【実施例】
【0060】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
製造例
スイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)の原試料を凍結させた後、解凍することにより、スイゼンジノリ細胞体を破壊し、当該スイゼンジノリ細胞体に含まれている蛍光性色素であるフィコビリプロテインなどを溶出させ、水洗することによって除去した。
【0062】
次に、前記で水洗したスイゼンジノリ原試料をイソプロパノールで洗浄することにより、当該スイゼンジノリ原試料に含まれている脂溶性色素、クロロフィル、カロテノイド系色素などを除去した。前記でイソプロパノールを用いて洗浄したスイゼンジノリ試料を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、当該溶液の液温を80℃に保ちながら5時間撹拌することにより、スイゼンジノリ細胞体を完全に破壊し、かつスイゼンジノリ試料に含まれているタンパク質やDNAなどの生体高分子を分解させ、これらの破壊残渣、解残渣およびスイゼンジノリ多糖体を含む溶液を得た。
【0063】
前記で得られた溶液をガーゼで濾過し、不純物を除去した後、当該溶液のpHがおよそ7〜8程度となるまで塩酸で中和した。その後、この溶液にイソプロパノールと水の混合溶媒(イソプロパノールと水の容量比:70:30)を添加し、撹拌することにより、スイゼンジノリ多糖体を精製し、回収した。
【0064】
前記で回収されたスイゼンジノリ多糖体を再度、水中溶解させ、得られたスイゼンジノリ多糖体水溶液をイソプロピルアルコールに添加することによってスイゼンジノリ多糖体を脱水させ、繊維化させた。繊維化されたスイゼンジノリ多糖体の収率は、スイゼンジノリ原試料乾燥重量に対し約50〜80質量%であった。
【0065】
以上のようにして精製されたスイゼンジノリ多糖体の重量平均分子量を多角度静的光散乱法(MALLS)にて以下の測定条件で測定した。その結果、当該スイゼンジノリ多糖体の重量平均分子量は、2900万であることが確認された。前記で精製されたスイゼンジノリ多糖体を以下の実施例で用いた。
【0066】
〔測定条件〕
・装置:Wyatt Technology社製、商品名:Dawn Heleos II
・注入時の濃度:0.01質量%
・注入量:100μL
・流速:1mL/min
・溶媒:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
・カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex OHpak SB-807 HQおよび商品名:Shodex OHpak SB-804 HQ
・カラムの温度:40℃
・測定温度:25℃
・レーザーの波長:665.2nm
・測定角:13.0°、20.7°、29.6°、37.5°、44.8°、53.1°、61.1°
・セルのタイプ:溶融シリカ
・RI検出器:Wyatt Technology社製、商品名:Optilab T-rEX、レーザーの波長:658.0nm
【0067】
実施例1
0.2Mの水酸化ナトリウムを含有し、スイゼンジノリ多糖体〔平均糖残基モル質量:180g/mol、平均質量:160mg(0.89mmol)〕を0.8質量/体積%の濃度で含有する水溶液20mLに水溶性架橋剤としてジビニルスルホン118mg(100μL、1mmol、分子量:118)を添加することにより、ジビニルスルホンを含有する液晶性多糖類溶液を得た。前記で得られた液晶性多糖類溶液を表面が平坦なポリエステル製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを25℃の大気中に170時間放置して被膜を乾燥させることにより、水膨潤性シートを得た。得られた水膨潤性シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、厚さは、約20μmであった。
【0068】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬することにより、未反応の架橋剤を水中へ洗い出した後、水膨潤性シートを水中から取り出し、目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を調べたところ、前記で得られた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は6650%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.15%であることが確認された。
【0069】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は43400であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0070】
次に、前記で得られた水膨潤性シートから一辺の長さが10mmの正方形状の試験片を切り出し、得られた試験片を用いて水膨潤性シートの物性として、圧縮弾性率を以下の方法に基づいて調べた。その結果、水膨潤状態における圧縮弾性率が231kPaであることが確認された。
【0071】
〔圧縮弾性率の測定方法〕
水膨潤性シートの圧縮弾性率は、テンシロン万能材料試験機〔(株)エー・アンド・デイ製、商品名:Instron 3365、ロードセル:5kN〕を用いて圧縮速度1mm/min、温度25℃にて測定した。
【0072】
また、前記で得られた水膨潤性シートを再度乾燥させ、当該水膨潤性シートの元素分析を行なったところ、炭素原子35.67質量%、水素原子5.53質量%、窒素原子0.60質量%、硫黄原子5.11質量%が含有されていることがわかった。これらの結果に基づいて、水膨潤性シートへの架橋剤のジビニルスルホンの導入率を求めたところ、スイゼンジノリ多糖体の糖残基あたりのジビニルスルホンの導入率が8.4モル%であることが確認された。
【0073】
上記の結果から、ジビニルスルホンの仕込み時のスイゼンジノリ多糖体の糖残基に対する比率(112モル%)と比較すると、約7/100の反応率でジビニルスルホンがスイゼンジノリ多糖体と反応したことがわかる。このことから、ジビニルスルホンは、スイゼンジノリ多糖体の糖残基に対する反応性が極めて低いことがわかる。
