特許第6295208号(P6295208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295208
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】デジタル入力クラスDオーディオアンプ
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20180305BHJP
   H03F 3/187 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H03F3/217
   H03F3/187
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-560020(P2014-560020)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公表番号】特表2015-508980(P2015-508980A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013028200
(87)【国際公開番号】WO2013130731
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】13/408,400
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】ファルザド サハンディエスファンジャニ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター カヴァナ
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−191176(JP,A)
【文献】 特表2007−532033(JP,A)
【文献】 特開2010−187399(JP,A)
【文献】 特開昭63−126320(JP,A)
【文献】 特開2004−214718(JP,A)
【文献】 特開2002−252527(JP,A)
【文献】 特開2001−339256(JP,A)
【文献】 特開2008−236010(JP,A)
【文献】 特表2013−504920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル入力オーディオ信号を受け取り、スピーカを駆動するための出力オーディオ信号を生成するオーディオアンプであって、
前記デジタル入力オーディオ信号を受け取、前記出力オーディオ信号を生成するように構成されるデジタル入力クラスDアンプを含み、
前記デジタル入力クラスDアンプが、
前記デジタル入力オーディオ信号を受け取、nビットの準デジタル信号を生成するように構成される第1の変調器と、
前記nビットの準デジタル信号を受け取、前記出力オーディオ信号を生成するように構成されるクラスD変調器と、
を含み、
前記クラスD変調器がアナログフィードバックループを実装し、
前記クラスD変調器が、
前記nビットの準デジタル信号を受け取り、変調器出力信号を生成するように構成されるパルス幅変調(PWM)変調器と、
前記変調器出力信号を受け取り、出力端子上に前記出力オーディオ信号を生成するように構成される出力段と、
を含み、
前記PWM変調器が、
前記準デジタル信号を受け取り、積分器出力信号を生成するために前記準デジタル信号をローパスフィルタリングするように構成される積分器と、
前記積分器出力信号を受け取り、制御信号に基づいてサンプルホールド(S&H)出力信号を生成するように構成されるサンプルホールド(S&H)回路と、
前記サンプルホールド回路の前記S&H出力信号と鋸波形信号とを受け取るように構成されるPWMコンパレータであって、前記積分器出力信号と前記鋸波形信号との間の差を示す前記変調器出力信号を生成するように構成される、前記PWMコンパレータと、
を含み、
前記変調器出力信号が、前記サンプルホールド回路のための前記制御信号として印加され、
前記積分器出力信号が前記鋸波形信号を上回って又は下回って交差するときに、前記サンプルホールド回路が所定の期間に前記S&H出力信号の信号レベルを保つように動作可能である、オーディオアンプ。
【請求項2】
請求項に記載のオーディオアンプであって、
前記nビットの準デジタル信号が、1つ又は複数の入力レジスタを介して前記積分器に結合され、
前記PWM変調器が、前記準デジタル信号を受け取って入力レジスタのバンクを介して前記積分器に前記準デジタル信号を示す信号を提供するように結合されるダイナミックエレメントマッチング(DEM)回路を更に含み、
前記DEM回路が、入力レジスタの前記バンクの不整合誤差化を平均化するために前記入力レジスタを前記準デジタル信号のデータビットに動的に割り当る、オーディオアンプ。
【請求項3】
請求項に記載のオーディオアンプであって、
入力レジスタの前記バンクが同一抵抗値のq個のレジスタを含み、qがnより大きく、
前記DEM回路がエンコーダスクランブラを含み、前記エンコーダが前記nビットの準デジタル信号のバイナリ−温度測定変換を実施するように構成され、前記スクランブラが前記q個のレジスタを前記変換されたデータビットに動的に割り当てるように構成される、オーディオアンプ。
【請求項4】
請求項に記載のオーディオアンプであって、
前記nビットの準デジタル入力信号が差動入力信号を含み、前記出力オーディオ信号が差動出力オーディオ信号を含み、
前記クラスD変調器が、前記差動出力オーディオ信号を前記積分器にフィードバックするため第1の出力信号フィードバック経路第2の出力信号フィードバック経路を含み、
前記クラスD変調器が、前記差動出力オーディオ信号を受け取るため前記出力段の前記出力端子に結合される出力チョッパ回路を更に含み、
