(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗装材料が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリオール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、混合ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシ、フェノール/ホルムアルデヒド、ポリ(アミド−イミド)およびアルキドの少なくとも1つを結合剤として含み、かつアミノ樹脂、モノマー性およびポリマー性ポリイソシアネートならびにヒドロキシアルキルアミドの少なくとも1つを架橋剤として含む、請求項1又は2に記載の組成物。
前記成形用コンパウンドが、不飽和ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂およびエポキシ樹脂の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
前記成形用コンパウンドが、不飽和ポリエステル樹脂およびビニル樹脂の少なくとも1つを含み、さらにポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレートおよびスチレン/ブタジエンコポリマーの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に使用するポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、少なくとも1つのポリシロキサンブロックおよび少なくとも1つのポリオキサゾリンブロックを含むブロックコポリマーである。それらは、例えば、直鎖ブロックコポリマーまたは分岐鎖ブロックコポリマー、換言すれば、1つのブロックに別のブロックが横方向に付着しているか、またはグラフトされているブロックコポリマーであってよい。
ポリシロキサンおよび対応するポリシロキサンブロックが公知である。本発明に関して、特に、関与するポリシロキサンブロックは、下記の構造式(I)の単位を含むブロックである。
【0017】
この式中、nは1から400、好ましくは5から200、より好ましくは5から100であり、かつR
1およびR
2は、互いに独立に、1から6個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から6個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、4から6個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカル、および/もしくは2から6個の炭素原子を有する直鎖アルケニルラジカル、3から6個の炭素原子を有する分岐鎖アルケニルラジカルもしくは4から6個の炭素原子を有する環状アルケニルラジカル、ならびに/または6から12個の炭素原子を有するアリールラジカル、アルキルアリールラジカルおよび/もしくはアリールアルキルラジカルであり、該ラジカルは、場合によりハロゲン置換されており、故に、場合により、H原子のいくつかまたはすべてが、ハロゲン原子、より詳細にはフッ素によって置きかえられていることを意味する。好ましくは、R
1およびR
2は、互いに独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはフッ素化アルキルラジカルならびに/またはフェニルラジカルならびに/またはハロゲン置換および/もしくはアルキル置換フェニルラジカルである。特に好ましいラジカルR
1およびR
2は、メチルラジカルである。
【0018】
ポリオキサゾリンは同様に公知であり、オキサゾリンモノマーを含むか、またはこれから構成される。使用されるモノマーの中でも、本発明に関して最も関心が高く、またそれ故好ましいのは、一般式の、2−オキサゾリン、より詳細には2位において置換されている下記(A)の2−オキサゾリンである。
【0020】
この式中、R
3は、1から12個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から12個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、3から12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニルラジカル、または、例えばフェニル、ナフチルもしくはベンジルラジカル等、6から10個の炭素原子を有するアリールラジカルを表す。好ましくは、R
3は、1から6個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、より好ましくはメチルまたはエチルラジカル、極めて好ましくはエチルラジカルである。
【0021】
対応するポリマーは、記述されているモノマーから、例えば、開環重合において、p−トルエンスルホン酸メチル等のp−トルエンスルホン酸アルキルエステルまたはアリルトシレートを開始剤として使用するような従来の手法で、調製することができる(例えば、Yoshiki Chujoら、「Synthesis of polysiloxane−polyoxazoline graft copolymer by hydrosilylation reaction」Polymer Bulletin、19(1988)435〜440を参照)。本発明に関して好ましい対応するポリマーおよびしたがってポリオキサゾリンブロックは、下記の構造式(B)の単位:
【0023】
を含む。
この式中、mは1から400、好ましくは5から200、より好ましくは5から100であり、かつR
3は、各々の場合において、任意の他のラジカルR
3とは独立に、上記で定義した通りの有機ラジカルR
3を表す。好ましいポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、下記の構造式(II):
【0025】
からなるポリシロキサンブロックを含む。
この式中、oは0から400、好ましくは5から200、より好ましくは5から100であり、pは0から400、好ましくは0から50、より好ましくは0から10であり、かつR
1およびR
2は、互いに独立に、上記で定義した通りの有機ラジカルR
1およびR
2である。R
5およびR
6は、互いに独立に、R
1もしくはR
2であるか、またはR
4[SiR
1R
2O]
qであり、ここで、qは1から400、好ましくは5から200であり、かつR
4は、1から30個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から30個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、4から30個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカル、ならびに/または6から30個の炭素原子を有するアリールラジカル、アルキルアリールラジカル、および/もしくはアリールアルキルラジカルであり、該ラジカルは、場合によりハロゲン置換されている。好ましくは、R
4はメチルラジカルおよび/またはブチルラジカルである。
【0026】
AおよびCは、互いに独立に、BまたはR
4である。
