(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジョイント部材は、前記アウターチューブの前記開口端部に埋設されるインサート部を一端側に有し、前記結合部材が結合される結合部を他端側に有する筒状部材であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
前記ジョイント部材は、前記結合部材が結合される結合部が内周面に設けられる円環状または円弧状の部材であり、外周面側が前記アウターチューブの前記開口端部に埋設されることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
前記ジョイント部材は、前記アウターチューブの前記開口端部に埋設された状態において、軸方向または径方向外側に突出する突起部を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の緩衝器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、樹脂製部材の強度は、金属製部材の強度よりも低い。このため、樹脂製の外筒の管端に設けられた加締め部によって内筒等が外筒内に保持される場合、金属製の外筒を用いた場合と同等の強度を確保するには、加締め部周辺の肉厚を増加させる必要がある。しかし、肉厚を増加させると、外筒を樹脂製としたことによる軽量化の効果が低減してしまうとともに、外筒の外径が大きくなり他の部品との干渉を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、複筒式緩衝器の外筒を樹脂製とした場合であっても、外筒の肉厚を増加することなく、外筒内に内筒等を保持可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、インナーケースを覆って配設され、樹脂により形成され一端が閉塞部により閉塞される有底円筒状のアウターチューブと、アウターチューブの開口端部にインサート成形により埋設されるジョイント部材と、ジョイント部材に結合される結合部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、樹脂製のアウターチューブに埋設されるジョイント部材に結合部材が結合されることにより、結合部材がインナーケースに軸力を付与する。
【0008】
第2の発明は、ジョイント部材が、アウターチューブの開口端部に埋設されるインサート部を一端側に有し、結合部材が結合される結合部を他端側に有する筒状部材であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、インナーケースに軸力を付与する結合部材が、アウターチューブの開口端部に埋設される筒状のジョイント部材に結合される。このように、アウターチューブに埋設される筒状のジョイント部材に結合部材を結合するという簡素な構成によりインナーケースに作用する軸力を発生させることができる。
【0010】
第3の発明は、インサート部が、インサート成形時に溶融樹脂が流入される係止孔を有することを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、インサート成形時に溶融樹脂がインサート部に形成される係止孔に流入する。係止孔に流入した樹脂によりジョイント部材がアウターチューブから外れることが抑制され、ジョイント部材とアウターチューブとの結合力を向上することができる。
【0012】
第4の発明は、ジョイント部材の結合部の外周面と結合部材の内周面との間には第1シール部材が設けられ、ジョイント部材のインサート部が埋設されるアウターチューブの外周面と結合部材の内周面との間には第2シール部材が設けられることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1シール部材によって、ジョイント部材の結合部と結合部材との間の隙間が封止され、第2シール部材によって、アウターチューブと結合部材との間の隙間が封止される。このため、第1シール部材と第2シール部材とによって、ジョイント部材と樹脂製のアウターチューブとの境目を通じて漏れるリザーバ内のガスが、外部に放出されることを防止することができる。
【0014】
第5の発明は、結合部材が、アウターチューブの開口端部に埋設されるジョイント部材の内周面に結合されることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、インナーケースに軸力を付与する結合部材が、アウターチューブの開口端部に埋設されるジョイント部材の内周面に結合される。このように、アウターチューブに埋設されるジョイント部材に結合部材を結合するという簡素な構成によりインナーケースに作用する軸力を発生させることができる。
【0016】
第6の発明は、結合部材が、ジョイント部材の内周面に形成される凹部内に嵌め込まれることを特徴とする。
【0017】
