(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、幾つもの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を放出する波長は、概して、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において記述されている。
【0005】
リン光性発光分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0006】
緑色発光分子の一例は、下記の構造:
【化1】
を有する、Ir(ppy)
3と表示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムである。
【0007】
この図面及び本明細書における後出の図面中で、本発明者らは、窒素から金属(ここではIr)への配位結合を直線として描写する。
【0008】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「小分子」は実際にはかなり大型であってよい。小分子は、幾つかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「小分子」クラスから分子を排除しない。小分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーはすべて小分子であると考えられている。
【0009】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第一層が第二層「の上に配置されている」と記述される場合、第一層のほうが基板から遠くに配置されている。第一層が第二層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第一層と第二層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。本明細書において使用される場合、2つの層又は領域について、一方の層の少なくとも一部が他方の少なくとも一部の上に配置されている場合に、これら2つの層又は領域が「積層体」として配置されていると記述される。
【0010】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送することができ、及び/又は該媒質から堆積することができるという意味である。
【0011】
配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0012】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第二のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0013】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第一の仕事関数は第二の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0014】
本明細書では、層、材料、領域、及びデバイスは、それらが発する光の色に関して述べられる。一般的には、本明細書において使用される場合、特定の光の色を生成するものとして述べられる発光領域は、積層体として互いの上に配置された1以上の発光層を含みうる。
【0015】
本明細書において使用される場合、「赤色」層、材料、又はデバイスとは、約580〜700nmの範囲の光を発するものを指し、「緑色」層、材料、又はデバイスとは、ピーク波長が約500〜600nmの範囲にある発光スペクトルを有するものを指し、「青色」層、材料、又はデバイスとは、ピーク波長が約400〜500nmの範囲にある発光スペクトルを有するものを指す。特定の構成では、別々の領域、層、材料、又は装置が、別々の「濃青色」又は「薄青色」の光を与えることができる。本明細書において使用される場合、別々の「薄青色」及び「濃青色」を与える構成における「濃青色」成分は、「薄青色」成分のピーク発光波長よりも少なくとも約4nm短いピーク発光波長を有するものを指す。一般的に、「薄青色」成分は、約465〜500nmの範囲にピーク発光波長を有し、「濃青色」成分は、約400〜470nmの範囲にピーク発光波長を有するが、これらの範囲は特定の構成では異なりうる。同様に、色変更層とは、別の光の色を、その色に指定された波長を有する光に変換又は変更する層のことを指す。例えば、「赤色」カラーフィルターとは、約580nm〜700nmの範囲の波長を有する光を生じるフィルターのことを指す。一般的には、光の望ましくない波長を除去することによりスペクトルを変更するカラーフィルターと、より高いエネルギーの光子をより低いエネルギーに変換する色変化層の2種類の色変更層がある。
【0016】
