(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
背景
プロテーゼ心臓弁は、損傷したまたは罹患した心臓弁を置き換えるために用いられる。ヒト患者用のプロテーゼ心臓弁は1950年代から利用されている。現在、プロテーゼ心臓弁には、機械弁、生体弁(tissue valve)、およびポリマー弁という3つの一般的なタイプがある。場合によっては、心臓弁プロテーゼは、罹患したまたは損傷した本来の弁の外科的除去後に、患者の心臓の輪状開口部に植え込まれる。弁は、宿主の組織と弁の外側縁とを貫く縫合糸またはピンの使用を通じて、開口部の弁輪内に固定することができる。代替として、宿主組織を縫い付け用リングと縫合することによって、弁を弁輪内に固定することもできる。心臓弁は、本質的には、拍動する心臓を通る血流に対して一方向逆止弁として機能する。
【0003】
「機械弁」という用語は、少なくとも一部が剛性の生体適合性材料、例えば熱分解カーボンなどで製造された弁オリフィスを有し、かつ本質的には生体構成成分を含まない、単葉または複葉(典型的には二葉)の心臓弁のことを指す。「バイオプロテーゼ弁」という用語は、少なくともいくつかの生体構成成分、例えば組織または組織構成要素などを有する、複葉(例えば、二葉または三葉)の心臓弁のことを指す。組織弁の生体構成成分はドナー動物から得られ(典型的にはウシまたはブタのもの)、弁は生体材料のみを含んでもよく、または生体材料を人工的な支持体もしくはステントとともに含んでもよい。「ポリマー弁」という用語は、少なくとも弾性ポリマー弁小葉を含む、少なくともいくつかの弾性ポリマー構成要素を有する、複葉(例えば、三葉または二葉)の心臓弁のことを指す。
【0004】
三葉心臓弁プロテーゼは、典型的には、輪状の弁本体、およびそれに取り付けられた可撓性のある3つの小葉を含む。弁本体は、輪状の基部、および弁輪の周縁に位置する3つの小葉支持ポストを含む。場合によっては、弁本体の外周に輪状に結合された縫い付け用リングが、弁を植え込む際に縫合を行う場所を提供する。小葉は、取り付け湾曲部に沿って3つの成形ポストに取り付けられ、かつ、それらはまたそれぞれ、取り付け湾曲部から離れた側に、取り付けられていない自由縁部も有する。2つの隣接する小葉が支持ポストの1つで出会う場所は接合部と呼ばれ、自由縁部と取り付け湾曲部との間の小葉の概ね湾曲した領域は、小葉の腹部として知られる。3つの小葉の自由縁部は、概ね弁の軸上にある「三重点(triple point)」で出会う。
【0005】
血液が順方向に流れる場合には、血流のエネルギーによって3つの小葉が弁輪の中心から離れるように撓み、血液がその間を通って流れることが可能になる。血流が逆方向に流れる場合には、3つの小葉が接合領域で互いに係合し、弁本体の弁輪を閉鎖して、血液の流れを妨げる。
【0006】
心臓弁は、開胸式心臓手術処置を通じて植え込むことができる。さらに最近では、例えば経カテーテル処置を用いて、経皮的に植え込まれる心臓弁も開発されている。経カテーテル経皮的大動脈置換弁デバイスは、典型的には、筒状の拡張性(例えば、バルーン拡張式または自己拡張型)ステントまたはフレームに装着された弁本体を含む。その例には、Edwards Lifesciences, Irvine, CAから販売されているSAPIENデバイス、またはMedtronic, Minneapolis, MNから販売されているCore Valveデバイスが含まれる。
【0007】
経皮的に植え込まれるデバイスは、開胸式の大手術処置の必要性を不要にする。しかし、これらのデバイスの植え込みは困難なことがある。置換弁は典型的には損傷を受けやすいデバイスであり、植え込み時の損傷を避けるために注意を払わなければならない。大動脈置換弁の場合には、大動脈領域の特別な解剖学的構造のために、さらなる困難が生じる可能性がある。大動脈領域は、高い血圧にさらされる組織が、高度の物理的歪みを受ける領域内にあることによって特徴づけられる。このため、大動脈置換弁用の支持ステントは、この環境で動作するように十分に頑健かつ剛性でなければならない。しかし、この領域へのそのようなステントの導入は、大動脈の両側に近接して存在する右冠動脈入口部および左冠動脈入口部(本明細書では冠動脈入口部と称する)といった他の血管が、機能の点で妨害されるというリスクを生じさせる。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明者らは、例えば、拡張性ステント内に装着されたポリマー三葉弁を特徴とする経皮的植え込み型大動脈置換弁デバイスを提供しうることを見いだした。本明細書で詳述するように、本ステントは、冠動脈入口部に対応する位置に、弁に隣接した1つまたは複数の開口領域を含みうる。このことは、デバイスをより容易に植え込むことを可能にし、入口部の機能が損傷、阻害または他の様式で妨害されるリスクを減少させ、狭窄などの有害反応の発生率を低下させる。さらに、デバイスが拡張性デバイスである場合には、弁小葉に隣接した開口領域の配置により、損傷を受けやすい弁小葉を損傷させることなく、デバイスを小さなサイズに捲縮させる(crimp)ことが可能になる。
【0009】
本発明者らは、複葉ポリマー心臓弁(例えば、三葉弁)を、ステント上に装着しうることを見いだした。いくつかの態様において、弁は、順行流圧力損失を減少させる小葉の部分的開口位置を特徴とする。いくつかの態様において、弁は、軟質の可撓性材料でできた先端を備える可撓性弁ポストを特徴とする。ポストの可撓性により、過度の応力も歪みも受けることなく、小葉が適正に閉じて逆行血流を遮断することが可能になる。これらの特徴が相乗的に作用することで、耐久性、順行流圧力損失および効率の点で有益な特徴を有する弁が提供される。
【0010】
1つの局面では、長軸の周囲に配設され、かつ近位端から遠位端まで延びている筒状ステントであって、両端間に筒状通路を画定するステントを含む、プロテーゼ装置が開示される。いくつかの態様において、筒状ステントは、近位部、遠位部、および近位部と遠位部との間に位置する中央部を有する。いくつかの態様において、近位部および遠位部はそれぞれ、長軸の周囲に配設された開口要素の少なくとも1つのリングを形成する支持支柱のメッシュを含む。いくつかの態様において、中央部は以下のものを含む:近位部と遠位部との間に長軸に対して実質的に平行な方向に沿って延びている複数の長形ポスト;および、ポストに取り付けられ、ポリマー弁を筒状通路内部に装着するように構成された王冠状の装着用リング;および、複数の開口領域。いくつかの態様において、王冠状のリングは、追加的または代替的に、ステントの近位部に取り付けられてもよい。
