(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295220
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
F15B 9/09 20060101AFI20180305BHJP
G05D 16/20 20060101ALI20180305BHJP
F15B 5/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
F15B9/09 H
G05D16/20 H
F15B5/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-53069(P2015-53069)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-173127(P2016-173127A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 和久
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−210154(JP,A)
【文献】
特開2012−207756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 9/09
F15B 5/00
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から送られてくる弁開度設定値と調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差に応じた電気信号を制御出力として出力する制御部と、この制御部からの制御出力を空気圧に変換し前記調節弁の操作器へ出力する電空変換部とを備え、前記電空変換部からの前記調節弁の操作器への空気圧の出力ポートとして第1のポートと第2のポートとを有するポジショナにおいて、
前記第1のポートからの出力空気圧を絶対圧として検出する第1の圧力センサと、
前記第2のポートからの出力空気圧を絶対圧として検出する第2の圧力センサとを備え、
前記電空変換部は、
動作形態として複動型が選択されている場合には、前記第1のポートおよび前記第2のポートから空気圧を出力し、
動作形態として単動型が選択されている場合には、前記第1のポートから空気圧を出力する一方、前記第2のポートの空気圧を大気圧とし、
前記制御部は、
前記電空変換部の動作形態として複動型が選択されている場合には、前記第1の圧力センサが絶対圧として検出する前記第1のポートからの出力空気圧および前記第2の圧力センサが絶対圧として検出する前記第2のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧にそれぞれ変換して第1および第2の計測値とし、
前記電空変換部の動作形態として単動型が選択されている場合には、前記第1の圧力センサが絶対圧として検出する前記第1のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧に変換し、この変換したゲージ圧を前記第2の圧力センサが絶対圧として検出する前記第2のポートの空気圧で補正して第1の計測値とする
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記電空変換部の現在選択されている動作形態を判定する電空変換部動作形態判定部を備え、
前記制御部は、
前記電空変換部動作形態判定部の判定結果に従って前記電空変換部の現在選択されている動作形態を認識する
ことを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、調節弁の開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体が流れる管路に設けられる調節弁に対してポジショナを取り付け、このポジショナによって調節弁の開度を制御するようにしている。
【0003】
このポジショナは、上位装置から送られてくる弁開度設定値と調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差を求め、この偏差に所定の演算を施して得られる電気信号を制御出力として出力する制御部と、この制御部からの制御出力を空気圧信号に変換する電空変換器と、この電空変換器が変換した空気圧信号を増幅し調節弁の操作器へ出力するパイロットリレーとを備えている。
【0004】
〔単動型のポジショナ〕
図6に従来のポジショナの要部の構成を示す(例えば、特許文献1参照)。同図において、1(1B)はポジショナ、2は調節弁であり、調節弁2にはその弁開度(バルブの開度)を検出する開度センサ3が設けられている。ポジショナ1Bは、制御部11(11B)と、電空変換器(EPM)12と、パイロットリレー13(13B)と、圧力センサ14とを備えている。