OLEDについての更なる詳細及び上述した定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献4において見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。幾つかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0037】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0038】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、395巻、151〜154、1998;(「Baldo−I」)及びBaldoら、「Very high−efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4〜6(1999)(「Baldo−II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5〜6段において更に詳細に記述されている。
【0039】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6〜10段において更に詳細に記述されている。
【0040】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板−アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p−ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm−MTDATAにF
4−TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n−ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を持つMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0041】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることがある。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0042】
図1及び2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び2に関して記述されている通りの異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0043】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されている通りのメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されている通りのくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0044】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、且つ好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を持つ材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0045】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている通りの、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を構成する前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。ポリマー材料対非ポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作成され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0046】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、医療モニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、色調節可能又は色温度調節可能光源、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ファインダー、マイクロディスプレイ、車、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、或いは看板を含む多種多様な消費者製品に組み込まれ得る。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、摂氏18度から摂氏30度、より好ましくは室温(摂氏20〜25度)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が主に意図されているが、この範囲外の温度、例えば、−40℃〜+85℃以上で動作できる。
【0047】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0048】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリルキル、複素環式基、アリール、芳香族基及びヘテロアリールの用語は当技術分野において公知であり、参照により本明細書に組み込まれるUS7,279,704の31〜32段において定義されている。
【0049】