【0011】
いくつかの態様において、開口要素は開口菱形要素である。
【0012】
いくつかの態様において、複数の開口領域はそれぞれ、開口要素のそれぞれの面積の少なくとも約20倍である開口面積を筒状支持体の外面に沿って画定する。
【0013】
いくつかの態様において、複数の開口領域はそれぞれ、開口要素のそれぞれの面積の少なくとも約40倍である開口面積を筒状支持体の外面に沿って画定する。
【0014】
いくつかの態様において、近位部および遠位部はN個の開口要素のリングを含み、複数のステントポストはリング間に延びているM個のポストからなり、かつ、NとMとの比は少なくとも4対1、少なくとも5対1、または少なくとも6対1である。いくつかの態様において、N=15およびM=3である。
【0015】
いくつかの態様は、近位部から遠位部まで筒状支持体部材の外面に沿って延びているが、中央部における開口領域は実質的に覆わない、筒状ポリマー被覆を含む。いくつかの態様において、被覆は長形ポストを包んでいる。
【0016】
いくつかの態様において、被覆は、長形ポストに対応する、厚みが補強された領域を含む。
【0017】
いくつかの態様において、被覆は、支持支柱または装着用リングの1つまたは複数に対応する、厚みが補強された領域を含む。
【0018】
いくつかの態様は、スリーブをステントに固定する1つまたは複数の縫合を含む。
【0019】
いくつかの態様は、ポリマー心臓弁を含む。いくつかの態様において、弁は以下のものを含む:筒状ステントの長軸方向に沿って延びている中心軸を有し、かつ中心軸に沿って流入端から流出端まで延びている体液路を有する、弁本体;本体の外周に沿って配設され、かつ、それぞれが軸方向に先端へと延びていてそれぞれが長形ポストの少なくとも1つに取り付けられている少なくとも3つの可撓性弁ポストを含む、可撓性外部支持体;および、王冠状の装着用リングから延びている少なくとも3つの可撓性小葉であって、小葉のそれぞれが、可撓性弁ポストの各々の対の間に延びている装着用リングに沿った取り付け湾曲部を画定する取り付け縁部を有し、小葉の対が少なくとも3つの可撓性弁ポストのそれぞれで各々の接合部を画定している、小葉;ここで王冠状のリングは、それぞれが可撓性弁ポストに対応し、ステントの長形ポストのそれぞれ1つに対して取り付けられている、複数の箇所を含む。
【0020】
いくつかの態様において、弁の可撓性外部支持体は筒状ステントの一部分を包んでいる。いくつかの態様において、ステントポストは可撓性外部支持体を通って延びており、例えば、弁ポストを通って延びている。
【0021】
いくつかの態様において、少なくとも3つの小葉は、静止時には部分的開口位置を画定し、流入端から流出端への方向に沿う順行血流時には中心軸から離れるように撓んだ完全開口位置を画定し、かつ、流出端から流入端への方向に沿う逆行血流時には中心軸に向かって撓んだ閉鎖位置を画定し、ここで、閉鎖位置では、可撓性弁ポストのそれぞれは中心軸に向かって内側に屈曲する。
【0022】
いくつかの態様において、各弁ポストの先端は、弁ポストの残りの部分よりも高い可撓性を有する材料で形成されている。
【0023】
いくつかの態様において、ステントは、弁を損傷させることなく、非捲縮(uncrimped)直径から捲縮直径へとステントの外径を小さくするために捲縮されるように構成されている。いくつかの態様において、非捲縮直径は少なくとも約20mmであり、捲縮直径は約6mm未満である。
【0024】
いくつかの態様において、筒状ステントは形状記憶材料を含む。いくつかの態様において、形状記憶材料はニチノール(Nitinol)を含む。
【0025】
いくつかの態様において、ステントは自己拡張型ステントである。
【0026】
いくつかの態様において、ステントは、弁が本来の大動脈弁の場所の近位に配置されるようにヒト心臓に植え込まれた時に、開口領域が冠動脈入口部の近位に配置されるように構成されている。
【0027】
いくつかの態様において、装置は、本質的には生体適合性材料からなる。
【0028】
別の態様においては、以下の段階を含む方法が開示される:上記の種類のうちいずれかの装置を用意する段階;および、弁が本来の大動脈弁の場所の近位に配置され、開口領域が冠動脈入口部の近位に配置されるように、装置をヒト対象に経皮的に植え込む段階。
【0029】
いくつかの態様において、装置を経皮的に植え込む段階は、以下を含む:ステントを捲縮させること;イントロデューサを用いてステントを所望の場所に配置すること;および、イントロデューサを取り出し、ステントを拡張させて非捲縮状態にすること。
【0030】
いくつかの態様において、ステントを拡張させて非捲縮状態にすることは、ステントを自己拡張させることを含む。
【0031】
別の局面では、プロテーゼ装置を作製する方法であって、以下の段階を含む方法が開示される:上記の種類のうちいずれかの筒状ステントを用意する段階;ステントをマンドレル上に配置する段階;浸漬成形を含むプロセスによって、装着用リングに装着されたポリマー弁を形成する段階;筒状支持体部材の外面に沿って近位部から遠位部まで延びているが、中央部における開口領域は実質的に覆わない、筒状ポリマー被覆を形成する段階。
【0032】
いくつかの態様において、筒状ポリマー被覆を形成する段階は、以下を含む熱成形プロセスを含む:ポリマー材料を筒状ステントの外面に適用すること;ポリマー材料およびステントの周りに熱収縮チューブを配設すること;ポリマー材料を軟化させ、熱収縮チューブの収縮を引き起こし、かつポリマー材料を成形して被覆を形成させるための力を印加するために、熱を加えること。
【0033】
いくつかの態様において、被覆を形成する段階は、支持支柱および長形ポストの1つまたは複数を包むことを含む。
【0034】
いくつかの態様は、熱成形プロセス中に、弁の熱損傷を避けるために弁に気流を適用する段階を含む。
【0035】
いくつかの態様は、長形ポストまたは装着用リングに対応する場所で被覆を補強するために、ポリマー材料の細片を適用する段階を含む。
【0036】
いくつかの態様は、支柱に対応する場所で被覆を補強するために、追加的なポリマー材料を適用する段階を含む。
【0037】
さまざまな態様は、上記の特徴の任意のものを、単独で、または任意の適した組み合わせで含みうる。