【0005】
このポジショナ1Bにおいて、制御部11Bは、上位装置(図示せず)からの弁開度設定値θspと開度センサ3からの実開度値θpvとの偏差を求め、この偏差にPID制御演算を施して得られる電気信号を制御出力MVとして出力する。
【0006】
電空変換器12は、制御部11からの制御出力MVを空気圧信号(ノズル背圧)Pnに変換する。パイロットリレー13Bは、電空変換器12からの空気圧信号Pnを増幅し、空気圧Poとして調節弁2の操作器2aへ出力する。これにより、操作器2a内のダイアフラム室に空気圧Poの空気が流入し、調節弁2のバルブ2bの開度が調整される。
【0007】
なお、このポジショナ1Bにおいて、電空変換器12とパイロットリレー13Bとによって、制御部11Bからの制御出力MVを調節弁2への空気圧(出力空気圧)Poに変換する電空変換部15(15B)が構成されている。また、電空変換器12およびパイロットリレー13Bには、外部からの供給空気圧Psが供給される。
【0008】
また、このポジショナ1Bにおいて、パイロットリレー13Bからの調節弁2への出力空気圧Poは圧力センサ14によって検出され、この圧力センサ14によって検出される出力空気圧Popvが制御部11Bへフィードバックされる。これにより、制御部11Bからの制御出力MVが出力空気圧Poによって補正され、バルブ開度制御の整定性が改善される。なお、圧力センサ14によって検出される出力空気圧Poは、バルブの開度制御だけではなく、診断機能などにも利用される。
【0009】
このポジショナ1Bにおいて、パイロットリレー13Bは空気圧の出力ポートを1つしか有しておらず、この1つの出力ポートから出力される空気圧Poによって調節弁2を正動作(制御出力MVに対応した方向に駆動)あるいは逆動作(制御出力MVに対して反対の方向に駆動)させる。このような動作形式のポジショナを単動型のポジショナと呼んでいる。
【0010】
〔複動型のポジショナ〕
図7は、パイロットリレー13(13C)が空気圧の出力ポートを2つ有している例を示す図である(例えば、特許文献2参照)。このポジショナ1(1C)において、パイロットリレー13Cは、第1のポートから空気圧Po1を出力し、第2のポートから空気圧Po2を出力する。
【0011】
このポジショナ1Cにおいて、調節弁2を正動作(制御出力MVに対応した方向に駆動)させる場合には第1のポートの空気圧Po1を第2のポートの空気圧Po2よりも高くし、調節弁2を逆動作(制御出力MVに対して反対の方向に駆動)させる場合には第2のポートの空気圧Po2を第1のポートの空気圧Po1よりも高くする。このような動作形式のポジショナを複動型のポジショナと呼んでいる。
【0012】
このポジショナ1Cでは、パイロットリレー13Cからの調節弁2への第1のポートの空気圧(出力空気圧)Po1を第1の圧力センサ14−1によって検出するようにし、パイロットリレー13Cからの調節弁2への第2のポートの空気圧(出力空気圧)Po2を第2の圧力センサ14−2によって検出するようにし、この圧力センサ14−1および14−2によって検出される出力空気圧Po1pvおよびPo2pvを制御部11(11C)へフィードバックするようにしている。
【0013】
これにより、制御部11Cからの制御出力MVが出力空気圧Po1およびPo2によって補正され、バルブ開度制御の整定性が改善される。なお、圧力センサ14−1および14−2によって検出される出力空気圧Po1pv,Po2pvは、バルブの開度制御だけではなく、診断機能などにも利用される。
【0014】
この複動型のポジショナ1Cにおいて、パイロットリレー13Cは、種々の事情により単動型のパイロットリレーに取り替えられることがあり(例えば、特許文献3参照)、 最近では、単動・複動どちらでも使用することができるポジショナとして、単動・複動切替型のポジショナが用いられ始めている。この単動・複動切替型のポジショナは、パイロットリレーの動作形態として単動型と複動型の2つがあり、この単動型と複動型の動作形態を選択的に切り替えることができる。単動・複動切替型のポジショナにおいて、パイロットリーが単動型のパイロットリレーとして機能する場合、2つの圧力センサのうち、1つの圧力センサしか使用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−221201号公報
【特許文献2】特開2011−210158号公報
【特許文献3】特開2009−257513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
単動・複動切替型のポジショナにおいて、複動型の動作形態を選択している場合(複動モード時)は、第1のポートから空気圧Po1が出力され、第2のポートから空気圧Po2が出力される。単動型の動作形態を選択している場合(単動モード時)には、第1のポートから空気圧Po1が出力され、第2のポートは大気に開放される。すなわち、第2のポートの空気圧Po2は大気圧とされる。単動・複動モードの切り替えは製品出荷検査時や現場で行うことが可能である。
