特許第6295058号(P6295058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295058
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20180305BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   B41J2/16 503
   B41J2/14 303
   B41J2/14 501
   B41J2/16 303
   B41J2/16 401
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-216584(P2013-216584)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-77737(P2015-77737A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】堀口 悟史
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−157106(JP,A)
【文献】 特開2009−166269(JP,A)
【文献】 特開2002−307679(JP,A)
【文献】 特開2013−031991(JP,A)
【文献】 特表2003−505281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0185012(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002766(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の基準方向に同じピッチPで配列するn個(nは1以上の整数)の吐出溝と、前記吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて前記吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第一の圧電体基板と、
前記第一の圧電体基板の表面に接合され、板厚方向に貫通し基準方向に配列する(j+n+k)個(j、kはそれぞれ1以上の整数)の貫通孔を有し、n個の前記貫通孔のそれぞれはn個の前記吐出溝のそれぞれに連通し、前記吐出溝に連通するn個の前記貫通孔からなる孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔は前記吐出溝に連通しない不透明基板と、
を備える
液体噴射ヘッドであって、
前記不透明基板は、前記孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔を通して前記第一の圧電体基板の前記表面が見えるように、前記第一の圧電体基板の前記表面に接合されている、
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
表面の基準方向に同じピッチPで配列するn個(nは1以上の整数)の吐出溝と、前記吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて前記吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第一の圧電体基板と、
前記第一の圧電体基板の表面に接合され、板厚方向に貫通し基準方向に配列する(j+n+k)個(j、kはそれぞれ1以上の整数)の貫通孔を有し、n個の前記貫通孔のそれぞれはn個の前記吐出溝のそれぞれに連通し、前記吐出溝に連通するn個の前記貫通孔からなる孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔は前記吐出溝に連通しない不透明基板と、
を備える、
液体噴射ヘッドであって、
前記孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔のj番目に配置される前記貫通孔と、前記孔列の一番目に配置される前記貫通孔とは前記半ピッチ(P/2)離間し、
前記孔列のn番目に配置される前記貫通孔と、前記孔列の他端側に位置するk個の前記貫通孔の一番目に配置される前記貫通孔とは前記半ピッチ(P/2)離間する、
体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔は、前記非吐出溝が前記不透明基板の側に向けて開口する開口領域の範囲と、前記基準方向に直交し前記不透明基板の基板面に平行な方向において重なる位置に設置される請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記不透明基板は、n個の前記貫通孔がn個のノズルからなるノズルプレートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
n個のノズルを有するノズルプレートを更に備え、
前記ノズルプレートは、n個の前記ノズルのそれぞれがn個の前記貫通孔のそれぞれに連通し、前記不透明基板の前記第一の圧電体基板とは反対側に接合される請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記吐出溝及び前記非吐出溝は前記第一の圧電体基板の上面に設置され、
前記不透明基板は、n個の前記貫通孔に連通する液室を有し、前記上面に接合されるカバープレートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
n個の前記吐出溝と(n+1)個の前記非吐出溝は前記第一の圧電体基板の側面に開口する請求項4又は5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
表面の基準方向に同じ前記ピッチPで配列するn個の吐出溝と、前記吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて前記吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第二の圧電体基板を更に含み、
