特許第6295003号(P6295003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295003
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】受動パルスシェイピング付き光源
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   H01S3/10 D
【請求項の数】23
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-200316(P2017-200316)
(22)【出願日】2017年10月16日
(62)【分割の表示】特願2016-94439(P2016-94439)の分割
【原出願日】2016年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-26585(P2018-26585A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2017年11月15日
(31)【優先権主張番号】14/722,609
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516137579
【氏名又は名称】ルメンタム スィツァーランド アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Switzerland AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】ボジャン レザン
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0177642(US,A1)
【文献】 特開2014−003262(JP,A)
【文献】 特開2007−242940(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/162209(WO,A1)
【文献】 特表2007−532005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブピコ秒のパルス継続時間のシード光パルスを発生するように構成されたシード光源と、
前記シード光パルスを受光し、前記シード光パルスが増幅される前に前記シード光パルスのスペクトルを拡幅して、前記シード光パルスの増幅に伴うゲイン狭帯域化効果を事前補償するように構成されたパルスシェイピング・フィルタと、
ゲインスペクトルを提供するゲイン素子を含み、前記スペクトルを拡幅されたシード光パルスを増幅するように構成された光増幅器とを備えた光パルス源であって、
前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタを通過する回数、または前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタによって反射される回数が、前記スペクトルを拡幅されたシード光パルスが前記ゲイン素子を通過する回数を超える光パルス源。
【請求項2】
前記パルスシェイピングフィルタがノッチフィルタである、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項3】
前記ノッチフィルタが、前記光増幅器がピークゲイン値を有する波長と一致したノッチ中心波長を有する、請求項2に記載の光パルス源。
【請求項4】
前記パルスシェイピング・フィルタが幅2〜6nmのノッチを有する、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項5】
前記ゲイン素子がYbでドープした材料を含む、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項6】
前記ゲイン素子が、少なくとも3dBのゲインの大きさ、及び20ナノメートル未満のゲイン帯域幅を提供し、
前記ゲインスペクトルがベル形ゲインスペクトルである、
請求項1に記載の光パルス源。
【請求項7】
前記パルスシェイピング・フィルタが、当該パルスシェイピング・フィルタの最大透過に対して10%〜30%のノッチの深さを有する、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項8】
前記パルスシェイピング・フィルタが、反射面上に配置された薄膜層の積層を含む、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項9】
前記パルスシェイピング・フィルタが、透過面上に配置された薄膜層の積層を含む、請求項1に記載の光パルス源。
【請求項10】
シード光源によって、サブピコ秒のパルス継続時間のシード光パルスを発生するステップと、
反射面上に配置された薄膜層の積層を含むパルスシェイピング・フィルタによって、前記シード光パルスを受光するステップと、
前記シード光パルスが増幅される前に、前記パルスシェイピング・フィルタによって前記シード光パルスのスペクトルを拡幅して、前記シード光パルスの増幅に伴うゲイン狭帯域化効果を事前補償するステップと、