【0017】
しかしながら、単動・複動切替型のポジショナの需要は、複動モードでの需要が少なく、生産数の95%が単動モードでの使用とされている。したがって、2つの圧力センサのうち1つの圧力センサは、製品出荷後に殆ど使用されることがない(単動モードでは一度も使用されることがない)。このため、無駄なコストが発生している。
【0018】
一方、フィールド機器では圧力値をゲージ圧にて取り扱うのが一般的であるが、圧力センサに要求される仕様の関係から絶対圧センサを使用する場合がある。単動・複動切替型のポジショナにおいて、圧力センサを絶対圧センサとした場合、圧力センサが絶対圧として検出する空気圧(真空を基準とする圧力)をゲージ圧(大気圧を基準とする圧力)に変換して計測値とする。
【0019】
単動モードでの使用時を例にとると、第1の圧力センサが絶対圧として検出する出力空気圧Po1pvを国際基準で定められた標準大気圧Patm(1013.25hPa)を基準とするゲージ圧Po1
G(Po1
G=Po1pv−Patm)に変換し、この変換したゲージ圧Po1
Gを出力空気圧Po1の計測値とする。この場合、第1の圧力センサの検出値Po1pvのみを使用し、第2の圧力センサの検出値Po2pvは使用しない。
【0020】
絶対圧センサは大気圧変動の影響を大きく受ける。このため、単動モードでの使用時において、第1の圧力センサによって絶対圧として検出される出力空気圧Po1pvをゲージ圧Po1
Gに変換して使用した場合、使用環境(気候や標高)により計測値が大きく変動し、バルブ開度制御や診断機能に悪影響を与える。
【0021】
なお、使用環境毎にゼロ調整を行えば、大気圧変動の影響を排除することは可能である。しかし、その都度ゼロ調整の操作が必要であり、また操作後の圧力値が急変することがあり、バルブ開度制御や診断機能のトラブル発生の要因となる。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、単動モードでの使用時において、使用されていない圧力センサを有効に利用し、使用環境による計測値の変動を抑制して、バルブ開度制御や診断機能のトラブル発生の要因を排除することが可能なポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような目的を達成するために本発明は、上位装置から送られてくる弁開度設定値と調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差に応じた電気信号を制御出力として出力する制御部と、この制御部からの制御出力を空気圧に変換し調節弁の操作器へ出力する電空変換部とを備え、電空変換部からの調節弁の操作器への空気圧の出力ポートとして第1のポートと第2のポートとを有するポジショナにおいて、第1のポートからの出力空気圧を絶対圧として検出する第1の圧力センサと、第2のポートからの出力空気圧を絶対圧として検出する第2の圧力センサとを備え、電空変換部は、動作形態として複動型が選択されている場合には第1のポートおよび第2のポートから空気圧を出力し、動作形態として単動型が選択されている場合には第1のポートから空気圧を出力する一方、第2のポートの空気圧を大気圧とし、制御部は、電空変換部の動作形態として複動型が選択されている場合には、第1の圧力センサが絶対圧として検出する第1のポートからの出力空気圧および第2の圧力センサが絶対圧として検出する第2のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧にそれぞれ変換して第1および第2の計測値とし、電空変換部の動作形態として単動型が選択されている場合には、第1の圧力センサが絶対圧として検出する第1のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧に変換し、この変換したゲージ圧を第2の圧力センサが絶対圧として検出する第2のポートの空気圧で補正して第1の計測値とすることを特徴とする。
【0024】
この発明において、電空変換部は、動作形態として単動型が選択されている場合、第1のポートから空気圧を出力する一方、第2のポートの空気圧を大気圧とする。また、制御部は、電空変換部の動作形態として単動型が選択されている場合、第1の圧力センサが絶対圧として検出する第1のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧に変換し、この変換したゲージ圧を第2の圧力センサが絶対圧として検出する第2のポートの空気圧(大気圧)で補正して第1の計測値とする。すなわち、第1の圧力センサからの出力空気圧から得られるゲージ圧を第2の圧力センサが検出する大気圧(絶対圧)で随時補正して第1の計測値とし、この第1の計測値を単動モードでの計測値として用いる。
