(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹凸構造層の表面に形成された凹凸形状を走査型プローブ顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、前記フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、前記円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が10μm−1以下の範囲内となる領域内に存在する、
請求項1に記載の光学基板。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0020】
[光学基板]
図1の(a)は、一実施形態に係る光学基板1を模式的に示した断面図である。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る光学基板1は、支持基板2、及び、支持基板2上に積層され表面に凹凸形状が形成された凹凸構造層3を備える。
【0021】
支持基板2としては、例えば、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の樹脂基板、ガスバリア性を向上させるために無機材料と樹脂材料とを複合した基板等を用い得る。また、支持基板2としては、例えば、ガリウム砒素、サファイア、シリコン、窒化シリコン、炭化ケイ素、及び酸化亜鉛等を用いることもできる。支持基板2は、透明でも不透明でもよい。
【0022】
支持基板2上には、密着性を向上させるために、表面処理をしたり、易接着層を設けたりしてもよい。また、支持基板2上には、水分や酸素等の気体の侵入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。また、支持基板2は、凹凸構造層を形成する面とは反対側の面に、集光及び光拡散等の種々の光学機能を有するレンズ構造や、集光及び光拡散等の種々の光学機能を有するその他の光学機能層が形成されていてもよい。
【0023】
凹凸構造層3としては、例えば、シリカ、Ti系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO
2、Al
2O
3等のゾルゲル材料を使用し得る。例えば、支持基板2上にシリカからなる凹凸構造層3をゾルゲル法で形成する場合は、下地材料として金属アルコキシド(シリカ前駆体)のゾルゲル材料を調製する。シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマーや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC
4〜C
18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料等の金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、In等や、これらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基及び撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。また、これらの材料中に界面活性剤を加えることで、メソポーラス化してもよい。
【0024】
ゾルゲル材料の溶液としてTEOSとMTESとの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。このゾルゲル材料を用いた場合には、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカが生成される。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸又はアンモニア等のアルカリが添加される。また、紫外線等の光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加してもよい。pHは4以下もしくは10以上であってもよい。また、加水分解を行うために水が加えられてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
【0025】
ゾルゲル材料溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。また、エタノール及びイソプロピルアルコールを用いてもよく、またエタノール及びイソプロピルアルコールと水とを混合させて用いてもよい。
【0026】
ゾルゲル材料溶液の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アセチルアセトン等のβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン等を用いることができる。
【0027】
凹凸構造層3の材料としては、ポリシラザンを用いてもよい。「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4及び両方の中間固溶体SiO
xN
y等のセラミック前駆体無機ポリマーである。例えば特開平8−112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような単位からなる主骨格を有し、比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物を用いてもよい。
一般式(1):−Si(R
1)(R
2)−N(R
3)−
上記一般式(1)中、R
1、R
2、R
3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。
【0028】
凹凸構造層3の材料としては、パーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)やオルガノポリシラザンを用いることができ、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等を用いることもできる。ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。
【0029】
また、凹凸構造層3としては、樹脂を使用することもできる。硬化性樹脂としては、例えば、光硬化型、熱硬化型、湿気硬化型、及び化学硬化型(二液混合)等の樹脂が挙げられる。具体的にはエポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。
【0030】
また、凹凸構造層3の表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法としては、知られている方法を用いることができる。例えば、凹凸構造層3の表面がシリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理してもよいし、ヘキサメチルジシラザン等のトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルとで疎水化処理してもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。凹凸構造層3の表面を疎水性にすることにより、光学基板1を有機EL素子等のデバイスの製造に用いる場合に、当該デバイスの製造工程において光学基板1から水分を容易に除去でき、有機EL素子におけるダークスポットのような欠陥の発生や、デバイスの劣化を防止することができる。また、凹凸構造層3の表面に、水分や酸素等の気体の侵入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。
【0031】
凹凸構造層3の材料は、無機材料又は硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収材料としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0032】
凹凸構造層3は、上記のように調製したゾルゲル材料の溶液又は樹脂が支持基板2上に塗布され、さらに凹凸パターン転写用のモールドの凹凸パターンが転写されることで形成される。凹凸パターン転写用のモールド及び凹凸構造層3に凹凸パターンを転写する製造工程については、後述する。
【0033】
次に、凹凸構造層3の表面に形成された凹凸形状について説明する。当該凹凸形状を解析するためには、原子間力顕微鏡(AFM)等の走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって得ることができる。本実施形態では、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)を用いることで、下記解析条件の下、凹凸構造層3の凹凸形状を解析し、凹凸解析画像及び平面視解析画像を得るものとする。本明細書において、以下に定義する凹凸深さ分布の平均値、及び凹凸深さの標準偏差、凹凸の平均深さ、凹凸の平均ピッチ、凸部の幅の平均値、直線区間と曲線区間の割合は、凹凸が形成されている表面の材料に関わらず、下記のような測定方法により求めることができる。
<解析条件>
測定方式:カンチレバー断続的接触方式
カンチレバーの材質:シリコン
カンチレバーのレバー幅:40μm
カンチレバーのチップ先端の直径:10nm
【0034】
光学基板1の凹凸構造層3の表面に形成された凹凸の形状を、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定する。凹凸解析の際、上述の条件で任意の3μm角(縦3μm、横3μm)又は10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求める。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸深さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求める。なお、このような測定点の数は、用いる測定装置の種類や設定によっても異なる。例えば、測定装置として上述の株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」を用いた場合には、3μm角又は10μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行うことができる。ここで、凹凸解析画像には、測定精度を高めるために、1次傾き補正を含むフラット処理が施されてもよい。また、以下に述べる凹凸形状に関する種々の解析において十分な測定精度を担保するためには、測定領域は、当該測定領域に含まれる凸部の幅の平均値の15倍以上の長さを1辺の長さとする正方形状の領域とするのがよい。
【0035】
凹凸深さの測定は、具体的には以下のようにして行うことができる。まず、全測定点のうち、支持基板2の表面からの高さが最も高い測定点Pが決定される。そして、かかる測定点Pを含み且つ支持基板2の表面と平行な面が基準面(水平面)として決定され、その基準面からの深さの値が凹凸深さのデータとして算出される。基準面からの深さの値は、例えば、測定点Pにおける支持基板2からの高さの値から各測定点における支持基板2からの高さを差し引いた差分であってもよい。このような凹凸深さのデータは、測定装置(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)によっては測定装置中のソフト等により自動的に計算して求めることが可能である。
【0036】
このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、その算術平均及び標準偏差を求めることにより算出できる値をそれぞれ凹凸深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差として採用する。
【0037】
凹凸の平均深さとは、凹凸が形成されている凹凸構造層3の表面における凸部と凹部の深さの差(互いに隣接する凸部の頂部と凹部の底部との深さ方向の距離)を測定した場合において、深さの差の平均値のことをいう。このような凹凸の平均深さは、上記凹凸解析画像中において、任意の隣接する凸部の頂部と凹部の底部の深さ方向の距離を100点以上測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
【0038】