ゲインスペクトルを提供するゲイン素子を含む光増幅器によって、前記スペクトルを拡幅されたシード光パルスを増幅するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記パルスシェイピングフィルタが備えるノッチフィルタを用いて、前記光増幅器のゲイン狭帯域化効果を減少させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記前記ゲイン素子がYbでドープした材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲイン素子が、少なくとも3dBのゲインの大きさ、及び20ナノメートル未満のゲイン帯域幅を提供し、
前記ゲインスペクトルがベル形ゲインスペクトルである、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタを透過する回数、または前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタによって反射される回数が、前記シード光パルスが前記ゲイン素子を透過する回数を超える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ノッチフィルタを具えたデバイスであって、該ノッチフィルタが、
サブピコ秒のパルス継続時間のシード光パルスをシード光源から受光し、
前記シード光パルスが光増幅器によって増幅される前に、前記シード光パルスのスペクトルを拡幅して、前記シード光パルスの増幅に伴うゲイン狭帯域化効果を事前補償する
ように構成されたデバイス。
【請求項16】
前記ノッチフィルタが、特定波長における透過特性に関連する最小値を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記特定波長が、前記光増幅器のゲインスペクトルの中心波長にほぼ等しい、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ノッチフィルタが、反射面上に配置された薄膜層の積層を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記薄膜層の積層の深さ及び幅が、ポンピングパワー及び増幅レベルの目標範囲に関連する情報に基づいて選択された深さ及び幅である、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ノッチフィルタが、当該ノッチフィルタの特定波長を前記光増幅器のゲインスペクトルの中心波長と一致させるために回転可能である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ノッチフィルタのスペクトル幅がおよそ20nmである、請求項15に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ノッチフィルタが、
前記光増幅器がピークゲイン値を有する波長と一致したノッチ中心波長、または
2〜6nmの幅を有するノッチ
の少なくとも一方を有する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項23】
前記シード光パルスが前記ノッチフィルタを通過する回数、または前記シード光パルスが前記ノッチフィルタによって反射される回数が、前記スペクトルを拡幅されたシード光パルスが前記ゲイン素子を通過する回数を超える、請求項15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に光パルス源に関するものであり、特に、受動パルス・プリシェイピング
(事前整形)付きの光増幅器を内蔵するサブピコ秒光パルス源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超短光パルスは、マイクロマシニング(微小機械加工)、眼科医療、生物医学撮像、超
高速分光、超高速光ネットワーク、反応トリガ、等のような材料処理を含む種々の用途に
おいて有用である。ピコ秒及びフェムト秒(fs)の継続時間の高エネルギー光パルスは、
シード光パルスを、モード同期レーザーのようなより低出力の光源から光ポンピング型広
帯域パワーアンプ(出力増幅器)を通して送信することによって生成される。しかし、こ
うした増幅器を通って伝搬する短いパルスは、ゲイン狭帯域化及び自己位相変調のような
振幅及び/または位相の劣化が生じて、出力パルスの不所望な広がりをもたらし得る。光
増幅器におけるパルス形状劣化は、少なくとも部分的には、例えば音響光学変調器を用い
た時間的なパルスシェイピング(パルス整形)、あるいは液晶光空間変調器を用いたスペ
クトル的なパルスシェイピングのような、電気通信用途向けに以前に開発された超高速能
動パルスシェイピング技術によって解消することができる。光ゲイン帯域幅を200〜3
00ナノメートル(nm)まで高めることができる、Ti:サファイア・ゲイン素子に基づ
くマルチパス(多回通過)及び回生(再生)光増幅器用の能動パルスシェイピング技術を
実現することは、科学研究用途向けに適合した3〜20fsパルスの光源をもたらした。し
かし、能動光パルスシェイピングは、高速光変調器、及び複雑な制御及びフィードバック
ループの使用を必要とすることがあり、これにより、増幅器の設計を大幅に複雑化してコ
ストを上昇させる。Ti:サファイア増幅器におけるパルスシェイピング用の他の技術は