今日のディスプレイアーキテクチャ及び製造能力では、低消費電力で高解像度のOLEDディスプレイは一般的には可能でない。例えば、サイドバイサイド(SBS)型アーキテクチャは、通常、比較的低い消費電力(したがって良好な寿命)を実現できるが、このアーキテクチャは比較的高解像度のシャドーマスキングを必要とする場合がある。このような技術はしばしば解像度は250dpi程度に限定されている。より高解像度を実現するには、白色デバイスをカラーフィルターと組み合わせて用いるアーキテクチャを使用することでOLED発光層のパターニングを避けることができる。しかしながら、このような技術は比較的効率が低く、したがって消費電力が大きいという問題があり、このことも寿命を短くするものである。これらの制約条件は、フィルタリングされていない白色副画素、及び他の白色副画素を覆うカラーフィルターを用いることにより個別の色を発するデバイスの両方を使用したRGBW画素のアーキテクチャを用いることによってある程度、克服することができる。このアーキテクチャは、一般的にはより低い画質につながると考えられており、通常はやはりRGB SBSディスプレイと比較して消費電力は低く、寿命が短い。
【0050】
本開示は、発光色が2色以下である発光デバイス、及び限定された数の色変更層の少なくともいずれかを使用しながら、フルカラーデバイスを可能とする画素要素の配列を提供するものである。本明細書に開示される実施形態は、従来のRGB SBSディスプレイと比較して、より少ない高解像度のマスキング工程、及びより低解像度で、低い消費電力及び長い寿命といった従来のRGBWディスプレイを上回る向上した性能を提供することができる。すなわち、本明細書に開示される配列は、任意の数の副画素又は他の発光デバイス若しくは領域を有しうるが、配列内においては、配列内の発光デバイス又は領域によって発される色の数は限定されたものとなりうる。具体的な例として、本明細書に開示される配列は、3個の副画素を含みうる。副画素の内の2個は、同じ色の光を発するOLEDなどの発光領域を含んでよく、これらの副画素の一方は、発光領域によって光が発された後、異なる色を生じるようにフィルタリングされるか、又は他の方法で改変されている。第3の副画素は、2個の副画素内の第1の発光領域とは異なる色の光を発する発光領域を含みうる。したがって、副画素全体としては3色以上の色を生成することができるが、配列内の発光領域は、最初に2色の色を発するだけでよい。本明細書に開示されるデバイスはまた、必要とされるマスキング工程の数がより少ないことから、従来のSBS配列と比較して単純化された製造技術を用いて実現することができる。
【0051】
一実施形態では、2工程のマスキング工程を用いることができる。これは、従来のRGB SBSディスプレイで求められる3工程のマスキング工程と比較して単純化された製造法を与えることができる。それぞれのマスク開口領域は、従来のSBSディスプレイにおける1/3に対して画素領域の約1/2とすることができる。同じ画素サイズの従来のSBSディスプレイと比較して大きなシャドーマスク開口部により、より高い画素密度が可能となる。例えば、同じサイズの開口部で、従来のSBS技術と比較してディスプレイ解像度を約50%高くすることが可能となる。特定の構成では、マスク開口部の正確なサイズは、各副画素に流れる電流を最適化し、これにより全体のディスプレイ寿命を向上させるといった、寿命マッチング上の考慮点に基づいて決定することができる。
【0052】
本明細書に開示される技術を用いることで、特にトップエミッション型AMOLEDディスプレイにおいて曲線因子(fill factor)を増大させることも可能であり、これにより、同じ解像度の従来の3工程のマスキングによる画素化の手法と比較してより高い効率を得ることができる。これは、従来の3工程のマスキングによる手法と比較して、開示される2工程のマスキングによる手法における3個の副画素の比較的大きな面積によるものである。開示される2工程のマスキングによる手法によれば、ディスプレイから同じ輝度を表現するために必要とされる電流を少なくとも一部の副画素において少なくすることができる。これにより、より高いデバイスの効率、より低い電圧、及びより長いディスプレイ寿命の少なくともいずれかにつながりうる。
【0053】
図3は、本明細書に開示される画素配列の製造に適した例示的なマスキング配列の概略図を示す。第1のマスク堆積工程(masked deposition)では、発光層構造、すなわち複数の発光層を含む積層デバイス構造を第1の領域310に堆積することができる。第1の領域には、第1の色の光を発する1以上の発光層が含まれる。隣接する、又は近傍の領域320で第2のマスク堆積工程を行うことにより、第1の色とは異なる第2の色の光を発する発光層すなわち積層構造を形成することができる。次いで、2つの色変更層330、340を第2の発光領域上に配置することにより、各フィルターを通過する光を第2の色からそれぞれ第1及び第2の色と異なる第3及び第4の色に変換することができる。特定の構成では、第2の発光領域の一部を被覆しないままの状態とすることで図の配列によって4つの異なる色を有する光を与えることができる。特定の構成では、色変更層330、340で第2の領域の全体を覆うことで、図の配列によって3つの異なる色を与えることができる。
