(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブロックウレタンプレポリマーを得る工程において、前記芳香族ヒドロキシ化合物を、該芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基が、前記脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して0.9〜1.1モルとなるように添加する、請求項6に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物及びその製造方法、前記樹脂組成物を用いた熱伝導性軟質シート及びその製造方法、並びに、前記熱伝導性軟質シートを用いた放熱構造を詳細に説明する。
【0018】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒を含むものである。前記ブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン系ポリオールとの反応生成物において、前記反応生成物が末端に有しているイソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物によりブロックされており、前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が、水添ポリブタジエン系ポリオール由来の構成単位1モルに対して1.6〜2.8モルのものである。また、前記エポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有し、前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して、前記エポキシ基が0.9〜2.5モルであることを特徴としている。
前記樹脂組成物は、熱伝導性シート製造時に、100℃以下の温度で、硬化することなく、熱伝導性フィラーと混合して適度な粘度で捏和することができ、また、このような粘度を少なくとも6時間保持することができる。このため、熱伝導性フィラーを均一に充填・分散させる上で、適度な粘度で十分な捏和時間を確保することができ、捏和工程におけるハンドリング性に優れている。
【0019】
(樹脂組成物の硬化物)
本発明の樹脂組成物の硬化物は、後述するように、該樹脂組成物を120℃以上に加熱することにより、硬化反応が進行し、硬化物を生成する。
硬化物は、主に2種の架橋重合反応から構成されるゲル状のネットワーク構造を有する。
第1の架橋重合反応は、水添ポリブタジエン系ポリオールと脂肪族ジイソシアネート化合物との反応生成物の末端の、芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされたイソシアネート基が脱ブロック化されて、2量化によるウレトジオン、又は3量化によるイソシアヌレートを生成する多量化反応である。これにより、硬化物には、柔軟性やタック性、ゴム弾性等の特性が付与される。
第2の架橋重合反応は、芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基によるエポキシ化合物のエポキシ基の開環反応である。
さらに、脱ブロック化されたイソシアネート基とエポキシ化合物のエポキシ基との反応による硬化反応も生じる。
これらの反応によって形成された硬化物におけるゲル状のネットワークは、相互侵入高分子網目(IPN:Interpenetrating Polymer Network)構造であると考えられ、該樹脂組成物を用いて、熱伝導性フィラーを多量に含む熱伝導性シートを製造した場合、優れた柔軟性を有し、かつ、優れた耐熱老化性等の耐久性能が得られる。
【0020】
(ブロックウレタンプレポリマー)
前記樹脂組成物に含まれるブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン系ポリオールとの反応生成物において、前記反応生成物が末端に有しているイソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物によりブロックされた構造を有している。前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位は、前記水添ポリブタジエン系ポリオール由来の構成単位1モルに対して1.6〜2.8モルである。
なお、上記のようなプレポリマーは、前記反応生成物の構造を1種の化合物として特定することが困難であることから、該プレポリマーの構造も1種の化合物として特定することは困難であり、反応物を用いた表現で表している。
【0021】
<脂肪族ジイソシアネート化合物>
ブロックウレタンプレポリマーの構成原料であり、水添ポリブタジエン系ポリオールとの反応物であるイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート化合物を用いる。脂肪族ジイソシアネート化合物における「脂肪族」とは、「芳香族」ではないことを意味し、置換基の炭化水素基が、直鎖状、分岐状又は環式であってもよい。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、水添MDIやIPDI等は、立体障害が大きく、イソシアネート多量化反応が生じ難く、多量化のしやすさの観点から、比較的単純な構造であるHDIが特に好ましい。
一方、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトルエンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート化合物は、これらを用いて生成したブロックウレタンプレポリマーのウレタン基の凝集力が強く、溶融温度が高い。このため、硬化反応を生じることなく、プレポリマーの状態を維持して、熱伝導性フィラーと混合して捏和することができる温度範囲が狭く、捏和工程におけるハンドリング性に劣る。さらに、芳香族ジイソシアネート化合物由来のウレタン基は、脂肪族ジイソシアネート化合物由来のウレタン基と比べて、ウレタン基の分解温度が低くなる傾向にあり、十分な耐熱老化性が得られない。
【0022】
