特許第6294986号(P6294986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6294986
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】直管パイプ用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/084 20060101AFI20180305BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20180305BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F16L37/084
   F16L21/08 C
   F16L21/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-58320(P2017-58320)
(22)【出願日】2017年3月24日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】榎本 亮太
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−90361(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128152(WO,A1)
【文献】 実開昭49−143810(JP,U)
【文献】 実開昭56−61317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/084
F16L 21/00
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状壁、前記筒状壁に配置された受動部、前記受動部と反対側の端部に配置された押圧部、及び前記筒状壁の半径方向に貫通する長孔を有する筒状の本体と、
前記本体の内側に前記本体の軸線方向に変位可能に配置され、直管パイプと接触し直管パイプからの挿入力を受ける接触端、及び該接触端とは反対側の係合端を有し、該係合端に前記本体の前記受動部と係合する突起部が設けられたスライドリングと、
前記本体の前記長孔を貫通するように配置され、且つ前記スライドリングの外周部に前記軸線方向で固定された連結部材と、
前記本体の外側に配置され、且つ前記連結部材と係合することで、前記スライドリングとともに前記本体に対して前記軸線方向に変位するホルダと、
前記ホルダの内側に保持された環状の弾性部材からなるパイプ保持部材と、を備え、
前記受動部と前記突起部との係合により、前記本体に対する前記スライドリングの前記軸線方向での変位が抑止され、
前記直管パイプが前記本体内に挿入されたときには、前記直管パイプが前記スライドリングの接触端を押して、前記スライドリングが前記連結部材および前記ホルダと一体の状態で前記直管パイプの挿入方向と同方向に変位し、前記パイプ保持部材が前記本体の前記押圧部によって圧縮されて、前記パイプ保持部材の内周面が縮径して直管パイプの外周面に押し付けられることによって生じる保持力により前記直管パイプが保持されるようにされた接続状態となり、
前記パイプ保持部材により保持されている前記直管パイプが前記本体から引き抜かれるようにされたときには、前記パイプ保持部材による保持力により前記ホルダが前記連結部材および前記スライドリングと一体の状態で前記直管パイプの引き抜き方向と同方向に変位して、前記押圧部による前記パイプ保持部材の圧縮力が低減または解放されて前記保持力が低減し、前記直管パイプの保持が解除される準備状態になるようにされた、継手。
【請求項2】
前記スライドリングの前記係合端に前記突起部が前記スライドリングの軸方向と交差する半径方向に変位できるようにする複数の切欠きが形成され、前記切欠きで2個以上に分割されたことによる前記係合端の弾性力と前記直管パイプの押し込み動作の挿入力により前記突起部が前記本体の前記受動部に設けられた溝を乗り越えて前記本体の前記押圧部と反対の方向に動作し前記準備状態から前記接続状態に変化するようにされていて、且つ直管パイプの引き出し動作の力により前記突起部が前記本体の前記受動部を乗り越えて前記本体の前記押圧部の方向に動作し前記接続状態から前記準備状態に変化するようにされた、請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記本体の前記受動部の溝をねじ構造とし、前記スライドリングの前記突起部を前記ねじ構造で受けるようにされた請求項1又は2に記載の継手。
【請求項4】
前記スライドリングの前記突起部の位置をそれぞれ前記受動部のねじのピッチと合うように配