前記出力チョッパ回路が、前記差動出力オーディオ信号を前記第1及び第2の出力信号フィードバック経路に交互に接続するように構成される、オーディオアンプ。
【請求項5】
請求項に記載のオーディオアンプであって、
前記クラスD変調器が、前記積分器の差動加算ノードに結合される第1の入力チョッパ回路を更に含み、前記第1の入力チョッパ回路が、加算される差動入力フィードバック信号を前記積分器の差動入力端子に交互に接続するように構成される、オーディオアンプ。
【請求項6】
請求項に記載のオーディオアンプであって、
前記nビット準デジタル信号が、1つ又は複数の入力レジスタを介して前記積分器に結合され、
前記PWM変調器が、前記準デジタル信号を受け取って前記準デジタル信号を示す信号を入力レジスタのバンクを介して前記積分器に提供するように結合されるダイナミックエレメントマッチング(DEM)回路を含み、
前記DEM回路が、入力レジスタの前記バンクの不整合誤差を平均化するため前記入力レジスタを前記準デジタル信号のデータビットに動的に割り当て、
前記クラスD変調器が、前記差動入力信号を前記DEM回路の前記差動入力端子に交互に接続するため前記DEM回路の差動入力端子に結合される第2の入力チョッパ回路を更に含む、オーディオアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオアンプに関し、特に、性能が改善されサイズが小さくされたデジタル入力クラスDオーディオアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオアンプは、ローパワーオーディオ信号(主に20Hz〜20kHzの周波数で構成される信号)を、スピーカを駆動するために適したレベルまで増幅するパワーアンプである。オーディオアンプは、スピーカでの再生のためのオーディオ信号を増幅するために、オーディオ再生チェーンの最終段に用いられる。スピーカは、ヘッドセット又は携帯デバイスのスピーカとし得る。オーディオアンプは、典型的には、アナログ領域の入力オーディオ信号を受け取り、クラスABアンプ又はクラスDアンプを用いて実装されることが多い。
【0003】
最近では、オーディオ信号は、オーディオ信号がデジタル領域にあるデジタル用途から生成されることが多い。例えば、デジタル入力オーディオ信号は、コンパクトディスク(CD)又はデジタルオーディオプレーヤに記憶されるデジタルオーディオデータから生成され得る。デジタル入力オーディオ信号は、コーデック(符号器−復号器)又は無線通信デバイスのベースバンドからも生成され得る。オーディオアンプは典型的にはアナログ入力オーディオ信号を受け取るように構成されるので、デジタル入力オーディオ信号は、典型的には、アナログ信号に変換され、次いで、従来のオーディオアンプアーキテクチャを用いて増幅される。
【0004】
図1は、デジタル入力オーディオ信号を受け取るように構成される従来のオーディオアンプを示す概略図である。18〜24ビットのデジタル信号などのデジタル入力オーディオ信号2に適応するため、オーディオアンプ1が、デジタル−アナログコンバータ(DAC)4を含んで、デジタル入力信号2をアナログ信号5に変換する。変換されたアナログ信号5は、次いで、アンプ6に結合され、増幅されて、出力オーディオ信号7が生成される。出力オーディオ信号7は、スピーカ8を駆動するように結合される。アンプ6は、クラスABアンプ又はクラスDアンプとして実装され得る。クラスABアンプは、アナログドライバであり、変換されたアナログ信号5を、スピーカを駆動するために十分なパワーを有するように増幅する。クラスDアンプは、その出力を完全オン又は完全オフに切り替えることによって動作し、したがって「デジタル」アンプと見なされる。クラスDアンプは、ローパスフィルタによってフィルタリングされるデジタル出力信号を生成して、スピーカを駆動するための所望の出力オーディオ信号7を導出する。
【0005】
デジタル−アナログコンバータ(DAC)の設計は周知のものである。典型的には、図1に示すように、DACは、変調器9及び後段のアンプ10を用いて構築される。DAC内のアンプ10は、DACのための増幅機能のみならずローパスフィルタリング機能を提供する「再構築フィルタ」とも呼ばれる。したがって、デジタル入力オーディオ信号2からスピーカ8までの信号経路において、オーディオ信号は、オーディオ信号に潜在的にノイズを導入し得る2つのアンプ回路を経ることになる。より具体的には、デジタル入力オーディオ信号は、それ自体がノイズ成分を含み得、これらのノイズは、アンプ6の構造(クラスAB又はクラスD)にかかわらず、DACアンプ10において増倍され得る。次いで、アンプ6の増幅段が、オーディオ信号にさらにノイズを導入し得る。実際には、スピーカで許容され得るノイズの量には制限がある。
【0006】
デジタル入力オーディオ信号の場合には特に、オーディオアンプの出力においてノイズを低減する必要がある。例えば、ノイズレベルが30μVであることが、最近の用途で必要とされることがある。図1のオーディオアンプなどの従来のオーディオアンプは、100μVなどの大きなノイズレベルを受け、最近の用途の低ノイズ要件を満たすことができない。ノイズレベルを改善するために、従来のオーディオアンプは、高度なDACを用いて実装されなければならず、かつ、2つのアンプ回路を低ノイズレベルに保つために高消費電力レベルで動作されなければならない。しかし、このような高消費電力レベルは、最終オーディオ出力で実現され得るノイズ低減量を制限してしまう。
【0007】