前記第一の圧電体基板と前記第二の圧電体基板とは、各前記圧電体基板の側面を面一に、前記上面とは反対側の下面どうしを対向させて一体的に構成され、
前記貫通孔は、前記第一の圧電体基板の側面に開口する吐出溝と前記第二の圧電体基板の側面に開口する吐出溝とを連通させる請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
第一の液室と前記第一の液室に連通するn個のスリットとを有する第一のカバープレートと、第二の液室と前記第二の液室に連通するn個のスリットとを有する第二のカバープレートとを更に備え、
前記第一のカバープレートは、n個の前記スリットのそれぞれがn個の前記吐出溝のそれぞれに連通し前記第一の圧電体基板の上面に接合され、
前記第二のカバープレートは、n個の前記スリットのそれぞれがn個の前記吐出溝のそれぞれに連通し前記第二の圧電体基板の上面に接合される請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
n個の前記吐出溝と(n+1)個の前記非吐出溝が前記第一の圧電体基板の上面と前記上面とは反対側の下面に開口する請求項4又は5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に液滴を噴射して記録する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料などの液体を液体タンクから供給管を介してチャンネルに導き、チャンネルに充填される液体に圧力を印加してチャンネルに連通するノズルから液体を吐出する。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
特許文献1には、この種の液体噴射ヘッドが記載されている。図8は特許文献1に記載される液体噴射ヘッドの分解斜視図である。液体噴射ヘッド201は、圧電体基板202と、圧電体基板202の表面SFに接合されるカバープレート203と、圧電体基板202の前方端FEに接合されるノズルプレート216とを備える。圧電体基板202の表面SFにはダミーチャンネル212と吐出チャンネル211とが交互に配列する。カバープレート203は、液体供給室214と吐出チャンネル211に連通するスリット215とを備え、スリット215は吐出チャンネル211にのみ連通しダミーチャンネル212には連通しない。ノズルプレート216はノズル217を備え、ノズル217は前方端FEに開口する吐出チャンネル211に連通する。吐出チャンネル211とダミーチャンネル212は隔壁206により分離され、隔壁206の側面に駆動電極207が形成される。駆動電極207は圧電体基板202の後方端RE近傍の表面SFに形成される電極端子と電気的に接続される。後方端RE近傍の表面SFにはフレキシブル回路基板204が接続され、外部から駆動信号が供給される。液体供給室214に供給される液体は、スリット215を介して吐出チャンネル211に流入する。駆動電極207に駆動信号が与えられると隔壁206は変形し、吐出チャンネル211の容積が急激に変化してノズル217から液滴が吐出される。
【0004】
特許文献2には、チャンネル内の液体が循環するスルーフロータイプの液体噴射ヘッドが記載される。スルーフロータイプは、液体中に気泡や異物が混入した場合でもチャンネル外に迅速に排出することができる。そのため、キャップ構造やサービスステーションを用いずにメンテナンスを実施することができ、メンテナンス時の液体の消費量が減少し、ランニングコストを抑えることができる。更に、吐出不良によって被記録媒体を無駄に消費するのを最小限に抑えることができる。
【0005】
図9は特許文献2に示される液体噴射ヘッドの分解斜視図である。液体噴射ヘッドは、2枚の圧電素子を重ねて3つの流路90、92、94を構成するPZTウエハ88、89と、流路90と流路94に連通する開口が形成され、流路92を閉塞するマスクプレート100と、流路92を跨いで流路90と流路94を連通させる開口部が形成される開口プレート66と、開口プレート66の開口部に連通するノズル102が形成されるノズルプレート64とを備える。液体は、矢印52で示すように流路90から開口プレート66の開口部を経て流路94に流れる。つまり、液体は流路92の周りを循環する。2つの壁96、98の流路92側の側面にはライン電極が、流路90、94側の側面にはアース電極が設けられ、これらの電極により壁96、98を駆動することにより、ノズル102から小液滴が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−101437号公報
【特許文献2】特表2003−505281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は、吐出チャンネル211やダミーチャンネル212の溝幅や溝間隔が100μm〜20μmと狭くなってきている。そのため、例えば特許文献1の液体噴射ヘッドでは、ノズルプレート216のノズル217と前方端FEに開口する吐出チャンネル211とを高精度に位置合わせする必要がある。特に、ノズルプレート216として不透明材料、例えば金属板等を使用する場合は、ノズルプレート216を前方端FEに接合する際に、ノズルプレート216を通して吐出チャンネル211が視認できず、正確に位置合わせを行うのが難しい。例えばノズルプレート216と圧電体基板202とを外形を基準として位置合わせを行うと位置精度が低下する。また、ノズル217を通して前方端FEに開口する吐出チャンネル211に合わせようとしても、ノズル217を通して視認する開口が吐出チャンネル211の開口であるかダミーチャンネル212の開口であるか区別ができない。
【0008】