第6の発明では、インナーケースに軸力を付与する結合部材が、ジョイント部材の内周面に形成される凹部に嵌め込まれる。このように、アウターチューブに埋設されるジョイント部材の内周面に結合部材を嵌め込むだけでインナーケースに作用する軸力を発生させることができる。
【0018】
第7の発明は、ジョイント部材と結合部材とが螺合により結合されることを特徴とする。
【0019】
第7の発明では、ジョイント部材と結合部材との結合がねじ結合である。このため、緩衝器の組み立てと分解を容易に行うことができる。
【0020】
第8の発明は、ジョイント部材は、アウターチューブの開口端部の内周側に埋設されることを特徴とする。
【0021】
第8の発明では、ジョイント部材がアウターチューブの内周側に配置された状態でインサート成形される。このため、インサート成形後にヒケが生じたとしても、ジョイント部材とアウターチューブとの間にヒケに起因する隙間等が形成されにくい。この結果、ジョイント部材とアウターチューブとの結合力を確保することができる。
【0022】
第9の発明は、ジョイント部材が、開口端部に埋設された状態において、軸方向または径方向外側に突出する突起部を有することを特徴とする。
【0023】
第9の発明では、インサート成形後、突起部が、アウターチューブを形成する樹脂内に食い込んだ状態となる。この結果、ジョイント部材に周方向及び軸方向に力が作用してもジョイント部材がアウターチューブから脱落することを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アウターケースが樹脂製である複筒式緩衝器において、アウターケースの肉厚を増加することなく、アウターケース内にインナーケース等を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る緩衝器100について説明する。
図1に示される緩衝器100は、自動車等の車両のストラット式サスペンションに用いられる複筒式緩衝器である。
【0028】
緩衝器100は、
図1に示すように、作動液としての作動油が充填されるインナーケース1と、インナーケース1を覆って配設され、インナーケース1との間に作動油を貯留するリザーバ130を形成するアウターケース2と、アウターケース2に結合される結合部材としてのキャップ部材24と、インナーケース1内に摺動自在に挿入され、インナーケース1内を伸側室110と圧側室120とに区画するピストン3と、インナーケース1に進退自在に挿入され、一端がピストン3と連結されるピストンロッド4と、を備える。緩衝器100は、ピストンロッド4の他端が図示しないアッパーマウントを介して車体に連結されるとともに、アウターケース2に形成されるブラケット2dを介して車輪を支持する図示しないナックル等の支持部材に結合される。
【0029】
インナーケース1は、筒状のインナーチューブ6と、インナーチューブ6の伸側室110側の端部に摺動自在に挿入され、ピストンロッド4を摺動自在に支持するロッドガイド7と、インナーチューブ6の圧側室120側の端部に嵌合するベースバルブ8と、を有する。インナーケース1を構成するこれらの部材は、鉄鋼材料やアルミ合金によって形成される。
【0030】
ロッドガイド7は、インナーチューブ6内に摺動自在に挿入される小径部7aと、小径部7aよりも径が大きい大径部7bと、軸方向に貫通して形成され、ピストンロッド4が挿通するロッド挿通孔7cと、を有する。インナーチューブ6の内周面と摺接する小径部7aの外周面には、シール部材10が設けられる。インナーチューブ6に対してロッドガイド7が摺動しても、シール部材10があることによってインナーチューブ6とロッドガイド7との間の隙間は封止される。このため、伸側室110からリザーバ130への作動油の流出は防止される。また、ロッド挿通孔7c内には、ブッシュ9が挿入される。ロッド挿通孔7cを挿通するピストンロッド4はブッシュ9を介してロッドガイド7に摺動自在に支持される。
【0031】
ベースバルブ8は、圧側室120とリザーバ130とを連通する通路8a、8bを有する。通路8aには、緩衝器100の伸長時に開弁して通路8aを開放するチェック弁16が設けられる。通路8bには、緩衝器100の収縮時に開弁して通路8bを開放するとともに、通路8bを通過して圧側室120からリザーバ130に移動する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁17が設けられる。
【0032】
インナーケース1に摺動自在に挿入されるピストン3は、伸側室110と圧側室120とを連通する通路3a、3bを有する。通路3aには、緩衝器100の伸長時に開弁して通路3aを開放するとともに、通路3aを通過して伸側室110から圧側室120に移動する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁18が設けられる。通路3bには、緩衝器100の収縮時に開弁して通路3bを開放するチェック弁19が設けられる。
【0033】
アウターケース2は、
図1及び