凹凸の平均ピッチとは、凹凸が形成されている凹凸構造層3の表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部の頂部同士又は隣り合う凹部の底部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。このような凹凸のピッチの平均値は、上記凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部の頂部同士又は隣り合う凹部の底部同士の間隔を100点以上測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
【0039】
凹凸の平均ピッチは、例えば100〜1500nmの範囲内にすることができ、さらに200〜1200nmの範囲内としてもよい。凹凸深さ分布の平均値は、20〜200nmの範囲内としてもよく、さらに30〜150nmの範囲内としてもよい。凹凸深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲内としてもよい。
【0040】
本実施形態では、凹凸深さが凹凸深さ分布の平均値以上の領域は凸部、凹凸深さが凹凸深さ分布の平均値未満の領域は凹部と定義される。例えば、凸部を白、凹部を黒で表示するように凹凸解析画像が処理されることで、
図2に示すような平面視解析画像(白黒画像)が得られる。
図2は、本実施形態に係る光学基板1における測定領域の平面視解析画像の一例を示す図である。
【0041】
また、凸部の幅とは、平面視解析画像の凸部(白表示部)の幅のことをいう。このような凸部の幅の平均値は、平面視解析画像の凸部のうちから任意の100以上の箇所を選択し、それぞれについて凸部の延伸方向に対して平面視上略直交する方向における凸部の境界から反対側の境界までの長さを測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
【0042】
なお、凸部の幅の平均値を算出する際には、上述の通り、平面視解析画像の凸部から無作為に抽出された位置における値を使用するが、凸部が分岐している位置の値は使用しなくてもよい。凸部において、ある領域が分岐に係る領域であるか否かは、例えば、当該領域が一定以上延伸しているか否かによって判定されてもよい。より具体的には、当該領域の幅に対する当該領域の延伸長さの比が一定(例えば1.5)以上であるか否かによって判定されてもよい。
【0043】
図3を用いて、ある方向に延在する凸部の中途位置において当該凸部の延在軸線に略直交する方向に突き出た領域について、当該領域が分岐か否かを判定する方法の一例を説明する。ここで、凸部の延在軸線とは、分岐か否かの判定対象領域を凸部から除外した場合において、凸部の外縁の形状から定まる凸部の延伸方向に沿った仮想的な軸線である。より具体的には、凸部の延在軸線とは、凸部の延伸方向に直交する凸部の幅の略中心点を通るように引かれた線である。
図3の(a)及び
図3の(b)は、いずれも平面視解析画像における凸部の一部のみを抜き出して説明する概要図であり、領域Sは、凸部を示している。
図3の(a)及び
図3の(b)では、凸部の中途位置において突出した領域A1,A2が、分岐か否かの判定対象領域として定められているものとする。この場合、凸部から領域A1,A2を除外した場合において、凸部の延伸方向に直交する凸部の幅の略中心点を通る線として、延在軸線L1,L2が規定される。このような延在軸線は、コンピュータによる画像処理により規定されてもよいし、解析作業を実施する作業者によって規定されてもよいし、コンピュータによる画像処理及び作業者による手作業の両方によって規定されてもよい。
図3の(a)では、領域A1は、延在軸線L1に沿って延在する凸部の中途位置において、延在軸線L1に直交する方向に突出している。
図3の(b)では、領域A2は、延在軸線L2に沿って延在する凸部の中途位置において、延在軸線L2に直交する方向に突出している。なお、延在軸線L1,L2に直交する方向に対して傾斜して突出する領域についても、以下に述べる領域A1,A2についての考え方と同様の考え方を用いて分岐か否かを判定すればよい。
【0044】
上記判定方法によれば、領域A1の幅d1に対する領域A1の延伸長さd2の比は、およそ0.5(1.5未満)であるため、領域A1は、分岐に係る領域ではないと判定される。この場合、領域A1を通り且つ延在軸線L1に直交する方向における長さd3は、凸部の幅の平均値を算出するための測定値の1つとされる。一方、領域A2の幅d4に対する領域A2の延伸長さd5の比は、およそ2(1.5以上)であるため、領域A2は、分岐に係る領域であると判定される。この場合には、領域A2を通り且つ延在軸線L2に直交する方向における長さd6は、凸部の幅の平均値を算出するための測定値の1つとはされない。
【0045】
図2に示すように、本実施形態に係る光学基板1では、凹凸構造層3の表面に形成された凹凸形状に含まれる凸部(白部分)の延伸方向は、平面視上不規則に分布している。すなわち、凸部は、規則正しく並んだストライプ状や規則正しく配置されたドット形状等ではなく、不規則な方向に延伸した形状となっている。また、測定領域、すなわち凹凸構造層3の所定の領域において、単位面積当たりの領域に含まれる凸部の平面視上における輪郭線は、曲線区間よりも直線区間を多く含んでいる。
【0046】
図4は、比較例に係る光学基板における測定領域の平面視解析画像の一例を示す図である。本実施形態において、「曲線区間よりも直線区間を多く含む」とは、直感的には、
図4に示した比較例に係る光学基板のように凸部の輪郭線上の全区間において曲がりくねった区間が大勢を占めるような凹凸パターンとはなっていないことを意味する。凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むか否かについては、例えば以下に示す2つの曲線区間の定義方法のうち何れか一方を用いることで判定することができる。
【0047】
(曲線区間の第1の定義方法)
曲線区間の第1の定義方法では、曲線区間は、凸部の平面視上における輪郭線を凸部の幅の平均値のπ(円周率)倍の長さで区切ることで複数の区間を形成した場合において、区間の両端点間の輪郭線の長さに対する両端点間の直線距離の比が0.75以下となる区間として定義される。また、直線区間は、上記複数の区間のうち曲線区間以外の区間、すなわち上記比が0.75より大きい区間として定義される。以下、
図5の(a)を参照して、上記第1の定義方法を用いて凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むか否かを判定する手順の一例について説明する。
図5の(a)は、凹凸構造層3の平面視解析画像の一部を示す図であり、便宜上、凹部を白塗りで示している。領域S1は凸部を示し、領域S2は凹部を示している。
【0048】
手順1−1.測定領域内の複数の凸部から、一の凸部が選択される。当該凸部の輪郭線X上の任意の位置がスタート点として決定される。
図5の(a)では、一例として点Aがスタート点として設定されている。当該スタート点から、凸部の輪郭線X上に、所定の間隔で基準点が設けられる。ここでは、所定の間隔は、凸部の幅の平均値のπ(円周率)/2倍の長さである。
図5の(a)では、一例として点B,点C及び点Dが順次設定される。
【0049】
手順1−2.基準点である点A〜Dが凸部の輪郭線X上に設定されると、判定対象の区間が設定される。ここでは、始点及び終点が基準点であり、中間点となる基準点を含む区間が判定対象として設定される。
図5の(a)の例では、区間の始点として点Aが選択された場合には、点Aから数えて2番目に設定された点Cが区間の終点となる。点Aからの間隔は、ここでは凸部の幅の平均値のπ/2倍の長さに設定されているため、点Cは、輪郭線Xに沿って凸部の幅の平均値のπ倍の長さだけ点Aから離れた点である。同様に、区間の始点として点Bが選択された場合には、点Bから数えて2番目に設定された点Dが区間の終点となる。なお、ここでは、設定された順に対象となる区間が設定されるとし、点Aが最初に設定された点であるとする。すなわち、最初に、点A及び点Cの区間(区間AC)が処理対象の区間とされる。そして、
図5の(a)に示された、点A及び点Cを結ぶ凸部の輪郭線Xの長さLaと、点A及び点Cの間の直線距離Lbとが測定される。
【0050】
手順1−3.手順1−2で測定された長さLa及び直線距離Lbを用いて、長さLaに対する直線距離Lbの比(Lb/La)が計算される。当該比が0.75以下となる場合に、凸部の輪郭線Xの区間ACの中点となる点Bが曲線区間に存在する点であると判定される。一方、上記比が0.75よりも大きい場合には、点Bが直線区間に存在する点であると判定される。なお、
図5の(a)に示した例では、上記比(Lb/La)は0.75以下となるため、点Bは曲線区間に存在する点であると判定される。
【0051】
手順1−4.手順1−1で設定された各点がそれぞれ始点として選択された場合について、手順1−2及び手順1−3が実行される。
【0052】
手順1−5.測定領域内の全ての凸部について、手順1−1〜手順1−4が実行される。
【0053】
手順1−6.測定領域内の全ての凸部について設定された全ての点のうち直線区間に存在する点であると判定された点の割合が全体の50%以上の場合に、凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むと判定される。一方、測定領域内の全ての凸部について設定された全ての点のうち直線区間に存在する点であると判定された点の割合が全体の50%未満の場合には、凸部の平面視上における輪郭線が直線区間よりも曲線区間を多く含むと判定される。
【0054】
上記手順1−1〜手順1−6の処理は、測定装置に備わっている測定機能により行ってもよいし、上記測定装置とは異なる解析用ソフトウェア等の実行により行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0055】
なお、上記手順1−1において凸部の輪郭線上に点が設定される処理は、凸部を1周したり、測定領域からはみ出したりすることによって、それ以上点を設定できなくなった場合に終了すればよい。また、最初に設定された点と最後に設定された点の外側の区間については、上記比(Lb/La)を算出できないため、上記判定の対象外とすればよい。また、輪郭線の長さが凸部の幅の平均値のπ倍に満たない凸部については、上記判定の対象外とすればよい。
【0056】
(曲線区間の第2の定義方法)
曲線区間の第2の定義方法では、曲線区間は、凸部の平面視上における輪郭線を凸部の幅の平均値のπ(円周率)倍の長さで区切ることで複数の区間を形成した場合において、区間の一端(点A)及び当該区間の中点(点B)を結んだ線分(線分AB)と当該区間の他端(点C)及び当該区間の中点(点B)を結んだ線分(線分CB)とがなす2つの角度のうち小さい方(180°以下となる方)の角度が120°以下となる区間として定義される。また、直線区間は、上記複数の区間のうち曲線区間以外の区間、すなわち上記角度が120°よりも大きい区間として定義される。以下、
図5の(b)を参照して、上記第2の定義方法を用いて凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むか否かを判定する手順の一例について説明する。
図5の(b)は、
図5の(a)と同一の凹凸構造層3の平面視解析画像の一部を示す図である。
【0057】
手順2−1.測定領域内の複数の凸部から、一の凸部が選択される。当該凸部の輪郭線X上の任意の位置がスタート点として決定される。
図5の(b)では、一例として点Aがスタート点として設定されている。当該スタート点から、凸部の輪郭線X上に、所定の間隔で基準点が設けられる。ここでは、所定の間隔は、凸部の幅の平均値のπ(円周率)/2倍の長さである。
図5の(b)では、一例として点B,点C及び点Dが順次設定される。
【0058】
手順2−2.基準点である点A〜Dが凸部の輪郭線X上に設定されると、判定対象の区間が設定される。ここでは、始点及び終点が基準点であり、中間点となる基準点を含む区間が判定対象として設定される。
図5の(b)の例では、区間の始点として点Aが選択された場合には、点Aから数えて2番目に設定された点Cが区間の終点となる。点Aからの間隔は、ここでは凸部の幅の平均値のπ/2倍の長さに設定されているため、点Cは、輪郭線Xに沿って凸部の幅の平均値のπ倍の長さだけ点Aから離れた点である。同様に、区間の始点として点Bが選択された場合には、点Bから数えて2番目に設定された点Dが区間の終点となる。なお、ここでは、設定された順に対象となる区間が設定されるとし、点Aが最初に設定された点であるとする。すなわち、最初に、点A及び点Cの区間が処理対象の区間とされる。そして、線分ABと線分CBとがなす2つの角度のうち小さい方(180°以下となる方)の角度θが測定される。
