(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷水から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を羽根車によって圧縮するターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器とを備えたターボ冷凍機において、
前記凝縮器で凝縮した冷媒を過冷却するサブクーラーと、
前記サブクーラー側の冷媒の一部を前記蒸発器に導く冷却冷媒ラインと、
前記冷却冷媒ラインを通る冷媒と前記ターボ圧縮機内で使用される油との間で熱交換を行うオイルクーラーとを備え、
前記サブクーラーによって過冷却された冷媒により前記油を冷却するようにし、
前記ターボ冷凍機は、さらに、
前記オイルクーラーに流入する前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、
前記オイルクーラーを出た前記冷媒の温度を測定する冷媒温度測定器と、
前記冷媒温度測定器によって測定された前記冷媒の温度と前記冷媒の飽和温度との差に基づいて前記流量調整弁の開度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記差が所定の範囲内に収まるように前記流量調整弁の開度を制御し、
前記所定の範囲の下限値は、0℃よりも大きいことを特徴とするターボ冷凍機。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍空調装置などに利用されるターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムで構成され、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスにする圧縮機と、高圧の冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮した冷媒を減圧して膨張させる膨張弁(膨張機構)とを、冷媒配管によって連結して構成されている。
【0003】
圧縮機は、高速回転体を支持する軸受や、高速回転体にトルクを伝える増速機を内蔵している。軸受および増速機での発熱は機械損失に相当するため、これら軸受および増速機を潤滑し、かつ軸受および増速機を冷却するために、圧縮機への潤滑油の供給が必須となる。昇温した潤滑油を冷却する手段としては、冷凍サイクル中の冷媒が利用される。つまり、熱交換器(オイルクーラー)を介在して、昇温した潤滑油を液冷媒で冷却させるのが通常である。この場合、通常、凝縮器からオイルクーラーに冷媒を送るようにしており、冷媒を送る駆動源は、凝縮器とオイルクーラー(蒸発器)の圧力差となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オイルクーラーを冷却した凝縮冷媒は、膨張過程の中で、そのクオリティ(乾き度)に応じた分の冷媒ガスがフラッシュして蒸発器に戻る。ターボ冷凍機の効率向上には、オイルクーラーへの冷却冷媒量を削減することも有効であるが、軸受・増速機の発熱に応じた冷却冷媒量が必要であるため、冷却冷媒量を過剰に削減すると、軸受の温度が上昇して冷凍機の正常運転を継続することが困難となる。
【0006】
上述したように、オイルクーラーを冷却した凝縮冷媒は、膨張過程の中で、その乾き度(クオリティ)に応じた分の冷媒ガスがフラッシュして蒸発器に戻る。フラッシュした冷媒ガスは、冷凍効果に寄与することなく圧縮機に吸込まれ、余剰な圧縮動力を消費する原因となり、冷凍機の効率低下を招く。
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、潤滑油を冷却するためのオイルクーラーの冷却用冷媒としてサブクーラーの過冷却冷媒液を利用することにより、蒸発器でフラッシュして冷凍効果に寄与しない冷媒ガス量を低減することができ、またオイルクーラーの冷却冷媒配管でのフラッシュ回避による安定した電動機の冷却機能を確保できるターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明のターボ冷凍機
の一態様は、冷水から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を羽根車によって圧縮するターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器とを備えたターボ冷凍機において、前記凝縮器で凝縮した冷媒を過冷却するサブクーラーと、前記サブクーラー側の冷媒の一部を前記蒸発器に導く冷却冷媒ラインと、前記冷却冷媒ラインを通る冷媒と前記ターボ圧縮機内で使用される油との間で熱交換を行うオイルクーラーとを備え、前記サブクーラーによって過冷却された冷媒により前記油を冷却するように
