(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体部と、前記本体部にその基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に配置される前記エンドエフェクタとを備えるとともに、
前記モータとして、前記本体部に対して前記第1アーム部を回動させるための第1回動用モータと、前記第1アーム部に対して前記第2アーム部を回動させるための第2回動用モータと、前記第2アーム部に対して前記エンドエフェクタを回転させるための回転用モータと、前記第2アーム部に対して前記エンドエフェクタを昇降させるための前記昇降用モータとを備えることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
本体部と、前記本体部にその基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に配置される前記エンドエフェクタと、前記本体部に対して前記第1アーム部を回動させるための第1回動用モータと、前記第1アーム部に対して前記第2アーム部を回動させるための第2回動用モータと、前記第2アーム部に対して前記エンドエフェクタを回転させるための回転用モータとを備えるとともに、
前記モータとして、前記第2アーム部に対して前記エンドエフェクタを昇降させるための前記昇降用モータを備え、
前記制御部は、前記テスト運転時に、前記第1回動用モータ、前記第2回動用モータおよび前記回転用モータを、前記通常運転時の回転速度と同じ速度で回転させ、かつ、前記通常運転時のトルク制限値と同じトルク制限値で制御するとともに、前記テスト運転時に、前記通常運転時の回転速度よりも低い回転速度で前記昇降用モータを回転させ、前記テスト運転時に前記昇降用モータが一方向へ回転する場合には、前記通常運転時に前記昇降用モータが一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値で前記昇降用モータを制御し、かつ、前記テスト運転時に前記昇降用モータが他方向へ回転する場合には、前記通常運転時に前記昇降用モータが他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値で前記昇降用モータを制御することを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
前記制御部は、前記モータを駆動させて前記モータのモータ負荷を取得するとともに、取得された前記モータ負荷に基づいて、前記第1トルク制限値および前記第2トルク制限値を設定することを特徴とする請求項7または8記載の産業用ロボット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロボット等では、教示が終了すると、自動運転が行われる。しかしながら、ロボットの教示が適切に行われていなかった場合に、ロボットを自動運転すると、ロボットの周辺装置等にロボットが接触して、ロボットが損傷するおそれがある。
【0005】
また、特許文献1に記載のロボットのような水平多関節ロボットでは、第3アームにエンドエフェクタが取り付けられる。また、エンドエフェクタは、所定のワークを保持することがある。そのため、第3アーム、エンドエフェクタおよびワーク等の重量の影響で、第3アームを上昇させる際に、第3アームを昇降させるモータ(昇降用モータ)に要求されるトルクの絶対値は大きくなり、第3アームを下降させる際に、昇降用モータに要求されるトルクの絶対値は小さくなる。
【0006】
一般に、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した際のエンドエフェクタ等の損傷を防止するために、昇降用モータにはトルク制限値が設定され、昇降用モータのトルクがトルク制限値に達すると、昇降用モータを停止させている。また、第3アームを上昇させるときの昇降用モータのトルク制限値の絶対値と、第3アームを下降させるときの昇降用モータのトルク制限値の絶対値とは、一般に同じ値に設定されている。
【0007】
たとえば、第3アームを上昇させる方向の昇降用モータのトルクをプラスのトルクとし、第3アームを下降させる方向の昇降用モータのトルクをマイナスのトルクとすると、上述のように、第3アームを上昇させる際に一方向へ回転する昇降用モータに要求されるトルクの絶対値は大きくなり、第3アームを下降させる際に他方向へ回転する昇降用モータに要求されるトルクの絶対値は小さくなるため、第3アームを上昇させるときの昇降用モータのトルクに応じて、トルク制限値の絶対値が設定されると、第3アームの下降時に、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触しているにもかわらず、昇降用モータのトルクがトルク制限値を下回らずに昇降用モータが回転し続けて、エンドエフェクタ等が損傷するおそれがある。一方、第3アームを下降させるときの昇降用モータのトルクに応じて、トルク制限値の絶対値が設定されると、第3アームの上昇時に、第3アームが正常に上昇しているにもかかわらず、昇降用モータのトルクがトルク制限値を超えて昇降用モータが停止するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の第1の課題は、教示終了後の自動運転時の損傷を防止することが可能な産業用ロボットを提供することにある。また、本発明の第1の課題は、教示終了後の自動運転時の損傷を防止することが可能となる産業用ロボットの制御方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の課題は、一方向に回転するときに要求されるトルクの絶対値の最大値が他方向に回転するときに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる動作用のモータを備える産業用ロボットにおいて、産業用ロボットおよび周辺装置等の損傷を防止することが可能で、かつ、適切な動作が可能な産業用ロボットを提供することにある。また、本発明の第2の課題は、一方向に回転するときに要求されるトルクの絶対値の最大値が他方向に回転するときに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる動作用のモータを備える産業用ロボットの制御方法において、産業用ロボットおよび周辺装置等の損傷を防止することが可能で、かつ、産業用ロボットの適切な動作が可能となる産業用ロボットの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の第1の課題を解決するため、本発明(第1の発明)の産業用ロボットは、動作用のモータと、モータを制御する制御部とを備える産業用ロボットにおいて、モータを一方向へ回転させるためのモータのトルクをプラスのトルクとし、モータを他方向へ回転させるためのモータのトルクをマイナスのトルクとするとともに、産業用ロボットの教示終了後に教示点および/または産業用ロボットの制御プログラムが正しいか否かを確認するために行う産業用ロボットの自動運転をテスト運転とし、テスト運転終了後に行う産業用ロボットの自動運転を通常運転とすると、制御部は、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータを回転させるとともに、テスト運転時にモータが一方向へ回転する場合には、通常運転時にモータが一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータを制御し、かつ、テスト運転時にモータが他方向へ回転する場合には、通常運転時にモータが他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータを制御
し、産業用ロボットは、モータとして、エンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータを備え、テスト運転時において、エンドエフェクタが上昇するときの昇降用モータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、エンドエフェクタが下降するときの昇降用モータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、制御部では、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されており、制御部は、テスト運転時におけるエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御し、テスト運転時におけるエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御することを特徴とする。
【0011】
また、上記の第1の課題を解決するため、本発明(第1の発明)の産業用ロボットの制御方法は、動作用のモータを備える産業用ロボットの制御方法であって、モータを一方向へ回転させるためのモータのトルクをプラスのトルクとし、モータを他方向へ回転させるためのモータのトルクをマイナスのトルクとするとともに、産業用ロボットの教示終了後に教示点および/または産業用ロボットの制御プログラムが正しいか否かを確認するために行う産業用ロボットの自動運転をテスト運転とし、テスト運転終了後に行う産業用ロボットの自動運転を通常運転とすると、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータを回転させるとともに、テスト運転時にモータが一方向へ回転する場合には、通常運転時にモータが一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータを制御し、かつ、テスト運転時にモータが他方向へ回転する場合には、通常運転時にモータが他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータを制御
し、産業用ロボットは、モータとして、エンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータを備え、テスト運転時において、エンドエフェクタが上昇するときの昇降用モータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、エンドエフェクタが下降するときの昇降用モータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されており、テスト運転時におけるエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御し、テスト運転時におけるエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御することを特徴とする。
【0012】
本発明では、教示終了後に教示点および/または制御プログラムが正しいか否かを確認するために行われる自動運転であるテスト運転時に、テスト運転終了後に行われる通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータを回転させている。すなわち、本発明では、テスト運転時における産業用ロボットの動作速度が遅い。そのため、本発明では、テスト運転時にオペレータが危険を察知して産業用ロボットを非常停止させた場合の産業用ロボットの空走距離を小さくすることが可能になる。
【0013】
また、本発明では、テスト運転時にモータが一方向へ回転する場合に、通常運転時にモータが一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータを制御し、かつ、テスト運転時にモータが他方向へ回転する場合に、通常運転時にモータが他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータを制御している。そのため、本発明では、テスト運転時に産業用ロボットが周辺装置等に接触した場合に、短時間で、モータのトルクがトルク制限値を超えたり、トルク制限値を下回ったりする。したがって、本発明では、モータのトルクがトルク制限値を超えたり、トルク制限値を下回ったりした場合に、直ちにモータを停止させることで、テスト運転時に産業用ロボットが周辺装置等に接触した場合に、短時間でモータを停止させることが可能になる。
【0014】
このように、本発明では、テスト運転時にオペレータが危険を察知して産業用ロボットを非常停止させた場合の産業用ロボットの空走距離を小さくすることが可能になり、また、テスト運転時に産業用ロボットが周辺装置等に接触した場合に、短時間でモータを停止させることが可能になる。したがって、本発明では、テスト運転時の産業用ロボットの損傷を防止することが可能になる。また、テスト運転時に不具合が発生した場合には、再び教示を行う等の所定の処置を行うことで、テスト運転終了後の通常運転時に産業用ロボットが周辺装置等に接触するのを防止することが可能になり、通常運転時の産業用ロボットの損傷を防止することが可能になる。その結果、本発明では、教示終了後の自動運転時の産業用ロボットの損傷を防止することが可能になる。
【0015】
また、本発明
では、産業用ロボットは、モータとして、エンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータを備え、テスト運転時において、エンドエフェクタが上昇するときの昇降用モータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、エンドエフェクタが下降するときの昇降用モータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると
、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されており
、テスト運転時におけるエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御し、テスト運転時におけるエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御
している。
【0016】
一般に、エンドエフェクタやエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の影響で、エンドエフェクタを上昇させる際に昇降用モータに要求されるトルクの絶対値は大きくなり、エンドエフェクタを下降させる際に昇降用モータに要求されるトルクの絶対値は小さくなるが、
本発明では、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されているため、エンドエフェクタが正常に上昇しているときに昇降用モータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えて昇降用モータが止まらないように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合に昇降用モータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えるように、エンドエフェクタの上昇時に昇降用モータに要求されるトルクに応じて第1トルク制限値を設定することが可能になる。また、エンドエフェクタが正常に下降しているときに昇降用モータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回って昇降用モータが止まらないように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合に昇降用モータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回るように、エンドエフェクタの下降時に昇降用モータに要求されるトルクに応じて第2トルク制限値を設定することが可能になる。また、
