(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜13を参照して、本発明による作業機械の一実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例であるホイールローダの側面図であり、
図2は、このホイールローダ100の後部車体を主に表した平面図である。
図3は、ホイールローダ100の後部車体を斜め後方から見た斜視図であり、
図4は、ホイールローダ100の背面図であり、
図5は、後部車体を左側面から見た図である。
ホイールローダ100は、アーム111、バケット112、タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121、機械室(エンジン室)122、冷却器室126、タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。後部車体120の後方にはカウンタウェイト124が取り付けられている。エンジン室122の前方には、作動油タンク125が設けられている。
【0009】
アーム111はアームシリンダ117の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。説明の便宜上、本実施の形態では各図に記載したように前後左右方向および上下方向を規定する。また、本実施の形態では、各図において、ホイールローダ100を構成する部材のうち説明のために記載を省略する必要があるものについては、その一部または全部についての記載を省略している。
【0010】
エンジン室122は、建屋カバー130とエンジンフード140とで覆われている。すなわち、エンジン室122は、建屋カバー130と、エンジンフード140と、後述する
図6,7に示す隔壁160とで画成されている。エンジンフード140からは、排気ガスを排気するためのテールパイプ171が突出している。また、エンジンフード140には、後述する尿素水噴射弁421や尿素水供給配管425のメンテナンスのための開口141が設けられている。開口141は、着脱可能なカバー142によって閉じられている。
【0011】
冷却器室126は、エンジン室122の後方に設けられており、エンジン室122とは後述する
図6,7に示す隔壁160によって仕切られている。冷却器室126の側面は、建屋カバー130の一部と冷却器用建屋カバー132とで覆われ、冷却器室126の上面は、冷却器用建屋カバー132で覆われている。すなわち、冷却器室126は、建屋カバー130の一部と、冷却器用建屋カバー132と、隔壁160とで画成されている。
【0012】
冷却器室126には、エンジン301の冷却水を冷却する不図示のラジエータや、作動油の冷却用の不図示のオイルクーラ等、複数の不図示の冷却器(熱交換器)等と、エアクリーナ310とが設けられている。冷却器用建屋カバー132は、後方で開口している。当該開口部分は、開閉可能に取り付けられたグリル200によって覆われている。冷却器用建屋カバー132の上面からは、エンジン301の駆動に必要な空気をエアクリーナ310を介して外部から取り込むための吸気管145が突出している。吸気管145の上端には、吸気管145内への雨水の侵入を防止する雨水侵入防止カバー145aが取り付けられている。
【0013】
図6,7は、エンジン301や後述する排気装置400の搭載状態を示す斜視図であり、
図8は、エンジン301や排気装置400を前方から見た図である。エンジン室122内で、エンジン301は後部車体120の不図示のエンジン取り付け用ブラケットに取り付けられている。エンジン301には、過給器(ターボチャージャ)302が取り付けられている。なお、本実施の形態では、過給器302は、コンプレッサ302a(
図7)の吸気口が後方を向き、タービン302b(
図6,8)の排気口が前方を向くように配設されている。エンジン室122と冷却器室126との間には、隔壁160が設けられている。後部車体120の後部左側には、尿素水タンク127が配設されている。
【0014】
エアクリーナ310は、冷却器室126内で、隔壁160の直後に設けられている。エアクリーナ310とコンプレッサ302aの吸気口とは、吸気配管146で接続されている。
【0015】
図8によく示されるように、後部車体120に立設された架台170の上部には、排気装置マウントブラケット150が取り付けられている。排気装置マウントブラケット150には、排気装置400が取り付けられている。排気装置400は、エンジン室122内で、エンジン301の上方に配設される。
【0016】
図9,10は、エンジン301と排気装置400の斜視図であり、
図11は、エンジン301と排気装置400の平面図であり、