し、前記ターボ冷凍機は、さらに、前記オイルクーラーに流入する前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、前記オイルクーラーを出た前記冷媒の温度を測定する冷媒温度測定器と、前記冷媒温度測定器によって測定された前記冷媒の温度と前記冷媒の飽和温度との差に基づいて前記流量調整弁の開度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記差が所定の範囲内に収まるように前記流量調整弁の開度を制御し、前記所定の範囲の下限値は、0℃よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、サブクーラーで過冷却された冷媒液をオイルクーラーの冷却に利用することにより、過冷却冷媒液時のフラッシュガス量が減少し、冷凍効果に寄与しない冷媒ガスを低減できるため、圧縮機の余剰動力を削減し、冷凍機の効率低下を回避できる。
また、本発明によれば、サブクーラーの出口の過冷却冷媒液をオイルクーラーの冷却材として使用しているため、サブクーラーからの冷媒液は既に飽和温度以下に過冷却されているので、配管の圧力損失によるフラッシュのリスクが低くなり、安定したオイルクーラーの冷却機能を確保することが可能となる。
本発明によれば、冷媒温度測定器によって測定された冷媒の温度と冷媒の飽和温度との差、すなわち過熱度に基づいて流量調整弁の開度が積極的に制御される。したがって、オイルクーラーに供給される冷媒の流量を過熱度に基づいて最適化することができ、結果として、軸受および増速機を十分に冷却しつつ、冷凍機の効率低下を防止することができる。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記蒸発器内の圧力を測定する圧力測定器をさらに備え、前記制御部は、前記圧力の測定値から前記冷媒の飽和温度を決定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記オイルクーラーの冷媒出口の近傍に配置され、前記冷却冷媒ライン内の圧力を測定する圧力測定器をさらに備え、前記制御部は、前記圧力の測定値から前記飽和温度を決定することを特徴とする。
【0012】
本発明の
ターボ冷凍機の他の態様は、
冷水から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を羽根車によって圧縮するターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器とを備えたターボ冷凍機において、前記凝縮器で凝縮した冷媒を過冷却するサブクーラーと、前記サブクーラー側の冷媒の一部を前記蒸発器に導く冷却冷媒ラインと、前記冷却冷媒ラインを通る冷媒と前記ターボ圧縮機内で使用される油との間で熱交換を行うオイルクーラーとを備え、前記サブクーラーによって過冷却された冷媒により前記油を冷却するようにし、前記ターボ冷凍機は、さらに、前記オイルクーラーに流入する前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、前記オイルクーラーを出た前記冷媒の温度を測定する冷媒温度測定器と、前記冷媒温度測定器によって測定された前記冷媒の温度と前記冷媒の飽和温度との差に基づいて前記流量調整弁の開度を制御する制御部とを備え、前記蒸発器内の液相状態の冷媒の温度を測定する液相温度測定器をさらに備え、前記制御部は、前記液相温度測定器によって測定された前記液相状態の冷媒の温度を前記飽和温度として使用して前記差を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)潤滑油を冷却するためのオイルクーラーの冷却用冷媒としてサブクーラーの過冷却冷媒液を利用することにより、蒸発器でフラッシュして冷凍効果に寄与しない冷媒ガス量を低減することができるため、圧縮機の余剰動力を削減し、冷凍機の効率低下を回避できる。また、サブクーラーからの冷媒液は既に飽和温度以下に過冷却されているので、配管の圧力損失によるフラッシュのリスクが低くなり、オイルクーラーの冷却冷媒配管でのフラッシュ回避による安定したオイルクーラーの冷却機能を確保できる。
(2)冷媒温度測定器によって測定された冷媒の温度と冷媒の飽和温度との差、すなわち過熱度に基づいて流量調整弁の開度が積極的に制御される。したがって、オイルクーラーに供給される冷媒の流量を過熱度に基づいて最適化することができ、結果として、軸受および増速機を十分に冷却しつつ、冷凍機の効率低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るターボ冷凍機の実施形態を