図2に示すように、インナーチューブ6と同軸に形成されるアウターチューブ2aと、アウターチューブ2aの開口端部2bにインサート成形により一端が埋設されるジョイント部材20と、アウターチューブ2aの圧側室120側の端部を閉塞する閉塞部2cと、アウターチューブ2aの外周から軸方向に沿って延出し、相対向する一対のブラケット2dと、アウターチューブ2aの外周に略円環状に形成される懸架ばね受部2fと、を有する。ジョイント部材20は、鉄鋼材料やアルミ合金によって形成され、樹脂で形成されるアウターチューブ2a,閉塞部2c,ブラケット2d,及び懸架ばね受部2fとともにインサート成形によって一体的に成形される。アウターチューブ2a等を形成する合成樹脂としては、強度と剛性を向上させるためにカーボン繊維を含有するものを用いることが好ましい。
【0034】
一対のブラケット2dの間には、車輪を支持するナックル等の支持部材が挿通され、ブラケット2dに形成されるボルト穴2eに挿通される図示しないボルトによって結合される。
【0035】
ブラケット2dと同様にアウターケース2の外周に形成される懸架ばね受部2fは、図示しない懸架ばねの一端を支持する。なお、アウターケース2、ブラケット2d、及び懸架ばね受部2fのそれぞれの間には補強のためにリブを設けることが好ましい。
【0036】
ジョイント部材20は、
図3に示されるように、外周面に雄ねじ部20cが形成される結合部20aを一端側に有し、アウターチューブ2aの開口端部2bに埋設されるインサート部20bを他端側に有する筒状部材である。また、結合部20aのインサート部20b寄りの部分には、外周面にねじ加工が施されていないシール部20eが設けられる。
【0037】
インサート部20bの外径は、結合部20aよりも小径に形成されており、インサート部20bと結合部20aとの間には段部20fが形成される。また、インサート部20bには、径方向に貫通する係止孔20dが周方向に間隔をあけて複数設けられる。
図3において、係止孔20dは8個設けられる。係止孔20dの数はこれに限定されず、任意の数に設定される。また、係止孔20dの形状は、矩形状や三角形であってもよく、インサート成形時に溶融樹脂が流入可能な形状であればどのような形状でもよい。
【0038】
インサート成形時に、溶融した樹脂は、外周側からインサート部20bを包み込みながら段部20fに至るとともに各係止孔20d内に流入する。
図2に示されるアウターチューブ2aの開口端部2bはこのようにして形成される。開口端部2bの内径はインサート部20bの内径と同程度とされ、開口端部2bの外径は結合部20aの外径と同程度とされる。なお、アウターチューブ2aとジョイント部材20との結合強度を向上させるために、開口端部2bの内径をインサート部20bの内径よりも小さくし、開口端部2bの外径を結合部20aの外径よりも大きくしてもよい。
【0039】
一般的に、射出成形により形成される樹脂部材は、成形後に収縮するヒケが発生し、特に樹脂部材が円筒形状である場合には、径方向内側に向けて収縮する。このため、インサート部20bがアウターチューブ2aの外周側に配置されるようにインサート成形を行った場合、内周側から係止孔20dに流入した樹脂は、成形後に径方向内側に収縮するので、係止孔20d内に留まる樹脂が少なくなってしまう。このように、係止孔20dを埋める樹脂が減少するとアウターチューブ2aがジョイント部材20を保持する力が低下し、ジョイント部材20がアウターチューブ2aから外れるおそれがある。
【0040】
一方、本第1実施形態に係る緩衝器100では、係止孔20dが形成されるインサート部20bがアウターチューブ2aの内周側に配置されるようにインサート成形が行われる。このため、ヒケが発生したとしても、インサート部20bをアウターチューブ2aの外周側に配置した場合と比較し、係止孔20d内に留まる樹脂が多くなる。この結果、ジョイント部材20とアウターチューブ2aとの結合力を確保することができる。なお、ジョイント部材20とアウターチューブ2aとの結合力を向上させるために、インサート部20bに、係止孔20dに加えて、径方向外側または軸方向に突出する突起等を設けてもよい。この場合、突起等がアウターチューブ2aを形成する樹脂内に食い込んだ状態となる。
【0041】
キャップ部材24は、ジョイント部材20の外周側を覆う円筒部24cと、円筒部24cの端部から径方向内側に向けて延出し、ピストンロッド4が挿通する挿通孔24bが中央に形成される円環状の延出部24aと、を有する。キャップ部材24は、鉄鋼材料やアルミ合金によって形成される。円筒部24cの内周面には、雌ねじ部24dが形成されており、キャップ部材24は、この雌ねじ部24dを介してジョイント部材20の雄ねじ部20cにねじ込まれる。
【0042】
延出部24aは、