【0059】
手順2−3.角度θが120°以下となる場合には、点Bが曲線区間に存在する点であると判定される。一方、角度θが120°よりも大きい場合には、点Bが直線区間に存在する点であると判定される。なお、
図5の(b)に示した例では、角度θは120°以下となるため、点Bは曲線区間に存在する点と判定される。
【0060】
手順2−4.手順2−1で設定された各点がそれぞれ始点として選択された場合について、手順2−2及び手順2−3が実行される。
【0061】
手順2−5.測定領域内の全ての凸部について、手順2−1〜手順2−4が実行される。
【0062】
手順2−6.測定領域内の全ての凸部について設定された全ての点のうち直線区間に存在する点であると判定された点の割合が全体の70%以上の場合に、凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むと判定される。一方、測定領域内の全ての凸部について設定された全ての点のうち直線区間に存在する点であると判定された点の割合が全体の70%未満の場合には、凸部の平面視上における輪郭線が直線区間よりも曲線区間を多く含むと判定される。
【0063】
上記手順2−1〜2−6の処理は、測定装置に備わっている測定機能により行ってもよいし、上記測定装置とは異なる解析用ソフトウェア等を実行することにより行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0064】
なお、上記手順2−1において凸部の輪郭線上に点が設定される処理は、凸部を1周したり、測定領域からはみ出したりすることによって、それ以上点を設定できなくなった場合に終了すればよい。また、最初に設定された点と最後に設定された点の外側の区間については、上記角度θを算出できないため、上記判定の対象外とすればよい。また、輪郭線の長さが凸部の幅の平均値のπ倍に満たない凸部については、上記判定の対象外とすればよい。
【0065】
以上述べたように、曲線区間の第1及び第2の定義方法の何れか一方を用いることで、測定領域について、凸部の平面視上における輪郭線Xが曲線区間よりも直線区間を多く含むか否かを判定することができる。なお、ある光学基板1の凹凸構造層3について、「単位面積当たりの領域に含まれる凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むか否か」の判定は、光学基板1の凹凸構造層3の表面上の領域から無作為に抽出して測定した一つの測定領域に基づいて判定することにより行ってもよいし、同一の光学基板1における複数の異なる測定領域についての判定結果を総合的に判定することにより行ってもよい。この場合、例えば、複数の異なる測定領域についての判定結果のうち多い方の判定結果を、「単位面積当たりの領域に含まれる凸部の平面視上における輪郭線が曲線区間よりも直線区間を多く含むか否か」の判定結果として採用してもよい。上記の形状の条件を満たすように凹凸構造層3の表面に凹凸形状を形成することにより、リーク電流の発生を低減でき、発光効率を向上させることができる。
【0066】
光学基板1において、凹凸構造層3の凸部の延伸方向に対して平面視上略直交する方向における凸部の幅は、一定である。凸部の幅が一定であるか否かは、上述の測定によって得られた100点以上の凸部の幅に基づいて判定できる。具体的には、100点以上の凸部の幅から、凸部の幅の平均値及び凸部の幅の標準偏差を算出する。そして、凸部の幅の標準偏差を凸部の幅の平均値で割ることで算出される値(凸部の幅の標準偏差/凸部の幅の平均値)を凸部の幅の変動係数と定義する。この変動係数は、凸部の幅が一定である(幅の変動が少ない)ほど、小さい値となる。よって、変動係数が所定値以下であるか否かによって、凸部の幅が一定であるか否かを判定できる。例えば、変動係数が0.25以下である場合に凸部の幅が一定であると定義することができる。上記の形状の条件を満たすように凹凸構造層3の表面に凹凸形状を形成することにより、リーク電流の発生を低減でき、発光効率を向上させることができる。
【0067】
なお、以降の説明においては、第1の定義方法で直線区間の割合が50%以上(もしくは第2の定義方法での直線区間の割合が70%以上)であることを示す条件を「直線条件」といい、凸部の幅の変動係数が0.25以下であることを示す条件を「幅条件」という。
【0068】
光学基板1において、凹凸構造層3の表面に形成された凹凸形状を走査型プローブ顕微鏡により解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施してフーリエ変換像を得た場合において、フーリエ変換像が、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状又は円環状の模様を示しており、且つ、円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が10μm
−1以下(0.667〜10μm
−1の範囲内としてもよく、更に0.833〜5μm
−1の範囲内としてもよい)の範囲内となる領域内に存在してもよい。上記条件(以下、「FFT条件」という。)を満たすように凹凸構造層3の表面に凹凸形状を形成することにより、発光の波長依存性及び指向性(一定の方向に強く発光する性質)を十分に少なくすることができる。
【0069】
「フーリエ変換像の円状又は円環状の模様」は、フーリエ変換像において輝点が集合することにより観測される模様である。そのため、ここでの「円状」とは、輝点が集合した模様がほぼ円形の形状に見えることを意味し、外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念である。また、「円環状」とは、輝点が集合した模様がほぼ円環状に見えることを意味し、環の外側の円や内側の円の形状がほぼ円形の形状に見えるものも含み且つかかる環の外側の円や内側の円の外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念である。また、「円状又は円環状の模様が、波数の絶対値が10μm
−1以下(0.667〜10μm
−1の範囲内としてもよく、更に0.833〜5μm
−1の範囲内としてもよい)の範囲内となる領域内に存在する」とは、フーリエ変換像を構成する輝点のうちの30%以上の輝点が波数の絶対値が10μm
−1以下(0.667〜10μm
−1の範囲内としてもよく、更に0.833〜5μm
−1の範囲内としてもよい)の範囲内となる領域内に存在することをいう。
【0070】
なお、凹凸構造のパターンとフーリエ変換像との関係について、次のことが分かっている。凹凸構造自体にピッチに分布や指向性がない場合には、フーリエ変換像もランダムなパターン(模様がない)で現れるが、凹凸構造がXY方向に全体として等方的であるがピッチに分布がある場合には、円又は円環状のフーリエ変換像が現れる。また、凹凸構造が単一のピッチを有する場合には、フーリエ変換像に現れる円環がシャープになる傾向がある。
【0071】
上記フーリエ変換像は、凹凸構造層3の表面に形成されている凹凸の形状を走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E−sweep」等)により解析して凹凸解析画像を得た後に、当該凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施すことにより得られる。上記凹凸解析画像の2次元高速フーリエ変換処理は、2次元高速フーリエ変換処理ソフトウェアを備えたコンピュータを用いた電子的な画像処理によって容易に行うことができる。
【0072】
[光学基板の製造方法]
次に、上述の光学基板1の製造方法について説明する。光学基板1は、例えば以下のようにして製造することが可能である。まず、支持基板2上に凹凸構造層3の材料となるゾルゲル材料を塗布して形成した下地材料層4に、凹凸パターンが形成されたフィルム状モールド5を押し付けつつ、下地材料層4を硬化させる。続いて、硬化後の下地材料層4(凹凸構造層3)からフィルム状モールド5を取り外す。以下、
図6を用いて、フィルム状モールド5及び上記工程について詳細に説明する。
【0073】
図6に示すように、フィルム状モールド5は、基板部5aと、基板部5a上に形成された凹凸部5bとを備える。基板部5a及び凹凸部5bは、いずれも可撓性を有する。凹凸部5bの表面には、後述する金属モールド8から凹凸パターンを転写されることにより予め凹凸パターンが形成されている。基板部5aは、フィルム又はシート状であり、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、又は、ポリアリレート等の有機材料で形成される。また、凹凸部5bは、基板部5aと同一材料で一体的に形成されていてもよいし、異なる材料を使用してもよい。凹凸部5bを形成する材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を使用することができる。また、基板部5a上には密着性を向上させるために、表面処理をしたり、易接着層を設けたりしてもよいし、水分や酸素等の気体の侵入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。
【0074】
フィルム状モールド5の寸法、特に長さは、量産する光学基板1の寸法や、1回の製造プロセスで連続的に製造する光学基板1の数(ロット数)によって適宜設定することができる。例えば、長さ10m以上の長尺なモールドにして、ロールに巻き取られたフィルム状モールド5をロールから連続的に繰り出しながら複数の基板に連続的に転写してもよい。フィルム状モールド5の幅は、50〜3000mm、厚み1〜500μmにし得る。基板部5aと凹凸部5bとの間には、密着性を高めるために表面処理や易接着処理を施してもよい。また、必要に応じて、凹凸部5bの凹凸パターン面上に離型処理を施してもよい。
【0075】
図6に示すように、押圧ロール6とその直下に搬送されている支持基板2との間にフィルム状モールド5が送り込まれることにより、フィルム状モールド5の凹凸部5bの凹凸パターンが支持基板2上の下地材料層4に転写される。ここで、下地材料層4にフィルム状モールド5を押し付けた後、下地材料層4を仮焼成してもよい。仮焼成することにより、下地材料層4のゲル化が進み、凹凸パターンが固化され、剥離の際に崩れにくくなる。仮焼成を行う場合は、大気中で40〜150℃の温度で加熱してもよい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。
【0076】
フィルム状モールド5の押圧又は下地材料層4の仮焼成の後、下地材料層4からフィルム状モールド5を剥離する。フィルム状モールド5の剥離には、公知の剥離方法を採用することができる。例えば加熱しながらフィルム状モールド5を剥離してもよい。これにより、下地材料層4から発生するガスを逃がし、下地材料層4内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロールプロセスを使用する場合、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、下地材料層4がフィルム状モールド5に残留することなく、容易にフィルム状モールド5を下地材料層4から剥離することができる。特に、下地材料層4を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にフィルム状モールド5は下地材料層4から剥離し易くなる。さらに、フィルム状モールド5の剥離性の向上のために、剥離ロール7を使用してもよい。本実施形態では、
図6に示すように、剥離ロール7を押圧ロール6の下流側に設け、剥離ロール7によりフィルム状モールド5を下地材料層4に付勢しながら回転支持する。これにより、フィルム状モールド5が下地材料層4に付着された状態を、押圧ロール6と剥離ロール7との間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール7の下流側でフィルム状モールド5を剥離ロール7の上方に引き上げるようにフィルム状モールド5の進路を変更する。これにより、フィルム状モールド5は、凹凸が形成された下地材料層4から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド5が下地材料層4に付着されている期間に、上述の下地材料層4の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール7を使用する場合には、例えば40〜150℃に加熱しながら剥離することにより
