特許第6295145号(P6295145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6295145ピラーガーニッシュおよびその取り付け構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295145
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ピラーガーニッシュおよびその取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   B60J1/02 111A
   B60J1/02 101C
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-113182(P2014-113182)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227113(P2015-227113A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】中道 公規
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−341441(JP,A)
【文献】 特開平06−211044(JP,A)
【文献】 特開2010−058656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/02
1/10
1/18
10/00−10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓板の側端部と前記車両のピラーとの隙間を塞ぐように、前記窓板の側端部に沿って取り付けられる長尺のピラーガーニッシュであって、
前記車両の外方で前記隙間を覆う頭部と、
前記頭部の裏面側から突出し、前記窓板の表面に当接する脚部と、
を備え、
前記窓板の側端部に沿って取り付けられたとき、
前記脚部は、長手方向の少なくとも一部において、横断面の前記脚部先端に長手方向に沿って凹部が設けられ、
前記凹部は、前記窓板の表面に当接する内壁と、前記内壁より前記窓板の外周側で前記窓板の表面に当接する外壁と、を備え、
前記凹部と前記窓板の表面とで囲まれて排水流路が形成され、
前記内壁は、少なくとも一部に、前記窓板の内周側と前記排水流路とを連通する開口部を備えている、
ピラーガーニッシュ。
【請求項2】
前記開口部は、前記ピラーガーニッシュが前記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに前記窓板の側端部から下端部に至る角部に対応する位置に形成されている、請求項1に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項3】
前記開口部は、前記ピラーガーニッシュが前記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに前記窓板の側端部から下端部に至る角部に対応する位置よりも上方に形成されている、請求項1に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項4】
前記開口部が複数形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項5】
前記排水流路は、前記ピラーガーニッシュが前記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに長手方向の上方が閉鎖されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項6】
前記車両の前方の前記窓板とフロントピラーとの前記隙間を塞ぐように取り付けられるフロントピラーガーニッシュである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のピラーガーニッシュ。
【請求項7】
車両の窓板の側端部と前記車両のピラーとの隙間を塞ぐように、前記窓板の側端部に沿って長尺のピラーガーニッシュが取り付けられているピラーガーニッシュの取り付け構造であって、
前記ピラーガーニッシュは、頭部と、脚部と、を有し、
前記頭部は、前記車両の外方で前記隙間を覆い、
前記脚部は、前記頭部の裏面側から突出して、前記窓板の表面に当接しており、
ここで、
前記脚部は、長手方向の少なくとも一部において、横断面の前記脚部先端に長手方向に沿って凹部が設けられることにより内壁と外壁とを備え、
前記内壁は、前記窓板の表面に当接し、
前記外壁は、前記内壁より前記窓板の外周側で前記窓板の表面に当接し、
前記凹部と前記窓板の表面とで囲まれて排水流路が形成され、