図2に示されるように、挿通孔24bが設けられる自由端がアウターチューブ2aの内周面2gよりも径方向内側に配置されるように形成される。このため、キャップ部材24は、アウターケース2に結合されることにより、延出部24aを介してインナーケース1に作用する軸力を発生させる。つまり、アウターケース2内に配置されるインナーケース1は、キャップ部材24の延出部24aとアウターケース2の閉塞部2cとの間に生じる軸力によってアウターケース2内に保持される。キャップ部材24とジョイント部材20との結合は、上述のようなねじ結合であってもよいし、嵌合結合であってもよい。キャップ部材24とジョイント部材20との結合がねじ結合である場合は、緩衝器100の組み立てと分解が容易となる。また、延出部24aの形状は、円環状に限定されず、円筒部24cから径方向内側に向けて延出し、その自由端がアウターチューブ2aの内周面2gよりも径方向内側に配置されていればどのような形状であってもよい。
【0043】
円筒部24cの内周面には、さらに、第1シール部材29を収容する第1環状溝24eと、第2シール部材30を収容する第2環状溝24fと、が形成される。キャップ部材24がジョイント部材20にねじ込まれた状態において、第1シール部材29は、ジョイント部材20のシール部20eの外周面に接触するように配置される。一方、第2シール部材30は、インサート部20bが埋設されるアウターチューブ2aの開口端部2bの外周面に接触するように配置される。このように第1シール部材29と第2シール部材30とが配置されることによって、金属製部材であるジョイント部材20と樹脂製部材であるアウターチューブ2aとの境目を通じて漏れ出るリザーバ130内のガスが、外部に放出されることが防止される。
【0044】
インナーケース1のロッドガイド7とアウターケース2との間には、オイルシール11が設けられる。オイルシール11は、円環状のシール本体11aと、シール本体11aの内周側に取り付けられ、ピストンロッド4の外周に摺接する内周シール部11bと、シール本体11aの外周側に取り付けられ、アウターケース2の内周及びロッドガイド7の上面に接触する外周シール11cと、を有する。
【0045】
オイルシール11は、インナーケース1とともにアウターケース2内に収容され、この状態で、キャップ部材24がジョイント部材20にねじ込まれることにより、アウターケース2内に固定される。具体的には、シール本体11aがキャップ部材24の延出部24aとロッドガイド7の大径部7bとの間に挟持されることによって、オイルシール11は保持される。そして、内周シール部11bによって、ピストンロッド4とインナーケース1との間から作動油が外部へ漏れることが防止され、外周シール11cによって、インナーケース1とアウターケース2との間から作動油が外部へ漏れることが防止される。シール本体11aとキャップ部材24とは直接接触する構成としてもよいし、
図1及び
図2に示されるようにシール本体11aとキャップ部材24との間にワッシャ28を介在させてもよい。
【0046】
緩衝器100は、さらに、リザーバ130内に収容され、アウターケース2に対してインナーケース1をアウターケース2の軸方向に付勢するスプリング5を備える。
【0047】
スプリング5は、コイルスプリングであり、圧縮された状態で、一端がインナーチューブ6の外周面に係止され、他端がロッドガイド7に係止される。具体的には、
図1に示すように、インナーチューブ6の外周面には、円形断面を有するCピン12が係合しており、このCピン12によってスプリング5の一端を係止する円環状のスプリングシート13が軸方向に位置決めされる。一方、スプリング5の他端は、ロッドガイド7の小径部7aと大径部7bとの間の段部7dに係止される。なお、スプリングシート13は、インナーチューブ6と一体的に形成されていてもよいし、溶接等によってインナーチューブ6に固定されていてもよい。また、
図1に示されるスプリング5は、断面が円形のコイルスプリングであるが、スプリング5は、これに限定されず、断面が矩形の角ばねであってもよいし、皿ばねを重ね合わせたものであってもよい。
【0048】
スプリング5の付勢力は、インナーチューブ6とロッドガイド7とを軸方向に引き離すように作用する。インナーチューブ6の軸方向の移動は、ベースバルブ8を介してアウターケース2の閉塞部2cにより規制され、ロッドガイド7の軸方向の移動は、オイルシール11を介してアウターケース2のキャップ部材24により規制される。このため、スプリング5は、アウターケース2に対してインナーケース1をアウターケース2の軸方向に付勢することになる。
【0049】
一般的に、樹脂により射出成形される部材は、一定の荷重がかけられた状態が継続するとクリープと呼ばれる経時変形を生じる。上述のように、インナーケース1はスプリング5によってアウターケース2に対して常に押圧されているので、樹脂製のアウターケース2がクリープに起因して変形したとしても、インナーケース1はアウターケース2に対して当接した状態に維持される。この結果、アウターケース2の軸方向における形状の変化はスプリング5によって補償されることとなる。
【0050】
次に、緩衝器100の作動について説明する。
【0051】