本発明では、エンドエフェクタの上昇時に第1トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御し、エンドエフェクタの下降時に第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御しているため、エンドエフェクタの昇降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触して昇降用モータのトルクがトルク制限値を超えたり、下回ったりした場合に、昇降用モータを停止させてエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、エンドエフェクタが正常に昇降している場合に、昇降用モータを回転させ続けて、エンドエフェクタを適切に昇降させることが可能になる。
【0017】
本発明において、産業用ロボットは、制御部に電気的に接続されるペンダントスイッチを備え、エンドエフェクタの重量、および、エンドエフェクタに保持されるワークの重量の少なくともいずれか一方を含むモータ負荷がペンダントスイッチから入力可能となっており、制御部は、ペンダントスイッチから入力されるモータ負荷に基づいて、第1トルク制限値および第2トルク制限値を設定することが好ましい。このように構成すると、エンドエフェクタをより適切に昇降させることができるように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合に昇降用モータのトルクが確実にトルク制限値を超えたり、下回ったりするように、モータ負荷に応じて第1トルク制限値および第2トルク制限値を設定することが可能になる。したがって、エンドエフェクタをより適切に昇降させることが可能になるとともに、エンドエフェクタ等の損傷を確実に防止することが可能になる。
【0018】
本発明において、産業用ロボットは、たとえば、本体部と、本体部にその基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、第2アーム部の先端側に配置されるエンドエフェクタとを備えるとともに、動作用のモータとして、本体部に対して第1アーム部を回動させるための第1回動用モータと、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させるための第2回動用モータと、第2アーム部に対してエンドエフェクタを回転させるための回転用モータと、第2アーム部に対してエンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータとを備えている。
【0019】
本発明において、産業用ロボットは、本体部と、本体部にその基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、第1アーム部の先端側にその基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、第2アーム部の先端側に配置されるエンドエフェクタと、本体部に対して第1アーム部を回動させるための第1回動用モータと、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させるための第2回動用モータと、第2アーム部に対してエンドエフェクタを回転させるための回転用モータとを備えるとともに、動作用のモータとして、第2アーム部に対してエンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータを備え、制御部は、テスト運転時に、第1回動用モータ、第2回動用モータおよび回転用モータを、通常運転時の回転速度と同じ速度で回転させ、かつ、通常運転時のトルク制限値と同じトルク制限値で制御するとともに、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度で昇降用モータを回転させ、テスト運転時に昇降用モータが一方向へ回転する場合には、通常運転時に昇降用モータが一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値で昇降用モータを制御し、かつ、テスト運転時に昇降用モータが他方向へ回転する場合には、通常運転時に昇降用モータが他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値で昇降用モータを制御することが好ましい。
【0020】
エンドエフェクタやエンドエフェクタに保持されるワーク等の重量の影響で、下降時のエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触すると、エンドエフェクタ等が損傷しやすくなるが、このように構成すると、エンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータを、テスト運転時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合に短時間で停止させることが可能になり、また、昇降用モータを停止させた後のエンドエフェクタの動作量を小さくすることが可能になる。したがって、テスト運転時のエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、このように構成すると、第1回動用モータ、第2回動用モータおよび回転用モータは、テスト運転時に通常運転時の回転速度と同じ速度で回転するため、テスト運転時の産業用ロボットの動作速度を速めることが可能になる。
【0021】
本発明において、制御部では、テスト運転時のモータの回転速度とトルク制限値とが選択可能となっていることが好ましい。このように構成すると、モータの回転速度とトルク制限値との様々な組合せで、産業用ロボットのテスト運転を行うことが可能になる。
【0022】
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明(第2の発明)の産業用ロボットは、動作用のモータと、モータを制御する制御部と
、エンドエフェクタと、エンドエフェクタが取り付けられるエンドエフェクタ取付部材と、上下方向を軸方向として配置されエンドエフェクタ取付部材が上端に固定される軸部材と、軸部材の少なくとも下端側が収容されるケース体と、ケース体に一端が固定され軸部材に他端が固定されるとともに軸部材の外周側を覆うように配置されるベローズとを備え、
モータは、ケース体に対してエンドエフェクタ、エンドエフェクタ取付部材および軸部材を昇降させるための昇降用モータであり、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタ取付部材は、真空中に配置され、ベローズの内周側および外周側のいずれか一方は、真空となっており、ベローズの内周側および外周側のいずれか他方は、大気圧となっており、モータが一方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値は、モータが他方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなっており、一方向に回転
しているときのモータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、他方向に回転
しているときのモータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、制御部では、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定され、
モータが一方向に回転しているときにエンドエフェクタが下降し、モータが他方向に回転しているときにエンドエフェクタが上昇し、第1トルク制限値は、エンドエフェクタを下降させるときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、エンドエフェクタを上昇させるときのモータのトルク制限値であり、制御部は、モータが一方向に回転
しているエンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、モータが他方向に回転
しているエンドエフェクタの上昇時に、第2トルク制限値に基づいてモータを制御することを特徴とする。
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明(第2の発明)の産業用ロボットは、動作用のモータと、モータを制御する制御部と、車両に取り付けられるとともにバッテリーが収容されるバッテリー収容部からのバッテリーの引抜きおよびバッテリー収容部へのバッテリーの差込みを行うバッテリー抜差機構とを備える産業用ロボットであって、バッテリー抜差機構は、バッテリーに係合するバッテリー係合部を備え、モータは、バッテリー係合部を移動させるための引抜差込用モータであり、モータが一方向に回転しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値は、モータが他方向に回転しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなっており、一方向に回転しているときのモータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、他方向に回転しているときのモータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、制御部では、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定され、モータが一方向に回転しているときにバッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込み、モータが他方向に回転しているときにバッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜き、第1トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込むときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜くときのモータのトルク制限値であり、制御部は、モータが一方向に回転しているバッテリーの差込み時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、モータが他方向に回転しているバッテリー引抜き時に、第2トルク制限値に基づいてモータを制御することを特徴とする。
【0023】
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明(第2の発明)の産業用ロボットの制御方法は、動作用のモータ
と、エンドエフェクタと、エンドエフェクタが取り付けられるエンドエフェクタ取付部材と、上下方向を軸方向として配置されエンドエフェクタ取付部材が上端に固定される軸部材と、軸部材の少なくとも下端側が収容されるケース体と、ケース体に一端が固定され軸部材に他端が固定されるとともに軸部材の外周側を覆うように配置されるベローズとを備える産業用ロボットの制御方法であって、
モータは、ケース体に対してエンドエフェクタ、エンドエフェクタ取付部材および軸部材を昇降させるための昇降用モータであり、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタ取付部材は、真空中に配置され、ベローズの内周側および外周側のいずれか一方は、真空となっており、ベローズの内周側および外周側のいずれか他方は、大気圧となっており、モータが一方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値は、モータが他方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなっており、一方向に回転
しているときのモータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、他方向に回転
しているときのモータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されており、
モータが一方向に回転しているときにエンドエフェクタが下降し、モータが他方向に回転しているときにエンドエフェクタが上昇し、第1トルク制限値は、エンドエフェクタを下降させるときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、エンドエフェクタを上昇させるときのモータのトルク制限値であり、モータが一方向に回転
しているエンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、モータが他方向に回転
しているエンドエフェクタの上昇時に、第2トルク制限値に基づいてモータを制御することを特徴とする。
また、上記の第2の課題を解決するため、本発明(第2の発明)の産業用ロボットの制御方法は、動作用のモータと、車両に取り付けられるとともにバッテリーが収容されるバッテリー収容部からのバッテリーの引抜きおよびバッテリー収容部へのバッテリーの差込みを行うバッテリー抜差機構とを備える産業用ロボットの制御方法であって、バッテリー抜差機構は、バッテリーに係合するバッテリー係合部を備え、モータは、バッテリー係合部を移動させるための引抜差込用モータであり、モータが一方向に回転しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値は、モータが他方向に回転しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなっており、一方向に回転しているときのモータのトルク制限値を第1トルク制限値とし、他方向に回転しているときのモータのトルク制限値を第2トルク制限値とすると、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されており、モータが一方向に回転しているときにバッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込み、モータが他方向に回転しているときにバッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜き、第1トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込むときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜くときのモータのトルク制限値であり、モータが一方向に回転しているバッテリーの差込み時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、モータが他方向に回転しているバッテリー引抜き時に、第2トルク制限値に基づいてモータを制御することを特徴とする。
【0024】
本発明では、モータが一方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値は、モータが他方向に回転
しているときにモータに要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなっている。また、本発明では、他方向に回転
しているときのモータのトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、一方向に回転
しているときのモータのトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。そのため、本発明では、モータが一方向へ回転して産業用ロボットが正常に動作しているときのモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えてモータが止まらないように、かつ、モータが一方向へ回転しているときに産業用ロボットの一部が周辺装置等に接触した場合のモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えるように、一方向への回転時にモータに要求されるトルクに応じて第1トルク制限値を設定することが可能になる。また、モータが他方向へ回転して産業用ロボットが正常に動作しているときのモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回ってモータが止まらないように、かつ、モータが他方向へ回転しているときに産業用ロボットの一部が周辺装置等に接触した場合のモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回るように、他方向への回転時にモータに要求されるトルクに応じて第2トルク制限値を設定することが可能になる。