【0074】
前記で得られた水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)を式:
[水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)]
=[膨潤後のシートの重量]÷[膨潤前の乾燥状態のシートの重量]
に基づいて評価したところ、膨潤度(q)は21であり、架橋点間分子量(Mc)を式:
[架橋点間分子量(Mc)]=3(d/q)RT/K
〔式中、dは水膨潤性シートの密度(1g/cm
3)、qは水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度、Rは気体定数、Tは温度(300K)を示す〕
に基づいて求めたところ、架橋点間分子量(Mc)は、1500g/molであった。
【0075】
また、前記で得られた水膨潤性シートの架橋密度を式:
〔架橋密度〕=〔スイゼンジノリ多糖体の糖残基平均分子量〕/2〔架橋点間分子量〕
に基づいて求めたところ、当該架橋密度は6モル%であった。
【0076】
前記膨潤性シートの架橋密度がジビニルスルホンの導入率よりも若干低いことから、導入されたジビニルスルホンの一部が架橋点として機能していないことが判明した。このことから、ジビニルスルホンが有する1つのビニル基は、未反応の状態で残存し、スイゼンジノリ多糖体に存在しているものと考えられる。
【0077】
実施例2
実施例1において、ジビニルスルホンの量を176mg(150μL、1.5mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した
【0078】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は5900%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.22%であることが確認された。
【0079】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、27300であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0080】
前記で得られた水膨潤性シートの水膨潤状態における圧縮弾性率を実施例1と同様にして測定したところ、当該圧縮弾性率は455kPaであった。また、実施例1と同様にしてジビニルスルホンの導入率、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)、架橋点間分子量(Mc)および架橋密度を求めたところ、ジビニルスルホンの導入率は16モル%であり、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)は18であり、架橋点間分子量(Mc)は900g/molであり、架橋密度は10モル%であった。
【0081】
実施例3
実施例1において、ジビニルスルホンの量を236mg(200μL、2mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0082】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10分間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は5100%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.31%であることが確認された。
【0083】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、16200であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0084】
前記で得られた水膨潤性シートの水膨潤状態における圧縮弾性率を実施例1と同様にして測定したところ、当該圧縮弾性率は595kPaであった。また、実施例1と同様にしてジビニルスルホンの導入率、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)、架橋点間分子量(Mc)および架橋密度を求めたところ、ジビニルスルホンの導入率は22モル%であり、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)は16であり、架橋点間分子量(Mc)は800g/molであり、架橋密度は11モル%であった。
【0085】
実施例4
実施例1において、ジビニルスルホンの量を294mg(250μL、2.5mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0086】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10分間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は4650%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.42%であることが確認された。
【0087】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、11000であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0088】
前記で得られた水膨潤性シートの水膨潤状態における圧縮弾性率を実施例1と同様にして測定したところ、当該圧縮弾性率は959kPaであった。また、実施例1と同様にしてジビニルスルホンの導入率、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)、架橋点間分子量(Mc)および架橋密度を求めたところ、ジビニルスルホンの導入率は28モル%であり、水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)は10であり、架橋点間分子量(Mc)は750g/molであり、架橋密度は12モル%であった。
【0089】
実施例5
実施例3において、スイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液の代わりに、0.2Mの水酸化ナトリウムを含有しスイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0090】
