(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の美爪料は、光輝剤及び平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子を含むものである。光輝剤のみを含む美爪料は、高い光沢性を有するが、ギラギラした光輝性を示さない。一方、光輝剤及び平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子を含む美爪料は、光沢性、及びギラギラした光輝性を示す。しかしながら、光輝剤及び平均粒子径20μm以下の球状粒子を含む美爪料は、一定のギラギラした光輝性を示すが、光沢性が低下する。すなわち、本発明に美爪料は、光輝剤及び平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子を含むことによって、光沢性を示しながら、且つギラギラした光輝性を呈することができるものである。
本発明の美爪料としては、具体的にはネイルエナメル、ネイルエナメルベースコート、又はネイルエナメルオーバーコートを挙げることができる。
【0009】
《光輝剤》
本発明の美爪料に用いることのできる光輝剤は、美爪料に通常使用される光輝剤を、限定することなく用いることができる。光輝剤としては、パール剤又はラメ剤を挙げることができる。
具体的なパール剤としては、限定されるものではないが、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、シリカ被覆アルミニウム、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、シリカ被覆鉄を挙げることができる。
具体的なラメ剤としては、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、エポキシ樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、ウレタン樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂被覆アルミニウム末を挙げることができる。
本発明の美爪料においては、前記光輝剤を1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0010】
光輝剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは30〜1000μmであり、より好ましくは35〜500μmであり、更に好ましくは40〜300μmである。40〜300μmであることによって、平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子と組み合わせた場合、光沢性及びギラギラした光輝性を呈することができる。また、光輝剤の平均粒子径は、使用する球状粒子と同等、又はそれより大きいものが好ましい。
また、美爪料に対する光輝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、美爪料の全体重量に対して、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好まししくは1〜15重量%であり、更に好ましくは2〜10重量%である。0.5重量%未満の場合、十分な光輝性が得られない場合があり、20重量%を超えると塗布しにくい上に球状粒子が埋もれてしまうことがある。
【0011】
《球状粒子》
本発明の美爪料に用いることのできる球状粒子は、平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子である限りにおいて限定されるものではない。球状粒子の材料も限定されるものではないが、無機粒子又は有機粒子を挙げることができる。無機粒子としてしては、シリカ、タルク、セラミック、粘土鉱物、亜鉛華、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、ゼオライト、リン酸カルシウム、又はガラス粉末を挙げることができる。また、有機粒子としては、ナイロン、メタクリル酸メチルクロスポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化粉末、アクリルコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、又はウレタンゴムを挙げることができる。本発明の美爪料においては、これらの無機粒子及び有機粒子を、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0012】
前記球状粒子の平均粒子径は30μm〜150μmであるが、下限は好ましくは35μmであり、より好ましくは40μmであり、更に好ましくは45μmである。上限は好ましくは140μmであり、より好ましくは130μmであり、更に好ましくは120μmである。
本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により、球状粒子の粒子径分布を測定し、累積粒度分布の粒子径の小さいものから累積50%の粒径を平均粒子径(Dv
50)とするものである。
【0013】
本発明の美爪料に含まれる光輝剤と球状粒子との重量比は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは1:10〜5:1であり、より好ましくは1:5〜3:1であり、更に好ましくは1:3〜2:1である。1:10〜5:1の範囲であることにより、効果的に光沢性及びギラギラした光輝性の両方を示すことができる。特に、アルミニウム末及びポリエチレン(55μm)を、1:5、1:3及び3:1の重量比で混合して得られた美爪料は、本発明の効果であるギラギラした光輝性を示した。
【0014】
本発明の美爪料は、限定されるものではないが、有機溶剤系美爪料、又は水系美爪料を含む。
【0015】
《有機溶剤系美爪料》
有機溶剤系美爪料は、前記光輝剤及び球状粒子に加えて、被膜形成剤及び有機溶剤を含み、必要に応じて可塑剤、色材、又は沈降防止剤などを含むことができる。
(被膜形成剤)
