(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンボス溝は、長手方向に沿う直線で形成された直線区間と、その両端から連続するとともに、それぞれ幅方向内側に向けて傾斜する傾斜区間とから構成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布又は透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
近年、この種のパルプ繊維を用いた比較的嵩のある吸収性物品の場合には、身体のラインに影響して目立ちやすい、持ち運びに不便である、または収納性が悪いなどの問題があるとともに、物流の効率化や省資源化などの要請から、エアレイドパルプ不織布(以下、単にエアレイドともいう。)を吸収体として用いた薄型の吸収性物品が好まれる傾向にある。ところが、吸収体の薄型化に伴い吸収量が劣る、表面に凹凸をつけにくいため肌との間に隙間ができ横漏れが生じやすいなどの問題がしばしば指摘されている。吸収量低下の問題に対しては、高吸水性樹脂の含有率を上げるなどによって解決が図られているが、隙間からの漏れの問題に対しては、まだまだ十分な対策が採られているとは言えない。
【0004】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するための手段が種々講じられている。例えば、下記特許文献1では、エアレイド不織布と該エアレイド不織布の一面側に配された液透過性シートとを有し、該エアレイド不織布と該液透過性シートとが共にエンボス加工されて該液透過性シートの側に個々に独立した不連続な多数の凹部が形成されており、該凹部内において該液透過性シートの一部が開口して該エアレイド不織布の一部が露出している吸収体が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、吸収体の端の部分を折り返すことによって、液体をせき止め吸収することができるようにした体液吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収体では、エアレイド不織布と液透過性シートとが共にエンボス加工されて個々に独立した不連続な多数の凹部が形成されているため、この凹部がエンボスによって硬化して装着感が悪化するおそれがあった。また、上記特許文献1記載の吸収体では、エンボス加工して凹部を形成し、この凹部内に排泄物を流れ込ませ、それ以上の流れを防止することによって漏れを防止しているが、薄型吸収性物品の場合には、吸収体に十分な深さの凹部が形成できないため、エンボス凹部だけで体液の横漏れを防止するには不十分であった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の体液吸収性物品の場合、吸収体の側端部を折り返すことによって障壁を形成しているが、薄型吸収性物品の場合には側端部を単に折り返しただけでは横漏れ防止のための十分な高さの障壁が形成されず横漏れが発生するおそれがあった。また、側端部に1本だけ肌側に突出する障壁を形成した場合には違和感が生じ装着感が悪化する問題があった。
【0009】
更に、薄型吸収性物品の場合、表面の凹凸が小さいため、肌との間に隙間ができやすく、横漏れが生じやすかった。特に、幅方向両側では、身体のラインが中央部を頂部として幅方向に湾曲しているため肌との間に隙間ができやすく、横漏れが生じやすかった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、薄型の吸収性物品においても装着感を悪化させることなく横漏れを確実に防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体は、
平面状に形成された吸収体本体の肌面側に、略長手方向に沿って肌側に突出する左右一対の第1障壁と、前記第1障壁の外側であって該吸収体の側縁に沿って肌側に突出する左右一対の第2障壁とが備えられるとともに、前記第1障壁と第2障壁の中間
であって前記吸収体本体の肌面側にそれぞれ、略長手方向に沿うエンボス溝が形成され
、