前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は23000%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.22%であることが確認された。
【0091】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、105300であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0092】
実施例6
実施例3において、スイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液の代わりに、0.2Mの塩酸を含有しスイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0093】
前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は6400%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.74%であることが確認された。
【0094】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、8690であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0095】
実施例7
実施例3において、スイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液の代わりに、0.2Mの塩酸を含有しスイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0096】
前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は16200%であり、面内方向の線膨潤変化率は1.09%であることが確認された。
【0097】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、14900であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0098】
実施例8
実施例1において、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.8質量%から0.5質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。得られた水膨潤性シートの圧縮弾性率は、156kPaであることが確認された。
【0099】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は12500%であり、面内方向の線膨潤変化率は4.9%であることが確認された。
【0100】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、2460であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0101】
実施例9
実施例1において、スイゼンジノリ多糖体の濃度を0.8質量%から0.6質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。得られた水膨潤性シートの圧縮弾性率は、190kPaであることが確認された。
【0102】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は10200%であり、面内方向の線膨潤変化率は2.4%であることが確認された。
【0103】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、4190であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0104】
実施例10
実施例3において、液晶性多糖類溶液を表面が平坦なポリエステル製のプレート上に被膜の厚さが約20μmとなるようにスプレーコートしたプレートを25℃の大気中に放置する時間を170時間から190時間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0105】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は4500%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.30%であることが確認された。
【0106】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、15000であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。また、前記で得られた水膨潤性シートの水膨潤状態における圧縮弾性率は、231kPaであることが確認された。
【0107】
実施例11
実施例3において、液晶性多糖類溶液を表面が平坦なポリエステル製のプレート上に被膜の厚さが約20μmとなるようにスプレーコートしたプレートを25℃の大気中に放置する時間を170時間から144時間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0108】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は5500%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.33%であることが確認された。
【0109】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は、16700であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。また、前記で得られた水膨潤性シートの水膨潤状態における圧縮弾性率は、231kPaであることが確認された。
【0110】
実施例12
