特許第6295093号(P6295093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295093
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】有限要素解析装置および板要素分割方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   G06F17/50 612J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-19413(P2014-19413)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-146161(P2015-146161A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030237
【氏名又は名称】日本ユニシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】大庭 克治
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−088926(JP,A)
【文献】 特開2007−065802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体の構成面を板要素に分割する有限要素解析装置であって、
上記構成面の境界線が曲線形状である場合に、当該曲線形状を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する折れ線近似部と、
上記折れ線近似部により近似された折れ線で規定される領域内に上記板要素を生成する板要素生成部と、
上記折れ線近似部により第1の構成面の境界線について近似された折れ線に関する全ての折れ点が第2の構成面の境界線について近似された折れ線の内側になっているかどうかを、上記折れ点から当該折れ点の有効側に向かう半平面と、上記第1の構成面および上記第2の構成面の各境界線から近似された折れ線とが交差する回数に基づいて判定する内外判定部とを備え、
上記折れ線近似部は、上記第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが上記第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると上記内外判定部により判定された場合、当該第2の構成面に関する折れ線のうち上記第1の構成面に関する折れ点が外側になっている線分の区間において、上記第2の構成面の境界線上に折れ点を追加して上記第2の構成面に関する折れ線を再構成するようにしたことを特徴とする有限要素解析装置。
【請求項2】
上記第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが上記第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると上記内外判定部により判定された場合、上記第1の構成面と上記第2の構成面との間の処理依存関係を登録して記憶させる依存関係登録部と、
上記依存関係登録部により登録された処理依存関係に基づいて複数の構成面の処理順序を設定する処理順序設定部とを更に備え、
上記内外判定部は、上記折れ線近似部により上記第2の構成面に関する折れ線が再構成された場合、当該追加された折れ点も含めて上記第2の構成面に関する折れ点の全てが第3の構成面に関する折れ線の内側になっているかどうかを判定し、
上記処理順序設定部は、上記第2の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが上記第3の構成面に関する折れ線の外側になっていると上記内外判定部により判定された場合、上記依存関係登録部により登録された処理依存関係に基づいて、上記複数の構成面の処理順序を変更し、
上記折れ線近似部および上記内外判定部は、上記処理順序設定部により変更された処理順序に従って処理を再実行することを特徴とする請求項1に記載の有限要素解析装置。
【請求項3】
上記処理順序設定部は、上記処理依存関係をツリー状に逆に辿るようにして上記複数の構成面の処理順序を変更することを特徴とする請求項2に記載の有限要素解析装置。
【請求項4】
上記処理順序設定部により上記複数の構成面の処理依存関係をツリー状に辿れずにループが検出された場合、上記折れ線近似部および上記内外判定部は、構成面単位に境界線の折れ線近似および折れ点の追加による折れ線の再構成までを実施し、上記板要素生成部は、全ての構成面について上記折れ線近似部および上記折れ線の再構成が終わったところで、上記構成面単位に板要素の生成を行うことを特徴とする請求項3に記載の有限要素解析装置。
【請求項5】
有限要素解析装置により3次元物体の構成面を板要素に分割する板要素分割方法であって、
上記有限要素解析装置の折れ線近似部が、上記構成面の境界線が曲線形状である場合に、当該曲線形状を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する第1のステップと、
上記有限要素解析装置の板要素生成部が、上記折れ線近似部により近似された折れ線で規定される領域内に上記板要素を生成する第2のステップと、