同様の課題は、圧電体基板202の表面SFに形成される吐出チャンネル211にカバープレート203を設置する場合にも生ずることがある。カバープレート203は通常不透明なので、表面SFに接合する際にカバープレート203を通して吐出チャンネル211やダミーチャンネル212を視認することができない。そこで、スリット215を通して見える溝に合わせ込む場合に、スリット215を通してみている溝が吐出チャンネル211であるかダミーチャンネル212であるかを区別することができない場合がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の液体噴射ヘッドでは、マスクプレート100、開口プレート66及びノズルプレート64を使用して液体循環型とするので、構成要素が多く、各プレートの位置合わせが極めて煩雑となる。また、これらの構成要素を、外形を基準としてPZTウエハ88、89に貼り合わようとすると、高精度の位置合わせが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドは、表面の基準方向に同じピッチPで配列するn個(nは1以上の整数)の吐出溝と、前記吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて前記吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第一の圧電体基板と、前記第一の圧電体基板の表面に接合され、板厚方向に貫通し基準方向に配列する(j+n+k)個(j、kはそれぞれ1以上の整数)の貫通孔を有し、n個の前記貫通孔のそれぞれはn個の前記吐出溝のそれぞれに連通し、前記吐出溝に連通するn個の前記貫通孔からなる孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔は前記吐出溝に連通しない不透明基板と、を備えることとした。
【0011】
また、前記孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔のj番目に配置される前記貫通孔と、前記孔列の一番目に配置される前記貫通孔とは前記ピッチP又は前記半ピッチ(P/2)離間し、前記孔列のn番目に配置される前記貫通孔と、前記孔列の他端側に位置するk個の前記貫通孔の一番目に配置される前記貫通孔とは前記ピッチP又は前記半ピッチ(P/2)離間することとした。
【0012】
また、前記孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の前記貫通孔は、基準方向Kに直交し前記不透明基板の基板面に平行な方向において、前記非吐出溝が前記不透明基板の側に向けて開口する開口領域の範囲と重なる位置に設置されることとした。
【0013】
また、前記不透明基板は、n個の前記貫通孔がn個のノズルからなるノズルプレートであることとした。
【0014】
また、n個のノズルを有するノズルプレートを更に備え、前記ノズルプレートは、n個の前記ノズルのそれぞれがn個の前記貫通孔のそれぞれに連通し、前記不透明基板の前記第一の圧電体基板とは反対側に接合されることとした。
【0015】
また、前記吐出溝及び前記非吐出溝は前記第一の圧電体基板の上面に設置され、前記不透明基板は、n個の前記貫通孔に連通する液室を有し、前記上面に接合されるカバープレートであることとした。
【0016】
また、n個の前記吐出溝と(n+1)個の前記非吐出溝は前記第一の圧電体基板の側面に開口することとした。
【0017】
また、表面の基準方向に同じ前記ピッチPで配列するn個の吐出溝と、前記吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて前記吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第二の圧電体基板を更に含み、前記第一の圧電体基板と前記第二の圧電体基板とは、各前記圧電体基板の側面を面一に、前記上面とは反対側の下面どうしを対向させて一体的に構成され、前記貫通孔は、前記第一の圧電体基板の側面に開口する吐出溝と前記第二の圧電体基板の側面に開口する吐出溝とを連通させることとした。
【0018】
また、第一の液室と前記第一の液室に連通するn個のスリットとを有する第一のカバープレートと、第二の液室と前記第二の液室に連通するn個のスリットとを有する第二のカバープレートとを更に備え、前記第一のカバープレートは、n個の前記スリットのそれぞれがn個の前記吐出溝のそれぞれに連通して前記第一の圧電体基板の上面に接合され、前記第二のカバープレートは、n個の前記スリットのそれぞれがn個の前記吐出溝のそれぞれに連通して前記第二の圧電体基板の上面に接合されることとした。
【0019】
また、n個の前記吐出溝と(n+1)個の前記非吐出溝が前記第一の圧電体基板の上面と前記上面とは反対側の下面に開口することとした。
【0020】
本発明の液体噴射装置は、上記の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0021】
本発明による液体噴射ヘッドは、表面の基準方向に同じピッチPで配列するn個(nは1以上の整数)の吐出溝と、吐出溝に対して半ピッチ(P/2)ずれて吐出溝と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝とを有する第一の圧電体基板と、第一の圧電体基板の表面に接合され、板厚方向に貫通し基準方向に配列する(j+n+k)個(j、kはそれぞれ1以上の整数)の貫通孔を有し、n個の貫通孔のそれぞれはn個の吐出溝のそれぞれに連通し、吐出溝に連通するn個の貫通孔からなる孔列の一端側に位置するj個の前記貫通孔と他端側に位置するk個の貫通孔は吐出溝に連通しない不透明基板と、を備える。これにより、第一の圧電体基板のn個の吐出溝と不透明基板のn個の貫通孔との間の位置を、一端側のj個の貫通孔と他端側のk個の貫通孔を通して見る第一の圧電体基板の表面状態により決定することができるので、2つの基板の位置合わせが極めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図2】本発明の第一実施形態の変形例に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分分解斜視図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドをカバープレート側から見る平面模式図である。