前記第1障壁及び第2障壁はそれぞれ、前記吸収体本体と別体のシート状の吸収体を幅方向に折り畳むことによって構成されているとともに、前記第2障壁は前記第1障壁より肌側に高く突出し、かつ前記第2障壁の幅が前記第1障壁の幅よりも大きいことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体の両側に略長手方向に沿って設けられた肌側に突出する左右一対の第1障壁及び第2障壁によって、幅方向に流れる体液が堰き止められるため、吸収体として薄型のものを用いた場合でも、横漏れが確実に防止できるようになる。更に、第1障壁と第2障壁との中間に長手方向に沿うエンボス溝を設けてあるため、第1障壁を乗り越えて体液が外側に流出しても、前記エンボス溝に沿って長手方向に素早く拡散し、第2障壁の広い範囲で受け止めることができるので、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0013】
また、幅方向両側にそれぞれ、幅方向に離間して第1障壁と第2障壁の2本の障壁が設けられているため、両側にそれぞれ1本の障壁を設けたものより広い範囲で肌と接触するので、装着時の違和感が大幅に軽減できるようになる。
【0014】
また、本発明では、前記第1障壁及び第2障壁はそれぞれ、シート状の吸収体を幅方向に折り畳むことによって構成されているとともに、前記第2障壁は前記第1障壁より肌側に高く突出し、かつ前記第2障壁の幅が前記第1障壁の幅よりも大きくなっている。
【0015】
前記第1障壁及び第2障壁
は、シート状の吸収体を幅方向に折り畳むことによって構成している。このため、前記シート状の吸収体としてエアレイドパルプ不織布のような薄型の吸収体を使用して、第1障壁及び第2障壁を簡単に設けることができるようになる。なお、前記シート状の吸収体としては、吸収体本体と同じ素材のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。
【0016】
内側の第1障壁より外側の第2障壁の方が肌側に高く突出して設けることによって、障壁が全体として外側に向けて高く傾斜して設けられるようになるので、第1障壁を越えるような大量の体液が排出された場合であっても、第2障壁で確実に堰き止めることができるようになるとともに、幅方向中央部を頂部として湾曲する身体のラインにも適切にフィットし、肌との隙間が低減して漏れが防止できるようになる。
【0017】
さらに、第2障壁が第1障壁より外側に存在しているのと、第2障壁を相対的に高く形成した場合には肌に接触しやすいので、第2障壁の幅の方が相対的に大きくするのが好ましい。
【0018】
請求項2に係る本発明として、前記吸収体は、エアレイドパルプ不織布からなる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項2記載の発明では、前記吸収体としてエアレイドパルプ不織布を使用することによって、吸収体を薄型化している。
【0020】
請求項
3に係る本発明として、前記透液性表面シート面側に略長手方向に沿う左右一対の縦方向エンボスが形成され、前記第1障壁は、前記縦方向エンボスの外側に沿って形成されている請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項
3記載の発明では、前記第1障壁を縦方向エンボスの外側に沿って形成することによって、凹凸感を軽減して装着中の違和感を和らげている。
【0022】
請求項
4に係る本発明として、前記エンボス溝は、長手方向に沿う直線で形成された直線区間と、その両端から連続するとともに、それぞれ幅方向内側に向けて傾斜する傾斜区間とから構成されている請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項
4記載の発明では、前記エンボス溝を、直線区間と、その両端から連続するとともに、それぞれ幅方向内側に向けて傾斜する傾斜区間とから構成することによって、エンボス溝に沿って流れる体液を長手方向両端部で吸収体の幅方向内側に誘導することができ、横漏れがより確実に防止できるようになる。
【0024】
請求項
5に係る本発明として、前記吸収性物品は、個装時に幅方向折り線にて長手方向に折り畳まれ、
前記第1障壁及び第2障壁はそれぞれ、前記幅方向折り線と重なる領域に、略幅方向に沿う切り込みが設けられている請求項1〜
4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項
5記載の発明では、吸収性物品を個装時に幅方向折り線にて長手方向に折り畳んだ場合、前記第1障壁及び第2障壁に折り皺がつくことによって、装着時に障壁としての機能が低下するのを防止するため、前記第1障壁及び第2障壁の前記幅方向折り線と重なる領域に、略幅方向に沿う切り込みを設けることによって折り皺を軽減するようにしている。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、薄型の吸収性物品においても装着感が悪化することなく横漏れを確実に防止できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1及び