上記有限要素解析装置の内外判定部が、上記折れ線近似部により第1の構成面の境界線について近似された折れ線に関する全ての折れ点が第2の構成面の境界線について近似された折れ線の内側になっているかどうかを、上記折れ点から当該折れ点の有効側に向かう半平面と、上記第1の構成面および上記第2の構成面の各境界線から近似された折れ線とが交差する回数に基づいて判定する第3のステップと、
上記有限要素解析装置の上記折れ線近似部が、上記第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが上記第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると上記内外判定部により判定された場合、当該第2の構成面に関する折れ線のうち上記第1の構成面に関する折れ点が外側になっている線分の区間において、上記第2の構成面の境界線上に折れ点を追加して上記第2の構成面に関する折れ線を再構成する第4のステップと、
上記有限要素解析装置の板要素生成部が、上記折れ線近似部により再構成された折れ線で規定される領域内に上記板要素を生成する第5のステップとを有することを特徴とする板要素分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素解析装置および板要素分割方法に関し、特に、CADで生成された3次元物体の構成面を板要素に分割する有限要素解析装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ技術を活用して製品の設計、製造や工程設計の事前検討などの支援を行うためのツールとして、CAE(Computer Aided Engineering)システムが提供されている。CAEシステムの解析手法の1つである有限要素法では、解析対象の形状の内部を小さな有限範囲の要素に分割する。個々の有限要素は、その境界に複数の節点を持つ。
【0003】
すなわち、有限要素法では、解析対象の形状を、座標情報を持つ節点群と、節点群を補間することで表される有限要素群とによって表現する。特に、解析対象が面の場合には、節点が3点ないし4点の板要素群で形状を表現する。CADで生成された複合面に対して、全体を覆うように板要素群を生成することを板要素分割とよぶ。解析計算を単純化するために、3つの節点で表現される三角形板要素のみを扱うようにした手法も存在する。
【0004】
図10は、複合面の一面を板要素分割した結果のイメージを示す図である。複合面とは、複数の構成面を境界線で張り合わせて1つの形状を表現したものである。構成面は複数の境界線のループで囲まれた有効範囲を持ち、境界線がそれぞれ構成面間の境目として2つの構成面に共有された状態となっている。
【0005】
有限要素法では、板要素分割で生成された板要素群と境界条件とに基づいて、節点の座標値と変位量に関する線形連立方程式を構築して解くことにより、変形後の形状や各点での応力分布などの解析結果を出力することが可能である。しかし、連立方程式を構成する式の数および計算で求める変数の数は、節点の数に比例しており、これに応じて計算に必要となるメモリ領域も計算時間も自乗のオーダーで増大する。よって、節点数を無暗に増やすわけにはいかないため、かなり粗い近似として要素分割する必要がある。構成面の境界線が曲線の場合には、その曲線をできるだけ大きなピッチで分割して折れ線近似し、近似した折れ線で囲まれる領域内をできるだけ大きな板要素群に分割することが求められる。
【0006】
ところが、分割ピッチを大きくすると、2つの構成面の境界線を近似した折れ線どうしが交差するために分割できなくなる現象が発生する。図11は、この現象を説明するための図である。図11は、2つの同心円で形成される幅の狭いリング形状の境界線111,112を、それぞれできるだけ大きなピッチで分割した折れ線113,114で表した例を示すものである。ここでは、内周の境界線111を4つの折れ点を持つ四角形の折れ線113で近似し、外周の境界線112を6つの折れ点を持つ六角形の折れ線114で近似した状態を示している。
【0007】
この場合、図11に示すように、内周の境界線111を近似した折れ線113と、外周の境界線112を近似した折れ線114とが交点115で交差するため、境界線111,112をこの折れ線113,114の通りには分割することができない。従来、これを回避するために、2つの境界線を折れ線近似した段階で、折れ線どうしの交差の有無を検査し、交差がある場合は分割ピッチを小さくして再計算を行っていた。交差の有無は、折れ線の各折れ点を構成面のパラメータ空間の値に変換して、パラメータ空間での交差検査によって判定していた。
【0008】
しかしながら、交差がある場合に分割ピッチを小さくすると、解かなければいけない線形連立方程式が複雑となり、計算に必要となるメモリ領域や計算時間が増大してしまうという問題があった。
【0009】