[本発明1001]
長軸の周囲に配設されかつ近位端から遠位端まで延びており、両端間に筒状通路を画定する、筒状ステント
を含むプロテーゼ装置であって、
筒状ステントが、近位部、遠位部、および近位部と遠位部との間に位置する中央部を有し、
近位部および遠位部がそれぞれ、長軸の周囲に配設された開口要素の少なくとも1つのリングを形成する支持支柱のメッシュを含み、
中央部が
近位部と遠位部との間に長軸に対して実質的に平行な方向に沿って延びている複数の長形ポストと、
ポストに取り付けられ、かつポリマー弁を筒状通路内部に装着するように構成された、王冠状の装着用リングと、
複数の開口領域と
を含む、
プロテーゼ装置。
[本発明1002]
開口要素が開口菱形要素である、本発明1001の装置。
[本発明1003]
複数の開口領域がそれぞれ、開口要素のそれぞれの面積の少なくとも約20倍である開口面積を筒状支持体の外面に沿って画定する、本発明1002の装置。
[本発明1004]
複数の開口領域がそれぞれ、開口要素のそれぞれの面積の少なくとも約40倍である開口面積を筒状支持体の外面に沿って画定する、本発明1003の装置。
[本発明1005]
近位部および遠位部のそれぞれが、N個の開口要素のリングを含み、複数のステントポストが、リング間に延びるM個のポストからなり、かつNとMとの比が少なくとも4対1である、本発明1003の装置。
[本発明1006]
NとMとの比が少なくとも5対1である、本発明1005の装置。
[本発明1007]
NとMとの比が少なくとも6対1である、本発明1005の装置。
[本発明1008]
N=15およびM=3である、本発明1006の装置。
[本発明1009]
近位部から遠位部まで筒状支持体部材の外面に沿って延びているが、中央部における開口領域は実質的に覆わない筒状ポリマー被覆
をさらに含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1010]
前記被覆が長形ポストを包んでいる、本発明1009の装置。
[本発明1011]
前記被覆が、長形ポストに対応する、厚みが補強された領域を含む、本発明1010の装置。
[本発明1012]
前記被覆が、支持支柱または装着用リングの1つまたは複数に対応する、厚みが補強された領域を含む、本発明1010または本発明1011の装置。
[本発明1013]
スリーブをステントに固定する1つまたは複数の縫合をさらに含む、本発明1009〜1012のいずれかの装置。
[本発明1014]
ポリマー心臓弁をさらに含む前記装置であって、該弁が、
筒状ステントの長軸方向に沿って延びている中心軸を有し、かつ中心軸に沿って流入端から流出端まで延びている体液路を有する、弁本体と、
本体の外周に沿って配設され、かつ、それぞれが軸方向に先端へと延びておりかつそれぞれが長形ポストの少なくとも1つに取り付けられている少なくとも3つの可撓性弁ポストを含む、可撓性外部支持体と、
王冠状の装着用リングから延びている少なくとも3つの可撓性小葉であって、小葉のそれぞれが、可撓性弁ポストの各々の対の間に延びている装着用リングに沿った取り付け湾曲部を画定する取り付けられた縁部を有し、小葉の対が少なくとも3つの可撓性弁ポストのそれぞれで各々の接合部を画定している、少なくとも3つの可撓性小葉と
を含み、
王冠状のリングが、それぞれが可撓性弁ポストに対応しかつステントの長形ポストのそれぞれ1つに取り付けられている、複数の箇所を含む、
前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1015]
少なくとも3つの小葉が、静止時には部分的開口位置を画定し、流入端から流出端への方向に沿った順行血流時には中心軸から離れるように撓んだ完全開口位置を画定し、かつ、流出端から流入端への方向に沿った逆行血流時には中心軸に向かって撓んだ閉鎖位置を画定し、かつ、
閉鎖位置では、可撓性弁ポストのそれぞれが中心軸に向かって内側に屈曲する、
本発明1014の装置。
[本発明1016]
各弁ポストの先端が、弁ポストの残りの部分よりも高い可撓性を有する材料で形成されている、本発明1015の装置。
[本発明1017]
ステントが、弁を損傷させることなく、非捲縮(uncrimped)直径から捲縮直径へとステントの外径を小さくするために捲縮されるように構成されている、本発明1016の装置。
[本発明1018]
非捲縮直径が少なくとも約20mmであり、かつ捲縮直径が約6mm未満である、本発明1017の装置。
[本発明1019]
筒状ステントが形状記憶材料を含む、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1020]
形状記憶材料がニチノール(Nitinol)を含む、本発明1019の装置。
[本発明1021]
ステントが自己拡張型ステントである、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1022]
弁が本来の大動脈弁の場所の近位に配置されるようにステントがヒト心臓に植え込まれた時に、開口領域が冠動脈入口部の近位に配置されるように、ステントが構成されている、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1023]
本質的には生体適合性材料からなる、前記本発明のいずれかの装置。
[本発明1024]
前記本発明のいずれかの装置を用意する段階、および
弁が本来の大動脈弁の場所の近位に配置され、開口領域が冠動脈入口部の近位に配置されるように、該装置をヒト対象に経皮的に植え込む段階
を含む、方法。
[本発明1025]
装置を経皮的に植え込む段階が、
ステントを捲縮させること、
イントロデューサを用いてステントを所望の場所に配置すること、および
イントロデューサを取り出し、ステントを拡張させて非捲縮状態にすること
を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
ステントを拡張させて非捲縮状態にすることが、ステントを自己拡張させることを含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
長軸の周囲に配設されかつ近位端から遠位端まで延びており、両端間に筒状通路を画定する筒状ステントを用意する段階であって、
筒状ステントが近位部、遠位部、および近位部と遠位部との間に位置する中央部を有し、