ピストンロッド4がインナーケース1から退出する緩衝器100の伸長時には、ピストン3が移動することで容積が縮小する伸側室110から、容積が拡大する圧側室120に、通路3aを通過して作動油が移動する。また、インナーケース1から退出したピストンロッド4の体積分の作動油が、通路8aを通過してリザーバ130から圧側室120に供給される。
【0052】
このとき、通路3aを通過する作動油の流れに減衰弁18によって抵抗が付与され、減衰力が発生する。
【0053】
ピストンロッド4がインナーケース1に進入する緩衝器100の収縮時には、ピストン3が移動することで容積が縮小する圧側室120から、容積が拡大する伸側室110に、通路3bを通過して作動油が移動する。また、インナーケース1に進入したピストンロッド4の体積分の作動油が、通路8bを通過して圧側室120からリザーバ130に排出される。
【0054】
このとき、通路8bを通過する作動油の流れに減衰弁17によって抵抗が付与され、減衰力が発生する。
【0055】
緩衝器100は、上記のように、伸長時にはリザーバ130から圧側室120に作動油が供給され、収縮時には圧側室120からリザーバ130に作動油が排出される。これにより、ピストンロッド4がインナーケース1内に進退することに起因する容積変化が補償される。
【0056】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0057】
樹脂製のアウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材20にキャップ部材24が結合されることにより、インナーケース1はアウターケース2内に保持される。このため、アウターチューブ2aが樹脂製である複筒式緩衝器において、アウターチューブ2aの肉厚を増加することなく、アウターケース2内にインナーケース1等を保持することができる。
【0058】
<第2実施形態>
続いて、
図4を参照しながら本発明の第2実施形態に係る緩衝器200について説明する。以下、第1実施形態に係る緩衝器100との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
緩衝器200の基本的な構成は、第1実施形態に係る緩衝器100と同様である。緩衝器200は、
図4に示されるように、アウターチューブ2aの開口端部2bの内周側にインサート成形によって埋設される円環状のジョイント部材21と、ジョイント部材21に結合される結合部材としてのリング部材25と、を備える。つまり、第2実施形態に係る緩衝器200は、アウターケース2内にインナーケース1を保持する結合部材の形状及び結合位置が第1実施形態と相違する。
【0060】
ジョイント部材21は、内周面に全周に渡って形成される凹部としての溝21aと、アウターチューブ2aに埋設された状態において、軸方向に突出する突起部21bと、を有する。ジョイント部材21は、鉄鋼材料やアルミ合金によって形成される。
【0061】
突起部21bは、ジョイント部材21の外周側の端部から軸方向に延出し円環状に形成される。インサート成形時に突起部21bの内周側に樹脂を入り込ませるために、突起部21bには、径方向に切り欠かれた図示しない切欠部や径方向に貫通する図示しない孔が周方向に間隔をあけて複数設けられる。このため、インサート成形後、突起部21bは、アウターチューブ2aを形成する樹脂内に食い込んだ状態となる。この結果、ジョイント部材21に周方向及び軸方向に力が作用してもジョイント部材21がアウターチューブ2aから脱落することが防止される。なお、突起部21bは、軸方向だけではなく、径方向外側に向けて形成してもよい。このようにすることで、ジョイント部材21とアウターチューブ2aとの結合力を向上することができる。
【0062】
上記構成のジョイント部材21に対して、インサート成形時に溶融した樹脂は、外周側からジョイント部材21を包み込みながら突起部21bの内周側に流入する。
図4に示されるアウターチューブ2aの開口端部2bはこのようにして形成される。開口端部2bの内径はジョイント部材21の内径と同じである。
【0063】
このように、本第2実施形態に係る緩衝器200では、ジョイント部材21がアウターチューブ2aの内周側に配置されるようにインサート成形が行われる。このため、ヒケが発生したとしても、ジョイント部材21がアウターチューブ2aの外周側に配置される場合と比較し、ジョイント部材21とアウターチューブ2aとの間にヒケに起因する隙間等が形成されにくい。この結果、ジョイント部材21とアウターチューブ2aとの結合力を確保することができる。
【0064】
リング部材25は、円環の一部が欠損する合口を有する円弧状またはC字状の金属製部材であり、溝21aの断面形状と同じ断面形状を有する。例えば、溝21aの断面が矩形であれば、リング部材25の断面も矩形とされる。リング部材25としては、断面が矩形のスナップリングや断面が円形のC形ピン等が用いられる。
【0065】
リング部材25は、合口を狭めて収縮された状態でアウターチューブ2aの開口端部2b内に挿入され、外縁側が溝21a内に嵌め込まれる。リング部材25は、溝21a内において弾性により拡径するので、リング部材25に軸方向の力が作用しても溝21aから外れることはない。