フィルム状モールド5の剥離を一層容易にすることができる。
【0077】
下地材料層4からフィルム状モールド5を剥離した後、下地材料層4を硬化してもよい。これにより、
図1に示したような凹凸パターンを有する凹凸構造層3が形成される。本実施形態では、本焼成によりゾルゲル材料からなる下地材料層4を硬化させることができる。本焼成により下地材料層4を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基等が脱離して下地材料層4がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。こうして下地材料層4が硬化して、フィルム状モールド5の凹凸パターンに対応する凹凸パターンを有する凹凸構造層3が形成される。この時、凹凸構造層3がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質の状態、結晶質の状態、又は非晶質と結晶質の混合状態となる。
【0078】
また、紫外線等の光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を下地材料層4に添加してもよい。また、フィルム状モールド5の凹凸部5bの凹凸パターンを支持基板2上の下地材料層4に転写する際に、下地材料層4にUVやエキシマUV等のエネルギー線を照射して光硬化することで、光学基板1を製造してもよい。また、凹凸構造層3の表面に、水分や酸素等の気体の侵入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けてもよい。
【0079】
[フィルム状モールドの製造方法]
次に、フィルム状モールド5の製造方法について説明する。フィルム状モールド5を作製するためには、最初にモールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。母型の凹凸パターンは、例えば、本出願人らによるWO2012/096368号に記載されたブロック共重合体の加熱による自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)熱アニール法」という)や、本出願人らによるWO2011/007878A1に開示されたブロック共重合体の溶媒雰囲気下における自己組織化を利用する方法(以下、適宜「BCP溶媒アニール法」という)を用いて形成してもよい。母型の凹凸パターンは、BCP熱アニール法、及びBCP溶媒アニール法に代えて、フォトリソグラフィ法で形成してもよい。そのほか、例えば、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、並びに微粒子の自己組織化を使用した微細加工法によっても、母型の凹凸パターンを作製することができる。BCP熱アニール法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができる。例えば、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体であってもよい。
【0080】
BCP溶媒アニール法は、WO2012/096368号に記載されるBCP熱アニール法において、第1加熱工程、エッチング工程及び第2加熱工程を行う代わりに、基板上に塗布し乾燥させたブロック共重合体の薄膜を有機溶媒蒸気の雰囲気下で溶媒アニール(溶媒相分離)処理して、ブロック共重合体の相分離構造を薄膜内に形成させる方法である。この溶媒アニール処理によってブロック共重合体の自己組織化が進行し、ブロック共重合体がミクロ相分離して凹凸構造を形成することができる。
【0081】
溶媒アニール処理は、例えば、デシケータのような密閉可能な容器内部に有機溶媒の蒸気雰囲気をもたらし、この雰囲気下に対象物であるブロック共重合体の薄膜を曝すことにより実施することができる。有機溶媒蒸気は、ブロック共重合体の相分離を促進する上で高い濃度であってもよい。また、有機溶媒蒸気は、飽和蒸気圧であってもよい。この場合、濃度管理も比較的容易である。例えば、有機溶媒がクロロホルムの場合、飽和蒸気量は室温(0℃〜45℃)にて0.4g/l〜2.5g/lであることが知られている。溶媒アニール処理の処理時間は6時間〜168時間であってもよいし、12時間〜48時間、又は12時間〜36時間としてもよい。
【0082】
溶媒アニール処理に用いる有機溶媒は、沸点が20℃〜120℃の有機溶媒であってもよい。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、二硫化炭素、それらの混合溶媒等を用いることができる。このうち、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトン/二硫化炭素の混合溶媒を用いてもよい。溶媒アニールの雰囲気温度は、0℃〜45℃の範囲内で行ってもよい。溶媒アニールの雰囲気温度が45℃より高いと、薄膜に形成される凹凸構造がなまって崩れ易くなる。0℃より低い環境では、有機溶媒が蒸発しにくくなり、ブロック共重合体の相分離が起こり難くなる。
【0083】
上記溶媒アニール処理により得られた薄膜の凹凸構造に加熱処理を施してもよい。上記溶媒アニール処理で凹凸構造が既に形成されているため、この加熱処理は形成された凹凸構造を滑らかにするが、必ずしも必要ではない。何らかの原因で、上記溶媒アニール処理後の凹凸構造の表面の一部に突起が生じている場合や、凹凸構造の周期や高さを調整する目的のために有効となる場合がある。加熱温度は、例えば、ブロック共重合体を構成するポリマーセグメントのガラス転移温度以上にすることができ、例えば、それらのホモポリマーのガラス転移温度以上で且つガラス転移温度より70℃高い温度以下にすることができる。加熱処理は、オーブン等を用いて大気雰囲気下で行うことができる。溶媒アニール処理を行った後に、UVやエキシマUV等のエネルギー線照射によるエッチングやRIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチング法によってエッチングを行ってもよい。また、さらに加熱処理を行ってもよい。
【0084】
凹凸パターンの母型をBCP熱アニール法やBCP溶媒アニール法等により形成した後、電鋳法等により、凹凸パターンをさらに転写した金属モールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタ、及び蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層の厚みは、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために、10nm以上であってもよい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、及びそれらの合金等を用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電
解めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜3000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。形成した金属層は、後続のフィルム状モールド5の凹凸部5bへの押し付け、剥離及び洗浄等の処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
【0085】
上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。金属層の剥離は、物理的に行ってもよいし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等を用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤等を用いた湿式洗浄や、紫外線やプラズマ等を使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて、残留している材料成分を付着除去する等してもよい。こうして母型からパターンが転写された金属基板が得られる。
【0086】
この金属基板は、凹凸パターンを外側にしてロール状にされてもよい。これにより、
図7に示すように、外周縁沿いに凹凸部8aが形成された円筒状の金属モールド8が得られる。ここで、凹凸部8aに形成されている凹凸パターンは、上述の通り、BCP熱アニール法やBCP溶媒アニール法等によるブロック共重合体のミクロ相分離により形成された凹凸パターンであり、光学基板1の凹凸構造層3に形成される凹凸形状に対応する凹凸パターンである。なお、
図7においては、凹凸部8aに形成されている凹凸パターンの詳細な図示は省略している。
【0087】
続いて、金属モールド8の凹凸パターンを転写することでフィルム状モールド5を作製する方法について説明する。硬化性樹脂を基板部5aに塗布して基板部5a上に樹脂層(凹凸部5bとなる部分)を形成した後、金属モールド8の凹凸部8aを樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。ここで、硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系等の各種樹脂を用いることができる。硬化性樹脂を基板部5aに塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であってもよい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲内であってもよい。
【0088】
次いで、硬化後の樹脂層から金属モールド8を取り外す。金属モールド8を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。このようにして、基板部5a上に凹凸が形成された凹凸部5bを有するフィルム状モールド5が得られる。このフィルム状モールド5は、フィルム形態の光学基板として用いることもできる。
【0089】
図1の(b)に示すように、光学基板1には、凹凸構造層3上に被覆層9を形成してもよい。これにより、凹凸構造層3の凹凸深さの標準偏差の25〜150%の範囲内の膜厚で被覆層9を形成した光学基板20が製造される。光学基板20によれば、凹凸構造層3の表面に異物や欠陥があった場合に、それらを被覆層9で被覆することができる。このように被覆層9が形成された光学基板20を有機EL素子用の基板として用いた場合には、良好な光取り出し効率を有しつつ、有機EL素子のリーク電流を有効に抑制できる。それゆえ、被覆層9が形成された光学基板20は、有機EL素子等の各種デバイスに用いられる部材として有効である。
【0090】
被覆層9の材料(被覆材料)としては、凹凸構造層3に使用する材料や下地材料層4と同様のゾルゲル材料やポリシラザン、硬化性樹脂等を用いることができる。
【0091】
被覆材料としては、TiO
2、ZnO、ZnS、ZrO、BaTiO
3、SrTiO
2等の無機材料を用いてもよい。このうち、成膜性や屈折率の関係からTiO
2を用いてもよい。被覆層9は、任意の方法で形成することができるが、ゾルゲル材料の溶液を塗布してゲル化する方法、無機微粒子分散液を塗布乾燥する方法、液相堆積法(LPD:liquid Phase Deposition)等を用いることができる。TiO
2の分散液を用いる場合には、チタンのアルコキシドや有機化合物を用いたゾルゲル溶液をスピンコート等で塗布し、乾燥加熱してゲル化させるゾルゲル法を用いてもよい。
【0092】
また、被覆材料としてシランカップリング剤を用いてもよい。それにより、凹凸構造層3を有する光学基板20を用いて有機EL素子を製造する場合、被覆層9とその上に形成される電極等の層との間の密着性を向上させることができ、有機EL素子の製造工程における洗浄工程や高温処理工程での耐性が向上する。被覆層9に用いられるシランカップリング剤の種類は、特に制限されない。このようなシランカップリング剤としては、例えばRSiX
3で示される有機化合物を用いることができる。Rは、ビニル基、グリシドキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基及びメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素又はアルコキシル基である。シランカップリング剤を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。その後、各材料に応じて適正な条件で乾燥させることにより硬化した膜を得ることができる。例えば、100〜150℃で15〜90分間加熱乾燥してもよい。
