(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る結像素子アレイを用いた光学装置の一例である画像形成装置の構成図である。
図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0012】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13を開閉自在に設けている。また本体11の上部には操作パネル14を設けている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0013】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15を設けている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(
図1では奥行方向)に配置されている。
【0014】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。またADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0015】
さらに本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数のカセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと、感光体ドラムを露光する光走査装置を有する。光走査装置は発光素子であるLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体を走査して画像を生成する。
【0016】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、PC(Personal Computer)などで作成された画像データを処理して記録媒体である用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。
【0017】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応して複数の走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを有している。
【0018】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大して示す構成図である。なお、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを代表に説明する。
【0019】
図2に示すように、画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ23K、現像器24K、1次転写ローラ25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を担持する。
【0020】
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に全面帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、感光体ドラム22K上にトナー像を形成する。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0021】
また
図1に示すように、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ(28Y〜28K)を含む。
【0022】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。
図2に示すように、中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、1次転写ローラ25Kにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。
【0023】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、2次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と2次転写ローラ33間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ33により2次転写電圧が用紙Sに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Sに2次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0024】
また
図1で示すように、給紙カセット18から2次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Sを搬送する搬送ローラ35を設けている。さらに2次転写ローラ33の下流には定着器36を設けている。また定着器36の下流には搬送ローラ37を設けている。搬送ローラ37は用紙Sを排紙部38に排出する。さらに、定着器36の下流には、反転搬送路39を設けている。反転搬送路39は、用紙Sを反転させて2次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用する。
【0025】
次に
図2を参照しての走査ヘッド19Kの構成を説明する。走査ヘッド19Kは、感光体ドラム22Kと対向し、感光体ドラム22Kを露光する。感光体ドラム22Kは、予め設定した回転速度で回転し、表面に電荷を蓄えることができ、走査ヘッド19Kからの光を感光体ドラム22Kに照射して露光し、感光体ドラム22Kの表面に静電潜像を形成する。
【0026】
走査ヘッド19Kは、結像素子アレイ50を有し、結像素子アレイ50は保持部材41に支持されている。また保持部材41の底部には支持体42を有し、支持体42には、光源であるLED素子43を配置している。LED素子43は主走査方向に直線状に等間隔で設けている。また、支持体42にはLED素子43の発光を制御するドライバICを含む基板(図示せず)を配置している。結像素子アレイ50の詳細な構成については後述する。
【0027】
ドライブICは制御部を構成し、スキャナ部15で読み取った画像データや、PCなどで作成された画像データに基づいて走査ヘッド19Kの制御信号を発生し、制御信号に従って所定の光量でLED素子を発光させる。そして、LED素子43から出射した光線は、結像素子アレイ50に入射し、結像素子アレイ50を通過して感光体ドラム22K上に結像し、像を感光体ドラム22K上に形成する。また走査ヘッド19Kの上部(出射側)にはカバーガラス44を取り付けている。
【0028】
図3は、スキャナ部15(読取装置)の密着型のイメージセンサ16の構成を示す説明図である。イメージセンサ16は、原稿台12上に載置された原稿の画像、またはADF13によって給紙された原稿の画像を、操作パネル14の操作に従って読み取る。イメージセンサ16は、主走査方向に配置された1次元のセンサであり、筐体45を有する。
【0029】
筐体45は基板46上に配置され、筐体45の原稿台12側の上面には、原稿の方向に光を照射する2つのLEDライン照明装置47,48を主走査方向(図の奥行方向)に延びるように設けている。LEDライン照明装置47,48は、光源でありLEDと導光体を備える。なお、光源はLEDに限定されず、蛍光管、キセノン管、冷陰極管又は有機EL等であってもよい。
【0030】
筐体45上部のLEDライン照明装置47と48の間には、結像素子アレイ50が支持され、筐体45の底部にある基板46には、CCDやCMOSなどで構成されるセンサ49が実装されている。また筐体45の上部にはスリット51を有する遮光体52を取り付けている。
【0031】
LEDライン照明装置47,48は原稿台12上の原稿の画像読み取り位置を照射し、画像読み取り位置で反射した光は、スリット51を介して結像素子アレイ50に入射する。結像素子アレイ50は、正立等倍レンズとして機能する。結像素子アレイ50に入射した光は、結像素子アレイ50の出射面から出射され、センサ49上に結像する。すなわち照明装置47、48が照射した光のうちの原稿での反射光が結像素子アレイ50の中を透過する。結像した光は、センサ49によって電気信号に変換され、電気信号は、基板46のメモリ部(図示せず)に転送される。
【0032】
以下、読取装置及び画像形成装置に用いる結像素子アレイ50の構成について詳しく説明する。
図4は、第1の実施形態に係る結像素子アレイ50を示す斜視図である。光の入射方向を矢印Aで示し、光の出射方向を矢印Bで示す。
【0033】
結像素子アレイ50は、入射面であるレンズ面51と、出射面であるレンズ面52と、レンズ面51から入射した光を複数回(
図4の例では2回)反射して出射レンズ面52に反射する反射面53,54とを有する結像素子を主走査方向に複数個配列したものである。複数の結像素子で成る結像素子アレイ50は、樹脂またはガラスにて一体に形成される。尚、以下の説明では、結像素子アレイ50を単にアレイ50と呼ぶこともある。
【0034】
図4において、レンズ面51は、主走査方向に対して垂直な方向に非対称なレンズ面(入射面)であり、レンズ面52は、主走査方向と垂直な方向に非対称なレンズ面(出射面)である。レンズ面51、52は光線を透過し、結像素子アレイ50の基材に対して凸構造の面となっている。また反射面53,54は光線を反射し、結像素子アレイ50の基材に対して凸構造の面(凸レンズ)となっている。以下、レンズ面51を入射レンズ面、レンズ面52を出射レンズ面、反射面53,54をミラー面と呼ぶこともある。尚、
図4において、「主」は、主走査方向を示し、「副」は、副走査方向を示す。
【0035】
図5は、結像素子アレイ50を拡大して示す斜視図である。また