前記反応生成物における脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位は、水添ポリブタジエン系ポリオール由来の構成単位1モルに対して1.6〜2.8モルであり、好ましくは1.7〜2.7モル、さらに好ましくは1.8〜2.5モルである。
脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が1.6モル未満の場合は、ブロックウレタンプレポリマーの分子量の増大に伴い、熱伝導性シートの製造時に該樹脂組成物をバインダーとして捏和する際のハンドリング性に劣り、樹脂組成物とフィラーとの均一な混合が困難となる。一方、脂肪族ジイソシアネート化合物が2.8モルを超える場合、イソシアネートの多量化反応による架橋密度の増加に伴い、樹脂組成物の硬化物において十分な柔軟性が得られない。
【0023】
<水添ポリブタジエン系ポリオール>
ブロックウレタンプレポリマーの構成原料であり、前記脂肪族ジイソシアネート化合物との反応物である水添ポリブタジエン系ポリオールは、ブタジエンを原料とし、両末端に水酸基を有するポリオールであって、二重結合残基が水添化されたものである。高分子量のものは、樹脂組成物の硬化物において柔軟性が発現されやすい。一方、低分子量のものは、耐熱性を高めることができる。
水添ポリブタジエン系ポリオールの数平均分子量は、粘度、耐熱性及び入手容易性等の観点から、800〜5000であることが好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した値である。
【0024】
水添ポリブタジエン系ポリオールとしては、例えば、市販品である、GI−3000(数平均分子量3753(カタログ公表値3000))、GI−2000(数平均分子量カタログ公表値2000)、GI−1000(数平均分子量カタログ公表値1000)(いずれも日本曹達株式会社製)等を好適に使用することができる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、GI−3000が特に好ましい。
ポリウレタン原料として一般的に用いられる、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートジオール等は、耐熱老化性、耐湿熱性及び耐熱衝撃性において、水添ポリブタジエン系ポリオールに比べて劣るものであり、いずれも好ましくない。
【0025】
<芳香族ヒドロキシ化合物>
芳香族ヒドロキシ化合物は、前記反応生成物の末端イソシアネート基のブロック剤として用いられる化合物であり、芳香環を有し、該芳香環を構成する1個以上の水素原子が水酸基に置換された芳香族化合物である。芳香環は、ベンゼン環であることが好ましく、さらに、ベンゼン環の2個の水素原子が水酸基に置換されたベンゼンジオールがより好ましい。芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基が末端イソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することにより、前記反応生成物の末端イソシアネート基がブロックされる。
なお、イソシアネート基のブロック剤には、アミン系化合物もあるが、これは、エポキシ化合物との反応性が高く、ブロックウレタンプレポリマーが容易に硬化しやすくなるため、好ましくない。
【0026】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的には、フェノール、1−クレゾール、2−クレゾール、3−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−プロポキシフェノール、3−プロポキシフェノール、4−プロポキシフェノール、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノール)、1,4−ベンゼンジオール、1,3,5−ベンゼントリオール、4−tert−ブチルカテコール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、レゾルシノールが特に好ましい。レゾルシノールは、イソシアネート基をブロック化した後に脱ブロック化する温度が120℃程度と比較的低いため、イソシアネート基とエポキシ化合物のエポキシ基との反応により樹脂組成物を硬化させる際に、容易に脱ブロック化することができる。
【0027】
(エポキシ化合物)
本発明で用いるエポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有するものであり、好ましくは2〜5個であり、かつ、平均2.5個以上である。エポキシ基が1個では、樹脂組成物の硬化によりゲル状のネットワークを形成することが困難である。一方、7個以上の場合は、柔軟性を有する好適なゲル状のネットワークを形成することが困難である。
また、前記エポキシ化合物のエポキシ基は、前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して0.9〜2.5モルであり、好ましくは0.9〜2.2モル、より好ましくは1.0〜2.0モル、さらに好ましくは1.0〜1.2モルである。エポキシ基が0.9モル未満の場合、耐熱老化性に劣る傾向が見られる。一方、2.5モルを超える場合、樹脂組成物の硬化物が柔軟性に劣るものとなる。
【0028】
前記エポキシ化合物は、樹脂組成物の硬化により好適なゲル状のネットワークを形成させるためには、多官能であり、かつ、構造がコンパクトであることが好ましい。このような観点から、分子量が600未満であり、かつ、エポキシ当量が200g/eq未満であることが好ましい。分子量は、200〜500であることがより好ましく、さらに好ましくは300〜450である。
また、樹脂組成物における他の反応物との相溶性や、耐熱老化性、耐湿熱性及び耐熱衝撃性の観点から、グリシジルアミン型エポキシ基を有する化合物が好適に用いられる。具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンが特に好ましい。
【0029】
(硬化触媒)
前記樹脂組成物における硬化触媒は、前記反応生成物のブロックされているイソシアネート基の脱ブロック化を行い、イソシアネート多量化反応を促進するとともに、エポキシ化合物のエポキシ基と芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との反応を促進するものである。