近位部および遠位部がそれぞれ、長軸の周囲に配設された開口要素の少なくとも1つのリングを形成する支持支柱のメッシュを含み、
中央部が、
近位部と遠位部との間に長軸に対して実質的に平行な方向に沿って延びている複数の長形ポストと、
ポストに取り付けられかつポリマー弁を筒状通路内部に装着するように構成された、王冠状の装着用リングと、
複数の開口領域と
を含む、段階;
ステントをマンドレル上に配置する段階;
浸漬成形を含むプロセスによって、装着用リングに装着されたポリマー弁を形成する段階;ならびに
筒状支持体部材の外面に沿って近位部から遠位部まで延びているが中央部における開口領域は実質的に覆わない筒状ポリマー被覆を形成する段階
を含む、プロテーゼ装置を作製する方法。
[本発明1028]
筒状ポリマー被覆を形成する段階が、
ポリマー材料を筒状ステントの外面に適用すること、
ポリマー材料およびステントの周りに熱収縮チューブを配設すること、ならびに
ポリマー材料を軟化させ、熱収縮チューブの収縮を引き起こし、かつポリマー材料を成形して被覆を形成させる力を印加するために、熱を加えること
を含む熱成形プロセスを含む、本発明1027の方法。
[本発明1029]
被覆を形成する段階が、支持支柱および長形ポストの1つまたは複数を包むことを含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
熱成形プロセス中に、弁の熱損傷を避けるために弁に気流を適用することをさらに含む、本発明1028または1029の方法。
[本発明1031]
長形ポストまたは装着用リングに対応する場所で被覆を補強するために、ポリマー材料の細片を適用する段階をさらに含む、本発明1027〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
支柱に対応する場所で被覆を補強するために、追加的なポリマー材料を適用する段階をさらに含む、本発明1027〜1030のいずれかの方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
全体として、本技術は、ポリマー心臓弁を含む経皮的植え込み型デバイスに関する。本デバイスは、植え込み部位での解剖学的構成物の閉塞または損傷を防ぐ開口部を含む。
【0040】
例えば、
図1は、植え込み後の大動脈領域におけるプロテーゼ大動脈置換弁デバイス100を示している。デバイスは、心臓10と大動脈12との間の、大動脈弁が通常であれば位置すると考えられる位置のあたりにある。以下に詳述するように、デバイス100は、筒状ステント102内に装着されたポリマー弁101を含む。描写図が上から見たものか下から見たものかに応じて、左冠状血管および右冠状血管13/14または14/13も示されている。筒状ステントは、冠状血管13、14が遮断も閉塞もされないように配置された開口部104を含む。
【0041】
図2A、2Bおよび2Cは、筒状ステント102の図を示している。
図2Aは透視図を示している。
図2Bは、その長さに沿って切断されて、平らに広げられた、筒状ステント(sent)の図を示している。
図2Cは、筒状ステント102の1つの態様の写真である。
【0042】
図2A〜2Cを参照すると、筒状ステント102が長軸Aの方向に配設されている。ステント102は、近位端(図の下の方)から遠位端(図の上の方)に延びており、2つの端の間に筒状通路を画定している。弁101(図示されていない)は、軸Aに対して直角な筒状通路内のステント102上に装着されている。
【0043】
ステント102は、近位部201、遠位部202および中央部203を有する。中央部203は近位部および遠位部201、202の間に位置する。近位部および遠位部はそれぞれ、支柱204のメッシュを含む。支柱は、軸Aの周りに配設された開口要素210(図示するように、菱形要素)のリングを形成するように並べられる。中央部203は、軸Aと実質的に平行な方向に沿って延びて、近位部201を遠位部202に接続する長形ポスト205を含む。弁を装着するための装着要素が、ポスト205に取り付けられている。図示するように、装着要素は、以下にさらに詳細に説明する種類の三葉ポリマー弁を装着するのに適した王冠状の装着用リング206である。王冠状の装着用リング206の数箇所が、ポスト205に取り付けられている。いくつかの態様において、王冠状の装着用リング206を、追加的または代替的に、ステント102の近位部201に取り付けてもよい。例えば、示している態様に関して、取り付けは、ポスト205間のリング206上の近位側を向いた特徴物の間で行うことができる。
【0044】
図示するように、王冠状の装着用リング206は、ステント102の遠位端に向かって延びている3つの箇所を含む。しかし、他の態様において、例えば、1、2、3、4、5などのように、任意の他の数の箇所を用いてもよい。いくつかの態様において、装着要素は、任意の他の適した形状、例えば、円形、楕円形、ステント102の遠位端に近づいたり離れたりする正弦波状起伏を伴う環形、ステント102の遠位端に近づいたり離れたりする鋸歯波状起伏を伴う環形、などであってもよい。
【0045】
中央部203はまた、ポスト、支柱および任意の他の構造を全く含まない、装着用リング206の遠位側に位置する開口領域207も含む。これらの開口領域207は、
図1に関して記載された開口部104に対応する。
【0046】
典型的な態様において、開口領域207のそれぞれの面積は、近位部および遠位部に見られるメッシュを形成する開口要素210の面積よりも大きいと考えられる。例えば、さまざまな態様において、開口領域207のそれぞれの面積は、開口要素210のそれぞれの面積の少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍またはそれ以上である。例えば、いくつかの態様において、開口領域207のそれぞれの面積は、開口要素210の面積の2〜100倍の範囲内、またはその任意の部分範囲内にある。図示するように、面積の比は約50である。例えば、1つの態様において、開口領域207の面積は約300mm
2であり、一方、開口菱形要素210の面積は約6mm
2である。このため、近位部および遠位部201、202において開口要素210のリングを形成する比較的細かい支持支柱204のメッシュは、弁101およびステント102に対して優れた機械的支持を与える。一方、中央部203におけるより大きい開口領域207は、デバイス100の冠動脈入口部の近くに位置する部分が、確実にいかなる障害物も含まないか、または実質的に含まないようにする(例えば、
