特許第6295005号(P6295005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6295005大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6295005
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   C03C27/06 101Z
   C03C27/06 101D
   C03C27/06 101E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-221077(P2017-221077)
(22)【出願日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年11月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513252024
【氏名又は名称】富士ソーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】森川 茂巳
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−156525(JP,A)
【文献】 特開平11−021150(JP,A)
【文献】 特開平11−278877(JP,A)
【文献】 米国特許第05028287(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気を2枚以上のガラス板間に残したままスペーサーを介在させ、
前記ガラス板の周縁部には摺動性を有しているため、温度差によるガラスの膨張・収縮にも対応することが可能なシリコンゴム気密パッキングリングを取り付けるとともに、
該シリコンゴム気密パッキングリング部分に逆止弁構造を形成することにより、
大気が密封されたままで複数の複層ガラスが真空チャンバ内で同時かつ大量に真空減圧するようにした大量生産型真空低圧複層ガラスにおいて、
前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成した逆止弁構造は、複層ガラス内空間の真空吸引時にはエア通路を開放し、真空吸引の終了時にはエア通路を自動的に閉鎖する弁体を備えており、かつ該弁体は前記エア通路内の片方の側に取り付けたマイクロ板バネからなることを特徴とする大量生産型真空低圧複層ガラス。
【請求項2】
前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成した逆止弁構造は、真空吸引時には複層ガラス内空間を真空チャンバ内の真空減圧状態と同じに減圧することができるようにしてなることを特徴とする請求項1に記載の大量生産型真空低圧複層ガラス。
【請求項3】
大気を2枚以上のガラス板間に残したままスペーサーを介在させ、前記ガラス板の周縁部には摺動性を有しているため、温度差によるガラスの膨張・収縮にも対応することが可能なシリコンゴム気密パッキングリングを取り付け、
前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成したエア通路内の片方の側にマイクロ板バネを取り付けたまま、複層ガラスを真空チャンバ内で真空減圧密閉し、
その後前記複層ガラスの周縁部にブチルゴムテープを巻き付けることを特徴とする大量生産型真空低圧複層ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、単なる複層ガラスは内部において熱の対流が発生して熱伝導による断熱性や遮熱性を損なっているという事実があった。そこで、
1)クリア(透明)フロートガラス、強化ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射ガラス、摺りガラスなどに、ジルコニウム、ビスマス、チタン、インジウム、スズ、亜鉛等からなる反射防止剤のコーティング処理をして複層ガラス資材とする。
2)また複層ガラスの空間にはクロム、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、ステンレス、ニッケルクロム鋼等をスペーサーに用いて複層ガラスを形成する。
3)そのガラス板周縁部に半田硝子、低融点ガラス、ロー材等を充填封止する。
4)その上で真空引き作業を行う。
という作業手順が採用されていた。
【0003】
そのため、パイプやチューブ、針等を複層ガラスの2枚のガラス板間のスペースに装着した上で、高温(200℃〜300℃)に加熱しながら、複層ガラス間をスペースを確保しつつ保持する工程、複層ガラス間を封止する工程によって複層ガラスを1枚づつ製造したのち、複層ガラス間の真空引きを行っており、品質が不安定で歩留まり率も悪く、安価でかつ安定した品質で大量生産するというには不向きな製造方法であった。
【0004】
また、真空低圧複層ガラスはガラスとしての特徴・特質である透明で気流や対流等による熱移動を防止できる長所を備えているが、対向する板状ガラス間の空気を吸引するために板状ガラスに穴をあけたり、取付部品の加工や取付け、また開けた穴を封止することはガラスが元来破損しやすいものであるため容易ではなく、また透明性を阻害することにもなっていた。しかもガラス面に穴跡が残っていたり、小さな弁を内蔵させるという困難さを伴うことがあった。
さらに、断熱性を備えた複層ガラスの還流率を下げるには複層ガラスを厚くしなければならず、大幅なコスト上昇を招きかねないという問題があった
したがって、1mm以下とした複層ガラス間のスペースの確保、また前記スペース内を熱対流伝導防止のために10パスカル以下に真空低圧加工をして真空封止をするか、その加工を一度に大量に行うことができるかということが大きな課題である。
【0005】