前記内壁は、少なくとも一部に、前記窓板の内周側と前記排水流路とを連通する開口部を備えている、
取り付け構造。
【請求項8】
前記ピラーガーニッシュは、少なくとも前記窓板の側端部から下端部の一部に沿って連続的に配置されており、
前記凹部の下端は、前記窓板の前記下端部よりも下方に位置する、
請求項7に記載の取り付け構造。
【請求項9】
前記窓板の左右の側端部にそれぞれピラーガーニッシュが取り付けられており、
前記窓板の左側の側端部に取り付けられた前記ピラーガーニッシュの前記開口部と、右側の側端部に取り付けられた前記ピラーガーニッシュの前記開口部とは、長手方向における位置が異なっている、
請求項7または8に記載の取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓枠に設けられるピラーガーニッシュとその取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられる窓(典型的には、嵌め込み式の窓)においては、一般に、車体の窓枠(窓開口)の左右の側枠部を構成するピラーと窓板との隙間に、ピラーガーニッシュが取り付けられている。このピラーガーニッシュは、大略的な構成として、窓枠の上方から下方に亘って形成される上記の隙間を装飾的に覆う長尺の頭部(本体部)と、この頭部の裏側から長手方向に沿って延設され車両の窓板の側端部に弾性的に当接する脚部と、同じく頭部の裏側から長手方向に沿って延設されピラーに弾性的に当接するリップ部と、を一体的に備えている。
【0003】
かかるピラーガーニッシュにおいては、雨天走行中の車両の窓の視界を良好に確保するために、車両前方の窓板で雨水を受けて、ワイパーブレードにより側方に集めることが望まれている。そしてかかる雨水が、車体側面の窓へと流れ込むのを防止することが望まれている。
この種のピラーガーニッシュに関する従来技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、ピラーガーニッシュの頭部と脚部と窓板とで、断面形状がコ字状の雨水受溝を長手方向に形成し、この雨水受溝の容積をピラーガーニッシュの取り付け下部において拡大する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−206026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の窓の取り付け構造においては、窓板の表面や上記雨水受溝を伝って窓板下方に集まる雨水等を窓枠外に排出するために、ピラーガーニッシュのうち、窓板の下端部に取り付けられる部分に排水穴を設けることがあった。そしてかかる排水穴から雨水等を車体内部に導入し、車体の下側へ向けて排出するようにしている。しかしながら、かかる窓板の下端部から車両の下側に向けて排水する構成については、雨水が窓板の下縁を伝って車体の幅方向の中央付近まで移動し、そこで滴下する可能性があった。このような雨水の侵入は、車体内部の中央付近に設置され得る電気電子部品(例えば、空調装置)等を濡らし、かかる電気電子部品を故障させる虞があるため避けるべき事態である。また、排水穴を通じて窓板の下縁が露出されるため、外観が好ましくないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するべく創出されたものであり、その目的は、窓板で受ける雨水等が車体内部で幅方向中央付近に侵入することを防止することができ、かつ、外観不良を解消し得るピラーガーニッシュと、その取り付け構造とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するべく創出された請求項1の発明は、車両の窓板の側端部と、上記車両のピラーとの隙間を塞ぐように、上記窓板の側端部に沿って取り付けられる長尺のピラーガーニッシュである。より詳細には、かかるピラーガーニッシュは、上記車両の外方で上記隙間を覆う頭部と、上記頭部の裏面側から突出し、上記窓板の表面に当接する脚部と、を備えている。
そして、窓板の側端部に沿って取り付けられたとき、上記脚部は、長手方向の少なくとも一部において、横断面の上記脚部先端に長手方向に沿って凹部が設けられ、上記凹部は、上記窓板の表面に当接する内壁と、上記内壁より上記窓板の外周側で上記窓板の表面に当接する外壁と、を備え、上記凹部と上記窓板の表面とで囲まれて排水流路が形成され、上記内壁は、少なくとも一部に、上記窓板の内周側と上記排水流路とを連通する開口部を備えていることを特徴としたものである。
【0008】