【0030】
前記硬化触媒としては、第四級アンモニウム塩が好適に用いられ、より好ましくはテトラアルキルアンモニウム塩が用いられる。
具体的には、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、テトラエチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、エチルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、テトラメチルアンモニウムギ酸塩、テトラエチルアンモニウムギ酸塩、エチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、トリエチルメチルアンモニウムギ酸塩、テトラメチルアンモニウムフェノール塩、テトラエチルアンモニウムフェノール塩、エチルトリメチルアンモニウムフェノール塩、トリエチルメチルアンモニウムフェノール塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩が特に好ましい。
硬化触媒の添加量は、ブロックウレタンプレポリマーとエポキシ化合物の合計量に対して、0.1〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.9質量%、さらに好ましくは0.3〜0.6質量%である。
【0031】
(添加剤)
前記樹脂組成物には、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒以外に、該樹脂組成物の硬化物の使用目的や求められる特性に応じて、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。これらの添加剤は、樹脂組成物中において他の成分との相溶性を有しているものが好ましい。各添加剤は、必要に応じて任意に添加されるものであり、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、縮合リン酸エステル等が挙げられる。難燃剤の添加量は、ブロックウレタンプレポリマーとエポキシ化合物の合計量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜12質量%である。
可塑剤としては、例えば、キシレン系樹脂、流動パラフィン、エステル系等の可塑剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。
可塑剤や酸化防止剤等の各添加量は、ブロックウレタンプレポリマーとエポキシ化合物の合計量に対して、0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.7〜8質量%、さらに好ましくは0.8〜5質量%である。
なお、樹脂組成物のうち、溶剤を除く含有成分中のブロックウレタンプレポリマーとエポキシ化合物の合計量は、樹脂組成物の硬化物が優れた特性を発揮できるようにする観点から、75〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは85〜100質量%である。
【0033】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の製造方法により好適に製造することができる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記脂肪族ジイソシアネート化合物と前記水添ポリブタジエン系ポリオールとを、ウレタン化触媒存在下で反応させて、末端にイソシアネート基を有する前記反応生成物を得る工程(1)と、前記反応生成物に前記芳香族ヒドロキシ化合物を添加し、イソシアネート基のブロック化反応を行い、前記ブロックウレタンプレポリマーを得る工程(2)と、前記ブロックウレタンプレポリマーに、少なくとも、前記エポキシ化合物及び硬化触媒を配合し、前記樹脂組成物を得る工程(3)とを経るものである。
【0034】
(工程(1))
工程(1)においては、脂肪族ジイソシアネート化合物と水添ポリブタジエン系ポリオールとを、ウレタン化触媒存在下で反応させて、末端にイソシアネート基を有する反応生成物を得る。
【0035】
<ウレタン化触媒>
工程(1)で得られる反応生成物は、脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基と水添ポリブタジエン系ポリオールの両末端の水酸基とが、ウレタン結合を形成するウレタン化反応によって生じる。このようなウレタン化反応は、反応促進のため、ウレタン化触媒を用いて行うことが好ましい。
ウレタン化触媒を用いずにウレタン化反応を進行させるためには、100℃以上に加熱する必要があり、このような高温下では、脂肪族ジイソシアネート化合物が揮発しやすくなり、反応系が不均一になりやすく、好ましくない。
ウレタン化触媒は、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、DBUが好適に用いられる。
ウレタン化触媒の添加量は、ウレタン化反応が十分に促進される量であればよく、脂肪族ジイソシアネート化合物、水添ポリブタジエン系ポリオール及びウレタン化触媒の合計質量に対して、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%、さらに好ましくは0.02〜0.1質量%である。
【0036】
(工程(2))
工程(2)においては、前記工程(1)で得られた反応生成物に芳香族ヒドロキシ化合物を添加し、イソシアネート基のブロック化反応を行い、ブロックウレタンプレポリマーを得る。
【0037】
芳香族ヒドロキシ化合物の添加量は、樹脂組成物の粘度の上昇抑制や、該樹脂組成物の硬化物の柔軟性等の観点から、該芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基が、前記脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して0.9〜1.1モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは1.0モル、すなわち同量である。
【0038】
<溶剤>