図5】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図6】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図7】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
図8】従来公知の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図9】従来公知の他の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図1(a)は液体噴射ヘッド1の模式的な部分分解斜視図であり、図1(b)〜(d)はそれぞれ液体噴射ヘッド1をノズルプレート7の側から見る正面模式図である。本実施形態は、第一の圧電体基板2aと不透明なノズルプレート7との間の位置合わせが容易な構造に関するものである。
【0024】
図1(a)に示すように、液体噴射ヘッド1は、第一の圧電体基板2aと、第一の圧電体基板2aの側面SPに接合される不透明基板であるノズルプレート7と、第一の圧電体基板2aの上面UPに接合されるカバープレート6とを備える。第一の圧電体基板2aは、上面UPの基準方向Kに同じピッチPで配列するn個(nは1以上の整数、以下同じ。)の吐出溝3と、吐出溝3に対して半ピッチ(P/2)ずれて吐出溝3と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝4とを有する。従って、基準方向Kに配列する溝列の両端には非吐出溝4が配置される。
【0025】
ノズルプレート7は、第一の圧電体基板2aの側面SPに接合され、板厚方向に貫通し基準方向Kに配列する(j+n+k)個(j、kは1以上の整数、以下同じ。)の貫通孔8を有し、n個の貫通孔8のそれぞれはn個の吐出溝3のそれぞれに連通し、吐出溝3に連通するn個の貫通孔8からなる孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8と他端側に位置するk個の貫通孔8は吐出溝3に連通しない。カバープレート6は、吐出溝3及び非吐出溝4の一部または全部を覆うように第一の圧電体基板2aの上面UPに接合される。ここで、第一の圧電体基板2aの上面UP、側面SP、及び、上面UPとは反対側の下面LPは第一の圧電体基板2aの表面に含まれる。n個の吐出溝3と(n+1)個の非吐出溝4は第一の圧電体基板2aの上面UPと側面SPに開口する。
【0026】
ノズルプレート7は不透明な材料から形成される不透明基板であり、孔列Rを構成するn個の貫通孔8(以下、貫通孔81〜8nと記す。)は液滴を吐出するためのn個のノズル11(以下、ノズル111〜11nと記す。)として機能する。なお、ノズルプレート7のn個のノズル111〜11nと、n個のノズル111〜11nの列、つまり孔列Rの一端側のj個の貫通孔8(以下、貫通孔8aと記す。)と他端側のk個の貫通孔8(以下、貫通孔8bと記す。)は一列にピッチPで配列する。本実施形態を表す図1ではj=k=1である。そこで、孔列Rの一端側の貫通孔8aを貫通孔8a1、他端側の貫通孔8bを貫通孔8b1と記す。また、n個のノズル111〜11nは一端側から他端側に111、112、・・・11n-1、11nのように配列する。
【0027】
従って、孔列Rの一端側に位置する1個の貫通孔8a1と、孔列Rの一番目に配置されるノズル111(貫通孔81)とはピッチP離間する。同様に、孔列Rのn番目に配置されるノズル11n(貫通孔8n)と孔列Rの他端側に位置する1個の貫通孔8b1とはピッチP離間する。そして、貫通孔8a1と貫通孔8b1は、基準方向Kに直交しノズルプレート7の基板面に平行な方向Hにおいて、非吐出溝4がノズルプレート7の側に向けて開口する開口領域の範囲Lと重なる位置に設置される。これにより、第一の圧電体基板2aに対してノズルプレート7が基準方向Kに半ピッチ(P/2)以上ずれたとき、貫通孔8a1又は貫通孔8b1を通して非吐出溝4や吐出溝3が視認可能となる。
【0028】
第一の圧電体基板2aはPZTセラミックスやその他の圧電体材料を使用することができる。ノズルプレート7は、例えば金属板や不透明プラスチック板が使用される。なお、不透明基板としての“不透明”とは、基板を圧電体基板に接合する際に圧電体基板の表面が観察できない基板をいう。従って、光を透過しない基板の他に、透光性ではあるが光散乱が大きく、接合する圧電体基板の表面が観察できない基板や、透光性の基板であるが表面に不透明膜が形成され、接合する基板が観察できない基板が含まれる。図1において、吐出溝3は側面SPから対向する側面の手前まで形成され、非吐出溝4は側面SPから対向する側面までストレートに形成される。吐出溝3及び非吐出溝4の側壁には駆動電極12が形成され、上面UPに形成される電極端子13に接続される。この電極端子13に駆動信号が印加されると吐出溝3の両側壁が変形し、吐出溝3に充填される液体が貫通孔8、つまりノズル11から吐出される。なお、吐出溝3や非吐出溝4の形状、駆動電極12や電極端子13の位置、形状は図1に示すものに限定されない。
【0029】
図1(b)は第一の圧電体基板2aとノズルプレート7とが正しく位置合わせされるときの貫通孔8a1、8b1及びノズル111〜11nと吐出溝3及び非吐出溝4の位置関係を表す。孔列Rの両端側に位置する貫通孔8a1、8b1は吐出溝3及び非吐出溝4には連通せず、これらの貫通孔8a1、8b1を通して側面SPが見える。孔列Rのn個のノズル111〜11n(貫通孔81〜8n)はn個の吐出溝3に連通し、ノズル111、・・・11nを通して吐出溝3が見える。
【0030】