【0025】
これにより、電空変換部の動作形態として単動型が選択されている場合(単動モード時)、大気圧変動による計測値の変動が抑制され、バルブ開度制御や診断機能への悪影響が防止される。また、ゼロ調整の操作が不要となり、操作後の圧力値急変も抑制されることから、バルブ制御や診断機能のトラブル発生の要因が排除されるものとなる。また、単動モードにて一度も使用されることがなかった第2の圧力センサが有効に利用され、ハードウェアの追加やコストがアップの要因がなく、ソフトウェアと調整検査工程の軽妙な変更によって実現することが可能となる。
【0026】
なお、本発明において、制御部は、電空変換部の現在選択されている動作形態に基づき、複動型である場合と単動型である場合とで異なる動作を行う。この場合、電空変換部の現在選択されている動作形態を人間が判断して制御部に知らせることによって認識させるようにしてもよいが、電空変換部の現在選択されている動作形態を判定する電空変換部動作形態判定部を設け、この電空変換部動作形態判定部の判定結果に従って電空変換部の現在選択されている動作形態を制御部に認識させるようにしてもよい。
【0027】
また、本発明では、絶対圧として検出された空気圧をゲージ圧に変換する際に所定の大気圧値を用いる。この場合、通常は、所定の大気圧値として国際基準として定められた標準大気圧(1013.25hPa)を用いるが、これに限られるものではない。すなわち、本発明において、絶対圧として検出された空気圧をゲージ圧に変換する際に所定の大気圧値は、国際基準の標準大気圧とは異なる値として定めるものとしてもよい。使用環境によっては国際基準の標準大気圧とは異る値として定める場合もある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電空変換部の動作形態として単動型が選択されている場合(単動モード時)、第1の圧力センサが絶対圧として検出する第1のポートからの出力空気圧を所定の大気圧値を基準とするゲージ圧に変換し、この変換したゲージ圧を第2の圧力センサが絶対圧として検出する第2のポートの空気圧で補正して第1の計測値とするようにしたので、第1の圧力センサからの出力空気圧から得られるゲージ圧を第2の圧力センサが検出する大気圧(絶対圧)で随時補正した第1の計測値が単動モードでの計測値として用いられるものとなり、単動モードでの使用時において、使用されていない圧力センサを有効に利用し、使用環境による計測値の変動を抑制して、バルブ開度制御や診断機能のトラブル発生の要因を排除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。
【
図2】このポジショナにおける制御部の特有の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】このポジショナにおける制御部の複動モード時の動作を説明する図である。
【
図4】このポジショナにおける制御部の単動モード時の動作を説明する図である。
【
図5】制御部に電空変換部動作形態判定部を設けた例を示す図である。
【
図6】従来の単動型のポジショナの要部の構成を示す図である。
【
図7】従来の複動型のポジショナの要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。同図において、
図7と同一符号は
図7を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0032】
本実施の形態のポジショナ1(1A)は、単動・複動切替型のポジショナとされており、パイロットリレー13として単動・複動選択機能131を有するパイロットリレー13Aを用いている。
【0033】
また、制御部11(11A)は、
図2に示すように、特有の構成として、電空変換部動作形態認識部111と、第1の計測値変換部112と、第2の計測値変換部113とを備えている。
【0034】
パイロットリレー13Aにおいて、単動・複動選択機能131は、所定の操作手順を踏むことにより、パイロットリレー13Aの動作形態の単動型から複動型への切り替え、複動型から単動型への切り替えを可能とする。
【0035】
パイロットリレー13Aは、動作形態として複動型が選択されている場合(複動モード時)、第1のポートから空気圧Po1を出力し、第2のポートから空気圧Po2を出力する。
【0036】
パイロットリレー13Aは、動作形態として単動型が選択されている場合(単動モード時)、第1のポートから空気圧Po1を出力し、第2のポートは大気に開放する。すなわち、第2のポートの空気圧Po2を大気圧とする。
【0037】
単動・複動選択機能131は、このパイロットリレー13Aにおける動作形態の選択を可能とすると共に、パイロットリレー13Aの現在選択されている動作形態を動作形態情報J1として制御部11Aへ知らせる。
【0038】