図3では説明の目的で各カラーフィルターはそれらの間に一定の間隔をおいて配置されているが、一般的には、各フィルター間の領域において黄色の光が発されないように、各カラーフィルターを互いに直接隣接して配置してもよい。同様に、色変更層に直接隣接した縁部から黄色の光が発されないように、各フィルターを黄色発光領域の適当な縁部にまで延在させてもよい。発光層又は積層構造のそれぞれは、リン光性又は蛍光性をそれぞれが有しうる1以上の発光材料を含みうる。より一般的には、各発光材料は、本明細書に開示される発光材料、層、及び/又は構造のいずれをも含みうる。
【0054】
具体的な一例として、第1のマスク堆積310は、単一のEML構造、又は複数のEMLを有する積層デバイスでありうる青色デバイスを与えることができる。当該技術分野では周知であるように、積層デバイスは、長い寿命を与え、及び/又は画像焼付を低減するうえで望ましい場合があり、他の配列では、単層の発光デバイスが製造コスト及び複雑さを低減するうえで好ましい場合がある。青色OLEDは、リン光性又は蛍光性を有しうる。第2のマスク堆積320は、例えば赤及び緑の発光体を組み合わせることにより作製することができる黄色デバイスを与えることができる。より一般的には、黄色デバイスは、発光材料及び/又は発光層の任意の適当な組み合わせを用いて与えることができる。具体的な例として、別々の赤及び緑色発光体を1つの混合層中に、又は2EMLデバイス内の別々の層中に、又は赤色EMLが積層体内の一方のOLED中に、緑色EMLが他方のOLED中にある積層装置中に、又は黄色発光体を有する単一のEMLを用いた黄色デバイス中に、又は2個の黄色EMLを有する積層デバイス中に与えることができる。したがって、特定の構成では、発光領域を、領域全体の最終的な色とは異なる発光スペクトル又はピーク発光波長をそれぞれが有する複数の発光材料により与えることができる。異なる組み合わせを使用することもできるが、任意の選択された組み合わせを同じ第2のマスク配列を使用して堆積することが有利である。完成された例示的な構成では、青色デバイスは1個のアノード及び付随するアクティブマトリックス制御回路によって制御される。黄色デバイスは、黄色、緑色、及び赤色の3個の副画素に分割される。次いで各副画素は、それ自体のアノード及び付随するアクティブマトリックス制御回路によって制御される。黄色副画素は黄色OLEDからのフィルタリングされない黄色光を使用している。緑色副画素は、緑色カラーフィルターを黄色OLED上に配置することにより得られ、同様に赤色副画素は、赤色カラーフィルターを黄色OLED上に配置することによって得られる。したがって、得られる画素配列は、赤色、緑色、青色、及び黄色(RGBY)の4個の副画素を有するものとなる。このような配列は、青色の性能が従来のRGBWディスプレイにおけるようにカラーフィルターによって制限されないが従来のRGB SBSディスプレイと同様の最適化された寿命を有しうるために有利なものとなりうる。更に、従来のRGBW配列では、緑色カラーフィルターは、できるだけ多くの青色及び赤色の透過を防止するように構成されている。このため、通常、バンドパスフィルターが緑色カラーフィルターとして使用される。黄色光が多成分光源として使用された本明細書に開示されるRGBY配列では、多成分光が青色成分を含まないことから、緑色フィルターは赤色光のみの透過を防止するように構成されてもよい。したがって、バンドパスフィルターの代わりにカットオフフィルターを使用してもよく、これにより比較的高い効率及び色飽和度を与えることができる。
【0055】
本明細書に開示される実施形態では、高度に飽和した赤色又は緑色が必要とされないときはディスプレイ効率を向上させるためにフィルタリングされていない黄色光を使用することができる。動作時には、このフィルタリングされていない黄色デバイスを従来のRGBWディスプレイにおける白色と同様に使用し、同様のアルゴリズムを信号処理に用いることができる。特定の不飽和色を表現するためには、黄色光を赤、緑、又は青の個々の3原色と混合することが可能であり、これにより、赤、緑、又は青の原色を単独で使用するだけの場合と比較してより高い効率を得ることができる。この技術を用いたフルカラーディスプレイは、従来のSBS RGB配列よりもわずか約12%高い消費電力を有しうるものであり、これは、SBS RGB配列よりも約50%高い消費電力を通常有する従来のRGBW配列と対照的である。このレベルの消費電力は、赤色及び緑色副画素の全体の効率が25%低下した場合であっても実現することができる。例えば、カラーフィルターは赤色及び緑色単独の効率を50%低下させうるが、フィルタリングされていない黄色副画素はこの損失の大部分を補償することができる。
【0056】
同様に、本明細書に開示される実施形態は、ディスプレイの色範囲を大きくすることを可能とする。例えば、
図11を参照すると、黄色多成分光源を、図に示された点1104のように、識別される純粋な赤色と緑色の点との間の「RG線」上に位置するCIE座標を有する光を発するように構成することができる。特定の実施形態では、識別される赤色及び緑色の点は、対応する副画素内の発光領域により発される「純粋な」色に対応しうる。また、黄色多成分光源は、図に示される曲線1100に沿った任意の点、点1108などのように、RG線の外側に位置する光を発するように構成することもできる。このような多成分光源の使用により、RG線の外側のCIE領域の使用が可能となることにより、利用可能なディスプレイの色域を大きくすることができる。このような色域の増大は、黄色多成分光源がフィルタリングされて赤色及び黄色光の少なくともいずれかを与える場合に実現若しくは使用することができるか、又は本明細書に開示される異なる配列に基づいて黄色光源がフィルタリングされずに使用される場合に使用することができる。したがって、特定の構成では、黄色多成分光源が1931CIE図上でRG線の外側に位置するCIE座標を有することが望ましい場合もある。