デジタル入力オーディオ信号を受け取り、デジタル出力オーディオ信号を提供するためのオーディオアンプ設計が提案されている。このような回路ブロックは、しばしば、「デジタル入力クラスDオーディオアンプ」と呼ばれる。デジタル入力クラスDオーディオアンプでは、デジタル−アナログ変換(DAC)回路が取り去られ、デジタル入力オーディオ信号がデジタル入力クラスDオーディオアンプによって直接的に、最初にアナログ領域に変換されることなく、処理される。実際の実装では、デジタル入力クラスDアンプの実装を完全なものにするためにデジタル処理及びフィードバックのための回路要素が必要とされる。
【0008】
図2は、例示の実装形態におけるデジタル入力クラスDアンプを用いるデジタル入力オーディオアンプシステムの概略図である。図2を参照すると、デジタル入力オーディオアンプシステム20が、mビットのデジタル入力オーディオ信号2を受け取り、出力オーディオ信号25を生成して、スピーカ8を駆動する。オーディオアンプシステム20では、mビットデジタル入力オーディオ信号2は、まずシグマ−デルタ(ΣΔ)変調器22に結合され、シグマ−デルタ変調器22は、mビットデジタル信号を1ビットデータストリーム23に変換する。1ビットデータストリーム23は、典型的には、デジタル入力オーディオ信号2のm倍の周波数で切り替わる。より具体的には、1ビットデータストリーム23の周波数は、シグマ−デルタ変調器22のオーバーサンプリング比の関数であり、最低周波数がデジタル入力オーディオ信号のm倍となる。例えば、デジタル入力オーディオ信号2が24ビットデジタル信号である場合、1ビットデータストリームは、デジタル入力オーディオ信号の24倍の周波数で切り替わる。1ビットデータストリームは、デジタル入力クラスDアンプ24に提供されて、増幅され、処理される。デジタル入力クラスDアンプ24は、スピーカ8を駆動するための出力オーディオ信号25を生成する。動作において、デジタル入力クラスDアンプ24は、高周波数の1ビットデジタルデータストリームを受け取り、1ビットデータストリームの周波数を、約400kHzなどのスピーカに適した周波数レベルまで下げるように動作する。
【0009】
実際の実装では、クラスDアンプ24に電力供給する電力(Vdd)は理想的な電力源ではない。場合によっては、クラスDアンプ24は、バッテリによって電力供給され、また、接地電位は経時的にドリフトし得る。出力オーディオ信号25は、概して、ハイパワー信号(例えば2ワット)である。スピーカワイヤ上の接地電位の変動は、出力オーディオ信号を歪ませ得る。したがって、実際の実装では、歪みを補正するためにオーディオ出力ノード(出力オーディオ信号25)からオーディオ入力(ΣΔ変調器22)までのフィードバックループが必要とされる。図2に示す例示実施形態では、歪みによる誤差を補正するため、出力オーディオ信号25をデジタル化し、デジタル化された信号をΣΔ変調器22に提供するように結合されるアナログ−デジタルコンバータ(ADC)26を用いてフィードバックループが実装される。
【0010】
しかし、フィードバックループが必要なことから、実際の実装では、デジタル入力オーディオアンプシステム20は、実際的でなく、コストが許容できない。これは、フィードバックループが、出力オーディオ信号を正確にサンプリングし得る高度なADC26を必要とするからである。実際には、出力オーディオ信号25は、スピーカワイヤのインダクタンスによる信号遷移におけるリンギングを伴って切り替わる。出力オーディオ信号が約400kHzで切り替わると仮定すると、信号期間は2.5μsであり、立ち上がりエッジは約40nsである。出力オーディオ信号を正確にサンプリングするには、ADCは、40nsの時間期間にわたって少なくとも4回サンプリングする必要がある。そのため、ADCが出力オーディオ信号を正確にサンプリングし得るように、ADCは、十分に低いノイズレベルを実現するために約100dBの分解能で、10nsのサンプリングクロックを有する必要がある。しかし、100MHzのサンプリングレートを有するADCは高価すぎて実装できない。このような高サンプリングレートのADCが必要なことから、実際の実装では、図2のオーディオアンプシステム20のコストが高くなり過ぎ、実際的でなくなる。
【発明の概要】
【0011】
一実施形態によれば、デジタル入力オーディオ信号を受け取り、且つ、スピーカを駆動するための出力オーディオ信号を生成するオーディオアンプが、デジタル入力オーディオ信号を受け取るように、及び出力オーディオ信号を生成するように構成されるデジタル入力クラスDアンプを含む。デジタル入力クラスDアンプは、デジタル入力オーディオ信号を受け取るように、及びnビットの準デジタル信号を生成するように構成される第1の変調器と、nビット準デジタル信号を受け取るように、及び出力オーディオ信号を生成するように構成されるクラスD変調器とを含み、クラスD変調器はアナログフィードバックループを実装する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】デジタル入力オーディオ信号を受け取るように構成される従来のオーディオアンプを示す概略図である。
図2】例示の実装形態におけるデジタル入力クラスDオーディオアンプを用いるデジタル入力オーディオアンプシステムの概略図である。
【0013】
図3】本発明の実施形態に従ったデジタル入力クラスDオーディオアンプを用いて実装されるオーディオアンプを示す。
【0014】
図4】本発明の実施形態に従ったデジタル入力クラスDアンプの概略図である。
【0015】
図5】本発明の一実施形態に従ったデジタル入力クラスDアンプの実装を示す概略図である。
【0016】
図6】本発明の一実施形態に従った、図5のクラスD変調器に組み込まれ得るPWM変調器の概略図である。
【0017】
図7】本発明の一実施形態に従った、差動シグナリングと、図5のクラスD変調器に組み込まれ得る2つの積分器段を備えたPWM変調器の概略図である。
【0018】