【0025】
また、本発明では、モータが一方向に回転
しているときに、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、モータが他方向に回転
しているときに、第2トルク制限値に基づいてモータを制御している。そのため、本発明では、モータが回転して産業用ロボットが動作しているときに産業用ロボットの一部が周辺装置等に接触してモータのトルクがトルク制限値を超えたり、下回ったりした場合に、モータを停止させて産業用ロボットおよび周辺装置等の損傷を防止することが可能になる。また、本発明では、モータが回転して産業用ロボットが正常に動作している場合に、モータを回転させ続けて、産業用ロボットを適切に動作させることが可能になる。
【0035】
また、本発明
では、産業用ロボットは、エンドエフェクタと、エンドエフェクタが取り付けられるエンドエフェクタ取付部材と、上下方向を軸方向として配置されエンドエフェクタ取付部材が上端に固定される軸部材と、軸部材の少なくとも下端側が収容されるケース体と、ケース体に一端が固定され軸部材に他端が固定されるとともに軸部材の外周側を覆うように配置されるベローズとを備え、モータは、ケース体に対してエンドエフェクタ、エンドエフェクタ取付部材および軸部材を昇降させるための昇降用モータであり、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタ取付部材は、真空中に配置され、ベローズの内周側および外周側のいずれか一方は、真空となっており、ベローズの内周側および外周側のいずれか他方は、大気圧となっており、モータが一方向に回転
しているときにエンドエフェクタが下降し、モータが他方向に回転
しているときにエンドエフェクタが上昇し、第1トルク制限値は、エンドエフェクタを下降させるときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、エンドエフェクタを上昇させるときのモータのトルク制限値であり
、エンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、エンドエフェクタの上昇時に、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御する。この
場合には、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタ取付部材が真空中に配置されており、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタ取付部材と一緒に軸部材が下降してベローズが伸びると、負圧が発生してエンドエフェクタ等を上側へ押し上げる大きな力が作用するため、エンドエフェクタを下降させる際にモータに要求されるトルクの絶対値は大きくなり、エンドエフェクタを上昇させる際にモータに要求されるトルクの絶対値は小さくなることがある。しかし、本発明では、エンドエフェクタが正常に下降しているときにモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を下回ってモータが止まらないように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を下回るように、エンドエフェクタの下降時にモータに要求されるトルクに応じて第1トルク制限値を設定することが可能になる。また、エンドエフェクタが正常に上昇しているときにモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を超えてモータが止まらないように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を超えるように、エンドエフェクタの上昇時にモータに要求されるトルクに応じて第2トルク制限値を設定することが可能になる。また、エンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御し、エンドエフェクタの上昇時に、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御しているため、エンドエフェクタの昇降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触してモータのトルクがトルク制限値を超えたり、下回ったりした場合に、モータを停止させてエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、エンドエフェクタが正常に昇降している場合に、モータを回転させ続けて、エンドエフェクタを適切に昇降させることが可能になる。
【0037】
また、本発明
では、産業用ロボットは、車両に取り付けられるとともにバッテリーが収容されるバッテリー収容部からのバッテリーの引抜きおよびバッテリー収容部へのバッテリーの差込みを行うバッテリー抜差機構を備える
産業用ロボットであり、バッテリー抜差機構は、バッテリーに係合するバッテリー係合部を備え、モータは、バッテリー係合部を移動させるための引抜差込用モータであり、モータが一方向に回転
しているときにバッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込み、モータが他方向に回転
しているときにバッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜き、第1トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリーをバッテリー収容部へ差し込むときのモータのトルク制限値であり、第2トルク制限値は、バッテリー係合部がバッテリー収容部からバッテリーを引き抜くときのモータのトルク制限値であり
、バッテリーの差込み時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、バッテリー引抜き時に、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御する。
この場合には、バッテリー係合部がバッテリーの差込み動作を正常に行っているときのモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えてモータが止まらないように、かつ、バッテリー係合部等が周辺装置等に接触した場合にモータのトルクが、たとえば、第1トルク制限値を超えるように、バッテリーの差込み時にモータに要求されるトルクに応じて第1トルク制限値を設定することが可能になる。また、バッテリー係合部がバッテリーの引抜き動作を正常に行っているときのモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回ってモータが止まらないように、かつ、バッテリー係合部等が周辺装置等に接触した場合にモータのトルクが、たとえば、第2トルク制限値を下回るように、バッテリーの引抜き時にモータに要求されるトルクに応じて第2トルク制限値を設定することが可能になる。また、バッテリーの差込み時に、第1トルク制限値に基づいてモータを制御し、バッテリーの引抜き時に、第2トルク制限値に基づいて昇降用モータを制御しているため、バッテリーの交換時にバッテリー係合部等が周辺装置等に接触してモータのトルクがトルク制限値を超えたり、下回ったりした場合に、バッテリー係合部等の損傷を防止することが可能になる。また、バッテリーの交換時にバッテリー係合部が正常に動作している場合に、モータを回転させ続けて、バッテリー係合部を適切に動作させることが可能になる。
【0038】
本発明において、制御部は、モータを駆動させてモータのモータ負荷を取得するとともに、取得されたモータ負荷に基づいて、第1トルク制限値および第2トルク制限値を設定することが好ましい。このように構成すると、産業用ロボットをより適切に動作させることができるように、かつ、産業用ロボットの一部が周辺装置等に接触した場合にモータのトルクが確実にトルク制限値を超えたり、下回ったりするように、モータ負荷に応じて第1トルク制限値および第2トルク制限値を設定することが可能になる。したがって、産業用ロボットをより適切に動作させることが可能になるとともに、産業用ロボットおよび周辺装置等の損傷を確実に防止することが可能になる。また、本発明において、たとえば、制御部には、モータ負荷に応じた第1トルク制限値および第2トルク制限値がテーブル化されて記憶され、制御部は、モータ負荷に基づいて、対応する第1トルク制限値および第2トルク制限値を読み出して設定する。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明(第1の発明)では、教示終了後の自動運転時の産業用ロボットの損傷を防止することが可能になる。また、本発明(第2の発明)では、産業用ロボットおよび周辺装置等の損傷を防止することが可能になるとともに、産業用ロボットの適切な動作が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0042】
[実施の形態1と実施の形態2に共通の構成]
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の構成を説明するための側面図である。以下の説明では、
図1のZ方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側とし、Z2方向側を「下」側とする。
【0043】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、部品の製造ラインや組立ライン等に設置されて使用される水平多関節ロボット(SCARAロボット)であり、大気中に配置されている。このロボット1は、本体部2と、本体部2にその基端側が回動可能に連結されるアーム3と、アーム3の先端側に取り付けられるボールネジスプライン4とを備えている。ボールネジスプライン4には、図示を省略するエンドエフェクタが取り付けられている。また、ロボット1は、ロボット1を制御する制御部5と、制御部5に電気的に接続されるペンダントスイッチ6とを備えている。
【0044】
本体部2は、略円筒状に形成されている。この本体部2の下端は、たとえば、製造ラインや組立ラインの一部をなすフレーム7に固定されている。アーム3は、第1アーム部11と、第1アーム部11の上側に配置される第2アーム部12との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部11の基端側は、本体部2に回動可能に連結され、第2アーム部12の基端側は、第1アーム部11の先端側に回動可能に連結されている。
【0045】
本体部2と第1アーム部11とを繋ぐ関節部には、本体部2に対して第1アーム部11を回動させるための第1回動用モータとしてのモータ15と、モータ15の動力を減速して伝達する減速機16とが配置されている。モータ15は、サーボモータである。具体的には、モータ15は、ACサーボモータである。減速機16の入力部には、モータ15の出力軸が固定され、減速機16の出力部には、第1アーム部11の基端側が固定されている。減速機16のケース体には、モータ15の本体が固定されている。また、減速機16のケース体は、本体部2に固定されている。
【0046】
第1アーム部11と第2アーム部12とを繋ぐ関節部には、第1アーム部11に対して第2アーム部12を回動させるための第2回動用モータとしてのモータ17と、モータ17の動力を減速して伝達する減速機18とが配置されている。モータ17は、サーボモータである。具体的には、モータ17は、ACサーボモータである。減速機18の入力部には、モータ17の出力軸が固定され、減速機18の出力部には、第1アーム部11の先端側が固定されている。減速機18のケース体には、モータ17の本体が固定されている。また、減速機18のケース体は、第2アーム部12の基端側に固定されている。
【0047】
第2アーム部12には、第2アーム部12に対してエンドエフェクタを回転させるための回転用モータとしてのモータ19と、モータ19の動力を減速して伝達する減速機20とが取り付けられている。モータ19は、サーボモータである。具体的には、モータ19は、ACサーボモータである。減速機20の入力部には、モータ19の出力軸が固定され、減速機20の出力部には、プーリ21が固定されている。減速機20のケース体には、モータ19の本体が固定されている。また、減速機20のケース体は、第2アーム部12の上面に固定されている。
【0048】
また、第2アーム部12には、上述のボールネジスプライン4と、第2アーム部12に対してエンドエフェクタを昇降させるための昇降用モータとしてのモータ22とが取り付けられている。ボールネジスプライン4は、上下方向を軸方向として配置されるボールネジスプライン軸23と、ボールネジスプライン軸23を上下方向へ移動させるボールネジナット24と、ボールネジスプライン軸23の軸心を中心にボールネジスプライン軸23を回転させるスプラインナット25とを備えている。モータ22は、サーボモータである。具体的には、モータ22は、ACサーボモータである。モータ22の出力軸には、プーリ28が固定されている。ボールネジナット24には、プーリ29が取り付けられている。プーリ28とプーリ29とには、ベルト30が架け渡されている。スプラインナット25には、プーリ31が取り付けられている。プーリ21とプーリ31との間には、ベルト32が架け渡されている。
【0049】
ボールネジナット24およびスプラインナット25は、略円筒状に形成される保持部材33に回転可能に保持されている。保持部材33の上端には、プレートが固定されており、このプレートには、モータ22の本体が固定されている。保持部材33の下端は、第2アーム部12の上面に固定されている。ボールネジスプライン軸23の下端には、エンドエフェクタが取り付けられている。すなわち、第2アーム部12の先端側には、エンドエフェクタが取り付けられている。本形態のボールネジスプライン軸23は、エンドエフェクタが取り付けられるエンドエフェクタ取付部材である。
【0050】
また、ボールネジスプライン軸23の下端側には、ベローズ34の下端が固定されるベローズ固定部材35が軸受を介して取り付けられている。ベローズ34の上端は、第2アーム部12の底面に固定されるカバー部材に取り付けられている。ボールネジスプライン軸23の上端側には、ベローズ36の上端が固定されるベローズ固定部材37が軸受を介して取り付けられている。ベローズ36の下端は、モータ17、19、22等を覆うカバー部材38に取り付けられている。カバー部材38は、第2アーム部12の上面側に取り付けられている。
【0051】
本形態では、モータ22が回転すると、プーリ28、29およびベルト30を介してモータ22の動力がボールネジナット24に伝達されてボールネジナット24が回転し、ボールネジスプライン軸23が昇降する。すなわち、モータ22が一方向に回転すると、ボールネジスプライン軸23の下端に取り付けられたエンドエフェクタがボールネジスプライン軸23と一緒に上昇し、モータ22が他方向に回転すると、ボールネジスプライン軸23の下端に取り付けられたエンドエフェクタがボールネジスプライン軸23と一緒に下降する。また、モータ19が回転すると、プーリ21、31およびベルト32を介してモータ19の動力がスプラインナット25に伝達されてスプラインナット25が回転し、ボールネジスプライン軸23がその軸中心を中心にして回転する。すなわち、ボールネジスプライン軸23の下端に取り付けられたエンドエフェクタが、ボールネジスプライン軸23の軸中心を中心にして回転する。
【0052】
制御部5には、モータ15、17、19、22が電気的に接続されており、制御部5は、モータ15、17、19、22を制御する。ペンダントスイッチ6は、所定のケーブルを介して制御部5に接続されている。なお、実施の形態1においては、モータ15、17、19、22は、ロボット1を動作させるための動作用のモータであり、実施の形態2においては、モータ22は、ロボット1を動作させるための動作用モータである。
【0053】
[実施の形態1]