図12は、排気装置400の斜視図である。排気装置400は、排気ガスの流れに沿って上流から順に第1排気装置401と第2排気装置402と第3排気装置403とを有する。
【0017】
本実施の形態では、第1排気装置401には酸化触媒装置410が用いられ、第2排気装置402には尿素水添加装置420が用いられ、第3排気装置403には尿素SCR装置430が用いられている。酸化触媒装置410は、略筒形状を呈するケーシング411の内部に、排気ガスに含まれる一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を備えている。ケーシング411の略筒形状の一方の端部には排気ガスの入口412(
図9)が設けられ、他方の端部近傍には、斜め右上に向いた排気ガスの出口413(
図12)が設けられている。
【0018】
尿素水添加装置420は、尿素水噴射弁421、および、酸化触媒装置410と尿素SCR装置430とを接続する配管422を備えており、管形状(筒形状)を呈する。尿素水噴射弁421は、配管422の途中に設けられている。尿素水噴射弁421には、尿素水供給配管425(
図7)および不図示の尿素水ポンプを介して尿素水タンク127(
図7)内の尿素水が供給される。尿素水噴射弁421は、図示しない制御装置からの制御信号に応じて、配管422内に尿素水を噴射する。
【0019】
尿素SCR装置430は、略筒形状を呈するケーシング431の内部に、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元浄化する尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)方式の触媒を備えている。ケーシング431の略筒形状の一方の端部近傍の側面には排気ガスの入口432が設けられ、他方の端部近傍には上方に向かって延在する排気ガスの出口配管433が設けられている。尿素水添加装置420で尿素水が添加された排気ガスが尿素SCR装置430内に流入すると、尿素SCR方式の触媒により尿素水からアンモニアが生成され、アンモニアにより排気ガス中のNOxが還元反応して、水と窒素に分解される。
【0020】
図11によく示すように、排気装置400は、左側から酸化触媒装置410、尿素水添加装置420、尿素SCR装置430の順で並んで配設されている。酸化触媒装置410、尿素水添加装置420、および尿素SCR装置430は、前端側が斜め右前方を向き、後端側が斜め左後方を向くように、ホイールローダ100の前後方向に延在する中心線CLに対して傾けて配設されている。すなわち、酸化触媒装置410は、略円筒形状のケーシング411の入口412側の端面を斜め右前方に向け、出口413側の端面を斜め左後方に向けて、ケーシング411の中心軸AX1をホイールローダ100の前後方向に対して傾けた状態で配設されている。
【0021】
同様に、尿素水添加装置420の配管422は、前方よりも後方がわずかに左側にずれるように、中心軸AX2をホイールローダ100の前後方向に対して傾けた状態で酸化触媒装置410の右斜め上方、かつ、尿素SCR装置430の左斜め上方に配設されている。同様に、尿素SCR装置430は、略円筒形状のケーシング431の入口432側の端面を斜め右前方に向け、出口配管433(
図12)側の端面を斜め左後方に向けて、ケーシング431の中心軸AX3をホイールローダ100の前後方向に対して傾けた状態で配設されている。
【0022】
上述したように、排気装置400は、排気装置マウントブラケット150に取り付けられている。具体的には、
図8,9によく示すように、排気装置マウントブラケット150は、左右から中央に向かうにつれて高くなるように傾斜した山形形状のブラケットである。排気装置マウントブラケット150の左側の斜面には、酸化触媒装置410用の取付部151が設けられており、排気装置マウントブラケット150の右側の斜面には、尿素SCR装置430用の取付部152が設けられている。酸化触媒装置410は、取付部151にUボルト155によって締め付けられて固定されている。尿素SCR装置430は、取付部152にUボルト155によって締め付けられて固定されている。
【0023】
酸化触媒装置410の入口412と、過給器302のタービン302bの排気口とは、排気管181で接続されている。
図11、
図12を参照すると、尿素水添加装置420の配管422の入口、すなわち配管422の後側の端部と、酸化触媒装置410の出口413とは、エルボ423を介して接続されている。配管422の出口、すなわち配管422の前側の端部と、尿素SCR装置430の入口432とは、エルボ424を介して接続されている。
図10を参照すると、尿素SCR装置430の出口配管433の先端は、エンジンカバー140に取り付けられたテールパイプ171の下部に挿入されている。
