【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、リザーバハウジング、ならびにどちらもリザーバハウジングの内部で可動に配置されるピストンおよびロッキングプラグ、ならびにピストンに作用するように構成されたバイアスアクチュエータ(biased actuator)を含むリザーバアセンブリに関する。ピストンとロッキングプラグの間のボリュームは、リザーバ空洞(reservoir cavity)を画成する。さらに、リザーバアセンブリは、リザーバ空洞を少なくとも部分的に空にすることができるように、リザーバ出口を含む。ロッキングプラグは、第1の位置から第2の位置まで可動であるように構成され、第1の位置では、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通しない。ロッキングプラグが第2の位置にあるとき、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通する。さらに、ロック位置(locked position)およびロック解除位置(unlocked position)を有するインターロックが構成される。ロック位置では、インターロックは、ロッキングプラグおよびピストンの少なくとも1つの動きを妨げる。ロック解除位置にあるとき、インターロックは、ロッキングプラグおよびピストンの少なくとも1つの動きを可能にするように構成される。
【0008】
このようなリザーバアセンブリは、改善された送達機構を有する。こうした種類のリザーバからの送達では、リザーバの内容物を排出するために手の力は不要である。これは、バイアスアクチュエータによって提供される。使用者は、内容物を排出可能にするために、インターロックをロック位置からロック解除位置へ動かすだけでよい。インターロックがロック位置にあるときには、リザーバ出口がリザーバ空洞と流体連通しないため、リザーバの内容物は気密封止される。したがって、このようなリザーバは、リザーバを使用する準備ができた状態において、たとえば、液体薬剤を収納することが可能であるように構成される。リザーバアセンブリを使用しようとすると、バイアスアクチュエータによってリザーバ空洞の内容物を排出できるようにするために、インターロックがロック位置からロック解除位置へ動かされる。
【0009】
一実施形態では、インターロックがロック位置にあるとき、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通しない。たとえば、インターロックがロック位置にあるとき、ロッキングプラグはリザーバ出口を封止することができる。
【0010】
一実施形態では、インターロックがロック解除位置にあるとき、ロッキングプラグは自由に動くことができる。ロッキングプラグは、第2の位置へ動かすことができる。
【0011】
一実施形態では、ロッキングプラグが第2の位置にあるとき、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通する。好ましくは、インターロックがロック解除位置にあるとき、ロッキングプラグは第2の位置にあり、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通する。
【0012】
一実施形態では、インターロックがロック解除位置にあり、ロッキングプラグが第2の位置にあるとき、リザーバ出口はリザーバ空洞と流体連通する。たとえば、ロッキングプラグは、それがリザーバ出口を封止しない第2の位置へ動かすことができる。
【0013】
一実施形態では、リザーバアセンブリは、ピストンの動きをロッキングプラグへ伝達する装置(arrangement)をさらに含む。リザーバアセンブリは、ピストンからロッキングプラグへ力を伝える装置を含むことができる。そうした装置を適所に有するように、インターロックは、インターロックがロック位置にあるとき、前記ロッキングプラグまたは前記ピストンと相互作用して、ロッキングプラグおよびピストンの少なくとも1つの動きを妨げる。したがって、インターロックがロック位置にあるとき、アクチュエータによるピストンの作動によって、ロッキングプラグの動きが生じることはない。逆に、インターロックがロック解除位置にあるときには、アクチュエータによるピストンの作動によって、ロッキングプラグおよびピストンの少なくとも1つの動きを生じさせることができる。
【0014】
一実施形態では、リザーバ空洞の内部に流体を配置することができる。流体は、実質的に非圧縮性である。流体は、ピストンの動きをロッキングプラグへ伝達することができる。インターロックがロック解除位置にあるとき、アクチュエータによるピストンの作動によって、ロッキングプラグの動きを生じさせる。
【0015】
一実施形態によれば、リザーバ空洞の内部に配置される流体は、前記リザーバ装置から排出されるものと同じ流体である。特にリザーバ空洞は、薬剤で充填することができる。
【0016】
一実施形態では、リザーバアセンブリは、ロッキングプラグおよびハウジングによって画成されたヘッドスペースをさらに含むことができ、ロッキングプラグがヘッドスペースの中へ動かされると、ロッキングプラグは第2の位置に位置するようになる。ヘッドスペースは空にすることができる。ヘッドスペースは、気体、たとえば空気で充填することができる。一実施形態において、ヘッドスペースは、周囲圧力の空気で充填される。ヘッドスペース内の気体は、リザーバ空洞が空であるとき、ロッキングプラグを動かしてロック位置に戻す圧力を提供することができる。あるいは、ヘッドスペースは、ロッキングプラグが第2の位置にあるとき、ヘッドスペース内部の気体を逃がす通気孔を含むことができる。ヘッドスペースは、ロッキングプラグの動きを制限するように構成することができる。たとえば、ヘッドスペースは、ロッキングプラグと係合してロッキングプラグの動きを止める突出部、段または類似の構造を含むことができる。あるいは、ヘッドスペース内部の気体は、ロッキングプラグの動きを止めることもできる。
【0017】