図1(c)は、第一の圧電体基板2aに対してノズルプレート7を右方に半ピッチ(P/2)ずらしたときの貫通孔8a1、8b1及びノズル111〜11nの位置を表す。貫通孔8a1とn個のノズル111〜11nからは非吐出溝4が見え、貫通孔8b1からは第一の圧電体基板2aの側面SPが見える。なお、貫通孔8を通して見える溝が吐出溝3か非吐出溝4かは区別ができない。図1(d)は、第一の圧電体基板2aに対してノズルプレート7を左方に半ピッチ(P/2)ずらしたときの貫通孔8a1、8b1及びノズル111〜11nの位置を表す。貫通孔8b1とn個のノズル111〜11nからは非吐出溝4が見え、貫通孔8a1からは第一の圧電体基板2aの側面SPが見える。
【0031】
従って、図1(b)に示すように、孔列Rの一端側にj個の貫通孔8a1〜8ajを設置し、他端側にk個の貫通孔8b1〜8bkを設置した場合には、これらのj個とk個の貫通孔8a、8bを通して第一の圧電体基板2aの側面SPが見え、孔列Rのn個のノズル111〜11nを通して溝が見えるとき、正しく位置合わせがなされていることを示す。このように、きわめて簡便に、かつ、高精度で位置合わせを行うことができる。
【0032】
なお、一般的には、孔列Rの一端側のj個の貫通孔8a1〜8aj及び他端側のk個の貫通孔8b1〜8bkを通して見える側面SPの見え方に基づいて位置合わせを行う。この場合に、貫通孔8a1〜8aj、8b1〜8bkは、基準方向Kに直交し不透明基板(ノズルプレート7)の基板面に平行な方向Hにおいて、非吐出溝4がノズルプレート7の側に向けて開口する開口領域の範囲Lと重なる位置に設置する。そして、孔列Rを成す全ての貫通孔81〜8nを通して溝が見える状態で、孔列Rの両端側に位置するj個とk個の貫通孔8a1〜8aj、8b1〜8bkを通して見える側面SPの状態が、予め定められるパターンと一致するときに正確な位置合わが行われる。本実施形態では、孔列Rのすべての貫通孔81〜8nから吐出溝3が見える状態で、2つの貫通孔8a1、8b1を通して側面SPが見えるときに正しく位置合わせが行われている。
【0033】
(変形例)
図2は、本発明の第一実施形態の変形例に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図2(a)〜(c)はそれぞれ液体噴射ヘッド1をノズルプレート7(不透明基板)の側から見る正面模式図である。第一実施形態と異なる点は、孔列Rの両端のノズル111、11nと孔列Rの両端側に位置する貫通孔8a1、8b1との間が半ピッチ(P/2)離間する点であり、その他の構成は第一実施形態と同じである。
【0034】
図2(a)は第一の圧電体基板2aとノズルプレート7が正しく位置合わせされるときのノズル111〜11n及び貫通孔8a1、8b1と吐出溝3及び非吐出溝4の位置関係を表す。孔列Rの両端側の貫通孔8a1、8b1は吐出溝3には連通せず、これらの貫通孔8a1、8b1を通して非吐出溝4が見える。ただし、貫通孔8a1、8b1を通して見える溝が吐出溝3か非吐出溝4かは区別ができない。図2(b)は、第一の圧電体基板2aに対してノズルプレート7を右方に半ピッチ(P/2)ずらしたときのノズル111〜11nと貫通孔8a1、8b1の位置を表す。貫通孔8a1からは吐出溝3が見え、貫通孔8b1からは側面SPが見える。n個のノズル111〜11nからは非吐出溝4が見える。
【0035】
図2(c)は、第一の圧電体基板2aに対してノズルプレート7を左方に半ピッチ(P/2)ずらしたときのノズル111〜11nと貫通孔8a1、8b1の位置関係を表す。貫通孔8a1からは側面SPが見え、貫通孔8b1からは吐出溝3が見え、n個のノズル111〜11nからは非吐出溝4が見える。従って、吐出溝3及び非吐出溝4とノズルプレート7とが正しく位置合わせされる状態はいずれの貫通孔8a1、8b1からも側面SPが見えない図2(a)の状態となる。
【0036】
より一般的には、孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8a1〜8ajのj番目に配置される貫通孔8ajと、孔列Rの一番目に配置されるノズル111(貫通孔81)とはピッチP又は半ピッチ(p/2)離間し、孔列Rのn番目に配置されるノズル11n(貫通孔8n)と、孔列Rの他端側に位置するk個の貫通孔8b1〜8bkの一番目に配置される貫通孔8b1とはピッチP又は半ピッチ(P/2)離間するように構成すればよい。
【0037】
(第二実施形態)
図3は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の模式的な部分分解斜視図である。図4は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1をカバープレート6側から見る平面模式図である。本実施形態は、第一の圧電体基板2aとカバープレート6との間の位置合わせが容易になる構造に関するものである。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0038】
図3に示すように、液体噴射ヘッド1は、第一の圧電体基板2aと、第一の圧電体基板2aの上面UPに接合される不透明基板であるカバープレート6と、第一の圧電体基板2aの側面SPに接合されるノズルプレート7とを備える。第一の圧電体基板2aは、上面UPの基準方向Kに同じピッチPで配列するn個の吐出溝3と、吐出溝3に対して半ピッチ(P/2)ずれて吐出溝3と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝4とを有する。カバープレート6は、第一の圧電体基板2aの上面UPに接合され、板厚方向に貫通し基準方向Kに配列する(j+n+k)個の貫通孔8(本実施形態ではスリット10)を有する。n個のスリット101〜10n(貫通孔81〜8n)のそれぞれはn個の吐出溝3のそれぞれに連通し、吐出溝3に連通するn個の貫通孔8からなる孔列Rの一方側に位置するj個の貫通孔8と他端側に位置するk個の貫通孔8は第一の圧電体基板2aの上面UPにより塞がれる。ノズルプレート7は、n個の吐出溝3のそれぞれに連通するn個のノズル11が形成され、第一の圧電体基板2aの側面SPに接合される。
【0039】
