(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタを透過する回数、または前記シード光パルスが前記パルスシェイピングフィルタによって反射される回数が、前記シード光パルスが前記ゲイン素子を透過する回数を超える、請求項10に記載の方法。
前記ノッチフィルタが、当該ノッチフィルタの特定波長を前記光増幅器のゲインスペクトルの中心波長と一致させるために回転可能である、請求項15に記載のデバイス。
前記シード光パルスが前記ノッチフィルタを通過する回数、または前記シード光パルスが前記ノッチフィルタによって反射される回数が、前記スペクトルを拡幅されたシード光パルスが前記ゲイン素子を通過する回数を超える、請求項15に記載のデバイス。
【背景技術】
【0002】
超短光パルスは、マイクロマシニング(微小機械加工)、眼科医療、生物医学撮像、超
高速分光、超高速光ネットワーク、反応トリガ、等のような材料処理を含む種々の用途に
おいて有用である。ピコ秒及びフェムト秒(fs)の継続時間の高エネルギー光パルスは、
シード光パルスを、モード同期レーザーのようなより低出力の光源から光ポンピング型広
帯域パワーアンプ(出力増幅器)を通して送信することによって生成される。しかし、こ
うした増幅器を通って伝搬する短いパルスは、ゲイン狭帯域化及び自己位相変調のような
振幅及び/または位相の劣化が生じて、出力パルスの不所望な広がりをもたらし得る。光
増幅器におけるパルス形状劣化は、少なくとも部分的には、例えば音響光学変調器を用い
た時間的なパルスシェイピング(パルス整形)、あるいは液晶光空間変調器を用いたスペ
クトル的なパルスシェイピングのような、電気通信用途向けに以前に開発された超高速能
動パルスシェイピング技術によって解消することができる。光ゲイン帯域幅を200〜3
00ナノメートル(nm)まで高めることができる、Ti:サファイア・ゲイン素子に基づ
くマルチパス(多回通過)及び回生(再生)光増幅器用の能動パルスシェイピング技術を
実現することは、科学研究用途向けに適合した3〜20fsパルスの光源をもたらした。し
かし、能動光パルスシェイピングは、高速光変調器、及び複雑な制御及びフィードバック
ループの使用を必要とすることがあり、これにより、増幅器の設計を大幅に複雑化してコ
ストを上昇させる。Ti:サファイア増幅器におけるパルスシェイピング用の他の技術は
、増幅器のマルチパス・キャビティ内に挿入された浅いキャビティ内広帯域フィルタの使
用に頼る。しかし、この技術は、例えば単結晶Yb:YAGロッドまたはディスクのよう
な、Ti:サファイア材料よりもずっと高いピークゲイン値を有するがより狭いゲイン帯
域幅を有するゲイン素子に基づくシングルパス(単回通過)光増幅器には直接適用可能で
はないことがある。継続時間400〜800fsの幾分長いサブピコ秒を発生することがで
きる、パス(1回通過)毎に10dB以上のゲインを有するこうしたゲイン素子は、工業用
途向けに関心を持たれ、廉価なパルスシェイピング器の恩恵を受けて、上記増幅器におけ
るゲイン狭帯域化に対抗することができる。
【0003】
従って、高ゲイン狭帯域幅のゲイン素子を用いた光源においてサブピコ秒の光パルスを
提供するための現在の解決策及び技術に関連して、大きな問題及び短所が存在し得ること
がわかる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本発明の完全な理解をもたらすために、限定ではなく説明目的で、特
定の光デバイス、光学アセンブリ、光学技術、等のような具体的詳細を記載する。しかし
、本発明は、これらの具体的詳細から離れた他の実施形態で実施することができることは
、当業者にとって明らかである。他の例では、本発明の説明を曖昧にしないために、周知
の方法、装置、及び光学アセンブリは省略する。なお、本明細書で用いる「第1」、「第
2」等は順序付けを言い含めることは意図しておらず、むしろ、特に断りのない限り、1
つの要素を他の要素と区別することを意図している。本明細書で用いる「透過」及び「透
過特性」は、ファイバ内への入力スペクトルをファイバからの出力スペクトルに関係付け
る光ファイバの特性を称し、従って、透過型フィルタ及び反射型フィルタの両方を記述す