【0066】
また、リング部材25の内縁側は、
図4に示されるように、アウターチューブ2aの内周面2gよりも径方向内側に配置される。このため、溝21aに嵌め込まれたリング部材25は、ワッシャ28及びオイルシール11を介して、アウターケース2内に配置されるインナーケース1に軸力を付与する。
【0067】
このように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、結合部材であるリング部材25とアウターケース2の閉塞部2cとの間に生じる軸力によって、インナーケース1は、アウターケース2内に保持される。
【0068】
なお、リング部材25とシール本体11aとは直接接触する構成としてもよいし、
図4に示されるようにシール本体11aとリング部材25との間にワッシャ28を介在させてもよい。
【0069】
また、C形ピンのように円形断面を有するものがリング部材25として用いられる場合には、シール本体11aまたはワッシャ28に、リング部材25の断面形状に合わせた切欠部を設けることが好ましい。これにより、シール本体11aまたはワッシャ28とリング部材25との接触状態が、線接触や点接触ではなく面接触となる。このため、インナーケース1に付与される軸力が周方向においてばらつくことを抑えることができる。なお、スナップリングのように矩形断面を有するものがリング部材25として用いられる場合には、シール本体11aまたはワッシャ28とリング部材25とは面接触するので、このような切欠部を設けなくてもよい。
【0070】
また、リング部材25が嵌め込まれる溝21aは、ジョイント部材21の内周面に全周に渡って形成されてもよいし、リング部材25の形状に合わせて、ジョイント部材21の内周面の一部に形成されてもよい。同様に、ジョイント部材21の形状は、円環状に限定されず、リング部材25の形状に合わせて、円弧状またはC字状としてもよい。
【0071】
また、第1実施形態と同様に、インナーケース1をアウターケース2に対して軸方向に付勢するスプリング5が配置されているため、第2実施形態においてもクリープ等に起因するアウターケース2の軸方向の形状変化を補償することができる。
【0072】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0073】
樹脂製のアウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材21にリング部材25が結合されることにより、インナーケース1はアウターケース2内に保持される。このため、アウターチューブ2aが樹脂製である複筒式緩衝器において、アウターチューブ2aの肉厚を増加することなく、アウターケース2内にインナーケース1等を保持することができる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、
図5を参照しながら本発明の第3実施形態に係る緩衝器300について説明する。以下、第1実施形態に係る緩衝器100との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
緩衝器300の基本的な構成は、第1実施形態に係る緩衝器100と同様である。緩衝器300は、
図5に示されるように、アウターチューブ2aの開口端部2bの内周側にインサート成形によって埋設される円環状のジョイント部材22と、ジョイント部材22に結合される結合部材としてのリング部材26と、を備える。つまり、第3実施形態に係る緩衝器300は、アウターケース2内にインナーケース1を保持する結合部材の形状及び結合位置が第1実施形態と相違する。
【0076】
ジョイント部材22は、内周面に形成される雌ねじ部22aと、アウターチューブ2aに埋設された状態において、径方向外側に突出する突起部22bと、を有する。ジョイント部材22は、鉄鋼材料やアルミ合金によって形成される。
【0077】
突起部22bは、ジョイント部材22の外周端から径方向外側に延出し円環状に形成される。また、突起部22bは、軸方向に間隔をあけて複数設けられる。インサート成形時に、複数形成される突起部22bの間に樹脂を入り込ませるために、突起部22bには、軸方向に切り欠かれた図示しない切欠部が周方向に間隔をあけて複数設けられる。このため、インサート成形後、突起部22bは、アウターチューブ2aを形成する樹脂内に食い込んだ状態となる。この結果、ジョイント部材22に周方向及び軸方向に力が作用してもジョイント部材22がアウターチューブ2aから脱落することが防止される。なお、突起部22bは、径方向外側だけではなく、軸方向に形成してもよい。このようにすることで、ジョイント部材22とアウターチューブ2aとの結合力を向上することができる。
【0078】
上記構成のジョイント部材22に対して、インサート成形時に溶融した樹脂は、外周側からジョイント部材22を包み込みながら突起部22bにより挟まれる空間内に流入する。