なお、多角形と、それと同一平面上にある任意の点との位置関係を高速に求めることを可能にした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−198808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、曲線形状を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似し、当該近似した形状を板要素分割する有限要素解析装置において、曲線形状をできるだけ大きなピッチで分割して折れ線近似し、できるだけ大きなピッチで板要素群に分割することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、構成面の曲線形状の境界線を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する際に、第1の構成面の境界線について近似された折れ線に関する全ての折れ点が第2の構成面について近似された折れ線の内側になっているかどうかを判定することによって交差の有無を判定する。そして、第1の構成面について設定された折れ点のうち少なくとも1つが第2の構成面について近似された折れ線の外側になっていると判定された場合、当該第2の構成面の境界線から近似した折れ線のうち、第1の構成面に関する折れ点が外側になっている線分の区間において、第2の構成面の境界線上に折れ点を追加して第2の構成面に関する折れ線を再構成するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、第1の構成面について近似された折れ線と第2の構成面について近似された折れ線との間に交差があると判定された場合に、折れ線の分割ピッチを小さくするのではなく、交差が発生している折れ線区間において折れ点を追加して折れ線を再構成するだけで、交差の発生を回避することができる。これにより、境界線の曲線形状をできるだけ大きなピッチで分割して折れ線近似し、当該近似された折れ線で規定される領域内をできるだけ大きなピッチで板要素群に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態による有限要素解析装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】パラメータ空間と3次元空間との対応について説明するための図である。
図3】2次元空間におけるループに対する点の内外判定について説明するための図である。
図4】本実施形態の内外判定部による処理内容を説明するための図である。
図5】本実施形態の内外判定部により設定される半平面を説明するための図である。
図6】本実施形態の折れ線近似部による折れ線の再構成に関する動作を説明するための図である。
図7】本実施形態の依存関係登録部により登録される処理依存関係の例を示す図である。
図8】本実施形態による有限要素解析装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態による有限要素解析装置の動作例を示すフローチャートである。
図10】3次元物体の複合面の一面を板要素分割した結果のイメージを示す図である。
図11】構成面の境界線を近似した折れ線が交差する現象を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による有限要素解析装置の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の有限要素解析装置は、その機能構成として、折れ線近似部1、板要素生成部2、内外判定部3、依存関係登録部4および処理順序設定部5を備えて構成されている。
【0016】
上記各機能ブロック1〜5は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック1〜5は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
折れ線近似部1は、CADで生成された3次元物体のデータを入力し、当該3次元物体の構成面の境界線が曲線形状である場合に、当該曲線形状を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する。ここでは一例として、図11に示したように、幅の狭いリング形状の2つの境界線111,112を、それぞれできるだけ大きなピッチで分割した折れ線113,114にて近似するものとする。
【0018】
例えば、境界線111,112の円周の長さを基準のピッチ(折れ線の一辺の長さ)で割り、余りの値が所定値以下であればその基準のピッチを採用し、余りが所定値より大きい場合にはピッチを小さくして分割数を増やすというルールによって、境界線111,112の分割数(折れ点の数)を決める。図11の例では、内周の境界線111を4つの折れ点を持つ四角形の折れ線113で近似し、外周の境界線112を6つの折れ点を持つ六角形の折れ線114で近似した状態を示している。
【0019】
板要素生成部2は、折れ線近似部1により近似された折れ線で規定される領域内に板要素を生成する。すなわち、板要素生成部2は、CADで生成された3次元物体の複合面に対して、全体を覆うように板要素群を生成する。なお、板要素群の生成については公知の手法を適用することが可能である。この板要素群の生成処理自体は本発明の主題ではないので、詳細な説明は割愛する。
【0020】
折れ線近似部1により近似された折れ線どうしに交差がない場合、その折れ線で規定される領域内に生成した板要素群をそのまま採用することができる。一方、近似された折れ線どうしに交差が存在する場合には、以下に説明するように折れ線の再構成を行う。この場合、板要素生成部2は、再構成された折れ線で規定される領域内に板要素を生成する。
【0021】
内外判定部3は、折れ線近似部1により第1の構成面の境界線について近似された折れ線上の折れ点(以下、第1の構成面に関する折れ点という)の全てが、第2の構成面の境界線について近似された折れ線(以下、第2の構成面に関する折れ線という)の内側になっているかどうかを判定する。例えば、図11の例において、リング形状の内周が第1の構成面、外周が第2の構成面であるとする。この場合、内外判定部3は、内周の境界線111から近似された折れ線113上の4つの折れ点の全てが、外周の境界線112について近似された折れ線114の内側に存在するか否かを判定する。
