱に強い不燃性のものが好ましく、例えば焼結シリコンゴムで形成したもの、火災の熱に反応して発泡膨張する熱発泡性耐火材を用いたものを用いることができる。
【0009】
戸2は、
図1,2に示すように、室外側と室内側の表面に鋼板4a,4bを備え、戸2内部には室外側と室内側の鋼板4a,4b間に挟む形で芯材5が設けてあり、さらに両鋼板4a,4b間には芯材5の周囲を囲むようにスチール製の外周補強材6a,6b,6c,6dが設けてある。芯材5としてはペーパーハニカムを用いており、芯材5は鋼板4a,4bの裏面に接着剤で接着してある。
外周補強材6a,6b,6c,6dは、内周側が開放したコ字形断面の長尺材であり、戸2の外周部を補強している。表裏の鋼板4a,4bは、外周縁部を折り返して外周補強材6a,6b,6c,6dの見込み面に当接し、リベット17で固定してある。吊元側の外周補強材6aは、
図1,4に示すように、見込み面の中央位置にガス抜き孔8が長手方向に間隔をおいて複数(図示のものは5カ所)設けてある。
【0010】
戸2の吊元側の縁部には、
図1に示すように、エッジ材18が戸2の全長に亘って設けてある。エッジ材18はアルミニウム合金の押出形材よりなり、エッジ材18と吊元側の外周補強材6aとの間には、上下方向に連通した隙間19が形成されている。この隙間19内のガス抜き孔8よりも室内側の位置には、熱に反応して発泡・膨張する熱膨張性耐火材9aがエッジ材18の長手方向に沿って設けてある。かかる熱膨張性耐火材9aは、市販品の中から適宜選択して用いることができ、例えば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を用いることができる。これは、プラスチック技術を活用した有機系耐火材であり、通常の状態では薄いシート状で、200℃以上に加熱されると厚さ方向に5〜40倍に膨張し、断熱層を形成する。火災時に消失することがなく、有害ガスが発生することもない。またフィブロックは、片面に剥離紙付きの接着層を有しているので、剥離紙を剥がして簡便に接着取付けできる。
戸2の戸先側の縁部にも、アルミニウム合金の押出形材よりなるエッジ材20が戸2の全長に設けてある。戸先側のエッジ材20は、室外側の端部に煙返し21を外周側に突出して有し、煙返し21により竪枠1dと戸2の間の隙間を室外側から隠している。エッジ材20の見込み面の煙返し21に隣接する位置には、熱膨張性耐火材9bがエッジ材20の長手方向に沿って設けてある。
【0011】
採光窓10は、
図1,2に示すように、表裏の鋼板4a,4bに開口部22a,22bを形成し、開口部22a,22bの縁部に沿って開口部補強枠7を鋼板4a,4b間に設け、開口部補強枠7にガラス(複層ガラス)23を嵌め込んで構成してある。また、開口部22a,22bの周囲を囲むように、戸2の室外側面と室内側面にはモール材24が取付けてある。
開口部補強枠7は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上枠材7aと下枠材7bと左右の竪枠材7c,7cを枠組みして構成され、各枠材7a,7b,7c,7cは内周側が開口したガラス保持溝25を有し、ガラス保持溝25にグレチャン26を介してガラス23の縁部を嵌め込んでいる。ガラス保持溝25内には、ステンレス板をコ字形に折り曲げて形成したガラス間口補強材27がガラス保持溝25の全長に亘って設けてある。ガラス間口補強材27の見付け面の縁部には、グレチャン26と対向するように熱膨張性耐火材9cが全長に設けてある。さらに、ガラス間口補強材27の見込み面の室内側位置にも、熱膨張性耐火材9dが全長に設けてある。開口部補強枠7とガラス間口補強材27は、リベット28により表裏の鋼板4a,4bと固定してある。
さらに開口部補強枠7は、外周側の見込み面の室外側と室内側に突条29が設けてあり、突条29の全長に熱膨張性耐火材9eが鋼板4a,4bの裏面に対向するように設けてある。
【0012】
火災が発生して戸2が熱せられると、芯材5を接着している接着剤より可燃ガスが発生する。戸2の内部で発生した可燃ガスは、吊元側の外周補強材6aにガス抜き孔8が設けてあるので、