置することで押し込み動作および引き抜き動作のみではなく回転動作によって直管パイプの接続と離脱とをするようにされた請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記本体の前記押圧部の形状を前記パイプ保持部材に向かって拡径する形状とし、前記パイプ保持部材の端部を半径方向内側により潰しやすくされた請求項1乃至4の何れか1項に記載の継手。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直管パイプ用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
直管パイプ用継手において、接続される直管パイプの損傷を低減するようにしたものがある。例えば特許文献1には、締付環体5によって被接続用のパイプ1を保持することで、パイプ1の損傷を低減するようにした管継手Cが開示されている。より詳細には、管継手Cは、締付環体5によってパイプ1を締め付けることでパイプ1の内面がシール部材4に密接して密封状態となるようにされており、且つ、抜け止めリング8をパイプ1に食いつかせることで、パイプ1が管継手Cから抜け出ることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-031282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管継手Cは、上述のとおりパイプ1の内面をシール部材4に密接させるために締付環体5によって半径方向内側に締め付けられていることと、抜け止めのために抜け止めリング8がパイプ1に食いつくようにされていることから、パイプ1の損傷を完全には防止できていない。また、管継手Cにパイプ1を挿入可能にするために、拡径片6を、締付環体5を拡径させた状態で保持するように離脱可能に圧入していることから、一度使用された管継手Cを再利用するためには、管継手Cを分解して再度組み立てる必要があった。
【0005】
そこで本発明は、直管パイプを損傷させることなく、接続と離脱とを繰り返すことが出来る継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
筒状壁、前記筒状壁に配置された受動部、前記受動部と反対側の端部に配置された押圧部、及び前記筒状壁の半径方向に貫通する長孔を有する筒状の本体と、
前記本体の内側に前記本体の軸線方向に変位可能に配置され、直管パイプと接触し直管パイプからの挿入力を受ける接触端、及び該接触端とは反対側の係合端を有し、該係合端に前記本体の前記受動部と係合する突起部が設けられたスライドリングと、
前記本体の前記長孔を貫通するように配置され、且つ前記スライドリングの外周部に前記軸線方向で固定された連結部材と、
前記本体の外側に配置され、且つ前記連結部材と係合することで、前記スライドリングとともに前記本体に対して前記軸線方向に変位するホルダと、
前記ホルダの内側に保持された環状の弾性部材からなるパイプ保持部材と、を備え、
前記受動部と前記突起部との係合により、前記本体に対する前記スライドリングの前記軸線方向での変位が抑止され、
前記直管パイプが前記本体内に挿入されたときには、前記直管パイプが前記スライドリングの接触端を押して、前記スライドリングが前記連結部材および前記ホルダと一体の状態で前記直管パイプの挿入方向と同方向に変位し、前記パイプ保持部材が前記本体の前記押圧部によって圧縮されて、前記パイプ保持部材の内周面が縮径して直管パイプの外周面に押し付けられることによって生じる保持力により前記直管パイプが保持されるようにされた接続状態となり、
前記パイプ保持部材により保持されている前記直管パイプが前記本体から引き抜かれるようにされたときには、前記パイプ保持部材による保持力により前記ホルダが前記連結部材および前記スライドリングと一体の状態で前記直管パイプの引き抜き方向と同方向に変位して、前記押圧部による前記パイプ保持部材の圧縮力が低減または解放されて前記保持力が低減し、前記直管パイプの保持が解除される準備状態になるようにされた、継手を提供する。
【0007】
当該継手においては、直管パイプの保持に弾性部材を使用することで、直管パイプの変形及び損傷を伴わずに接続及び離脱をすることができる。また、弾性部材を本体で圧縮した際の弾性力を利用した直管パイプの保持構造により接続と離脱とを繰り返すことが可能となる。
【0008】
具体的には、前記スライドリングの前記係合端に前記突起部が前記スライドリングの軸方向と交差する半径方向に変位できるようにする複数の切欠きが形成され、前記切欠きで2個以上に分割されたことによる前記係合端の弾性力と前記直管パイプの押し込み動作の挿入力により前記突起部が前記本体の前記受動部に設けられた溝を乗り越えて前記本体の前記押圧部と反対の方向に動作し前記準備状態から前記接続状態に変化するようにされていて、且つ直管パイプの引き出し動作の力により前記突起部が前記本体の前記受動部を乗り越えて前記本体の前記押圧部の方向に動作し前記接続状態から前記準備状態に変化するようにすることができる。