、増幅器のマルチパス・キャビティ内に挿入された浅いキャビティ内広帯域フィルタの使
用に頼る。しかし、この技術は、例えば単結晶Yb:YAGロッドまたはディスクのよう
な、Ti:サファイア材料よりもずっと高いピークゲイン値を有するがより狭いゲイン帯
域幅を有するゲイン素子に基づくシングルパス(単回通過)光増幅器には直接適用可能で
はないことがある。継続時間400〜800fsの幾分長いサブピコ秒を発生することがで
きる、パス(1回通過)毎に10dB以上のゲインを有するこうしたゲイン素子は、工業用
途向けに関心を持たれ、廉価なパルスシェイピング器の恩恵を受けて、上記増幅器におけ
るゲイン狭帯域化に対抗することができる。
【0003】
従って、高ゲイン狭帯域幅のゲイン素子を用いた光源においてサブピコ秒の光パルスを
提供するための現在の解決策及び技術に関連して、大きな問題及び短所が存在し得ること
がわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Peter J. Delfyett et al., “Ultrafast semiconductor laser-diode-seeded Gr:LiSAF regenerative amplifier system”, APPLIED OPTICS, 20 May 1997, Vol. 36, No. 15
【非特許文献2】Xiaomin Liu et al., “Highly-stable monolithic femtosecond Yb-fiber laser system based on photonic crystal fibers”, OPTICS EXPRESS 19 July 2010/ Vol. 18, No. 15, pp. 15476-15483
【非特許文献3】T. Sudmeyer et al., “High-power ultrafast thin disk laser oscillators and their potential for sub-100-femtosecond pulse generation”, Appl Phys B (2009) 97:pp. 281-295
【非特許文献4】F. Brunner et al., “Diode-pumped femtosecond Yb:KGd(WO4)2 laser with 1.1-W average power”, OPTICS LETTERS August 1, 2000, Vol. 25, No. 15, pp. 1119-1121
【非特許文献5】Yoann Zaouter et al., “Direct amplification of ultrashort pulses in μ-pulling-down Yb:YAG single crystal fibers”, OPTICS LETTERS, March 1, 2011, Vol. 36, No. 5, pp. 748-750
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、サブピコ秒の継続時間のシード光パルスを発生するためのシード光
源、このシード光パルスを増幅するための光増幅器、及びシード光パルスの光路内に配置
されたパルスシェイピング・フィルタを備えた光パルス源に関するものであり、このパル
スシェイピング・フィルタは、シード光パルスが増幅される前にそのスペクトルを広げて
、光増幅器におけるゲイン狭帯域化効果を事前補償する。光増幅器は、2〜20ナノメー
トルのゲイン帯域幅、及び少なくとも3dBのシングルパス(単回通過)光ゲインを有する
ベル(釣鐘)形ゲインスペクトルを提供するゲイン素子を備えている。光増幅器は、シン
グルパス増幅器またはダブルパス(二回通過)増幅器とすることができる。本発明の特徴
によれば、パルスシェイピング・フィルタは、2〜20nmの範囲内のノッチ帯域幅を有す
る薄膜ノッチフィルタを備えることができる。本発明の他の特徴によれば、パルスシェイ
ピング・フィルタは、薄膜ノッチフィルタに光学的に結合されてマルチパス構成をなすミ
ラーを備えることができ、シード光パルスは、光増幅器に入る前に薄膜ノッチフィルタに
よって2回以上フィルタ処理される。
【0006】
本明細書に開示する好適例を、添付する図面を参照しながらより詳細に説明し、これら
の図面は本発明の好適な実施形態を表し、図面中では、同様の要素は同様の参照番号で示
す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】受動パルス・プリシェイピング器を含む光パルス源の全体ブロック図である。
図2】シードパルスの光スペクトル(a)、増幅器のゲイン及びゲイン狭帯域化効果(b)、好適なパルス・プリシェイピング・フィルタの透過特性(c)、プリシェイピング済シードパルス(d)、及び増幅された出力パルス(e)を概略的に例示するグラフである。
図3A】シングルパス光増幅器の前段に反射型パルスシェイピング・フィルタを有する、図1の光パルス源の実施形態の概略図である。
図3B】薄膜ノッチフィルタの概略図である。
図4】ダブルパス光増幅器の前段に反射型パルスシェイピング・フィルタを有する光パルス源の概略図である。
図5】ダブルパス光増幅器の前段に透過型パルスフィルタを有する、図4の光パルス源の概略図である。