Bは、窒素および酸素原子を含んでいてよい直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアラルキルラジカル、または直鎖もしくは分岐鎖アルキレンもしくはアラルキレン構造を有するリンカー(linker)であり、但し、シロキサンブロック(II)当たり少なくとも1つのそのようなリンカーがある。
本発明の目的のためのリンカーは、ラジカルとは対照的に、形式的なリンカー構造単位との関連で自由な結合を含み、次いで、他の構造単位との接続を可能にし、それ故、分子中において、別の構造単位との、より詳細には後述するポリオキサゾリンブロックとの連結を形成する構造単位である。
【0027】
シロキサンブロック当たり少なくとも1つのリンカーは、好ましくは式(III):
(CH
2)
t−R
10−R
11−R
12−R
13− (III)
に対応する。
この式中、tは2から30、好ましくは2から3、より好ましくは3であり、R
10は、(CH
2)
u、O、S、NR
14または(C
6R
15)
4であり、ここで、uは0または1であり、R
14は、水素、または1から6個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から6個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、または6から9個の炭素原子を有するアリールラジカル、アルキルアリールラジカルもしくはアリールアルキルラジカルであり、かつR
15は、水素、および/または1から6個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。
【0028】
R
11は(CH
2)
vまたは(CH
2CHR
16O)
wであり、ここで、vは0から30、好ましくは0から3、より好ましくは0であり、かつwは0から50、好ましくは0から30、より好ましくは0であり、かつR
16は、水素、または1から6個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から6個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、または4から6個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカルである。
R
12は(CH
2)
xであり、ここで、xは0から3である。
R
13は、(CH
2)
y、O、S、NR
14であり、ここで、yは0から2であり、かつR
14は、上記で定義した通りの有機ラジカルR
14、好ましくは水素を表す。
【0029】
リンカーは、好ましくはアミノ官能性リンカー(CH
2)
t−R
10−R
11−R
12−NR
14−であり、シロキサン骨格に付着しているアミノ官能性ラジカル(CH
2)
t−R
10−R
11−R
12−NHR
14から生じる。このアミノ官能性ラジカルは、好ましくは第一級アミノ基を持つアミノ官能性ラジカルであり、より詳細には、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、3−アミノプロピルエチルエーテル基または6−アミノヘキシル基、極めて好ましくは3−アミノプロピル基である。したがって、これは、特に、本発明に使用するポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの以下で後述する調製について、少なくとも1つの末端アミノ基を含むポリシロキサンが用いられ、ポリオキサゾリンとの連結は、このアミノ基によって生じ、次いで、アミノ官能性リンカーを含むポリシロキサンブロック、およびポリオキサゾリンブロックも含むポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーが形成されることを意味する。アミノ基またはアミノ官能性ラジカル(CH
2)
t−R
10−R
11−R
12−NR
14−は、それ自体が公知である技術によってポリシロキサンに導入することができる。例は、不飽和有機アミン、より詳細にはアリルアミンのSi−H官能性ポリシロキサンへの添加を包含し、この好ましい添加は、リンカー(CH
2)
3−NH−の導入と同義である。
【0030】
好ましいアミノ官能性リンカーは、塩化(salified)または四級化されていてもよい。アミノ基の変性は、当業者に公知の方法に従って行われる。アミノ基の窒素原子は、例えば、アルキルもしくはアラルキルハロゲン化物、ハロカルボン酸エステル、またはエポキシドを使用して四級化することができる。
本発明に関して、アミノ官能性リンカーは、特に好ましい特性をもたらす。したがって、好ましく用いられる。上述した塩化または四級化の結果として、例えば、本発明に使用するコポリマーは、異なる媒質−すなわち、したがって、特に水系および溶媒系塗装材料組成物の両方に有効に適応することができる。そのような塩化または四級化は、特に、ポリオキサゾリン骨格中の窒素原子では不可能であり、これは、アミド結合内で、これらの原子がカルボニル基に対してアルファ位に位置し、その結果、対応するメソメリー効果により、有効な塩化または四級化を受けにくいからである。加えて、有利なのは、後述するオキサゾリンまたはポリオキサゾリンへのポリシロキサンの有効かつ調製するのが簡単な求核付加であり、この添加は、アミノ基によって、より詳細には第一級アミノ基によって可能になり、本発明に使用するコポリマーの、迅速で、手際がよく、かつ高収率の調製を可能にする。
【0031】
ポリシロキサンブロックは、直鎖または分岐鎖構造を有していてもよい。該ブロックは、好ましくは、200から30000までの範囲内の、より好ましくは500から10000までの範囲内の、またさらに好ましくは500から5000g/モルまでの範囲内の数平均分子量を有する〔ポリシロキサン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定し、ポリシロキサンブロックの親ポリシロキサンは、コポリマーを形成するための反応の前に各々の場合において測定した〕。好ましいポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、下記の構造式(C):
【0033】
からなるポリオキサゾリンブロックを含む。
この式中、mおよびR
3は上記で定義した通りであり、かつDはリンカー(CH
2)
z[ここで、zは0または1である]、あるいは1から30個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から30個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、4から30個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカル、および/または6から30個の炭素原子を有するアリールラジカル、アルキルアリールラジカルもしくはアリールアルキルラジカルである。Eは、いずれも同様に、リンカー(CH
2)
z[ここで、zは0または1である]であるか、式(C)の隣接するCH