図8】本発明の一実施形態に従った、クラスD変調器に組み込まれ得るサンプルホールド回路を組み込むPWM変調器の概略図である。
【0019】
図9図8のサンプルホールド回路の動作を示す信号波形図である。
【0020】
図10】本発明の実施形態に従った、マルチビット差動入力信号を受け取るように構成される差動PWM変調器を組み込むクラスD変調器の概略図である。
【0021】
図11】本発明の実施形態に従った、マルチビット差動入力信号を受け取るように構成される差動PWM変調器を組み込み、さらにダイナミックエレメントマッチングを組み込むクラスD変調器の概略図である。
【0022】
図12】本発明の実施形態に従った、差動PWM変調器に適用され得るダイナミックエレメントマッチング回路を示す。
【0023】
図13】本発明の実施形態に従った、出力チョッパを組み込む差動PWM変調器を組み込むクラスD変調器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示の実施形態に従って、オーディオアンプとして構成されるデジタル入力クラスDアンプが、デジタル入力オーディオ信号を受け取り、クラスD変調器に結合されるDAC変調器を用いてデジタル入力オーディオ信号を処理する。デジタル入力クラスDアンプは、スピーカを駆動するための出力オーディオ信号を生成する。このデジタル入力クラスDアンプの特徴は、デジタル入力オーディオ信号がアナログ領域に完全には変換されず、DAC変調器がデジタル入力オーディオ信号を「準デジタル信号」と称する半デジタル/半アナログ状態の信号に変換することである。次いで、準デジタル信号は、クラスD変調器にフィードするために用いられ、そこで準デジタル信号は増幅されフィルタリングされる。クラスD変調器は、アナログフィードバックを用いるアナログ制御ループを形成する。このように、デジタルフィードバックループは必要とされず、デジタル入力クラスDアンプは、極めて低い出力ノイズレベルを実現し得る一方で、使用するシリコンの面積は少なく、かつ低コストで実装され得る。このように構成されるデジタル入力クラスDアンプは、オーディオ信号経路全体において単一の増幅段しか含まず、そのため、デジタル入力クラスDアンプは極めて低い出力ノイズレベルを実現し得る。
【0025】
実施形態では、デジタル入力クラスDアンプ内のクラスD変調器は、従来のクラスDアンプアーキテクチャを用いて実装される。他の実施形態において、出力ノイズ特性を改善するために、強化された特徴を組み込む新規のクラスD変調器アーキテクチャが用いられる。実施形態では、クラスD変調器はパルス幅変調(PWM)変調器として実装される。一実施形態では、クラスD変調器は、PWM変調器のPWMコンパレータの前にサンプルホールド回路を含み得る。他の実施形態において、クラスD変調器はさらに、ノイズ及び回路要素の不整合によって生じる偏差を除去するためにダイナミックエレメントマッチング(DEM)及び/又は出力チョッピングを実装する。
【0026】
ここで説明するデジタル入力クラスDアンプの特徴の一つは、デジタル入力オーディオ信号を処理するために、完全なDAC回路ではなくDAC変調器しか用いられないことである。ローパスフィルタリング機能を実現する従来のDAC回路の一部であるDAC再構築フィルタは用いられず、デジタルオーディオ信号のアナログ領域への完全な変換も実施されない。その代わりに、デジタル入力オーディオ信号は、DAC変調器によって処理されて準デジタル信号になる。ここで説明するデジタル入力クラスDアンプは、クラスD変調器のローパスフィルタリング特性を利用して、DAC変調器によって生成される準デジタル信号の高周波数成分のフィルタリングを実施する。より具体的には、いくつかの実施形態では、クラスD変調器は、準デジタル信号の高周波数成分のローパスフィルタリングを提供するために積分器を組み込む。この積分器は、入力オーディオ信号のアナログ的性質である低周波数成分を処理する。そのため、ここで説明するデジタル入力クラスDアンプは、クラスD変調器に依存してローパスフィルタリング機能を提供し、そのため、従来のDACで用いられるDAC再構築フィルタがオーディオアンプ信号経路から取り除かれる。このように構成されるので、このデジタル入力クラスDアンプは、低減されたシリコン面積及び低減された電力消費で実装され得る。
【0027】
また、ここで説明するデジタル入力クラスDアンプは、クラスD変調器におけるアナログフィードバックループに依存してフィードバック制御ループを実現する。ここで説明するデジタル入力クラスDアンプは、図2の従来のデジタルオーディオアンプシステムで用いられるものなどのデジタルフィードバックループを不要にする。したがって、このデジタル入力クラスDアンプは、従来の実装におけるような、フィードバックループにおける高価なアナログ−デジタルコンバータ(ADC)を必要とすることなく実装され得る。
【0028】
要約すると、ここで説明するデジタル入力クラスDアンプは、DAC再構築フィルタを用いずに、かつ、デジタルフィードバック用の高価なADCを用いずに実装され得る。このように、このオーディオアンプは、より小さなシリコン面積を用いて実装され得、集積回路のダイサイズが小さくなる。また、このオーディオアンプは、より低い電力消費レベルで動作し得る。
【0029】
開示されるデジタル入力クラスDアンプは、アンプ出力において極めて低いノイズレベルを実現し得る。特に、このように構築されるオーディオアンプは、30μV以下の出力ノイズレベルを実現し得る。特に、DAC再構築フィルタをなくすことによって、オーディオアンプ信号経路は、アンプ出力ノイズを低減する効果を有する単一のアンプ回路しか含まない。
【0030】
デジタル入力クラスDオーディオアンプシステム