図6】ダブルパス光増幅器の内部に第2パルスシェイピング・フィルタを有する光パルス源の概略図である。
図7】パルスシェイピング・フィルタのマルチパスの具体例の概略図である。
図8】シングルパス光増幅器の前段にマルチパス・パルスシェイピング・フィルタを有する、図3の光パルス源の実施形態の概略図である。
図9】パルスシェイピング・フィルタを用いた薄膜ノッチフィルタの好適な透過特性を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本発明の完全な理解をもたらすために、限定ではなく説明目的で、特
定の光デバイス、光学アセンブリ、光学技術、等のような具体的詳細を記載する。しかし
、本発明は、これらの具体的詳細から離れた他の実施形態で実施することができることは
、当業者にとって明らかである。他の例では、本発明の説明を曖昧にしないために、周知
の方法、装置、及び光学アセンブリは省略する。なお、本明細書で用いる「第1」、「第
2」等は順序付けを言い含めることは意図しておらず、むしろ、特に断りのない限り、1
つの要素を他の要素と区別することを意図している。本明細書で用いる「透過」及び「透
過特性」は、ファイバ内への入力スペクトルをファイバからの出力スペクトルに関係付け
る光ファイバの特性を称し、従って、透過型フィルタ及び反射型フィルタの両方を記述す
るために用いることができる。
【0009】
本明細書に記載する実施形態は、ゲイン素子を利用する光パルス増幅器に関するもので
あり、このゲイン素子は、適切なポンピングエネルギーでポンピングされると、比較的高
い大きさの光ゲインを、例えば約3dB以上をシングルパスで、好適には約10dB以上をシ
ングルパスで、但し比較的低いゲイン帯域幅で、例えば20ナノメートル(nm)未満、よ
り典型的には2〜10nmのゲイン帯域幅で提供することができる材料に基づく。その例は
、イッテルビウム(Yb)でドープした材料、例えばYb:YAG(Ybでドープしたイ
ットリウム・アルミニウム・ガーネット)、Yb:KYW、Yb:KGW(Ybでドープ
した単斜晶二重タングステン酸カリウム)、Yb:CALGO(Yb:CaGdAlO4
)、Yb:Lu23、及びYb:LuScO3、及び特にこれらの材料に基づく単結晶ゲ
イン素子を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態では、「幅」とは、パルス
またはスペクトル線またはピークのような時間領域または周波数領域で定義される特徴に
関して用いる際には、特に明確な断りのない限り、それぞれの特徴の半値全幅(FWHM
:full width half maximum)を意味する。
【0010】
図1及び2を参照すれば、図1に大まかに例示する光パルス源10は、サブピコ秒の継
続時間のシード光パルス11を発生するように構成されたシード光源5、及びシード光パ
ルスを増幅してシード光パルスからより大きなパルスエネルギーの出力パルス15を生成
するための光増幅器30を含む。シード光源5は、光増幅器30と波長が整合する所望の
幅のあらゆる適切な光パルス源を用いて具体化することができ、バルク半導体レーザー、
マイクロディスク・ファイバ、あるいは能動、受動、または混成モード同期を有する半導
体レーザーを含む。こうした光パルス源の例は、Peter J. Delfyett et al., “Ultrafas
t semiconductor laser-diode-seeded Gr:LiSAF regenerative amplifier system”, APP
LIED OPTICS, 20 May 1997, Vol. 36, No. 15(非特許文献1)、Xiaomin Liu et al.,
“Highly-stable monolithic femtosecond Yb-fiber laser system based on photonic c
rystal fibers”, OPTICS EXPRESS 19 July 2010/ Vol. 18, No. 15, pp. 15476-15483(
非特許文献2)、T. Sudmeyer et al., “High-power ultrafast thin disk laser oscil
lators and their potential for sub-100-femtosecond pulse generation”, Appl Phys
B (2009) 97:pp. 281-295(非特許文献3)、及びF. Brumner et al., “Diode-pumped
femtosecond Yb:KGd(WO4)2 laser with 1.1-W average power”, OPTICS LETTERS August
1, 2000, Vol. 25, No. 15, pp. 1119-1121(非特許文献4)に記載され、これらの文献
のすべてを参照する形で本明細書に含める。一例として、1つの代表的な実施形態では、
シード光源5は、現在技術において既知の、モード同期のYbでドープしたファイバまた
は半導体レーザー源の形態とすることができ、サブピコ秒のシード光パルス11を放出す
るように構成され、シード光パルス11は例えば長さ2、3百フェムト秒とすることがで
き、100fs〜600fsのパルス継続時間、及びスペクトル幅32(図2のパネル(a))