2単位がOまたはN原子を介して結合している末端基であり、このOまたはN原子は、水分子の、有機アルコールのOH基に、またはアミンの第一級もしくは第二級アミノ基のN−H単位に由来する。アルコールの有機ラジカルまたはアミンの少なくとも1つの有機ラジカルは、最終的には任意に選択されてよく、特に、1から30個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルラジカル、3から30個の炭素原子を有する飽和分岐鎖アルキルラジカル、4から30個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカル、および/または6から30個の炭素原子を有するアリールラジカル、アルキルアリールラジカルもしくはアリールアルキルラジカルである。
【0034】
式(C)はさらに、基DおよびEの少なくとも一方が上述した通りのリンカーであるとの但し書きに従う。好ましくは、Eはリンカーであり、かつDは上述した通りのラジカルである。
例えばEがリンカー(CH
2)
z[ここで、zは0である]である場合、Eは存在せず、かつ基Eと隣接する式(C)のCH
2単位は、例えば上述した通りの式(III)のリンカーと、より詳細には上述した通りのアミノ官能性リンカーとのように、別の構造単位と直接結合している。
したがって、これは、特に、本発明に使用するポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの調製について、この調製は後述するが、開環重合を用いる公知の方法によって、まず、第一にポリオキサゾリンを調製し、次いで、例えば少なくとも1つの末端アミノ基を含むポリシロキサンと反応させるように、ポリシロキサンと反応させることを意味する。次いで、アミノ基によってポリシロキサンとの連結が生じ、最終的には、ポリオキサゾリンブロック、およびアミノ官能性リンカーを含むポリシロキサンブロックも含むポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーが形成される。
【0035】
ポリオキサゾリンブロックは、好ましくは、200から30000までの範囲内の、より好ましくは500から10000までの範囲内の、またさらに好ましくは500から5000g/モルまでの範囲内の数平均分子量を有する〔ポリスチレン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定し、ポリオキサゾリンブロックの親ポリオキサゾリンは、コポリマーを形成するための反応の前に各々の場合において測定した〕。
ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、当業者に公知である種々のプロセスによって調製することができる。
ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、好ましくは、アミノ官能性ポリシロキサンと末端反応性ポリオキサゾリンとの反応によって調製可能であり、これは、オキサゾリンモノマーの開環重合によって調製することができる。
【0036】
この種の合成は、例えば、Synthesis of polyoxazoline−polysiloxane block copolymers(Chujo,Yoshiki;Ihara,Eiji;Saegusa,Takeo著;Fac.Eng.、Kyoto Univ.、Kyoto、Japan in Kobunshi Ronbunshu(1992)、49(11)、943〜6)において記述されている通りである。
この反応について、好ましいのは、少なくとも1つのアミノ官能性ラジカル、および、それ故少なくとも1つの末端アミノ基を含む、上述したポリシロキサンを使用することである。したがって、好ましいのは、アミノ官能性ラジカル(CH
2)
t−R
10−R
11−R
12−NHR
14を有するポリシロキサンを使用することである。特に好ましいアミノ官能性ラジカルは、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、3−アミノプロピルエチルエーテル基および/または6−アミノヘキシル基、極めて好ましくは3−アミノプロピル基である。好ましいポリシロキサンは、正確に1つのアミノ官能性ラジカルを有するものである。
【0037】
反応において使用するための末端反応性ポリオキサゾリンを調製するための開環重合について、好ましいのは、p−トルエンスルホン酸アルキルエステル、より詳細にはp−トルエンスルホン酸メチルを、開始剤として使用することである。公知の通り、末端反応性ポリオキサゾリンは、開環重合後に、最後に付着したオキサゾリンモノマーが未だ開環していないポリマーである。したがって、最後に付着したオキサゾリンモノマーの依然として閉じている環は正の形式電荷を担持しており、したがって反応性である。
次いで、反応において、事前に行われるオキサゾリン重合の場合のように、依然として存在する末端オキサゾリン環の窒素原子に対してベータ位に位置する活性炭素原子が、求核攻撃に供される。この攻撃は、アミノ官能性ポリシロキサンの少なくとも1つのアミノ基によって行われる。
したがって、好ましい反応によって調製可能なポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、特に、上述した好ましいポリシロキサンブロックおよびポリオキサゾリンブロックからなる。
【0038】
特に好ましいポリマーは、3つを超えないブロックからなり、好ましくは、1つのポリシロキサンブロックおよび2つのポリオキサゾリンブロックが存在する。1つの特に好ましい実施形態において、ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、正確に2つのブロック、すなわち、1つのポリシロキサンブロックおよび1つのポリオキサゾリンブロックからなる。
ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、好ましくは、400から200,000までの範囲内の、より好ましくは1,000から50,000までの範囲内の、またさらに好ましくは1,000から10,000g/モルまでの範囲内の数平均分子量を有する〔ポリスチレン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定した〕。
【0039】
本発明の使用に関して、ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、塗装材料組成物または成形用コンパウンドにおいて、より詳細には、全塗装材料組成物または全成形用コンパウンドに対して、0.005から5重量%、より好ましくは0.01から2重量%の、より詳細には0.01から1重量%の、極めて好ましくは0.01から0.95重量%の割合で使用される。ここでは、いずれか1つのみのポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマー、または2つ以上の異なるポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの混合物がある。好ましくは、正確に1つのコポリマーが使用される。
格別な利点は、本発明に関して決定された以下のような事実である。すなわち、極めて少量のポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーであっても上述した有利な特性を生じ、それ故、最小限のみの使用という利点に加えて、塗装材料組成物または成形用コンパウンドの、ならびにそれらから生成された仕上げ塗りおよび成形品の他の特性が悪影響を受けない。他の特性というのは、例えば、腐食防止、光沢保持または耐候性等の特性である。