請求項1の発明によれば、窓板で受けた雨水等は、窓板の側端部に沿って取り付けられるピラーガーニッシュの内壁の開口部から、排水流路を通って車体の下側に向けて排出される。これにより、雨水等が窓板の下縁を伝って車体内部の中央付近で滴下することを防止できる。また、排水流路は凹部と窓板とで囲まれているため、排水流路に導入された雨水等が周りに飛散することを防止できる。さらに、開口部が設けられる内壁と窓板の側縁との間に外壁が設けられているため、かかる開口部から窓板の側縁が露出して見栄えが悪くなることを防止できる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記開口部は、上記ピラーガーニッシュが上記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに上記窓板の側端部から下端部に至る角部に対応する位置に形成されていることを特徴としたものである。
請求項2の発明によれば、開口部が角部に設けられているため、請求項1の発明の効果に加えて、窓板の側端部の下方に集まる雨水等を、排水流路を通じて更に効果的に排水することができるという効果が得られる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、上記開口部は、上記ピラーガーニッシュが上記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに上記窓板の側端部から下端部に至る角部に対応する位置よりも上方に形成されていることを特徴としたものである。
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、車両の走行時に窓板の側端部の上方に流れる水を、開口部を通じて好適に排水することができ、車体のルーフ側に雨水等が流れこむことを抑制できるという効果が得られる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、上記開口部が、複数形成されていることを特徴としたものである。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて、窓板の側端部の上方や下方に流れる水を更に効果的に車体の下側に向けて排水することができるという効果が得られる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、上記排水流路は、上記ピラーガーニッシュが上記窓板の側端部に沿って取り付けられたときに長手方向の上方が閉鎖されていることを特徴としたものである。
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて、排水流路を流れる水が該排水流路の上方に流れ出すのを防止し、かかる水を更に効果的に車体の下側に向けて排水することができるという効果が得られる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において、上記車両の前方の上記窓板とフロントピラーとの隙間を塞ぐように取り付けられるフロントピラーガーニッシュであることを特徴としたものである。
請求項6の発明によれば、かかるフロントピラーガーニッシュは車両のフロントに装着されるため、車両の前方走行時に多量の雨水等を窓板に受ける。したがって、かかる構成によると、請求項1〜5の発明の効果がより一層明瞭に発揮されるために好ましい。
【0014】
請求項7の発明は、車両の窓板の側端部と上記車両のピラーとの隙間を塞ぐように、上記窓板の側端部に沿って長尺のピラーガーニッシュが取り付けられているピラーガーニッシュの取り付け構造である。かかる取り付け構造において、上記ピラーガーニッシュは、頭部と、脚部と、を有している。そして、上記頭部は、上記車両の外方で上記隙間を覆い、上記脚部は、上記頭部の裏面側から突出して、上記窓板の表面に当接している。
ここで、上記脚部は、長手方向の少なくとも一部において、横断面の上記脚部先端に長手方向に沿って凹部が設けられることにより内壁と外壁とを備えている。そして、上記内壁は、上記窓板の表面に当接し、上記外壁は、上記内壁より上記窓板の外周側で上記窓板の表面に当接し、上記凹部と上記窓板の表面とで囲まれて排水流路が形成されている。そして、上記内壁は、少なくとも一部に、上記窓板の内周側と上記排水流路とを連通する開口部を備えていることを特徴としたものである。
【0015】
請求項7の発明によれば、窓板で受けた雨水等は、窓板の側端部に沿って取り付けられるピラーガーニッシュの内壁の開口部から、排水流路を通って車体の下側に向けて排出される。これにより、雨水等が窓板の下縁を伝って車体内部の中央付近で滴下することを防止できる。また、排水流路は凹部と窓板とで囲まれているため、排水流路に導入された水が周りに飛散することを防止できる。さらに、開口部が設けられる内壁と窓板の側縁との間に外壁が設けられているため、かかる開口部から窓板の側縁が露出して見栄えが悪くなることを防止できる。