【0009】
また具体的には、前記本体の前記受動部の溝をねじ構造とし、前記スライドリングの前記突起部を前記ねじ構造で受けるようにすることができる。
【0010】
さらに具体的には、前記スライドリングの前記突起部の位置をそれぞれ前記受動部のねじのピッチと合うように配置することで押し込み動作のみではなく回転動作による直管パイプの挿入を可能とすることができる。
【0011】
また具体的には、前記本体の前記押圧部の形状を前記パイプ保持部材に向かって拡径する形状とし、前記パイプ保持部材の端部を半径方向内側により潰しやすくすることができる。
【0012】
以下、本発明に係る直管パイプ用継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る直管パイプ用継手の側面断面図である。
図2図1の直管パイプ用継手の接続状態を示す側面断面図である。
図3図1の直管パイプ用継手の準備状態を示す側面断面図である。
図4図1の直管パイプ用継手のスライドリングの突起部の詳細図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る直管パイプ用継手の側面断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る直管パイプ用継手の側面断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る直管パイプ用継手の側面断面図である。
図8図7の直管パイプ用継手のスライドリングの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る直管パイプ用継手10は、図1に示すように筒状の本体12と、本体12の内側に配置され、直管パイプPと接触し直管パイプPからの挿入力を受けるスライドリング14と、本体12の外側に配置され、連結部材としてのピン16によってスライドリング14と一体に繋がれているホルダ18と、ホルダ18の内側に保持されたパイプ保持部材としてのパッキン20とを備えている。本体12には、その内周面に凹凸状の受動部22が形成されている。また、本体12の直管パイプPを受け入れる側の端部13(図で見て右側の端部)には、パッキン20を潰すための押圧部24が形成されている。更に、本体12の外周面には内側から外側に貫通する長孔25が形成されており、長孔25の内側をピン16が貫通している。スライドリング14の直管パイプPを受け入れる側と逆方向(図で見て左側)の可動端部(係合端)15には、本体12の受動部22と係合する凸状の突起部26が形成されている。また、スライドリング14の外周には溝28が形成されており、溝28にはピン16が挿入されている。ホルダ18の内側には、パッキン20を保持する段差状の溝30が形成されており、外周面にはピン16が圧入固定される空孔32が設けられている。パッキン20の内側には直管パイプPを保持する直管パイプ保持面34が形成されており、パッキン20の直管パイプPを受け入れる側と逆方向の端部(図で見て左側の端部)には本体12の押圧部24により押圧力を受ける受動面36が形成されている。また、スライドリング14の突起部26は本体12の受動部22が形成された範囲を軸線方向に可動となっている。当該直管パイプ用継手10は、後述するように、直管パイプPを本体12の内側に挿入したときにはパッキン20の直管パイプ保持面34の保持力により保持された接続状態(図2)となるようにされており、直管パイプPを引き抜くようにしたときには、パッキン20の直管パイプ保持面34の保持力が低下または解放されることにより、再度接続が可能となる準備状態(図3)となるようにされている。
【0015】
直管パイプPを本体12の内側に挿入したときには、直管パイプPがスライドリング14の接触端14aに接触し、スライドリング14が押される。スライドリング14にはピン16によってホルダ18が連結されているため、直管パイプPによってスライドリング14、ピン16及びホルダ18が直管パイプPの挿入方向に変位する。ホルダ18に保持されたパッキン20は、受動面36が本体12の押圧部24によって押圧されることで圧縮され、直管パイプ保持面34が縮径し、直管パイプPを保持するようになっている(図2)。スライドリング14の接触端14aはゴム等のシール部材によって形成されているため、直管パイプPとスライドリング14とは、スライドリング14の接触端14aによって密封されている。直管パイプPを直管パイプ用継手10から引き抜くようにしたときには、パッキン20よる保持力によりホルダ18がピン16およびスライドリング14と一体の状態で直管パイプPの引き抜き方向と同方向に変位して、本体12の押圧部24によるパッキン20の圧縮力が低減または解放される。これにより、縮径されていたパッキン20の直管パイプ保持面34の保持力が減少し、直管パイプPを引き抜くことが可能な状態となる(図3)。