図3は、本発明の実施形態に従ったデジタル入力クラスDオーディオアンプを用いて実装されるオーディオアンプを示す。図3を参照すると、オーディオアンプ30が、デジタル入力クラスDアンプ40を用いて実装される。デジタル入力クラスDアンプ40は、mビットのデジタル入力オーディオ信号2を受け取り、スピーカ8を駆動するため出力オーディオ信号7を生成する。デジタル入力オーディオ信号2は18〜24ビットとし得る。このように構築されるので、オーディオアンプ30は、いかなるデジタルフィードバックループも用いずに実装される。デジタル入力クラスDアンプ40は、ノイズレベルが極めて低いオーディオ出力信号7を生成するためのフィルタリング及びフィードバック機能のすべてを実現する。
【0031】
図4は、実施形態に従ったデジタル入力クラスDアンプの概略図である。図4を参照すると、デジタル入力クラスDアンプ50(クラスDアンプ50)が、mビットのデジタル入力オーディオ信号2を受け取り、スピーカ8を駆動するため1対のスピーカワイヤ上に出力オーディオ信号65を生成する。デジタル入力オーディオ信号2は18〜24ビットとし得る。クラスDアンプ50内では、mビットデジタル入力オーディオ信号2は、DAC変調器55のみを用いて実装される改変型DAC回路54に結合される。DAC変調器55は、mビットデジタル入力オーディオ信号をnビット準デジタル信号56に変換する。次いで、nビット準デジタル信号56は、クラスD変調器60に提供されて、増幅され、処理される。クラスD変調器60は、400kHz近辺など、スピーカ8を駆動するために適した周波数レベルを有する出力オーディオ信号65を生成する。一実施形態では、nビット準デジタル信号は2ビット(n=2)を有し、信号レベルは4つである。
【0032】
改変型DAC54によって生成されるnビット準デジタル信号56は、ローパスフィルタリング機能を実施するための再構築フィルタを改変型DAC回路54が含まないので、高周波数で切り替わる。代わりに、クラスD変調器60は、アナログフィードバックループを実装するだけでなく、nビット準デジタル信号56に対してローパスフィルタリングを実施して、出力オーディオ信号の安定性及び精度を保証する。
【0033】
図4は、実施形態におけるデジタル入力クラスDアンプの基本的アーキテクチャを示す。図5は、一実施形態に従ったデジタル入力クラスDアンプの実装を示す概略図である。図5を参照すると、デジタル入力クラスDアンプ100(クラスDアンプ100)が、mビットのデジタル入力オーディオ信号2を受け取り、スピーカ8を駆動するため1対のスピーカワイヤ上に出力オーディオ信号125を生成する。クラスDアンプ100では、mビットデジタル入力オーディオ信号2は、18〜24ビットとし得、本実施形態ではN次シグマ−デルタ(ΣΔ)変調器として実装されるDAC変調器104に結合される。ΣΔ変調器104は、mビットデジタル入力オーディオ信号を、nビットデータストリームであるnビット準デジタル信号105に変換する。nビットデータストリーム105は、DAC変調器104のオーバーサンプリング比の関数である周波数を有し、mビットデジタル入力オーディオ信号のm/n倍である最低周波数を有する。一実施形態では、ΣΔ変調器104は2ビット準デジタル信号105を生成する。一実施形態では、ΣΔ変調器104は5次ΣΔ変調器として実装される。
【0034】
本実施形態では、nビット準デジタル信号105は、信号105のDC電圧レベルを調整するためレベルシフタ106に結合される。デジタル信号では論理ハイ又は論理ローレベルを認識すればよいので、厳密な電圧レベルが不可欠ではないが、アナログ信号は厳密な電圧レベルが不可欠である。したがって、準デジタル信号105の電圧レベルは、それが、クラスD変調器によって形成されるアナログループにフィードされるので、重要である。電源電圧が変動して準デジタル信号105の電圧レベルがドリフトする場合、クラスD変調器は、この電圧ドリフトを入力信号と認識することがあり、これは電源電圧変動除去(power supply rejection)の問題となる。本発明の実施形態では、レベルシフタ106は、安定した電圧レベルを有するレベル調整済みnビット信号107を生成するために用いられる。レベルシフタ106は、バンドギャップ電圧などの確かな固定基準電圧に基づいて動作する。このようにして、レベルシフタ106は、電源電圧変動から信号107を隔離する。本発明の実施形態では、レベルシフタ106は、シングルエンド信号又は差動信号としてnビット信号107を生成する。次いで、レベル調整済みnビット信号107は、クラスD変調器110の入力に結合される変調器入力信号Mod_Inとして機能する。レベルシフタ106は、任意選択であり、電源が安定している場合や電源電圧変動除去が必要とされない場合など、デジタル入力クラスDアンプの他の実施形態において省略され得る。
【0035】
本実施形態では、クラスD変調器110は、PWM変調器112及び出力段116を用いて実装される。PWM変調器112は、レベル調整済みnビット信号107を受け取るように、及びデジタル入力オーディオ信号2を示すスイッチング又はデジタル出力信号Mod_Out114を生成するように構成される。次いで、デジタル出力信号Mod_Out114は、出力段116を駆動するように結合されて、スピーカ8を駆動するための出力オーディオ信号125を生成する。本発明の実施形態では、出力段116は、Hブリッジ出力フィルタとも称するハーフブリッジスイッチを用いて実装される。
【0036】
クラスD変調器