るために用いることができる。
【0009】
本明細書に記載する実施形態は、ゲイン素子を利用する光パルス増幅器に関するもので
あり、このゲイン素子は、適切なポンピングエネルギーでポンピングされると、比較的高
い大きさの光ゲインを、例えば約3dB以上をシングルパスで、好適には約10dB以上をシ
ングルパスで、但し比較的低いゲイン帯域幅で、例えば20ナノメートル(nm)未満、よ
り典型的には2〜10nmのゲイン帯域幅で提供することができる材料に基づく。その例は
、イッテルビウム(Yb)でドープした材料、例えばYb:YAG(Ybでドープしたイ
ットリウム・アルミニウム・ガーネット)、Yb:KYW、Yb:KGW(Ybでドープ
した単斜晶二重タングステン酸カリウム)、Yb:CALGO(Yb:CaGdAlO
4
)、Yb:Lu
2O
3、及びYb:LuScO
3、及び特にこれらの材料に基づく単結晶ゲ
イン素子を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態では、「幅」とは、パルス
またはスペクトル線またはピークのような時間領域または周波数領域で定義される特徴に
関して用いる際には、特に明確な断りのない限り、それぞれの特徴の半値全幅(FWHM
:full width half maximum)を意味する。
【0010】
図1及び2を参照すれば、
図1に大まかに例示する光パルス源10は、サブピコ秒の継
続時間のシード光パルス11を発生するように構成されたシード光源5、及びシード光パ
ルスを増幅してシード光パルスからより大きなパルスエネルギーの出力パルス15を生成
するための光増幅器30を含む。シード光源5は、光増幅器30と波長が整合する所望の
幅のあらゆる適切な光パルス源を用いて具体化することができ、バルク半導体レーザー、
マイクロディスク・ファイバ、あるいは能動、受動、または混成モード同期を有する半導
体レーザーを含む。こうした光パルス源の例は、Peter J. Delfyett et al., “Ultrafas
t semiconductor laser-diode-seeded Gr:LiSAF regenerative amplifier system”, APP
LIED OPTICS, 20 May 1997, Vol. 36, No. 15(非特許文献1)、Xiaomin Liu et al.,
“Highly-stable monolithic femtosecond Yb-fiber laser system based on photonic c
rystal fibers”, OPTICS EXPRESS 19 July 2010/ Vol. 18, No. 15, pp. 15476-15483(
非特許文献2)、T. Sudmeyer et al., “High-power ultrafast thin disk laser oscil
lators and their potential for sub-100-femtosecond pulse generation”, Appl Phys
B (2009) 97:pp. 281-295(非特許文献3)、及びF. Brumner et al., “Diode-pumped
femtosecond Yb:KGd(WO4)2 laser with 1.1-W average power”, OPTICS LETTERS August
1, 2000, Vol. 25, No. 15, pp. 1119-1121(非特許文献4)に記載され、これらの文献
のすべてを参照する形で本明細書に含める。一例として、1つの代表的な実施形態では、
シード光源5は、現在技術において既知の、モード同期のYbでドープしたファイバまた
は半導体レーザー源の形態とすることができ、サブピコ秒のシード光パルス11を放出す
るように構成され、シード光パルス11は例えば長さ2、3百フェムト秒とすることがで
き、100fs〜600fsのパルス継続時間、及びスペクトル幅32(
図2のパネル(a))
を有することができる。本明細書に記載する1つ以上の好適な実施形態では、光増幅器3
0が、動作中にゲイン中心波長λ
0をピークとするベル形ゲインスペクトル33(
図2の