【0093】
また、被覆層9の表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、被覆層9の表面がシリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザン等のトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルとで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。被覆層9の表面を疎水性にすることにより、光学基板20を有機EL素子等のデバイスの製造に用いる場合に、製造工程において光学基板20から水分を容易に除去できる。これにより、有機EL素子におけるダークスポットのような欠陥の発生や、デバイスの劣化を防止することができる。
【0094】
下地材料及び/又は被覆材料は、無機材料又は硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0095】
[有機EL素子]
図8の(a)は、光学基板1を回折格子基板として用いた有機EL素子(発光素子)の一例(有機EL素子100)を模式的に示した断面図である。
図8の(b)は、光学基板20を回折格子基板として用いた有機EL素子(発光素子)の一例(有機EL素子200)を模式的に示した断面図である。
【0096】
有機層11を積層する方法としては、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、ダイコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。
図8の(a)に示すように、有機EL素子100は、凹凸構造層3の表面に形成された凹凸形状が各層において維持されるように、支持基板2、凹凸構造層3、第1電極10、有機層11、第2電極12がこの順に積層されて形成される。
【0097】
一方、
図8の(b)に示すように、凹凸構造層3上に被覆層9が従来公知の塗布法により形成される場合には、凹凸構造層3の表面の凹部に被覆層9を形成するための液が溜まり易いため、被覆層9の形状は、凹凸構造層3の凹凸形状よりもなだらかな凹凸形状となる。そして、被覆層9上に形成される第1電極10、有機層11、第2電極12は、被覆層9の表面に形成された凹凸形状が各層において維持されるようにして形成される。
【0098】
ただし、上記いずれの場合においても有機層11の表面は、凹凸構造層3又は被覆層9の表面に形成されている凹凸パターンよりもなだらかな形状で形成されてもよい。また、その表面が平坦であってもよい。同様に、有機層11の上に積層される第2電極12の表面は、有機層11に形成されている凹凸パターンよりもなだらかな形状で形成されてもよいし、平坦であってもよい。例えば、有機層11が従来公知の塗布法により形成される場合に、有機層11の形状は、第1電極10の凹凸形状よりもさらになだらかな凹凸形状となる。
【0099】
第1電極10は、その上に形成される有機層11からの光を光学基板1側に透過させるために透過性を有する。それゆえ、透明電極とも呼ばれる。電極材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、金、白金、銀、銅が用いられる。これらの中でも、透明性と導電性の観点から、ITOを用いてもよい。有機層11は、有機EL素子の有機層に用いることが可能なものであれば特に制限されず、公知の有機層を適宜利用することができる。第2電極12の材料としては、仕事関数の小さな物質を適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、MgAg、MgIn、AlLiが挙げられる。
【0100】
図9に、有機EL素子100の変形形態(有機EL素子300)を示す。この有機EL素子300は、回折格子として、支持基板2の外側面(凹凸構造層3が形成された面と反対側の面)に光学機能層13が設けられた光学基板30を用いている。このような光学機能層13を設けることで、支持基板2内を通過してきた光が支持基板2(光学機能層13を含む)と空気の界面において全反射することを抑制して光取出し効率を向上することができる。光学機能層13としては、例えば、半球レンズ、コルゲート構造レンズ(特開2011−243308に記載されているマイクロレンズ)を採用することができる。光学機能層13は、有機EL素子300の光の取り出しのために用いることが可能なものであればよく、特に制限されず、光の屈折や、集光、拡散(散乱)、回折、反射等を制御して素子の外側へ光を取出すことが可能な構造を有する任意の光学部材を用いることができる。光学機能層13としては、例えば、半球レンズのような凸レンズ、凹レンズ、プリズムレンズ、円柱状レンズ、レンチキュラー型レンズ、上述の光学基板1を製造する方法と同様の方法で形成することが可能なコルゲート構造の凹凸層からなるマイクロレンズ等の各種レンズ部材を用いることができる。また、光学機能層13としては、透明体に拡散材が練りこまれた拡散シート、拡散板を用いてもよいし、表面に凹凸構造を有する拡散シート、拡散版、回折格子、反射防止機能を有する部材等を用いてもよい。これらのうち、より効率よく光を取り出すことが可能となることから、レンズ部材を用いてもよい。また、このようなレンズ部材としては、複数のレンズ部材を用いてもよく、この場合には微細なレンズ部材を配列させて、いわゆるマイクロレンズ(アレイ)を形成してもよい。光学機能層13には、市販品を用いてもよい。
【0101】
また、このような光を外部に取出すための光学機能層13としては、有機EL素子の用途やサイズ、構成等に応じて、種々のサイズ及び形状のものを用いることができるが、空気と外側取出し構造の界面での反射を抑制する観点から、半球レンズ及び後述する回折格子基板を製造する方法と同様の方法で形成することが可能なコルゲート構造の凹凸層からなるマイクロレンズを用いてもよい。さらに、有機EL素子の厚みが重要視されない(厚くても構わない)場合には、光学機能層13として半球レンズを用いてもよい。また、厚みが重要視される(薄いほうが好まれる)場合には、光学機能層13として上記コルゲート構造の凹凸層からなるマイクロレンズやフレネルレンズを用いてもよい。なお、光学機能層13は、主に光の屈折を制御するレンズとしての役割で用いているが、それに限らず、光の集光や拡散(散乱)、回折、反射防止等の種々の光学特性を付与させる目的の層として用いることもできる。
【0102】
このような光学機能層13の材質は、特に制限されず、任意の材質からなる光学部材を用いることができる。光学機能層13には、例えば、ガラス等の透明無機材料、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等のような透明なポリマー等からなる透明樹脂材料等を用いることができる。また、光学機能層13は、有機EL素子と光学機能層13との間での反射を抑制するべく、有機EL素子と光学機能層13との間に空気を挟まないように、粘着剤層及び/又は接着剤層を介して支持基板2上に積層されていてもよい。
【0103】
さらに、光学機能層13は、その表面の耐摩擦性や耐傷性が向上するという観点から、光学部材の表面上(光学機能層13として上述のような凹凸層からなるマイクロレンズを用いる場合、凹凸形状が形成されている表面上)に保護層が積層されていてもよい。このような保護層としては、透明フィルムや透明な無機蒸着層を用いることができる。このような透明フィルムとしては特に制限されず、任意の透明フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等のような透明なポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、このような透明フィルムは一方の面に粘着剤層又は接着剤層を形成して、光学部材の表面上に貼りあわせて使用してもよい(なお、光学機能層13として上述のような凹凸層からなるマイクロレンズを用いる場合、凸部間に空間が形成されるようにして透明フィルムを貼り合わせてもよい。)。このような粘着剤又は接着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム系粘着剤、ポリイソブチレン、ブチルゴム、スチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−インプレン−スチレンブロック共重合体等の合成ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤を用いてもよい。
【0104】
また、上記保護層として無機蒸着層を積層する場合には、蒸着法により透明な無機層を形成することが可能な公知の金属材料を適宜利用することができ、例えば、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb等の金属の酸化物、窒化物、硫化物等が挙げられる。また、このような金属材料としては、酸化による劣化を十分に防止できるという観点からは、TiO
2を好適に用いることができ、また、安価で高輝度が得られるという観点からはZnSを好適に用いることができる。また、このような無機蒸着層を形成する方法としては特に制限されず、任意の物理蒸着装置を用いて適宜製造することができる。
【0105】
以上、光学基板1,20が回折格子基板として用いられた有機EL素子100,200、及び、光学基板30が回折格子基板として用いられたボトムエミッション型の有機EL素子200について説明した。しかし、光学基板1,20,30の用途はボトムエミッション型の有機EL素子の回折格子基板に限定されない。光学基板1,20,30は、例えば、トップエミッション型の有機EL素子、LED、LEC、ECL、太陽電池、マイクロレンズアレイ、プリズムアレイ、光導波路等の光学素子、レンズ等の光学部品、反射防止フィルム、視野角改善フィルム、半導体チップ、パターンドメディア、データストレージ、電子ペーパー、LSI等の製造、防曇用基板、撥水基板、親水基板、防汚基板、抗菌基板、スリップ基板、電送路の低インピーダンス基板、製紙、食品製造、免疫分析チップ、及び細胞培養シート等のバイオ分野等における用途で使用される基板にも適用することができる。また、光学基板1,20,30は、例えば、各種電子デバイス、特に、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶(特開2013−46003参照)等にも適用することができる。
【0106】
また、凹凸構造層3の凸部の幅が一定である場合には、金属モールド8からフィルム状モールド5への凹凸パターンの転写、及び、フィルム状モールド5から凹凸構造層3への凹凸パターンの転写において、型崩れが低減され、凹凸パターンの転写を安定的に行うことが期待できる。また、金属モールド8の凹凸部8aに形成された凹凸パターンをフィルム状モールド5に転写する際には、フィルム状モールド5の基板部5a上に塗付した樹脂の金属モールド8の凹凸部8aへの詰まりを低減でき、金属モールド8の劣化を抑制することが期待できる。また、フィルム状モールド5の凹凸部5bに形成された凹凸パターンを光学基板1に転写する際には、支持基板2上に塗付した下地材料層4のフィルム状モールド5の凹凸部5bへの詰まりを低減でき、フィルム状モールド5の劣化を抑制することが期待できる。
【0107】
[実施例及び比較例に係る光学基板を用いた有機EL素子の特性の評価]
次に、本実施形態の実施例に係る光学基板及び比較例に係る光学基板をそれぞれ回折格子基板として用いた有機EL素子について、電流効率及びリーク電流を測定・評価した結果について説明する。
【0108】
上記説明した製造方法を用いて、それぞれ異なる作製条件下で6つのサンプルを作成し、AFMを用いて任意の測定領域の平面視解析画像及びFFT像を得た(
図9〜
図14参照)。そして、凸部の幅の平均値(nm)、凸部の幅の標準偏差(nm)、凸部の幅の変動係数、直線区間の割合(%)、及び凹凸深さの標準偏差(nm)をそれぞれ測定した。
【0109】
(実施例1)
このサンプルでは、回折格子基板(凹凸構造層を有する光学基板)を作製し、次いでこの回折格子基板を用いて有機EL素子を製造する。
【0110】
<フィルムモールドの作製>
最初に、回折格子基板を作製するために、BCP溶媒アニール法を用いて凹凸表面を有するフィルムモールドM−1を作製した。下記のようなポリスチレン(以下、適宜「PS」と略する)とポリメチルメタクリレート(以下、適宜「PMMA」と略する)とからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。