実施形態では、デジタル入力クラスDアンプ100は、従来のクラスD変調器アーキテクチャを用いて実装され得る。クラスD変調器は、パルス幅変調(PWM)又はシグマ−デルタ(ΣΔ)変調を用いて実装され得る。本発明の実施形態では、クラスD変調器110はPWM変調器を用いて実装される。PWM変調器は、干渉を避けるために変調周波数を選択し得るという利点を有する。移動通信用途などのいくつかの用途では、送信周波数との干渉を避けるために変調周波数が選択され得るので、PWM変調が好ましい。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に従った、図5のクラスD変調器に組み込まれ得るPWM変調器の概略図である。図6を参照すると、シングルエンドPWM変調器132が、入力レジスタR1を介して変調器入力信号(Mod_In)を受け取る。PWM変調器132は、アンプ130と、積分器として構成されるコンデンサC1とを含む。この積分器は、変調器入力信号Mod_Inを効果的にローパスフィルタリングして、変調器入力信号の低周波数成分のみをコンパレータ135に通過させる。コンパレータ135は、積分器からのフィルタリングされた信号を、変調周波数で切り替わる鋸波形と比較する。一実施形態では、鋸波形の変調周波数は384kHzである。コンパレータ135は、PWMコンパレータとして動作し、変調器入力信号を示すパルス幅変調された信号である変調器出力信号Mod_Outを生成する。PWM変調器132の変調器出力信号Mod_Outは、クラスDアンプ100内のクラスD変調器110の出力段116に結合される。
【0038】
図6のPWM変調器は、単一の積分器段を備えたシングルエンド実装形態を示す。他の実施形態において、PWM変調器は、2つ又はそれ以上の積分器段を用いて実装され得る。また、PWM変調器は、出力ノイズレベルを改善するために差動シグナリングを用いて実装されてもよい。図7は、本発明の一実施形態に従った、図5のクラスD変調器に組み込まれ得る、差動シグナリングを用い2つの積分器段を備えたPWM変調器の概略図である。図7を参照すると、差動入力PWM変調器162が、差動変調器入力信号Mod_InN及びMod_InPを受け取り、差動変調器出力信号をMod_OutN及びMod_OutPを生成する。PWM変調器162は、アンプ164及び165を含み、それぞれのコンデンサとともに2つの積分器段を形成する。これら2つの積分器段からのフィルタリングされた信号は、鋸波形と比較されるため差動PWMコンパレータ166に結合される。PWMコンパレータ166は、差動変調器出力信号Mod_OutN及びMod_OutPを生成する。
【0039】
一実施形態では、クラスD変調器110はアナログフィードバック制御ループを実装する。一実施形態では、PWM変調器は、高周波数でのオーバーシュートがない滑らかな信号転送機能を実現するために、CIFB(cascaded integrators in feedback)アーキテクチャを用いて実装される。より具体的には、図6に示すシングルエンド実装では、変調器出力信号は、レジスタR2を介して積分器(アンプ130)の入力にフィードバックされる。図7に示す差動実装では、差動変調器出力信号は、それぞれのレジスタを介して各カスケード積分器の差動入力にフィードバックされる。他の実施形態において、フィードバック信号は、PWM変調器出力信号又はクラスD変調器出力信号とし得る。
【0040】
強化されたクラスD変調器
実施形態では、上述したデジタル入力クラスDアンプは、オーディオアンプシステムの出力ノイズレベルを改善するための強化点を組み込む新規のクラスD変調器アーキテクチャを用いて実装される。特に、以下で説明する強化点の1つ又は複数を備えて実装されるデジタル入力クラスDアンプは、極めて低いノイズレベルを実現し得る。
【0041】
(1)サンプルホールド回路
実施形態では、クラスD変調器110は、クラスDアンプの性能を改善するために、PWM変調器の積分器とPWMコンパレータの間に結合されるサンプルホールド回路を備えたPWM変調器を用いて実装される。図8は、本発明の一実施形態に従った、クラスD変調器に組み込まれ得るサンプルホールド回路を組み込むPWM変調器の概略図である。図8を参照すると、図5のデジタル入力クラスDアンプ100に組み込まれるとき、PWM変調器212が、DAC変調器から準デジタル信号を変調器入力信号Mod_In220として受け取る。準デジタル信号は、ローパスフィルタリングを経ていないので、高周波数信号である。変調器入力信号220は、まず、アンプ224及びコンデンサC1によってフィードバック構成で形成される、PWM変調器212の積分器に結合される。PWM変調器212の積分器は変調器入力信号のローパスフィルタリングを提供するが、その結果の、積分器によって生成されるアナログ信号226は依然としてノイズ成分を含む。このノイズを含むアナログ信号226が、鋸波形230と比較されるためにPWMコンパレータ232に直接的に結合されると、アナログ信号に乗っているノイズにより、複数のクロスオーバーが検出され得、PWMコンパレータ232の出力を頻繁に切り替えるため、複数の狭いパルスがコンパレータ出力として生成され、望ましくない。
【0042】
実施形態に従って、PWM変調器212の積分器(アンプ224)とPWMコンパレータ232との間にサンプルホールド回路228が組み込まれる。サンプルホールド回路228は、アンプ224からアナログ信号226を入力信号として受け取り、かつ、PWMコンパレータ232の出力信号234を制御信号として受け取る。サンプルホールド回路228の動作を図9を参照して示す。図9を参照すると、PWMコンパレータ232は、積分器出力アナログ信号226の値と鋸波形230の値とを比較する。アナログ信号226が鋸波形230を上回って交差すると、変調器出力信号Mod_Out234が論理ハイに切り替わる。アナログ信号226が鋸波形230を下回って交差すると、変調器出力信号Mod_Out234が論理ローに切り替わる。
【0043】