【0022】
このように、本実施形態では、従来のように折れ線の各折れ点を構成面のパラメータ空間の値に変換して、3次元空間の折れ線をパラメータ空間の折れ線とみなして交差の有無を判定するのではなく、3次元空間の座標値を利用して交差の有無を判定する。構成面のパラメータ空間上の線分は3次元空間では曲がっている場合もあるため、パラメータ空間の交差検査だけでは不十分なことがある。例えば、同心円の構成面が平面としてではなく回転面として定義されている場合には、図2に示すようにパラメータ一定線は円弧状になるため、パラメータ空間では交差を検出することができない。
【0023】
これに対して、本実施形態では、3次元空間の座標値を利用して、第1の構成面に関する折れ点の全てが第2の構成面に関する折れ線の内側になっているかどうかを判定することにより、第1の構成面の境界線111から近似された折れ線113と、第2の構成面の境界線112から近似された折れ線114との間に交差が生じているか否かを判定する。
【0024】
以下に、折れ点の内外判定の原理を説明する。図3に示すように、2次元空間の場合には、ある点がループの内側にあるか外側にあるかを、始点から任意の方向に向かう半無限直線とループとの交差回数が偶数か奇数かによって判定することができる。すなわち、同心円状の2つの境界線101,102で囲まれたループの内側にある点の場合、ループの有効側に向かう半無限直線103を考えて、開始点を数えずに境界線101,102との他の交点の数を数えると、全て奇数となるはずである。
【0025】
なお、それぞれの境界線101,102には互いに円周に沿って逆向きの進行方向A,Bが設定されていて、その進行方向A,Bに対してどちらが内側でどちらが外側かということがあらかじめ定義されている。つまり、内側の境界線101からみて外側で、かつ、外側の境界線102からみて内側となる領域がループの内部領域ということになる。また、ループの面には表裏が存在し、当該面の表裏の方向と境界線101,102の進行方向との関係でループの有効側と無効側とが定義されている。
【0026】
内外判定部3は、この考え方を3次元空間に拡張して、図4に示すように、第1の構成面に関する折れ点211〜214の位置に平面(矢印201〜204で示す)を設定して、平面201〜204と折れ線113,114との交差回数が偶数か奇数かによって交差の有無を判定する。具体的には、内外判定部3は、各折れ点211〜214から当該折れ点211〜214の有効側に向かう半平面201〜204と、第1の構成面の境界線111から近似された折れ線113および第2の構成面の境界線112から近似された折れ線114とが交差する回数に基づいて、第1の構成面に関する4つの折れ点211〜214の全てが第2の構成面に関する折れ線114の内側になっているかどうかを判定する。
【0027】
なお、半平面201〜204は、構成面の表方向と境界線の進行方向とに対して決まる面の有効側を、折れ点を挟んで繋がる2つの折れ線が成す角度の2等分方向で代表させることで決定している。すなわち、図5に示すように、折れ点301での構成面の法線の方向V1と、当該折れ点301に繋がる2つの折れ線302,303の2等分方向V2とから、折れ点301の有効側に向かう半平面304を決定する。
【0028】
図4の例では、第1の構成面に関する4つの折れ点211〜214のうち、2つの折れ点211,213については、その折れ点211,213の有効側に設定された半平面201〜204と折れ線113,114との交差回数が1回と奇数になる。よって、この第1の構成面に関する2つの折れ点211,213は第2の構成面に関する折れ線114の内側になっていると判定することができる。
【0029】
一方、第1の構成面に関する4つの折れ点211〜214のうち、残り2つの折れ点212,214については、その折れ点212,214の有効側に設定された半平面201〜204と折れ線113,114との交差回数が0回と偶数になる。よって、この第1の構成面に関する2つの折れ点212,214は第2の構成面に関する折れ線114の内側になっていない、つまり外側にあると判定することができる。
【0030】
上述の折れ線近似部1は、第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが、第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、第2の構成面に関する折れ線を再構成する。図4の例では、第1の構成面に関する2つの折れ点212,214が第2の構成面に関する折れ線114の外側にあると判定されるので、折れ線近似部1は第2の構成面に関する折れ線を再構成する。
【0031】
図6は、折れ線近似部1による折れ線の再構成に関する動作を説明するための図である。図6に示すように、折れ線近似部1は、第2の構成面の境界線112から近似した折れ線114のうち、第1の構成面に関する折れ点212,214が外側になっている線分401,402の区間において、第2の構成面の境界線上の折れ点411,412を追加して第2の構成面に関する折れ線を再構成する。すなわち、線分401を折れ線401’に再構成するとともに、線分402を折れ線402’に再構成する。このように、第2の構成面に関する折れ線114の分割ピッチを小さくすることなく、交差が発生している線分401,402の区間において折れ点411,412を追加して折れ線114を再構成するだけで、交差の発生を回避することができる。