ここで、第一の圧電体基板2aの上面UPは第一の圧電体基板2aの外面である表面に含まれる。カバープレート6は不透明な材料から形成される不透明基板であり、例えばPZTセラミックス、不透明プラスチック等から形成される。カバープレート6は、n個のスリット101〜10n(貫通孔81〜8n)に連通する液室9を有する。n個のスリット101〜10nは液室9の底面から第一の圧電体基板2aの側に貫通する。n個のスリット101〜10nのそれぞれはn個の吐出溝3のそれぞれに連通し、非吐出溝4には連通しない。ノズルプレート7は、ポリイミドフィルム等の透明プラスチックフィルムや不透明な金属板等を使用することができる。
【0040】
図4(a)は第一の圧電体基板2aとカバープレート6が正しく位置合わせされたときの貫通孔8a1、8b1及びスリット101〜10nと吐出溝3及び非吐出溝4の位置関係を表す。孔列Rの両端側に位置する貫通孔8a1、8b1は吐出溝3及び非吐出溝4には連通せず、これらの貫通孔8a1、8b1を通して上面UPが見える。n個のスリット101〜10n(n個の貫通孔81〜8n)は孔列Rを構成する。n個のスリット101〜10nはn個の吐出溝3に連通し、各スリット101〜10nを通して吐出溝3が見える。
【0041】
図4(b)は、第一の圧電体基板2aに対してカバープレート6を右方に半ピッチ(P/2)ずらしたときの貫通孔8a1、8b1及びスリット101〜10nの位置を表す。貫通孔8a1とn個のスリット101〜10nからは非吐出溝4が見え、貫通孔8b1からは第一の圧電体基板2aの上面UPが見える。なお、貫通孔8を通して見える溝が吐出溝3か非吐出溝4かは区別ができない。図4(c)は、第一の圧電体基板2aに対してカバープレート6を左方に半ピッチ(P/2)ずらしたときの貫通孔8a1、8b1及びスリット101〜10nの位置を表す。貫通孔8b1とn個のスリット101〜10nからは非吐出溝4が見え、貫通孔8a1からは第一の圧電体基板2aの上面UPが見える。
【0042】
図4(a)に示すように、孔列Rの一端側にj個の貫通孔8a1〜8ajを設置し、他端側にk個の貫通孔8b1〜8bkを設置した場合には、これらj個とk個の貫通孔8a、8bに第一の圧電体基板2aの上面UPが見え、孔列Rのn個のスリット101〜10nを通して吐出溝3が見えるとき、正しく位置合わせ行われている。このため、きわめて簡便に、かつ、高精度で位置合わせを行うことができる。
【0043】
なお、非吐出溝4は側面SPから対向する側面にかけてストレートに形成される。そのため、貫通孔8a1と貫通孔8b1は、基準方向Kに直交しカバープレート6(不透明基板)の基板面に平行な方向Hにおいて、非吐出溝4がカバープレート6の側に向けて開口する開口領域と重なる位置に設置されることは明らかである。また、上記第一実施形態の変形例と同様に、貫通孔8a1と貫通孔8b1を孔列Rの両端のスリット101、10nから半ピッチ(P/2)ずらしてもよい。
【0044】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図5(a)は液体噴射ヘッド1の吐出溝3の溝方向に沿う断面模式図であり、図5(b)は、ノズルプレート7を除去してノズルプレート7側から見る正面模式図であり、図5(c)は、連通板5の平面模式図である。本実施形態は、2枚の圧電体基板の下面どうしを接合し、ノズルプレート近傍において一方の圧電体基板の吐出溝と他方の圧電体基板の吐出溝とが連通し、吐出溝を液体が循環可能に構成されるスルーフロータイプの液体噴射ヘッド1である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0045】
図5(a)に示すように、噴射ヘッド1は、下面LPどうしが接合される第一及び第二の圧電体基板2a、2bと、第一及び第二の圧電体基板2a、2bの各上面UPに接合される第一及び第二のカバープレート6a、6bと、第一及び第二の圧電体基板2a、2bの側面SPに接合される不透明基板である連通板5と、連通板5の圧電体基板の側とは反対側に接合されるノズルプレート7とを備える。以下、具体的に説明する。
【0046】
第一及び第二の圧電体基板2a、2bは、それぞれ上面UPの基準方向Kに同じピッチPで配列するn個の吐出溝3と、吐出溝3に対して半ピッチ(P/2)ずれて吐出溝3と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝4とを有する。第一の圧電体基板2aと第二の圧電体基板2bとは、各圧電体基板の側面SPを面一に、上面UPとは反対側の下面LPどうしを対向させて一体的に構成される。なお、第一及び第二の圧電体基板2a、2bは第一又は第二実施形態の第一の圧電体基板2aと同じである。
【0047】
図5(a)〜(c)に示すように、連通板5は、第一及び第二の圧電体基板2a、2bの側面SPに接合され、板厚方向に貫通し、基準方向Kに配列する(j+n+k)個の貫通孔8を有する。n個の貫通孔81〜8nからなる孔列Rのそれぞれは、第一の圧電体基板2aのn個の吐出溝3のそれぞれに連通すると共に、第二の圧電体基板2bのn個の吐出溝3のそれぞれに連通する。つまり、n個の貫通孔81〜8nの基準方向Kにおける並びの1番目の貫通孔81は、第一の圧電体基板2aの基準方向Kの並びの1番目の吐出溝3と、第二の圧電体基板2bの基準方向Kの並びの1番目の吐出溝3とを連通させる。以下同様に、n番目の貫通孔8nは、第一の圧電体基板2aのn番目の吐出溝3と第二の圧電体基板2bのn番目の吐出溝3とを連通させる。そのため、貫通孔8を介して第一及び第二の圧電体基板2a、2bの吐出溝3が見える。更に、孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8a1〜8ajと他端側に位置するk個の貫通孔8b1〜8bkは、第一及び第二の圧電体基板2a、2bの側面SPにより塞がれ、吐出溝3には連通しない。つまり、貫通孔8a1〜8aj、8b1〜8bkを通して側面SPが見える。なお、本実施形態では連通板5の(j+n+k)個の貫通孔8を吐出溝3のピッチPと同じピッチPで配置しj=k=2としている。
【0048】