図6は、結像素子アレイ50の側面図である。
図5、
図6に示すように、結像素子アレイ50は、入射レンズ面51、ミラー面53,54及び出射レンズ面52を含む。入射光X(
図6では光路の中心光線のみを示す)は、レンズ面51に入る。ミラー面53は、光の入射方向から見て外方に突出した凸構造となっており、凸部の頂部に反射面が形成されている。同様にミラー面54は、光の入射方向から見て外方に突出した凸構造となっており、凸部の頂部に反射面が形成されている。
【0036】
入射光線Xは、主走査方向と垂直な方向に非対称な入射レンズ面51に入り、主、副走査方向両方に収束光となって、主走査方向と垂直な方向に非対称なミラー面53に入射する。光線は、全反射条件を満たす入射角で入射するため、全ての光線は反射されて、主走査方向と垂直な方向に対称なミラー面54に全反射条件を満たす入射角で入射する。ここで、全ての光線は反射されて、反転像が形成されて、主走査方向と垂直な方向に非対称な出射レンズ面54に導かれ、出射レンズ面54を透過し、再度結像されて等倍正立像を像面に形成する。
【0037】
レンズとミラーが一体になった結像素子アレイ50では、入射レンズ面51の光透過領域を通った入射光Xが収束されて、ミラー面53に向かい、ミラー面53の光反射領域で反射されてミラー面54に向かう。ミラー面54の光反射領域で反射された光線は、出射レンズ面52の光透過領域を通って出射し、像面に結像する。また入射ミラー面の光透過領域と、ミラー面53,54の光反射領域、及び出射ミラー面52の光透過領域の周辺部は遮光材を塗布して遮光膜を形成し、迷光を防止するようにしている。
【0038】
図7は、結像素子アレイ50の斜視図であり、ミラー面53の凸部の光反射領域の周辺部(壁面55を含む)に遮光膜60を形成した例を示している。ミラー面54の凸部の光反射領域の周辺部(壁面56を含む)にも遮光膜が形成されるが、図示は省略する。
【0039】
図8は、ミラー面53を上方向から見た平面図である。また
図9は、ミラー面53を拡大して斜め上方向から見た斜視図である。ミラー面54は、ミラー面53と同じ形状であるため、説明は省略する。
【0040】
図9に示すように、ミラー面53は、凸部57の頂部に形成しており、光線Xがミラー面53に入射し、ミラー面53で反射して出射する。光線X(実線)は、ミラー面53によって全反射し、次の光学面(ミラー面54)に向かい、出射レンズ面52から出射し、最終的には像面(センサ49、或いは感光体ドラム22)に導かれる。また隣り合うミラー面53の間の壁面55に、遮光膜60を形成することにより、壁面55に達した光を吸収することができ、迷光が像面に結像するのを防ぐことができる。
【0041】
結像素子アレイ50は、透明高分子樹脂にて製造する場合には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂や、熱可塑性樹脂を使用する。結像素子アレイ50を成型する為の金型を使って、射出成型、射出圧縮成型、圧縮成型等によりプラスチック成型することで高効率・高生産性を持った方法で結像素子アレイ50を製造することができる。透明高分子樹脂に変えて、石英、光学ガラス、電子光学用ガラス(無アルカリガラスなど)、透光性セラミックス等を使用しても良い。
【0042】
遮光膜60は、遮光材として、例えば有機遮光液(モノマーや溶媒系)を用いる。遮光膜60は、流動性の高い遮光材を用いて形成されるのが好ましく、塗布位置に供給したときの濡れ拡がりを容易にするため、低粘度かつ低表面張力の材料が望ましい。また遮光膜60は、遮光膜形成後の膜表面における反射に伴う、ゴースト等の性能低下を防止するため、反射率が低い材料が望ましい。さらに、遮光膜60は、できるだけ薄膜で十分な透過濃度が得られるよう、遮光性のある顔料もしくは染料の含有量が高いものが望ましい。
【0043】
図7、
図8において、塗りつぶした領域(灰色部)は、ミラー面53の光反射領域の周辺部に形成した遮光膜60を示し、遮光材を塗布して濡れ広がらせて遮光膜60を形成する。また
図8、
図9で示すように、遮光膜60はミラー面53に干渉しない部分に塗布し、隣接するミラー面53間の境界部だけでなく、ミラー面53の周辺部と、ミラー面53を設けた凸部の壁面55にそれぞれ塗付する。
【0044】
図10は、ミラー面53を拡大して示す平面図であり、遮光材を塗布した領域(遮光膜60)を灰色で示している。図中の円61は、遮光材を滴下する滴下位置の一例を示す。滴下位置61は、例えば隣接するミラー面53の間、又はミラー面53の先端から少し離れた位置のミラー面53の間に設定する。遮光材は、例えばインクジェット法等の非接触方法や、ディスペンサ等の液体接触方法の塗布装置(図示せず)を使用して滴下する。遮光材は、滴下すると濡れ広がり、ミラー面53間とミラー面53の壁面55に濡れ広がり遮光膜60ができる。
【0045】