例えば、厚さ4mmで1m×2mの長方形のフロートガラスを用い、複層ガラスの外側(外気側)ガラスが−30°で室内側ガラスが+25°の場合、55℃の温度差の環境に真空低圧複層ガラスが曝されることになる。この場合、2枚のガラス間の周縁部を密閉する素材として低融点ハンダガラスや低温溶融ガラス、ロー材等の硬くて強固な封止材を使用すると、前記温度差で内外両方のガラスに掛かる応力(ストレス)で、約2mmの膨張および収縮差が2枚のガラス間に発生することになる。そして、10回程度の膨張および収縮の繰り返しでガラス膨張応力がガラス周縁表面にまず浅くヒビを発生させる。やがて数回の膨張および収縮を繰り返すとひびがさらに増加して深部に達し、破損してしまうという大変不都合な課題があり、従来の真空低圧複層ガラスではおよそ40℃位の内外室温差の環境条件で使用制限されるものであった。
そのため、真空低圧複層ガラスは省エネ社会の実現のため企業、産業界、一般家庭等において大きな市場や需要があるにもかかわらず、その普及が遅れていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−87350号公報
【特許文献2】特開2000−63156号公報
【特許文献3】特開2000−352274号公報
【特許文献4】特開2001−31449号公報
【特許文献5】特開2009−167041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、対向する板状ガラス間の空気を吸引するために板状ガラスに穴をあけたり、取付部品の加工や取付け、また開けた穴を封止する必要をなくし、しかもガラス面に穴跡が残ることもなく、複層ガラス間のスペース内の熱対流伝導防止のために10パスカル以下に一度にかつ大量に真空低圧加工をすることができる大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわちこの発明の大量生産型真空低圧複層ガラスは、大気を2枚以上のガラス板間に残したままスペーサーを介在させ、前記ガラス板の周縁部には摺動性を有しているため、温度差によるガラスの膨張・収縮にも対応することが可能なシリコンゴム気密パッキングリングを取り付けるとともに、該シリコンゴム気密パッキングリング部分に逆止弁構造を形成することにより、大気が密封されたままで複数の複層ガラスが真空チャンバ内で一括して真空減圧するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
この発明の大量生産型真空低圧複層ガラスにおいて、前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成した逆止弁構造は、複層ガラス内空間の真空吸引時にはエア通路を開放し、真空吸引の終了時にはエア通路を自動的に閉鎖する弁体を備えていることをも特徴とするものである。
【0010】
この発明の大量生産型真空低圧複層ガラスにおいて、前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成した逆止弁構造は、真空吸引時には複層ガラス内空間を真空チャンバ内の真空減圧状態と同じに減圧することができるようにしてなることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明の大量生産型真空低圧複層ガラスにおいて、前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成した逆止弁構造は、前記エア通路の片方の側に取り付けたマイクロ板バネを備えていることをも特徴とするものである。
【0012】
この発明の大量生産型真空低圧複層ガラスの製造方法は、大気を2枚以上のガラス板間に残したままスペーサーを介在させ、前記ガラス板の周縁部には摺動性を有しているため、温度差によるガラスの膨張・収縮にも対応することが可能なシリコンゴム気密パッキングリングを取り付け、前記シリコンゴム気密パッキングリング部分に形成したエア通路の片方の側にマイクロ板バネを取り付けたまま、複層ガラスを真空チャンバ内で真空減圧密閉し、その後前記複層ガラスの周縁部にブチルゴムテープを巻き付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、対向する板状ガラス間の空気を吸引するために板状ガラスに穴をあけたり、取付部品の加工や取付け、また開けた穴を封止する必要をなくし、しかもガラス面に穴跡が残ることもなく、複層ガラス間のスペース内を熱対流伝導防止のために10パスカル以下に一度にかつ大量に真空低圧加工をすることができる大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の大量生産型真空低圧複層ガラスの1実施例を示す概略正面図である。
図2】その概略断面図である。
図3】真空減圧しようとする段階の概略正面図である。
図4】逆止弁構造の要部を示し、真空減圧後に逆止弁構造を作動させた段階の概略拡大図である。
図5】真空減圧後に逆止弁構造を作動させた段階の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基いて本発明の大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
図1および図2は本発明の大量生産型真空低圧複層ガラスの1実施例を示すものである。
本発明の大量生産型真空低圧複層ガラスを示す図1および図2において、前記真空低圧複層ガラス11は2枚のガラス板11a,11bを備え、大気を前記2枚のガラス板11a,11b間に残したままスペーサー12を介在させて2枚のガラス板11a,11bを接合させる。
その上で前記2枚のガラス板11a,11bの周縁部の間にはシリコンゴム気密パッキングリング13を取り付けて密閉してある。前記スペーサー12による前記2枚のガラス板11a,11b間の間隔は0.2mm〜1mmの範囲が望ましく、またシリコンゴム気密パッキングリング13の幅は施工や取り付けるサッシ枠、寸法規格等を考慮すると約15mmの幅が望ましい。