本発明によるリザーバアセンブリの一実施形態では、インターロックは、開口部を有する可動の摺動体を含む。アクチュエータは、ばね、およびそのばねと可動ピストンの間に配置された支持要素、たとえば、支持リングを含む。摺動体は、支持リングが開口部を通過できるように、第1の位置から第2の位置へ動かされるように構成される。支持リングが開口部を通過できる位置に摺動体があるとき、アクチュエータはピストンに作用することができ、ピストンは開口部を通して動かすことができ、ロッキングプラグは第2の位置へ動かすことができ、その結果、リザーバ出口がリザーバ空洞と流体連通する。次いで、液体、たとえば、リザーバ空洞内に配置可能な薬剤を、リザーバ出口を通して排出することができる。
【0018】
本発明によるリザーバアセンブリの別の実施形態では、ヘッドスペースは液体で充填され、ハウジングは、ヘッドスペースから流体的に分離されたサンプ(sump)をさらに含む。インターロックは、摺動体がロック解除位置にあるとき、ヘッドスペースとサンプの間に流体連通を確立するように構成された摺動体を含む。サンプは、弁もしくは弁システム、またはゲートによってヘッドスペースから流体的に分離することが可能である。インターロックの摺動体は、インターロックがロック解除位置にあるとき、弁もしくは弁システム、またはゲートを開くように構成される。好ましい実施形態では、ヘッドスペースおよびサンプは、膜によって流体的に分離され、摺動体は、摺動体がロック解除位置にあるとき、膜を穿孔するように構成されたタペットを含む。摺動体がロック解除位置にあり、液体がヘッドスペースからサンプの中へ動かされると、ロッキングプラグは、第2の位置へ自由に動かすことができるようになる。
【0019】
本発明の他の態様は、本発明によるリザーバアセンブリを含む、薬剤を送達するように構成された医療デバイスに関する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、注射デバイスに取り付け可能なニードルアセンブリに関する。ニードルアセンブリは、近位端および遠位端を有するハウジングを含み、近位端は、注射デバイスに取り付けられるように構成される。遠位針カニューレが、ハウジングに固定される。ハウジングは、遠位の注射針と流体連通するように構成された、本発明によるリザーバアセンブリを含む。ニードルアセンブリは、インターロックがロック解除位置にあるとき、遠位の注射針と流体連通することができる。
【0021】
ニードルアセンブリのハウジングは、リザーバアセンブリのハウジングを含むことができる。たとえば、ニードルアセンブリのハウジングは、リザーバアセンブリのハウジングとして機能することができる壁のような構造を提供する要素を含むことが可能である。たとえば、ニードルアセンブリのハウジングは、構造を与える固定要素および/もしくは保持要素を含むこと、ならびに/または、リザーバアセンブリの要素を含むハウジングとして機能することが可能である。一実施形態において、ニードルアセンブリのハウジングは空洞を含み、空洞の内壁はリザーバハウジングを画成する。好ましくは、空洞は円筒形の穴である。
【0022】
リザーバアセンブリのハウジングを含むニードルアセンブリのハウジングを有することによって、必要な要素が少なくなるため、構造の複雑さを低減すること、また費用を削減することも可能になる。したがって、リザーバアセンブリのハウジングを含むニードルアセンブリのハウジングを有すると有益であろう。
【0023】
本明細書に記載される機能および実施形態はすべて、リザーバアセンブリ、薬物送達デバイス、ならびに薬物送達デバイスおよびそのリザーバアセンブリを操作する方法に同様に当てはまると理解されることに留意されたい。特に、特定の操作を実施するために構成または配置される構成要素に関する言及は、それぞれの方法または操作工程を開示するものであり、逆もまた同様であると理解されたい。
【0024】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0025】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0026】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0027】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0028】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0029】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0030】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0031】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0032】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0033】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0034】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0035】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0036】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0037】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0038】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0039】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0040】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0041】
関連技術の技術者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることが可能であることがさらに理解されるであろう。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される参照符号はいずれも、本発明の範囲を限定すると解釈されないことに留意されたい。
【0042】
次に、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を単に例示的なものとして説明する。