(モータの回転速度とトルク制限値)
図2は、
図1に示すモータ15のトルク制限値を説明するためのグラフである。
図3は、
図1に示すモータ22のトルク制限値を説明するためのグラフである。
図4は、
図1に示す制御部5に記憶されるトルク制限値のテーブルの一例を説明するための表である。
【0054】
ロボット1が組立ライン等に設置されると、ロボット1の教示が行われる。また、教示終了後のロボット1は、教示結果に基づいて自動運転される。本形態では、教示が終了すると、ロボット1の自動運転として、教示点やロボット1の制御プログラムが正しいか否かを確認するためのテスト運転が行われる。また、テスト運転が終了すると、ロボット1の自動運転として、部品の組立等を行うための通常運転が行われる。なお、テスト運転と通常運転との切替は、ペンダントスイッチ6を用いたオペレータの操作によって行われる。
【0055】
また、ロボット1の周辺装置等に動作中のロボット1が接触した場合に、モータ15、17、19、22を停止させて(すなわち、ロボット1の動作を停止させて)、ロボット1等の損傷を防止するため、制御部5では、モータ15、17、19、22のトルク制限値が設定されており、モータ15、17、19、22のトルクがトルク制限値に達すると、制御部5は、モータ15、17、19、22を停止させる。
【0056】
本形態では、制御部5は、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータ15、17、19、22を回転させている。たとえば、制御部5は、テスト運転時に、通常運転時の回転速度の10%程度の回転速度でモータ15、17、19、22を回転させている。
【0057】
また、モータ15、17、19、22を一方向へ回転させるためのモータ15、17、19、22のトルクをプラスのトルクとし、モータ15、17、19、22を他方向へ回転させるためのモータ15、17、19、22のトルクをマイナスのトルクとすると、本形態では、制御部5は、テスト運転時に、モータ15、17、19、22が一方向へ回転しているのか、それとも、他方向へ回転しているのかを判別するとともに、モータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御し、かつ、モータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御している。なお、本形態では、テスト運転時のモータ15、17、19、22のトルク制限値は、ロボット1を教示する際のモータ15、17、19、22のトルク制限値と同じである。
【0058】
ここで、モータ15の回転方向が変わっても、アーム3やボールネジスプライン4等の重力の影響でモータ15に要求されるトルクの絶対値が大きく変動することはない。サーボ制御開始後、所定位置に停止している第1アーム部11を本体部2に対して一方向へ回転させ、所定時間停止させた後、第1アーム部11を本体部2に対して他方向へ回転させた場合のモータ15のトルクは、たとえば、
図2のように、変動する。具体的には、テスト運転時のモータ15のトルクは、たとえば、
図2の曲線S1のように変動し、通常運転時のモータ15のトルクは、たとえば、
図2の曲線S2のように変動する。
【0059】
そのため、テスト運転時にモータ15が一方向へ回転するときのモータ15のトルク制限値T1の絶対値と、テスト運転時にモータ15が他方向へ回転するときのモータ15のトルク制限値T2の絶対値とが略等しくなっており、通常運転時にモータ15が一方向へ回転するときのモータ15のトルク制限値T3の絶対値と、通常運転時にモータ15が他方向へ回転するときのモータ15のトルク制限値T4の絶対値とが略等しくなっている。なお、上述のように、テスト運転時にモータ15が一方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ15が一方向へ回転する場合のトルク制限値T3よりも低いトルク制限値T1でモータ15が制御され、テスト運転時にモータ15が他方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ15が他方向へ回転する場合のトルク制限値T4よりも高いトルク制限値T2でモータ15が制御されている。
【0060】
同様に、モータ17、19の回転方向が変わっても、アーム3やボールネジスプライン4等の重力の影響でモータ17、19に要求されるトルクの絶対値が大きく変動することはない。そのため、テスト運転時にモータ17が一方向へ回転するときのモータ17のトルク制限値の絶対値と、テスト運転時にモータ17が他方向へ回転するときのモータ17のトルク制限値の絶対値とが略等しくなっており、通常運転時にモータ17が一方向へ回転するときのモータ17のトルク制限値の絶対値と、通常運転時にモータ17が他方向へ回転するときのモータ17のトルク制限値の絶対値とが略等しくなっている。また、テスト運転時にモータ19が一方向へ回転するときのモータ19のトルク制限値の絶対値と、テスト運転時にモータ19が他方向へ回転するときのモータ19のトルク制限値の絶対値とが略等しくなっており、通常運転時にモータ19が一方向へ回転するときのモータ19のトルク制限値の絶対値と、通常運転時にモータ19が他方向へ回転するときのモータ19のトルク制限値の絶対値とが略等しくなっている。
【0061】
一方、モータ22は、ボールネジスプライン軸23と一緒にエンドエフェクタを昇降させているため、ボールネジスプライン軸23、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタが保持するワーク等の重量の影響で、エンドエフェクタを上昇させる際に、モータ22に要求されるトルクの絶対値は大きくなり、エンドエフェクタを下降させる際に、モータ22に要求されるトルクの絶対値は小さくなる。モータ22が一方向へ回転した場合にエンドエフェクタが上昇し、モータ22が他方向へ回転した場合にエンドエフェクタが下降する場合、サーボ制御開始後、所定位置に停止しているエンドエフェクタを上昇させ、所定時間停止させた後、エンドエフェクタを下降させた場合のモータ22のトルクは、たとえば、
図3のように変動する。具体的には、テスト運転時のモータ22のトルクは、たとえば、
図3の曲線S11のように変動し、通常運転時のモータ22のトルクは、たとえば、
図3の曲線S12のように変動する。
【0062】
したがって、テスト運転時において、エンドエフェクタが上昇するときのモータ22のトルク制限値を第1トルク制限値T11とし、エンドエフェクタが下降するときのモータ22のトルク制限値を第2トルク制限値T12とすると、制御部5では、第2トルク制限値T12の絶対値が第1トルク制限値T11の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T11および第2トルク制限値T12が設定されている。同様に、制御部5では、通常運転時にエンドエフェクタが下降するときのモータ22のトルク制限値T14の絶対値が、通常運転時にエンドエフェクタが上昇するときのモータ22のトルク制限値T13の絶対値よりも小さくなるように、トルク制限値T13、T14が設定されている。
【0063】
また、制御部5は、テスト運転時に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別するとともに、テスト運転の際のエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値T11に基づいてモータ22を制御し、テスト運転の際のエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値T12に基づいてモータ22を制御する。同様に、制御部5は、通常運転の際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別するとともに、通常運転の際のエンドエフェクタの上昇時には、トルク制限値T13に基づいてモータ22を制御し、通常運転の際のエンドエフェクタの下降時には、トルク制限値T14に基づいてモータ22を制御する。本形態では、制御部5は、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、トルク制限値T11、T13をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、トルク制限値T12、T14をモータ22のトルク制限値として設定している。すなわち、制御部5は、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値をトルク制限値T11、T13またはトルク制限値T12、T14へ切り替えている。
【0064】
なお、上述のように、テスト運転時にモータ22が一方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ22が一方向へ回転する場合のトルク制限値T13よりも低い第1トルク制限値T11でモータ22が制御され、テスト運転時にモータ22が他方向へ回転する場合には、通常運転時にモータ22が他方向へ回転する場合のトルク制限値T14よりも高いトルク制限値T12でモータ22が制御されている。また、停止しているエンドエフェクタを所定の位置で保持する場合でも、
図3に示すように、モータ22には、所定の保持トルクT15が要求される。本形態では、第1トルク制限値T11と保持トルクT15との差と、第2トルク制限値T12と保持トルクT15との差とが略等しくなっており、トルク制限値T13と保持トルクT15との差と、トルク制限値T14と保持トルクT15との差とが略等しくなっている。さらに、トルク制限値T12、T14の値によっては、サーボ制御開始直後のモータ22のトルクがトルク制限値T12、T14を下回ることがある。そのため、制御部5は、モータ22のサーボ制御開始直後の所定時間内においては、トルク制限値T12、T14よりも低いトルク制限値でモータ22を制御する。
【0065】
本形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量を、モータ22にかかるモータ負荷として、オペレータがペンダントスイッチ6から入力することが可能となっている。制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、トルク制限値T11〜T14を設定する。具体的には、負荷重量に応じたトルク制限値T11〜T14がテーブル化されて制御部5に記憶されており、制御部5は、入力された負荷重量に基づいて、対応するトルク制限値T11〜T14を読み出して設定する。たとえば、
図4に示すようなテーブルが制御部5に記憶されており、制御部5は、入力された負荷重量に基づいて、対応するトルク制限値T11〜T14を読み出して設定する。
【0066】
なお、
図4に示す例では、第1トルク制限値T11と第2トルク制限値T12との差、および、トルク制限値T13とトルク制限値T14との差は、負荷重量に関係なく一定となっているが、負荷重量が大きくなるにしたがって、第1トルク制限値T11と第2トルク制限値T12との差、および、トルク制限値T13とトルク制限値T14との差が大きくなっても良い。
【0067】
また、本形態では、制御部5に、モータ15、17、19のトルク制限値が、たとえば、所定の固定値として記憶されている。ただし、負荷重量に応じたモータ15、17、19のトルク制限値がテーブル化されて制御部5に記憶され、ペンダントスイッチ6から入力された負荷重量に基づいて、制御部5が対応するトルク制限値を読み出して設定しても良い。
【0068】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータ15、17、19、22を回転させている。すなわち、本形態では、テスト運転時におけるロボット1の動作速度が遅い。そのため、本形態では、テスト運転時にオペレータが危険を察知してロボット1を非常停止させた場合のロボット1の空走距離を小さくすることが可能になる。
【0069】
また、本形態では、テスト運転時にモータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合に、通常運転時にモータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御し、かつ、テスト運転時にモータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合に、通常運転時にモータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御している。そのため、本形態では、テスト運転時にロボット1が周辺装置等に接触した場合に、短時間で、モータ15、17、19、22のトルクがトルク制限値を超えたり、トルク制限値を下回ったりする。したがって、本形態では、テスト運転時にロボット1が周辺装置等に接触した場合に、モータ15、17、19、22を短時間で停止させることが可能になる。
【0070】
このように、本形態では、テスト運転時にオペレータが危険を察知してロボット1を非常停止させた場合のロボット1の空走距離を小さくすることが可能になり、また、テスト運転時にロボット1が周辺装置等に接触した場合に、モータ15、17、19、22を短時間で停止させることが可能になる。したがって、本形態では、テスト運転時のロボット1の損傷を防止することが可能になる。また、テスト運転時に不具合が発生した場合には、再び教示を行う等の所定の処置を行うことで、テスト運転終了後の通常運転時にロボット1が周辺装置等に接触するのを防止することが可能になり、通常運転時のロボット1の損傷を防止することが可能になる。その結果、本形態では、教示終了後の自動運転時のロボット1の損傷を防止することが可能になる。
【0071】
本形態では、第2トルク制限値T12の絶対値が第1トルク制限値T11の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T11および第2トルク制限値T12が設定されている。また、本形態では、トルク制限値T14の絶対値がトルク制限値T13の絶対値よりも小さくなるように、トルク制限値T13、T14が設定されている。そのため、本形態では、エンドエフェクタが正常に昇降しているときに、モータ22のトルクがトルク制限値T11、T13を超えたり、トルク制限値T12、T14を下回ったりしないように、また、エンドエフェクタの上昇時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクがトルク制限値T11、T13を超え、かつ、エンドエフェクタの下降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクがトルク制限値T12、T14を下回るように、トルク制限値T11〜T14を設定することが可能になる。
【0072】
また、本形態では、エンドエフェクタの上昇時に、トルク制限値T11、T13に基づいてモータ22を制御し、エンドエフェクタの下降時に、第2トルク制限値T12、T14に基づいてモータ22を制御しており、エンドエフェクタの上昇時に、モータ22のトルクがトルク制限値T11、T13を超えると、あるいは、エンドエフェクタの下降時に、モータ22のトルクが第2トルク制限値T12、T14を下回ると、モータ22が停止する。そのため、本形態では、エンドエフェクタやエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の影響で、エンドエフェクタを上昇させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値とエンドエフェクタを下降させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値とが大きく違っている場合であっても、エンドエフェクタの昇降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触したときに、モータ22を停止させてエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、本形態では、エンドエフェクタを上昇させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値とエンドエフェクタを下降させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値とが大きく違っている場合であっても、エンドエフェクタが正常に昇降している場合に、モータ22を回転させ続けて、エンドエフェクタを適切に昇降させることが可能になる。