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1乃至
図8において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明に係るターボ冷凍機の第1の実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機1と、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器2と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器3と、凝縮器2と蒸発器3との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ4とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管5によって連結して構成されている。
【0017】
図1に示す実施形態においては、ターボ圧縮機1は多段ターボ圧縮機から構成されており、多段ターボ圧縮機は二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車11と、二段目羽根車12と、これらの羽根車11,12を回転させる圧縮機モータ13とから構成されている。一段目羽根車11の吸込側には、冷媒ガスの羽根車11,12への吸込流量を調整するサクションベーン14が設けられている。ターボ圧縮機1は軸受や増速機を収容するギヤケーシング15を備えており、ギヤケーシング15の下部には軸受と増速機に給油するための油タンク16が設けられている。ターボ圧縮機1は、流路8によってエコノマイザ4と接続されており、エコノマイザ4で分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目羽根車11と二段目羽根車12の間の部分)に導入されるようになっている。凝縮器2は、底部にサブクーラーSCを内蔵した凝縮器である。
【0018】
図1に示すように構成されたターボ冷凍機の冷凍サイクルでは、ターボ圧縮機1と凝縮器2と蒸発器3とエコノマイザ4とを冷媒が循環し、蒸発器3で得られる冷熱源で冷水が製造されて負荷に対応し、冷凍サイクル内に取り込まれた蒸発器3からの熱量およびモータ13から供給されるターボ圧縮機1の仕事に相当する熱量が凝縮器2に供給される冷却水に放出される。一方、エコノマイザ4にて分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段圧縮段の中間部分に導入され、一段目圧縮機からの冷媒ガスと合流して二段目圧縮機により圧縮される。2段圧縮単段エコノマイザサイクルによれば、エコノマイザ4による冷凍効果部分が付加されるので、その分だけ冷凍効果が増加し、エコノマイザ4を設置しない場合に比べて冷凍効果の高効率化を図ることができる。
【0019】
図1に示すように、凝縮器2の底部にあるサブクーラーSCとエコノマイザ4とを接続する冷媒配管5には、冷却冷媒ライン(冷却冷媒配管)19が接続されている。この冷却冷媒ライン19は、サブクーラーSCとエコノマイザ4とを接続する冷媒配管5から分岐し、蒸発器3まで延びている。サブクーラーSCから過冷却冷媒液が、冷却冷媒ライン19を通って蒸発器3に導かれる。
【0020】
冷却冷媒ライン19にはオイルクーラー20が設けられており、冷却冷媒ライン19はオイルクーラー20内を通って延びている。ターボ圧縮機1の油タンク16内にはオイル循環ポンプ22が設置されている。このオイル循環ポンプ22には、オイル循環ライン(オイル循環配管)23が接続されている。オイル循環ライン23は、オイルクーラー20内を通って延び、ギヤケーシング15の上部に接続されている。したがって、油タンク16内の加熱された潤滑油は、オイル循環ポンプ22によってオイル循環ライン23に送られ、オイルクーラー20内を流れ、そしてギヤケーシング15内に戻される。
【0021】
オイルクーラー20内では、冷却冷媒ライン19を流れる過冷却冷媒液と、オイル循環ライン23を流れる潤滑油との間で熱交換が行われる。潤滑油の熱は冷媒に伝達され、これにより冷媒が加熱されるとともに、潤滑油が冷却される。冷却された潤滑油は、オイル循環ライン23を通ってギヤケーシング15内の軸受および増速機に供給され、これら軸受および増速機を潤滑し、冷却する。このように、潤滑油は、油タンク16、オイルクーラー20、ギヤケーシング15をこの順に循環する。
【0022】
図2は、本発明に係るターボ冷凍機の第2の実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、本実施形態においては、サブクーラーは、内蔵型ではなく外置サブクーラーSCで構成されている。外置サブクーラーSCはプレート熱交換器などからなる。その他の構成は、