図1に示されているように)。
【0047】
図示するように、近位部および遠位部201および202はそれぞれ、支持支柱204から形成される開口菱形要素210の3つのリングを含む。他の態様において、より多数またはより少数のリング、例えば、1、2、3、4、5つまたはそれ以上のリングを用いてもよい。さまざまな態様において、要素210は、長方形、正方形、多角形、円形、楕円形などを含む他の形状を有してもよい。いくつかの態様において、支柱204は、不規則またはランダムなパターンを持つメッシュを形成してもよい。
【0048】
また、ポスト205の数を、中央部203が確実に、障害物を好適に含まないままであるように選択してもよい。いくつかの態様においては、例えばせいぜい6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、または1つのポストが用いられ得る。一般に、ポスト205の数は、近位部および遠位部201および202における要素の各リングに見られる開口要素210の数よりも少なくてよい。例えば、いくつかの態様において、各リングにはN個の開口要素210があり、M個のポスト205があり、ここでMおよびNは整数である。いくつかの態様において、NとMとの比は少なくとも2対1、3対1、4対1、5対1(図示するように)、6対1、7対1、8対1、9対1、10対1、またはそれよりも大きい。例えば、示された態様において、近位部および遠位部201および202はそれぞれ、開口菱形要素210の3つのリングを含み、ここで各リングは15個の要素210を有し、したがってN=15である。この態様は、3つのポスト205を有し、したがってM=3であり、NとMとの比(ration)は5対1となる。
【0049】
ステント102の支持支柱204およびポスト205は、任意の適した材料でできていてよい。いくつかの態様においては、形状記憶材料、例えば、ニチノール(Nitinol)という商標名で販売されている材料などのニッケルチタン合金が用いられる。さまざまな態様において、他の材料を、単独で、または金属、プラスチック、ポリマーもしくは他の材料を含む任意の適した組み合わせで用いてもよい。さまざまな態様において、材料は生体適合性であってよい。
【0050】
図3を参照すると、いくつかの態様においては、ステント102の外面に沿って近位部201から遠位部202まで延びていて、中央部203の開口領域207は実質的に覆わない、被覆300が形成される。被覆300は、長形ポスト205、ならびにステント102の近位部および/または遠位部201、202の支持支柱204の一部または全体を包んでよい。
【0051】
被覆は、任意の適した材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といったポリマー材料でできていてよい。いくつかの態様において、ポリマー材料は、Abiomed, Inc., Danvers, MAによってAngioflexという商標名で製造されている材料であってよい。いくつかの態様において、被覆300は、長形ポスト205または支持支柱204に対応する位置に、厚みが補強された領域を含む。いくつかの態様において、被覆300を、1つまたは複数の縫合を用いてステント102に固定してもよい。
【0052】
図4に示されているように、いくつかの態様において、ポリマー三葉弁101は王冠状の装着用リング206上に装着される。いくつかの態様において、弁は、上記で参照により組み入れられた弁出願に記載された種類のものであってよい。被覆300を、弁101の本体の外周に接続してもよい。
【0053】
図5は、弁101の詳細図を示している。弁101は、中心軸1116の周りに配設され、かつ流入端(図示では、下側)から流出端(図示では、上側)まで軸方向に延びている封鎖可能な流体通路を有する、輪状の、概して円筒形の弾性弁本体1101を含む。弁101は、装着用リング206(図示されていない)に接続され、かつ、それぞれが弁ポスト先端1120に対して軸方向に延びる少なくとも3つの可撓性弁ポスト1112を有する、可撓性外側部1110を含む。以下にさらに詳細に考察するように、弁ポスト先端1120は、弁ポスト1112よりも高い可撓性を有する材料でできていてよい。
【0054】
弁101は、それぞれが自由縁部1132、取り付けられた縁部1133および腹部1134を有する、少なくとも3つの可撓性小葉1130を含む。取り付けられた縁部1133は、弁ポスト1112の対の間に外側部の内径に沿って延びる取り付け湾曲部を形成するように、外側部1110に取り付けられる。自由縁部1132は、第1の弁ポスト先端1120から中心軸1116に向かって延びて第2の弁ポスト先端1120に戻る自由縁部曲線を画定する。隣接する小葉1130の自由縁部1132は、弁ポスト先端1120のそれぞれの箇所で接合部1135を画定する。いくつかの態様において、自由縁部1132は、図示するように、接合部1135の領域で上向きに湾曲しており、その結果、小葉1130は、弁ポスト先端1120のそれぞれの周りの領域で角状の形状を有する。
【0055】
弁本体の外側部1110は、装着用リング206に取り付けることができる。例えば、いくつかの態様において、弁本体の材料が、リング206の全体または一部分に付着してもよく、および/またはそれを包んでもよい。
【0056】
弁ポスト1112のそれぞれは、ステント102の長形ポスト205の各々(図示されていない)に取り付けることができる。例えば、いくつかの態様において、弁ポスト1112の材料は、例えば、
図4に示されているように、ポスト205の全体または一部分に付着する、および/またはそれを包むこともできる。いくつかの態様において、ポスト205は、弁ポスト1112に対する接続を容易にする1つまたは複数の特徴を含みうる。例えば、
図2A〜4に示されているように、ポスト205は、弁ポスト1112の材料がポスト205を通ってその周りに延びることでより強固な接続をもたらすことを可能にする穴を含んでもよい。
【0057】