を有することができる。本明細書に記載する1つ以上の好適な実施形態では、光増幅器3
0が、動作中にゲイン中心波長λ0をピークとするベル形ゲインスペクトル33(図2
パネル(b))を有し、かつスペクトル帯域幅34を有する光ゲイン素子を含むか、あるい
は光増幅器30をこうした光ゲイン素子の形態とすることができ、スペクトル帯域幅34
は、2〜20nmの範囲内とすることができ、あるいはYbでドープしたゲイン材料につい
ては典型的には2〜10nmの範囲内とすることができる。このゲイン素子は、少なくとも
3dBの大きさの、より好適には少なくとも10dB以上の、例えば10〜30dBの範囲内の
、シングルパスの光ゲインを提供することができる。従って、増幅器30はシングルパス
増幅器またはダブルパス増幅器とすることができ、シードパルスはゲイン素子を各方向に
1回だけ通って進む。ゲイン素子を1回または2回進んだ後に高いパルス出力を生じさせ
る比較的高いシングルパス・ゲインに起因して、パルスをゲイン素子に3回以上通すこと
は、ビーム劣化をもたらし得るゲイン媒体中のゲイン飽和及び/またはゲイン媒体中の有
害な熱的効果の理由から、有用でないことがある。
【0011】
ここで、図1を引き続き参照しながら図2を参照する。シード光パルス11の光スペク
トルを同図のパネル(a)内に概略的に例示し、シード光パルス11には、現在技術におい
て一般に知られている光増幅器30内のゲイン狭帯域化効果により、光増幅器30内でパ
ルス広がり効果が生じ得る。光増幅器におけるゲイン狭帯域化は、増幅器のゲインスペク
トル(図2(b))がシード光パルス11のスペクトル幅に近くなるか、このスペクトル幅
よりも小さくなると発生し、これにより、ゲインスペクトル33のピークに対応するゲイ
ン中心波長λ0に近い波長には、ゲインピーク波長λ0からより離れた波長よりも強い増幅
がなされ、パルスが増幅器を通って伝搬する際にパルスの光スペクトルの狭帯域化が生じ
、時間領域内では出力パルスの対応する広がりが生じる。このことを図2(b)に概略的に
例示し、ここでは、実線の曲線33が増幅器のゲインスペクトルを例示し、破線の曲線3
5が、シード光パルス11が光増幅器30内に直接送り込まれた際の、出力光パルスのよ
り狭いスペクトルを例示し、出力パルスのスペクトル幅36は入力シードパルスのスペク
トル幅よりも小さい。一例として、100〜600fsの範囲内の時間幅を有するシード光
パルスを、増幅器30の出力において約2倍以上の倍率で時間的に広げることができ、こ
のことは、1ピコ秒を超える出力パルス15のパルス幅を生じさせることができる。
【0012】
ここで図2を引き続き参照しながら再び図1を参照する。パルスシェイピング・フィル
タ20を、シード光パルス11の経路内の、増幅器30の前段に配置して、増幅器30に
おける、出力パルス15のパルス幅に対する不所望なゲイン狭帯域化の効果を解消するか
少なくとも減少させることができる。パルスシェイピング・フィルタ20は、シード光パ
ルス11の光スペクトルを、光増幅器30における増幅の前に広げるように構成され、こ
れにより、光増幅器30におけるパルススペクトルの狭帯域化を事前補償する。プリシェ
イプ(事前整形)された、即ちパルスシェイピング・フィルタ20の動作によってスペク
トルを拡幅されたシード光パルスを、本明細書ではプリシェイピング済シードパルス13
またはスペクトル拡幅済シードパルス13とも称することがある。好適なフィルタ20の
透過特性を図2(c)に概略的に例示し、この透過特性は、ベル形ゲインスペクトルの中心
波長λ0ではその両側部よりも強いシード光パルス中の光を減衰させるように設定され、
これにより、シードパルス・スペクトルの最上部を効果的に平坦化し、こうしてシードパ
ルス・スペクトルを拡幅し、即ちそのFWHM幅を増加させる。図2(c)に例示するよう
に、フィルタ20は実質的に、ノッチを有する、即ちその透過特性における所望のノッチ
中心波長λfの所に極小値19を有するノッチフィルタとして記述することができる。好
適な実施形態では、ゲイン中心波長λ0がシードパルス・スペクトル31の中心波長と一
致し、フィルタ20は中心波長λfを中心とするノッチ19を有するように構成され、中
心波長λfは、増幅器のゲイン素子のベル形ゲインスペクトル33の中心波長λ0にほぼ等
しく、即ちλf=λ0であり、図2(d)に示すように、フィルタ20の出力におけるプリシ
ェイピング済シードパルス13の平坦化された光スペクトル38を生じさせる。ゲイン中
心波長λ0とシードパルス・スペクトル31の中心波長とが一致しない場合、フィルタ2
0の透過ノッチ19は、増幅器のゲインスペクトル33のピークとシードパルスのゲイン
スペクトル31のピークとの間の適切な波長を中心とすることができ、この適切な波長は
、増幅器ゲインのシードパルス・スペクトルに対する狭帯域化効果を事前補償するように
選択することができる。フィルタ20の透過特性37におけるノッチ19の形状及び深さ
を適切に選択することによって、増幅器30のゲイン狭帯域化効果を実質的に解消するか
少なくとも減少させることができる。
【0013】
ここで図3Aを参照すれば、パルス源100の形態の光パルス源10の好適な具体例が
例示されている。光パルス源10は、図1の増幅器30を具体化したシングルパス光増幅
器101、シードパルス源110、及びパルスシェイピング・フィルタ20を具体化した