制御部11Aは、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。以下、制御部11Aにおける各部の機能について、関連する各部の動作を交えながら説明する。
【0039】
パイロットリレー13Aからの動作形態情報J1は制御部11Aの電空変換部動作形態認識部111に送られる。電空変換部動作形態認識部111は、パイロットリレー13Aからの動作形態情報J1より、パイロットリレー13Aの現在選択されている動作形態を認識し、その認識した動作形態を第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113へ送る。
【0040】
〔現在選択されている動作形態が複動型である場合(複動モード時)〕
パイロットリレー13Aは、動作形態が複動型である場合(複動モード時)、第1のポートから空気圧Po1を出力し、第2のポートから空気圧Po2を出力する。
【0041】
これにより、圧力センサ14−1が第1のポートの空気圧Po1を絶対圧として検出し、出力空気圧Po1pvとして制御部11Aへ送る。また、圧力センサ14−2が第2のポートの空気圧Po2を絶対圧として検出し、出力空気圧Po2pvとして制御部11Aへ送る。
【0042】
制御部11Aにおいて、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pvは第1の計測値変換部112へ送られ、圧力センサ14−2からの出力空気圧Po2pvは第2の計測値変換部113へ送られる。
【0043】
この場合、第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113には、電空変換部動作形態認識部111からパイロットリレー13Aの現在選択されている動作形態として複動型である旨の認識結果が送られてきている。
【0044】
この認識結果を受けて、第1の計測値変換部112は、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pv(絶対圧)を国際基準で定められた標準大気圧Patm(1013.25hPa)を基準とするゲージ圧Po1
G(Po1
G=Po1pv−Patm)に変換し(
図3(a)参照)、この変換したゲージ圧Po1
Gを出力空気圧Po1の計測値(第1の計測値)とする。
【0045】
また、第2の計測値変換部113は、第1の計測値変換部112と同様、圧力センサ14−2からの出力空気圧Po2pv(絶対圧)を標準大気圧Patmを基準とするゲージ圧Po2
G(Po2
G=Po2pv−Patm)に変換し(
図3(b)参照)、この変換したゲージ圧Po2
Gを出力空気圧Po2の計測値(第2の計測値)とする。
【0046】
この場合、制御部11Aは、第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113で得られた出力空気圧Po1およびPo2の計測値Po1
GおよびPo2
Gをバルブの開度制御や診断機能などに利用する。
【0047】
〔現在選択されている動作形態が単動型である場合(単動モード時)〕
パイロットリレー13Aは、動作形態が単動型である場合(単動モード時)、第1のポートから空気圧Po1を出力し、第2のポートの空気圧Po2を大気圧とする。
【0048】
これにより、圧力センサ14−1が第1のポートの空気圧Po1を絶対圧として検出し、出力空気圧Po1pvとして制御部11Aへ送る。また、圧力センサ14−2が第2のポートの空気圧Po2(大気圧)を絶対圧として検出し、空気圧Po2pv(大気圧)として制御部11Aへ送る。
【0049】
制御部11Aにおいて、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pvは第1の計測値変換部112へ送られ、圧力センサ14−2からの空気圧Po2pv(大気圧)は第2の計測値変換部113へ送られる。
【0050】
この場合、第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113には、電空変換部動作形態認識部111からパイロットリレー13Aの現在選択されている動作形態として単動型である旨の認識結果が送られてきている。
【0051】
この認識結果を受けて、第1の計測値変換部112は、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pv(絶対圧)を標準大気圧Patmを基準とするゲージ圧Po1
G(Po1
G=Po1pv−Patm)に変換し、この変換したゲージ圧Po1
Gを圧力センサ14−2からの空気圧Po2pv(大気圧(絶対圧))で補正してゲージ圧Po1
G’(Po1
G’=Po1
G−(Po2pv−Patm)とし(
図4(a),(b)参照)、この補正したゲージ圧Po1
G’を出力空気圧Po1の計測値(第1の計測値)とする。
【0052】