本発明の使用に関して、塗装材料組成物が使用される。ここで、異なる熱硬化性塗装材料組成物を用いてもよい。これらの塗装材料組成物は、自己架橋および/または外部架橋していてよい。好ましくは、該組成物は外部架橋している。
【0040】
本発明に関して、「熱硬化性」とは、反応性官能基の化学反応によるペイントまたはワニスの塗膜の架橋(塗装膜の形成)を意味し、この化学反応のエネルギーによる活性化は、特に熱エネルギーにより可能である。したがって、熱硬化は、熱エネルギーによって活性化されることができる化学反応性硬化として理解すべきである。公知の通り、この反応において、異なる官能基は相互補完的に互いに反応することができ、かつ/または膜形成は自己反応性基の反応から誘導され、これらは、同じ種類の基と互いに反応する官能基である。そして、各々の場合において、熱硬化は官能基間の化学反応に基づく。好適な相互補完的な反応性官能基および自己反応性官能基の例は、例えば、ドイツ特許出願DE19930665A1、7頁28行〜9頁24行から公知である。
【0041】
この架橋は、自己架橋および/または外部架橋であってよい。例えば、相互補完的な反応性官能基が、後述する通り、結合剤として使用される有機ポリマー中に既に存在する場合、架橋は自己架橋である。外部架橋は、例えば、ある特定の官能基を含む結合剤としての有機ポリマーが、相互補完的な官能基を含む結合剤としての別の有機ポリマーと反応する場合に存在する。外部架橋は、同様に、結合剤としての有機ポリマーが、以下で後述する通り、架橋剤として使用される有機化合物と反応する場合に存在し、この場合、架橋剤は、用いられる有機ポリマー中に存在する反応性官能基と相互補完的な反応性官能基を含む。
結合剤としての有機ポリマーに、自己架橋官能基だけでなく外部架橋官能基も有させること、次いで架橋剤と組み合わせることも可能である。
【0042】
異なる熱硬化性塗装材料組成物およびそれらの成分は、例えば、「Lackrohstoff−Tabellen、E.Karsten/O.Luckert、Vincentz 2000 ISBN 3878705611」および「Pigment−und Fullstoff−Tabellen、O.Luckert、Vincentz 2002 ISBN 9783878707448」において記述されている。そのような塗装材料組成物は、例えば、少なくとも1つの典型的な有機ポリマーまたはポリマー樹脂を結合剤として、場合により、少なくとも1つの典型的な有機溶媒および/または水、ならびに場合により、他の典型的な塗料添加剤も含む。塗装材料組成物のそのような成分が選択される手法および量は、当業者に公知である。そのような選択は、当業者により、各々の場合において、目下の特定の事例の要件に従い、当業者の技術分野の知識に基づいて行うことができる。
【0043】
公知の通り、有機ポリマー、換言すれば、例えば結合剤として使用され得るポリマーまたは上述したポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、異なるサイズを持つ分子の混合物からなり、これらの分子は、同一のまたは異なる有機モノマー単位(有機モノマーの反応形態として)の配列によって識別される。したがって、特定の有機モノマーが個別のモル質量を有しているのに対し、ポリマーは常に、モル質量が異なる分子の混合物である。したがって、ポリマーは、個別のモル質量によって記述することができないが、代わりに、公知の通り、常に平均モル質量を有しており、これらは数平均(M
n)および重量平均(M
w)モル質量である。
【0044】
結合剤として使用される有機ポリマーは、例えば、従来の重付加樹脂、重縮合樹脂および/または重合樹脂であり、これらは、架橋のための上述の官能基、例えばOH基を含む。これに関して公知の、また本発明に関して有利な使用が可能な有機ポリマーは、例えば、従来のポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリオール、アクリル系〔ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよび混合ポリ(メタ)アクリレート等〕、ポリエステルアクリレート、エポキシ、フェノール/ホルムアルデヒド、ポリ(アミド−イミド)および/またはアルキド樹脂である。さらなる詳細については、Rompp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、73〜74頁を参照されたい。
結合剤としての上記で記載した有機ポリマー以外に、好ましくは、例えば、アミノ樹脂が、ならびにモノマーおよび/もしくはポリマー性、ブロックおよび/もしくは遊離ポリイソシアネート、より詳細にはブロックポリイソシアネート、またはヒドロキシアルキルアミドも、熱硬化または外部架橋のための架橋剤としてさらに使用される。
【0045】
塗装材料組成物における本発明の使用に関して、特に、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、およびポリエステル樹脂が結合剤として使用され、架橋剤としてメラミン−ホルムアルデヒド樹脂と組み合わせられる。これらの熱硬化性塗装材料組成物は、例えば、自動車産業および建設業において、台所用品、家具等として用途を見出している。結合剤としての使用に同様に好ましいのは、例えばケーブル塗装の電気絶縁に使用されるポリ(アミド−イミド)樹脂である。加えて好ましいのは、ヒドロキシアルキルアミド(プリミド系)と架橋され、例えば粉体塗装において使用される、ポリエステル樹脂である。
【0046】
熱硬化性塗装材料組成物の比率としての、結合剤としての有機ポリマーおよび場合により存在する架橋剤の全体的割合は、各個々の事例によって決まり、広く変動させることができる。本発明のある特定の実施形態において、個々の場合において、塗装材料組成物の総量に対して、10から90重量%まで、好ましくは15から80重量%まで、25から60重量%の間の範囲内が特に有利である。しかしながら、より低いまたはより高い割合、より詳細にはより高い割合も、例えば塗装材料組成物が粉体塗装材料である場合には、完全に可能である。
【0047】
熱硬化性塗装材料組成物は、有機溶媒を場合により含む。用いられる有機溶媒は、当業者に公知の典型的な有機溶媒であり、例は、例えば、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、Shellsol A、Solvesso製品等、脂肪族、脂環式および芳香族溶媒、典型的なエーテル、エステルならびに/またはケトンである。同様に水を用いてもよい。故に、例えば、熱硬化性塗装材料組成物は、水系または溶媒系であってよい。本発明に関して、水系は、塗装材料組成物が、溶媒として主に水を含むことを意味する。より詳細には、水系塗装材料組成物の場合、溶媒の総量に対して、20重量%を超えない、より詳細には10重量%を超えない有機溶媒が塗装材料組成物中に存在する。塗装材料組成物は、溶媒の総量に対して、10重量%を超えない、好ましくは5重量%を超えない、とりわけ好ましくは2重量%を超えない水を含有したとしても、本発明の目的のための溶媒系とみなされる。水系または溶媒系特徴が基づく上記で指示した割合と比較すると、当然のことながら、塗装材料組成物は、よりバランスのとれた割合および/または比率の有機溶媒および水も含むことができる。
【0048】