図1に示すターボ冷凍機と同様である。
また、以下に示す第3の実施形態から第5の実施形態に係るターボ冷凍機においても内蔵型のサブクーラーと外置サブクーラーの両方のタイプのサブクーラーを使用することができるが、内蔵型のサブクーラーを使用した場合のみを図示する。
【0023】
図1および
図2に示すように構成されたターボ冷凍機においては、サブクーラーSCの出口の過冷却冷媒液をオイルクーラー20の冷却材として使用している。サブクーラー出口の過冷却冷媒液をオイルクーラーの冷却材として使用するメリットは、以下の通りである。
すなわち、サブクーラーSCで過冷却された冷媒液をオイルクーラー20の冷却に利用した後、蒸発器3に戻った冷媒液はフラッシュして湿り蒸気となるが、凝縮器→オイルクーラー→蒸発器の冷却経路と比較して、乾き度(クオリティ)が低いため、蒸発器3でフラッシュして発生するガス量が減る。
【0024】
図3は、蒸発器でフラッシュして発生するガス量を比較するためのモリエル線図である。
図3に示すモリエル線図から、サブクーラー出口の過冷却冷媒液をオイルクーラーの冷却材として使用した場合と、凝縮器出口の飽和冷媒液を電動機の冷却材として使用した場合のフラッシュガス量は以下のように表される。
過冷却冷媒液時のフラッシュガス量=(Δh1/Δh)×G
飽和冷媒液時のフラッシュガス量=(Δh2/Δh)×G
G:電動機への冷却冷媒供給量〔kg/s〕
このようにサブクーラーSCで過冷却された冷媒液をオイルクーラー20の冷却に利用する場合には、過冷却冷媒液時のフラッシュガス量が減少し、冷凍効果に寄与しない冷媒ガスを低減できるため、圧縮機の余剰動力を削減し、冷凍機の効率低下を回避できる。
【0025】
また、凝縮器2からの飽和凝縮液を冷媒として、凝縮器2と蒸発器3の圧力差を駆動源としてオイルクーラー20に供給する場合、供給配管の圧力損失が大きい(例えば、フィルタ、サイトグラス等の絞り機構を設けている)と、冷媒液がフラッシュして冷却冷媒配管内が二相流となる。二相流になると、冷却冷媒の供給が阻害され、オイルクーラー20の冷却機能が損なわれる可能性がある。
しかし、本発明によれば、サブクーラーSCの出口の過冷却冷媒液をオイルクーラー20の冷却材として使用しているため、サブクーラーSCからの冷媒液は既に飽和温度以下に過冷却されているので、配管の圧力損失によるフラッシュのリスクが低くなり、安定したオイルクーラーの冷却機能を確保することが可能となる。
【0026】
ターボ冷凍機において、オイルクーラーの出口での冷媒温度が飽和温度である場合、オイルクーラーの出口での冷媒は湿り蒸気、つまり気液二相流である可能性がある。例えば、
図4のモリエル線図に示す領域S1内の点P1では、冷媒は飽和温度であり、気液二相の状態にある。この点P1では、過剰な冷媒がオイルクーラーに供給されており、冷媒の蒸発潜熱を有効活用することができずに、冷凍機の効率低下を引き起こす。しかし、本発明によれば、サブクーラーSCの出口の過冷却冷媒液をオイルクーラー20の冷却材として使用しているため、サブクーラーSCからの冷媒液は飽和温度以下に過冷却されているので、過剰な冷媒がオイルクーラー20に供給される恐れは少なく、冷凍機の効率低下を回避できる。
【0027】
また、オイルクーラー20への冷媒の供給流量が不足して、オイルクーラー20の出口での過熱度(冷媒の蒸気温度と飽和温度との差)が極度に大きい場合は、オイルクーラー20内で潤滑油と冷媒の顕熱交換の割合が高くなる。例えば、
図4のモリエル線図に示す領域S2内の点P2では、冷媒は飽和温度よりも高い温度にあり、気相の状態にある。この状態では、冷媒と潤滑油の伝熱係数が低下して、潤滑油の温度上昇を招くおそれがある。伝熱係数が低下したときでもオイルクーラー20での交換熱量を確保するためには、大きな伝熱面積が必要となり、オイルクーラー20の大型化、コストアップの原因ともなる。したがって、オイルクーラー20の出口での冷媒の過熱度が適正値になるように、オイルクーラー20への冷媒供給流量を制御する必要がある。
【0028】
そこで、本発明の第3の実施形態では、
図5に示すように、オイルクーラー20に供給される冷媒の流量を調整するための流量調整弁24が冷却冷媒ライン19に設けられている。この流量調整弁24は制御部10に接続されており、制御部10によって流量調整弁24の開度(すなわち、冷媒の流量)が制御される。オイルクーラー20の下流側には、オイルクーラー20内を流れた冷媒の温度を測定する温度センサ(冷媒温度測定器)26が設けられている。温度センサ26は、オイルクーラー20と蒸発器3との間に位置しており、冷却冷媒ライン19を流れる冷媒の温度を測定するようになっている。温度センサ26は制御部10に接続されており、冷媒の温度の測定値は制御部10に送信されるようになっている。