図5に示されるアウターチューブ2aの開口端部2bはこのようにして形成される。開口端部2bの内径はジョイント部材22の内径と同程度とされ、開口端部2bの軸方向における端面の位置は、ジョイント部材22の端面の位置と同程度とされる。
【0079】
このように、本第3実施形態に係る緩衝器300では、ジョイント部材22がアウターチューブ2aの内周側に配置されるようにインサート成形が行われる。このため、ヒケが発生したとしても、ジョイント部材22がアウターチューブ2aの開口端部2bの外周側に配置される場合と比較し、ジョイント部材22とアウターチューブ2aとの間にヒケに起因する隙間等が形成されにくい。この結果、ジョイント部材22とアウターチューブ2aとの結合力を確保することができる。
【0080】
リング部材26は、円環状の本体部26aと、本体部26aの外周面に形成される雄ねじ部26bと、を有する金属製部材である。リング部材26は、雄ねじ部26bを介してジョイント部材22の雌ねじ部22aにねじ込まれる。リング部材26の本体部26aは、
図5に示されるように、アウターチューブ2aの内周面2gよりも径方向内側に配置される。このため、ジョイント部材22にねじ込まれたリング部材26は、ワッシャ28及びオイルシール11を介して、アウターケース2内に配置されるインナーケース1に軸力を付与する。
【0081】
このように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、結合部材であるリング部材26とアウターケース2の閉塞部2cとの間に生じる軸力によって、インナーケース1は、アウターケース2内に保持される。
【0082】
なお、リング部材26とシール本体11aとは直接接触する構成としてもよいし、
図5に示されるようにシール本体11aとリング部材26との間にワッシャ28を介在させてもよい。また、ジョイント部材22とリング部材26との結合は、ねじ結合に限定されず、嵌合結合であってもよい。ジョイント部材22とリング部材26との結合がねじ結合である場合は、緩衝器300の組み立てと分解が容易となる。
【0083】
また、第1実施形態と同様に、インナーケース1をアウターケース2に対して軸方向に付勢するスプリング5が配置されているため、第3実施形態においてもクリープ等に起因するアウターケース2の軸方向の形状変化を補償することができる。
【0084】
以上の第3実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0085】
樹脂製のアウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材22にリング部材26が結合されることにより、インナーケース1はアウターケース2内に保持される。このため、アウターチューブ2aが樹脂製である複筒式緩衝器において、アウターチューブ2aの肉厚を増加することなく、アウターケース2内にインナーケース1等を保持することができる。
【0086】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0087】
緩衝器100,200,300は、作動油が充填されるインナーケース1と、インナーケース1を覆って配設され、インナーケース1との間に作動液を貯留するリザーバ130を形成するアウターケース2と、を備え、アウターケース2は、樹脂により形成され一端が閉塞部2cにより閉塞される有底円筒状のアウターチューブ2aと、アウターチューブ2aの開口端部2bにインサート成形により埋設される筒状のジョイント部材20,21,22と、を有し、緩衝器100は、ジョイント部材20,21,22に結合される結合部材24,25,26をさらに備え、インナーケース1は、結合部材24,25,26とアウターチューブ2aの閉塞部2cとにより挟まれ、アウターケース2内に保持されることを特徴とする。
【0088】
この構成では、結合部材24,25,26は、樹脂製のアウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材20,21,22に結合されることにより、インナーケース1に軸力を付与する。つまり、結合部材24,25,26とアウターチューブ2aの閉塞部2cとにより挟まれるインナーケース1は、結合部材24,25,26とアウターケース2の閉塞部2cとの間に生じる軸力によってアウターケース2内に保持される。このように、アウターチューブ2aが樹脂製である複筒式緩衝器において、アウターチューブ2aの肉厚を増加することなく、アウターケース2内にインナーケース1等を保持することができる。
【0089】
また、ジョイント部材20は、アウターチューブ2aの開口端部2bに埋設されるインサート部20bを一端側に有し、キャップ部材24が結合される結合部20aを他端側に有する筒状部材であることを特徴とする。
【0090】