動作において、例えば時間T1で、アナログ信号226が鋸波形230を上回って交差すると、PWMコンパレータ232は論理ハイに切り替わり、サンプルホールド回路228は、ノード229におけるアナログ信号のレベルを保つように動作し、そのため、所与の期間PWMコンパレータ232でのさらなる交差は起こり得ない。サンプルホールド回路は、この所与の期間後、ノード229における保持を解除する。次いで、例えば時間T2で、アナログ信号226が鋸波形230を下回って交差すると、PWMコンパレータ232は論理ローに切り替わり、サンプルホールド回路228は、ノード229におけるアナログ信号のレベルを保つように動作し、そのため、所与の期間PWMコンパレータ232でのさらなる交差は起こり得ない。サンプルホールド動作は時間T3及びT4で継続する。
【0044】
PWM変調器212にサンプルホールド回路228を組み込むことによって、PWM変調器及びデジタル入力オーディオアンプの性能が強化される。より具体的には、サンプルホールド回路228は、PWM変調器出力234において高周波数パルスが生成されないように動作する。したがって、フィードバックループのアナログ帯域幅が高いまま維持され得、全高調波歪みが低減されるという利益が得られるが、全体的な帯域幅は、PWM変調器出力234における高周波数パルスの生成を妨げるサンプルホールド回路によって制限される。
【0045】
(2)ダイナミックエレメントマッチング(DEM)
図5に戻り、本発明の実施形態では、ΣΔ変調器104はnビット準デジタルデータ105を生成する。1ビットしか用いられない場合、デジタル入力クラスDアンプは、所与の用途に対して十分に低いSNRを実現し得ないことがある。そのため、いくつかの実施形態では、ΣΔ変調器104は、デジタル入力クラスDアンプ100が極めて低い出力ノイズレベルを実現できるように、2ビット又はそれ以上の準デジタル信号を生成する。一実施形態では、ΣΔ変調器104は、クラスD変調器110に対して2ビット準デジタル信号を生成する。この2ビットは、ΣΔ変調器によって生成される最下位ビット及び最上位ビットとし得る。また、一実施形態では、レベルシフタ106は、2ビット準デジタル信号を、変調器入力信号Mod_In107としての2ビット差動出力信号に変換する。
【0046】
マルチビット入力信号がクラスD変調器110に提供される場合、クラスD変調器のPWM変調器112は、マルチビット変調器入力信号を受け取るように構成される。図10は、本発明の実施形態に従った、マルチビット差動入力信号を受け取るように構成される差動PWM変調器を組み込むクラスD変調器の概略図である。図10を参照すると、クラスD変調器310が、PWM変調器312及び出力段346を含む。PWM変調器312は、3次積分器324並びに後段のサンプルホールド回路328及びPWMコンパレータ332を用いて実装される。PWMコンパレータ332の出力は、出力オーディオ信号AoutN及びAoutPを生成するため出力段346を駆動する。
【0047】
本実施形態では、マルチビット差動変調器入力信号を受け取るために、PWM変調器312は重み付け入力レジスタのバンクを含み、各レジスタは入力信号の一方の極性の1ビットを受け取る。差動入力信号が2ビットを有する場合、入力ビットInN[0]及びInP[0]は、同じ重みRiを有するそれぞれのレジスタに結合され、一方、入力ビットInN[1]及びInP[1]は、同じ重みRi/2を有するそれぞれのレジスタに結合される。しかし、デバイス不整合のために、入力レジスタの各対の抵抗値は整合しないことがある。例えば、ビット1に対する抵抗値は理想的にはRi/2であるはずであるが、実際にはRi/2+Δであり、ここでΔは抵抗不整合による抵抗値変動を示す。このようなデバイス不整合により、信号対ノイズ比(SNR)が所与の用途で必要とされるレベルよりも大きくなることがある。いくつかの実施形態では、PWM変調器312は、マルチビット変調器入力信号を受け取るための同一入力レジスタのバンクを含み得る。等しい抵抗値のレジスタを作製することのほうが容易であるが、同一入力レジスタでも抵抗値変動を有し、そのため、デバイス不整合誤差が生じる。
【0048】
有利には、マルチビット変調器入力信号を受け取るためPWM変調器312への入力においてダイナミックエレメントマッチング(DEM)が実装される。ダイナミックエレメントマッチングは、各接続点における等価なデバイスの時間平均を互いに等しく又はほぼ等しくするように不整合デバイスの接続をランダムにするか又は動的に再配置することによって不整合誤差を低減させる技術である。図11は、マルチビット差動入力信号を受け取るように構成される差動PWM変調器を組み込み、さらにダイナミックエレメントマッチングを組み込む、クラスD変調器の概略図である。
【0049】
図11を参照すると、クラスD変調器410が、図10のクラスD変調器310と同様に構築される。類似の要素には類似の参照数字を付け、さらなる説明は行わない。本実施形態では、PWM変調器312への入力レジスタにおける抵抗値不整合を平均化するようにダイナミックエレメントマッチング(DEM)が適用される。より具体的には、DEM回路370が、PWM変調器312への入力段に組み込まれる。DEM回路370は、レジスタのバンクを含み、DEM回路370は、入力データビットを受け取るたための入力レジスタとして用いるレジスタのサブセットを動的に選択する。本実施形態では、DEM回路370は、各差動入力信号用の8個のレジスタのバンクを用いて実装される、8ビットDEM回路である。そのため、レジスタバンクR1N[7:0]はInN入力ビットに割り当てられ、レジスタバンクR1P[7:0]はInP入力ビットに割り当てられる。8個のレジスタは、nビット差動変調器入力信号を受け取るように動的に選択される。例えば、変調器入力信号が2ビットを有する場合、2ビット変調器入力信号InN[1:0]及びInP[1:0]は、各々、それぞれのレジスタバンク内の8個のレジスタに動的に割り当てられる。