【0016】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、上記ピラーガーニッシュは、少なくとも上記窓板の側端部から下端部の一部に沿って連続的に配置されており、上記凹部の下端は、上記窓板の上記下端部よりも下方に位置することを特徴としたものである。
請求項8の発明によれば、請求項7の発明の効果に加えて、排水流路に導入した雨水等を、効果的に車体の下側に向けて排出することができ、雨水等が窓板の下縁を伝って車体内部の中央付近で滴下することを防止できるという効果が得られる。
【0017】
請求項9の発明は、請求項7または8の発明において、上記窓板の左右の側端部にそれぞれピラーガーニッシュが取り付けられており、上記窓板の左側の側端部に取り付けられた上記ピラーガーニッシュの上記開口部と、右側の側端部に取り付けられた上記ピラーガーニッシュの上記開口部とは、長手方向における位置が異なっていることを特徴としたものである。
窓板の右側と左側との側端部では、ワイパーの構成によって運ばれる雨水等の量や位置が異なり得る。したがって、請求項9の発明によれば、請求項7または8の発明の効果に加えて、かかる車両の備えられるワイパーの構成等に応じて適切な位置に開口部を設けることができる。これにより、雨水等を効率的に排水流路に導入し、車体の下側に向けて排出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るピラーガーニッシュの取り付け構造を模式的に示す斜視図である。
図2図1中のII‐II線に沿う断面図である。
図3図1中の窓板の右側端部を部分的に示す模式的図である。
図4図3中のI部周辺のピラーガーニッシュの構造を模式的に示す平面図である。
図5図4中のV‐V線に沿う断面図である。
図6図4中のVI‐VI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明のピラーガーニッシュとその取り付け構造について、好適な実施形態をもとに詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る長尺状のピラーガーニッシュ10が取り付けられた車両(自動車)の前方の窓(フロントウィンドウ)周辺の外観を示す斜視図である。車両の前方の窓は、車体パネル2に設けられた窓開口1に、窓本体を構成する窓板30が後方に緩やかに傾斜された状態で嵌め込まれることで構成されている。窓開口1は、典型的には、車両の左右の側枠を構成するピラー20L,20Rと、ルーフパネル3と、窓板30の下端部30bに沿って配置されるカウルルーバー4等により取り囲まれて構成されている。ここで、窓開口1の左右のピラー20L,20Rと窓板30との間には、所定の隙間が形成される。かかる隙間を塞ぐように、窓板30の左右の側端部30aの上端から下端に亘って上下方向に長尺の左側装着用ピラーガーニッシュ10Lおよび右側装着用ピラーガーニッシュ10Rがそれぞれ取り付けられている。
【0021】
図2は、図1におけるII‐II線に沿う断面図であって、窓板30の側端部30aに装着されている右側装着用ピラーガーニッシュ10Rの取り付け状態を示す図である。図3は、図1における右側装着用ピラーガーニッシュ10Rの窓板30の側端部30aへの取り付け状態を模式的に示す斜視図である。図4は、図3において記号Iで示した部分の右側装着用ピラーガーニッシュ10Rの構造を模式的に示す平面図である。図5は、図4中のV‐V線に沿う断面図であり、図6は、VI‐VI線に沿う断面図である。
【0022】
図2に示すように、右側装着用ピラーガーニッシュ10R(以下、単にピラーガーニッシュ10という場合がある。)は、基本的な構成として、頭部11と脚部12とを備えている。頭部11は、かかるピラーガーニッシュ10の主となる構成要素であって、ピラーガーニッシュ10が窓板30の側端部30aに沿って取り付けられたとき、窓板30の車両外方(すなわち、車外側)に位置し、ピラー20と窓板30との隙間を覆うように形成されている。脚部12は、頭部11の裏面側から車両内方へ突出するように一体的に形成されており、脚部12の先端部において窓板30の表面に弾性的に当接している。なお、脚部12は、長尺方向に直交する横断面で、頭部11の裏面の中央近傍から窓板30の表面に向けて、突出している。かかる構成では、頭部11の裏面と、脚部12の窓板内周側表面と、窓板30の表面とにより、溝部17を構成している。このようなピラーガーニッシュ10の断面形状は、長手方向の各部位によって異なり得る。例えば、ピラー20におけるピラーガーニッシュ10や、窓板30の形状等に応じて、頭部11および脚部12の断面形状や寸法等を適宜調整することができる。
【0023】