この構成では、インナーケース1に軸力を付与するキャップ部材24が、アウターチューブ2aの開口端部2bに埋設される筒状のジョイント部材20に結合される。このように、アウターチューブ2aに埋設される筒状のジョイント部材20にキャップ部材24を結合するという簡素な構成によりインナーケース1に作用する軸力を発生させることができる。
【0091】
また、インサート部20bは、インサート成形時に溶融樹脂が流入される係止孔20dを有することを特徴とする。
【0092】
この構成では、インサート成形時に溶融樹脂がインサート部20bに形成される係止孔20dに流入する。係止孔20dに流入した樹脂によりジョイント部材20がアウターチューブ2aから外れることが抑制され、ジョイント部材20とアウターチューブ2aとの結合力を向上することができる。
【0093】
また、キャップ部材24は、ジョイント部材20の外周側を覆い結合部20aとインサート部20bとの境界を跨いで延出する円筒部24cを有し、結合部20aの外周面と円筒部24cの内周面との間には、結合部20aと円筒部24cとの間の隙間を封止する第1シール部材29が設けられ、インサート部20bが埋設されるアウターチューブ2aの開口端部2bの外周面と円筒部24cの内周面との間には、アウターチューブ2aと円筒部24cとの間の隙間を封止する第2シール部材30が設けられることを特徴とする。
【0094】
この構成では、第1シール部材29によって、ジョイント部材20の結合部20aとキャップ部材24の円筒部24cとの間の隙間が封止され、第2シール部材30によって、アウターチューブ2aとキャップ部材24の円筒部24cとの間の隙間が封止される。このため、第1シール部材29と第2シール部材30とによって、金属製部材であるジョイント部材20と樹脂製部材であるアウターチューブ2aとの境目を通じて漏れるリザーバ130内のガスが、外部に放出されることを防止することができる。
【0095】
また、ジョイント部材21,22は、結合部材25,26が結合される結合部21a,22aが内周面に設けられる円環状または円弧状の部材であり、外周面側がアウターチューブ2aの開口端部2bに埋設されることを特徴とする。
【0096】
この構成では、インナーケース1に軸力を付与する結合部材25,26が、アウターチューブ2aの開口端部2bに埋設されるジョイント部材21,22の内周側に結合される。このように、アウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材21,22の内周側に結合部材25,26を結合するという簡素な構成によりインナーケース1に作用する軸力を発生させることができる。
【0097】
また、ジョイント部材21の内周面には、溝21aが形成され、リング部材25は、溝21a内に嵌め込まれることを特徴とする。
【0098】
この構成では、インナーケース1に軸力を付与するリング部材25が、ジョイント部材21の内周面に形成される溝21aに嵌め込まれる。このように、アウターチューブ2aに埋設されるジョイント部材21の内周側にリング部材25を嵌め込むだけでインナーケース1に作用する軸力を発生させることができる。
【0099】
また、ジョイント部材20,22と結合部材24,26とは、螺合により結合されることを特徴とする。
【0100】
この構成では、ジョイント部材20,22と結合部材24,26との結合がねじ結合であるため、緩衝器100,300の組み立てと分解とを容易に行うことができる。
【0101】
また、ジョイント部材20,21,22は、アウターチューブ2aの開口端部2bの内周側に埋設されることを特徴とする。
【0102】
この構成では、ジョイント部材20,21,22がアウターチューブ2aの内周側に配置された状態でインサート成形される。このため、インサート成形後にヒケが生じたとしても、ジョイント部材20,21,22がアウターチューブ2aの外周側に配置される場合と比較し、ジョイント部材20,21,22とアウターチューブ2aとの間にヒケに起因する隙間等が形成されにくい。この結果、ジョイント部材20,21,22とアウターチューブ2aとの結合力を確保することができる。
【0103】
また、ジョイント部材21,22は、アウターチューブ2aの開口端部2bに埋設された状態において、軸方向または径方向外側に突出する突起部21b,22bを有することを特徴とする。
【0104】
この構成では、インサート成形後、突起部21b,22bが、アウターチューブ2aを形成する樹脂内に食い込んだ状態となる。この結果、ジョイント部材21,22に周方向及び軸方向に力が作用してもジョイント部材21,22がアウターチューブ2aから脱落することを防止することができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0106】
例えば、上記実施形態では、緩衝器100,200,300を自動車等の車両に適用しているが、鉄道等の車両や建築物に適用してもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、作動液として作動油を用いているが、水等のその他の液体を用いてもよい。