【0057】
図4は、本明細書に開示される実施形態に基づく画素配列の概略図を示す。
図3に関して述べたように、この配列は4個の副画素410、420、430、440を有している。1個の副画素410は、第1の色の光を発する1以上の発光デバイス又は領域を有している。他の副画素420、430、440は、第2の色の光を発する発光領域を用いて構成されている。色変更層432、442を2個の発光領域434、444のそれぞれの上に配置することができる。第3の副画素420はフィルタリングされない状態のままであり、それぞれが異なる色の光を与える4個の副画素を有する画素配列となっている。
図3に関して述べたように、各副画素は、付随する制御回路によって制御することができる。例示的な制御回路を
図4に説明の目的で示し、各種の制御要素を、制御される発光領域と一致した陰影を付けて示している。このような制御回路の特定の配列はあくまで例として示したものであり、当業者であれば直ちに認識されるように、任意の適当な制御回路を使用することができる。
【0058】
当該技術分野における一般的な用語では、「副画素」とは、単層EML、積層デバイスなどを発光領域により発される色を改変するために用いられる任意の色変更層と組み合わせたものであってよい発光領域のことを指す。例えば、副画素430は、発光領域434及び色変更層432を有している。本明細書において使用するところの副画素の「発光領域」とは、副画素の光を発生させるために最初に使用される発光層、領域、及びデバイスのいずれか及びすべてのことを指す。副画素は、本明細書に開示される色変更層などの、副画素により最終的に生成される色に影響する、発光領域と積層体として配置される更なる層も含みうるが、このような色変更層は、本明細書に開示される「発光層」とは一般的にはみなされない。フィルタリングされていない副画素は、色変更層などの色改変要素を含まないものであるが、1以上の発光領域、層、又はデバイスを含みうる。
【0059】
特定の構成では、より少ない数の副画素を使用してフルカラーデバイス又は画素配列を実現することができる。
図5は、3個の副画素510、520、530を使用した例示的な配列を示す。
図4に示した例と同様、第1の副画素510は、1以上の発光領域をマスクを介して単一の発光層又は積層された配列として堆積し、得られた副画素をフィルタリングされない状態のままとすることにより形成することができる。他の2個の副画素520、530は、1回のマスク堆積工程で堆積することができる。上記に述べたように、それぞれが1以上の発光材料及び/又は層を含んでよく、個別の発光層又は積層デバイスであってよい。次いで、色変更層532を1以上の発光領域の上に配置して異なる色の3個の副画素を有するフルカラー配列とすることができる。
【0060】
具体的な一例として、2工程のマスキング工程を、青及び緑とすることができる。すなわち、第1のマスク堆積法において、青色の層又は積層体を第1の副画素510に対応する領域に堆積することができる。第2のマスク堆積法において、緑色の層又は積層デバイスを第2及び第3の副画素520、530に対応する領域に堆積することができる。緑色副画素520はフィルタリングされていない緑色光を与える。赤色副画素530は、緑色デバイス530により発される緑色光を赤色光に変換する比較的高い変換効率を有する緑/赤色変化層のような色変更層532を使用している。このような構成により、同等の従来のRGB SBSディスプレイと比較して最大で50%高い解像度を有し、消費電力の増大、又はこれにともなう寿命の低下がほとんど若しくはまったくないディスプレイが得られる。こうした手法はまた、従来のカラーフィルターの使用によるのと同量の光を「損失」することなく、代わりに色変更層を使用して第3の色を与えることによりディスプレイ効率を高めることもできる。
【0061】
図6は、2工程のマスキング工程が青及び黄である、すなわち1以上の青色発光層が1回のマスク堆積工程において堆積され、1以上の黄色発光層が別のマスク堆積工程において堆積される構成の概略図を示す。
図6と同様、図に示される構成は赤、緑、及び青の3個のみの副画素を使用している。この例では、緑色副画素は緑色カラーフィルターを使用して黄色OLEDからの光を緑色に変換し、赤色副画素は赤色カラーフィルターを使用して黄色OLEDからの光を赤色に変換し、青色副画素は青色OLEDからのフィルタリングされていない光を使用している。同様の構成において、示された特定のカラーフィルター以外の、又はそれに加えて色変更層を使用することもできる。
【0062】
特定の構成では、1以上の副画素の効率を、従来のカラーフィルターの代わりに、又はそれに加えて色変化層を使用することによって高めることができる。例えば
図6に示される例を参照すると、黄色から赤色への比較的高い変換効率を有する赤色変化層を、黄色OLEDと赤色カラーフィルターとの間に配置することができる。このような構成によって、赤色副画素の効率を高めることができる。より一般的には、OLED、又はOLED及びカラーフィルターとの積層体として配置される色変化層の使用により、その副画素の効率を高めることができる。