脚部12には、長手方向の少なくとも一部において、横断面の脚部先端で長手方向に沿う方向に凹部13が設けられている(図4〜6参照)。本実施形態において、かかる凹部13は、例えば、ピラーガーニッシュ10の装着状態において、脚部12の上下方向の下端近傍に設けられている(図4参照)。この凹部13は、脚部12の先端の横断面において凹形状となるように形成されている。かかる凹部13により、脚部12の先端には内壁14と外壁15とが形成されている(図5参照)。
内壁14は、ピラーガーニッシュ10の装着状態において、窓板30の表面に弾性的に当接している。また、外壁15は、この内壁14よりも窓板30の外周側であって、かつ窓板30の側縁30cよりも内周側である部位において、窓板30の表面に弾性的に当接している。そして、かかる凹部13と窓板30の表面とで囲まれた空間として、排水流路50が構築される。
なお、凹部13は、例えば窓板30の形状やワイパーの形態等に応じて、その配設位置や配設領域を適宜変更することができる。例えば、凹部13は、ピラーガーニッシュ10の装着状態において、脚部12の上下方向の下端から上端近傍に亘って、或いは、下端から中央部に亘る領域等に、設けるようにしても良い。
【0024】
内壁14は、窓板30の内周側と排水流路50とを連通させる開口部16を備えている(図3〜5参照)。かかる開口部16は、凹部13の形態等に応じてその位置や数を適宜調整することができる。例えば、1つの凹部13について1つの開口部16を設けても良いし、1つの凹部13について複数の開口部16を設けても良い。本実施形態においては、図3に示すように、1つの凹部13の内壁14に1つの開口部16が形成されている。なお、好適な一形態として、図4に示すように、開口部16は、排水流路50の長手方向の上方が閉鎖されるように形成することができる。
かかる開口部16の形状は適宜可変であって、本実施形態においては、内壁14の先端側に切欠き状に形成されており、内壁14と窓板30の表面との当接により排水流路50と連通する開口が形成されている。しかしながら、開口部16は、かかる形態(切欠き)の他に、内壁14の壁面に円形状等にくり貫かれた貫通孔として設けられていても良い。
【0025】
図2に示すように、ピラーガーニッシュ10は、上記の頭部11および脚部12以外の構成要素として、リップ部18およびリブ19を備えることができる。リップ部18は、頭部11の裏面側からピラー20に向けて突出するよう形成され、ピラーガーニッシュ10は、このリップ部18の先端部においてピラー20の表面に当接している。リブ19は、頭部11の裏面側に形成され、ピラーガーニッシュ10を補強するよう構成されている。また、ピラーガーニッシュ10の主体である頭部11は、長手方向に沿って中空部11Aを有し、中空構造とされていてもよい。リップ部18及びリブ19は、頭部11と一体的に成形されている。本実施形態に係るリップ部18及びリブ19は、長手方向の一部において、長手方向に沿って設けられている。
【0026】
ピラーガーニッシュ10は、ピラー20に窓板30が装着された後、かかるピラー20と窓板30との間に形成される所定の隙間を覆うようにピラー20に固定されている。かかる固定機構については具体的に図示しないが、例えば、公知の係止構造等を利用することで係止することができる。例えば、ピラーガーニッシュ10のリブ19は、長手方向に沿って所定の間隔で図示しない係合孔を備えている。ピラー20は、図示しない接着剤等を介して窓板30が固定されていると共に、リブ19の係合孔に対応する所定の間隔で、クリップ等の図示しない係合部材を備えている。ピラーガーニッシュ10の取り付けに際しては、ピラー20と、ピラー20に固定された窓板30との隙間を覆うようにピラーガーニッシュ10を押し込む。この時、リブ19の係合孔と、ピラー20の係合部材とが係合することで、ピラーガーニッシュ10をピラー20に機械的に係止することができる。
【0027】
ピラーガーニッシュ10は、窓板30の側端部30aに沿って取り付けられたとき、窓板30の側端部30aの下方から下端部30bの一部に沿うように、窓板30の内周側に延設された部分(以下、当該部分を下端部材40という。)を有していてもよい。そして、図4で示されるように、窓板30の側端部30aに沿って長手方向に形成された脚部12は、窓板30の下端部30bよりも下方にまで形成されている。このとき、凹部13の下端は、窓板30の下端部30bよりも下方に位置するように形成されている。
【0028】
以上のピラーガーニッシュ10の頭部11およびリブ19は、脚部12、リップ部18および下端部材40よりも硬質なポリマー材料により好適に形成することができる。かかるポリマー材料としては、具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂等のポリマー材料が挙げられる。