【0016】
本体12の受動部22およびスライドリング14の突起部26は、状態にかかわらず常に係合しており、接続状態と準備状態で係合位置が変位するようになっている。
【0017】
スライドリング14の可動端部15は、図4に示すように半径方向外側および半径方向内側に可動になるように複数の切欠き42を有している。切欠き42で2個以上に分割されたことによる可動端部15の柔軟性と直管パイプPの押し込み動作の挿入力により、突起部26が、本体12の受動部22に設けられた凸部を乗り越えて本体12の押圧部24と反対の方向に動作し、直管パイプ用継手10は準備状態から接続状態に変化する。また、直管パイプPの引き出し動作の力により、突起部26が、本体12の受動部22の凸部を乗り越えて本体12の押圧部24の方向に動作し、直管パイプ用継手10は接続状態から準備状態に変化する。このようにすることで、接続状態から準備状態へ変位する際の抵抗力を発揮することができ、直管パイプPを直管パイプ用継手10から引き抜くためには、ある一定以上の力で引き抜かなければならないようになっている。また、受動部22と突起部26とが係合する面の角度を変更することで、直管パイプPを直管パイプ用継手10から引き抜くためのある一定以上の力を調整することができる。
【0018】
パッキン20は、OリングもしくはXリングのような他の弾性部材とすることも可能である。
【0019】
スライドリング14の溝28に挿入されているピン16は、スライドリングの外側面にねじ穴を設け、かつピンのスライドリング方向端部にも同様にねじを設けることにより、ピンとスライドリングを締結によって固定することも可能である。
【0020】
このように当該直管パイプ用継手10においては、直管パイプPの保持にパッキン20を使用することで、直管パイプPの変形及び損傷を伴わずに接続及び離脱をすることができる。また、パッキン20を本体12の押圧部24で圧縮した際の弾性力を利用した直管パイプPの保持構造により接続と離脱とを繰り返すことが可能となる。
【0021】
本発明の第2の実施形態に係る直管パイプ用継手210は、図5に示すように本体212の押圧部224の形状をパッキン20に向かって拡径する形状としている点での第1の実施形態に係る直管パイプ用継手10と異なる。これにより、パッキン20の端部を半径方向内側により潰しやすくすることが可能となる。
【0022】
本発明の第3の実施形態に係る直管パイプ用継手310は、図6に示すようにパッキン320の直管パイプ保持面334に溝344を設けている点での第1の実施形態に係る直管パイプ用継手10と異なる。パッキン320が本体312の押圧部324による押圧力で潰れやすくなり、より効果的に直管パイプPの保持をすることが可能となっている。
【0023】
本発明の第4の実施形態に係る直管パイプ用継手410は、図7に示すように本体412の受動部422の溝をねじ構造としている点で第1の実施形態に係る直管パイプ用継手10と異なる。当該実施形態においては、スライドリング414の突起部426をねじ構造で受けるようにすることが可能となっている。
【0024】
直管パイプ用継手410においては、図8に示すようにスライドリング414の突起部426の位置をそれぞれ本体412の受動部422のねじのピッチと合うように配置することで押し込み動作および引き抜き動作のみではなく回転動作によって直管パイプPの接続と離脱とをすることが可能となっている。
【符号の説明】
【0025】
直管パイプ用継手10;本体12;端部13;スライドリング14;接触端14a;可動端部15;ピン16;ホルダ18;パッキン20;受動部22;押圧部24;長孔25;突起部26;溝28;溝30;空孔32;直管パイプ保持面34;受動面36;切欠き42;直管パイプ用継手210;本体212;押圧部224;直管パイプ用継手310;本体312;パッキン320;押圧部324;直管パイプ保持面334;溝344;直管パイプ用継手410;本体412;スライドリング414;受動部422;突起部426;直管パイプP

【要約】
【課題】直管パイプを損傷させることなく接続及び離脱を行うことができ、且つ接続及び離脱を繰り返すことができる管継手を提供すること。
【解決手段】直管パイプPを挿入することで保持が完了する直管パイプ用継手10において、直管パイプPを挿入したときにスライドリング14が直管パイプPと一体に軸線方向に動作し、スライドリング14の突起部26が本体12の受動部22を乗り上げ、ピン16によってスライドリング14と一体にされたホルダ18が同軸線方向に動作することで、ホルダ18の内側に保持されたパッキン20が本体12の押圧部24により圧縮力を受け、これによるパッキン20の圧縮力により直管パイプPを保持するようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8