また、第2の計測値変換部113は、圧力センサ14−2からの空気圧Po2pv(大気圧(絶対圧))を標準大気圧Patmを基準とするゲージ圧Po2
G(Po2
G=Po2pv−Patm)に変換し(
図4(b)参照)、この変換したゲージ圧Po2
Gを空気圧Po2の計測値(第2の計測値)とする。
【0053】
この場合、制御部11Aは、第1の計測値変換部112で得られた出力空気圧Po1の計測値Po1
G’(第1の計測値)を単動モードでの計測値とし、バルブの開度制御や診断機能などに利用するが、第2の計測値変換部113で得られた空気圧Po2の計測値Po2
G(第2の計測値)は利用しない。
【0054】
なお、第1の計測値変換部112でのゲージ圧Po1
Gの補正に際して、第2の計測値変換部113で得られる空気圧Po2の計測値Po2
Gを利用するようにしてもよい。この場合も、結果的に、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pvから得られたゲージ圧Po1
Gを圧力センサ14−2によって検出された空気圧Po2pv(絶対圧(大気圧))で補正していることに変わりはない。
【0055】
以上の説明から分かるように、本実施の形態のポジショナ1Aによれば、パイロットリレー13Aの動作形態として単動型が選択されている場合(単動モード時)、圧力センサ14−1からの出力空気圧Po1pvから得られるゲージ圧Po1
Gを圧力センサ14−2が検出する空気圧Po2pv(大気圧(絶対圧))で随時補正した出力空気圧Po1の計測値(第1の計測値)Po1
G’が単動モードでの計測値として用いられるので、大気圧変動による計測値の変動が抑制され、バルブ開度制御や診断機能への悪影響が防止される。
【0056】
また、ゼロ調整の操作が不要となり、操作後の圧力値急変も抑制されることから、バルブ制御や診断機能のトラブル発生の要因が排除されるものとなる。また、単動モードにて一度も使用されることがなかった圧力センサ14−2が有効に利用され、ハードウェアの追加やコストがアップの要因がなく、ソフトウェアと調整検査工程の軽妙な変更によって実現することが可能となる。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、パイロットリレー13Aから制御部11Aへ現在選択されている動作形態を動作形態情報J1として送るようにしたが、パイロットリレー13Aの現在選択されていている動作形態を人間が判断して制御部11Aへ知らせることによって認識させるようにしてもよい。
【0058】
また、
図5に示すように、制御部11Aに電空変換部動作形態判定部114を設け、圧力センサ14−1からの空気圧の検出値Po1pvと圧力センサ14−2からの空気圧の検出値Po2pvに基づいて、パイロットリレー13の現在選択されている動作形態を判定させるようにし、この電空変換部動作形態判定部114での判定結果を認識結果として第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113に送るようにしてもよい。
【0059】
この場合、電空変換部動作形態判定部114は、例えば、空気圧の検出値Po1pvとPo2pvの何れかも変化する場合には、パイロットリレー13の現在選択されている動作形態を複動型と判定し、空気圧の検出値Po1pvとPo2pvの何れか一方のみしか変化しない場合には、パイロットリレー13の現在選択されている動作形態を単動型と判定するようにする。
【0060】
また、
図5では、制御部11Aに電空変換部動作形態判定部114を設けたが、制御部11Aの外に電空変換部動作形態判定部114を設けるようにして、その判定結果を制御部11Aに送るようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、第1の計測値変換部112および第2の計測値変換部113において国際基準で定められている標準大気圧Patm(1013.25hPa)を用いるようにしたが、使用環境に合わせ、国際基準の標準大気圧とは異なる値として定めるようにしてもよい。
【0062】
また、単動モード時に圧力センサ14−2から得られる空気圧Po2pv(大気圧)は、簡易的な高度計として利用したり、気圧センサとして利用することも可能である。また、制御部11Aで得られる情報は、上位コントローラに診断情報として送るようにしてもよい。
【0063】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1(1A)…ポジショナ、2…調節弁、2a…操作器、2b…バルブ、3…開度センサ、11(11A)…制御部、12…電空変換器、13(13A)…パイロットリレー、14−1,14−2…圧力センサ、15(15A)…電空変換部、111…電空変換部動作形態認識部、112…第1の計測値変換部、113…第2の計測値変換部、114…電空変換部動作形態判定部、131…単動・複動選択機能。