PSセグメントのMn=750,000、
PMMAセグメントのMn=720,000、
ブロック共重合体のMn=1,470,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=54:46、
分子量分布(Mw/Mn)=1.21、PSセグメントのTg=107℃、
PMMAセグメントのTg=134℃
【0111】
ブロック共重合体におけるPSセグメント及びPMMAセグメントの体積比(PSセグメント:PMMAセグメント)は、ポリスチレンの密度が1.05g/cm
3であり、ポリメチルメタクリレートの密度が1.19g/cm
3であるものとして算出した。ポリマーセグメント又はポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製、型番「GPC−8020」、TSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000及びSuperH4000を直列に接続したもの)を用いて測定した。ポリマーセグメントのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(Perkin−Elmer社製、製品名「DSC7」)を用いて、0〜200℃の温度範囲について20℃/minの昇温速度にて昇温しつつ測定した。ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートの溶解度パラメータはそれぞれ9.0及び9.3である(化学便覧 応用編 改定2版参照)。
【0112】
このブロック共重合体210mgとポリエチレンオキシドとして52.5mgのAldrich製ポリエチレングリコール2050(平均Mn=2050)に、トルエンを総量が15gになるように加えて溶解させて、ブロック共重合体溶液を調製した。
【0113】
このブロック共重合体溶液を孔径0.5μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。信越シリコーン社製KBM−5103を1g、イオン交換水を1g、酢酸0.1ml、イソプロピルアルコールを19gの混合溶液をガラス基板上にスピンコート塗布した(回転速度500rpmで10秒間行った後、引き続いて800rpmで45秒間行った)。130℃で15分間処理して、シランカップリング処理ガラスを得た。得られたブロック共重合体溶液を、基材としてのシランカップリング処理ガラス上に、スピンコートにより100〜120nmの膜厚で塗布した。スピンコートは、回転速度200rpmで10秒間行った後、引き続いて300rpmで30秒間行った。
【0114】
次いで、薄膜が形成された基材を、予めクロロホルムの蒸気を充満したデシケータ中に24時間、室温にて静置することで溶媒アニール処理を施した。デシケータ(容量5L)内には、クロロホルムを100g充填したスクリュー瓶が設置されており、デシケータ内の雰囲気は飽和蒸気圧のクロロホルムで満たされていた。溶媒アニール処理後の薄膜の表面には、凹凸が観察されて、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ層分離していることが分かった。この薄膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立社製H−7100FA)により観察したところ、PS部分の円形の断面が基板表面と平行な方向に互いに離隔しつつ基板表面に垂直な方向(高さ方向)に二段に配列しており、原子間力顕微鏡の解析画像と併せて考察すると、PS部分がPMMA部分から水平シリンダ構造に相分離していることが分かった。PS部分がコア(島)となり、その周りをPMMA部分が取り囲んでいる(海)状態であった。
【0115】
上記溶媒アニール処理により波形化された薄膜の表面に、スパッタにより、電流シード層として20nm程度の薄いニッケル層を形成した。次いで、この薄膜付き基材をスルファミン酸ニッケル浴中に入れ、温度50℃で、電鋳(最大電流密度0.05A/cm
2)処理してニッケルを厚み250μmになるまで析出させた。こうして得られたニッケル電鋳体から薄膜付き基材を機械的に剥離した。次に、ニッケル電鋳体をテトラヒドロフラン溶媒中に2時間浸け置き、その後、アクリル系UV硬化樹脂を塗布して硬化し、剥離することを3回繰り返すことで、電鋳体の表面に一部付着していたポリマー成分を除去した。その後、ニッケル電鋳体を日本シービーケミカル製ケミゾール2303中に浸漬し、50℃にて2時間攪拌しながら洗浄した。その後、ニッケル電鋳体にUVオゾン処理を10分間施した。
【0116】
次いで、ニッケル電鋳体をダイキン化成品販売社製HD−2101THに約1分浸し、乾燥させた後、一晩静置した。翌日、ニッケル電鋳体を、ダイキン化成品販売社製HDTH中に浸漬して約1分間超音波処理洗浄を行った。こうして離型処理されたニッケルモールドを得た。
【0117】
次に、PET基板(東洋紡製、コスモシャインA−4100)上にフッ素系UV硬化性樹脂を塗布し、ニッケルモールドを押し付けながら紫外線を600mJ/cm
2で照射することで、フッ素系UV硬化性樹脂を硬化させた。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂からニッケルモールドを剥離した。こうしてニッケルモールドの表面形状が転写された樹脂膜付きPET基板からなるフィルムモールドM−1を得た。
【0118】
<凹凸構造層の形成>
材料として、エタノール24.3g、水2.15g及び濃塩酸0.0098gを混合した液に、テトラエトキシシラン(TEOS)3.74gとメチルトリエトキシシラン(MTES)0.89gを滴下して加え、23℃、湿度45%で2時間攪拌してSiO
2のゾルゲル材料溶液を得た。このゾルゲル材料溶液を、10×10×0.07cmの無アルカリガラス基板(日本電気硝子社製、OA10GF)上にバーコートして塗膜を形成した。バーコーターとしてドクターブレード(YOSHIMITSU SEIKI社製)を用いた。このドクターブレードは塗膜の膜厚が5μmとなるような設計であったがドクターブレードに35μmの厚みのイミドテープを張り付けて塗膜の膜厚が40μmとなるように調整した。ゾルゲル材料溶液の塗布60秒後に、塗膜(下地材料層)に上記のようにして作製したフィルムモールドM−1を、80℃に加熱した押圧ロールを用いてガラス板上の塗膜に押し付けながら回転移動した。塗膜の押圧が終了後、フィルムモールドM−1を剥離し、次いでオーブンを用いて300℃で60分加熱して本焼成を行った。こうしてフィルムモールドM−1の凹凸パターンが転写された凹凸構造層がガラス基板上に形成された。なお、押圧ロールは、内部にヒータを備え、外周が4mm厚の耐熱シリコーンが被覆されたロールであり、ロール径φが50mm、軸方向長さが350mmのものを用いた。
【0119】
この凹凸構造層の凹凸パターンについて、表面の凹凸形状を原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡「NanonaviIIステーション/E−sweep」)を用いて解析画像を得た。原子間力顕微鏡の解析条件は、以下の通りである。
測定モード:ダイナミックフォースモード
カンチレバー:SI−DF40(材質:Si、レバー幅:40μm、チップ先端の直径:10nm)
測定雰囲気:大気中
測定温度:25℃
【0120】
<凹凸の平均深さ>
凹凸構造層の任意の位置に3μm角(縦3μm、横3μm)の測定領域を測定して、上記のようにして凹凸解析画像を求めた。かかる凹凸解析画像中における、任意の互いに隣接する凹部の底部及び凸部の頂部の深さ方向の距離を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均深さとする。この例で得られた解析画像では、凹凸構造層の凹凸の平均深さは54nmであった。
【0121】
<凹凸解析画像のフーリエ変換像>
凹凸構造層の任意の3μm角(縦3μm、横3μm)の測定領域を測定して上記のようにして凹凸解析画像を求めた。得られた凹凸解析画像に対し、1次傾き補正を含むフラット処理を施した後に、2次元高速フーリエ変換処理を施すことによりフーリエ変換像を得た。
図10の(b)に示すように、このようにして得られたフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。
【0122】
<凹凸の平均ピッチ>
凹凸構造層の任意の3μm角(縦3μm、横3μm)の測定領域を測定して上記のようにして凹凸解析画像を求めた。かかる凹凸解析画像中における、任意の互いに隣り合う凸部の頂部同士又は隣り合う凹部の底部同士の間隔を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均ピッチとした。この例で得られた解析画像では、凹凸構造層の凹凸の平均ピッチは338nmであった。
【0123】
<凹凸深さ分布の平均値>
凹凸構造層の任意の3μm角(縦3μm、横3μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求めた。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸深さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求めた。この実施例で用いたE−sweepでは、3μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行った。このようにして測定される凹凸深さ(nm)に関して、先ず、全測定点のうち、基板の表面からの高さが最も高い測定点Pを求めた。そして、かかる測定点Pを含み且つ基板の表面と平行な面を基準面(水平面)として、その基準面からの深さの値(測定点Pにおける基板からの高さの値から各測定点における基板からの高さを差し引いた差分)を凹凸深さのデータとして求めた。なお、このような凹凸深さのデータは、E−sweep中のソフトにより自動的に計算して求めることが可能であり、このような自動的に計算して求められた値を凹凸深さのデータとして利用できる。このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、凹凸深さ分布の平均値(m)は、下記式(I)を用いて計算することにより求めることができる。
【0124】
【数1】
[式(I)中、Nは測定点の総数を示し、x
iはi番目の測定点の凹凸深さのデータを示す。]
このサンプルで得られた凹凸構造層の凹凸深さ分布の平均値(m)は43.2nmであった。
【0125】
<凹凸深さの標準偏差>
上述の深さ分布の平均値(m)の測定方法と同様にして凹凸構造層の3μm角の測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点において凹凸深さのデータを求めた。この例では、65536点(縦256点×横256点)での測定点を採用した。その後、各測定点の凹凸深さのデータに基づいて凹凸深さ分布の平均値(m)と凹凸深さの標準偏差(σ)を計算した。なお、平均値(m)は、上述のように、上記式(I)を計算して求めることができる。一方、凹凸深さの標準偏差(σ)は、下記式(II)を用いて計算することにより求めることができる。
【0126】
【数2】
[式(II)中、Nは測定点の総数(総ピクセル数)を示し、x
iはi番目の測定点の凹凸深さのデータを示し、mは凹凸深さ分布の平均値を示す。]
このサンプルで得られた凹凸構造層の凹凸深さの標準偏差(σ)は20.2nmであった。
【0127】
<凸部の幅の平均値・凸部の幅の標準偏差・凸部の幅の変動係数>
凹凸深さが凹凸深さ分布の平均値以上の領域を凸部、凹凸深さが凹凸深さ分布の平均値未満の領域を凹部として、凸部を白、凹部を黒で表示するように凹凸解析画像を処理することで、
図10の(a)に示すような平面視解析画像(白黒画像)を得た。この平面視解析画像の凸部のうちから任意の100以上の箇所を選択し、それぞれについて凸部の延伸方向に対して平面視上略直交する方向における凸部の境界から反対側の境界までの長さを測定した。なお、上述したように、凸部が分岐している位置の値については測定値から除外した。このように測定した長さの算術平均を求めることで、凸部の幅の平均値を算出した。この例で得られた凸部の幅の平均値は162.5nmであった。また、凸部の幅の標準偏差は24.4nmであった。さらに、凸部の幅の標準偏差を凸部の幅の平均値で割ることで、凸部の幅の変動係数(凸部の幅の標準偏差/凸部の幅の平均値)を算出した。このサンプルの凸部の幅の変動係数は0.15であり、幅条件を満たすことが確認された。