図5中に矢印30で示すように、このガス抜き孔8から外周補強材6aとエッジ材18との間の隙間19に出て、可燃ガスは空気よりも軽いため、この隙間19を通って上に上がり、上側の小口から戸2の外部に抜ける。戸2が火災の熱で反り変形したとしても、戸2の吊元側は蝶番15で竪枠1cに拘束されておりほとんど変形しないので、戸2の吊元側と枠1の間は気密材3で塞がれた状態が維持されるから、外周補強材6aとエッジ材18との隙間19から上方に抜けた可燃ガスは室外側に放出され、室内側に侵入することがない。このように本ドアは、火災時に戸2内部で発生した可燃ガスが室内外に貫通することを防ぎ、延焼を効果的に防止できる。
また本ドアは、吊元側の外周補強材6aに沿ってエッジ材18が設けてあり、エッジ材18と外周補強材6a間に上下に連通した隙間19が設けてあるため、ガス抜き孔8から抜けた可燃ガスがこの隙間19を通って上に抜けるので、延焼を防止する効果が高い。さらに、ガス抜き孔8がエッジ材18で隠れるため、意匠性が向上する。
さらに、エッジ材18と外周補強材6a間の隙間19の室内側に熱膨張性耐火材9aが設けてあるため、火災時にエッジ材18が変形しても発泡した熱膨張性耐火材9aがエッジ材18と外周補強材6aとの隙間を塞ぐため、エッジ材18と外周補強材6aの間から室内側に可燃ガスが漏れるのを防ぐことができる。
【0013】
さらに本ドアは、戸2の開口部22a,22bの周囲に配置した開口部補強枠7に熱膨張性耐火材9eを鋼板4a,4bの裏面に対向して備えており、
図5に示すように、火災時にはこの熱膨張性耐火材9eが発泡・膨張して鋼板4a,4bとの隙間を塞ぐため、戸2の内部で発生した可燃ガスが開口部22a,22bから室内側や室内側に噴出するのを防止できる。
さらに、開口部補強材7のガラス保持溝25内に熱膨張性耐火材9c,9dが設けてあり、火災時にはこの熱膨張性耐火材9c,9dが発泡・膨張してガラス保持溝25とガラス23との隙間が塞がれるため、ガラス23の周囲から火炎や煙等が室内外に貫通するのを防ぐことができる。また、ガラス保持溝25内にステンレス製のガラス間口補強材27が設けてあることで、ガラス保持溝25の室外側や室内側の壁が火災の熱で溶けたとしてもガラス23の脱落を防止することができる。
また本ドアは、戸2の戸先側にエッジ材20が取付けてあり、エッジ材20の見込み面に熱膨張性耐火材9bが設けてあるため、火災時に戸2が熱で反って戸先部と竪枠1dとの隙間が広がったとしても、
図5に示すように、前記熱膨張性耐火材9bが発泡して戸先部と竪枠1d間の隙間を塞ぐため、戸先部と竪枠1dの間から火炎や煙等が侵入するのを防ぐことができる。
【0014】
図6〜8は、本発明のドアの第2実施形態を示している。このドアも玄関用のドアであり、戸2には郵便物や新聞等を投函するための投函口11を備えている。ドアの基本的な構成は第1実施形態と同じであり、以下、投函口11周辺の構造について説明する。
【0015】
投函口11は、
図7,8に示すように、表裏の鋼板4a,4bに開口部31a,31bを形成し、開口部31a,31bの縁部に沿って投函口補強枠12を鋼板4a,4b間に設けてある。室外側の鋼板4aの開口部31aには、開閉自在な蓋32が取付けてある。蓋32は、水平軸33により室内側に開くように設けてあり、ねじりバネ34により開口部31aを内側から塞ぐように付勢してある。室内側の鋼板4bの開口部31bには、投函口補強枠12の内周側を囲むように投函口カバー材13が取付けてある。さらに戸2の室内側面には、投函口11より投函された新聞等を受ける受け箱35が取付けてある。
【0016】
投函口補強枠12は、スチールやステンレスの板で形成され、
図7〜9に示すように、上枠部12aと下枠部12bと左右の竪枠部12c,12cとを有している。上枠部12aは、下側が開放したコ字形断面の部材であり、上枠部12aの両端部は戸2の吊元側及び戸先側の外周補強材6a,6bに固定してある。下枠部12bと左右の竪枠部12c,12cは、
図9に示すようにコ字形に一体化して設けられ、上枠部12aにネジ36で連結してある。下枠部12bは、