熱硬化性塗装材料組成物は、例えば、粉体塗装材料であってもよい。粉体塗装材料は、100%の固体割合を有する、有機の、通常は熱硬化性の、塗料粉体である。粉体塗装材料による塗装は、公知の通り、溶媒を必要としない。粉体塗料スラリーの使用も可能であり、これらは粉体塗装材料の水性懸濁液である。
したがって、塗装材料組成物中における溶媒の割合は、塗装材料組成物の総量に対して、例えば0から85重量%までの範囲内に位置してよい。
例えば、溶媒系、水系および無溶媒塗装材料組成物も使用することができるという事実は、特に有利であるとみなされる。ポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーは、極性および無極性媒質の両方と卓越した相溶性を有し、いずれの場合も上述した有利な性能特性をもたらす。したがって、適用範囲は非常に大きい。これは、特に、塩化または四級化されていてよい上述したアミノ官能性リンカーを含むコポリマーに当てはまる。
【0049】
本使用に関して使用するための熱硬化性塗装材料組成物は、その上、顔料またはフィラーを含んでもよい。そのような顔料またはフィラーの選択は、当業者により、個々の事例の要件に従って選択することができる。さらなる詳細については、例えば、Rompp−Lexikon Lacke und Druckfarben(Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、250〜252および451〜453頁)を参照されたい。
【0050】
本発明で使用される熱硬化性塗装材料組成物は、異なる塗料添加剤も含んでよい。そのような塗料添加剤は当業者に公知であり、当業者により、個々の事例の要件に従い、当業者の技術分野の知識に基づいて選択することができる。例えば、光開始剤、消泡剤、湿潤剤、セルロース誘導体(例えば、硝酸セルロースおよび酢酸セルロース)等の膜形成助剤、他の流動性制御剤、分散剤、および/またはレオロジー制御添加剤を使用することができる。
特に有利なのは、隠ぺい用塗装材料組成物における、より詳細には上塗りにおける、添加剤としてのポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの使用である。これらは、公知の通り、環境との界面となる塗膜を形成するために使用される塗装材料組成物である。したがって、場合により存在するマルチコートペイント系においても、これらの塗膜はまさしく外側に、換言すれば、下地から離れた側にあるのが正しい。上述した効果、特に防汚性は、特にこれに関して明白に現れる。
その上、特に有利なのは、後に順に積層される下地に利用される塗装材料組成物における、添加剤としてのポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの使用である。上述した移行(塗装からの添加剤のブリードアウト)の低減は、これに関して、特に有利に見える。
【0051】
本発明によってさらに提供されるのは、ポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーを含む熱硬化性塗装材料組成物である。その実施形態および本発明の使用に関して上記で先に記述した好ましい実施形態は、使用されるポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーおよび塗装材料組成物に関して、相応に、ポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーを含む本発明の塗装材料組成物に同じく利用可能である。これは、出願当初の請求項2から12に明記されている好ましい実施形態にも明らかに当てはまる。
【0052】
本発明の塗装材料組成物は、当業者が精通している方法によって生成され、特殊なものではない。撹拌槽または溶解槽等の慣用かつ公知の混合アセンブリ中、撹拌および混合しながらの、塗装材料組成物の成分の段階的添加等、公知の方法が用いられる。
同様に本発明によって提供されるのは、本発明の塗装材料組成物を用いて生成された下地上の塗装である。ここでも、既に明記した好ましい実施形態が、本発明の塗装に関して同じく当てはまる。
塗装は、本発明の塗装材料組成物を下地に塗布し、次いで塗布された塗装材料組成物を硬化させることによって生成される。
塗膜の生成も、当業者が精通している、下地への塗布の技術およびその後の硬化方法によって行われる。
【0053】
塗布は、例えば、公知の噴霧、注入、ナイフ塗装、はけ塗り、回転、流し込み、含浸および/または浸漬法によって遂行されるが、それらに限定されない。
下地への熱硬化性塗装材料組成物の塗布に続いて、熱硬化が一般的方法に従って行われる。硬化は、例えば、強制空気乾燥機もしくはオーブン内で、または赤外線放射によって行なうことができる。熱硬化は、例えば、塗装材料組成物のおよび/または下地の性質に応じて、約10℃から約400℃までの範囲内で実施することができる。硬化時間は、それぞれの事例に応じて、例えば1分から数時間、または、さらには数日間、例えば10日間であるが、より詳細には、1分から2時間、好ましくは1分から1時間である。本発明に関して、硬化は、好ましくは100℃超、より詳細には140℃超、極めて好ましくは180℃超の温度で行われる。用いられる最高硬化温度は、同様に、好ましくは400℃である。したがって、これは、熱硬化性塗装材料組成物が、好ましくは、100℃超、より詳細には140℃超、極めて好ましくは180℃超から出発する温度でのみ完全に硬化することができる組成物であり、これは、これらの温度以上でのみ有効な化学反応が可能であり、それ故、官能性を補足する基および/または自己反応性基の架橋が可能であるためであることを意味する。一般的に言えば、公知の通り、硬化の過程で使われている温度は、完全に硬化した塗膜を取得することができるか否かに影響を及ぼす。これに関して、特に、上述した通りの官能性を補足する基および/または自己反応性基の化学反応に必要とされる熱エネルギーを参照すべきである。本発明の有利な効果は、まさしくそのような塗装材料組成物の場合にとりわけ現れるが、これは、ポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーが、熱硬化性塗装材料組成物について、驚くべきことに、先行技術で公知の変性ポリシロキサン添加剤よりも実質的に熱的に安定であり、それ故、形成する際の塗膜から移行することもないためである。
【0054】
「完全に硬化した」は、塗膜全体にわたって使用時の硬度(service hardness)が実現された塗膜の状態を表す。したがって、横方向および垂直方向の両方に、塗膜は、化学反応性架橋および硬度の観点から均一な状態であり、また、硬化条件へのさらなる暴露の結果として、より詳細には、したがって、100℃超、好ましくは140℃超、極めて好ましくは180℃超の温度へのさらなる暴露によって、それ以上の変化を見せない。したがって、塗膜の有用性は、特に記述されている昇温にまたさらに暴露された場合、それ以上改良されない。
それぞれの事例に応じて、場合により、硬化の前に、例えば10から80℃で、1から60分間にわたるフラッシュを行ってもよい。そのようなフラッシュの過程では、存在する溶媒の一部が既に蒸発しているが、特に硬化はまだ完了していない。
【0055】
乾燥膜厚は、好ましくは3μmから5mm、より詳細には10μmから2mm、より好ましくは10μmから200μmである。ここでも、特定の事例において存在する条件、および個々の塗布領域も要因となる。