【0073】
本形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量をペンダントスイッチ6から入力することが可能となっており、制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、トルク制限値T11〜T14を設定している。そのため、本形態では、エンドエフェクタをより適切に昇降させることができるように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクがトルク制限値T11、T13を超えたり、トルク制限値T12、T14を下回ったりするように、負荷重量に応じてトルク制限値T11〜T14を設定することが可能になる。したがって、本形態では、エンドエフェクタをより適切に昇降させることが可能になるとともに、エンドエフェクタ等の損傷を確実に防止することが可能になる。
【0074】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0075】
上述した形態では、制御部5は、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータ15、17、19、22を回転させるとともに、テスト運転時にモータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合に、通常運転時にモータ15、17、19、22が一方向へ回転する場合のトルク制限値よりも低いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御し、かつ、テスト運転時にモータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合に、通常運転時にモータ15、17、19、22が他方向へ回転する場合のトルク制限値よりも高いトルク制限値でモータ15、17、19、22を制御している。この他にもたとえば、制御部5は、テスト運転時に、モータ15、17、19を通常運転時の回転速度と同じ速度で回転させ、かつ、通常運転時のトルク制限値と同じトルク制限値で制御するとともに、上述した形態と同様に、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも低い回転速度でモータ22を回転させ、テスト運転時にモータ22が一方向へ回転する場合には、第1トルク制限値T11でモータ22を制御し、かつ、テスト運転時にモータ22が他方向へ回転する場合には、第2トルク制限値T12でモータ22を制御しても良い。
【0076】
エンドエフェクタやエンドエフェクタに保持されるワーク等の重量の影響で、下降時のエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触すると、エンドエフェクタ等が損傷しやすくなるが、この場合には、エンドエフェクタを昇降させるためのモータ22を、テスト運転の際のエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触したときに短時間で停止させることが可能になり、また、モータ22を停止させた後のエンドエフェクタの動作量を小さくすることが可能になる。したがって、テスト運転時のエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、この場合には、モータ15、17、19は、テスト運転時に通常運転時の回転速度と同じ速度で回転するため、テスト運転時のロボット1の動作速度を速めることが可能になる。
【0077】
上述した形態において、テスト運転時のモータ15、17、19、22の回転速度とトルク制限値とが選択可能となっていても良い。すなわち、テスト運転時のモータ15、17、19、22の回転速度とトルク制限値とが、オペレータによって任意に設定されても良い。この場合には、モータ15、モータ17、モータ19およびモータ22ごとの個別に、回転速度とトルク制限値とが選択可能となっていても良い。この場合には、モータ15、17、19、22の回転速度とトルク制限値との様々な組合せで、ロボット1のテスト運転を行うことが可能になる。なお、この場合には、テスト運転時に、通常運転時の回転速度よりも遅い回転速度で、モータ15、17、19、22を回転させるとともに、通常運転時のトルク制限値と同じトルク制限値で、モータ15、17、19、22の少なくともいずれか1つを制御することも可能である。
【0078】
上述した形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量をペンダントスイッチ6から入力することが可能となっており、制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、トルク制限値T11〜T14を設定している。この他にもたとえば、モータ22のモータ負荷を自動で取得するモータ負荷取得モードを設けて、モータ負荷を取得するとともに、制御部5は、取得されたモータ負荷に基づいて、トルク制限値T11〜T14を設定しても良い。すなわち、制御部5は、モータ22を駆動させてモータ22のモータ負荷を取得するとともに、取得されたモータ負荷に基づいて、トルク制限値T11〜T14を設定しても良い。この場合には、たとえば、ペンダントスイッチ6での操作によって、モータ負荷取得モードに切り替わる。また、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量の変動が小さい場合には、トルク制限値T11〜T14が固定値として制御部5に記憶されていても良い。
【0079】
上述した形態では、制御部5は、テスト運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、第1トルク制限値T11に基づいてモータ22を制御し、テスト運転の際のエンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値T11の絶対値よりも絶対値の小さな第2トルク制限値T12に基づいてモータ22を制御している。この他にもたとえば、制御部5は、テスト運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、第1トルク制限値T11に基づいてモータ22を制御するとともに、テスト運転の際のエンドエフェクタの下降時には、第1トルク制限値T11の絶対値と絶対値の等しい第2トルク制限値に基づいてモータ22を制御しても良い。
【0080】
同様に、上述した形態では、制御部5は、通常運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、トルク制限値T13に基づいてモータ22を制御し、通常運転の際のエンドエフェクタの下降時に、トルク制限値T13の絶対値よりも絶対値の小さなトルク制限値T14に基づいてモータ22を制御しているが、制御部5は、通常運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、トルク制限値T13に基づいてモータ22を制御するとともに、通常運転の際のエンドエフェクタの下降時には、トルク制限値T13の絶対値と絶対値の等しいトルク制限値に基づいてモータ22を制御しても良い。
【0081】
上述した形態では、制御部5は、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合に、トルク制限値T11、T13をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合に、トルク制限値T12、T14をモータ22のトルク制限値として設定している。この他にもたとえば、制御部5は、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別せずに、モータ22のトルクがトルク制限値T11、T13を超えた場合、あるいは、モータ22のトルクがトルク制限値T12、T14を下回った場合に、モータ22を停止させても良い。すなわち、制御部5は、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値をトルク制限値T11、T13またはトルク制限値T12、T14へ切り替えなくても良い。この場合であっても、エンドエフェクタの上昇時には、トルク制限値T11、T13に基づいてモータ22が制御され、エンドエフェクタの下降時には、トルク制限値T12、T14に基づいてモータ22が制御される。
【0082】
上述した形態では、アーム3は、第1アーム部11と第2アーム部12との2個のアーム部によって構成されているが、アーム3は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。
【0083】
[実施の形態2]
(昇降用モータのトルク制御)
図5は、
図1に示すモータ22のトルク制限値を説明するためのグラフである。
図6は、
図1に示す制御部5に記憶されるトルク制限値のテーブルの一例を説明するための表である。
【0084】
ロボット1の周辺装置等に動作中のロボット1が接触した場合に、モータ15、17、19、22を停止させて(すなわち、ロボット1の動作を停止させて)、ロボット1等の損傷を防止するため、制御部5では、モータ15、17、19、22のトルク制限値が設定されており、モータ15、17、19、22のトルクがトルク制限値に達すると、制御部5は、モータ15、17、19、22を停止させる。
【0085】
モータ15、17、19の回転方向が変わっても、アーム3やボールネジスプライン4等の重力の影響でモータ15、17、19に要求されるトルクの絶対値が大きく変動することはないため、本形態では、モータ15、17、19が正方向へ回転するときのモータ15、17、19のトルク制限値の絶対値と、モータ15、17、19が逆方向へ回転するときのモータ15、17、19のトルク制限値の絶対値とが等しくなっている。
【0086】
一方、モータ22は、ボールネジスプライン軸23と一緒にエンドエフェクタを昇降させているため、ボールネジスプライン軸23、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタが保持するワーク等の重量の影響で、エンドエフェクタを上昇させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値は大きくなり、エンドエフェクタを下降させる際にモータ22に要求されるトルクの絶対値は小さくなる。エンドエフェクタを上昇させる方向のモータ22のトルクをプラスのトルクとし、エンドエフェクタを下降させる方向のモータ22のトルクをマイナスのトルクとすると、サーボ制御開始後、所定位置に停止しているエンドエフェクタを上昇させ、所定時間停止させた後、エンドエフェクタを下降させた場合のモータ22のトルクは、たとえば、
図5のように変動する。具体的には、ロボット1を教示する際のモータ22のトルクは、たとえば、
図5の曲線S21のように変動し、教示終了後のロボット1の自動運転時のモータ22のトルクは、たとえば、
図5の曲線S22のように変動する。すなわち、エンドエフェクタを上昇させる一方向にモータ22が回転するときにモータ22に要求されるトルクの絶対値の最大値は、エンドエフェクタを下降させる他方向にモータ22が回転するときにモータ22に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる。
【0087】
したがって、エンドエフェクタを上昇させるときのモータ22のトルク制限値(すなわち、エンドエフェクタを上昇させる一方向に回転するときのモータ22のトルク制限値)を第1トルク制限値とし、エンドエフェクタを下降させるときのモータ22のトルク制限値(すなわち、エンドエフェクタを下降させる他方向に回転するときのモータ22のトルク制限値)を第2トルク制限値とすると、本形態では、制御部5において、第2トルク制限値の絶対値が第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。具体的には、ロボット1を教示する際の第2トルク制限値T22の絶対値が第1トルク制限値T21の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T21および第2トルク制限値T22が設定され、ロボット1の自動運転時(通常運転時)の第2トルク制限値T24の絶対値が第1トルク制限値T23の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T23および第2トルク制限値T24が設定されている(
図5参照)。より具体的には、エンドエフェクタが正常に昇降しているときに、モータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超えたり、第2トルク制限値T22、T24を下回ったりしないように、また、エンドエフェクタの上昇時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超え、かつ、エンドエフェクタの下降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクが第2トルク制限値T22、T24を下回るように、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24が設定されている。
【0088】
また、教示時の第1トルク制限値T21と、自動運転時の第1トルク制限値T23とは異なっており、教示時の第2トルク制限値T22と、自動運転時の第2トルク制限値T24とは異なっている。具体的には、
図5に示すように、第1トルク制限値T21は、第1トルク制限値T23よりも小さくなっており、第2トルク制限値T22は、第2トルク制限値T24よりも大きくなっている。なお、停止しているエンドエフェクタを所定の位置で保持する場合でも、
図5に示すように、モータ22には、所定の保持トルクT25が要求される。本形態では、第1トルク制限値T21と保持トルクT25との差と、第2トルク制限値T22と保持トルクT25との差とが略等しくなっており、第1トルク制限値T23と保持トルクT25との差と、第2トルク制限値T24と保持トルクT25との差とが略等しくなっている。
【0089】
また、制御部5は、ロボット1を教示する際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別するとともに、ロボット1を教示する際のエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値T21に基づいてモータ22を制御し、ロボット1を教示する際のエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値T22に基づいてモータ22を制御する。すなわち、ロボット1を教示する際のエンドエフェクタの上昇時に、モータ22のトルクが第1トルク制限値T21を超えると、あるいは、エンドエフェクタの下降時に、モータ22のトルクが第2トルク制限値T22を下回ると、制御部5は、モータ22を停止させている。また、本形態では、制御部5は、ロボット1を教示する際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第1トルク制限値T21をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第2トルク制限値T22をモータ22のトルク制限値として設定している。すなわち、制御部5は、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値を第1トルク制限値T21または第2トルク制限値T22へ切り替えている。
【0090】
