特許第6295283号(P6295283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6295283偏三角面体状の沈降炭酸カルシウムを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295283
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】偏三角面体状の沈降炭酸カルシウムを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20180305BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C01F11/18 C
   C09C1/02
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-31715(P2016-31715)
(22)【出願日】2016年2月23日
(62)【分割の表示】特願2015-501844(P2015-501844)の分割
【原出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-164116(P2016-164116A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/614,644
(32)【優先日】2012年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12164041.1
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・ウェンク
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・サンダース
(72)【発明者】
【氏名】マルク・モーレ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・スクリュプチャク
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−073891(JP,A)
【文献】 特開平02−137720(JP,A)
【文献】 特開2008−142951(JP,A)
【文献】 特開平09−309723(JP,A)
【文献】 特開平06−073689(JP,A)
【文献】 特開平06−271313(JP,A)
【文献】 特表2005−511916(JP,A)
【文献】 特表2006−512487(JP,A)
【文献】 特開2011−225390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00 − 17/00
C09C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、紙コーティング、紙製品、インク、塗料、コーティング、プラスチック、接着剤、建築製品、食品および医薬製品から選択される材料の製造のための、偏三角面体状の沈降炭酸カルシウム(PCC)の使用であって、偏三角面体状の沈降炭酸カルシウム(PCC)が、
(a)生石灰を消和して消石灰を得るステップ; ならびに
(b)撹拌せず、熱交換器中で事前冷却せず、およびいずれの添加剤もなしで、前記消石灰を二酸化炭素ガスで炭酸化に供して偏三角面体状のPCCを生成するステップ
を含む、方法によって得られる、偏三角面体状の沈降炭酸カルシウム(PCC)の使用。
【請求項2】
非塗工上質紙の製造のための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
紙、紙コーティング、紙製品、インク、塗料、コーティング、プラスチック、接着剤、建築製品、食品または医薬製品から選択される材料の製造のための、偏三角面体状のPCC生成物の使用であって、偏三角面体状のPCC生成物が、
(a)生石灰を消和して消石灰を得るステップ;
(b)撹拌せず、熱交換器中で事前冷却せず、およびいずれの添加剤もなしで、前記消石灰を二酸化炭素ガスで炭酸化に供して偏三角面体状のPCCを生成するステップ;ならびに
(c)ステップ(b)で得られた偏三角面体状のPCCを、ふるい分け、脱水、分散および/または粉砕し、偏三角面体状の沈降炭酸カルシウム生成物を得るステップ、
を含む、方法によって得られる、偏三角面体状のPCC生成物の使用。
【請求項4】
非塗工上質紙の製造のための、請求項3に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈降炭酸カルシウム、とりわけ実質的に偏三角面体の形態の沈降炭酸カルシウム生成物を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸カルシウムは、多くの分野にわたる幅広い使用が見出されている。例えば、炭酸カルシウムは、充填剤として、およびその白色度によってコーティング顔料としても、紙、プラスチック、塗料およびコーティング産業において最も広く使用されている鉱物の1つである。紙産業において、炭酸カルシウムは、その高輝度、不透明性および光沢で評価されており、明るく不透明な紙を作るための充填剤として一般に使用されている。加えて、炭酸カルシウムは、塗料中にエクステンダーとして使用されていることが多く、接着剤、封止剤およびプラスチックにおける充填剤としても使用されている。高品質の炭酸カルシウムは、医薬品の配合における使用も見出されている。