本発明に関して用いることができる下地は、塗装材料組成物のための任意の下地である。本発明の塗装は、種々の実施形態および形態において、特に、金属、ガラス、プラスチック、木、皮革、合成皮革、セラミック、紙および織物製品に塗布される。特に好ましい下地は、高耐熱性を有し、特にそれらの形状をそれ以上変化させない、または、実際に、140℃超の温度で分解するものである。したがって、特に注目すべきは、金属下地である。
【0056】
本発明の塗料は、シングルコート塗料であってもマルチコート塗料であってもよい。マルチコート塗料の場合、本発明の塗料の個々の塗膜を生成する塗装材料組成物は、同一であっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明には、用いられる塗装材料組成物の少なくとも1つが、本発明の、換言すれば、ポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーを添加剤として含む塗装材料組成物であることが必須である。この少なくとも1つの塗装材料組成物は、好ましくは、外側塗膜、換言すれば上塗りを生成するために使用されるものである。
成分、調製および考えられる用途の観点から、熱硬化性成形用コンパウンドおよびそれらから生成された成形品に当てはまる所見は、塗装材料組成物および塗装に関して上記で記載したものと同じである。成形用コンパウンドは、加工されて成形部品または成形品を形成することができる材料であると理解され、該コンパウンド中に含有される反応性樹脂−換言すれば、特に、結合剤および場合により架橋剤−は、概して、成形プロセスの後および/または最中の高温で反応し、それにより、熱硬化する。
【0057】
本発明の目的のための成形用コンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂およびビニル樹脂をベースとし、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、およびスチレン/ブタジエンコポリマー等の熱可塑性材料との組合せを含むが、こうした材料は、例えば、収縮低減成分としてポリエステル樹脂に添加される。他の成形用コンパウンドは、特に、ポリウレタンおよびポリアミドを含み、これらは、例えば反応射出成形プロセスにおいて用いられ、離型性の観点から相当の困難を呈する。他の成形用コンパウンドは、エポキシ樹脂をベースとするものであってもよい。これらのエポキシ樹脂は、好ましくは、注型用化合物および圧縮成形用コンパウンドの分野において使用される。例えば、湿式圧縮プロセス、射出プロセスまたは引き抜きプロセスによって加工することができる他の成形用コンパウンドは、「フェノール樹脂」の用語で知られているフェノール/ホルムアルデヒド縮合樹脂である。
これらの成形用コンパウンドは、同様に、先行技術に従って慣例となっている添加剤、または塗装材料に関して上に既述した種類の他の成分を含むことができる。特に、そのような成形用コンパウンドはフィラーを含んでもよく、例は、補強フィラーと称されるものである。フィラーの注目すべき例は、ガラス繊維、炭素繊維およびポリアミド繊維、珪灰石、ケイ酸塩、無機炭酸塩、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ならびにカオリンである。
添加されるポリシロキサン−ポリオキサゾリンコポリマーの量および成形用コンパウンドの硬化温度に関する限り、上述した塗装材料組成物に関する場合と同じことが当てはまる。
【実施例】
【0058】
以後、本発明について、例を使用してさらに詳細に記述する。
略語、商標名:
pTsOMe=p−トルエンスルホン酸メチル
EtOxa=2−エチル−2−オキサゾリン
MeOxa=2−メチル−2−オキサゾリン
eCL=ε−カプロラクトン
ESA=無水酢酸
DBTL=ジブチル錫ジラウレート
PMI=多分子性指数
AN=アミン価
OHN=水酸基価
【0059】
測定技術:
NMR分光法:
NMR測定は、NMR機器(Bruker DPX 300)を300MHz(
1H)または75MHz(
13C)で使用して行った。使用した溶媒は、重水素化クロロホルムおよび重水素化ジメチルスルホキシドであった。
固体の決定
2gの試料を、事前に乾燥させたアルミニウム皿に量り分け、試料を、乾燥キャビネット内、150℃で10分間乾燥させ、デシケーター内で冷却し、次いで冷却した試料を再度秤量した。残留物は固体割合に対応している。
【0060】
水酸基価
アルコール性水酸基を、過剰の無水酢酸によるアセチル化によって反応させる。次いで、過剰な無水酢酸を水の添加によって開裂して酢酸を形成し、これをエタノール性KOHで逆滴定する。水酸基価は、アセチル化時に1gの物質によって結合される酢酸の量と同等のKOHの量(単位mg)である。
アミン価
アミン含有物質をHClで滴定する。アミン価は、1gの物質のアミン割合に対応するKOHの量(単位mg)である。
数平均分子量(Mn)
Mnは、ポリシロキサンまたはポリスチレン標準物質に対するGPCを利用して決定した。
【0061】
実施例1−モノアミノ官能性ポリジメチルシロキサン
撹拌器、温度計、滴下漏斗、還流冷却器および窒素送入管を備えた四つ口フラスコに、モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサン(250g、M
n≒2000g/モル)およびカルステッド触媒(4.38g、キシレン中0.2%希釈)を投入し、この初期投入物を徹底的に混合し、100℃に加熱する。アリルアミン(9.29g)を30分間かけて滴下添加する。モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、過剰なアリルアミンを留去する。生成物について測定されたアミン価は、22.5mgKOH/gである。
【0062】
実施例2−モノアミノ官能性ポリジメチルシロキサン
撹拌器、温度計、滴下漏斗、還流冷却器および窒素送入管を備えた四つ口フラスコに、モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサン(1500g、M
n≒5000g/モル)およびカルステッド触媒(6.56g、キシレン中0.8%希釈)を投入し、この初期投入物を徹底的に混合し、100℃に加熱する。アリルアミン(39.8g)を30分間かけて滴下添加する。モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、過剰なアリルアミンを留去する。生成物について測定されたアミン価は、9mgKOH/gである。
【0063】
実施例3−α,ω−ジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン
撹拌器、温度計、滴下漏斗、還流冷却器および窒素送入管を備えた四つ口フラスコに、ジ−SiH官能性ポリジメチルシロキサン(400g、M
n≒3000g/モル)およびカルステッド触媒(1g、キシレン中0.2%希釈)を投入し、この初期投入物を55℃に加熱する。アリルグリコール(33.7g)を、温度が75℃を超えないような速度で計量する。ジ−SiH官能性ポリジメチルシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、過剰なアリルグリコールを留去する。生成物について測定された水酸基価は、33.4mgKOH/gである。
【0064】