パネル(b))を有し、かつスペクトル帯域幅34を有する光ゲイン素子を含むか、あるい
は光増幅器30をこうした光ゲイン素子の形態とすることができ、スペクトル帯域幅34
は、2〜20nmの範囲内とすることができ、あるいはYbでドープしたゲイン材料につい
ては典型的には2〜10nmの範囲内とすることができる。このゲイン素子は、少なくとも
3dBの大きさの、より好適には少なくとも10dB以上の、例えば10〜30dBの範囲内の
、シングルパスの光ゲインを提供することができる。従って、増幅器30はシングルパス
増幅器またはダブルパス増幅器とすることができ、シードパルスはゲイン素子を各方向に
1回だけ通って進む。ゲイン素子を1回または2回進んだ後に高いパルス出力を生じさせ
る比較的高いシングルパス・ゲインに起因して、パルスをゲイン素子に3回以上通すこと
は、ビーム劣化をもたらし得るゲイン媒体中のゲイン飽和及び/またはゲイン媒体中の有
害な熱的効果の理由から、有用でないことがある。
【0011】
ここで、
図1を引き続き参照しながら
図2を参照する。シード光パルス11の光スペク
トルを同図のパネル(a)内に概略的に例示し、シード光パルス11には、現在技術におい
て一般に知られている光増幅器30内のゲイン狭帯域化効果により、光増幅器30内でパ
ルス広がり効果が生じ得る。光増幅器におけるゲイン狭帯域化は、増幅器のゲインスペク
トル(
図2(b))がシード光パルス11のスペクトル幅に近くなるか、このスペクトル幅
よりも小さくなると発生し、これにより、ゲインスペクトル33のピークに対応するゲイ
ン中心波長λ
0に近い波長には、ゲインピーク波長λ
0からより離れた波長よりも強い増幅
がなされ、パルスが増幅器を通って伝搬する際にパルスの光スペクトルの狭帯域化が生じ
、時間領域内では出力パルスの対応する広がりが生じる。このことを
図2(b)に概略的に
例示し、ここでは、実線の曲線33が増幅器のゲインスペクトルを例示し、破線の曲線3
5が、シード光パルス11が光増幅器30内に直接送り込まれた際の、出力光パルスのよ
り狭いスペクトルを例示し、出力パルスのスペクトル幅36は入力シードパルスのスペク
トル幅よりも小さい。一例として、100〜600fsの範囲内の時間幅を有するシード光
パルスを、増幅器30の出力において約2倍以上の倍率で時間的に広げることができ、こ
のことは、1ピコ秒を超える出力パルス15のパルス幅を生じさせることができる。
【0012】
ここで
図2を引き続き参照しながら再び
図1を参照する。パルスシェイピング・フィル
タ20を、シード光パルス11の経路内の、増幅器30の前段に配置して、増幅器30に
おける、出力パルス15のパルス幅に対する不所望なゲイン狭帯域化の効果を解消するか
少なくとも減少させることができる。パルスシェイピング・フィルタ20は、シード光パ
ルス11の光スペクトルを、光増幅器30における増幅の前に広げるように構成され、こ
れにより、光増幅器30におけるパルススペクトルの狭帯域化を事前補償する。プリシェ
イプ(事前整形)された、即ちパルスシェイピング・フィルタ20の動作によってスペク
トルを拡幅されたシード光パルスを、本明細書ではプリシェイピング済シードパルス13
またはスペクトル拡幅済シードパルス13とも称することがある。好適なフィルタ20の
透過特性を
図2(c)に概略的に例示し、この透過特性は、ベル形ゲインスペクトルの中心
波長λ
0ではその両側部よりも強いシード光パルス中の光を減衰させるように設定され、
これにより、シードパルス・スペクトルの最上部を効果的に平坦化し、こうしてシードパ
ルス・スペクトルを拡幅し、即ちそのFWHM幅を増加させる。
図2(c)に例示するよう
に、フィルタ20は実質的に、ノッチを有する、即ちその透過特性における所望のノッチ
中心波長λ
fの所に極小値19を有するノッチフィルタとして記述することができる。好
適な実施形態では、ゲイン中心波長λ
0がシードパルス・スペクトル31の中心波長と一
致し、フィルタ20は中心波長λ
fを中心とするノッチ19を有するように構成され、中
心波長λ
fは、増幅器のゲイン素子のベル形ゲインスペクトル33の中心波長λ
0にほぼ等
しく、即ちλ
f=λ
0であり、
図2(d)に示すように、フィルタ20の出力におけるプリシ