前記スペーサー12の素材としては、従来使用されてきたクロム、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、ステンレス、ニッケルクロム鋼等では2枚のガラス板11a,11b間に加わる膨張や収縮時の応力には対応できない場合、石英やクリスタル等の素材を使用することが望ましい。
【0016】
前記シリコンゴム気密パッキングリング13は摺動性を有しているため、温度差による2枚のガラス板11a,11bの膨張・収縮にも対応することが可能である。またそれとともに、該シリコンゴム気密パッキングリング13部分に逆止弁構造14が形成してある。そのため、大気が密封されたままで複数の真空低圧複層ガラス11を真空チャンバ(図示せず)内で真空減圧することができる。
前記シリコンゴム気密パッキングリング13は、1枚のシート状素材から矩形に切出し、切れ目のないリング状で使用すること望ましい。
その上で前記ガラス板11a,11bの周縁部にはブチルゴムテープ17が巻き付けてある。もちろんこのブチルゴムテープ17も、温度差による2枚のガラス板11a,11bの膨張・収縮にも対応することが可能である。
【0017】
ちなみに、前記シリコンゴム気密パッキングリング13部分に形成した逆止弁構造14は、2枚のガラス板11a,11b内の空間を真空吸引する時にはエア通路14aが自動開閉弁を開放(開弁)し、真空吸引の終了時にはエア通路14aが外部の大気圧で完全かつ自動的に閉鎖(閉弁)する2枚の弁体15を備えている。
そのため、前記シリコンゴム気密パッキングリング13部分に形成した逆止弁構造14は、真空吸引時には2枚のガラス板11a,11b内の空間を真空チャンバ内の真空減圧状態と同じに減圧することができる。
【0018】
より詳しくは、前記シリコンゴム気密パッキングリング13部分に形成した逆止弁構造14は、前記エア通路14aの片方の側に取り付けた前記シリコンゴム気密パッキングリング13と同じ素材からなる2枚の弁体15内にマイクロ板バネ16を備えている。
もちろんこのマイクロ板バネ16は、常態では前記弁体15が前記エア通路14aを閉じる方向に付勢するようになっている。
【0019】
次に、図3ないし図5を用いてこの発明の大量生産型真空低圧複層ガラスの製造方法を説明する。
まず、図1および図2に示したように、大気を2枚(あるいはそれ以上)のガラス板11a,11b間に残したままスペーサー12を介在させ、前記ガラス板11a,11bの周縁部にシリコンゴム気密パッキングリング13を取り付けている。
このシリコンゴム気密パッキングリング13部分に形成したエア通路14aの片方の側にマイクロ板バネ16を取り付けたまま、前記ガラス板11a,11b間を真空チャンバ内で真空減圧する。その上で、図2に示すように前記ガラス板11a,11bの周縁部にはブチルゴムテープ17が巻き付けてある。
【0020】
図3は、前記ガラス板11a,11b間を真空チャンバ内で真空減圧する段階を示し、前記逆止弁構造14を構成する2枚の弁体15内のマイクロ板バネ16は、その付勢力に抗して真空チャンバ内での真空吸引作用によりエア通路14aを開放している。
図4は、前記ガラス板11a,11b間の真空減圧が終了した段階を示し、真空吸引作用の働かない状態において前記逆止弁構造14を構成する2枚の弁体15内のマイクロ板バネ16は、その付勢力と大気圧とで押し付けてエア通路14aに沿って密着し、エア通路14aを閉鎖している。図5はその全体を示すものである。
次いで、前記ガラス板11a,11bの周縁部にはブチルゴムテープ17を巻き付け、前記ガラス板11a,11bの周縁部をエア通路14a部分を含めて確実に密閉する。
【0021】
この発明によれば、対向するガラス板11a,11b間の空気を吸引するためにガラス板11a,11bに穴をあけたり、取付部品の加工や取付け、また開けた穴を封止する必要をなくし、しかもガラス面に穴跡が残ることはない。
さらに、ガラス板11a,11b間のスペース内を熱対流伝導防止のために10パスカル以下に一度にかつ大量に真空低圧加工をすることができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は以上の通りの構成を有するものであり、住宅の窓や天窓等の開口部のみならず、ソーラー発電やソーラー給湯等の各種の装置、自動車、船舶、温冷室、冷蔵温蔵庫、農業用ハウス、畜舎等に好適に使用することができる。
なお、前記真空低圧複層ガラス11の形状としては、正方形や長方形はもとより、丸形、三角形、六角形、五角形等とすることができ、ガラスの素材もシリコンゴム気密パッキングリング13で密閉できれば、50〜100枚程度の複層ガラスを短時間かつ少工程で一時に大量に生産することができる。
【符号の説明】
【0023】
11 真空低圧複層ガラス
11a,11b ガラス板
12 スペーサー
13 シリコンゴム気密パッキングリング
14 逆止弁構造
14a エア通路
15 弁体
16 マイクロ板バネ
17 ブチルゴムテープ
【要約】
【課題】
対向する板状ガラス間の空気を吸引するために板状ガラスに穴をあけたり、取付部品の加工や取付け、また開けた穴を封止する必要をなくし、しかもガラス面に穴跡が残ることもなく、複層ガラス間のスペース内の熱対流伝導防止のために10パスカル以下に一度にかつ大量に真空低圧加工をすることができる大量生産型真空低圧複層ガラスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
大気を2枚以上のガラス板間に残したままスペーサーを介在させ、前記ガラス板の周縁部には摺動性を有しているため、温度差によるガラスの膨張・収縮にも対応することが可能なシリコンゴム気密パッキングリングを取り付けるとともに、該シリコンゴム気密パッキングリング部分に逆止弁構造を形成することにより、大気が密封されたままで複数の複層ガラスが真空チャンバ内で真空減圧するようにしたことを特徴とする大量生産型真空低圧複層ガラス。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5