実施例4−モノヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン
撹拌器、温度計、滴下漏斗、還流冷却器および窒素送入管を備えた四つ口フラスコに、モノ−SiH官能性ポリシロキサン(300g、M
n≒2000g/モル)およびカルステッド触媒(0.75g、キシレン中0.2%希釈)を投入し、この初期投入物を55℃に加熱する。アリルグリコール(19.9g)を、温度が75℃を超えないような速度で計量する。モノ−SiH官能性ポリシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、過剰なアリルグリコールを留去する。生成物について測定された水酸基価は、23.9mgKOH/gである。
【0065】
実施例5−モノヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン
撹拌器、温度計、滴下漏斗、還流冷却器および窒素送入管を備えた四つ口フラスコに、モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサン(500g、M
n≒5000g/モル)およびカルステッド触媒(1g、キシレン中0.2%希釈)を投入し、この初期投入物を55℃に加熱する。アリルグリコール(13.1g)を、温度が75℃を超えないような速度で計量する。モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、過剰なアリルグリコールを留去する。生成物について測定された水酸基価は、10.2mgKOH/gである。
【0066】
ポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーについての一般的な合成実施要領
滴下漏斗、撹拌器、温度計および冷却器を備えた四つ口フラスコに、p−トルエンスルホン酸メチル、オキサゾリンの半分および溶媒の半分を投入する(表1を参照)。50℃で、残り半分の溶媒中の残り半分のオキサゾリンを計り入れる。計量添加の後、混合物を、モノマーの転化が定量的となるまで、75℃で撹拌する。反応物の確認は、NMRを利用して行う。その後、アミノ官能性ポリジメチルシロキサンをゆっくり計り入れる(表1を参照)。混合物を75℃でもう2時間撹拌する。溶媒を留去する。
一般的実施要領に沿って、下記のポリオキサゾリン−ポリシロキサンコポリマーを調製した:
【0067】
【表1】
【0068】
ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンについての一般的な合成実施要領
ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン、ε−カプロラクトンおよびShellsol Aを、滴下漏斗、撹拌器、温度計および冷却器を備えた四つ口フラスコに量り分け、この初期投入物を窒素雰囲気下で160℃に加熱する。次いで、0.3重量%(バッチ全体に基づく)のキシレン中DBTLの10%濃度溶液を添加する。バッチを、ε−カプロラクトンのすべてが反応するまで、160℃で撹拌する。転化の確認は、固体の決定を利用してなされた。その後、バッチを90℃に冷却し、無水酢酸を添加する。加えて、0.05重量%の1−メチルイミダゾールを添加する。バッチを90℃で3時間撹拌する。溶媒および過剰な無水酢酸を留去する。
一般的実施要領に沿って、下記のポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを調製した。
【0069】
【表2】
【0070】
比較例7:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン
滴下漏斗、撹拌器、温度計および冷却器を備えた四つ口フラスコ中、モノ−SiH官能性ポリジメチルシロキサン(78g)、Dowanol PMA(200g)、トルエン(25g)およびアリルポリエーテル〔アリル−(エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)〕−OH、1:1のEO:PO比、および4000g/モルの数平均分子量、82.18g)を量り分け、100℃に加熱する。2.32gの0.6%濃度Speiers溶液を添加する。モノ−SiH官能性ポリシロキサンの反応を、ガス容積測定法を利用してモニターする。反応終了後、溶媒の一部を留去し、90℃への冷却を行った後、無水酢酸を添加する。加えて、0.05重量%の1−メチルイミダゾールを添加する。バッチを90℃で5時間撹拌する。溶媒および過剰な無水酢酸を留去する。
【0071】
熱重量分析
熱重量分析(機器:TA製TGAQ5000)を、実施例7および10について、ならびに比較例2および5についても行った(表3)。この目的のために、試料をアルミニウムるつぼに量り分け、10K/分の速度で30℃から400℃に空気中で加熱した。その後、物質の残留量(単位重量%)を決定した。
【0072】
【表3】
【0073】
結果は、本発明のコポリマーが、ポリエステル変性ポリシロキサンよりも著しく良好な熱安定性を呈することを示す。
性能特性の検討
上記の例に従って調製されたポリシロキサンコポリマーを使用して、異なる塗装材料組成物を生成させた。これらの塗装材料組成物を使用して、塗装を異なる下地上に生成させた。塗装材料組成物および塗装の種々の特性を検討した。検討した塗装材料組成物および塗装、それらの特性、ならびに関連する分析技術を後述する。
【0074】
システム1:移行挙動
塗装材料組成物の組成、塗装の生成:
Phenodur PR285をベースとする金ワニス
組成(数字は重量部):
Phenodur PR285/55%形態 15.0
Epikote 1007(Dowanol PM中50%) 62.2
Maprenal MF800/55%形態 1.7
Solvesso 150ND 11.5
Dowanol PM 9.6
Phenodur PR285/55%形態=Cytec製硬化可能なフェノール樹脂
Epikote 1007(Dowanol PM中50%)=Resolution Performance Products製ビスフェノールAをベースとするエポキシ樹脂
Maprenal MF800/55%形態=INEOS Melamines,Inc.製イソブチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂
Uralac SN852をベースとするスタンピングワニス
組成(数字は重量部):
Uralac SN852
(Solvesso 150ND中60%) 17.1
Disperbyk 110 0.9
Kronos 2310 30.0
ブチルジグリコールアセテート 3.3
−溶解槽15分 5000rpm、歯付き円盤6cm、350ml容器
Uralac SN852
(Solvesso 150ND中60%) 24.0
Solvesso 150ND 6.9
Maprenal MF980(ブタノール中62%) 6.0
Epikote 834(SE 150D中80%) 10.3
ブチルジグリコールアセテート 1.5
Uralac SN852=DSM Coatings Resins製2−メトキシ−1−メチルメタクリレートをベースとするアクリレート樹脂
Maprenal MF980=INEOS Melamines GmbH製ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、n−ブチル−エーテル化されたもの