動作時に、血液が順方向に、すなわち、図の上に向かって流れる場合には、血流のエネルギーによって小葉1130が弁本体1101の中心軸1116から離れるように撓む。この「開口」位置では、小葉1130は大きな流動オリフィス(図示されていない)を画定し、血液がその間を通って流れることを可能にする。小葉1130が開放位置にあるため、弁101は流体の流れに対してほとんど抵抗を及ぼさない。血流が逆方向に、すなわち、図の下に向かって流れる場合には、血流のエネルギーによって弁ポスト先端1120および小葉1130が中心軸1116に向かうように撓む。この「閉鎖」位置では、小葉130が自由縁部132に沿って互いに係合し、弁101が逆流に抗して封じられるのを助ける。
【0058】
図示するように、小葉1130は、静止時(すなわち、弁に対する順行性の流体圧も逆行性の流体圧も存在しない時)に、部分的開口位置になるように成型されている。例えば、いくつかの態様において、可撓性弁ポスト先端1120のそれぞれに最も近い領域における接合部の静止時開口は、0.60mmまたはそれ未満の範囲、例えば約0.25mmである。
【0059】
例えば、静止時位置にある弁101の開口面積(例えば、弁を通る流体の流れに供される開口断面積)は、小葉1130の非存在下における弁の開口面積の適切な割合のものでありうる。いくつかの態様において、部分的開口静止時位置における開口面積は、その開口面積の5%、10%、25%またはそれ以上を上回る、例えば、5〜10%、10〜20%、10〜30%の範囲、または他の適した範囲にあってよい。
【0060】
この構成は、順行血流時の小葉の開口に必要なエネルギーを、静止時に閉口位置となるよう形成された同等な弁の開口に必要なエネルギーよりも小さくする。部分的開口静止位置となるよう形成された場合の弁101の相対的開口容易性は、順行流圧力損失の減少をもたらす。
【0061】
さらに、部分的開口静止位置という小葉の幾何学的形状は、順行流に応じた小葉1130の対称的開口が、その流れが(例えば、心臓の解剖学的構造の特殊性または他の要因が原因で)均一に分布していない場合でさえも確実に実現されるのを助ける。例えば、部分的開口静止構成にある小葉1130を提供することにより、弁は、隣接する小葉1130の1つまたは複数の対の自由縁部の互いに対する望ましくない付着を回避することができる。これにより、小葉1130の間の接合部1135における遅い流速が防止される。
【0062】
さらに、この弁の構造は、「活動怠慢(lazy)小葉」、すなわち、その意図されている開口位置と閉口位置の間を適切かつ完全には移動しない小葉の出現を減らすかまたは防ぐことができる。
【0063】
遅い液流および/または非対称な流動パターンを回避することにより、順方向および逆方向の両方の血流による弁の適切な洗い流しが行われ、弁における望ましくない物質の蓄積が減少するか、またはなくなる。これにより、有害な影響、例えば血栓形成を減少させること、またはさらにはなくすこともできる。
【0064】
部分的開口静止位置から閉口位置へと移行する際、ステントポスト1112は、中心軸に向かって内側に屈曲し、小葉1130を適切に閉口させ、弁を逆流に対して封鎖する。この屈曲は、小葉1130における歪みを軽減し、断裂の発生を減少させるかまたはなくし、かつ弁101の信頼性および耐久性を改善する点で有益である。さらに、いくつかの態様において、弁ポストの先端1120は、弁ポスト1112の残りの部分よりも可撓性の高い材料で形成されている。これにより、ポスト1112の全体的な構造的完全性を犠牲にせずに、接合部1135付近の領域における可撓性を高めることが可能になる。したがって、小葉1130における望ましくない応力集中を軽減するかまたはなくしつつ、力を小葉1130から弁ポスト1112へと先端1120を通じて移すことができる。換言すると、可撓性ポスト先端1120は、小葉1130における応力集中を軽減しつつ、小葉1130の移行に対する弁ポスト1112への歪み逃し(strain relief)として機能し、それによってポリマー弁101の信頼性を向上させる。ポスト先端1120内での硬質材料から軟質材料への移行のため、比較的短い低プロファイルのポスト1112を用いうることにも注目されたい。
【0065】
いくつかの態様において、各可撓性弁ポスト先端1120は、小葉がポスト1112に取り付けられる場所(すなわち、接合部1135の近く)である小葉1130の自由縁部1132を越えて延びている。いくつかの態様において、各可撓性先端1120は、小葉の自由縁部を1mm〜2mm、例えば1.5mm越えて延びている。いくつかの態様において、この可撓性先端の構成は、より軟質な小葉1130の材料とより硬質なポスト1112との間の応力集中を軽減する働きをし、弁の信頼性を向上させる。図示されていないが、いくつかの態様において、ステント102のポスト205は、弁ポスト1112を通って延び、先端1120を通って外に出る。
【0066】
いくつかの態様において、小葉1130の自由縁部1132の一部分は実質的に直線であり、中心軸1116に向かって放射状に延びている。上記の通り、1つの態様において、小葉1130の自由縁部1132の一部分は、弁ポスト先端1120の箇所でわずかに上向きに湾曲している。1つの態様において、小葉1130の腹部1134は、小葉1130の自由縁部1132の厚みプロファイル未満の厚みプロファイルを有する。自由縁部1132の厚みプロファイルは、腹部1134の厚みプロファイルよりも1〜2.5倍大きい範囲にあってよい。小葉は、生体適合性ポリマー、例えばシリコーンおよび/またはポリウレタンでできていてよい。
【0067】
さまざまな態様において、当技術分野において公知の任意の適したポリマー弁を含め、任意の他の適した弁を、弁101について用いてもよい。
【0068】
さまざまな態様において、デバイス100については任意の適した寸法を用いてよい。例えば、いくつかの態様において、デバイス100は約23mmまたは約27mmの外径を有する。いくつかの態様において、デバイス100は、10〜100mmの範囲またはその任意の部分範囲にある外径を有する。いくつかの態様において、デバイスは約48mmの全長を有する。いくつかの態様において、デバイスは、10〜100mmの範囲またはその任意の部分範囲にある全長を有する。いくつかの態様において、筒状ステント102の壁厚は約0.5mmである。いくつかの態様において、筒状ステント102の壁厚は約0.1〜1.0mmまたはその任意の部分範囲である。
【0069】
いくつかの態様において、デバイス100は、例えば当技術分野で公知の経カテーテル手法を用いた経皮的植え込みが可能になるようにその外径を小さくするために捲縮させることができる。例えば.