インクジェット法等の非接触法であれば、インクジェット装置から塗布される液量(液滴径)、ミスディレクション(方向性)、距離により遮光領域が求められ、適切な遮光材塗布領域が得られる。また、ディスペンサ等の液体接触方法であれば、塗布される液量(液滴径)で遮光材塗布領域が求められる。この結果、適切な遮光材塗布領域の大きさを確保することにより、遮光材がミラー面53に干渉する(液体がミラー面の表面に接触すること)のを防止できる。遮光材塗布領域に、インクジェット法やディスペンサ等の塗布装置を使用して遮光材を塗布することにより、ミラー面53を汚すことがなく、光学性能低下を防止することが可能となる。
【0046】
図11は、遮光材を塗布したときの濡れ広がりを助長させるガイド溝を説明する図であり、隣接するミラー面53間の境界部に、ガイド溝として細い溝62を設けた例である。溝62は、ミラー面53の長手方向と並行に複数条、設けている。楕円61は、遮光材を滴下する位置を示し、隣接するミラー面53間に設定する。複数の溝62をミラー面53間の境界部に並行に設けることにより、遮光材はミラー面53の長手方向に毛管現象と同じ現象により、溝62のエッジに沿って短時間に濡れ広がることが可能になる。またミラー面53間に塗付される遮光材の厚さ、すなわちレベリング状態も均一になり遮光特性のバラツキが抑えられた遮光膜60を形成することができる。
【0047】
図12(a)、(b)は、溝62の形状を示す断面図である。(a)は、結像素子アレイ50の表面501に凹状の溝621を形成したものである。(b)は、結像素子アレイ50の表面501に凸状の溝622を形成したものである。いずれの形状であっても、遮光材はミラー面53の長手方向に毛管現象と同じ現象により、複数の溝621,622のエッジに沿って短時間に濡れ広がることができ、毛管現象によりミラー面53の周辺部に遮光膜60を正確に形成することができる。したがって、光学性能を劣化させることがない結像素子アレイを提供できる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に結像素子アレイ50への遮光膜60の形成のし方を説明する。第2の実施形態は、遮光膜60をミラー53(又はミラー54)の光反射領域の周辺部に形成する際に、遮光材を濡れ広がりやすくするガイド溝62の幾つかの例を示す。
【0049】
図13は、
図11におけるガイド溝62のパターン形状を変化させたもので、隣接するミラー面53の間に、斜めの複数条の溝62を形成したものである。楕円61は、遮光材を滴下する位置を示し、隣接するミラー面53の間に設定する。溝62は、ミラー面53間の中央部から放射状に形成されているため、遮光材は、均一性が高くかつ濡れ広がる時間を短縮することが可能になる。
【0050】
図14は、隣接するミラー面53の間に細い溝62を設けた例である。溝62は、ミラー面53の長手方向よりも長く延長した形状となっている。楕円61は、遮光材の滴下位置を示す。滴下位置61は、ミラー面53の先端部から外れた溝62の上に設定する。溝62をミラー面53よりも長くし、ミラー面53の凸構造の面から離れた領域61に遮光材を滴下することにより、遮光材は溝形状に沿って互いに隣接するミラー面53間の境界部に速やかに濡れ広がることが可能であり、均一なレベリング状態を保つことができる。また遮光材の塗布位置61をミラー面53間の領域以外のところに設定することで、ミラー面53上に遮光材が塗布されるのを防ぐことができる。したがって、塗布ミスを低減することができ、より精度の高いアレイ50を製造することができる。
【0051】
図15(a)は、隣接するミラー面53の間に細い溝62を設け、かつ溝62は、ミラー面53の長手方向よりも長く延長し、延長した部分、つまりミラー面53の凸構造の面から離れた領域に三角形状の凸部63を形成したものである。楕円61は、遮光材の滴下位置を示し、三角形状の凸部63に滴下する。
【0052】
図15(b)は、三角形状の凸部63を拡大して示す斜視図である。遮光材を三角形状の凸部63に滴下することで、遮光材が効率よく溝62に流れ込むようにすることができ、濡れ広がる時間を短縮することができる。また、遮光材の塗布位置が多少変動しても溝62に流れ込ませる遮光材量を制御することができる。
【0053】
図16(a)は、隣接するミラー面53の間に細い溝62を設けた例である。溝62は、ミラー面53の長手方向よりも長く延長し、延長した部分、つまりミラー面53の凸構造の面から離れた領域が傾斜している。
【0054】
図16(b)は断面図であり、ミラー面53の長手方向の先端は、傾斜しており(傾斜部502で示す)、長い楕円61は、遮光材の滴下位置を示し、傾斜部502に滴下する。また平坦面に遮光材を滴下させるよりも傾斜部502に滴下させる方が遮光材を受け止める部分の面積を広くすることができる。
【0055】
即ち、
図16(b)に示すように平坦面に滴下したときの幅W1に対して、傾斜部502に滴下したときの幅W2を広くすることができる(W1<W2)。遮光材は広く傾斜面502に滴下することができ、かつ傾斜面502に沿って溝62に流れ落ちるため、遮光材が濡れ広がる時間の短縮化と共に、遮光材の塗布位置が多少変動しても効率よく溝62に遮光材を流すことが可能になる。