芳香族ヒドロキシ化合物によるブロック化反応は、粘度の上昇を伴う。また、芳香族ヒドロキシ化合物は、その融点以上で溶融した後、ブロック化反応を開始するが、そのような高温下では、可逆反応である脱ブロック化反応も生じるため、ブロック化反応を完結させることが困難である。
このため、ブロック化反応を効率的に完結させるためには、反応温度を80〜60℃、好ましくは70℃程度にまで低下させ、かつ、適宜、溶剤を用いて反応物を希釈して、反応系の粘度を低下させることが好ましい。
溶剤としては、反応物の溶解性等の観点から、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、揮発性や低吸湿性等の観点から、トルエンが好適に用いられる。
【0039】
また、得られた樹脂組成物を用いて熱伝導性シートを製造する際、混合される熱伝導性フィラーの充填性・分散性を確保するため、ブロックポリウレタンプレポリマーは、例えば、THF等の溶剤を用いて希釈した溶液として調製しておくことが好ましい。
このときのブロックポリウレタンプレポリマー溶液の濃度は、熱伝導性シートを製造する際の熱伝導性フィラーの充填性・分散性の確保及び製造の効率化等の観点から、20〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜50質量%、さらに好ましくは35〜45質量%である。
【0040】
(工程(3))
工程(3)においては、前記工程(2)で得られたブロックウレタンプレポリマーに、少なくとも、エポキシ化合物及び硬化触媒を配合し、樹脂組成物を得る。
【0041】
樹脂組成物は、ブロックウレタンプレポリマーに、エポキシ化合物及び硬化触媒を配合した後、均一に混合されたものであることが好ましい。混合方法は、樹脂組成物中で配合物を均一に溶解・分散させることができれば、特に限定されるものではない。例えば、配合物を密閉容器内に収容して容器ごと振とうして混合してもよく、また、容器内に収容した配合物を撹拌羽根により撹拌して混合してもよい。
前記樹脂組成物には、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒以外に、該樹脂組成物の硬化物の使用目的や求められる特性に応じて、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤等の上述したような添加剤を添加してもよい。
【0042】
[熱伝導性軟質シート]
本発明の熱伝導性軟質シートは、上記の本発明の樹脂組成物及び熱伝導性無機フィラーを含む混合組成物が硬化してなる樹脂シートである。そして、JIS K 7312:1996の硬さ試験タイプCに準拠して測定した硬さが95以下であることを特徴とするものである。
本発明の樹脂組成物をバインダーとして用いた熱伝導性シートは、優れた柔軟性を有する熱伝導性軟質シートである。前記硬さが95以下であれば、熱伝導性シートとして好適に使用することができる柔軟性を有していると言える。
前記硬さは、具体的には、アスカーC型デュロメーターを用いて、下記実施例に記載の方法により測定される値である。
なお、本発明の熱伝導性シートは、その使用態様は特に限定されるものではなく、従来の熱伝導性シートの使用態様と同様に適用することができる。
【0043】
(熱伝導性無機フィラー)
本発明の熱伝導性軟質シートにおいては、熱伝導性フィラーとして無機フィラーを用いる。熱伝導性無機フィラーとしては、絶縁性の観点から、例えば、マグネシア、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、絶縁性を損なわない範囲において、アルミニウム粉、カーボンブラック、黒鉛粉等を配合してもよい。熱伝導性無機フィラーの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、破砕状、球状、板状等が挙げられる。
性能及びコストのバランスを勘案すると、破砕マグネシアと球形マグネシアと球形アルミナとの混合物や、球形マグネシアと粒径の異なる2種の球形アルミナとの混合物、あるいはまた、破砕マグネシアと破砕窒化アルミニウムの混合物等が好ましい。この場合の混合物における混合比は、バインダーである樹脂組成物との親和性、樹脂組成物との混合時の分散流動性や粘度、さらに、熱伝導性軟質シートの燃焼性等を考慮して、適宜定めることができる。
熱伝導性無機フィラーの粒径は、バインダーである樹脂組成物への充填・分散性、また、熱伝導性軟質シートの柔軟性が損なわれない程度であることが好ましく、具体的には、平均粒径が0.1〜150μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜80μmである。なお、本発明における熱伝導性無機フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で求めた粒度分布における累積体積50%における粒径である。
【0044】
前記熱伝導性無機フィラーは、バインダーである樹脂組成物との親和性を高める観点から、カップリング剤で表面処理しておくことが好ましい。カップリング剤としては、具体的には、アルミニウムキレート化合物が好適に用いられる。その中でも、特に、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
アルミニウムキレート化合物は、熱伝導性無機フィラーの合計質量に対して0.1〜5質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
表面処理は、樹脂組成物との親和性を効果的に高める観点から、THF中に、熱伝導性無機フィラー及びアルミニウムキレート化合物を分散させた後、THFを留去し、乾燥させることにより行うことが好ましい。
【0045】
[熱伝導性軟質シートの製造方法]
本発明の熱伝導性軟質シートは、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の製造方法により好適に製造することができる。
本発明の熱伝導性軟質シートの製造方法は、前記樹脂組成物と、少なくとも、前記熱伝導性無機フィラーとを混合し、前記混合組成物を調製する工程(4)と、前記混合組成物を捏和し、圧延して、未硬化の前駆体を得る工程(5)と、前記前駆体を120〜250℃で加圧して硬化させることにより、前記熱伝導性軟質シートを得る工程(6)とを経るものである。