同様に、制御部5は、ロボット1の自動運転の際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別するとともに、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値T23に基づいてモータ22を制御し、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値T24に基づいてモータ22を制御する。すなわち、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、モータ22のトルクが第1トルク制限値T23を超えると、あるいは、エンドエフェクタの下降時に、モータ22のトルクが第2トルク制限値T24を下回ると、制御部5は、モータ22を停止させている。また、本形態では、制御部5は、ロボット1の自動運転の際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第1トルク制限値T23をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第2トルク制限値T24をモータ22のトルク制限値として設定している。すなわち、制御部5は、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値を第1トルク制限値T23または第2トルク制限値T24へ切り替えている。
【0091】
なお、第2トルク制限値T22、T24の値によっては、サーボ制御開始直後のモータ22のトルクが第2トルク制限値T22、T24を下回ることがある。そのため、制御部5は、モータ22のサーボ制御開始直後の所定時間内においては、第2トルク制限値T22、T24よりも低いトルク制限値でモータ22を制御する。また、ロボット1を教示する際のモータ15、17、19、22の回転速度は、ロボット1の自動運転の際のモータ15、17、19、22の回転速度よりも遅くなっている。
【0092】
本形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量を、モータ22にかかるモータ負荷として、オペレータがペンダントスイッチ6から入力することが可能となっている。制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定する。具体的には、負荷重量に応じた第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24がテーブル化されて制御部5に記憶されており、制御部5は、入力された負荷重量に基づいて、対応する第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を読み出して設定する。たとえば、
図6に示すようなテーブルが制御部5に記憶されており、制御部5は、入力された負荷重量に基づいて、対応する第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を読み出して設定する。
【0093】
なお、
図6に示す例では、第1トルク制限値T21と第2トルク制限値T22との差、および、第1トルク制限値T23と第2トルク制限値T24との差は、負荷重量に関係なく一定となっているが、負荷重量が大きくなるにしたがって、第1トルク制限値T21と第2トルク制限値T22との差、および、第1トルク制限値T23と第2トルク制限値T24との差が大きくなっても良い。
【0094】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、エンドエフェクタが正常に昇降しているときに、モータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超えたり、第2トルク制限値T22、T24を下回ったりしないように、また、エンドエフェクタの上昇時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超え、かつ、エンドエフェクタの下降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクが第2トルク制限値T22、T24を下回るように、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24が設定されている。また、本形態では、エンドエフェクタの上昇時(すなわち、エンドエフェクタを上昇させる一方向にモータ22が回転するとき)に、第1トルク制限値T21、T23に基づいてモータ22を制御し、エンドエフェクタの下降時(すなわち、エンドエフェクタを下降させる他方向にモータ22が回転するとき)に、第2トルク制限値T22、T24に基づいてモータ22を制御しており、エンドエフェクタの上昇時に、モータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超えると、あるいは、エンドエフェクタの下降時に、モータ22のトルクが第2トルク制限値T22、T24を下回ると、モータ22が停止する。
【0095】
そのため、本形態では、エンドエフェクタの昇降時にエンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合に、モータ22を停止させてエンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。また、本形態では、エンドエフェクタが正常に昇降している場合に、モータ22を回転させ続けて、エンドエフェクタを適切に昇降させることが可能になる。すなわち、本形態では、モータ22が回転しているときにロボット1の一部が周辺装置等に接触した場合に、モータ22を停止させてロボット1および周辺装置等の損傷を防止することが可能になるとともに、モータ22が回転してロボット1が正常に動作している場合に、モータ22を回転させ続けて、ロボット1を適切に動作させることが可能になる。
【0096】
本形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量をペンダントスイッチ6から入力することが可能となっており、制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定している。そのため、本形態では、エンドエフェクタをより適切に昇降させることができるように、かつ、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触した場合にモータ22のトルクが第1トルク制限値T21、T23を超えたり、第2トルク制限値T22、T24を下回ったりするように、負荷重量に応じて第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定することが可能になる。したがって、本形態では、エンドエフェクタをより適切に昇降させることが可能になるとともに、エンドエフェクタ等の損傷を確実に防止することが可能になる。
【0097】
本形態では、制御部5は、ロボット1を教示する際のエンドエフェクタの上昇時に、第1トルク制限値T21に基づいてモータ22を制御し、ロボット1を教示する際のエンドエフェクタの下降時に、第2トルク制限値T22に基づいてモータ22を制御している。オペレータのマニュアル操作によってロボット1が操作される教示時には、ロボット1の自動運転時と比較して、エンドエフェクタ等が周辺装置等に接触してエンドエフェクタ等が損傷する可能性が高いが、本形態では、ロボット1を教示する際であっても、エンドエフェクタ等の損傷を防止することが可能になる。
【0098】
本形態では、ロボット1を教示する際の第1トルク制限値T21は、ロボット1の自動運転時の第1トルク制限値T23よりも小さくなっており、ロボット1を教示する際の第2トルク制限値T22は、ロボット1の自動運転時の第2トルク制限値T24よりも大きくなっている。そのため、本形態では、上述のように、ロボット1の自動運転の際のモータ22の回転速度を、ロボット1を教示する際のモータ22の回転速度よりも速くすることができる。したがって、本形態では、ロボット1の自動運転時のエンドエフェクタの昇降速度を速めることが可能になる。
【0099】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0100】
上述した形態では、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量をペンダントスイッチ6から入力することが可能となっており、制御部5は、ペンダントスイッチ6から負荷重量が入力されると、入力された負荷重量に基づいて、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定している。この他にもたとえば、モータ22のモータ負荷を自動で取得するモータ負荷取得モードを設けて、モータ負荷を取得するとともに、制御部5は、取得されたモータ負荷に基づいて、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定しても良い。すなわち、制御部5は、モータ22を駆動させてモータ22のモータ負荷を取得するとともに、取得されたモータ負荷に基づいて、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24を設定しても良い。この場合には、たとえば、ペンダントスイッチ6での操作によって、モータ負荷取得モードに切り替わる。また、エンドエフェクタの重量やエンドエフェクタに保持されるワークの重量等の負荷重量の変動が小さい場合には、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24が固定値として制御部5に記憶されていても良い。
【0101】
上述した形態では、制御部5は、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、第1トルク制限値T23に基づいてモータ22を制御し、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの下降時に、第1トルク制限値T23の絶対値よりも絶対値の小さな第2トルク制限値T24に基づいてモータ22を制御している。この他にもたとえば、制御部5は、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの上昇時に、第1トルク制限値T23に基づいてモータ22を制御するとともに、ロボット1の自動運転の際のエンドエフェクタの下降時には、第1トルク制限値T23の絶対値と絶対値の等しい第2トルク制限値に基づいてモータ22を制御しても良い。
【0102】
上述した形態では、制御部5は、ロボット1を教示する際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第1トルク制限値T21をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第2トルク制限値T22をモータ22のトルク制限値として設定している。この他にもたとえば、制御部5は、ロボット1を教示する際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別せずに、モータ22のトルクが第1トルク制限値T21を超えた場合、あるいは、モータ22のトルクが第2トルク制限値T22を下回った場合に、モータ22を停止させても良い。すなわち、制御部5は、ロボット1を教示する際に、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値を第1トルク制限値T21または第2トルク制限値T22へ切り替えなくても良い。この場合であっても、エンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値T21に基づいてモータ22が制御され、エンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値T22に基づいてモータ22が制御される。
【0103】
同様に、上述した形態では、制御部5は、ロボット1の自動運転の際に、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第1トルク制限値T23をモータ22のトルク制限値として設定し、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転していると判別した場合には、第2トルク制限値T24をモータ22のトルク制限値として設定しているが、制御部5は、エンドエフェクタが上昇する方向へモータ22が回転しているのか、それとも、エンドエフェクタが下降する方向へモータ22が回転しているのかを判別せずに、モータ22のトルクが第1トルク制限値T23を超えた場合、あるいは、モータ22のトルクが第2トルク制限値T24を下回った場合に、モータ22を停止させても良い。すなわち、制御部5は、ロボット1の自動運転の際に、モータ22の回転方向に応じて、モータ22のトルク制限値を第1トルク制限値T21または第2トルク制限値T22へ切り替えなくても良い。この場合であっても、エンドエフェクタの上昇時には、第1トルク制限値T23に基づいてモータ22が制御され、エンドエフェクタの下降時には、第2トルク制限値T24に基づいてモータ22が制御される。
【0104】
上述した形態では、アーム3は、第1アーム部11と第2アーム部12との2個のアーム部によって構成されているが、アーム3は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。
【0105】
[産業用ロボットの変形例1]
図7は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。
図8は、
図7のE−E方向から産業用ロボット1を示す側面図である。
図9は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボット1の側面図である。
図10は、
図9に示す産業用ロボット1の昇降機構を説明するための平面図である。
【0106】
本発明が適用されるロボット1は、液晶ディスプレイ用のガラス基板や半導体ウエハ等の搬送対象物を搬送するための水平多関節型ロボットであっても良い。たとえば、ロボット1は、
図7、
図8に示すように、液晶ディスプレイ用のガラス基板42(以下、「基板42」とする。)を搬送するための水平多関節型ロボットであっても良い。このロボット1は、大気中に配置されている。また、ロボット1は、基板42が搭載されるエンドエフェクタとしての2個のハンド43と、2個のハンド43のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム44と、2本のアーム44を支持する本体部45と、本体部45を水平方向に移動可能に支持するベース部材46とを備えている。本体部45は、2本のアーム44の基端側を支持するアーム支持部材47と、アーム支持部材47が固定されるとともに上下動可能な昇降部材48と、昇降部材48を上下方向に移動可能に支持する柱状部材49と、本体部45の下端部分を構成するとともにベース部材46に対して水平移動可能な基台50と、柱状部材49の下端が固定されるとともに基台50に対して旋回可能な旋回部材51とを備えている。
【0107】
昇降部材48は、柱状部材49に対して上下方向に移動可能となっており、ロボット1は、昇降部材48を昇降させる昇降機構を備えている。この昇降機構は、ハンド43を昇降させるための昇降用モータと、上下方向を軸方向として柱状部材49に回転可能に取り付けられ昇降用モータの動力で回転するボールネジと、このボールネジに係合するとともに昇降部材48に取り付けられるナット部材とを備えている。
図7、
図8に示すロボット1では、昇降用モータが一方向へ回転すると、ハンド43、アーム44、アーム支持部材47および昇降部材48が上昇し、昇降用モータが他方向へ回転すると、ハンド43、アーム44、アーム支持部材47および昇降部材48が下降する。
図7、
図8に示すロボット1において、昇降用モータは、ロボット1を動作させるための動作用モータである。昇降用モータは、制御部に接続されており、制御部は、昇降用モータを制御する。また、アーム44は、エンドエフェクタであるハンド43が取り付けられるエンドエフェクタ取付部材である。