第一のカバープレート6aは、第一の液室9aと第一の液室9aに連通するn個のスリット10aとを有する。第二のカバープレート6bは、第二の液室9bと第二の液室9bに連通するn個のスリット10bを有する。第一のカバープレート6aは、n個のスリット10aのそれぞれがn個の吐出溝3のそれぞれに連通して第一の圧電体基板2aの上面UPに接合される。第二のカバープレート6bは、n個のスリット10bのそれぞれがn個の吐出溝3のそれぞれに連通して第二の圧電体基板2bの上面UPに接合される。ノズルプレート7は、n個のノズル11を有し、n個のノズル11のそれぞれがn個の貫通孔81〜8nのそれぞれに連通し、連通板5の第一及び第二圧電体基板の2a、2bの側とは反対側に接合される。
【0049】
第一及び第二の圧電体基板2a、2bは、既に説明したように、PZTセラミックス、その他の圧電体基板を使用することができる。第一及び第二のカバープレート6a、6bは、PZTセラミックス、その他のセラミックス、金属板、プラスチック板等を使用することができる。連通板5は、金属板、不透明なセラミックス、不透明がプラスチック板、その他の不透明な板を使用することができる。ノズルプレート7は、ポリイミド膜、その他プラスチックフィルム、金属板等を使用することができる。
【0050】
図5(c)は、第一及び第二圧電体基板2a、2bと連通板5とが正しく位置合わせされたときの貫通孔8a、8b及び貫通孔81〜8nからなる孔列Rと吐出溝3及び非吐出溝4の位置関係を表す。孔列Rの一端側の2つの貫通孔8a1、8a2を通して側面SPが見え、他端側の2つの貫通孔8b1、8b2を通して側面SPが見える。つまり、孔列Rの両端側の4つの貫通孔8a1、8a2、8b1、8b2はいずれの吐出溝3にも連通しない。これに対して、連通板5が右方に半ピッチ(P/2)ずれると、一端側の1つの貫通孔8a1を通して側面SPが見えるが、他端側は2つの貫通孔8b1、8b2を通して側面SPが見え、その他の貫通孔8a2、81〜8nからはすべて非吐出溝4の開口が見える。同様に、連通板5が左方に半ピッチ(P/2)ずれると、他端側の1つの貫通孔8b2を通して側面SPが見えるが、一端側は2つの貫通孔8a1、8a2を通して側面SPが見え、その他の貫通孔8b1、81〜8nからはすべて非吐出溝4の開口が見える。第一の圧電体基板2aに対して連通板5が左方又は右方に半ピッチ(P/2)以上ずれると、一端側に位置する貫通孔8a1、8a2を通して見る側面SPと他端側に位置する貫通孔8b1、8b2を通してみる側面SPとは異なり、正しく位置合わせが行われていないことが一目瞭然となる。このように、両端側の貫通孔8を通して見える状態から、第一及び第二の圧電体基板2a、2bと連通板5とをきわめて簡便にかつ高精度に位置合わせを行うことができる。
【0051】
液体噴射ヘッド1は次にように動作する。まず、第一の液室9aに液体が供給される。液体は、矢印で示すように、n個のスリット10aのそれぞれを介して第一の圧電体基板2aのn個の吐出溝3に流入する。各吐出溝3の液体は、連通板5の各貫通孔81〜8nを介して第二の圧電体基板2bのn個の吐出溝3に流入する。液体は、更に、第二のカバープレート6bのn個のスリット10bを介して第二の液室9bに流出し、外部に排出される。次に、第一の圧電体基板2aの吐出溝3と、この吐出溝3を挟む2つの非吐出溝4との間の2つの側壁に駆動信号を印加するとともに、第一の圧電体基板2aの吐出溝3に連通する第二の圧電体基板2bの吐出溝3と、第二の圧電体基板2bの吐出溝3を挟む2つの非吐出溝4との間の2つの側壁に駆動信号を印加して駆動する。つまり、4つの側壁を同時に駆動して第一の圧電体基板2aの吐出溝3と第二の圧電体基板2bの吐出溝3に同時に圧力波を生成し、ノズル11から液滴を吐出する。
【0052】
なお、一般的には、n個の貫通孔8の列からなる孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8aのj番目に配置される貫通孔8ajと、孔列Rの一番目に配置される貫通孔81とをピッチP又は半ピッチ(P/2)離間させ、n番目に配置される貫通孔8nと、孔列Rの他端側に位置するk個の貫通孔8bの一番目に配置される貫通孔8b1とをピッチP又は半ピッチ(P/2)離間させる。また、孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8と他端側に位置するk個の貫通孔8は、基準方向Kに直交し連通板5の基板面に平行な方向Hにおいて、第一及び第二の圧電体基板2a、2bの非吐出溝4が連通板5の側に向けて開口する開口領域の範囲Lと重なる位置に設置する。これにより、第一及び第二の圧電体基板2a、2bと連通板5との間の位置合わせを、きわめて簡便で、かつ、高精度に行うことができる。
【0053】
(第四実施形態)
図6は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図6(a)は液体噴射ヘッド1の吐出溝3の溝方向の断面模式図であり、図6(b)は、ノズルプレート7を除去して第一の圧電体基板2aの上面UPとは反対側の下面LPに接合した補強板15の側を見る平面模式図である。本実施形態は、吐出溝3と非吐出溝4が第一の圧電体基板2aの上面UPから下面LPに貫通し、ノズルプレート7が下面LPの側に設置される。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0054】
液体噴射ヘッド1は、第一の圧電体基板2aと、第一の圧電体基板2aの上面UPに接合されるカバープレート6と、第一の圧電体基板2aの上面UPとは反対側の下面LPに接合され、不透明基板である補強板15と、補強板15の第一の圧電体基板2aとは反対側に設置されるノズルプレート7とを備える。第一の圧電体基板2aは、上面UPの基準方向Kに同じピッチPで配列するn個の吐出溝3と、吐出溝3に対して半ピッチ(P/2)ずれて吐出溝3と交互に配列する(n+1)個の非吐出溝4を有する。吐出溝3及び非吐出溝4は、第一の圧電体基板2aの板厚方向に貫通し、上面UPとは反対側の下面LPに開口する。補強板15は、第一の圧電体基板2aの下面LPに接合され、板厚方向に貫通し基準方向Kに配列する(j+n+k)個の貫通孔8を有し、n個の貫通孔81〜8nのそれぞれはn個の吐出溝3のそれぞれに連通し、n個の貫通孔81〜8nからなる孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8aと他端側に位置するk個の貫通孔8bはいずれの吐出溝3にも連通しない。なお、本実施形態では補強板15の(j+n+k)個の貫通孔8を吐出溝3のピッチPと同じピッチPで配置しj=k=2としている。