【0029】
また、脚部12、リップ部18および下端部材40は、ピラーガーニッシュ10とピラー20および窓板30との弾性的な当接が求められる部位であり得ることから、上記の頭部11およびリブ19を構成するポリマー材料よりも相対的に軟質なポリマー材料により形成することが好ましい。かかるポリマー材料としては、具体的には、オレフィン系、スチレン系、エステル系、ポリアミド系、塩化ビニル系、ウレタン系等の各種の熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーや、天然ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン(EPDM)ゴム等の各種ゴムが挙げられる。
なお、これらの部位間(頭部11およびリブ19と、脚部12、リップ部18あるいは下端部材40との間)の接合を強固にするために、これらの部位は互いに相溶性を有する材料から形成されていることが好ましい。例えば、頭部11およびリブ19をAES樹脂等のポリマー材料により形成した場合には、脚部12およびリップ部18をスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等のポリマー材料により形成することが好ましい。
【0030】
以上の材料は、いずれも熱を加えると軟化して流動性を示し得ることから、ピラーガーニッシュ10は、公知の各種の成形方法を利用して、任意の形状に簡便に作製することができる。例えば、上記の材料の違いから、ピラーガーニッシュ10は、(1)頭部11およびリブ19と、(2)脚部12やリップ部18等とを、段階的に一体成形したり、或いは、別個に作製して一体に接合したりすることで作製することができる。
(1)頭部11およびリブ19を形成するには、これに限定されるものではないが、例えば、ガスアシスト射出成形法を利用するのが好ましい。すなわち、まず、頭部11およびリブ19に対応した横断面形状を有する射出成形用金型を用意する。そして、かかる金型内にポリマー材料(例えば、AES樹脂)を射出し充填するとともに、ガス(例えば、窒素ガス)を注入することで、所望の断面形状を有し、かつ、長尺な頭部11およびリブ19の一体成形品を、中間品として得ることができる。このとき、ガスの導入により、頭部11は、中空部(ガスチャンネル)11Aを有する略筒形に形成することができる。
【0031】
(2)脚部12およびリップ部18等を形成するには、これに限定されるものではないが、例えば、射出成形法を利用するのが好ましい。すなわち、先ず、脚部12およびリップ部18等のそれぞれの部位に対応した形状を有する射出成形用金型を用意する。そして、かかる金型に、予め作製した中間品(頭部11およびリブ19)をセットする。次いで、中間品がセットされた金型内にポリマー材料(例えば、TPO樹脂)を射出し充填することで、頭部11およびリブ19に対して所望の断面形状を有する脚部12およびリップ部18等を形成すると同時に溶着一体化させることができる。これにより、ピラーガーニッシュ10を作製することができる。
【0032】
なお、脚部12およびリップ部18等は、これらの部位を個々に射出成形法を利用する等して作製しておき、予め作製した中間品(頭部11およびリブ19)に接着剤等を介して接合することで一体化させても良い。
また、脚部12およびリップ部18等は、一部を中間品に射出成形により溶着一体化させ、他の一部を別個に形成して接着剤等を介して接合一体化させても良い。例えば、下端部材40を有するピラーガーニッシュ10を作製する場合、予め、中間品(頭部11およびリブ19)と、下端部材40とを別部材として用意しておき、かかる中間品に脚部12およびリップ部18を射出成形により溶着一体化し、中間品に下端部材40を接着剤により接合する等してもよい。
【0033】
次に、図1及び図4を参照して、本実施形態に係るピラーガーニッシュ10の機能とピラーガーニッシュ10の取り付け構造における作用、効果について詳細に説明する。
【0034】
ここに開示されるピラーガーニッシュ10の取り付け構造においては、ピラー20と窓板30との間に生じる隙間を車両の外方から覆うように、ピラーガーニッシュ10が装着されている。したがって、かかる隙間が露出されず、外観を良好に保つことができる。また、ピラーガーニッシュ10の脚部12は窓板30の表面に当接している。これにより、窓板30に受けた雨水等がピラー20と窓板30との隙間に浸入することを防止できる。
さらに、ピラーガーニッシュ10と窓板30との間には、窓板30の側端部30aに沿って上下方向に溝部17が形成されている(図2参照)。この溝部17によって、窓板30の表面において、図示しないワイパーブレードにより側方に集められた雨水等を受けるとともに、かかる雨水を窓板30の下方に流すことで、雨水が車体の側面へ流れることを抑制できる。