図7に示すように、室外側に水平な室外側見付け面部37を有し、室外側見付け面部37の室内側に連続して下方に傾斜した傾斜面部38を有している。室外側見付け面部37の室外側の位置には、熱膨張性耐火材9fが全長に設けてある。
【0017】
投函口カバー材13は、ステンレスの板で形成したものであり、
図7〜9に示すように、上カバー材13aと横カバー材13b,13bと下カバー材13cとに分割されている。上カバー材13aは、
図7に示すように、戸2の室内側面にネジ39で固定される見付面部40と、見付面部40の下縁より室外側に水平にのびる室内側見込面部41と、その室外側に外周側に傾斜してのびる傾斜面部42とを備え、傾斜面部42の内周側面(下面)に熱膨張性耐火材9gが設けてある。
横カバー材13bは、
図8に示すように、上カバー材13aと同様に戸2の室内側面にネジ39で固定される見付面部40と、見付面部40の内周側縁より室外側にのびる室内側見込面部41と、その室外側に外周側に傾斜してのびる傾斜面部42とを備え、傾斜面部42の内周側面に熱膨張性耐火材9hが設けてある。
下カバー材13cは、
図7に示すように、見付面部40と、見付面部40の上縁より下枠部12bの傾斜面部38に沿ってのびる傾斜面部43と、傾斜面部43の先端から室外側にのびて下枠部12bの室外側見込面部37と対向する見込面部44とを有しており、見付面部40と傾斜面部43をネジ39で固定している。見込面部44の先端部は、熱膨張性耐火材9fの上に重なっている。
【0018】
以上に述べたように投函口11の内部には、室外側の鋼板4aの開口部31aの周囲を囲むように、上カバー材13aと横カバー材13b,13bと下枠部12bとに熱膨張性耐火材9f,9g,9hがそれぞれ設けてある。火災が発生すると、
図10,11に示すように、これらの熱膨張性耐火材9f,9g,9hが火災の熱により発泡・膨張して、蓋32を室内側から押さえるように開口部31aの周囲を塞ぐ。これにより、投函口11を火炎が貫通するのを確実に防ぐことができ、よって投函口11からの延焼を防止することができる。
【0019】
上側の熱膨張性耐火材9gと横の熱膨張性耐火材9hは、上カバー材13aと横カバー材13bの室内側見込面部41の室外側に外周側に傾斜して設けた傾斜面部42に設けてあるため、室内側から投函口11を覗きこんでも熱膨張性耐火材9g,9hが見えない。また、熱膨張性耐火材9g,9hが投函口11に新聞等を投函するのに邪魔にならず、新聞等が熱膨張性耐火材9g,9hに当たって熱膨張性耐火材9g,9hが脱落することもない。
下側の熱膨張性耐火材9fは、下枠部12bの室外側見込面部37に設けてあり、この熱膨張性耐火材9fを室内側から隠すように下カバー材13cを設けてあるため、室内側から投函口11を覗きこんでも熱膨張性耐火材9fが見えない。また、熱膨張性耐火材9fが投函口11に新聞等を投函するのに邪魔にならず、新聞等が熱膨張性耐火材9fに当たって熱膨張性耐火材9fが脱落することもない。投函口11に投函された新聞等は、下カバー材13cの上を滑って受け箱35に落ちる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。芯材5の材質は任意であり、例えば発泡スチロール等の樹脂で形成したものでもよい。パネル4a,4bと補強材6,7,12の材質は、耐火性を有する金属が好ましいが、特に限定されるものではない。ガス抜き孔8の位置や大きさ、形状、ガス抜き孔8の数は、適宜変更することができる。気密材3は、ガス抜き孔8に対して見込み方向にずれた位置に設けてあればよく、気密材3を設ける位置は適宜変更することができるが、ガス抜き孔8よりも室内側に設けてあるとガス抜き孔8から抜けた可燃ガスが室外に放出され、室内側に侵入しないためより好ましい。気密材3の材質や形状は、特に限定されない。本発明は投函口を備えるあらゆる戸に適用することができ、戸の構造や取付状態は問わない。例えば戸は、表裏の鋼板間に芯材を挟み込んだフラッシュドアに限らず、アルミニウム合金の押出形材等よりなる框を四周框組みし、その内側にガラス等のパネルを嵌め込んだ構造のものでもよい。また戸は、親子ドアの子ドアに投函口を設けたもの、枠に嵌め殺し状に固定したもの、引戸等であってもよい。