被膜形成剤としては、通常美爪料に用いられる被膜形成剤を限定することなく使用することができるが、例えばニトロセルロース、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、シリコーン樹脂、ショ糖安息香酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸セルロースエステル、又はブチラール樹脂等を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。市販されている被膜形成剤としては、例えば、ニトロセルロースRS1/2、ニトロセルロースRS1/4、ニトロセルロースRS1/8、ニトロセルロースRS1/16、ニトロセルロースRS7(以上はKOREA CNC Ltd.、TNC Chemicals Philippines Inc.などの商品名)を挙げることができる。
美爪料における被膜形成剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜35重量%であり、より好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では乾燥速度の低下、経時でのつや低下等を生じるおそれがあり、一方、30重量%を超えると粘度が高くなり、塗布しにくくなるおそれがある。
【0016】
(有機溶剤)
通常美爪料に用いられる有機溶剤は限定することなく使用することができるが、例えば、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、又は芳香族系有機溶剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。エステル系有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、又は酢酸イソプロピルを挙げることができる。また、アルコール系有機溶剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、又はプロピルアルコールを挙げることができる。芳香族系有機溶剤としては、トルエン、又はキシレンを挙げることができるが、酢酸ブチル、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチルアルコール等の非芳香族系の有機溶剤が健康上の観点から好ましい。
美爪料における有機溶剤の含有量は、目的の効果を得るための被膜形成剤又は色材などの含有量に従って、適宜変更することができるが、美爪料の全体の重量に対して、25〜85重量%程度で用いることができる。
【0017】
(可塑剤)
本発明において、美爪料に柔軟性を付与するために、可塑剤を添加することができる。本発明の美爪料に用いる可塑剤としては、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル)、カンフル、フタル酸エステル、又は多価アルコール(例えば1,3−ブタンジオール)を挙げることができる。
美爪料における可塑剤の含有量は、目的に応じて適宜決定することができるが、美爪料の全体の重量に対して、1〜10重量%程度で用いることができる。
【0018】
(色材)
本発明に用いることのできる色材としては、通常美爪料に用いられる色材、例えば有機顔料、無機顔料又は染料を限定することなく使用することができる。
有機顔料としては、例えば赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号及び青色404号や、更に赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号又は青色1号を挙げることができるが、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの有機顔料のジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、又はアルミニウムレーキを用いることもできる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青又はコンジョウを挙げることができるが、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
美爪料における色材の含有量は、目的とする効果に応じて適宜決定することができるが、美爪料の全体の重量に対して、0〜5重量%程度が好ましい。
【0019】
(沈降防止剤)
本発明の美爪料は、沈降防止剤を含むことができる。沈降防止剤としては、有機変性粘土鉱物、合成粘土、又は無機微粒子粉体を挙げることができる。有機変性粘土鉱物としては、例えばヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、又はバイデライト等の天然スメクタイト系粘土を有機変性したものを挙げることができる。合成粘土は、天然スメクタイト系粘土などの物性に類似したものである。また、無機微粒子粉体としては、2次凝集に依って液体に擬塑性及び構造粘性を与える微粒子シリカ、超微粒子酸化アルミニウム、又は超微粒子酸化チタン等を挙げることができる。
美爪料における沈降防止剤の含有量は、適宜決定することができるが、美爪料の全体の重量に対して、0.01〜10重量%程度で用いることができる。
【0020】
本発明の有機溶剤系美爪料においては、必要に応じて、前記以外の樹脂、香料、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等の一般に有機溶剤系美爪料に配合される原料を配合することができる。本発明の有機溶剤系美爪料は常法により製造することができる。
【0021】
《水系美爪料》
水系美爪料は、前記光輝剤及び球状粒子に加えて、皮膜形成剤として水性ポリマーエマルジョン、及び溶媒として水を含むものである。
皮膜形成剤である水性ポリマーエマルジョンとしては、アクリル系ポリマーエマルジョン、又はウレタン系ポリマーエマルションを挙げることができる。
水系美爪料における水性ポリマーエマルジョンの含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは95〜30重量%であり、より好ましくは90〜50重量%である。20重量%未満では塗膜が薄く、化粧効果が得られないことがある。
【0022】