【0003】
炭酸カルシウムは、天然の鉱物としてだけでなく、合成生成された生成物としても存在することが知られている。
【0004】
本発明の意味において、「粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)」とは、大理石、白亜もしくは石灰岩またはドロマイトを含めた天然源から得られる炭酸カルシウムである。カルサイトは、炭酸塩鉱物および炭酸カルシウムの最も安定した多形体である。炭酸カルシウムのその他の多形体は、鉱物のアラゴナイトおよびバテライトである。アラゴナイトは、380−470℃でカルサイトに変化し、バテライトは、さらに安定性が低い。粉砕炭酸カルシウムは、湿式および/または乾式による、例えばサイクロンによる粉砕、ふるい分けおよび/または細分化などの処理を介して加工されている。粉砕炭酸カルシウムは、ドロマイト質石灰岩の場合と同様に、一定濃度のマグネシウムを元来含有し得ることが、当業者に知られている。
【0005】
本発明の意味において、「沈降炭酸カルシウム(PCC)」とは、一般に、水性環境中での二酸化炭素と石灰との反応に続く沈殿によって、または水中でのカルシウムおよび炭酸塩源の沈殿によって、または溶液からのカルシウムおよび炭酸塩イオン、例えばCaClおよびNaCOの沈殿によって得られる合成材料である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトの3つの主要な結晶形態で存在し、これらのそれぞれの結晶形態に対する多くの異なる多形体(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体状(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六角柱状、卓面状、コロイド状(C−PCC)、立方体および角柱体(P−PCC)などの典型的な晶癖を有する三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶の六角柱状結晶の典型的な晶癖を有する斜方晶構造であり、ならびに薄く細長い角柱体、曲線の刃状、急傾斜のピラミッド形状、のみ状の結晶、樹枝状およびサンゴ状または蠕虫状の形態の多様な組合せである。
【0006】
これらの形態のうち、カルサイトの偏三角面体の形態は、この形態が、生成するのが比較的安価であり、望ましい光散乱特性を有するので、紙産業におけるバルク顔料として使用するのに特に望ましい。
【0007】
一般に、商業的に炭酸カルシウムを生成する1つの手段は、生石灰を得るために、粗石灰岩を焼成することによる。次いで、水が添加され、水酸化カルシウムの水性懸濁液(「石灰乳」)が生じ、二酸化炭素がこのスラリーに再導入され、炭酸カルシウムを沈殿させる。この方法の生成物は、沈降炭酸カルシウム(「PCC」)として知られている。得られた炭酸カルシウムの水性懸濁液またはスラリーは、そのまま使用することができる、または乾燥生成物を形成するためにさらに加工されている(例えば、脱水、粉砕など)。沈殿反応は、使用される正確な反応条件によって、3つのそれぞれの多形体(カルサイト、アラゴナイトおよびバテライト)の生成を可能にする。
【0008】
偏三角面体状のPCC生成物を生成するための先行技術の方法は、典型的に、生石灰の消和中または炭酸化の前の、単糖(例えば、フルクトース、グルコースなどの単純な糖)、二糖(例えば、スクロース、マルトース、ラクトース)、多糖(例えば、デンプン、セルロース、グリコーゲン)、トリエタノールアミン、マンニトール、ジエタノールアミン、ビシン、モルホリン、トリ−イソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ボロヘプトン酸ナトリウム、または多価アルコールもしくは多価フェノールを含めた試薬などの添加剤の使用に頼っている(例えば、米国特許第6,294,143号、第5,232,678号および第5,558,850号を参照されたい。)。
【0009】
偏三角面体状のPCCを調製するための従来の方法も、典型的に、炭酸化の前に消石灰を冷却する(例えば、米国特許第3,320,026号および第6,251,356号を参照されたい。)。
【0010】
加えて、偏三角面体状のPCCを調製するための従来の方法は、炭酸化中に撹拌を利用する(例えば米国特許第3,320,026号、第5,232,678号、第5,342,600号、第5,558,850号および第6,251,356号を参照されたい。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,294,143号明細書
【特許文献2】米国特許第5,232,678号明細書
【特許文献3】米国特許第5,558,850号明細書
【特許文献4】米国特許第3,320,026号明細書
【特許文献5】米国特許第6,251,356号明細書
【特許文献6】米国特許第5,342,600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