【0063】
本明細書に開示される他の構成において、更なる色変更層を使用することもでき、複数の発光領域又は複数の種類の発光領域の上に配置される色変更層を含めることもできる。
図7は、薄青色710及び白色720の2つの色の発光領域を使用した例示的なマスキング配列を示す。上記に開示したように、マスキングされた領域を利用してそれぞれの色の発光領域を堆積することができる。得られた各発光領域の上に異なる色変更層を配置することでフルカラー画素配列を形成することができる。
図7に示される例では、濃青色カラーフィルター730、赤色カラーフィルター740、及び緑色カラーフィルター750が対応する白色発光領域の上に配置されることによって、これらの色の3個の副画素を形成しており、薄青色発光領域がフィルタリングされていない状態のままとされることで薄青色副画素を形成している。その開示内容の全体を参照により援用するところの米国特許出願公開第2010/0090620号に述べられるように、このような構成を使用することで、必要に応じて薄青色及び濃青色の副画素を使用することにより、青色の全体の寿命を向上させることができる。上記に述べたように、
図7に関して述べた特定のカラーフィルターに加えるか、又はそれに代えて他の色変更層を使用することもできる。
【0064】
図8は、
図7に示される堆積配列に対応した例示的な画素配列を示す。
図4に示される配列と同様、
図7の配列は、フィルタリングされていない副画素810、並びに、それぞれ発光領域821、831、841及びカラーフィルター822、832、842からそれぞれが形成された3個の副画素820、830、840を有している。
図7に示される例では、フィルタリングされていない副画素810は薄青色副画素であり、カラーフィルター822、832、842はそれぞれ濃青色、赤色、及び緑色である。示された特定の発光色及びカラーフィルターはあくまで例示的なものに過ぎず、様々な他の色、色変更層、及びそれらの組み合わせを、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく使用することができる。
【0065】
一実施形態では、2回のマスク堆積操作のそれぞれにおいて堆積されるそれぞれの発光領域を、色変更層と組み合わせて1以上の画素を形成することができる。
図9は、それぞれの種類の発光領域が1以上の色変更層と組み合わされて複数の副画素を形成している例示的な配列を示す。例えば、2個のマスキングされた領域は、上記に述べた2工程のマスキング工程の一方においてそれぞれを堆積することができる薄青色発光領域910及び黄色発光領域920に対応しうる。濃青色色変更層930を薄青色発光領域910と組み合わせることによって濃青色副画素を形成することができる。赤色及び緑色色変更層930、940はそれぞれ、黄色発光領域の一部と組み合わせることによって赤色及び緑色副画素を形成することができる。薄青色発光領域はフィルタリングがされていない状態のままとすることで薄青色副画素を形成することができる。
図7に関して述べたように、薄青色及び濃青色副画素の使用により、性能及びデバイスの寿命を向上させることができる。更に、比較的長い薄青色の寿命により、ディスプレイの動作全体を延ばすことができ、薄青色副画素はフィルタリングされていないために高い電力効率を与えることができる。
【0066】
図10は、
図9に関して述べたマスク及び色変更層に対応した画素配列を示す。図に示されるように、4個の副画素が、そのうちの1個がフィルタリングされていない2個の第1の色の発光領域と、2個の第2の色の発光領域とから形成されている。
図9の例にしたがい、薄青色副画素がフィルタリングされていない薄青色発光領域から形成され、濃青色副画素が薄青色発光領域と濃青色色変更層とから形成され、赤色副画素が黄色発光領域と赤色色変更層とから形成され、緑色副画素が黄色発光領域と緑色色変更層とから形成されている。示された特定の発光色及び色変更層はあくまで例示的なものに過ぎず、様々な他の色、色変更層、及びそれらの組み合わせを、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく使用することができる。
【0067】
本明細書に開示される本発明の実施形態では、様々な駆動スキームを使用することができる。多くの実施形態において、各色を表現するために4個の副画素を使用することができる。通常は、特定の色を表現するのに3個のみの副画素を必要とするだけであるため、その色を表現するために用いられる電気的駆動形態には複数の選択肢が存在する。例えば、
図12は、純粋な赤色、緑色、及び青色、並びに本明細書に開示される実施形態に基づくRG線の外側に位置する多成分黄色光源の座標を含んだ1931CIE図を示している。本明細書に開示される4個の副画素配列では、GBY空間1210内においてある色を表現する場合には、赤色副画素は必要とされない。同様に表現しようとする色がRBY空間1220内にある場合には、緑色副画素は必要とされない。
図13は、赤色副画素を使用せずに表現された例示的な色点、すなわち
図12においてGBY空間1210内に位置する点を示す。図に示されるように、例示的な点に対する各画素の初期の寄与は、RGBW配列において赤色、緑色、及び青色副画素についてそれぞれ、R
0、G
0、B