ェイピング済シードパルス13の平坦化された光スペクトル38を生じさせる。ゲイン中
心波長λ
0とシードパルス・スペクトル31の中心波長とが一致しない場合、フィルタ2
0の透過ノッチ19は、増幅器のゲインスペクトル33のピークとシードパルスのゲイン
スペクトル31のピークとの間の適切な波長を中心とすることができ、この適切な波長は
、増幅器ゲインのシードパルス・スペクトルに対する狭帯域化効果を事前補償するように
選択することができる。フィルタ20の透過特性37におけるノッチ19の形状及び深さ
を適切に選択することによって、増幅器30のゲイン狭帯域化効果を実質的に解消するか
少なくとも減少させることができる。
【0013】
ここで
図3Aを参照すれば、パルス源100の形態の光パルス源10の好適な具体例が
例示されている。光パルス源10は、
図1の増幅器30を具体化したシングルパス光増幅
器101、シードパルス源110、及びパルスシェイピング・フィルタ20を具体化した
反射薄膜フィルタ120を含み、シードパルス源110は実質的に、
図2のシード光源5
を参照して前述したものとすることができる。シングルパス光増幅器101はゲイン素子
130を含み、ゲイン素子130は光ポンプ140に結合されて、結合レンズ138及び
ダイクロイックミラー125を用いた端面ポンピング構成の形をなし、ダイクロイックミ
ラー125は、増幅器の出力パルス15用の出力カプラとしても機能する。他のポンピン
グ構成も可能であり、その全般が本発明の範囲内であることは明らかである。ゲイン素子
130は、例えばYb:YAG等のような適切なゲイン材料の薄型ロッドの形態とするこ
とができる。適切なゲイン素子の例は、例えば非特許文献3及びYoann Zaouter et al.,
“Direct amplification of ultrashort pulses in μ-pulling-down Yb:YAG single cry
stal fibers”, OPTICS LETTERS, March 1, 2011, Vol. 36, No. 5, pp. 748-750(非特許文献5)に記載され、これらの文献は共に参照する形で本明細書に含める。ゲイン素子130は、適切にポンピングされると、シード光パルス11またはプリシェイピング済シードパルス13用の光ゲインを提供し、例えば、Yb:YAG製のゲイン素子130は、約940nmのポンプ波長で光学的にポンピングされると、約1030nmのゲインピーク波長λ
0を中心とした光ゲインを、3〜6nmのゲインスペクトル幅34で提供することができる。光ポンプ140は、例えば高輝度レーザーダイオードとすることができ、こうした高輝度レーザーダイオードは現在技術において既知のようにファイバ結合することができる。レンズ128を用いて、プリシェイピング済シードパルス13のシードビームをゲイン素子130内に結合することができる。現在技術において一般に知られているように、ダイクロイックミラー125は、ポンプ光77を通過させてゲイン素子130内に透過し、増幅された光パルス15を出力方向に反射するように構成されている。一例として後方励起のポンピング構成を示しているが、前方励起のポンピング構成も可能であり、本発明に関係する増幅器101及びパルス源100の動作の原理を変更しないことは明らかである。
【0014】
図3Bを参照すれば、反射薄膜型ノッチフィルタ120は、例えば反射基板51上に配
置された薄膜層52の積層として具体化することができる。薄膜層52の積層は、反射に
おいて、
図2(c)及びフィルタ20を参照して概略的に上述したようなノッチフィルタの
透過フィルタ特性37を有するように構成することができる。薄膜フィルタ52の積層に
よって提供されるノッチ19の所望の深さ及び幅は、特定のゲイン素子130向けに選択
することができ、そしてポンピングパワー及び増幅レベルの目標範囲に応じたものとする
ことができる。一例として、Yb:YAGゲイン素子と共に使用するように構成された薄
膜ノッチフィルタ120の波長透過特性37におけるノッチ19は、幅2〜6nmとするこ
とができ、そしてフィルタの最大透過に対して10%〜30%の深さとすることができる
。
【0015】
再び
図3Aを参照すれば、反射薄膜ノッチフィルタ120は、シード光源110からゲ