【0056】
また、
図11〜16では、互いに隣接するミラー面53の間に溝62を設けた例を示したが、遮光材の濡れ広がりを向上させる形状は、これらに限定されることはなく、毛管現象を利用して濡れ広がりを助長する他の形状も考えられる。
図17〜
図20は、ガイド溝の変形例を示す。
【0057】
図17(a)は、隣接するミラー面53の間、及びミラー面53の先端部の周囲に多数の半円状の凸部64を設けたものである。多数の半円状の凸部64を形成することにより、凸部64と凸部64の間にガイド溝ができ、ガイド溝に沿って遮光材を導くことができる。楕円61は、遮光材の滴下位置の一例を示し、隣接するミラー面53の先端部の間に滴下する。
【0058】
図17(b)は、ミラー面53の断面図であり、隣接するミラー面53の間に多数の半円状の凸部64があり、凸部64の間を縫うように遮光材が濡れ広がり、遮光膜60が形成される。遮光膜60は、例えば紫外線を照射して硬化させるが、遮光膜60塗付厚が厚いと硬化するのに時間がかかる。遮光材を半円状の凸部64に塗付した場合、遮光膜60の塗付厚を薄くすることができ、紫外線による硬化時間を短縮することができる。
【0059】
図18は、隣接するミラー面53の間に細い溝62を設けた例である。溝62は、ミラー面53の先端部から外れた位置を起点にして、隣接するミラー面53の間の境界部に向かって放射状に延びる形状となっている。起点の部分は溝62が密に設けられ、放射状の端部ほど溝62は疎になる。楕円61は、遮光材の滴下位置を示す。滴下位置61は、溝62が密に存在する部分に設定する。遮光材は溝62の密の部分から疎の部分に向かって、ミラー面53間に速やかに濡れ広がる。
【0060】
図19は、隣接するミラー面53の間、及びミラー面53の先端部の周囲に格子状の溝65を設けたものである。楕円61は、遮光材の滴下位置の一例を示し、隣接するミラー面53の間、及びミラー面53の先端間に設定する。
【0061】
図20は、隣接するミラー面53の間、及びミラー面53の先端部の周囲に傾斜した格子状の溝66を設けたものである。楕円61は、遮光材の滴下位置の一例を示し、隣接するミラー面53の間、及びミラー面53の先端間に設定する。
【0062】
尚、遮光材濡れ広がりをよくするために、コロナ処理、プラズマ処理等の物理的な表面処理を遮光材塗布前に行ってもよい。
【0063】
(第3の実施形態)
図21は、第3の実施形態に係る結像素子アレイ50を示すもので、入射レンズ面51(又は出射レンズ面52)の周辺部に遮光膜60を形成する例を示す正面図である。
【0064】
図21は、入射レンズ面51への遮光膜60の形成方法を示す。入射レンズ面51は、アレイ50の基材に対して凸構造の面となっており、隣接した入射レンズ面51の間にはガイド溝として作用する境界部71が形成される。
図21(a)に示すように、隣接するレンズ面51間の境界部から少し離れた位置に三角形状の溝72を設けている。
図21(b)の楕円61は、遮光材の滴下位置を示す。三角形状の溝72に遮光材を滴下することによって、
図21(c)に示すように、遮光材は三角形状の溝72のエッジに沿って流れやすくなり、隣接するレンズ面51の間の境界部71に濡れ広がり、レンズ面51の光透過領域以外の部分に遮光膜60を形成することができる。
【0065】
尚、三角形状の溝72は、各レンズ面51間の上部だけでなく、各レンズ面51間の下部に設けても良い。下部に設けた三角形状の溝を72’で示す。遮光膜60は、上下部の三角形状の溝72、72’により効率よく短時間で各レンズ面51の周辺部に塗付することができる。
【0066】
尚、以上述べた実施形態において、遮光材の滴下位置61は、一例を示したものであり、ミラー面53を避けた位置、例えば複数のミラー面53の間、或いはミラー面53の先端部から少し離れた領域に滴下させるとよい。同様にレンズ面51についても、レンズ面51から少し離れた位置に滴下させるとよい。
【0067】
また以上の説明では、遮光膜60をミラー面53の周囲、又は入射レンズ51の周囲に形成する例を説明したが、ミラー面54の周囲、又は出射レンズ52の周囲に遮光膜60を形成する際も上述した例と同様の手法を用いることができる。
【0068】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、光線を透過する面又は反射する面が基材に対して凸構造の面である結像素子アレイを用いた読取装置及び画像形成装置において、結像素子アレイの光透過領域又は光反射領域の周辺部にガイド溝を設け、ガイド溝に遮光材を塗布することにより、遮光材を毛管現象で凸構造の面の周辺部に効率的に遮光膜を形成することができ、光学性能を劣化させることのない読取装置及び画像形成装置を提供することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。