図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に介在された親水性不織布からなるセカンドシート6と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから主に構成されている。前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の端縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0030】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0031】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0032】
これら不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、エアレイドパルプ不織布を使用することが望ましい。前記エアレイドパルプ不織布は、所定長さの繊維を解繊して空気の流れに乗せて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させるエアレイド法によりウエブを形成し、該ウエブにおける繊維同士の交点をバインダー繊維により熱融着させるか、又はエマルジョンバインダーで繊維交点を結合させて形成されたシート状の吸収体である。なお、前記ウエブ繊維中に適宜粉粒状の高吸水性ポリマーを混入させることによって吸水容量を増大させるようにしてもよい。前記エアレイドパルプ不織布を構成する繊維としては、パルプ繊維の他、熱可塑性繊維の短繊維が用いられる。熱可塑性繊維としては、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のオレフィン類や、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸とを共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類などの各種合成繊維が挙げられる。
【0033】
前記バインダー繊維としては、融点の異なる低融点樹脂と高融点樹脂とからなり且つ該低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成している熱融着性複合繊維が好適に用いられる。熱融着性複合繊維の形態は、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維など何れの複合繊維を用いることができる。
【0034】
前記エマルジョンバインダーとしては、水系エマルジョンバインダー及び有機溶剤系のエマルジョンバインダーの何れをも用いることができるが、取り扱い性や安全性等の点から水系エマルジョンバイダーを用いることが好ましい。バインダー成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂などを用いることができる。
【0035】
前記吸収体4としてエアレイドパルプ不織布を用いる代わりに、積繊吸収体を使用することも可能である。積繊吸収体を用いる場合、後段で詳述する吸収体本体4Aに第1障壁10と第2障壁11のための凹部が形成された型を用意し、この型に積繊することによって、第1障壁10及び第2障壁11が吸収体本体4Aと一体的に形成されるようになる。積繊吸収体としては、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性ポリマーを混入したものなどが用いられる。前記吸収体4は、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙によって囲繞することが好ましいが、無くても構わない。
【0036】
また、前記吸収体本体4Aは、後段で詳述する縦方向エンボス8及びエンボス溝12が付与される領域を除いて、幅方向及び長手方向にほぼ均一な密度を有している。つまり、前記吸収体4としてエアレイドパルプ不織布を使用する場合には、前記縦方向エンボス8及びエンボス溝12以外には、吸収体が圧縮されていない。これによって、ゴワ付きや違和感がなく薄型ナプキンの装着性が向上するとともに、吸収体に吸収された体液が幅方向及び長手方向に拡散スピードが変化することなく素早く拡散して吸収できるので、ナプキン全体の吸収量が増加できる。
【0037】