本発明の水系美爪料は、一般に使用されている成分、例えば油分、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤(沈降防止剤)、染料、顔料、香料、防腐剤、アクリル系樹脂やナイロン系樹脂等の樹脂粉末等を適宜配合することができる。増粘剤(沈降防止剤)としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機系増粘剤や、無機系のベントナイ卜等の水膨潤性粘土鉱物、ベーマイト等の含水酸化物、珪酸アルミニウムマグネシウム等の珪酸塩、無水珪酸等が使用できる。本発明の水系美爪料は常法により製造することができる。
【0023】
《作用》
本発明の美爪料を爪に塗布した場合に、光沢性及びギラギラした光輝性を示す機構は、詳細には解明されていないが、以下のように考えることができる。しかしながら、本発明は、以下の説明によって限定されるものではない。
光輝剤及び平均粒子径40μm〜150μmの球状粒子を含む美爪料を、爪に塗布した場合、扁平状の光輝剤と球状粒子とが混合されて塗布される。この場合、
図2(A)に示すように、球状粒子によって扁平状の光輝剤がランダムの向きに塗布されると考えられる。このように、光輝剤がランダムの向きに配置されることによって光が多方向に反射し散乱するため、ギラギラした光輝性が得られるものと考えられる。一方、光輝剤のみを含む美爪料(比較例4)は、高い光沢性を有するが、ギラギラした光輝性を示さない。これは光輝剤が、
図2(B)に示すように、平坦に配置されているためであると考えられる。また、光輝剤及び平均粒子径8μm又は20μmの球状粒子を含む美爪料(比較例1及び2)は、一定のギラギラした光輝性を示すが、光沢性が低下する。これは、平均粒子径8μm又は20μmの球状粒子がマット材のような作用をして、光沢性を減少させるためであると考えられる。
従って、光輝剤及び平均粒子径30μm〜150μmの球状粒子を含むことによって、美爪料は高い光沢性を示しながら、且つギラギラした光輝性を呈することができると考えられる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
《実施例1》
本実施例では、平均粒子径55μmの球状粒子を用いて、美爪料を作製した。
ネイルカラーは、表1に示した組成で配合し、アルミニウム末(粒径20〜95μm、エッカート社)3重量%、平均粒子径55μmのポリエチレン(日興リカ株式会社)3重量%を撹拌混合して、美爪料1を得た。美爪料1の組成を表1に示す。
【0026】
《実施例2》
本実施例では、平均粒子径100μmの球状粒子を用いて美爪料を作製した。平均粒子径55μmのポリエチレンに代えて、平均粒子径100μmのポリエチレンを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、美爪料2を得た。美爪料2の組成を表1に示す。
【0027】
《比較例1》
本比較例では、平均粒子径8μmの球状粒子を用いて美爪料を作製した。平均粒子径55μmのポリエチレンに代えて、平均粒子径8μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー(アイカ工業株式会社)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、比較美爪料1を得た。比較美爪料1の組成を表1に示す。
【0028】
《比較例2》
本比較例では、平均粒子径20μmの球状粒子を用いて美爪料を作製した。平均粒子径55μmのポリエチレンに代えて、平均粒子径20μmのメタクリル酸メチルクロスポリマー(松本油脂製薬株式会社)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、比較美爪料2を得た。比較美爪料2の組成を表1に示す。
【0029】
《比較例3》
本比較例では、平均粒子径200μmの球状粒子を用いて美爪料を作製した。平均粒子径55μmのポリエチレンに代えて、平均粒子径200μmのポリエチレン(日興リカ株式会社)を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、比較美爪料3を得た。比較美爪料1の組成を表1に示す。
【0030】
《比較例4》
本比較例では、球状粒子を用いずに美爪料を作製した。球状粒子を用いないことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、比較美爪料4を得た。比較美爪料4の組成を表1に示す。
【0031】
《光沢値の測定》
実施例1〜2で得られた美爪料1〜2、及び比較例1〜4で得られた比較美爪料1〜4を用いて、光沢値を測定した。各サンプルを、アプリケーターを用いて、120μmの厚さでガラス板に塗布し、室温にて8時間乾燥させて塗膜を作製した。なお、平均粒子径の大きい実施例2のサンプルは塗膜の厚さを200μmとし、そして比較例3のサンプルは塗膜の厚さを250μmとした。乾燥後に、ガラス板をカラーマッチングパネルの白地の上に設置し、光沢計(グロスチェッカーIG−330、堀場製作所製)を用いて、60℃の入射角で光沢値を測定した。測定は5回行い、最高値及び最低値を除いた3回の測定値の平均を光沢値とした。結果を表1に示す。
比較例1及び2の平均粒子径8μm及び20μmの球状粒子を用いた美爪料は、11.0及び12.0の低い光沢値であったが、実施例1及び2の平均粒子径55μm及び100μmの球状粒子を用いた美爪料は、それぞれ47.3及び33.3の光沢値を示した。
【0032】
《光輝感(官能試験)》
光輝感については、被験者10名の官能試験で評価した。実施例1〜2で得られた美爪料1〜2、及び比較例1〜4で得られた比較美爪料1〜4をつけ爪に塗布し、光輝感の試験を行った。「ぎらぎらした光輝感」について、下記評価基準により判定した。
「ぎらぎらした光輝感」
◎:8〜10名が、ぎらぎらした光輝感があるという評価を行った。
○:5〜7名が、ぎらぎらした光輝感があるという評価を行った。
△:2〜4名が、ぎらぎらした光輝感があるという評価を行った。
×:0〜1名が、ぎらぎらした光輝感があるという評価を行った。
官能試験の結果を表1に、実施例1及び比較例4の写真を
図1に示す。
【0033】
実施例1及び2の美爪料は、ぎらぎらした光輝感があるとした被験者が多かったが、球状粒子が小さい場合及び大きい場合は、ぎらぎらした光輝感があるとした被験者は減少した。また、球状粒子を添加しない場合は、ぎらぎらした光輝感があるとした被験者は非常に少なかった。
【0034】
【表1】