0とすることができる。本明細書に開示されるRGBY配列においては、黄色、緑色、及び青色副画素の相当する寄与はそれぞれY’、G’、B’とすることができる。所望の色を表現するうえで赤色副画素を使用する必要がないことに注意すべきである。
【0068】
本明細書に開示される実施形態に基づく別の駆動配列は、黄色及び青色副画素を使用して白色点を固定することである。これにより、所望の色を、その色がGBY空間内にあるのか、RBY空間内にあるのかに応じて緑色又は赤色副画素を使用して表現することができる。
図14は、上記に開示したような赤色、緑色、青色、及び黄色の点を識別するCIE図を示す。図に示されるように、白色点1404は、青色及び黄色の副画素のみの組み合わせを使用してBY線に沿って確立することができる。したがって、GBY空間に含まれる、すなわちBY線の緑色側にある色点1400は、青色及び黄色副画素以外に緑色副画素を使用することによって表現することができる。同様に、BYR空間内、すなわちBY線の赤色側の点は、青色、黄色、及び赤色副画素を使用して表現することができる。したがって、本明細書に開示される実施形態は、様々な駆動配列を可能とするものであり、従来のRGBW及び同様の配列と比較して更なる柔軟性、効率、及び色範囲を与えうるものである。
【0069】
一般的に、本明細書に開示されるそれぞれの発光領域、層、又はデバイスは単層の発光層であってもよく、あるいは積層デバイスであってもよい。それぞれの発光領域、層、又はデバイスは、組み合わせて動作させられる場合にその要素に適した色の光を与える複数の発光材料も含みうる。例えば、黄色発光領域は、赤色及び緑色発光材料を、黄色光を与えるのに適当な比率で含みうる。同様に、いずれの発光領域又はデバイスも積層デバイスであってよく、あるいは、黄色発光領域を与えるために赤色及び緑色デバイスを含む積層形態が使用される場合のように、その領域又はデバイスの所望の色を与えるために使用される副色の発光サブ領域を含んでもよい。それぞれが、同じ色、又は同じ領域において光を与える複数の発光材料を含んでもよい。更に、本明細書において開示される構成のいずれかにおいて使用されるそれぞれの発光材料は、そうでないことが具体的に示されない限り、リン光性、蛍光性、又はハイブリッドのものであってよい。
【0070】
本明細書に開示されるデバイス又は領域の効率は、キャビティ光学の使用により向上させることができる。例えば、アノード又はアノードの下の層を利用して各副画素内のOLEDの光路長を大きくすることができる。このような構成は、例えば一般的な黄色OLEDによって発される光を利用することが可能な赤色及び緑色副画素の効率を高めるうえで有用でありうる。光学的キャビティ長さは、バックプレーンのリソグラフィーなどにより、画素配列内の各副画素について独立して調節することが可能であり、更なる有機層のマスキングを行う必要はない。これにより、副画素のデバイス効率が向上し、その結果として寿命を延ばし、配列の駆動電圧を低減することができる。
【0071】
本明細書で使用するとき、様々な要素を、開示される色変更層として使用することができる。適当な要素としては、色変換層、カラーフィルター、色変化層などが挙げられる。本明細書に開示される色変換層に使用される色素は特に限定されないが、光源から発される光の色を必要な色に変換することが可能なものであればいずれの化合物も使用することが可能であり、こうした化合物は基本的には、光源からの光の波長を、光源の光の波長よりも10nm又はそれよりも長い波長に変換することが可能な波長変換成分である。これは有機蛍光物質、無機蛍光物質、又はリン光物質であってよく、目的とする波長に基づいて選択することができる。材料の例としては、これらに限定されるものではないが、以下の部類のもの、すなわち、キサンテン、アクリジン、オキサジン、ポリエン、シアニン、オキソノール、ベンズイミダゾール、インドレニン、アザメチン、スチリル、チアゾール、クマリン、アントラキノン、ナフタルイミド、アザ[18]アヌレン、ポルフィン、スクアライン、蛍光タンパク質、8−ヒドロキシキノリン誘導体、ポリメチン、ナノ結晶、タンパク質、ペリレン、フタロシアニン、及び金属配位子錯体が挙げられる。
【0072】
紫外線及びそれよりも高エネルギーの光の発光を青色光に変換するための蛍光色素の例としては、これらに限定されるものではないが、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、及びトランス−4,4’−ジフェニルスチルベンなどのスチリル系色素、並びに7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンなどのクマリン系色素、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
青色光の発光を緑色光に変換するための蛍光色素の例としては、これらに限定されるものではないが、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン色素、ベーシックイエロー51、ソルベントイエロー11及びソルベントイエロー116などのナフタルイミド色素、並びに8−ヒドロキシ−1,3,6−ピレントリスルホン酸三ナトリウム塩(HPTS)などのピレン色素、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