なお、本生理用ナプキン1は主に薄型のナプキンを対象としているので、体液排出部に対応する領域に周辺の吸収体厚より増厚した中高部を設けないことが望ましい。
【0038】
一方、本生理用ナプキン1の表面側両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられている。このサイド不織布7,7が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2とによって側方フラップ部が形成されている。
【0039】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、体液が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記サイド不織布7における体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0040】
前記透液性表面シート3の面側に、略長手方向に沿う左右一対の縦方向エンボス8、8が形成されている。前記縦方向エンボス8は、透液性表面シート3の表面側から吸収体4(吸収体本体4A)にかけて圧搾されたエンボスであって、透液性表面シート3と吸収体4とを接合することと、体液の拡散を防止することなどを目的として付与されるものである。平面形状は、長手方向に分断することなく連続的に形成され、図示例では、体液排出部の両側部に相当する幅方向両側にナプキン長手方向に延びる直線によって左右一対の縦方向エンボス8、8が形成されるとともに、これら縦方向エンボス8、8の前後端縁がそれぞれナプキン外側に膨出する円弧状エンボス8a、8aで接続されることによって、全体として周方向に閉合した縦長の小判形に形成されている。前記縦方向エンボス8、8は、図示例のような直線の他、幅方向の外側又は内側に膨出する曲線としてもよく、前後端部を前記円弧状エンボス8aで接続せずに左右両側で独立的に設けることも可能である。
【0041】
〔吸収体4について〕
本生理用ナプキン1では、前記吸収体4は、平面状に形成された吸収体本体4Aの肌面側に、略長手方向に沿って肌側に突出する左右一対の第1障壁10と、前記第1障壁10の外側であって、吸収体4の側縁に沿って肌側に突出する左右一対の第2障壁11とが備えられるとともに、前記第1障壁10と第2障壁11の中間に、略長手方向に沿うエンボス溝12が形成されている。
【0042】
前記第1障壁10及び第2障壁11は、前記吸収体本体4Aと別体の吸収体を接合することによって構成する方が、障壁の形状や目付、質感等を任意に調整できるので好ましいが、上述のようにパルプの積繊によって吸収体本体4Aと一体的に構成してもよい。より好ましくは、シート状(又は帯状)の吸収体を幅方向に折り畳むことによって前記第1障壁10及び第2障壁11を構成し、吸収体本体4Aの肌面側に接合するのがよい。前記シート状の吸収体としては、前記吸収体本体4Aと同じエアレイドパルプ不織布を用いることが好ましいが、その他の製法によるパルプ不織布や積繊パルプなど、吸収体本体4Aと異なる素材からなるものを用いることも可能である。前記吸収体本体4Aと同じエアレイドパルプ不織布によって構成する場合、エアレイドを幅方向に所定の幅で折り畳んで、折り畳んだエアレイド同士をホットメルト接着剤等によって接着するとともに、前記吸収体本体4Aの表面側の所定位置にホットメルト接着剤等によって接着する。これによって、第1障壁10及び第2障壁11の厚みや目付が自由に選択できるとともに、加工が簡単にでき、素材の共通化による資材コストの削減を図ることもできるようになる。
【0043】
前記第2障壁11は、第1障壁10より肌側に高く突出して設けることが好ましい。すなわち、第1障壁10及び第2障壁11をエアレイドを折り畳むことによって形成する場合、第2障壁11の方が第1障壁10より折り畳み回数を多くすることが好ましい。図示例では、第1障壁10が2つ折り、第2障壁11が3つ折りとされている。これによって、第1障壁10を越えて外側に流出するような大量の体液が排出された場合でも、これより高く突出した第2障壁11によって堰き止めることができるので、横漏れが確実に防止できるようになる。また、幅方向中央部を頂部として湾曲する身体のラインに対し、幅方向外側が相対的に高く突出することによって肌との密着性が高まり、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0044】
