【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は、断りのない限り、全て質量基準である。また、塗工量は絶乾塗工量である。
【0036】
不織布基材1の作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維40質量部と繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維20質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm
3/cm
2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式方式で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付12g/m
2の不織布とした。さらに、この不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度30m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚み18μmの不織布基材1を作製した。
【0037】
不織布基材2の作製
熱カレンダー処理の条件を、線圧200kN/m、処理速度10m/分にした以外は不織布基材1と同様にして、厚み14μmの不織布基材2を作製した。不織布基材2は、その表面において、繊維間がより強く融着しているため、不織布基材1と比較して、塗工液が浸透しにくい。
【0038】
塗工液1の作製
体積平均粒子径2.3μm、比表面積3m
2/gのベーマイト100部を、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3質量%水溶液120部に混合し十分撹拌し、次いで、その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液300部及び、ガラス転移点5℃、体積平均粒子径0.2μmのカルボキシ変性スチレンブタジエン樹脂(SBR)エマルション(固形分濃度50質量%)10部を混合、撹拌して塗工液1を作製した。なお、本塗工液1のB型粘度は1020mPa・sであった。
【0039】
塗工液2の作製
その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5質量%水溶液300部を100部にした以外は塗工液1と同じようにして塗工液2を作製した。なお本塗工液2のB型粘度は210mPa・sであった。塗工液2は、塗工液1と比較して粘度が低いため、不織布基材に対し浸透しやすい。
【0040】
セパレータAの作製
不織布基材1上に、塗工液1を、キスリバース方式のグラビアコーターにて絶乾塗工量が16g/m
2となるように塗工・乾燥し、厚み36μmのセパレータAを作製した。
【0041】
セパレータBの作製
不織布基材1上に、塗工液1を、キスリバース方式のグラビアコーターにて絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工・乾燥した後、さらに同じ塗工面に再度、塗工液1を、キスリバース方式のグラビアコーターにて絶乾塗工量が8g/m
2となるように塗工・乾燥し、厚み35μmのセパレータBを作製した。
【0042】
セパレータCの作製
工程紙の剥離面上に、塗工液2を、キスリバース方式のグラビアコーターにて絶乾塗工量が16g/m
2となるように塗工し、乾燥前の塗工面上に不織布基材1を軽く貼り合わせた後、乾燥し、次いで工程紙を剥離除去して、厚み35μmのセパレータCを作製した。
【0043】
セパレータDの作製
不織布基材1に代えて、不織布基材2を使用した以外は、セパレータAと同じにして、厚み35μmのセパレータDを作製した。
【0044】
セパレータEの作製
塗工液2に代えて、塗工液1を用いた以外は、セパレータCと同じようにして、厚み39μmのセパレータEを作製した。
【0045】
セパレータFの作製
キスリバース方式のグラビアコーターに代えて、含浸式コーターを用いた以外は、セパレータAと同様にして、厚み32μmのセパレータFを作製した。
【0046】
セパレータGの作製
2回目の塗工を、1回目の塗工面とは反対の不織布基材面に行った以外は、セパレータBと同様にして、厚み33μmのセパレータGを作製した。
【0047】
セパレータHの作製
塗工液1に代えて、塗工液2を用いた以外は、セパレータAと同じようにして、厚み34μmのセパレータHを作製した。
【0048】
セパレータIの作製
塗工液1に代えて、塗工液2を用い、さらに、キスリバース方式のグラビアコーターに代えて、含浸式コーターを用いた以外は、セパレータAと同様にして、厚み30μmのセパレータIを作製した。
【0049】
<評価>
【0050】
[厚み]