Epikote 834=Hexion Specialty Chemicals B.V.製ビスフェノールAをベースとするエポキシ樹脂
Kronos 2310=Kronos International製二酸化チタンルチル
Disperbyk 110=Byk−Chemie GmbH製湿潤・分散添加剤、酸性基を持つコポリマーの溶液
【0075】
添加剤、全配合物に対して0.02%の活性物質を、最初に手動で金ワニス中に撹拌する。次いで、Skandexシェーカーを用いて混合を10分間行う。混合または振とうの1日後、添加剤入り(additized)金ワニスを、30μmのワイヤードクターでブリキシート(Kruppel E1電解めっきしたブリキ)上にドローダウンする。ワニスを190℃で12分間焼き付ける。
【0076】
分析方法:
流動性を目視で評価する(1=良好な流動性、5=不十分な流動性)。
移行挙動を決定するために、9.5cm×9.5cmのサイズに切断した後に添加剤入り金ワニスで塗装したシートを、塗装面がその上にあるシートのむき出しの背面と接触するように順に積層する。積層体をブロックテスター内に固定し(
図1)、トルクレンチを使用して20ニュートンの負荷を印加する。次いで、シートが固定されたブロックテスターを、60℃のオーブンに24時間入れる。その後、シートをブロックテスターから除去し、スタンピングワニスを、35μmのワイヤードクターでむき出し面上にドローダウンする。後でワニスを施した面の濡れが乏しくなるほど、その真下に積層されたシートから移行したシリコーンの量が多くなる。評価は目視でなされた(評点1〜5、1=添加剤の移行なし;5=添加剤の激しい移行)。
【0077】
COF(滑り抵抗性)の決定のために、塗布されたシートを、Altek 9505AER機器を使用して測定する。この機器において、1kgの重りを127mm/分のスピードで引いてシートを覆う。COFの算出のために、取得された値に0.01倍を乗じる。したがって、低い値は低い滑り抵抗性に対応する。取得された結果を表4に提示する。
【0078】
【表4】
【0079】
結果は、実施例6、8、9および10からの本発明に使用するコポリマーを使用して良好な流動性を生成し、ポリエステル変性との比較システムの場合のようにして、滑り抵抗性における実質的低減が実現されることを示す。その上、本発明の典型である例は、実質的により小さい移行、およびそれ故、より良好な重ね塗り適合性の確実さで知られる。
【0080】
システム2:洗浄しやすい/塗膜間接着
塗装材料組成物の組成、塗装の生成:
アクリレート/メラミン焼き付けワニス、透明
組成(数字は重量部):
Setalux 1756VV−65、65%形態 60
Setamine US138BB−70、70%形態 24
Shellsol A 8
キシレン 8
Setalux 1756VV−65、65%形態=アクリレート焼き付け樹脂、Shellsol A中65%、Nuplex Resins、Bergen op Zoom
Setamine US138BB−70、70%形態=メラミン焼き付け樹脂、n−ブタノール中70%、Nuplex Resins、Bergen op Zoom
【0081】
添加剤、全配合物に対して0.05%の活性物質を、まず、第一に手動で撹拌する。これに続いて、Skandexシェーカーで10分間混合する。混合または振とうの1日後、添加剤入りワニスを、湿ったまま150μmの四方向バーコーターでガラス板および下塗りした(primed)鋼シート(ST1405)上にドローダウンする。25℃で30分間のフラッシュ時間の後、シートを140℃で25分間焼き付ける。塗膜間接着の試験のために、硬化は、勾配オーブン内、各々の場合において、170℃、200℃および230℃でも行った。
【0082】
分析方法:
表面張力測定(OFS)は、Kruss製張力計を使用し、DIN53914に従うリング法によって行った。
ガラス板を使用して曇りを目視で評価した。
1=曇りなし、5=極めて曇っている
【0083】
滑り、または滑り抵抗性の低減は、滑り測定機器を用い、BYK−Chemie GmbHのAPM−001性能試験方法に従って決定した。この目的のために、被試験塗装材料を、事前に食洗機内で洗浄した10×40cm寸法のガラス板に塗布する。板をアプリケーターに固定し、塗装の中心に500gの重りを置くような手法で位置付ける。重りと力変換器との間に1〜2mmの間隔を残す。重りを50mm/秒の速度で試料の上に押し付ける。測定を標準試料(ブランク、添加剤なし)に対して行い、これを評価の基準として使用する。
【0084】
評価のために、滑りの低減(単位%)を算出する。以下の表5において報告される滑り低減は、次の通りに算出される:
a=標準物質のCOF
b=試料aのCOF
滑り抵抗性の低減=
【0085】
【数1】
【0086】
Edding試験:
Edding 400油性マーカーペンを使用してワニスの表面に書き込み、表面が書き込み可能であるか否かの目視評価を行う。評価されるパラメーターは、インクが表面上に広がるか収縮するかである。インクが乾燥した後、乾いた布を使用してそれを拭き取るための試みがなされる。
評点1〜5による評価(目視):
1=インクは収縮し、紙布を用いて残留物なしに除去することができる
5=インクは下地上に極めてよく広がり、除去することは事実上不可能である
【0087】
鉱油流れ試験:
一滴の市販の鉱油をワニス表面に塗布する。次いで、塗装されたワニス表面を、滴がおよそ10cm流れるまで傾斜させる。5分が経過した後、油の跡または滴再編成を評価するための検査をした。
評点1〜5による評価(目視):
1=油の跡は直ちに再編成して個々の滴となる
5=油の跡は再編成せず、代わりに場合によってはより広く広がる
取得された結果を表5に提示する。
【0088】
【表5】
【0089】
表面張力、曇り、および滑り抵抗性の低減の場合、取得される特性は、添加剤入り比較製品で取得されるものと類似している。その上、本発明の典型である例で添加剤入りワニスは、防汚および撥油(oil repellency)特性における明確な改良を呈する。
【0090】
塗膜間接着および重ね塗り適合性:
塗膜間接着を決定するために、試料を、四方向バーコーターを使用して、150μmの濡れ膜厚で下塗りした鋼シートに塗布し、勾配オーブン内、140、170、200および230℃でそれぞれ焼きつける。その後、それぞれの試料のさらなる塗膜を塗布し、硬化を強制空気オーブン内、140℃で行う。その後、各温度範囲について、DIN53151クロスカット試験を実施する。塗膜間接着を、評点に基づいて評価する(評点1〜5、1は極めて良好な塗膜間接着に対応し、5は不十分な塗膜間接着に対応する)。
【0091】
【表6】
【0092】
取得された結果は、本発明の実施例がより良好な塗膜間接着および重ね塗り適合性が確実であることを示す。
接触角:
水との接触角は、Kruss G2接触角測定機器を使用し、前進接触角として測定した。8μリットルを予備計量に使用し、8μリットル〜12μリットルの10の接触角を各滴側面について決定した。報告されている値は、測定値の平均である。
【0093】
【表7】
【0094】
取得された結果は、添加剤導入(additization)が表面の疎水化をもたらすことを示す。
全体として、本発明によるシステムは、一方の防汚性と他方の重ね塗り適合性との間の卓越したバランスを示す。同時に、良好な流動性および低い滑り抵抗性等の他の重要な特性は完全に維持される。