前記第1障壁10は、前記縦方向エンボス8の外側に沿って形成することが好ましい。つまり、縦方向エンボス8は、第1障壁10の内側縁部に沿って付与されている。これにより、装着時に第1障壁10の凹凸感が軽減でき、装着中の違和感を和らげることができるとともに、第1障壁10の保形性が維持できるようになる。図示例のように、縦方向エンボス8が直線で形成される場合には第1障壁10も直線で配置され、図示しないが、縦方向エンボス8が曲線で形成される場合には第1障壁10もこれに沿った曲線で配置される。
【0045】
前記第2障壁11は、吸収体4の側縁に沿って配置することが好ましい。吸収体4の側縁に沿って配置するとは、吸収体本体4Aの側縁に近接して配置する場合の他、吸収体本体4Aの側縁より若干内側に離間した近傍位置に配置する場合も含む。これによって、吸収体4の側縁で確実に体液を堰き止めることができるようになる。図示例では吸収体4の側縁が長手方向に沿う直線で形成されるため、第2障壁11もこれに沿った直線で配置されているが、吸収体4の側縁が幅方向内側に膨出した曲線で形成される場合には、第2障壁11もこれに沿った曲線で配置する。
【0046】
前記第1障壁10と第2障壁11の中間に形成されるエンボス溝12は、吸収体本体4Aの肌面側から圧搾されたエンボスであって、主として第1障壁10を乗り越えて外側に流出した体液を該エンボス溝12に沿ってナプキン長手方向に拡散させるために設けられるものである。このエンボス溝12は、
図1に示されるように、ナプキン長手方向に沿う直線によって形成された直線区間12aと、その両端から連続するとともに、それぞれ幅方向内側に向けて傾斜する傾斜区間12b、12bとから構成することが望ましい。これにより、エンボス溝12の両端部に拡散した体液を幅方向内側に誘導しやすくなり、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0047】
前記第1障壁10及び第2障壁11は、透液性表面シート3によって一体的に覆われている。すなわち、前記透液性表面シート3が第1障壁10及び第2障壁11をそれぞれ個別的に覆うのではなく、前記第1障壁10と第2障壁11との間で透液性表面シート3と吸収体本体4Aの表面との間に空間が設けられるように、透液性表面シート3が第1障壁10の頂部と第2障壁11の頂部との間に架け渡されるように配置されている。これによって、第1障壁10及び第2障壁11の凹凸感が軽減され、装着時の違和感が緩和できるようになる。また、透液性表面シート3が第1障壁10及び第2障壁11を一体的に覆うことによって、第1障壁10及び第2障壁11がない場合に比べて、透液性表面シート3の表面積が増加し、表面シート3を幅方向に流れる体液の移動距離が長くなるため、その間に吸収体4に吸収される機会が増加するので、この点からも横漏れが軽減できるようになる。
【0048】
前述のように構成される生理用ナプキン1においては、前記第1障壁10及び第2障壁11の2重の障壁によって幅方向に流れる体液が堰き止められるため、吸収体本体4Aとして薄型のものを用いた場合でも、横漏れが確実に防止できるようになる。また、第1障壁10と第2障壁11との間に長手方向に沿うエンボス溝12を形成してあるため、第1障壁10を乗り越えて外側に体液が流出しても、体液が前記エンボス溝12に沿ってナプキン長手方向に素早く拡散した後、第2障壁11の広い範囲で受け止められるので、横漏れが確実に防止できるようになる。
【0049】
また、吸収体本体4Aの幅方向両側にそれぞれ、第1障壁10と第2障壁11の2本の障壁が設けられているため、1本の障壁を設けたものより広い範囲で肌と接触するようになり、装着時の違和感が大幅に軽減できるようになる。
【0050】
次に、前記吸収体4の各部の寸法について説明する。本生理用ナプキン1は薄型ナプキンを対象としているため、
図3に示されるように、吸収体本体4Aの厚みTは0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.0mmとするのがよい。また、吸収体本体4Aの幅Bは90mm以下が好ましい。
【0051】
前記第1障壁10及び第2障壁11の吸収体本体4A表面からの高さH1、H2は、吸収体本体4Aの厚みTとの関係で、吸収体本体4Aの厚みT:第1障壁10の高さH1:第2障壁11の高さH2=1:1〜3:1.5〜4とするのがよい。また、各部の目付は、吸収体本体4Aの目付:第1障壁10の目付:第2障壁11の目付=1:1〜2:1.1〜2とするのがよい。つまり、内側の第1障壁10から外側の第2障壁11に向けて高さを高くすることで、装着時の違和感を軽減し、装着感を損ねないとともに、体液の漏れが確実に防止できるようになる。なお、吸収体本体4A、第1障壁10及び第2障壁11をそれぞれエアレイドで形成した場合、目付が50〜250g/m