【0024】
このように構成される排気装置400では、エンジン301からの排気ガスは、過給器302のタービン302bの排気口から排出され、排気管181を介して酸化触媒装置410に流入する。酸化触媒装置410で一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が除去された排気ガスは、酸化触媒装置410の出口413から排出されて、尿素水添加装置420の配管422に流入する。配管422内で尿素水噴射弁421によって尿素水が添加された排気ガスは、尿素SCR装置430に流入する。尿素SCR装置430で窒素酸化物(NOx)が除去された排気ガスは、出口配管433およびテールパイプ171を介して外部に排出される。
【0025】
−−−排気装置400の配置について−−−
排気装置400を構成する各装置410,420,430は、各々の長手方向、すなわち延在方向が車両の略前後方向となるように配置されている。これにより、各装置410,420,430を限られたスペース内に配設できる。また、
図8〜10より明らかなように、排気装置400では、酸化触媒装置410と尿素SCR装置430との間で、正面視および側面視において尿素水添加装置420を酸化触媒装置410および尿素SCR装置430よりも高い位置に配設した。これにより、酸化触媒装置410と尿素SCR装置430との左右、すなわち車幅方向の距離を縮めることができ、排気装置400の左右方向の幅を狭くすることができる。各装置410,420,430をコンパクトに配設できるので、各装置410,420,430をすべてエンジン室122内でエンジン301の上方に配設できる。その結果、運転室122の後方の建屋の大型化を抑制でき、運転室122からの後方視界が確保できる。
【0026】
また、尿素水添加装置420を酸化触媒装置410および尿素SCR装置430よりも高い位置に配設したことで、尿素水噴射弁421をエンジンフード140の開口141に近づけることができ、尿素水噴射弁421のメンテナンスが容易となる。
【0027】
なお、
図4によく示すように、ホイールローダ100では、運転室121からの後方視界を確保するために、エンジン室122の上部の左右端の突出が抑制されている。そのため、ホイールローダ100を後方から見ると、エンジン室122の上部の左右端は、面取りされたような形状を呈している。上述したように排気装置400の左右方向の幅を狭くすることで、エンジン室122の上部の左右端の突出を抑制でき、運転室121からの後方視界が良好となる。
【0028】
図13は、運転室121からの後方視界について説明する、後部車体120の平面図である。運転室121における符号Opを付した丸印は、運転室121におけるオペレータの頭の位置を示すものである。矢印Aで示す範囲は、オペレータが直接目視する頻度が高い範囲である。矢印Bで示す範囲は、後方確認用のバックモニタ等を補助的に利用して確認する範囲である。なお、範囲Bは、エンジン室122や冷却器室126によってホイールローダ100の後方の視界が制限される範囲である。
【0029】
尿素SCR装置430の出口配管433をエンジン室122の後方側に配置した。これにより、テールパイプ171を運転室122から離すことができ、運転室121からの後方視界が良好となるとともに、オペレータの耳元に届く騒音を抑制できる。また、尿素SCR装置430の前端側が斜め右前方を向き、出口配管433が設けられている後端側が斜め左後方を向くように、尿素SCR装置430をホイールローダ100の前後方向に対して傾けて配設した。すなわち、ホイールローダ100の前後方向に延在する中心線CLよりも右側に配設された尿素SCR装置430の出口配管433が中心線CLに寄るように尿素SCR装置430が傾けられている。これにより、テールパイプ171を中心線CL、すなわちホイールローダ100の左右方向の中心に寄せることができるので、運転室121からの後方視界が良好となる。また、上述したように、エンジン室122の上部の左右端の突出が抑制されて左右方向の幅が狭められていても、テールパイプ171が中心線CLに寄ることで、限られたスペース内に排気装置400を配設できる。
【0030】
図11を参照すると、排気装置400で浄化される排気ガスは、酸化触媒装置410を前方から後方に向かって流れた後、尿素水添加装置420の配管422を後方から前方に向かって流れ、その後、尿素SCR装置430を前方から後方に向かって流れる。すなわち、排気装置400では、排気ガスがS字状に流れるように各装置410,420,430が接続されている。これにより、延在方向を一致させて並列に配置した各装置410,420,430に排気ガスを効率よく流すことができる。