反射薄膜フィルタ120を含み、シードパルス源110は実質的に、図2のシード光源5
を参照して前述したものとすることができる。シングルパス光増幅器101はゲイン素子
130を含み、ゲイン素子130は光ポンプ140に結合されて、結合レンズ138及び
ダイクロイックミラー125を用いた端面ポンピング構成の形をなし、ダイクロイックミ
ラー125は、増幅器の出力パルス15用の出力カプラとしても機能する。他のポンピン
グ構成も可能であり、その全般が本発明の範囲内であることは明らかである。ゲイン素子
130は、例えばYb:YAG等のような適切なゲイン材料の薄型ロッドの形態とするこ
とができる。適切なゲイン素子の例は、例えば非特許文献3及びYoann Zaouter et al.,
“Direct amplification of ultrashort pulses in μ-pulling-down Yb:YAG single cry
stal fibers”, OPTICS LETTERS, March 1, 2011, Vol. 36, No. 5, pp. 748-750(非特許文献5)に記載され、これらの文献は共に参照する形で本明細書に含める。ゲイン素子130は、適切にポンピングされると、シード光パルス11またはプリシェイピング済シードパルス13用の光ゲインを提供し、例えば、Yb:YAG製のゲイン素子130は、約940nmのポンプ波長で光学的にポンピングされると、約1030nmのゲインピーク波長λ0を中心とした光ゲインを、3〜6nmのゲインスペクトル幅34で提供することができる。光ポンプ140は、例えば高輝度レーザーダイオードとすることができ、こうした高輝度レーザーダイオードは現在技術において既知のようにファイバ結合することができる。レンズ128を用いて、プリシェイピング済シードパルス13のシードビームをゲイン素子130内に結合することができる。現在技術において一般に知られているように、ダイクロイックミラー125は、ポンプ光77を通過させてゲイン素子130内に透過し、増幅された光パルス15を出力方向に反射するように構成されている。一例として後方励起のポンピング構成を示しているが、前方励起のポンピング構成も可能であり、本発明に関係する増幅器101及びパルス源100の動作の原理を変更しないことは明らかである。
【0014】
図3Bを参照すれば、反射薄膜型ノッチフィルタ120は、例えば反射基板51上に配
置された薄膜層52の積層として具体化することができる。薄膜層52の積層は、反射に
おいて、図2(c)及びフィルタ20を参照して概略的に上述したようなノッチフィルタの
透過フィルタ特性37を有するように構成することができる。薄膜フィルタ52の積層に
よって提供されるノッチ19の所望の深さ及び幅は、特定のゲイン素子130向けに選択
することができ、そしてポンピングパワー及び増幅レベルの目標範囲に応じたものとする
ことができる。一例として、Yb:YAGゲイン素子と共に使用するように構成された薄
膜ノッチフィルタ120の波長透過特性37におけるノッチ19は、幅2〜6nmとするこ
とができ、そしてフィルタの最大透過に対して10%〜30%の深さとすることができる
【0015】
再び図3Aを参照すれば、反射薄膜ノッチフィルタ120は、シード光源110からゲ
イン素子130内に指向させるように配向されると共に、シード光パルス11を、図1
び2を参照して上述したように拡幅してゲイン素子130におけるゲイン狭帯域化効果を
補償する。さらに、図1及び2を参照して上述するように、シード光パルス11の所望の
最適なプリシェイピングは、ノッチの中心波長λfがゲイン素子130のゲインピークλ0
と正確に合うことを必要とすることがある。しかし、ゲイン素子130が単結晶Yb:Y
AG材料等として具体化されている場合のように、ゲイン素子130のゲインスペクトル
帯域幅34が狭く、例えば2〜6nmである実施形態では、薄膜フィルタ120の製造にお
いて、ノッチ中心波長λfの所望値を高い信頼性で十分な精度を伴って実現することが困
難なことがある。従って、一実施形態では、フィルタ120を回転可能にして、ノッチ中
心波長λfを所望波長に調整することを可能にすることができ、例えばピークゲイン波長
λ0との正確な一致を可能にすることができる。1つの好適な実施形態では、薄膜ノッチ
フィルタ120を回転ステージ112上に配置して、フィルタを回転させて、フィルタの
波長における透過特性を調整することができる。フィルタ120をその回転軸の周りに角
度αだけ回転させることは、シード光源110とゲイン素子130との光学的位置合わせ
を維持するために、シード光源110を同じ軸の周りに2αだけ回転させる必要があり得
ることは明らかである。
【0016】
ここで図4を参照すれば、光パルス源200が例示され、光パルス源200は、図3A
の光パルス源100の具体例として見ることができ、ここでは、ゲイン素子130の遠端
にミラー230を追加し、出力カプラ225をゲイン素子130の(シード源に近い)近
端に追加することによって、シングルパス増幅器101をダブルパス増幅器201に変換
することができる。ミラー230は、ゲイン素子を順方向に通って伝搬して1回目に通過
した後に増幅されたシードパルスを、ゲイン素子の(シード源から離れた)遠端に戻して
、ゲイン素子130内をその近端に向けて逆方向に伝搬させる。出力カプラ225は、例