各セパレータの断面を、EDSを備えたSEM装置(電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(JEOL)製、JSM−06700F)にて観察した。そして、アルミニウム(Al)を検出した領域」を「無機顔料であるベーマイト」とした。「Alを検出せず、かつ実体が存在する領域」を「基材繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維」とした。「無機顔料の存在比率が4/1である深さ」を「顔料主体層と混在層の境界線」とした。「無機顔料の存在比率が1/4である深さ」を「混在層と繊維主体層の境界線」であるとした。
【0051】
これらの「境界線」から、「顔料主体層」、「混在層」、「繊維主体層」の厚みをそれぞれ求めた(I、II、III)。「混在層が顔料主体層の反対面まで到達」している場合、「繊維主体層」の厚みは「0(零)」とみなした。結果は表1に記した。
【0052】
[傾斜比率]
「混在層の深さ1/4の部分における無機顔料の存在比率X」と、「混在層の深さ3/4の部分における無機顔料の存在比率Y」との比(X/Y)を「傾斜比率」として、表1に記した。なお、セパレータEについては、「混在層」の厚みが薄すぎて、「傾斜比率」を求めることができなかった。
【0053】
[Al/C比]
各セパレータの表裏面におけるエネルギー分散X線分光法によるAl及びCの強度ピーク比(Al/C比)を、電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(JEOL)製、JSM−06700F)を使用して加速電圧10kV、倍率40倍の視野を3箇所測定し、得られたAl及びC由来の特性X線のピーク強度(特性X線のカウント数)の比の平均値により求めた。
【0054】
図2、
図3及び
図4は、セパレータA、E及びFの塗工液付与面(塗工面)、左記の反対面(裏面)、断面のSEM像である。
図5及び
図6は、セパレータA及びFの塗工面、裏面、断面のSEM像及びエネルギーX線分散法を用いたスペクトルである。
【0055】
[電池の繰り返し充放電特性]
各セパレータを用い、正極活物質がマンガン酸リチウム、負極活物質が人造黒鉛、電解液が溶媒:エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの7/3(容量比)混合溶媒、電解質:リチウムヘキサフルオロフォスフェート(1mol/L)である設計容量が100mAhのラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。なお、電池の組立にあたっては、セパレータの顔料主体層を負極に相対させるようにした。
【0056】
その後、作製した各電池について、「200mA定電流充電→4.2V定電圧充電(1時間)→200mAで定電流放電→2.8Vになったら次のサイクル」のシーケンスにて200サイクルの充放電を行い、[1−(100サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)]×100(%)として、100サイクル目の容量低下率を求めた。また、[1−(200サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)]×100(%)として、200サイクル目の容量低下率を求めた。容量低下率が低い方が、サイクル特性が良好な電池である。結果は表1に記した。
【0057】
◎:容量低下率が10%未満
○:容量低下率が10%以上20%未満
△:容量低下率が20%以上30%未満
×:容量低下率が30%以上
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、顔料主体層、混在層、繊維主体層がこの順に重なってなるリチウムイオン電池用セパレータA〜Eは、繊維主体層が存在しないリチウムイオン電池用セパレータF〜Iに比べて、繰り返し充放電における容量低下率が小さく、サイクル特性が良好という効果を達成できる。
【0060】
繊維主体層の厚み(III)が2μm以上かつ顔料繊維混在層の厚み(II)の3倍以下であるセパレータA〜Cは、繰り返し充放電における容量低下率が特に小さく、サイクル特性が特に良好であった。これに対し、繊維主体層の厚み(III)が顔料繊維混在層の厚み(II)の3倍を超えるセパレータD〜Eでは、セパレータA〜Cと比較して、サイクル特性がやや不良であった。
【0061】
繊維主体層の厚み(III)が0μmであり、繊維主体層が存在しないセパレータF〜Iは、いずれもサイクル特性が不良であった。
【0062】
また、セパレータA〜Dの比較から、傾斜比率が1.5倍以上であるセパレータA及びBでは、繰り返し充放電における容量低下率が極めて小さく、サイクル特性が極めて良好という効果が達成できた。
【0063】
また、セパレータA〜Eの比較から、表面のエネルギー分散X線分光法によるAl及びCの強度ピーク値の比(Al/C比)が、顔料主体層側の面は20以上、繊維主体層側の面は0.1以上1.0未満であるセパレータA〜Dでは、200サイクル目における繰り返し充放電における容量低下率が小さく、サイクル特性が良好という効果を達成できた。