【0031】
図9を参照すると、過給器302のタービン302bの排気口がエンジン301の左方で前方を向いており、酸化触媒装置410の入口412がホイールローダ100の中心線CLよりも左側で前方を向いている。これにより、タービン302bの排気口と酸化触媒装置410の入口412とを短距離で接続できるとともに、排気管181の形状が複雑にならないので、排気抵抗を抑制でき、燃費向上に寄与する。
【0032】
排気装置400を固定する排気装置マウントブラケット150を左右から中央に向かうにつれて高くなるように傾斜した山形形状としたので、エンジン301の上部にエンジン301のメンテナンス用の空間を確保でき、エンジン301の整備性が向上する。
【0033】
−−−エアクリーナ310の配置について−−−
図7を参照して上述したように、エアクリーナ310は、冷却器室126内で、隔壁160の直後に設けられている。このように、エンジン室122とは隔壁160で隔てられた冷却器室126内にエアクリーナ310を設けることで、エンジン301や排気装置400からエアクリーナ310への熱の影響を抑制できる。これにより、エンジン301で吸入される空気の温度上昇を抑制して、エンジン301での吸気効率の低下を抑制できる。
【0034】
図7を参照すると、エアクリーナ310がエンジン301の後方に設けられており、過給器302のコンプレッサ302aの吸気口が後方を向いている。これにより、エアクリーナ310と過給器302のコンプレッサ302aの吸気口とを短距離で接続できるとともに、吸気配管146の形状が複雑にならないので、吸気抵抗を抑制でき、燃費向上に寄与する。
【0035】
なお、本実施の形態では、
図13に示すように、運転室121におけるオペレータの頭の位置Opとテールパイプ171とを結ぶ直線L上に吸気管145が位置するように、エアクリーナ310および吸気管145を配設している。すなわち、運転室121から見て、冷却器用建屋カバー132の上面に突設された吸気管145がテールパイプ171と重なっている。これにより、吸気管145やテールパイプ171が運転室121からの後方視界を遮る範囲を狭めることができ、運転室121からの後方視界が良好となる。また、本実施の形態では、
図13に示した範囲Bに吸気管145やテールパイプ171が存在するので、直接目視する頻度が高い範囲Aの視界を確保でき、運転室121からの後方視界が良好となる。
【0036】
−−−尿素水供給配管425の取り回しについて−−−
本実施の形態では、
図7に示すように、尿素水供給配管425は、エンジン室122内での配設距離が極力短くなるように配設されている。すなわち、尿素水供給配管425は、後部車体120の後部左側の尿素水タンク127からエンジン室122内の尿素水噴射弁421まで配設されるが、できる限り尿素水噴射弁421の近くまで冷却器室126内を通るように、その配設経路が設定されている。このようにすることで、エンジン301や排気装置400から尿素水供給配管425中の尿素水への熱の影響を抑制し、熱による尿素水の品質劣化を抑制できる。
【0037】
−−−変形例−−−
(1)上述の説明では、第1排気装置401には酸化触媒装置410が用いられ、第2排気装置402には尿素水添加装置420が用いられ、第3排気装置403には尿素SCR装置430が用いられているが、これは一例であって、本発明はこれに限定されない。たとえば、各排気装置410,420,430に、排気ガスの浄化機能のない消音装置等の他の種類の排気装置が用いられてもよい。
【0038】
(2)上述の説明では、左側に酸化触媒装置410が設けられ、右側に尿素SCR装置430が設けられているが、本発明はこれに限定されず、右側に酸化触媒装置410が設けられ、左側に尿素SCR装置430が設けられていてもよい。
【0039】
(3)上述の説明では、
図13に示すように、運転室121におけるオペレータの頭の位置Opとテールパイプ171とを結ぶ直線L上に吸気管145が位置するよう構成しているが、本発明はこれに限定されない。直線L上に吸気管145が位置することは必須ではないが、後方視界確保の観点から、運転室121から見て、吸気管145がテールパイプ171の少なくとも一部と重なることが望ましい。
【0040】
(4)上述の説明では、作業機械の一例としてホイールローダを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、油圧ショベル等の他の作業機械に本発明を適用してもよい。
(5)上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0041】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。