えば偏光ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)を用いて、四分の一
波長板(QWP:quarter wave plate)223を増幅器201のダブルパス構成内に、例
えばミラー230の前方に追加して具体化することができる。PBS225は、ゲイン素
子130を通って逆方向に伝搬した後に増幅されたシードパルス15を、ゲイン素子13
0の近端から受けて、これらのシードパルス15を出力方向に再指向させ、シードパルス
15の偏光は、QWP223を2回通過することによって、増幅器201の入力における
プリシェイピング済シードパルス13に対して90度だけ回転している。ダブルパス増幅
器201におけるゲイン狭帯域化効果は、ゲイン素子におけるシングルパス・ゲインが同
一または同様であれば、図3Aの光パルス源100のシングルパス増幅器101における
ゲイン狭帯域化効果よりも強力であり得るので、光源200内の薄膜ノッチフィルタ12
0は、光パルス源100における薄膜ノッチフィルタよりも、その透過特性において幾分
深いノッチを有するように構成することができる。
【0017】
ここで図5を参照すれば、パルスシェイピング・フィルタ120は、図1〜4を参照し
て概略的に上述した透過特性を有する透過薄膜ノッチフィルタ220を用いて透過型に構
成することもできる。フィルタ220は、例えば薄膜干渉フィルタとすることができ、薄
膜干渉フィルタは、適切に構成された薄膜層の積層を透明基板、例えばガラス基板上に堆
積させることによって製造することができる。図5はダブルパス光増幅器を有する光パル
ス源200の変形例を例示しているが、透過型フィルタ220は、図3Aに例示するもの
のようなシングルパス構成のゲイン素子を有する実施形態において用いることもできるこ
とは明らかである。
【0018】
図4及び5を参照して上述したダブルパスの実施形態では、パルスシェイピング・フィ
ルタ20、120及び220が、ミラー230及び出力カプラ225によって形成される
ダブルパス構成の動作上の前段に配置され、これにより、パルスシェイピング・フィルタ
は非増幅のシードパルス11のみを受ける。光増幅器の動作上の前段に、かつダブルパス
構成225〜230の外部にパルスシェイピング・フィルタを配置することは、パルスシ
ェイピング・フィルタの薄膜コーティングを光パルスよって損傷させる可能性を低減し、
このことは、高いシングルパス・ゲイン、及び増幅器からの高い出力光パワーを有する実
施形態において特に有利である。しかし、パルスシェイピング・フィルタをマルチパス光
増幅器内に含む実施形態も、本発明の範囲内で想定することができる。1つのこうした実
施形態を図6に例示し、この実施形態は、ミラー230及び出力カプラ225によって規
定されるダブルパス増幅器401のダブルパス光学構成の内部に第2パルスシェイピング
・フィルタ221を追加したことが、図5の実施形態と異なる。図示する好適な実施形態
では、第2パルスシェイピング・フィルタ221は、ゲイン素子130とミラー230と
の間に配置された透過型フィルタであり、増幅されるパルスが2回通過する。この構成の
1つの潜在的利点は、干渉フィルタの透過特性において、図5のフィルタ220に比べて
、より浅いノッチを有する干渉フィルタを用いることを可能にすることができることにあ
り、こうしたより浅いノッチを有する干渉フィルタは、より容易に製造することができる
。第2透過型フィルタ221は、反射薄膜フィルタ120を増幅器の前段に有する図4
実施形態のダブルパス光増幅器201内に追加することもできることは明らかである。
【0019】
種々の実施形態では、パルスシェイピング・フィルタ20、120または220を、ゲ
イン素子130のベル形ゲインスペクトルの中心波長λ0から2、3ナノメートル離れた
波長の入射光の少なくとも95%を透過させ、かつゲインピーク波長λ0、あるいはフィ
ルタの透過または反射特性におけるノッチ19の中心波長λfの入射光の85%未満を透
過させるように構成することができる。ノイズシェイピング(雑音整形)フィルタ20の
透過または反射特性におけるノッチ19の形状、幅、及び深さは、好適には特定のゲイン
素子及び増幅器構成向けに最適化するべきであり、異なる実施形態に対して異ならせるこ
とができる。図9に、7〜13dBの範囲内のシングルパス・ゲインを有するYb:YAG
ゲイン素子を用いたシングルパス増幅器を有する図3の実施形態用のパルスシェイピング
・フィルタ20の好適な透過特性を例示する。この好適なフィルタは、上述したように反
射または透過薄膜フィルタとして具体化することができ、〜1030nmのYb:YAGゲ
インのピーク波長を中心とするその透過特性において、ノッチを有し、かつ3〜5nmの範
囲内のFWHM幅を有するおよそ逆ガウス形の形状を有し、このFWHM幅は、上記Yb
:YAGゲイン素子のゲインスペクトル幅と一致させるか、このゲインスペクトル幅より
も少し小さくすることができ、その最大透過率の約20%のノッチの深さを有する。他の
実施形態では、フィルタ透過特性におけるノッチの幅及び深さの目標値を、例えばゲイン
素子のシングルパスまたはダブルパス・ゲインスペクトルのスペクトル形状及びスペクト
ルの大きさに応じて、及び増幅器全体の設計に応じて異ならせることができる。例えば、