【0035】
そして、ここに開示されるピラーガーニッシュ10の取り付け構造においては、溝部17に集められた雨水が溝部17内を下方に向かって流下してゆくときに開口部16に到達する。すると、かかる雨水は、図4の矢印で示されるように、開口部16を通じて排水流路50に流入する。排水流路50は、凹部13と窓板30の表面とで四方を囲まれているため、排水流路50に導入された雨水は、周りに飛散することがない。
また、外壁15は窓板30の側縁30cよりも窓板30の内周側で窓板30の表面に当接している(図5参照)。したがって、かかるピラーガーニッシュ10を車両の外方、とりわけ窓板30の内周側から見た場合に、開口部16を通じて窓板30の側縁30cが見えることを防止できる。これにより、外観の良好なピラーガーニッシュ10の取り付け構造を実現することができる。
【0036】
なお、窓板30の側端部30aに集まる雨水は、溝部17に沿って窓板30の角部31に好適に集められ得る(図1参照)。したがって、開口部16を窓板30の側端部30aから下端部30bに至る角部31に対応する位置に設けることで、かかる雨水等を排水流路50に効率的に導入することができ、更に効果的に排水することができる。
また、凹部13の下端は、窓板30の下端部30bよりも下方に位置するように構成されている(図4参照)。したがって、排水流路50に導入された雨水は、排水流路50を通過した後も、かかる凹部13を伝って窓板30の下端部30bよりも下方において排出される。これにより、窓板30で受けた雨水を、排水流路50を通じて車体の内部に導入したのち、窓板30の側端部30aの下方で車両の下側に向けて排出することが可能とされる。換言すると、雨水が窓板30の下縁30dを伝って車体内部の幅方向中央付近に侵入することを防止して、車両の下側に向けて雨水等を排出することができる。
【0037】
なお、窓板30の角部31に対応する位置よりも上方に開口部16が形成されている形態では、車両の走行時に窓板30の溝部17を上方に流れる雨水等を、かかる開口部16を通じて好適に排水流路50に導入することができる。また、複数の開口部16が形成されている形態では、窓板30の側端部30aの上方や下方に流れる水を、速やかに排水流路50に導入することができる。さらに、排水流路50の上方が閉鎖されている形態では、排水流路50を流れる水が上方に流れ出すことを防止できる。このような開口部16の設置形態により、窓板30で受けた雨水等を、より一層効率的に車体の下側に向けて排水することができる。
【0038】
以上、本発明の具体例を図面を参照しつつ詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述の例では、車両のフロントウィンドウの右側に装着される右側装着用および左側に装着される左側装着用のフロントピラーガーニッシュに夫々凹部等が設けられているが、右側装着用と左側装着用のいずれか一方のフロントピラーガーニッシュに凹部が設けられていても良い。
【0039】
なお、他の実施形態にかかるピラーガーニッシュの取り付け構造においては、窓板30の左右の側端部30aにそれぞれピラーガーニッシュを取り付けることができる。かかる形態では、窓板30の左側の側端部30aに取り付けられるピラーガーニッシュ10Lの開口部16と、右側の側端部30aに取り付けられるピラーガーニッシュ10Rの開口部16とは、数や上下方向における位置を異ならせることができる。すなわち、車両のフロントウィンドウに設置されるワイパーは、図1の点線Wで示したように、窓板30の表面に沿って左右方向に摺動することで雨水を窓板30の左右の側端部に拭って集める。しかしながら、集められる雨水は、窓板の右の側端部と左の側端部とでは、量や上下方向での位置が異なる。したがって、これらのピラーガーニッシュ10L,10Rは、窓板30に取り付けられたときに開口部16の数や上下方向での位置を、それぞれ窓板30の右の側端部および左の側端部で集められる雨水の量や位置に対応するよう調整することができる。これにより、さらに効率的に、雨水を排水流路50に導入することができて好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 窓開口
2 車体パネル
3 ルーフパネル
4 カウルルーバー
10,10L,10R ピラーガーニッシュ
11 頭部
11A 中空部
12 脚部
13 凹部
14 内壁
15 外壁
16 開口部
17 溝部
18 リップ部
19 リブ
20 ピラー
30 窓板
30a 側端部
30b 下端部
30c 側縁
31 角部
40 下端部材
50 排水流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6