【0108】
図7、
図8に示すロボット1においても、上述した形態と同様に、ハンド43を下降させるときの昇降用モータのトルク制限値である第2トルク制限値T22、T24の絶対値が、ハンド43を上昇させるときの昇降用モータのトルク制限値である第1トルク制限値T21、T23の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24が設定されている。また、ハンド43の上昇時には、第1トルク制限値T21、T23に基づいて昇降用モータが制御され、ハンド43の下降時には、第2トルク制限値T22、T24に基づいて昇降用モータが制御されている。そのため、
図7、
図8に示すロボット1においても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、ロボット1は、たとえば、
図9、
図10に示すように、半導体ウエハ52(以下、「ウエハ52」とする。)を搬送するための水平多関節型ロボットであっても良い。このロボット1は、大気中に配置されている。また、ロボット1は、ウエハ52が搭載されるエンドエフェクタとしての2個のハンド53と、2個のハンド53のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム54と、2本のアーム54を支持する本体部55とを備えている。本体部55は、基台56と3個のフレーム57〜59とから構成されている。フレーム57は、基台56に昇降可能に保持され、フレーム58は、フレーム57に昇降可能に保持され、フレーム59は、フレーム58に昇降可能に保持されている。フレーム59の上端には、アーム支持部材60が固定されており、2本のアーム54の基端側は、アーム支持部材60に回動可能に連結されている。
【0110】
また、ロボット1は、基台56に対してフレーム57を昇降させ、フレーム57に対してフレーム58を昇降させるとともに、フレーム58に対してフレーム59を昇降させて、フレーム57〜59を伸縮させることで、ハンド53およびアーム54を昇降させる昇降機構を備えている。この昇降機構は、ハンド53を昇降させるためのモータ(昇降用モータ)61と、上下方向を軸方向として基台56に回転可能に取り付けられモータ61の動力で回転するボールネジ62と、ボールネジ62に係合するとともにフレーム57に取り付けられるナット部材63と、プーリとベルトとを有しフレーム57とフレーム58とを繋ぐ動滑車手段64と、プーリとベルトとを有しフレーム58とフレーム59とを繋ぐ動滑車手段65とを備えている。また、この昇降機構では、フレーム57にバランサシリンダ66のシリンダロッドが取り付けられており、フレーム57はバランサシリンダ66によって常時、上方向に付勢されている。
【0111】
図9、
図10に示すロボット1では、モータ61が一方向へ回転すると、フレーム57が上昇するとともに、動滑車手段64、65の作用でフレーム58、59が上昇し、また、モータ61が他方向へ回転すると、フレーム57が下降するとともに、動滑車手段64、65の作用でフレーム58、59が下降する。すなわち、モータ61が一方向へ回転すると、ハンド53、アーム54、アーム支持部材60およびフレーム57〜59が上昇し、モータ61が他方向へ回転すると、ハンド53、アーム54、アーム支持部材60およびフレーム57〜59が下降する。
図9、
図10に示すロボット1において、モータ61は、ロボット1を動作させるための動作用モータである。モータ61は、制御部に接続されており、制御部は、モータ61を制御する。また、アーム54は、エンドエフェクタであるハンド53が取り付けられるエンドエフェクタ取付部材である。
【0112】
図9、
図10に示すロボット1においても、上述した形態と同様に、ハンド53を下降させるときのモータ61のトルク制限値である第2トルク制限値T22、T24の絶対値が、ハンド53を上昇させるときのモータ61のトルク制限値である第1トルク制限値T21、T23の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値T21、T23および第2トルク制限値T22、T24が設定されている。また、ハンド53の上昇時には、第1トルク制限値T21、T23に基づいてモータ61が制御され、ハンド53の下降時には、第2トルク制限値T22、T24に基づいてモータ61が制御されている。そのため、
図9、
図10に示すロボット1においても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
[産業用ロボットの変形例2]
図11は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボット1の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図12は、
図11(B)のF部の内部構造を説明するための断面図である。
【0114】
本発明が適用されるロボット1は、真空中で有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用のガラス基板を搬送するための水平多関節型ロボットであっても良い。このロボット1は、ガラス基板が搭載されるエンドエフェクタとしてのハンド73と、ハンド73が先端側に連結されるアーム74と、アーム74の基端側が回動可能に連結される本体部75と、本体部75を昇降させる昇降機構76とを備えている。本体部75および昇降機構76は、略有底円筒状のケース体77の中に収容されている。ケース体77は、円板状に形成されたフランジ部77aを備えている。フランジ部77aは、ケース体77の上端部分を構成している。フランジ部77aには、本体部75の上端側部分が配置される貫通孔が形成されている。
【0115】
ハンド73およびアーム74は、本体部75の上側に配置されている。また、ハンド73およびアーム74は、フランジ部77aの上側に配置されている。ロボット1の、フランジ部77aの下端面よりも上側の部分は、真空チャンバー内に配置されている。すなわち、ロボット1の、フランジ部77aの下端面よりも上側の部分は、真空領域VRの中に配置されており、ハンド73およびアーム74は、真空中に配置されている。一方、ロボット1の、フランジ部77aの下端面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0116】
本体部75には、本体部75に対してアーム74を回動させるためのモータ78が取り付けられている。また、本体部75は、アーム74の基端側が固定される中空回転軸79と、モータ78の回転を減速してアーム74に伝達する減速機80と、減速機80のケース体を保持するとともに中空回転軸79を回動可能に保持する略円筒状の保持部材81とを備えている。中空回転軸79および保持部材81は、その軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。アーム74の基端側は、中空回転軸79の上端に固定されている。
【0117】
本体部75とアーム74とを繋ぐ関節部(すなわち、中空回転軸79とアーム74とを繋ぐ関節部)82には、真空領域VRへの空気の流出を防ぐ磁性流体シール83が配置されている。磁性流体シール83は、中空回転軸79の外周面と保持部材81の内周面との間に配置されている。また、関節部82は、真空領域VRへの空気の流出を防ぐためのベローズ84が配置されている。ベローズ84は、保持部材81の上端側の一部の外周側を覆うようにケース体77の内部に配置されている。ベローズ84の下端は、保持部材81に固定され、ベローズ84の上端は、フランジ部77aに固定されている。ベローズ84の内周側は、真空となっており、ベローズ84の外周側は、大気圧となっている。昇降機構76を構成する後述のモータ86が回転して本体部75が昇降すると、ベローズ84が伸縮する。
【0118】
昇降機構76は、本体部75を昇降させるためのモータ(昇降用モータ)86と、上下方向を軸方向としてケース体77に回転可能に取り付けられモータ86の動力で回転するボールネジ87と、ボールネジ87に係合するとともに本体部75に取り付けられるナット部材88とを備えている。
図11、
図12に示すロボット1では、モータ86が一方向へ回転すると、ハンド73、アーム74および本体部75が下降し、モータ86が他方向へ回転すると、ハンド73、アーム74および本体部75が上昇する。
図11、
図12に示すロボット1において、モータ86は、ロボット1を動作させるための動作用モータである。モータ86は、制御部に接続されており、制御部は、モータ86を制御する。また、アーム74は、エンドエフェクタであるハンド73が取り付けられるエンドエフェクタ取付部材である。また、
図11、
図12に示すロボット1では、中空回転軸79と保持部材81とによって、エンドエフェクタ取付部材であるアーム74が上端に固定される軸部材が構成されている。本体部75が上昇した場合であっても、この軸部材の下端側は、ケース体77の中に収容されている。
【0119】
図11、
図12に示すロボット1では、ハンド73およびアーム74が真空中に配置されており、ハンド73およびアーム74と一緒に本体部75が下降してベローズ84が伸びると、負圧が発生してハンド73、アーム74および本体部75を上側へ押し上げる大きな力が作用するため、ハンド73を下降させる際にモータ86に要求されるトルクの絶対値は大きくなり、ハンド73を上昇させる際にモータ86に要求されるトルクの絶対値は小さくなる。すなわち、ハンド73を下降させる一方向にモータ86が回転するときにモータ86に要求されるトルクの絶対値の最大値は、ハンド73を上昇させる他方向にモータ86が回転するときにモータ86に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる。
【0120】
したがって、
図11、
図12に示すロボット1では、上述した形態とは反対に、ハンド73を上昇させるときのモータ86のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、ハンド73を下降させるときのモータ86のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。また、ハンド73の下降時には、第1トルク制限値に基づいてモータ86が制御され、ハンド73の下降時には、第2トルク制限値に基づいてモータ86が制御されている。そのため、
図11、
図12に示すロボット1においても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
なお、
図11、
図12に示すロボット1において、ベローズ84の内周側が大気圧となり、ベローズ84の外周側が真空となるように、ベローズ84の上端が中空回転軸79の上端側に固定され、ベローズ84の下端がフランジ部77aに固定されても良い。この場合には、ベローズ84は、中空回転軸79の上端側の一部の外周側を覆うようにケース体77の外部に配置される。この場合であっても、ハンド73およびアーム74と一緒に本体部75が下降してベローズ84が伸びると、負圧が発生してハンド73、アーム74および本体部75を上側へ押し上げる大きな力が作用するため、ハンド73を上昇させるときのモータ86のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、ハンド73を下降させるときのモータ86のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定される。また、ハンド73の下降時には、第1トルク制限値に基づいてモータ86が制御され、ハンド73の下降時には、第2トルク制限値に基づいてモータ86が制御される。
【0122】
[産業用ロボットの変形例3]
図13は、本発明の他の実施の形態にかかるロボット1が設置されるバッテリー交換システムの斜視図である。
図14は、
図13のG部を別の角度から示す斜視図である。
図15は、
図13に示すバッテリー103およびバッテリー収容部104の構成を説明するための概略図である。
図16は、
図14に示すバッテリー抜差機構117および昇降機構118を正面から示す図である。
図17は、
図16のH−H方向からバッテリー抜差機構117および昇降機構118を示す図である。
図18は、
図16に示すバッテリー移動機構125を側面から説明するための図である。以下の説明では、水平方向において互いに直交する2方向のそれぞれをX方向およびY方向とし、X方向を前後方向、Y方向を左右方向とする。
【0123】
本発明が適用されるロボット1は、車両102に搭載されているバッテリー103を交換するためのバッテリー交換ロボットであっても良い。車両102は、たとえば、電気バスである。車両102には、複数のバッテリー103が収容されるバッテリー収容部104が取り付けられている。バッテリー103の交換時には、車両102は、その進行方向と左右方向とが略一致するように停止している。ロボット1は、バッテリー収容部104に収容されているバッテリー103の交換が可能となるように、前後方向で車両102の側面102aと向き合っている。このロボット1は、バッテリー収容部104に収容されているバッテリー103を引き抜いて、図示を省略するバッファステーションへ搬入するとともに、バッファステーションに収容された充電済みのバッテリー103をバッファステーションから搬出してバッテリー収容部104に差し込む。
【0124】
バッテリー収容部104は、バッテリー103が搭載されるバッテリー置き台106と、左右の側壁107とを備えており、バッテリー置き台106と側壁107とによって、バッテリー103の収容空間が形成されている。バッテリー収容部104には、複数のバッテリー103の収容空間が形成されており、複数のバッテリー103が収容可能となっている。また、バッテリー収容部104は、
図15に示すように、収容されたバッテリー103をロックするロック機構109と、車両102とバッテリー103とを電気的に接続するためのコネクタ110とを備えている。ロック機構109は、ロック部材111と、付勢部材112とを備えている。コネクタ110は、バッテリー収容部104の奥側に配置されている。
【0125】
ロック部材111は、たとえば、左右方向へ移動可能となるように側壁107に保持されている。このロック部材111は、図示を省略する付勢部材によって左右方向の内側へ付勢されており、側壁107からバッテリー収容部104の内側へ突出している。また、ロック部材111は、たとえば、略三角柱状に形成されており、前後方向と上下方向とから構成される平面に対して傾斜する傾斜面111aと、左右方向と上下方向とから構成される平面と平行な端面111bとを備えている。端面111bは、ロック部材111の奥側の端面を構成している。傾斜面111aは、バッテリー収容部104の手前側に向かうにしたがって、左右方向の外側へ広がるように傾斜している。
【0126】
付勢部材112は、たとえば、圧縮コイルバネである。この付勢部材112は、バッテリー103に形成される後述の係合突起115の端面115bとロック部材111の端面111bとが所定の接触圧で接触するように、バッテリー収容部104の手前側に向かってバッテリー103を付勢する機能を果たしている。車両102では、付勢部材112によってバッテリー103を付勢することで、バッテリー収容部104に収容されたバッテリー103の、車両102の走行時における振動を抑制している。
【0127】
バッテリー103の前面には、バッテリー収容部104からバッテリー103を引き抜くための取手部114が形成されている。また、バッテリー103は、
図15に示すように、ロック部材111に係合する係合突起115と、コネクタ110に接続されるコネクタ116とを備えている。コネクタ116は、バッテリー収容部104に収容されたバッテリー103の奥端面(背面)に取り付けられている。
【0128】
係合突起115は、たとえば、バッテリー103の左右の側面に固定されており、バッテリー103の左右の側面から左右方向の外側へ突出している。この係合突起115は、たとえば、略三角柱状に形成されており、前後方向と上下方向とから構成される平面に対して傾斜する傾斜面115aと、左右方向と上下方向とから構成される平面と平行な端面115bとを備えている。端面115bは、係合突起115の手前側の端面を構成している。傾斜面115aは、バッテリー収容部104の手前側に向かうにしたがって、左右方向の外側へ広がるように傾斜している。