図6は、デバイス100を捲縮させるために用いられるキットを図示している。キットは、円錐体601、キャップ602およびイントロデューサスリーブ603を含む。デバイス100は円錐体601の広端部に挿入され、キャップ602によって蓋が被せられる。イントロデューサスリーブ603は、デバイス100に取り付けられる(例えば、ステント102に取り付ける1つまたは複数のピンを用いて)。円錐体601が押し戻されると、スリーブ603が前進する。デバイス100は、それが円錐体の狭端部を通り抜ける時に捲縮されて、スリーブ100の中に挿入される。
【0070】
さまざまな態様において、デバイス100は、任意の適したサイズに捲縮させることができる。いくつかの態様においては、例えば、デバイス100が20〜30mmの範囲にある外径を有する場合に、デバイスは、4〜10mmの範囲にある外径に、例えば、カテーテルサイズが12〜30Fr(よく知られたFrenchカテーテルサイズの尺度)の範囲内にあるカテーテル導入システムとともに用いるのに十分に小さい外径へと、捲縮させることができる。いくつかの態様においては、弁101の小葉に隣接した開口領域207の配置により、損傷を受けやすい弁小葉を損傷させることなく、デバイスを小さいサイズに捲縮させることが可能になる。
【0071】
図7は、デバイス100の植え込みのための諸工程を説明している流れ
図700である。工程701では、デバイスを用意する。工程702では、デバイスを捲縮させてその外径を小さくする。工程703では、デバイスをイントロデューサに対して実装する(例えば、
図6を参照すると記載されているように)。工程704では、デバイスを対象における所望の場所に、例えば、経カテーテル法を用いて配置する。工程705では、例えば、イントロデューサを取り出すことによって、デバイスを再び拡張させてその非捲縮サイズに戻す。いくつかの態様において、デバイス100は自己拡張性である(例えば、ステント102の形状記憶特性が理由で)。いくつかの態様においては、バルーンカテーテルエキスパンダーなどのエキスパンダーを用いてもよい。
【0072】
図8は、
図4に示されたデバイス100を作製するための方法800を図示している。工程801では、弁101の形状に対応する形状を備えた一部分を有するマンドレルを用意する。工程802では、ステント102を用意し、マンドレル上に配置する。ステントは、成形、溶接、ろう付けなどを含む、当技術分野において公知の任意の適した手法を用いて構築することができる。
【0073】
工程803では、例えば、上記で参照により組み入れられた弁出願に記載されている種類の浸漬成形プロセスを用いて、弁101をマンドレル上に形成させる。
【0074】
例えば、いくつかの態様において、マンドレルおよびステント102をアルコールで洗浄する。次に、ポリマー導管を弁マンドレルおよびステント102上に配置する。任意で、可撓性材料(例えば、Angioflexなどのポリマー)の細片をステント102のポスト205に付着させて、この区域を補強するためのものを形成させてもよい。マンドレルアセンブリを、適した粘度、例えば730±50cpの範囲内の粘度を有するポリマー溶液中に浸漬させる。いくつかの態様において、ポリマー溶液は、Abiomed, Danvers, MAによって製造されているAngioflex溶液であってよい。この工程で、弁マンドレルを、例えばアルコールで洗浄する。次に、弁マンドレルを、ジオキサンの容器内に、例えば30秒間、ステント全体が覆われるように、上下逆さまにして入れる。次に、弁マンドレルをポリマー溶液中に浸漬させる。弁マンドレルを溶液から取り出した後に、余分な溶液を除去する。この浸漬プロセスを、所望の小葉プロフィールを得るために繰り返してもよい。
【0075】
1つの弁製造プロセスを上記で説明してきたが、当技術分野において公知の任意の適した製造手法を使用しうることが理解されるべきである。例えば、弁101を、Labma NMK, Woodhouse KA, Cooper SL. Polyurethanes in Biomedical Applications. 1998 CRC Press LLC, Boca Raton, Florida, p.33.;Lyman DJ, Searl WJ, Albo D, Bergman S, Lamb J, Metcalf LC, and Richards K. Polyurethane elastomers in surgery. Int J Polym Mater, 5:211, 1977;Boretos JW. Procedures for the fabrication of segmented polyurethane polymers into useful biomedical prostheses. National Institutes of Health, 1968.;snf Kardos JL, Mehta BS, Apostolou SF, Thies C, and Clark RE. Design, fabrication and testing of prosthetic blood vessels. Biomater Med Dev Artij Organs, 2:387, 1974に記載された手法のうち1つまたは複数を用いて製造することができる。
【0076】
工程804では、弁の成形後に、熱収縮チューブを、マンドレル上の導管およびステント102の上に配置する。熱収縮チューブは、ポリオレフィン、フルオロポリマー(フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリビニリデンフルオリドなど)、ポリ塩化ビニル、ネオプレン、シリコーンエラストマー、ヴァイトン(Viton)などといった熱可塑性材料でできていてよい。
【0077】
工程805では、導管を軟化させて、熱収縮チューブが収縮してマンドレルの周りを囲むように、例えばヒートガンを用いて、熱を加える。収縮性チューブは、導管の軟化した材料を成形させる力を印加して、例えば、それがステント102の周りを流れてその少なくとも一部分を包んで被覆300を形成するようにする。この成形プロセスを「熱成形」と称してもよい。いくつかの態様において、弁101は、弁101に対する熱損傷を避けるために、熱成形プロセス中に冷却される(例えば、気流の適用によって)。
【0078】
冷却後に、熱収縮チューブを取り外す(例えば、切断して剥がしとる)。弁101を、弁小葉を自由にするために切断してもよい(例えば、レーザー切断を用いて)。
【0079】
工程806では、アセンブリをマンドレルから取り外して、
図4に示すようなデバイス100を得る。いくつかの態様は、被覆300を、例えば縫合を用いてステント102に固定する別の追加の工程(図示されていない)を含む。
【0080】
いくつかの態様において、弁101は、上記のように部分的開口位置に形成されて、有益な血行力学性能を発揮しうる。
図9は、さまざまな厚みの小葉を備える弁101の態様について、流速の関数としての順行圧力損失を詳細に示した表を示している。圧力損失は、流速5L/分での約6〜7mmHgの損失から流速25L/分での約22〜25mmHgの損失まで、流速の関数として概ね直線的に増加する。他の態様は、さらに小さな圧力低下、例えば、示された値の2分の1またはそれ以下の低下を示してもよい。例えば、いくつかの態様は、流速10L/分で約5mmHgまたはそれ未満の圧力低下を有しうる。
【0081】
いくつかの態様において、この性能は、同等なバイオプロテーゼ弁または同等な機械弁の性能と同等であるかまたはそれよりも優れている。いくつかの態様は、細胞損傷および血栓形成をもたらす血流の乱れ、例えばキャビテーションおよび停滞を回避する、可撓性の周辺に配置された小葉の利用を特徴とする。さらなる性能面での利点には、バイオプロテーゼに伴ってみられることが典型的な信頼性の問題(すなわち、弁の機能不全をもたらす、石灰化および小葉の損耗といった構造変化による限られた寿命に伴う問題--生物組織の固定、および組織を支持ステントに装着するのに使用される方法は、この欠点の原因となりうる)の回避が含まれる。
【0082】
図10は、さまざまな厚みの小葉を備えた弁101の態様について、流速の関数としての順行圧力損失を詳細に示した弁漏出のプロットを示している。85mmHgの逆流圧下での弁漏出率は、いくつかの態様では約8mL/秒未満であり、別の態様では約4mL/秒未満である。さらなる態様は、さらに低い漏出率を有してもよい。この性能は、同等な機械弁またはバイオプロテーゼ弁の性能と同等であるか、またはそれよりも優れている。
【0083】
弁101の態様についての閉鎖容積損失は、例えば、約10mL未満、8mL未満、6mL未満、4mL未満、2mL未満、1mL未満、またはそれ未満であってよい(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%またはそれ以上という水力学的効率に対応する)。この性能は、同等な機械弁またはバイオプロテーゼ弁の性能と同等であるか、またはそれよりも優れている。