【0032】
なお、以上のように第2構成面に関する折れ点の追加によって交差を回避しようとすると、第2の構成面に隣接する第3の構成面に影響が及び、第2の構成面の境界線について再構成された折れ線と、第3の構成面の境界線について近似された折れ線との間で交差が発生する場合がある。この場合、既に分割済みの境界線に対して折れ点を追加することは、隣接する構成面の分割済みの板要素の分割も必要となるため、非常に面倒である。そのため、構成面の処理順序を変更して再分割する仕組みが必要となる。この再分割を実行するための構成が、依存関係登録部4および処理順序設定部5である。
【0033】
依存関係登録部4は、第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが、第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、当該第1の構成面と第2の構成面との間の処理依存関係を登録して記憶させる。上述の例の場合、依存関係登録部4は、第2の構成面は第1の構成面からの依存関係がある、例えば第1の構成面が「親」で第2の構成面が「子」という処理依存関係を登録する。依存関係登録部4は、2つの構成面について折れ線近似部1および内外判定部3の処理が行われる都度、当該2つの構成面を第1の構成面および第2の構成面として、その間の処理依存関係を必要に応じて登録して記憶させる。
【0034】
一方、内外判定部3は、折れ線近似部1により第2の構成面に関する折れ線が再構成された場合、追加された折れ点も含めて第2の構成面について設定された折れ点の全てが、第2の構成面に隣接する第3の構成面の境界線について近似された折れ線の内側になっているか否かを判定する。ここで、第2の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが第3の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、依存関係登録部4は、当該第2の構成面と第3の構成面との間の処理依存関係も登録して記憶させる。
【0035】
処理順序設定部5は、第2の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが第3の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、依存関係登録部4により登録された処理依存関係に基づいて、複数の構成面の処理順序を変更する。この場合、折れ線近似部1および内外判定部3は、処理順序設定部5により変更された処理順序に従って処理を再実行する。
【0036】
例えば、図7(a)のように複数の構成面に関する処理依存関係がツリー状に表される場合、処理順序設定部5は、処理依存関係のツリーを逆に辿るようにして複数の構成面の処理順序を変更する。図7(a)の例では、第3の構成面を最優先して処理し、続いて第2の構成面、第1の構成面を処理するように処理順序を設定する。
【0037】
これに対して、図7(b)に示すように、複数の構成面の処理依存関係をツリー状に辿れずにループが検出された場合、折れ線近似部1および内外判定部3は、構成面単位に境界線の折れ線近似および折れ点の追加による折れ線の再構成までを実施する。また、板要素生成部2は、全ての構成面について折れ線近似および折れ線の再構成が終わったところで、構成面単位に板要素の生成を行う。このように、折れ線近似部1により1つの構成面について境界線の折れ線近似を行う都度、板要素生成部2により板要素分割を行うのではなく、全ての構成面について折れ線近似を行った後に各構成面について板要素分割を行うことにより、依存関係のループ問題に対処している。
【0038】
図8および図9は、上記のように構成した本実施形態による有限要素解析装置の動作例を示すフローチャートである。まず、折れ線近似部1は、3次元物体を構成する複数の構成面の中から1つを抽出する(ステップS1)。そして、抽出した構成面の境界線が曲線形状か否かを判定し(ステップS2)、曲線形状である場合には、当該曲線形状を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する(ステップS3)。一方、構成面の境界線が曲線形状でないと折れ線近似部1にて判定した場合、処理はステップS4に遷移する。
【0039】
構成面の境界線が曲線形状である場合、板要素生成部2は、ステップS3で折れ線近似部1により近似された折れ線で規定される領域内に板要素を生成する(ステップS4)。また、構成面の境界線が曲線形状でない場合、つまり境界線が直線形状である場合、板要素生成部2は、ステップS1で抽出された構成面の境界線で規定される領域内に板要素を生成する(ステップS4)。
【0040】
次に、内外判定部3は、折れ線近似部1により第1の構成面の境界線について近似された折れ線上の折れ点の全てが第2の構成面の境界線について近似された折れ線の内側になっているかどうかを判定する(ステップS5)。なお、折れ線近似部1が構成面を最初に折れ線近似した段階ではこの判定は行えないので、判定を行わずにステップS1に戻る。
【0041】
第1の構成面に関する折れ点の全てが第2の構成面に関する折れ線の内側になっていると内外判定部3により判定された場合、折れ線近似部1は、3次元物体の全ての構成面を処理したか否かを判定する(ステップS6)。全ての構成面を処理し終わった場合、図8に示すフローチャートの処理を終了する。一方、未処理の構成面が残っている場合、処理はステップS1に戻り、折れ線近似部1は次の構成面を抽出する。