【0128】
<第1の定義方法での直線区間の割合>
図10の(a)に示す平面視解析画像について、上述した手順(手順1−1〜手順1−6)によって、曲線区間の第1の定義方法での直線区間の割合を算出した。このサンプルの第1の定義方法での直線区間の割合は84.0%であり、第1の定義方法において直線条件を満たすことが確認された。
【0129】
<第2の定義方法での直線区間の割合>
図10の(a)に示す平面視解析画像について、上述した手順(手順2−1〜手順2−6)によって、曲線区間の第2の定義方法での直線区間の割合を算出した。このサンプルの第2の定義方法での直線区間の割合は92.5%であり、第2の定義方法において直線条件を満たすことが確認された。
【0130】
以上のように、このサンプルは、幅条件及び直線条件を満たすため、本実施形態の実施例(実施例1)であるといえる。
【0131】
<有機EL素子の作製>
次に上記で得られた凹凸パターン層を備える回折格子基板上に、ITOをスパッタ法により厚み120nmで成膜し、次いで、有機層として、正孔輸送層(4,4’,4’’トリス(9−カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み:35nm)、発光層(トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした4,4’,4’’トリス(9−カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み15nm、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、厚み15nm)、電子輸送層(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン、厚み:65nm)をそれぞれ蒸着法で積層した。さらに、フッ化リチウム層(厚み:1.5nm)、金属電極(アルミニウム、厚み:50nm)を蒸着した。こうして
図8に示すように、支持基板2上に、凹凸構造層3、被覆層9、第1電極10、有機層11、第2電極12としての金属電極がそれぞれ形成された有機EL素子を得た。
【0132】
なお、
図16の表中に、実施例1で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0133】
(実施例2)
<フィルムモールドの作製>
最初に、回折格子基板を作製するために、BCP溶媒アニール法を用いて凹凸表面を有するフィルムモールドM−2を作製した。フィルムモールドM−2を作製するために、下記のようなポリスチレンとポリメチルメタクリレートとからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。そして、このブロック共重合体225mgとポリエチレンオキシドとして56.3mgのAldrich製ポリエチレングリコール2050に、トルエンを総量が15gになるように加えて溶解させて、ブロック共重合体溶液を調製した。そして、このブロック共重合体溶液を基材上に100〜120nmの膜厚で塗布した。上記以外については実施例1で作製したフィルムモールドM−1と同様の方法及び条件で、フィルムモールドM−2を作製した。
PSセグメントのMn=590,000、
PMMAセグメントのMn=570,000、
ブロック共重合体のMn=1,160,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=54:46、
分子量分布(Mw/Mn)=1.25、PSセグメントのTg=107℃、
PMMAセグメントのTg=134℃
【0134】
<凹凸構造層の形成>
フィルムモールドM−1を用いる代わりにフィルムモールドM−2を用いた以外は実施例1と同様にして、凹凸構造層を形成した。
【0135】
<測定結果>
実施例1と同様にして、凹凸解析画像、凹凸解析画像のフーリエ変換像(
図11の(b)参照)、及び平面視解析画像(
図11の(a)参照)を得た。この凹凸解析画像では、凹凸の平均深さは95nmであった。また、
図11の(b)に示すように、凹凸解析画像のフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。また、凹凸解析画像及び
図11の(a)に示す平面視解析画像から、凹凸の平均ピッチは305nm、凹凸深さ分布の平均値(m)は57.3nm、凹凸深さの標準偏差は31.7nm、凸部の幅の平均値は148.8nm、凸部の幅の標準偏差は15.8nm、凸部の幅の変動係数は0.11、第1の定義方法での直線区間の割合は88.4%、第2の定義方法での直線区間の割合は92.2%であることが確認された。すなわち、このサンプルは、幅条件を満たすとともに第1及び第2の定義方法のいずれにおいても直線条件を満たすため、本実施形態の実施例(実施例2)であるといえる。
【0136】
<有機EL素子の作製>
上記で得られた凹凸構造層を備える回折格子基板を用いて、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、
図16の表中に、実施例2で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0137】
(実施例3)
<フィルムモールドの作製>
最初に、回折格子基板を作製するために、BCP溶媒アニール法を用いて凹凸表面を有するフィルムモールドM−3を作製した。フィルムモールドM−3を作製するために、下記のようなポリスチレンとポリメチルメタクリレートとからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。そして、このブロック共重合体225mgとポリエチレンオキシドとして56.3mgのAldrich製ポリエチレングリコール2050に、トルエンを総量が15gになるように加えて溶解させて、ブロック共重合体溶液を調製した。そして、このブロック共重合体溶液を基材上に140〜160nmの膜厚で塗布した。上記以外については、実施例1で作製したフィルムモールドM−1と同様の方法及び条件で、フィルムモールドM−3を作製した。
PSセグメントのMn=680,000、
PMMAセグメントのMn=580,000、
ブロック共重合体のMn=1,260,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=57:43、
分子量分布(Mw/Mn)=1.28、PSセグメントのTg=107℃、
PMMAセグメントのTg=134℃
【0138】
<凹凸構造層の形成>
フィルムモールドM−1を用いる代わりにフィルムモールドM−3を用いた以外は実施例1と同様にして、凹凸構造層を形成した。
【0139】
<測定結果>
実施例1と同様にして、凹凸解析画像、凹凸解析画像のフーリエ変換像(
図12の(b)参照)、及び平面視解析画像(
図12の(a)参照)を得た。ただし、10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求めた。この凹凸解析画像では、凹凸の平均深さは91nmであった。また、図
12の(b)に示すように、凹凸解析画像のフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。また、凹凸解析画像及び
図12の(a)に示す平面視解析画像から、凹凸の平均ピッチは562nm、凹凸深さ分布の平均値(m)は62.5nm、凹凸深さの標準偏差は29.7nm、凸部の幅の平均値は251.2nm、凸部の幅の標準偏差は48.8nm、凸部の幅の変動係数は0.19、第1の定義方法での直線区間の割合は76.2%、第2の定義方法での直線区間の割合は81.2%であることが確認された。すなわち、このサンプルは、幅条件を満たすとともに第1及び第2の定義方法のいずれにおいても直線条件を満たすため、本実施形態の実施例(実施例3)であるといえる。
【0140】
<有機EL素子の作製>
上記で得られた凹凸構造層を備える回折格子基板を用いて、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、
図16の表中に、実施例3で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0141】
(実施例4)
<フィルムモールドの作製>
最初に、回折格子基板を作製するために、BCP溶媒アニール法を用いて凹凸表面を有するフィルムモールドM−4を作製した。フィルムモールドM−4を作製するために、下記のようなポリスチレンとポリメチルメタクリレートとからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。そして、このブロック共重合体240mgとポリエチレンオキシドとして60.0mgのAldrich製ポリエチレングリコール2050に、トルエンを総量が15gになるように加えて溶解させて、ブロック共重合体溶液を調製した。そして、このブロック共重合体溶液を基材上に170〜190nmの膜厚で塗布した。上記以外については、実施例1で作製したフィルムモールドM−1と同様の方法及び条件で、フィルムモールドM−4を作製した。
PSセグメントのMn=900,000、
PMMAセグメントのMn=800,000、
ブロック共重合体のMn=1,700,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=55:45、
分子量分布(Mw/Mn)=1.26、PSセグメントのTg=107℃、
PMMAセグメントのTg=134℃
【0142】
<凹凸構造層の形成>
フィルムモールドM−3を用いる代わりにフィルムモールドM−4を用いた以外は実施例3と同様にして、凹凸構造層を形成した。
【0143】
<測定結果>
実施例3と同様にして、凹凸解析画像、凹凸解析画像のフーリエ変換像(
図13の(b)参照)、及び平面視解析画像(
図13の(a)参照)を得た。この凹凸解析画像では、凹凸の平均深さは138nmであった。また、
図13の(b)に示すように、凹凸解析画像のフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。また、凹凸解析画像及び
図13の(a)に示す平面視解析画像から、凹凸の平均ピッチは767nm、凹凸深さ分布の平均値(m)は78.9nm、凹凸深さの標準偏差は46.7nm、凸部の幅の平均値は370.9nm、凸部の幅の標準偏差は54.5nm、凸部の幅の変動係数は0.15、第1の定義方法での直線区間の割合は78.5%、第2の定義方法での直線区間の割合は79.7%であることが確認された。すなわち、このサンプルは、幅条件を満たすとともに第1及び第2の定義方法のいずれにおいても直線条件を満たすため、本実施形態の実施例(実施例4)であるといえる。
【0144】
<有機EL素子の作製>
上記で得られた凹凸構造層を備える回折格子基板を用いて、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、
図16の表中に、実施例4で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0145】
(比較例1)
<フィルムモールドの作製>
まず、基材(材質:ガラス)上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]をスピンコート法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させてシリコーン系ポリマー膜を形成した。
【0146】
次に、シリコーン系ポリマー膜上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10
−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、アルミニウム蒸着膜を30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10
5Pa)に戻した。シリコーン系ポリマー膜上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後に、アルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−5A)を得た。
【0147】
そして、表面に凹凸が形成されている母型(M−5A)上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10