紙、特に上質紙の製造において、より高いバルクを達成するために充填剤含有量を増加させる、同時に、生成された/得られた紙の剛性を増加させる望ましさがある。しかし、従来の偏三角面体状のPCCの欠点の1つは、紙、特に非塗工上質紙の製造において要求されているほどの強度をもたない可能性があることである。したがって、生成された紙の剛性またはバルクを犠牲にすることなく充填剤含有量および密度の増加を可能にする、従来の偏三角面体状のPCCより強度のある偏三角面体の形態の沈降PCCを生成するための低コストの方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、加工中のPCCの塊/結晶の抵抗がより強い(すなわち、離散したPCC粒子を形成する傾向がより低い)偏三角面体の形態の低コストの沈降PCCを生成するための方法を提供し、上質紙用途における、従来の偏三角面体状のPCCより改善された剛性および/またはバルクにつながる。その一般的な形態において、本発明は、2段階の製造方法を利用することによってこれらの要件を実現する。第1の段階は、生石灰を消和して消石灰を得るステップを含む。第2の段階は、撹拌せず、熱交換器で事前冷却せず、いずれの添加剤もなしで、消石灰を二酸化炭素ガスでの炭酸化に供してPCCを生成するステップを含む。
【0014】
以下の実施例で論じるように、この2段法は、以前のPCC生成方法の弱点を克服し、加工中のPCCの塊/結晶の抵抗がより強い(すなわち、離散したPCC粒子を形成する傾向がより低い)偏三角面体状のPCC生成物をもたらし、上質紙用途における、従来の偏三角面体状のPCCより改善された剛性および/またはバルクにつながる。
【0015】
本発明は、本発明の方法によって調製されるPCCまたはPCC生成物も提供する。
【0016】
加えて、本発明は、本発明のPCCまたはPCC生成物を含む材料を提供する。材料としては、例えば、紙、紙コーティング、紙製品、インク、塗料、コーティング、プラスチック、接着剤、建築製品、食品、化粧品および医薬製品など、炭酸カルシウムを充填剤として含むことが望ましい製品を挙げることができる。
【0017】
本発明は、本発明のPCCまたはPCC生成物を含む紙コーティングも提供する。本発明のPCCまたはPCC生成物は、より高い光沢および改善された不透明性をもたらすと考えられる。
【0018】
最終的に、本発明は、充填剤として偏三角面体状のPCCを使用することが望ましい材料の製造のための本発明のPCCまたはPCC生成物の使用を対象とする。
【0019】
本発明の追加的な目的は、以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】遠心分離前および後(CF後)の両方において、従来の方法に従って調製したPCC(既存)と、本発明に従って調製したPCC(新規)とを比較した粒径分布のグラフである。
図2】遠心分離前に本発明に従って調製したPCCを撮影したSEM写真である。
図3】遠心分離後に本発明に従って調製したPCCを撮影したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によれば、沈降炭酸カルシウム生成物が、2段法において調製される。第1の段階において、生石灰(CaO)は、水で消和され、水酸化カルシウム(Ca(OH))スラリーまたは石灰乳が得られる。この反応は、反応(1)に示され、好ましくは消和槽で行われる。
【0022】
(1) CaO+HO→Ca(OH)+熱
【0023】
消和反応において使用される生石灰(CaO)源は、破砕された石灰岩を加熱(焼成)して、石灰(CaO)および二酸化炭素(CO)を形成することによって得られることが好ましい。この反応は、初期温度約85°Fから120°Fで行われ、好ましくは95°Fから110°Fで行われることが好ましい。反応は発熱性であるので、温度は、典型的に、180°Fから210°Fまで上昇し、好ましくは195°Fから205°Fまで上昇する。反応は、混合または撹拌によって行われることも望ましい。反応の継続時間は変更することができるが、典型的には約5から15分間である。スラリーの固形分は、典型的に、固体約10から20重量%であり、好ましくは、固体12から18重量%である。さらなる水が、所望の固体濃度を制御および/または維持および/または達成するために消和反応中に導入できることは、本発明の範囲内である。
【0024】
次いで、消和反応からの水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰は、大き過ぎる粒子を除去するために、所望により、ふるいにかけてもよい。適したふるいとしては、例えば、約30−50メッシュのふるいサイズを有するふるいを挙げることができる。次いで、水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰は、所望により、中間槽に移してもよい。次いで、空冷の結果として、水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰の温度は、約40°Fから70°F、より好ましくは約60°F低下し、この結果、スラリー温度は、125°Fから165°F、好ましくは135°Fから155°Fになる。しかし、PCCを調製するための従来の方法に反して、水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰は、炭酸化の前に熱交換器中での冷却に供されない。この点において、PCCを調製するための従来の方法は、典型的に、炭酸化の前に熱交換器中で水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰を、90°Fから120°Fに冷却する。