【0042】
上記ステップS5において、第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、依存関係登録部4は、当該第1の構成面と第2の構成面との間の処理依存関係を登録して記憶させる(ステップS7)。
【0043】
また、折れ線近似部1は、第2の構成面に関する折れ線のうち、折れ点が第1の境界面に関する折れ線の外側になっている線分の区間において、第2の構成面の境界線上に折れ点を追加して第2の構成面に関する折れ線を再構成する(ステップS8)。そして、板要素生成部2は、再構成された折れ線で規定される領域内について板要素の生成を再実行する(ステップS9)。
【0044】
さらに、内外判定部3は、ステップS8で追加された折れ点も含めて第2の構成面に関する折れ点の全てが、第2の構成面に隣接する第3の構成面に関する折れ線の内側になっているかどうかを判定する(ステップS10)。ここで、第3の構成面についてまだ折れ線が近似されていない場合や、第2の構成面に関する折れ点の全てが第3の構成面に関する折れ線の内側になっていると判定された場合、処理はステップS1に戻り、折れ線近似部1は次の構成面を抽出する。
【0045】
一方、第2の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが、第3の構成面に関する折れ線の外側になっていると内外判定部3により判定された場合、依存関係登録部4は、当該第2の構成面と第3の構成面との間の処理依存関係を登録して記憶させる(ステップS11)。そして、処理順序設定部5は、依存関係登録部4により登録された処理依存関係に基づいて、処理依存関係にループが存在する否かを判定する(ステップS12)。
【0046】
ここで、処理依存関係にループが存在しない場合、処理順序設定部5は、当該処理依存関係に基づいて、複数の構成面の処理順序を変更する(ステップS13)。その後、処理はステップS1に戻る。この場合、折れ線近似部1は、処理順序設定部5により変更された処理順序に従って、1つ目の構成面を抽出する。
【0047】
一方、処理依存関係にループが存在すると処理順序設定部5により判定された場合、折れ線近似部1および内外判定部3は、図9に示すステップS14〜S23の処理によって、構成面単位に境界線の折れ線近似および折れ点の追加による折れ線の再構成までを実施する。この際、必要に応じて依存関係登録部4および処理順序設定部5の処理も行う。
【0048】
そして、板要素生成部2は、全ての構成面について折れ線近似および折れ線の再構成が終わったところで、構成面単位に板要素の生成を行う(ステップS24)。なお、ステップS14〜S23での処理は、ステップS4,S9の板要素分割処理およびステップS12のループ判定処理がない点を除いて、ステップS1〜S13の処理と同様である。
【0049】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、構成面の曲線形状の境界線を複数の折れ点を持つ折れ線にて近似する際に、第1の構成面の境界線について近似された折れ線に関する全ての折れ点が第2の構成面の境界線について近似された折れ線の内側になっているかどうかを判定する。そして、第1の構成面に関する折れ点のうち少なくとも1つが第2の構成面に関する折れ線の外側になっていると判定された場合、当該第2の構成面に関する折れ線のうち折れ点が外側になっている線分の区間において、境界線上の折れ点を追加して第2の構成面に関する折れ線を再構成するようにしている。
【0050】
このように構成した本実施形態によれば、第1の構成面の境界線について近似された折れ線と第2の構成面の境界線について近似された折れ線との間に交差がある場合に、折れ線の分割ピッチを小さくするのではなく、交差が発生している線分の区間において折れ点を追加して折れ線を再構成するだけで、交差の発生を回避することができる。これにより、境界線の曲線形状をできるだけ大きなピッチで分割して折れ線近似し、当該近似された折れ線で規定される領域内をできるだけ大きなピッチで板要素群に分割することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1の構成面に関する折れ線と第2の構成面に関する折れ線との間に交差があるか否かを折れ点の内外判定により行っている。これにより、従来のようにパラメータ空間の交差検査では検出できない交差も確実に検出することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第2の構成面に関する折れ線に対して折れ点を追加した結果、その追加した折れ点が、第2の構成面に隣接する第3の構成面に関する折れ線の外側になってしまう場合には、構成面間の処理依存関係に基づいて処理順序を変更して折れ線近似を再実行するようにしている。これにより、折れ線の分割ピッチを小さくすることなく、構成面の境界線について分割失敗となる現象を回避することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 折れ線近似部
2 板要素生成部
3 内外判定部
4 依存関係登録部
5 処理順序設定部
図1
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図11