−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、アルミニウム蒸着膜を30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10
5Pa)に戻した。母型(M−5A)上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後に、アルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−5B)を得た。更に、表面に凹凸が形成されている母型(M−5B)上に蒸着法により、温度が100℃であり、圧力が1×10
−3Paである条件下において、アルミニウム蒸着膜(厚み:10nm)を形成し、その後、アルミニウム蒸着膜を30分かけて室温(25℃)まで冷却した後に、圧力を大気圧(1.013×10
5Pa)に戻した。母型(M−5B)上に形成されたアルミニウム蒸着膜の表面には凹凸が形成されていた。次いで、アルミニウム蒸着膜上にシリコーン系ポリマー[シリコーンゴム(ワッカーケミ社製、製品名「Elastosil RT601」)90質量%と硬化剤10質量%との混合樹脂組成物]を滴下法により塗布し、100℃にて1時間加熱して硬化させた後に、アルミニウム蒸着膜から取り外して母型(M−5C)を得た。
【0148】
次に、ガラス基板(Matsunami社製、製品名「Micro slide glass」)及び硬化性樹脂(Norland Optical Adhesive社製、製品名「NOA 81」)を準備し、ガラス基板上に硬化性樹脂を塗布し、その後、母型(M−5C)を押し付けつつ硬化性樹脂に紫外線を1時間照射して硬化させた。その後、硬化後の硬化樹脂層から母型(M−5C)を取り外し、ガラス基板上に凹凸を形成された硬化樹脂層を形成した母型(M−5D)を得た。この母型(M−5D)について実施例1と同様の操作をすることで、Ni電鋳体(M−5E)、ついでフィルムモールド(M−5F)を得た。
【0149】
<凹凸構造層の形成>
フィルムモールドM−1を用いる代わりにフィルムモールドM−5Fを用いた以外は実施例1と同様にして、凹凸構造層を形成した。
【0150】
<測定結果>
実施例1と同様にして、凹凸解析画像、凹凸解析画像のフーリエ変換像(
図14の(b)参照)、及び平面視解析画像(
図14の(a)参照)を得た。この凹凸解析画像では、凹凸の平均深さは59nmであった。また、
図14の(b)に示すように、凹凸解析画像のフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。また、凹凸解析画像及び
図14の(a)に示す平面視解析画像から、凹凸の平均ピッチは372nm、凹凸深さ分布の平均値(m)は、46.5nm、凹凸深さの標準偏差は19.8nm、凸部の幅の平均値は146.3nm、凸部の幅の標準偏差は51.4nm、凸部の幅の変動係数は0.35、第1の定義方法での直線区間の割合は47.4%、第2の定義方法での直線区間の割合は56.8%であることが確認された。すなわち、このサンプルは、幅条件を満たさず、第1及び第2の定義方法のいずれにおいても直線条件を満たさないため、本実施形態の比較例(比較例1)であるといえる。
【0151】
<有機EL素子の作製>
上記で得られた凹凸構造層を備える回折格子基板を用いて、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、
図16の表中に、比較例1で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0152】
(比較例2)
<フィルムモールドの作製>
最初に、回折格子基板を作製するために、シリコーンゴムを用いた方法で凹凸表面を有するフィルムモールドを作製した。シリコーン系ポリマー膜上に形成するアルミ蒸着膜の厚みを10nmではなく30nmとした以外は、比較例1で作製したフィルムモールドM−5Fと同様の方法及び条件で、フィルムモールドM−6を作製した。
【0153】
<凹凸構造層の形成>
フィルムモールドM−3を用いる代わりにフィルムモールドM−6を用いた以外は実施例3と同様にして、凹凸構造層を形成した。
【0154】
<測定結果>
実施例3と同様にして、凹凸解析画像、凹凸解析画像のフーリエ変換像(
図15の(b)参照)、及び平面視解析画像(
図15の(a)参照)を得た。この凹凸解析画像では、凹凸の平均深さは142nmであった。また、
図15の(b)に示すように、凹凸解析画像のフーリエ変換像は、波数の絶対値が0μm
−1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ上記円状の模様が波数の絶対値が10μm
−1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。また、凹凸解析画像及び
図15の(a)に示す平面視解析画像から、凹凸の平均ピッチは784nm、凹凸深さ分布の平均値(m)は81.6nm、凹凸深さの標準偏差は45.7nm、凸部の幅の平均値は396.7nm、凸部の幅の標準偏差は127.0nm、凸部の幅の変動係数は0.32、第1の定義方法での直線区間の割合は48.3%、第2の定義方法での直線区間の割合は59.6%であることが確認された。すなわち、このサンプルは、幅条件を満たさず、第1及び第2の定義方法のいずれにおいても直線条件を満たさないため、本実施形態の比較例(比較例2)であるといえる。
【0155】
<有機EL素子の作製>
上記で得られた凹凸構造層を備える回折格子基板を用いて、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、
図16の表中に、比較例2で得られた有機EL素子の凹凸構造層についての各測定値(凸部の幅の平均値、凸部の幅の標準偏差、凸部の幅の変動係数、測定領域の1辺の長さ、第1の定義方法での直線区間の割合、第2の定義方法での直線区間の割合、及び凹凸深さの標準偏差)をそれぞれ示している。
【0156】
(電流効率の評価方法)
実施例1〜4及び比較例1,2に係る有機EL素子の輝度1000cd/m
2における電流効率を求め、各有機EL素子の電流効率について、光学基板として凹凸構造を備えない平坦な素ガラス基板を用いた場合の有機EL素子の電流効率に対する倍率をそれぞれ算出した。結果を
図16に示す。倍率が高いほど、電流効率が良好であることを示している。
図16の表中においては、倍率が1.1〜1.3倍であったものを「C」、1.3〜1.5倍であったものを「B」、1.5倍より大きかったものを「A」と表記した。なお、電流効率は以下の方法で測定した。有機EL素子に電圧を印加し、印加電圧V及び有機EL素子に流れる電流Iを印加測定器(株式会社エーディーシー社製、R6244)にて、また全光束量Lをスペクトラ・コープ社製の全光束測定装置にて測定した。このようにして得られた印加電圧V、電流I及び全光束量Lの測定値から輝度値L’を算出し、電流効率については、下記計算式(F1):
電流効率=(L’/I)×S・・・(F1)
を用いて、有機EL素子の電流効率を算出した。上記式において、Sは素子の発光面積である。なお、輝度値L’は、有機EL素子の配光特性がランバート則にしたがうものと仮定し、下記計算式(F2)で換算した。
L’=L/π/S・・・(F2)
【0157】
(リーク電流の評価方法)
実施例1〜4及び比較例1,2に係る有機EL素子に、素子が発光しない程度の低電圧(1.0V)を印加し、有機EL素子に流れる電流を印加測定器(KEITHLEY社製、2612A SYSTEM Source Meter)にて測定した。測定した電流値を有機EL素子の発光面積で割ることで電流密度を計算した。
図16の表中においては、この1.0V印加時の電流密度が5.0×10
−6A/cm
2未満のものを「A」、5.0×10
−6A/cm
2以上のものを「B」と表記した。
【0158】
(比較例の電流効率及びリーク電流)
図16に示すように、比較例1に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「C」であった。また、比較例1に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「B」であった。
また、
図16に示すように、比較例2に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「B」であった。また、比較例2に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「B」であった。
【0159】
(実施例の電流効率及びリーク電流)
また、
図16に示すように、実施例1に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「B」であった。また、実施例1に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「A」であった。
また、
図16に示すように、実施例2に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「A」であった。また、実施例2に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「A」であった。
また、
図16に示すように、実施例3に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「A」であった。また、実施例3に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「A」であった。
また、
図16に示すように、実施例4に係る光学基板を用いた有機EL素子の電流効率の評価は「A」であった。また、実施例4に係る光学基板を用いた有機EL素子のリーク電流の評価は「A」であった。
【0160】
(実施例1と比較例1との比較)
実施例1に係る光学基板を用いた有機EL素子と、比較例1に係る光学基板を用いた有機EL素子とを比較すると、実施例1に係る有機EL素子の方が、比較例1に係る有機EL素子よりも高い電流効率を示すことが確認された。すなわち、直線条件及び幅条件を満たすことで、より高い電流効率が得られることが確認された。なお、リーク電流についても、実施例1に係る有機EL素子の方が、比較例1に係る有機EL素子よりも少なく、良好な結果が得られた。
【0161】
(実施例1と実施例2との比較)
実施例1に係る光学基板と実施例2に係る光学基板とは、いずれも直線条件及び幅条件を満たしている。実施例1に係る光学基板及び実施例2に係る光学基板の主な相違点は、実施例2に係る光学基板の凹凸深さの標準偏差が、実施例1に係る光学基板の凹凸深さの標準偏差の約1.5倍となっている点である。実施例1に係る光学基板を用いた有機EL素子と、実施例2に係る光学基板を用いた有機EL素子とを比較すると、凹凸深さの標準偏差が大きい実施例2に係る光学基板を用いた有機EL素子の方が、より高い電流効率を示すことが確認された。
【0162】
凹凸深さの標準偏差は該凹凸構造の深さを反映する値であり、凹凸の段差が大きいほど大きな値をとるパラメータである。凹凸深さの標準偏差が大きい光学基板の方が、凹凸の段差が大きくなり、回折格子としての効果が高まるため、実施例2では実施例1よりも高い電流効率が得られたと考えられる。
【0163】
(実施例3と比較例1との比較)
実施例3に係る光学基板は、実施例1,2に係る光学基板よりも凸部の幅の平均値を100nm程度大きくしたものである。実施例3に係る光学基板を用いた有機EL素子は、直線条件及び幅条件を満たしており、電流効率及びリーク電流の両方の観点において、比較例1に係る光学基板を用いた有機EL素子よりも良好な結果が得られた。このように、凸部の幅のスケールを大きくした場合であっても、直線条件及び幅条件を満たすことで、より高い電流効率が得られることが確認された。
【0164】
(実施例4と比較例2との比較)
実施例4に係る光学基板及び比較例2に係る光学基板は、実施例3に係る光学基板よりも凸部の幅の平均値をさらに120〜145nmほど大きくしたものである。実施例4に係る光学基板を用いた有機EL素子と、比較例2に係る光学基板を用いた有機EL素子とを比較すると、実施例4に係る有機EL素子の方が、比較例2に係る有機EL素子よりも高い電流効率を示した。このように、凸部の幅のスケールを更に大きくした場合であっても、直線条件及び幅条件を満たすことで、より高い電流効率が得られることが確認された。なお、リーク電流についても、実施例4に係る有機EL素子の方が、比較例2に係る有機EL素子よりも少なく、良好な結果が得られた。