本発明の製造方法によれば、工程(6)で加圧加熱する際に、均一な状態の混合組成物中の樹脂組成物の硬化反応を開始・進行させることができるため、製造時のハンドリング性に優れており、均一な熱伝導性軟質シートを容易に得ることができる。
【0046】
(工程(4))
工程(4)においては、樹脂組成物と、少なくとも、熱伝導性無機フィラーとを混合し、混合組成物を調製する。
前記樹脂組成物は、熱伝導性無機フィラーのバインダーとして混合され、上述したように、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤も適宜添加されていてもよく、また、混合を容易とするために、溶剤で希釈したものを用いてもよい。
【0047】
<配合量>
樹脂組成物と熱伝導性無機フィラーとの配合比は、特に限定されるものではなく、所望の熱伝導性能や柔軟性等に応じて適宜調整することができる。樹脂組成物の配合量は、熱伝導性無機フィラーの合計質量を100質量部とした場合、これに対して5〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは7〜20質量部、さらに好ましくは10〜15質量部である。
【0048】
<混合方法>
樹脂組成物と熱伝導性無機フィラーとの混合方法は、特に限定されるものではない。樹脂組成物を溶剤で希釈して用いる場合には、例えば、熱伝導性無機フィラーとともに、自転公転ミキサー等の撹拌機や分散機等を用いて混合した後、溶剤を留去や乾燥により除去することにより、混合組成物を得ることができる。また、溶剤を用いない場合には、バルク状態で、3本ロールミル等の混練機を用いて、樹脂組成物と熱伝導性無機フィラーとを配合することにより、混合組成物を得ることができる。
【0049】
(工程(5))
工程(5)においては、前記工程(4)で得られた混合組成物を捏和し、圧延して、未硬化の前駆体を得る。
捏和及び圧延は、例えば、熱平プレス機等のプレス装置を用いて行うことができる。混合組成物が未硬化の状態を維持することができるように、90℃以下の温度で行う。また、混合組成物が均一な状態となるように、加圧する圧力を変えながら、繰り返し行うことが好ましい。
圧延の際は、前駆体と圧延を行うプレス機に対する接着を防止する観点から、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂シート等を介して行うようにしてもよい。
なお、均一な熱伝導性軟質シートを得るため、前駆体は、工程(6)の前に、脱泡処理しておくことが好ましい。脱泡処理は、例えば、150℃未満の温度に加熱して、2〜10分程度の短時間で真空脱泡することが好ましい。
前駆体の形状は、特に限定されるものではないが、工程(6)でシート状に成形すること、また、脱泡を容易とする観点から、平板状としておくことが好ましい。
【0050】
(工程(6))
工程(6)においては、前記工程(5)で得られた未硬化の前駆体を120〜250℃で加圧して硬化させることにより、前記熱伝導性軟質シートを得る。この工程で120〜250℃で加熱することにより、樹脂組成物の硬化反応が開始・進行し、混合組成物の硬化体からなる均質なシート成形体が得られる。
加圧加熱は、通常用いられる熱プレス機により行うことができ、これによりシート成形することができる。この際、前駆体と熱プレス機に対する接着を防止する観点から、前記圧延の場合と同様に、PTFE等のフッ素系樹脂シート等を介して行うようにしてもよい。
加熱温度は、樹脂組成物の硬化反応を開始し、適度に進行させる観点から、120〜250℃であることが好ましく、より好ましくは170〜230℃、さらに好ましくは185〜200℃とする。
加圧圧力及び加圧時間は、所望のシート成形体の厚みや前駆体の量等に応じて、適宜設定される。通常は、0.1〜5MPa程度、5〜60分程度である。
【0051】
[放熱構造]
本発明の放熱構造は、上記のような本発明の熱伝導性軟質シートが、発熱体と放熱体とで挟装されているものである。本発明の熱伝導性軟質シートを、発熱体と放熱体との間に挟装することにより、発熱体の放熱を効率的に行うことができる。また、本発明の熱伝導性軟質シートは、シリコーン系材料を含まないため、本発明の放熱構造によれば、低分子シロキサンの揮発による電子・電気デバイスの接点障害や導通不良等の問題を生じることがない。
【0052】
(発熱体・放熱体)
発熱体は、特に限定されるものではなく、電気・電子デバイスにおいて、使用時に150℃以下の発熱を伴う電子部材、例えば、LEDやCPU、パワーIC等が適用対象として挙げられる。
放熱体も、特に限定されるものではなく、電気・電子デバイスにおいて、従来、前記発熱体の放熱体として用いられているものでよく、例えば、ヒートシンクや金属フレーム、放熱板等が適用対象として挙げられる。
なお、熱伝導性軟質シートの挟装方法及び挟装態様は、特に限定されるものではなく、従来の熱伝導性シートと同様に取り扱うことができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0054】
[ブロックウレタンプレポリマー(A)の製造]
下記の製造例に示す方法により、ブロックウレタンプレポリマー(A1)〜(A5)を製造した。各ブロックウレタンプレポリマーの製造において使用した原料を以下に示す。
・脂肪族ジイソシアネート化合物(a1)
ヘキサメチレンジイソシアネート;「デスモジュールH」、住化コベストロウレタン株式会社製
・ポリオール(a2)
(a2−1)水添ポリブタジエン系ポリオール;「GI−3000」、日本曹達株式会社製、分子量3753、水酸基価29.9KOHmg/g
(a2−2)ポリエステル系ポリオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオールのアジピン酸エステル;「P3010」、株式会社クラレ製、分子量3082、水酸基価36.4KOHmg/g
(a2−3)ポリエーテル系ポリオール:3−メチルテトラヒドロフランとTHFの開環重合体(推定);「PTG−L3000」、保土谷化学工業株式会社製;分子量2992、水酸基価37.2KOHmg/g
・イソシアネート基ブロック剤(a3)
(a3−1)レゾルシノール;試薬特級;和光純薬株式会社製
(a3−2)エチレンジアミン:試薬特級;和光純薬株式会社製
・ウレタン化触媒
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、サンアプロ株式会社製
・溶剤