【0050】
図12は、差動PWM変調器に適用され得るダイナミックエレメントマッチング回路を示す。図12は、InNデータビット用の、DEM回路370の半分を示す。InPデータビット用の、DEM回路の他方の半分は同様に構築され得ることを理解されたい。図12を参照すると、DEM回路370は、本実施形態では2ビット入力信号InN[1:0]であるnビット変調器入力信号を受け取るエンコーダ及びDEMスクランブラ372を含む。DEM回路370は、8ビットDEM回路であり、そのため、8個のレジスタR0〜R7のレジスタバンクを含む。エンコーダ及びDEMスクランブラ372は、入力ビットを、選択されるレジスタR0〜R7に接続する。また、DEMスクランブラ372は、レジスタR0〜R7の動的な選択を制御するためDEM符号入力を受け取る。
【0051】
本実施形態では、レジスタR0〜R7は、同一レジスタであり、すなわち、同じ抵抗値のレジスタである。同じ抵抗値のレジスタを作製するほうが容易なので、同一レジスタを用いるほうが重み付けレジスタよりも有利である。DEM回路に同一レジスタが用いられると、入力信号InNのデータビットは、バイナリから温度測定符号に変換されなければならない。エンコーダ372は、入力信号InNのバイナリ−温度測定符号変換を実施する。また、8ビットDEM回路の性質により、PWM変調器への入力は、温度測定符号では9個のレベル(どのレジスタも選択されないレベルから8個全てのレジスタが選択されるレベル)に拡張される。そのため、4つの信号レベルを有する2ビット入力信号は、DEM回路の9入力レベルにマッピングされる。実施形態では、より低い入力レベルでより良好なノイズ特性が達成され得るように、2ビット入力InNの4つの信号レベルは、インタベルの分布が不均一な、入力レベル0/8、3/8、5/8、及び8/8にマッピングされる。このように、エンコーダは、バイナリ−温度測定符号変換、及び、2ビット入力の4つの選択される入力レベルへのマッピングを実施する。DEMスクランブラ372は、変換されたデータビットにレジスタを動的に割り当てて、不整合誤差を平均化する。
【0052】
PWM変調器312への入力においてDEMを用いることによって、デバイス不整合による誤差が低減され、PWM変調器は低ノイズレベルの出力信号を生成し得る。
【0053】
(3)チョッパ回路
図10及び図11のPWM変調器では、クラスD変調器は、差動入力信号InN及びInPを受け取るように、及び、差動出力信号AoutN及びAoutPを生成するように構成される。差動出力信号AoutN及びAoutPは、それぞれのレジスタネットワークを介してPWM変調器の積分器324にフィードバックされて、アナログフィードバック制御ループが実現される。これら2つのレジスタネットワーク内のレジスタがデバイス不整合を有する場合、不整合誤差がフィードバック制御ループに影響を及ぼし得、全高調波歪み及びオフセットに関する性能が悪化し得る。
【0054】
別の特徴によれば、PWM変調器は、2つの差動出力信号フィードバック経路を釣り合わせて2つのフィードバックレジスタネットワーク間の不整合誤差を平均化するために、出力チョッパ回路を組み込む。図13は、実施形態に従った、出力チョッパを組み込む差動PWM変調器を組み込むクラスD変調器の概略図である。図13を参照すると、クラスD変調器510が、図11のクラスD変調器410と同様に構築される。類似の要素には類似の参照数字を付け、さらなる説明は行わない。
【0055】
クラスD変調器510では、出力チョッパ回路380が、出力段346の出力端子に結合され、差動出力オーディオ信号AoutN及びAoutPを受け取る。出力チョッパ回路380は、差動出力オーディオ信号AoutN及びAoutPが出力信号フィードバック経路の一方又は他方に交互に結合されるように、出力信号フィードバック経路を動的に切り替えるように動作する。すなわち、差動出力信号AoutN及びAoutPは、レジスタR0〜R2によって形成されるレジスタネットワーク又はレジスタR3〜R5によって形成されるレジスタネットワークを交互に介して、PWM変調器の積分器324にフィードバックされる。フィードバック出力信号の極性を差動入力端子における信号と一致させておくために、クラスD変調器510は更に、第1の入力チョッパ回路382及び第2の入力チョッパ回路384を含む。第1の入力チョッパ回路382は、入力端子においてDEM回路370の前で差動入力信号InN及びInPを切り替えるように結合される。第2の入力チョッパ回路384は、積分器324の第1のアンプ325に結合される加算された信号を切り替えるため、積分器324の加算ノードに結合される。
【0056】
このように、クラスD変調器510の差動フィードバック経路におけるデバイス不整合、及び差動入力レジスタにおける不整合が低減又は平均化される。出力信号フィードバックループにおける不整合誤差をなくすことによって、出力オーディオ信号の全高調波歪み(THD)、コモンモード除去比(CMRR)、及び電源電圧変動除去比(PSRR)が改善される。
【0057】
実施形態では、出力チョッパ回路380は、入力信号InN及びInPの周波数から独立した又はこれらとは無関係な周波数で動作する。
【0058】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示実装形態に改変をなし得ること、及び多くの他の実施形態が可能であることが、本明細書の主題に関係する当業者には理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13