2、好ましくは170〜200g/m
2の範囲内で、それぞれ同一の目付としてもよいし、異なる目付としてもよい。
【0052】
一方、各部の幅は、
図3に示されるように、縦方向エンボス8の外側縁部から吸収体本体4A側端までの距離B0は、5〜30mm、好ましくは8〜20mmがよく、第1障壁10の幅B1及び第2障壁11の幅B2はそれぞれ、2〜10mm、好ましくは3〜6mmがよく、第1障壁10と第2障壁11との間隔B3は、1〜10mm、好ましくは2〜5mmとするのがよい。また、各部の幅の相対的関係は、縦方向エンボス8の外側縁部と吸収体本体4A側端までの距離B0を基準として、B0:B1:B2:B3=1:0.2〜0.4:0.2〜0.4:0.1〜0.3とするのがよい。縦方向エンボス8の外側縁部と吸収体本体4A側端までの距離B0を基準として各部の幅寸法を規定することによって、特に第1障壁10と第2障壁11との間隔が離れすぎないようにし、障壁間の表面の凹凸感を軽減している。
【0053】
また、第1障壁10の幅B1と第2障壁11の幅B2は、同じとしてもよいが、異なる方が好ましい。この場合、第2障壁11が第1障壁10より外側に存在しているのと、第2障壁11を相対的に高く形成した場合には肌に接触しやすいので、第2障壁11の幅B2の方が相対的に大きくするのが好ましい。
【0054】
なお、第2障壁11の外側端部から吸収体本体4Aの側縁までの幅方向距離は、0〜10mm、好ましくは0〜5mmとするのがよい。
【0055】
続いて、各部のナプキン長手方向の長さについて説明すると、
図4に示されるように、各部の長さは、第1障壁10、エンボス溝12の直線区間12a及び第2障壁11の順に、長手方向両端の長さが漸次長くなるように形成するのが好ましい。すなわち、エンボス溝12の直線区間12aは、第1障壁10より長手方向両側に長く形成されるとともに、第2障壁11は、エンボス溝12の直線区間12aより長手方向両側に長く形成されている。これによって、外側に向かうにつれて長手方向に拡散する体液を効果的に堰き止めることができるようになる。
【0056】
具体的に、第1障壁10の長さL1は、50〜300mm、好ましくは70〜95mmとするのがよく、第2障壁11の長さL2は、60〜340mm、好ましくは110〜140mmとするのがよく、エンボス溝12の直線区間12aの長さL3は、50〜320mm、好ましくは100〜130mmとするのがよい。また、各部の相対的関係は、生理用ナプキン1の長手寸法L(
図1参照。)を基準として、L:L1:L3:L2=1:0.35〜0.75:0.40〜0.8:0.45〜0.85とするのがよい。
【0057】
なお、エンボス溝12の傾斜区間12bのナプキン長手方向の長さL4は、1〜30mm、好ましくは10〜25mmとするのがよい。前記傾斜区間12bの先端は、図示例のように第2障壁11よりナプキン長手方向の外側に位置するようにしてもよいし、第2障壁11の範囲内に位置させてもよい。
【0058】
ところで、本生理用ナプキン1においては、個装時に、ナプキンを幅方向折り線Sにて長手方向に折り畳んだとき、第1障壁10及び第2障壁11が嵩高のため多数の皺が発生し、装着時に折り癖が残って障壁としての機能が十分に発揮されない場合がある。そこで、
図5に示されるように、前記第1障壁10及び第2障壁11の少なくとも前記幅方向折り線Sと重なる位置にそれぞれ、略幅方向に沿って切り込み13を設けることが好ましい。
【0059】
前記切り込み13は直線状に形成され、ナプキン幅方向に平行して(幅方向折り線Sに平行して)形成してもよいし、ナプキン長手方向の中心側(
図5(A))又はナプキン長手方向の外側(
図5(B))に向けて傾斜して形成してもよい。長手方向中心側に傾斜させた方が、長手方向外側に傾斜させるより、体液を内側に引き寄せやすくなるため好ましい。前記切り込み13は、前記第1障壁10又は第2障壁11に沿って間隔をあけて複数設けることが好ましい。
【0060】
前記切り込み13は、
図5に示されるように、第1障壁10及び第2障壁11の全幅に亘って設けるのではなく、幅方向外側に非切り込み範囲を残して幅方向内側の所定範囲に設けることが好ましい。全幅に亘って切り込みを設けると装着時に障壁が分断して、そこから漏れが生じるおそれがある。切り込み13を設ける幅は、第1障壁10の幅B1、第2障壁11の幅B2に対して、切り込み13の幅:B1:B2=0.1〜0.8:0.4〜1:1とするのがよい。切り込み13の具体的な長さは、1〜6mm、好ましくは1.5〜4mmとするのがよい。