実施例1において、0.2Mの水酸化ナトリウムを含有し、スイゼンジノリ多糖体を0.8質量%の濃度で含有する水溶液の代わりに、0.2Mの水酸化ナトリウムを含有し、キサンタンガムを0.8質量%の濃度で含有する水溶液20mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚さが約20μmである水膨潤性シートを製造した。
【0111】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に10日間浸漬した後、水中から取り出し、当該水で膨潤させた水膨潤性シートの目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることから、膨潤異方性に優れていることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして測定したところ、水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は4500%であり、面内方向の線膨潤変化率は0.30%であることが確認された。
【0112】
実施例13
スイゼンジノリ多糖体〔平均糖残基モル質量:180g/mol、平均質量:250mg(1.39mmol)〕を0.5質量/体積%の濃度で含有する液晶性多糖類水溶液50mLを表面が平坦なポリエステル製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを60℃の大気中に16時間放置して被膜を乾燥させることにより、水膨潤性シートを得た。得られた水膨潤性シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、厚さは、約40μmであった。その後、前記で得られた水膨潤性シートから一辺の長さが5mmの正方形状の試験片を切り出し、恒温槽内で120℃の温度に2時間加熱した。
【0113】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に1日間浸漬した後、水膨潤性シートを水中から取り出し、目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして調べたところ、前記で得られた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は1600%であり、面内方向の線膨潤変化率は3.3%であることが確認された。
【0114】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は500であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0115】
次に、前記で得られた水膨潤性シートから一辺の長さが10mmの正方形状の試験片を切り出し、得られた試験片を用いて水膨潤性シートの物性として、水膨潤状態における圧縮弾性率を実施例1と同様にして調べた。その結果、水膨潤状態における圧縮弾性率は141kPaであることが確認された。
【0116】
前記で得られた水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)および架橋点間分子量(Mc)を実施例1と同様にして評価したところ、膨潤度(q)は21であり、架橋点間分子量(Mc)は2550g/molであった。
【0117】
また、前記で得られた水膨潤性シートの架橋密度を実施例1と同様にして求めたところ、当該架橋密度は3.5モル%であった。なお、前記膨潤性シートの架橋密度は、熱処理によって形成された物理的架橋点の密度を示しているものと考えられる(以下の実施例において同じ)。
【0118】
実施例14
スイゼンジノリ多糖体〔平均糖残基モル質量:180g/mol、平均質量:250mg(1.39mmol)〕を0.5質量/体積%の濃度で含有する液晶性多糖類水溶液50mLを表面が平坦なポリエステル製のプレート上にスプレーコートした。前記プレートを60℃の大気中に16時間放置して被膜を乾燥させることにより、水膨潤性シートを得た。得られた水膨潤性シートをプレートから剥がし、その厚さを測定したところ、厚さは、約40μmであった。その後、前記で得られた水膨潤性シートから一辺の長さが5mmの正方形状の試験片を切り出し、恒温槽内で140℃の温度に2時間加熱した。
【0119】
次に、前記で得られた水膨潤性シートを25℃の水中に1日間浸漬した後、水膨潤性シートを水中から取り出し、目視にて観察したところ、面内方向ではほとんど膨潤しておらず、厚さ方向に大きく膨潤していることが確認された。そこで、前記水で膨潤させた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率および面内方向の線膨潤変化率を実施例1と同様にして調べたところ、前記で得られた水膨潤性シートの厚さ方向の線膨潤変化率は1300%であり、面内方向の線膨潤変化率は1.6%であることが確認された。
【0120】
次に、式(I)に基づいて水膨潤性シートの線膨潤変化率比を求めたところ、当該線膨潤変化率比は826であった。このことから、前記で得られた水膨潤性シートは、厚さ方向に大きく膨潤し、面内方向にはほとんど膨潤しないことから、膨潤異方性に優れていることがわかる。
【0121】
次に、前記で得られた水膨潤性シートから一辺の長さが10mmの正方形状の試験片を切り出し、得られた試験片を用いて水膨潤性シートの物性として、水膨潤状態における圧縮弾性率を実施例1と同様にして調べた。その結果、水膨潤状態における圧縮弾性率は202kPaであることが確認された。
【0122】
前記で得られた水膨潤性シートの乾燥重量あたりの膨潤度(q)および架橋点間分子量(Mc)を実施例1と同様にして評価したところ、膨潤度(q)は15であり、架橋点間分子量(Mc)は2460g/molであった。
【0123】
また、前記で得られた水膨潤性シートの架橋密度を実施例1と同様にして求めたところ、当該架橋密度は3.7モル%であった。
【0124】
比較例1
実施例1において、水溶性架橋剤としてジビニルスルホンの代わりに塩化アルミニウム119mgを用いたこと以外は、実施例1と同様にして水膨潤性シートを製造しようと試みた。しかし、水酸化ナトリウムおよびスイゼンジノリ多糖体を含有する水溶液に塩化アルミニウムを添加した瞬間、溶液全体がママコ(ダマ)になったため、シート状に乾燥させることができなかった。