イン素子130内に指向させるように配向されると共に、シード光パルス11を、
図1及
び2を参照して上述したように拡幅してゲイン素子130におけるゲイン狭帯域化効果を
補償する。さらに、
図1及び2を参照して上述するように、シード光パルス11の所望の
最適なプリシェイピングは、ノッチの中心波長λ
fがゲイン素子130のゲインピークλ
0
と正確に合うことを必要とすることがある。しかし、ゲイン素子130が単結晶Yb:Y
AG材料等として具体化されている場合のように、ゲイン素子130のゲインスペクトル
帯域幅34が狭く、例えば2〜6nmである実施形態では、薄膜フィルタ120の製造にお
いて、ノッチ中心波長λ
fの所望値を高い信頼性で十分な精度を伴って実現することが困
難なことがある。従って、一実施形態では、フィルタ120を回転可能にして、ノッチ中
心波長λ
fを所望波長に調整することを可能にすることができ、例えばピークゲイン波長
λ
0との正確な一致を可能にすることができる。1つの好適な実施形態では、薄膜ノッチ
フィルタ120を回転ステージ112上に配置して、フィルタを回転させて、フィルタの
波長における透過特性を調整することができる。フィルタ120をその回転軸の周りに角
度αだけ回転させることは、シード光源110とゲイン素子130との光学的位置合わせ
を維持するために、シード光源110を同じ軸の周りに2αだけ回転させる必要があり得
ることは明らかである。
【0016】
ここで
図4を参照すれば、光パルス源200が例示され、光パルス源200は、
図3A
の光パルス源100の具体例として見ることができ、ここでは、ゲイン素子130の遠端
にミラー230を追加し、出力カプラ225をゲイン素子130の(シード源に近い)近
端に追加することによって、シングルパス増幅器101をダブルパス増幅器201に変換
することができる。ミラー230は、ゲイン素子を順方向に通って伝搬して1回目に通過
した後に増幅されたシードパルスを、ゲイン素子の(シード源から離れた)遠端に戻して
、ゲイン素子130内をその近端に向けて逆方向に伝搬させる。出力カプラ225は、例
えば偏光ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)を用いて、四分の一
波長板(QWP:quarter wave plate)223を増幅器201のダブルパス構成内に、例
えばミラー230の前方に追加して具体化することができる。PBS225は、ゲイン素
子130を通って逆方向に伝搬した後に増幅されたシードパルス15を、ゲイン素子13
0の近端から受けて、これらのシードパルス15を出力方向に再指向させ、シードパルス
15の偏光は、QWP223を2回通過することによって、増幅器201の入力における
プリシェイピング済シードパルス13に対して90度だけ回転している。ダブルパス増幅
器201におけるゲイン狭帯域化効果は、ゲイン素子におけるシングルパス・ゲインが同
一または同様であれば、
図3Aの光パルス源100のシングルパス増幅器101における
ゲイン狭帯域化効果よりも強力であり得るので、光源200内の薄膜ノッチフィルタ12
0は、光パルス源100における薄膜ノッチフィルタよりも、その透過特性において幾分
深いノッチを有するように構成することができる。
【0017】
ここで
図5を参照すれば、パルスシェイピング・フィルタ120は、
図1〜4を参照し
て概略的に上述した透過特性を有する透過薄膜ノッチフィルタ220を用いて透過型に構
成することもできる。フィルタ220は、例えば薄膜干渉フィルタとすることができ、薄
膜干渉フィルタは、適切に構成された薄膜層の積層を透明基板、例えばガラス基板上に堆
積させることによって製造することができる。
図5はダブルパス光増幅器を有する光パル
ス源200の変形例を例示しているが、透過型フィルタ220は、
図3Aに例示するもの
のようなシングルパス構成のゲイン素子を有する実施形態において用いることもできるこ
とは明らかである。
【0018】
図4及び5を参照して上述したダブルパスの実施形態では、パルスシェイピング・フィ
ルタ20、120及び220が、ミラー230及び出力カプラ225によって形成される
ダブルパス構成の動作上の前段に配置され、これにより、パルスシェイピング・フィルタ