【0055】
カバープレート6は、第一の液室9aと、第一の液室9aとは分離される第二の液室9bと、第一の液室9aとn個の吐出溝3のそれぞれとを連通するn個のスリット10aと、第二の液室9bとn個の吐出溝3のそれぞれとを連通するn個のスリット10bと、を有する。スリット10aは吐出溝3の一方側において連通し、10bは吐出溝3の他方側において連通する。ノズルプレート7はn個のノズル11を有し、n個のノズル11のそれぞれがn個の貫通孔81〜8nのそれぞれに連通する。
【0056】
ここで、第一の圧電体基板2aの下面LPは第一の圧電体基板2aの表面に含まれる。第一の圧電体基板2a、補強板15、カバープレート6及びノズルプレート7の材質等については他の実施形態において説明したものと同じである。本実施形態において、補強板15はノズルプレート7を補強する機能を有する。下面LPに開口する吐出溝3の径が大きく、下面LPに薄いノズルプレート7を直接貼り付けると、吐出溝3の液体に誘起させる圧力波がノズルプレート7により減衰する。そこで、下面LPにノズルプレート7よりも高硬度の補強板15を貼り付けて圧力波の減衰を抑制する。
【0057】
図6(b)は、第一の圧電体基板2aと補強板15が正しく位置合わせされるときの貫通孔8と吐出溝3及び非吐出溝4の位置関係を表す。孔列Rの一端側の2つの貫通孔8a1、8a2を通して下面LPが見え、他端側の2つの貫通孔8b1、8b2を通して下面LPが見える。つまり、孔列Rの両端側の4つの貫通孔8a1、8a2、8b1、8b2はいずれの吐出溝3にも連通しない。第三実施形態の場合と同様に、第一の圧電体基板2aに対して補強板15が半ピッチ(P/2)以上ずれると、一端側に位置する貫通孔8a1、8a2を通して見る下面LPと他端側に位置する貫通孔8b1、8b2を通してみる下面LPとが異なり、正しく位置合わせが行われていないことが一目瞭然となる。このように、両端側の貫通孔8a、8bを通して見える状態から、第一の圧電体基板2aと補強板15との位置合わせを、極めて簡便で、かつ、高精度に行うことができる。
【0058】
液体噴射ヘッド1は次のように動作する。第一の液室9aに供給される液体は、矢印で示すように、スリット10aを介して一方の端部から吐出溝3に流入し、吐出溝3の他方の端部からスリット10bを介して第二の液室9bに流出する。そして、吐出溝3と吐出溝3を挟む2つの非吐出溝4との間の2つの側壁に駆動信号を印加して2つの側壁を同時に駆動し、吐出溝3に充填される液体に圧力波を発生させて、貫通孔8に連通するノズル11から液滴を吐出する。
【0059】
なお、本実施形態においても一般的には、n個の貫通孔8の列からなる孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8aのj番目に配置される貫通孔8ajと、孔列Rの一番目に配置される貫通孔81とをピッチP又は半ピッチ(P/2)離間させ、n番目に配置される貫通孔8nと、孔列Rの他端側に位置するk個の貫通孔8bの一番目に配置される貫通孔8b1とをピッチP又は半ピッチ(P/2)離間させる。また、孔列Rの一端側に位置するj個の貫通孔8と他端側に位置するk個の貫通孔8は、基準方向Kに直交し補強板15の基板面に平行な方向Hにおいて、第一の圧電体基板2aの非吐出溝4が補強板15の側に向けて開口する開口領域の範囲Lと重なる位置に設置する。これにより、第一の圧電体基板2aと補強板15との間に位置合わせを、きわめて簡便で、かつ、高精度に行うことができる。
【0060】
(第五実施形態)
図7は本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は、圧電体基板2と、カバープレート6、ノズルプレート7とを備える。液体ポンプ33、33’として、流路部35、35’に液体を供給する供給ポンプとそれ以外に液体を排出する排出ポンプのいずれかもしくは両方を設置し、液体を循環させる。また、図示しない圧力センサーや流量センサーを設置し、液体の流量を制御することもある。液体噴射ヘッド1、1’は、第一又は第二の圧電体基板2a、2bの上面UPに吐出溝3と非吐出溝4が交互に配列し、第一又は第二の圧電体基板2a、2bの表面に不透明基板が接合される。液体噴射ヘッド1、1’は、既に説明した第一〜第四実施形態のいずれかを使用する。
【0061】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0062】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0063】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0064】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 液体噴射ヘッド
2 圧電体基板、2a 第一の圧電体基板、2b 第二の圧電体基板
3 吐出溝
4 非吐出溝
5 連通板
6 カバープレート、6a 第一のカバープレート、6b 第二のカバープレート
7 ノズルプレート
8、8a、8b、81〜8n 貫通孔
9 液室、9a 第一の液室、9b 第二の液室
10、101〜10n スリット
11、111〜11n ノズル
12 駆動電極
13 電極端子
15 補強板
K 基準方向、H 方向、L 範囲、P ピッチ、P/2 半ピッチ、R 孔列
UP 上面、SP 側面、LP 下面
図1
図2
図3
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図9