一部の実施形態は、フィルタ透過における10%〜30%の範囲内の、及び50%までの
ノッチの深さ、及び2nmまでも小さいノッチスペクトル幅を有するフィルタを利用するこ
とができる。
【0020】
ここで図7を参照すれば、パルスシェイピング・フィルタ20をマルチパスフィルタ3
20として具体化することができ、マルチパスフィルタ320は、反射薄膜ノッチフィル
タ120に光学的に結合されてマルチパス構成をなすミラー155を含む。マルチパスフ
ィルタ320内では、シード光パルス11が、光増幅器に指向される前に薄膜ノッチフィ
ルタ120によって2回以上フィルタ処理される。このマルチパスフィルタ構成は、例え
ば、フィルタ透過特性におけるノッチ19の幅と深さの所望の組合せを有する薄膜フィル
タを高い信頼性で製造することが困難である際に有用であり得る。シードパルスを同じ薄
膜ノッチフィルタ120から複数回反射させ、この薄膜フィルタから連続して反射する間
にゲイン素子を通過させないことによって、薄膜フィルタ120の設計を増幅器の設計か
らある程度切り離すことができる。こうした薄膜フィルタの設計は、透過特性において、
所定の増幅器における最適なパルス・プリシェイピングにとって望ましいノッチよりも浅
く広幅のノッチを有する薄膜フィルタ120の使用も可能にすることができる。マルチパ
ス・パルスシェイピング・フィルタ320は、シード光パルス11が、シングルパスまた
はマルチパス光増幅器30に入る前に薄膜ノッチフィルタ120によって反射されるか薄
膜ノッチフィルタ120を透過するように構成することができることが有利であり、この
反射または透過の回数は、シード光パルス11が増幅器のゲイン素子130を通過する回
数よりも多い。図7のマルチパスフィルタ320は、上述した実施形態のいずれにおいて
も、増幅器の前段のパルスシェイピング・フィルタとして用いることができることは明ら
かである。マルチパスフィルタ320を、図3Aの光パルス源100内のシングルパス増
幅器101の前段のパルスシェイピング・フィルタ20として用いる例を、図8に例示す
る。マルチパスフィルタ320は、2つのミラー間に配置された透過薄膜ノッチフィルタ
を用いて具体化することができることは明らかである。
【0021】
上述した好適な実施形態では、受動パルスシェイピング薄膜フィルタを、3〜20nmの
ゲイン帯域幅を有するシングルパスまたはダブルパス増幅器の前段に用いて、増幅器にお
けるゲイン狭帯域化効果を補償することは、前段にパルスシェイピング・フィルタのない
同じ増幅器に比べて、より短い出力光パルスを2回まで得ることを可能にする。一例とし
て、Yb:YAGゲイン素子に基づく従来の光増幅器は、700〜1200fsの範囲内の
出力光パルスを提供することができ、この出力光パルスは、上述したように受動パルス・
プリシェイピング・フィルタを光増幅器の前段に追加することによって、300〜600
fsまたはそれ未満まで短くすることができる。
【0022】
上述した好適な実施形態は、あらゆる点で本発明を限定するのではなく例示することを
意図している。従って、本発明は、詳細な実現において、本明細書に含まれる記載から当
業者が導出することができる多数の変形例が可能である。例えば、本明細書に記載した特
定実施形態は、Yb;YAG単結晶ロッド、結晶、ディスク、またはファイバを参照して
説明してきたが、Yb:YAG、Yb:KYW、Yb:KGW、及びYb:CALGO材
料(これらだけではないが)のようなYbでドープした他の増幅器材料に基づくゲイン素
子、並びに、シングルパス及びダブルパス増幅器設計において有用であり得る2〜10nm
の帯域幅及び5dB以上のシングルパス・ゲインを提供することができるもののような他の
狭帯域高ゲイン光学材料も、本発明の範囲内で用いることができる。他の例では、図面中
に例示し以上で説明したポンピング、及びシングルパス及びダブルパスの構成は一例に過
ぎず、それぞれの光増幅器の他の適切な構成を本開示に基づいて考えることもできる。こ
れら及び他の変形及び変更のすべてが、以下の特許請求の範囲によって規定する本発明の
範囲内であるものと考えられる。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにそ
の特定例を挙げた本明細書中のすべての記載は、それらの構造的及び機能的等価物を包含
することを意図している。これに加えて、こうした等価物は、現在知られている等価物、
並びに将来開発される等価物を共に含み、即ち、同じ機能を実行する開発されたあらゆる
要素を、その構造にかかわらず含む。
【0023】
従って、本発明は、本明細書に記載した特定実施形態によってその範囲を限定されない
。実際に、本発明の他の種々の実施形態、及び本発明に対する変更は、本明細書に記載し
たものに加えて、以上の説明及び添付した図面より通常の当業者にとって明らかである。
従って、こうした他の実施形態及び変更は、本発明の範囲内に入ることを意図している。
さらに、本明細書では、本発明を、特定環境における特定目的での特定の実現に関連して
説明してきたが、その有用性はこれらに限定されず、本発明はいくつもの環境においてい
くつもの目的で有益に実現することができることは、通常の当業者が認める所である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9