は非増幅のシードパルス11のみを受ける。光増幅器の動作上の前段に、かつダブルパス
構成225〜230の外部にパルスシェイピング・フィルタを配置することは、パルスシ
ェイピング・フィルタの薄膜コーティングを光パルスよって損傷させる可能性を低減し、
このことは、高いシングルパス・ゲイン、及び増幅器からの高い出力光パワーを有する実
施形態において特に有利である。しかし、パルスシェイピング・フィルタをマルチパス光
増幅器内に含む実施形態も、本発明の範囲内で想定することができる。1つのこうした実
施形態を
図6に例示し、この実施形態は、ミラー230及び出力カプラ225によって規
定されるダブルパス増幅器401のダブルパス光学構成の内部に第2パルスシェイピング
・フィルタ221を追加したことが、
図5の実施形態と異なる。図示する好適な実施形態
では、第2パルスシェイピング・フィルタ221は、ゲイン素子130とミラー230と
の間に配置された透過型フィルタであり、増幅されるパルスが2回通過する。この構成の
1つの潜在的利点は、干渉フィルタの透過特性において、
図5のフィルタ220に比べて
、より浅いノッチを有する干渉フィルタを用いることを可能にすることができることにあ
り、こうしたより浅いノッチを有する干渉フィルタは、より容易に製造することができる
。第2透過型フィルタ221は、反射薄膜フィルタ120を増幅器の前段に有する
図4の
実施形態のダブルパス光増幅器201内に追加することもできることは明らかである。
【0019】
種々の実施形態では、パルスシェイピング・フィルタ20、120または220を、ゲ
イン素子130のベル形ゲインスペクトルの中心波長λ
0から2、3ナノメートル離れた
波長の入射光の少なくとも95%を透過させ、かつゲインピーク波長λ
0、あるいはフィ
ルタの透過または反射特性におけるノッチ19の中心波長λ
fの入射光の85%未満を透
過させるように構成することができる。ノイズシェイピング(雑音整形)フィルタ20の
透過または反射特性におけるノッチ19の形状、幅、及び深さは、好適には特定のゲイン
素子及び増幅器構成向けに最適化するべきであり、異なる実施形態に対して異ならせるこ
とができる。
図9に、7〜13dBの範囲内のシングルパス・ゲインを有するYb:YAG
ゲイン素子を用いたシングルパス増幅器を有する
図3の実施形態用のパルスシェイピング
・フィルタ20の好適な透過特性を例示する。この好適なフィルタは、上述したように反
射または透過薄膜フィルタとして具体化することができ、〜1030nmのYb:YAGゲ
インのピーク波長を中心とするその透過特性において、ノッチを有し、かつ3〜5nmの範
囲内のFWHM幅を有するおよそ逆ガウス形の形状を有し、このFWHM幅は、上記Yb
:YAGゲイン素子のゲインスペクトル幅と一致させるか、このゲインスペクトル幅より
も少し小さくすることができ、その最大透過率の約20%のノッチの深さを有する。他の
実施形態では、フィルタ透過特性におけるノッチの幅及び深さの目標値を、例えばゲイン
素子のシングルパスまたはダブルパス・ゲインスペクトルのスペクトル形状及びスペクト
ルの大きさに応じて、及び増幅器全体の設計に応じて異ならせることができる。例えば、
一部の実施形態は、フィルタ透過における10%〜30%の範囲内の、及び50%までの
ノッチの深さ、及び2nmまでも小さいノッチスペクトル幅を有するフィルタを利用するこ
とができる。
【0020】
ここで
図7を参照すれば、パルスシェイピング・フィルタ20をマルチパスフィルタ3
20として具体化することができ、マルチパスフィルタ320は、反射薄膜ノッチフィル
タ120に光学的に結合されてマルチパス構成をなすミラー155を含む。マルチパスフ
ィルタ320内では、シード光パルス11が、光増幅器に指向される前に薄膜ノッチフィ
ルタ120によって2回以上フィルタ処理される。このマルチパスフィルタ構成は、例え
ば、フィルタ透過特性におけるノッチ19の幅と深さの所望の組合せを有する薄膜フィル
タを高い信頼性で製造することが困難である際に有用であり得る。シードパルスを同じ薄
膜ノッチフィルタ120から複数回反射させ、この薄膜フィルタから連続して反射する間