トルエン;試薬特級、和光純薬株式会社製、モレキュラーシーブ4Aで脱水処理したもの
THF;試薬特級、和光純薬株式会社製
【0055】
(製造例1)ブロックウレタンプレポリマー(A1)の製造
300mlセパラブルフラスコに、脂肪族ジイソシアネート化合物(a1)3.26g、及びポリオール(a2−1)34.59gを入れ、撹拌羽根、撹拌モーター、ジムロート冷却管、及び窒素導入管を取り付けた。フラスコ内に毎分200mlの流量で窒素パージを行い、該フラスコを75℃のオイルバスに浸漬して、30rpmにて5分間撹拌し、予備混合を行った後、回転数を150rpmに上げて反応を行った。
5分後、フラスコ内の内容物が十分に均一であることを確認し、ウレタン化触媒としてDBU0.02gを添加した。3時間後、内容物について赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定したところ、水酸基に由来する3300cm
-1のシグナルの消失が確認された。
オイルバスの温度を125℃に昇温し、フラスコが十分に加熱された後、イソシアネート基ブロック剤(a3−1)2.13gを投入し、400rpmにて3分間撹拌した後、オイルバスの温度を110℃に降温し、50rpmにて撹拌を継続した。フラスコ内の温度が110℃になったことを確認した後、トルエン22.16gを加えた。撹拌速度を徐々に上げて、150rpmで固定し、オイルバスの温度を70℃に降温し、3時間反応させた。内容物について、IRスペクトルにて、イソシアネート基由来の2270cm
-1のシグナルの消失を確認した。
室温まで放冷後、THF37.84gを加え、内容物が均一になるまで撹拌し、ブロックウレタンプレポリマー(A1)溶液100.00g(濃度40.0質量%(計算値))を得た。
【0056】
(製造例2〜7)ブロックウレタンプレポリマー(A2)〜(A7)の製造
製造例1において、下記表1の製造例2〜7に示す原料配合に変更し、それ以外については、製造例1と同様にして、ブロックウレタンプレポリマー(A2)〜(A7)溶液を得た。
【0057】
(製造例8)ブロックウレタンプレポリマー(A8)の製造
500mlセパラブルフラスコに、脂肪族ジイソシアネート化合物(a1)3.10g、及びポリオール(a2−1)34.59gを入れ、撹拌羽根、撹拌モーター、ジムロート冷却管、及び窒素導入管を取り付けた。フラスコ内に毎分200mlの流量で窒素パージを行い、該フラスコを75℃のオイルバスに浸漬して、30rpmにて5分間撹拌し、予備混合を行った後、回転数を150rpmに上げて反応を行った。
5分後、フラスコ内の内容物が十分に均一であることを確認し、ウレタン化触媒としてDBU0.02gを添加した。3時間後、内容物について赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定したところ、水酸基に由来する3300cm
-1のシグナルの消失が確認された。これに、トルエン339.39gを投入し、10.0質量%トルエン溶液を得た。
2000mlセパラブルフラスコに、イソシアネート基ブロック剤(a3−2)の5質量%THF溶液553gを投入した。フラスコ内を窒素パージし、水槽内で5℃に冷却した後、300rpmにて撹拌しながら、上記で得られた脂肪族ジイソシアネート化合物(a1)とポリオール(a2−1)との反応生成物のトルエン溶液を滴下ロートにて3時間で滴下した。滴下終了後、水槽の温度を40℃に昇温し、150rpmにて1時間撹拌して反応を行った。内容物について、IRスペクトルにて、イソシアネート基由来の2270cm
-1のシグナルの消失を確認した。
前記内容物中の溶剤及び余剰のイソシアネート基ブロック剤(a3−2:エチレンジアミン)を、ロータリーエバポレーターにて留去し、さらに、160℃で3日間、真空乾燥処理して、ブロックウレタンプレポリマーの精製物を得た。
得られたブロックウレタンプレポリマー40gを300mlセパラブルフラスコに入れた。このフラスコ内に、トルエン22.22g及びTHF37.78gの混合溶媒(合計60.00g)を投入し、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら、90℃のオイルバス中で5時間還流し、ブロックウレタンプレポリマー(A8)溶液(濃度40.0質量%)を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
[樹脂組成物の製造]
下記の実施例及び比較例に示す方法により、各樹脂組成物を製造した。各樹脂組成物の製造において使用した原料を以下に示す。
・ブロックウレタンプレポリマー(A)
上記製造例1〜8で製造したブロックウレタンプレポリマー(A1)〜(A8)
・エポキシ化合物(B)
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン;「エポトートYH−434L」、新日鉄住金化学株式会社製、エポキシ当量118.1g/eq
・硬化触媒(C)
トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩;「U−CAT 18X」、サンアプロ株式会社製
・添加剤
酸化防止剤:3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ピロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;「スミライザー(登録商標) GA−80」、住友化学株式会社製
難燃剤:ホスファゼン系難燃剤;「SPB−100」、大塚化学株式会社製
可塑剤:キシレン系樹脂「ニカノール(登録商標) LR」、フドー株式会社製
・THF
試薬特級、和光純薬株式会社製
【0060】
(実施例1)
250mlポリエチレン製広口瓶に、ブロックウレタンプレポリマー(A1)溶液100.00g、エポキシ化合物(B)の50.5質量%THF溶液9.53g、硬化触媒(C)の10.0質量%THF溶液2.24g、添加剤として酸化防止剤0.45g、難燃剤4.48g及び可塑剤1.34gを入れ、振とうして混合し、樹脂組成物溶液(濃度43.46質量%)を得た。
【0061】
(実施例2〜7、比較例1〜7)
実施例1において、下記表2の実施例2〜7及び比較例1〜7に示す原料配合に変更し、それ以外については、実施例1と同様にして、各樹脂組成物溶液を得た。
【0062】