【0029】
流量調整弁24はオイルクーラー20の一次側に配置され、温度センサ26はオイルクーラー20の二次側に配置されている。サブクーラーSCからの過冷却冷媒液の一部は、冷却冷媒ライン19に流れ、流量調整弁24およびオイルクーラー20をこの順に通過して蒸発器3に移送される。蒸発器3には、蒸発器3の内部の圧力を測定する圧力センサ(圧力測定器)27が設けられている。圧力センサ27は制御部10に接続されており、圧力センサ27によって取得された蒸発器3内の圧力の測定値は制御部10に送信されるようになっている。制御部10は、圧力と飽和温度との関係を表す関係式またはテーブルを記憶しており、圧力センサ27によって取得された圧力の測定値から冷媒の現在の飽和温度を決定する。制御部10は、温度センサ26によって測定された冷媒の温度と冷媒の飽和温度との差、すなわち過熱度を算出し、過熱度が所定の範囲内に収まるように流量調整弁24の開度を制御する。
【0030】
図6に示すように、過熱度が低くなると、熱交換効率が向上する傾向にあるためにオイルクーラー20での必要伝熱面積を小さくすることができるが、その一方で上述したように冷凍機の効率が低下する。これに対して、過熱度が高くなると、冷凍機の効率が上がるが、その一方でオイルクーラー20での必要伝熱面積を大きくしなければならない。
【0031】
そこで、冷凍機の効率低下を防止しつつ、オイルクーラー20の大型化を回避するために、本実施形態では、過熱度の適正値は3℃から5℃までの範囲に設定されている。この過熱度の設定温度範囲は、
図4に示す領域S2内にあるが、領域S1と領域S2との境界点に近い温度範囲である。熱交換効率の観点からの理想的な過熱度は、領域S1と領域S2との境界点である。しかしながら、この境界点での過熱度は0℃であり、領域S1での過熱度と同じであるため、制御部10での過熱度の設定値を0℃とすると、気液二相状態の冷媒と潤滑油との間で熱交換が行われる可能性がある。そこで、本実施形態では、過熱度の範囲は、0℃よりもやや高い3℃〜5℃に設定されている。この3℃〜5℃の温度範囲は実験により決定されたものである。
【0032】
制御部10は、温度センサ26によって測定された冷媒の温度と冷媒の飽和温度との差である過熱度を算出し、この過熱度が3℃から5℃までの範囲内に収まるように、流量調整弁24の開度を制御する。このように過熱度に基づいて流量調整弁24を制御することにより、適正な流量の冷媒がオイルクーラー20に供給される。その結果、冷凍機の効率低下を防止しつつ、潤滑油の冷却効率を上げることができる。使用される流量調整弁24の種類としては、電動弁、ステッピングモータを用いた電子式膨張弁などが挙げられる。
【0033】
図7は、本発明に係るターボ冷凍機の第4の実施形態を示す模式図である。
図7に示す第4の実施形態と
図5に示す第3の実施形態との違いは、圧力センサ27をオイルクーラー20の冷媒出口の近傍に設けた点である。圧力センサ27は、冷却冷媒ライン19に設けられており、オイルクーラー20の冷媒出口近傍での冷却冷媒ライン19内の圧力を測定する。制御部10はこの圧力の測定値から冷媒の飽和温度を決定する。この実施形態によれば、オイルクーラー20から圧力センサ27までの冷却冷媒ライン19内での圧力損失はほとんどないので、制御部10はより正確な飽和温度を決定することができる。さらに、
図7に示すように、温度センサ26と圧力センサ27を互いに近接して配置することが好ましい。
【0034】
図8は、本発明に係るターボ冷凍機の第5の実施形態を示す模式図である。
図8に示す第5の実施形態と先に述べた実施形態との違いは、圧力センサ27に代えて、蒸発器3内の液相の冷媒の温度を測定する温度センサ(液相温度測定器)30を設けた点である。すなわち、この実施形態では、温度センサ30によって測定された蒸発器3内の液相冷媒の温度が、冷媒の飽和温度に決定される。したがって、制御部10は、温度センサ30によって測定された液相状態の冷媒の温度を飽和温度として使用して過熱度を算出し、この過熱度が上述した温度範囲(3℃〜5℃)内に収まるように流量調整弁24の開度を制御する。
【0035】
上述した第3の実施形態から第5の実施形態においては、オイルクーラー20に供給される冷媒の流量は、オイルクーラー20を出た冷媒の過熱度に基づいて制御される。したがって、ターボ圧縮機1に使用される軸受および増速機を潤滑油によって十分に冷却しつつ、冷凍機の効率低下を防止することができる。
【0036】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。