にゲイン素子を通過させないことによって、薄膜フィルタ120の設計を増幅器の設計か
らある程度切り離すことができる。こうした薄膜フィルタの設計は、透過特性において、
所定の増幅器における最適なパルス・プリシェイピングにとって望ましいノッチよりも浅
く広幅のノッチを有する薄膜フィルタ120の使用も可能にすることができる。マルチパ
ス・パルスシェイピング・フィルタ320は、シード光パルス11が、シングルパスまた
はマルチパス光増幅器30に入る前に薄膜ノッチフィルタ120によって反射されるか薄
膜ノッチフィルタ120を透過するように構成することができることが有利であり、この
反射または透過の回数は、シード光パルス11が増幅器のゲイン素子130を通過する回
数よりも多い。
図7のマルチパスフィルタ320は、上述した実施形態のいずれにおいて
も、増幅器の前段のパルスシェイピング・フィルタとして用いることができることは明ら
かである。マルチパスフィルタ320を、
図3Aの光パルス源100内のシングルパス増
幅器101の前段のパルスシェイピング・フィルタ20として用いる例を、
図8に例示す
る。マルチパスフィルタ320は、2つのミラー間に配置された透過薄膜ノッチフィルタ
を用いて具体化することができることは明らかである。
【0021】
上述した好適な実施形態では、受動パルスシェイピング薄膜フィルタを、3〜20nmの
ゲイン帯域幅を有するシングルパスまたはダブルパス増幅器の前段に用いて、増幅器にお
けるゲイン狭帯域化効果を補償することは、前段にパルスシェイピング・フィルタのない
同じ増幅器に比べて、より短い出力光パルスを2回まで得ることを可能にする。一例とし
て、Yb:YAGゲイン素子に基づく従来の光増幅器は、700〜1200fsの範囲内の
出力光パルスを提供することができ、この出力光パルスは、上述したように受動パルス・
プリシェイピング・フィルタを光増幅器の前段に追加することによって、300〜600
fsまたはそれ未満まで短くすることができる。
【0022】
上述した好適な実施形態は、あらゆる点で本発明を限定するのではなく例示することを
意図している。従って、本発明は、詳細な実現において、本明細書に含まれる記載から当
業者が導出することができる多数の変形例が可能である。例えば、本明細書に記載した特
定実施形態は、Yb;YAG単結晶ロッド、結晶、ディスク、またはファイバを参照して
説明してきたが、Yb:YAG、Yb:KYW、Yb:KGW、及びYb:CALGO材
料(これらだけではないが)のようなYbでドープした他の増幅器材料に基づくゲイン素
子、並びに、シングルパス及びダブルパス増幅器設計において有用であり得る2〜10nm
の帯域幅及び5dB以上のシングルパス・ゲインを提供することができるもののような他の
狭帯域高ゲイン光学材料も、本発明の範囲内で用いることができる。他の例では、図面中
に例示し以上で説明したポンピング、及びシングルパス及びダブルパスの構成は一例に過
ぎず、それぞれの光増幅器の他の適切な構成を本開示に基づいて考えることもできる。こ
れら及び他の変形及び変更のすべてが、以下の特許請求の範囲によって規定する本発明の
範囲内であるものと考えられる。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにそ
の特定例を挙げた本明細書中のすべての記載は、それらの構造的及び機能的等価物を包含
することを意図している。これに加えて、こうした等価物は、現在知られている等価物、
並びに将来開発される等価物を共に含み、即ち、同じ機能を実行する開発されたあらゆる
要素を、その構造にかかわらず含む。
【0023】
従って、本発明は、本明細書に記載した特定実施形態によってその範囲を限定されない
。実際に、本発明の他の種々の実施形態、及び本発明に対する変更は、本明細書に記載し
たものに加えて、以上の説明及び添付した図面より通常の当業者にとって明らかである。
従って、こうした他の実施形態及び変更は、本発明の範囲内に入ることを意図している。
さらに、本明細書では、本発明を、特定環境における特定目的での特定の実現に関連して
説明してきたが、その有用性はこれらに限定されず、本発明はいくつもの環境においてい
くつもの目的で有益に実現することができることは、通常の当業者が認める所である。