なお、比較例7の樹脂組成物溶液は、調製中に溶液粘度が上昇し、これをシート成形体の製造に用いることは困難であった。イソシアネート基ブロック剤(a3−2)の末端アミノ基とエポキシ化合物(B)との反応による重合反応が極めて速いためであると考えられる。
【0063】
【表2】
【0064】
[熱伝導性無機フィラーの調製]
(調製例1)熱伝導性無機フィラー(F1)
100mlポリエチレン製広口瓶に、破砕マグネシア(平均粒径60μm)44.75g、球形マグネシア(平均粒径20μm)21.05g、及び球形アルミナ(平均粒径7μm)10.40gを入れ、振とうして混合した。
これに、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.87g、及びTHF22.86gを添加し、振とうして混合した。
その後、自転公転ミキサーを用いて、2000rpmで2分間撹拌し、次いで、超音波洗浄機にて30分間分散処理し、再び、自転公転ミキサーにて2000rpmで2分間撹拌した。そして、内容物を60℃で温風乾燥し、さらに、70℃で5時間真空乾燥してTHFを除去し、熱伝導性無機フィラー(F1)を得た。
【0065】
(調製例2)熱伝導性無機フィラー(F2)
100mlポリエチレン製広口瓶に、球形マグネシア(平均粒径20μm)43.47g、球形アルミナ(平均粒径5μm)22.60g、及び球形アルミナ(平均粒径3μm)10.13gを入れ、振とうして混合した。
これに、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.86g、及びTHF22.86gを添加し、振とうして混合した。
その後の処理は、調製例1と同様にして、熱伝導性無機フィラー(F2)を得た。
【0066】
(調製例3)熱伝導性無機フィラー(F3)
100mlポリエチレン製広口瓶に、破砕マグネシア(平均粒径60μm)54.94g及び破砕窒化アルミニウム(平均粒径13μm)21.26gを入れ、振とうして混合した。
これに、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.87g、及びTHF22.86gを添加し、振とうして混合した。
その後の処理は、調製例1と同様にして、熱伝導性無機フィラー(F3)を得た。
【0067】
[シート成形体(熱伝導性軟質シート)の製造]
(実施例8)
50mlスクリュー管瓶に、熱伝導性無機フィラー(F1)を10.00g及び実施例1の樹脂組成物溶液2.84gを入れ、自転公転ミキサーを用いて、2000rpmで2分間撹拌し、次いで、超音波洗浄機にて30分間分散処理し、再び、自転公転ミキサーにて2000rpmで2分間撹拌し、混合組成物を調製した。この混合組成物をステンレス製バットに取り出し、バットを80℃のホットプレートに載せて1時間加熱した後、90℃で30分間真空乾燥し、溶剤を揮発させて除去した。
溶剤を除去した混合組成物約11gを、90℃の熱平プレス機を用いて、厚み200μmのPTFEシートの間に、サイズ約30mmの塊状の混合組成物を挟み込み、上下のPTFEシートの外面から加圧を繰り返すことにより、捏和し、圧延した。捏和及び圧延は、圧力1.0kNで10回、その後の10回は、1.1kNから1回毎に0.1kNずつ圧力を高くして加圧し、かつ、1回毎に折り畳みながら、計20回繰り返して行い、最終厚みが約700μm、径が約80mmの平板状の未硬化の前駆体を得た。そして、この前駆体の上面側のPTFEシートを剥ぎ取り、140℃で3分間真空脱泡を行った。
脱泡した前駆体、及び厚み500μmのシム2枚を、厚み200μmのPTFEシートの間に挟み込み、小型圧縮成形機にて、185℃で、1.2kNで30秒間、5kNで2分間、10kNで12分30秒、加圧加熱した。さらに、1.2kNで15分間加圧加熱し、最終厚みが約500〜650μm、径が約100mmのシート成形体である熱伝導性軟質シートを得た。
【0068】
(実施例9〜14、比較例8〜13)
実施例8において、下記表3の実施例9〜14及び比較例8〜13に示す樹脂組成物及び熱伝導性無機フィラーに変更し、それ以外については、実施例8と同様にして、各シート成形体を得た。
【0069】
[測定評価]
上記実施例及び比較例で得られた各シート成形体について、以下の各種測定評価を行った。これらの測定評価結果を表3に示す。
【0070】
(展延性)
捏和時の展延性は、前駆体を得る工程において硬化反応が進行しているか否かの指標となる。
前駆体を得る工程で硬化反応が進行する樹脂組成物は、前駆体の展延性に劣り、熱伝導性シートの成形性に劣る。
評価は、前駆体を得る工程において、目視判定で行った。判定基準は、以下のとおりである。
◎:厚み約700μmまで展延可能であり、前駆体に亀裂がなく、表面が均一である。
〇:厚み約800μmまでは展延可能であり、前駆体に亀裂がなく、表面が均一である。
△:900μm以上の厚みまでしか展延できないが、前駆体に亀裂がなく、表面が均一である。
×:前駆体に亀裂が入る、又は、表面が不均一であり、凸凹がある。
【0071】
(平均厚み)
シート成形体について、デジタルシックネスゲージ(「SMD−540S2」株式会社テクロック製)にて、任意の5箇所で厚みを測定し、これらの平均値を平均厚みとした。
平均厚みが500〜700μmであれば、成形性に優れていると言える。
【0072】
(表面の状態)
シート成形体の表面の状態は、樹脂組成物の硬化反応開始時の反応物について、適度な粘度が維持されているか否かの指標となる。
硬化反応の開始時に、反応物が適度な粘度を維持していない場合、樹脂組成物と熱伝導性無機フィラーとが分離しやすくなり、均質なシート成形体を得ることが困難となる。特に、シート成形体の端部に、巣が入ったり、ひび割れが生じたりして、熱伝導性シートとしての使用は困難となる。
評価は、得られたシート成形体の表面について、目視判定で行った。判定基準は、以下のとおりである。
◎:巣やひび割れがなく、表面全体が均一である。
〇:端から3mm以内には巣やひび割れがあるものの、それ以外の部分の表面は均一である。
△:端から10mm以内には巣やひび割れがあるものの、それ以外の部分の表面は均一である。
×:端から10mm以上の箇所(中央部付近)にも巣やひび割れがある。
【0073】
(灰分濃度差)
シート成形体における灰分濃度のばらつきは、熱伝導性無機フィラーの分散性の指標となる。シート成形体の中央と端との灰分濃度差が大きい場合には、シート成形体の熱伝導率にばらつきが生じることとなる。