【0129】
バッテリー収容部104にバッテリー103を収容する際に、バッテリー103がバッテリー収容部104に差し込まれていくと、やがて、係合突起115の傾斜面115aとロック部材111の傾斜面111aとが接触する。この状態でさらに、バッテリー103がバッテリー収容部104に差し込まれると、
図15(B)に示すように、ロック部材111を付勢する付勢部材の付勢力に抗して、ロック部材111が左右方向の外側へ移動する。係合突起115がロック部材111を通過するまでバッテリー103がさらに差し込まれると、ロック部材111は、この付勢部材の付勢力によって左右方向の内側へ移動する。また、係合突起115がロック部材111を通過するまでバッテリー103がさらに差し込まれると、付勢部材112がバッテリー103の奥端面に接触して、バッテリー収容部104の手前側に向かってバッテリー103を付勢する。
【0130】
すると、
図15(C)に示すように、バッテリー103に形成される係合突起115の端面115bとロック部材111の端面111bとが所定の接触圧で接触して、バッテリー収容部104に収容されたバッテリー103がロックされる。このように、ロック機構109は、バッテリー収容部104へのバッテリー103の差込み力で作動してバッテリー103をロックする機械式のロック機構である。具体的には、ロック機構109は、ロボット1を構成する後述のバッテリー係合部124によるバッテリー収容部104へのバッテリー103の差込み力で作動してバッテリー103をロックする機械式のロック機構である。また、バッテリー収容部104へのバッテリー103の差込み力によって、コネクタ110とコネクタ116とが接続される。具体的には、後述のバッテリー係合部124によるバッテリー収容部104へのバッテリー103の差込み力によって、コネクタ110とコネクタ116とが接続される。
【0131】
なお、
図15(C)に示す状態から(すなわち、ロック機構109にバッテリー103がロックされた状態から)さらにバッテリー103をバッテリー収容部104の奥側へわずかに押し込むと、ロック部材111が退避して、端面115bと端面111bとの接触状態が解除されるように、ロック機構109が構成されている。そのため、ロック機構109にバッテリー103がロックされた状態からさらにバッテリー103をバッテリー収容部104の奥側へわずかに押し込むと、ロック機構109によるバッテリー103のロック状態が解除されて、バッテリー収容部104からのバッテリー103の引抜きが可能になる。
【0132】
ロボット1は、バッテリー収容部104からのバッテリー103の引抜きおよびバッテリー収容部104へのバッテリー103の差込みを行うバッテリー抜差機構117と、バッテリー抜差機構117を昇降させる昇降機構118と、上下方向を軸方向としてバッテリー抜差機構117および昇降機構118を回動させる回動機構119と、バッテリー抜差機構117、昇降機構118および回動機構119を左右方向へ移動させる水平移動機構120とを備えている。
【0133】
バッテリー抜差機構117は、バッテリー103の引抜き時および差込み時にバッテリー103が搭載されるバッテリー搭載部122を有するバッテリー搭載機構123と、バッテリー103の引抜き時および差込み時にバッテリー103に係合してバッテリー搭載部122上でバッテリー103を移動させるバッテリー係合部124を有するバッテリー移動機構125とを備えている。また、バッテリー抜差機構117は、保持部材126に保持されている。バッテリー搭載機構123は、車両102に近づく方向および車両102から離れる方向へバッテリー搭載部122を移動させる搭載部移動機構を備えている。バッテリー搭載部122は、バッテリー103の交換時に車両102に近づく方向へ移動し、バッテリー103の交換が行われないときには、車両102から離れた位置で待機している。
【0134】
バッテリー移動機構125は、車両102に近づく方向および車両102から離れる方向へバッテリー係合部124を移動させる係合部移動機構139と、バッテリー係合部124を移動可能に保持するとともに保持部材126に移動可能に保持される移動保持部材140とを備えている。バッテリー係合部124は、バッテリー103の取手部114に係合する係合爪部141と、係合爪部141を上下動させるエアシリンダ142とを備えている。
【0135】
移動保持部材140は、バッテリー係合部124の移動方向に細長い長尺状に形成されている。係合部移動機構139は、バッテリー係合部124および移動保持部材140を移動させるための構成として、モータ144と、ボールネジ145と、ボールネジ145に螺合するナット部材146と、プーリ147、148と、プーリ147、148に架け渡されるベルト149とを備えている。モータ144は、保持部材126の後端部に固定されている。ボールネジ145は、保持部材126の上面部に回転可能に保持されており、モータ144の動力で回転する。ナット部材146は、移動保持部材140の後端部に固定されている。プーリ147は、移動保持部材140の後端部に回転可能に保持され、プーリ148は、移動保持部材140の前端部に回転可能に保持されている。ベルト149は、ベルト固定部材154を介してバッテリー係合部124に固定されるとともに、ベルト固定部材155を介して保持部材126の上面部に固定されている。
【0136】
図14等に示すロボット1では、モータ144が回転すると、バッテリー係合部124が直線的に移動する。具体的には、モータ144が一方向へ回転すると、バッテリー係合部124が車両102に近づく方向へ移動し、モータ144が他方向へ回転すると、バッテリー係合部124が車両102から離れる方向へ移動する。そのため、
図14等に示すロボット1では、モータ144が一方向に回転するときに、バッテリー係合部124がバッテリー103をバッテリー収容部104へ差し込み、モータ144が他方向に回転するときに、バッテリー係合部124がバッテリー収容部104からバッテリー103を引き抜く。
図14等に示すロボット1において、モータ144は、バッテリー係合部124を移動させるための引抜差込用モータであるとともに、ロボット1を動作させるための動作用モータである。モータ144は、制御部に接続されており、制御部は、モータ144を制御する。
【0137】
図14等に示すロボット1では、バッテリー収容部104にバッテリー103を差し込む際に、付勢部材によって左右方向の内側へ付勢されたロック部材111を左右方向の外側へ移動させなければならず、また、付勢部材112がバッテリー103の奥端面に接触して、バッテリー収容部104の手前側に向かってバッテリー103を付勢する。そのため、このロボット1では、バッテリー係合部124がバッテリー103をバッテリー収容部104へ差し込む際にモータ144に要求されるトルクの絶対値は大きくなり、バッテリー係合部124がバッテリー収容部104からバッテリー103を引き抜く際にモータ144に要求されるトルクの絶対値は小さくなる。すなわち、バッテリー103を差し込む一方向にモータ144が回転するときにモータ144に要求されるトルクの絶対値の最大値は、バッテリー103を引き抜く他方向にモータ144が回転するときにモータ144に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる。
【0138】
したがって、
図14等に示すロボット1では、バッテリー103を引き抜くときのモータ144のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、バッテリー103を差し込むときのモータ144のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。具体的には、バッテリー係合部124がバッテリー103の差込み動作や引抜き動作を正常に行っているときに、モータ144のトルクが第1トルク制限値を超えたり、第2トルク制限値を下回ったりしないように、また、バッテリー103の差込み時にバッテリー103やバッテリー係合部124等が周辺装置等に接触した場合にモータ144のトルクが第1トルク制限値を超え、かつ、バッテリー103の引抜き時にバッテリー103やバッテリー係合部124等が周辺装置等に接触した場合にモータ144のトルクが第2トルク制限値を下回るように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。また、バッテリー103の差込み時には、第1トルク制限値に基づいてモータ144が制御され、バッテリー103の引抜き時には、第2トルク制限値に基づいてモータ144が制御されている。
【0139】
そのため、このロボット1では、バッテリー103の交換時にバッテリー係合部124等が周辺装置等に接触してモータ144のトルクがトルク制限値を超えたり、下回ったりした場合に、モータ144を停止させてバッテリー係合部124等の損傷を防止することが可能になる。また、このロボット1では、バッテリー103の交換時にバッテリー係合部124が正常に動作している場合に、モータ144を回転させ続けて、バッテリー係合部124を適切に動作させることが可能になる。
【0140】
[産業用ロボットの変形例4]
図19は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボット1の斜視図である。
図20は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボット1の斜視図である。
【0141】
本発明が適用されるロボット1は、水平多関節型ロボットやバッテリー交換ロボット以外のロボットであっても良い。たとえば、本発明が適用されるロボット1は、
図19に示すように、複数の関節部を有する垂直多関節ロボットであっても良い。このロボット1は、所定の設置面に固定されるベースフレーム202と、ベースフレーム202に回動可能に連結される旋回フレーム203と、旋回フレーム203に回動可能に連結される第1アーム204と、第1アーム204に回動可能に連結される第2アーム205と、第2アーム205に回動可能に連結される手首部206とを備えている。
【0142】
第1アーム204の基端側は、軸A1を中心とする回動が可能となるように旋回フレーム203に連結されている。旋回フレーム203と第1アーム204とを連結する関節部213には、旋回フレーム203に対して第1アーム204を回動させるモータ214が配置されている。第2アーム205の基端側は、軸A2を中心とする回動が可能となるように第1アーム204の先端側に連結されている。第1アーム204と第2アーム205とを連結する関節部215には、第1アーム204に対して第2アーム205を回動させるモータ216が配置されている。以下の説明では、
図19の時計回りの回転方向を時計方向とし、
図19の反時計回りの回転方向を反時計方向とする。
【0143】
第2アーム205および手首部206等の重量の影響によって、第1アーム204が旋回フレーム203に対して時計方向に回動する際にモータ214に要求されるトルクの絶対値の最大値が、第1アーム204が旋回フレーム203に対して反時計方向に回動する際にモータ214に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる範囲で第1アーム204が回動するようにロボット1が使用される場合には、第1アーム204が反時計方向に回動するときのモータ214のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、第1アーム204が時計方向に回動するときのモータ214のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。また、第1アーム204が時計方向に回動するときには、第1トルク制限値に基づいてモータ214が制御され、第1アーム204が反時計方向に回動するときには、第2トルク制限値に基づいてモータ214が制御される。
【0144】
また、手首部206等の重量の影響によって、第2アーム205が第1アーム204に対して時計方向に回動する際にモータ216に要求されるトルクの絶対値の最大値が、第2アーム205が第1アーム204に対して反時計方向に回動する際にモータ216に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる範囲で第2アーム205が回動するようにロボット1が使用される場合には、第2アーム205が反時計方向に回動するときのモータ216のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、第2アーム205が時計方向に回動するときのモータ216のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。また、第2アーム205が時計方向に回動するときには、第1トルク制限値に基づいてモータ216が制御され、第2アーム205が反時計方向に回動するときには、第2トルク制限値に基づいてモータ216が制御される。
【0145】
この場合にも、上述した形態と同様に、第1アーム204や第2アーム205の動作中に手首部206等が周辺装置等に接触した場合に、モータ214、216を停止させて手首部206等の損傷を防止することが可能になるとともに、第1アーム204や第2アーム205が正常に動作している場合に、モータ214、216を回転させ続けて、ロボット1を適切に動作させることが可能になる。なお、
図19に示すロボット1では、モータ214、216は、動作用のモータである。モータ214、216は、制御部に接続されており、制御部は、モータ214、216を制御する。
【0146】
また、本発明が適用されるロボット1は、
図20に示すように、いわゆるパラレルリンク型のロボットであっても良い。このロボット1は、本体部252と、本体部252に連結される3本のレバー253と、3本のレバー253のそれぞれに連結されるアーム部254と、アーム部254に連結されるヘッドユニット255とを備えている。3本のレバー253は、本体部252の外周側へ略等角度ピッチで略放射状に伸びるように本体部252に連結されている。3本のレバー253の基端側は、本体部252に回動可能に連結されている。本体部252とレバー253とを繋ぐ関節部257には、レバー253を回動させるモータ258が配置されている。アーム部254の基端側は、レバー253の先端側に回動可能に連結されている。ヘッドユニット255は、アーム部254の先端側に回動可能に連結されている。
【0147】
図20に示すロボット1では、ヘッドユニット255等の重量の影響によって、レバー253が一方向へ回動する際にモータ258に要求されるトルクの絶対値の最大値が、レバー253が他方向に回動する際にモータ258に要求されるトルクの絶対値の最大値よりも大きくなる範囲でレバー253が回動するようにロボット1が使用される場合には、レバー253が他方向に回動するときのモータ258のトルク制限値である第2トルク制限値の絶対値が、レバー253が一方向に回動するときのモータ258のトルク制限値である第1トルク制限値の絶対値よりも小さくなるように、第1トルク制限値および第2トルク制限値が設定されている。また、レバー253が一方向に回動するときには、第1トルク制限値に基づいてモータ258が制御され、レバー253が他方向に回動するときには、第2トルク制限値に基づいてモータ258が制御される。
【0148】
この場合にも、上述した形態と同様に、レバー253およびアーム254の動作中にヘッドユニット255等が周辺装置等に接触した場合に、モータ258を停止させてヘッドユニット255等の損傷を防止することが可能になるとともに、レバー253およびアーム254が正常に動作している場合に、モータ258を回転させ続けて、ロボット1を適切に動作させることが可能になる。なお、
図20に示すロボット1では、モータ258は、動作用のモータである。モータ258は、制御部に接続されており、制御部は、モータ258を制御する。
【0149】
また、本発明が適用されるロボットは、その他の形式のロボットであっても良い。たとえば、本発明が適用されるロボットは、直交型のロボットであっても良い。