【0084】
本明細書に開示された態様は、あらゆる面で例示にすぎず、本発明を限定するものではないとみなされるべきである。本明細書中に記載されている技術は、いかなる点でも、上記の態様に限定されるものではない。それらの態様に対して、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を加えることができる。本発明の範囲は、それらの態様ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている。特許請求の範囲の意義およびそれと等価な範囲内で実現するさまざまな修正および変更は、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0085】
大動脈置換弁用のデバイスのいくつかの例を提示してきたが、本明細書に記載されたデバイスおよび手法を、他の心臓弁の置換を含む他の用途に適用してもよいことは理解されよう。
【0086】
成人対象に用いるためのデバイスの例を説明してきたが、いくつかの態様において、デバイスおよび手法を、乳児、若年または成体のヒトまたは動物の対象を治療するために用いうることは理解されよう。
【0087】
さまざまな本発明の態様を記載して例示してきたが、当業者には、本明細書に記載の機能を遂行するため、かつ/またはその結果物および/または1つもしくは複数の利点を得るためのさまざまな他の手段および/または構造が容易に想起されると考えられ、そのような変更および/または改変のそれぞれは、本明細書に記載の本発明の諸態様の範囲内に含まれるとみなされる。より全般的には、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、材料および構成は例示的であることを意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が用いられる1つまたは複数の具体的な用途に応じて変わることを、当業者は容易に理解するであろう。当業者は、慣行的な範囲を超えない実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明の具体的の態様の多くの等価物を認識すること、またはそれを確定することができるであろう。したがって、前記の諸態様はあくまで例示として提示されるのに過ぎないこと、および、本発明の諸態様は、具体的に記載され、特許請求される以外にも、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で実施しうることが理解されるべきである。本開示の本発明の諸態様は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法を対象とする。加えて、2つまたはそれ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相反的でなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0088】
上記の諸態様は、さまざまな任意のやり方で実施することができる。例えば、態様をハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの組み合わせを用いて実施してもよい。ソフトウェアで実施する場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピューターに与えられるか複数のコンピューターに分配されているかにかかわらず、任意の適したプロセッサーまたはプロセッサーの集合体に実行させることができる。
【0089】
また、さまざまな本発明の概念は1つまたは複数の方法として具体化することができ、そのうちの一例を提示してきた。本発明の一部として実施される行為は、任意の適した様式で順序づけることができる。したがって、行為が例示されたものとは異なる順序で実施される態様を構築することもでき、それには、例示的な態様では逐次的な行為として示されているにもかかわらず、いくつかの行為を同時に実施することが含まれうる。
【0090】
本明細書において定義され使用されるすべての定義は、辞書による定義、参照により組み入れられる文書中の定義、および/または定義される用語の通常の意味よりも優先されることが理解されるべきである。
【0091】
ここで本明細書および特許請求の範囲において用いる場合、不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、反するものが明示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。
【0092】
ここで本明細書および特許請求の範囲において用いる場合、語句「および/または」は、そのように等位結合した要素、すなわちある場合には接続的に存在し、他の場合には非接続的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を伴って列記された多数の要素も同様に、すなわちそのように等位結合した要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか否かにかかわらず、任意で他の要素が存在してもよい。したがって、非限定的な一例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンド用語とともに用いられる場合、1つの態様ではAのみ(任意でB以外の要素を含む)、別の態様ではBのみ(任意でA以外の要素を含む)、さらに別の態様ではAおよびBの両方(任意で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0093】
ここで本明細書および特許請求の範囲において用いる場合、「または」は、先に定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分類する場合、「または」または「および/または」は包括的なものとして解釈されるべきであり、すなわちいくつかの要素または要素のリストのうち少なくとも1つを含むが、複数も含み、任意で、列記されていないさらなる項目も含む。「〜の1つのみ」もしくは「〜の厳密に1つ」などの反するものを明示した用語、または特許請求の範囲において用いられる場合の「〜からなる」のみが、いくつかの要素または要素のリストのうち厳密に1つの要素を含むことを指すものとする。一般に、本明細書で用いる場合、「または」という用語は、「いずれか」、「〜の1つ」、「〜の1つのみ」または「〜の厳密に1つ」といった排他性の用語が先行する場合のみ、排他的な選択肢を示す(すなわち「一方または他方であり、両方ではない」)と解釈されるべきである。「本質的に〜からなる」は、特許請求の範囲において用いられる場合、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0094】
ここで本明細書および特許請求の範囲において用いる場合、1つまたは複数の要素をもつリストへの参照における語句「少なくとも1つ」は、要素リストの要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素リストの中に具体的に列記されたそれぞれおよびすべての要素による少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素リストの要素の任意の組み合わせを排除するものではないと理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素リストの中で具体的に特定された要素以外に、具体的に特定されたそれらの要素に関係するか否かにかかわらず、任意でいくつかの要素が存在しうることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等には「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの態様では、少なくとも1つ、任意で複数のAが存在するがBは存在しないこと(任意でB以外の要素を含む);別の態様では、少なくとも1つ、任意で複数のBが存在するがAは存在しないこと(任意でA以外の要素を含む);さらに別の態様では、少なくとも1つ、任意で複数のA、および少なくとも1つ、任意で複数のBが存在すること(任意で他の要素を含む);などを指すことができる。
【0095】
特許請求の範囲、ならびに上記の本明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「で構成される」などのすべての移行句はオープンエンドであり、すなわち、それらを含むがそれに限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる」および「本質的に〜からなる」のみ、米国特許審査手続便覧、第2111.03項に記載のように、それぞれクローズドまたはセミクローズドであるものとする。