青色の発光を緑色光、赤色に変換するための蛍光色素の例としては、これらに限定されるものではないが、N,N−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミド(ルモゲンレッドF300)などのペリレン系色素、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル−4H−ピランなどのシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウムパークロレートなどのピリジン系色素、並びにローダミンバンドローダミン6G(Rhodamine Band Rhodamine 6G)などのローダミン系色素、並びにオキサジン系色素、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
無機蛍光物質の例としては、これらに限定されるものではないが、希土類金属イオンなどを含めて遷移金属イオンをドープした金属酸化物又は金属カルコゲニドを含む無機蛍光物質が挙げられる。
【0076】
多くの金属配位子錯体を色素として使用することが可能であり、これらは蛍光性又はリン光性物質の両方でありうる。
【0077】
色変換層は、層がカラーフィルター上に積層された状態で使用することが好ましい場合もある。カラーフィルター上の色変換層の積層構造により、色変換層を透過する光の色純度を高めることが可能となる。特定の構成では、本明細書において開示される「色変更層」は、色変換層との積層体として配置されたカラーフィルターのような複数の要素、又は単に色変換層のみ、又は単にカラーフィルターのみを含みうる。
【0078】
カラーフィルターに使用される材料は特に限定されない。フィルターは、例えば色素、顔料及び樹脂、又は色素若しくは顔料のみで形成することができる。色素、顔料及び樹脂で形成されたカラーフィルターは、色素及び顔料がバインダー樹脂中に溶解又は分散した固体状のカラーフィルターでありうる。
【0079】
カラーフィルターに使用される色素又は顔料の例としては、これらに限定されるものではないが、ペリレン、イソインドリン、シアニン、アゾ、オキサジン、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、及びジケトピロロ−ピロール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
本明細書において使用される場合、また当業者によって理解されるところの「色変換層」(例えば「下方変換層」)は、使用される材料に応じてよりエネルギーの高い光子(例えば青色光及び/又は黄色光)を効率的に吸収し、よりエネルギーの低い光子(例えば緑色光又は赤色光)を再発光する蛍光性又はリン光性材料のフィルムを含みうる。すなわち、色変換層は、有機発光デバイス(例えば白色OLED)によって発される光を吸収し、より長い波長の光(又は光の発光スペクトルの波長の部分)を再発光することが可能である。色変換層は、上記に述べた色変換層中に含まれる蛍光媒質材料をカラーフィルター材料と混合することにより形成される層であってよい。これにより、色変換層に、発光デバイスから発される光を変換する機能、及び更に色純度を高めるカラーフィルター機能を与えることが可能となる。したがって、その構造は比較的単純である。
【0081】
本明細書に開示される実施形態は、フラットパネルディスプレイ、スマートフォン、透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、テレビ、ラップトップ及びパッド型コンピュータ又はディスプレイなどの携帯型装置、マルチメディア装置、及び照明装置一般などの広範な製品及び装置に組み込むことができる。本明細書に開示されるディスプレイもまた、250dpi、300dpi、350dpi、又はそれ以上のように、比較的高い解像度を有しうる。
【0082】
本発明のディスプレイアーキテクチャに基づく消費電力のシミュレーションを行って、同等のRGBサイドバイサイド型(SBS)ディスプレイとの比較を行った。25%使用モードで400cd/m
2で動作する55インチのテレビを仮定したシミュレーションパラメータを表1に示す。
【0083】
表1 AMOLEDシミュレーションで使用した主なパラメータの値
【表1】
【0084】
表2 AMOLEDシミュレーションの結果
【表2】
【0085】
表2は、AMOLEDシミュレーションの結果を示す。本発明によるアーキテクチャ分析では、青色の開口比が同等のRGB SBSディスプレイよりも50%大きいものと仮定している。表2から分かるように、本発明者らの新規な2工程の低解像度マスキング工程のアーキテクチャにより、同等の解像度をもつRGB SBSディスプレイと同様の消費電力であって、且つより大きな青色画素に起因する約2倍の寿命を有するディスプレイが可能となる。
【0086】
本明細書に述べられる異なる実施形態はあくまで例としてのものに過ぎず、発明の範囲を限定するものではない点は理解されるであろう。例えば、本明細書に述べられる材料及び構造の多くは、発明の趣旨から逸脱することなく他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求される本発明は、当業者には明らかであるように、本明細書に述べられる特定の実施例及び好ましい実施形態からの変形を含みうるものである。発明の動作に関する様々な理論は限定的なものではない点は理解されるであろう。