評価は、示差熱天秤(TG−DTA;「TG8120」、株式会社リガク製)にて、シート成形体の中央及び端の各サンプルを、空気中、10℃/分で、室温から800℃まで加熱し、重量減少率[%]を測定することにより行った。中央と端の重量減少率の差が、両者の灰分濃度差に対応するものとして判定を行った。判定基準は、以下のとおりである。
◎:重量減少率の差が1%未満
〇:重量減少率の差が1%以上1.5%未満
△:重量減少率の差が1.5%以上2%未満
×:重量減少率の差が2%以上
【0074】
(硬さ)
シート成形体の硬さは、柔軟性の指標となる。
JIS K 7312:1996の硬さ試験タイプCに準拠して測定した硬さの値が大きい方が硬いことを示しており、95以下であれば、熱伝導性シートとして十分な柔軟性を有していると言える。
測定は、シート成形体を厚みが20mm以上(約20mm)となるように積層したサンプルについて、アスカーC型デュロメーター(「アスカーゴム硬度計C型」、高分子計器株式会社製)を用いて行った。
なお、比較例11は、硬すぎて測定不能であったため、表3において「−」と表記した。
【0075】
(タック性)
シート成形体のタック性は、熱伝導性シートがこれに接する発熱体と放熱体との間でズレを生じやすいか否かの指標となる。
タック性が低い場合は、熱伝導性シートの使用時の発熱体と放熱体との密着度が不十分となり、十分な熱伝導性を発揮することが困難となる。
評価は、以下に示す方法で行った。この方法での測定値が1.5N以上であれば、タック性が良好であると言える。
温度25℃にて、150mm×150mm×厚み3mmのアルミニウム板上にシート成形体を載せ、その上に15mm角のアルミニウム製ヒートシンク(側縁部に針金で持ち手を付けたもの)を載せた。メカニカルフォースゲージ(「FB−20N」、株式会社イマダ製)を用いて、ヒートシンクの上から、20Nの力で押しつけて10秒間保持した後、持ち手を引っ張り、引き剥がしに要する力を測定することにより行った。
【0076】
(熱伝導率)
熱伝導率は、サンプルの密度、比熱及び熱拡散率の積で表される。熱伝導率が3.0W/(m・K)以上であれば、十分な熱伝導率を有していると言える。
密度、比熱及び熱拡散率は、それぞれ、以下に示す方法により測定した。
<密度>
直径9mmの彫刻刃付きポンチを用いてシート成形体を打ち抜き、厚み及び重量を測定して算出した。
<熱拡散率>
レーザーフラッシュ法にて評価した。測定条件は、以下のとおりである。
測定装置:「LFA447NanoFlash(登録商標)」、ネッチ社製
サンプル:10mm×10mm
サンプルホルダー:NanoFlash10.0sq
測定モデル:単層
測定温度:25.0±1.0℃
1測定点あたりのショット数:3回
パルス幅変調:中
測定時間:1000ms
温度上昇曲線と解析モデルのフィッティング:Cowan+pulse correction
<比熱>
示差走査熱量計(DSC;「Thermo Plus DSC8230」、株式会社リガク製)を用いて、α−アルミナを標準物質として測定した。
【0077】
(耐熱老化性)
シート成形体をギヤー老化試験機(「TG−100」、スガ試験機株式会社製)にて、150℃で1000時間処理した後の熱伝導率保持率及びゴム状弾性域上限温度により評価した。熱伝導率保持率が高く、ゴム状弾性域上限温度が処理前後で変化していない場合は、耐熱老化性に優れていると言える。
<熱伝導率保持率>
処理後のサンプルの熱伝導率を上記測定方法により求め、未処理サンプルの熱伝導率に対する比率を熱伝導率保持率とした。
<ゴム状弾性域上限温度>
処理前後のサンプルの貯蔵弾性率を測定することにより、ゴム状弾性域上限温度を求めた。測定条件は、以下のとおりである。
測定装置:熱機械的分析装置(「TMA/SS6100」、セイコーインスツル株式会社製)
周波数:0.1Hz
振幅:1.0mN
温度:25℃〜350℃
昇温レート:10℃/分
判定基準は、以下のとおりである。
○:処理前後でゴム状弾性域上限温度が変化しない又は5℃未満低下
△:処理前後でゴム状弾性域上限温度が5℃以上20℃未満低下
×:処理前後でゴム状弾性域上限温度が20℃以上低下
【0078】
(耐湿熱性)
シート成形体を恒温恒湿器(「PH−2KT−E」、エスペック株式会社製)にて、80℃、95%RHで1000時間処理した後の熱伝導率保持率及びゴム状弾性域上限温度により評価した。熱伝導率保持率が高く、ゴム状弾性域上限温度が処理前後で変化していない場合は、耐湿熱性に優れていると言える。
熱伝導率保持率及びゴム状弾性域上限温度は、耐熱老化性評価の場合と同様にして求めた。
【0079】
(耐熱衝撃性)
シート成形体を冷熱サイクル試験機(「TSA−71S」、エスペック株式会社製)にて、−30℃〜100℃、1時間での昇降温を1サイクルとし、これを1000サイクル繰り返して処理した後の熱伝導率保持率及びゴム状弾性域上限温度により評価した。熱伝導率保持率が高く、ゴム状弾性域上限温度が処理前後で変化していない場合は、耐熱衝撃性に優れていると言える。
熱伝導率保持率及びゴム状弾性域上限温度は、耐熱老化性評価の場合と同様にして求めた。
【0080】
【表3】
【0081】
表3に示した結果から分かるように、実施例8〜14のシート成形体は、樹脂組成物の捏和時の展延性に優れ、表面の状態も良好で、ほぼ均一であり、熱伝導性シートとしての十分な熱伝導性、柔軟性及びタック性を有していると言える。また、耐久性能を表す耐熱性、耐湿熱性及び耐熱衝撃性にも優れている。
【課題】非シリコーン系材料であって、柔軟性に優れ、かつ、耐熱老化性、耐湿熱性及び耐熱衝撃性等の耐久性能に優れた熱伝導性軟質シート及びこれを用いた放熱構造、また、熱伝導性シート製造時の捏和工程でのハンドリング性に優れており、熱伝導性軟質シートのバインダー材料として好適に用いることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン系ポリオールとの反応生成物において、前記反応生成物が末端に有しているイソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物によりブロックされているブロックウレタンプレポリマー、所定のエポキシ化合物及び硬化触媒を含む樹脂組成物、これと熱伝導性無機フィラーとを含む混合組成物が硬化してなる熱伝導性軟質シート、並びにこれを用いた放熱構造。