【0025】
第2の段階において、水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰は、次いで、二酸化炭素ガスでの炭酸化に供されてPCCを生成する。この炭酸化ステップは、反応(2)に示され、反応器中で行われる。
【0026】
(2) Ca(OH)+CO→CaCO+HO+熱
【0027】
従来の方法とは異なり、水酸化カルシウムスラリーまたは消石灰は、PCCを調製する従来方法のような炭酸化反応中の撹拌は行われない。本明細書で使用されている「撹拌せず」は、反応器の撹拌器が止められていることを意味する。撹拌をしないことは、反応およびPCC偏三角面体状の結晶の成長を減速させると考えられる。
【0028】
加えて、先行技術におけるPCCを調製するための方法とは異なり、炭酸化は、いずれの添加剤もなしで実施される。本明細書で使用されている、「いずれの添加剤もない」は、生石灰または得られた水酸化カルシウムスラリーの消和中に添加され得る添加剤を含めた、炭酸化の前または炭酸化中に添加され得るいずれの添加剤もないことを意味する。このような添加剤としては、例えば、炭水化物、単糖、二糖、多糖、トリエタノールアミン、マンニトール、ジエタノールアミン、ビシン、モルホリン、トリ−イソプロパノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ボロヘプトン酸ナトリウム、または多価アルコールもしくは多価フェノールを含めた試薬、またはこれらの任意の混合物が挙げられる。好ましくは、いずれの添加剤もないことは、単糖または二糖のないことを意味し、最も好ましくは、いずれの添加剤もないことは、二糖(例えば、スクロース)のないことを意味する。
【0029】
本発明に従って、二酸化炭素(CO)は、気体二酸化炭素、液体二酸化炭素、固体二酸化炭素または二酸化炭素と少なくとも1つのその他のガスの気体混合物から選択され、好ましくは、気体二酸化炭素である。COが二酸化炭素と少なくとも1つのその他のガスの気体混合物である場合、気体混合物は、燃焼プロセスもしくは焼成プロセスまたは同様のものなどの工業プロセスから排出された燃焼排ガスを含有する二酸化炭素である。COは、アルカリ炭酸塩および/またはアルカリ土類炭酸塩と酸との反応によっても生成され得る。さらに、COは、例えばエチルアルコール、木材などの有機物の燃焼によって、または発酵によって生成され得る。二酸化炭素と少なくとも1つのその他のガスの気体混合物が使用された場合、二酸化炭素は、8から約99容量%の範囲、好ましくは10から25容量%の範囲、例えば20容量%で存在する。好ましくは、COは、外因から得られ、より好ましくは、破砕された炭酸カルシウムの焼成から捕捉される。炭酸化反応は、好ましくは初期温度130°Fから160°Fで実施され、より好ましくは、初期温度135°Fから145°Fで実施される。炭酸カルシウムの中位粒径(medium particle size)は、上方または下方に1−2°F出発温度を調節することによって制御できる。反応は、水酸化カルシウムまたは消石灰のすべてまたは実質的にすべてが、炭酸カルシウムスラリーに変換されるまで、続行することが望ましい。好ましい実施形態において、反応は、反応混合物の伝導性が増加すると、停止される。
【0030】
次いで、炭酸化反応から得られたPCCスラリーが、単離される。このことは、PCCスラリーを貯蔵槽に移すことによって実現されることが好ましい。次いで、PCCスラリーは、所望の特徴を有するPCC生成物を得るためにさらなる加工ステップ、例えばふるい分け、脱水、分散および/または粉砕ステップに供することができる。好ましい実施形態において、PCCスラリーを、より大きい粒子を除去するために、1つ以上のふるいに通す。さらに好ましい実施形態において、PCCスラリーを、45ミクロン超の粒子または75ミクロン超の粒子を分離するために、ふるいに通す。
【0031】
得られたPCC生成物は、好ましくは85%以上の偏三角面体状の粒子を含有し、より好ましくは90%以上の偏三角面体状の粒子を含有し、最も好ましくは95%以上の偏三角面体状の粒子を含有する。
【0032】
得られたPCC生成物はまた、好ましくは中位粒径(d50)が2.0から3.0ミクロンであり、より好ましくは中位粒径(d50)が2.2から2.8ミクロンであり、最も好ましくは中位粒径(d50)が2.5ミクロンである。本出願全体にわたって、炭酸カルシウム生成物の「粒径」は、その粒径の分布によって説明される。値dは、その粒子のx重量%がdより小さい直径を有する直径を表す。このことは、d20値は、すべての粒子の20重量%がより小さい粒径であり、d75値は、すべての粒子の75重量%が、より小さい粒径であることを意味する。したがって、d50値は、重量メジアン粒径である、すなわち、すべての粒の50重量%が、この粒径より大きいまたは小さい。本発明の目的のために、粒径は、別段の定めのない限り、重量メジアン粒径d50として特定される。0.5μmより大きいd50を有する粒子に対する重量メジアン粒径d50を求めるために、Micromeritics社(USA)からのSedigraph 5100装置を使用できる。
【0033】
得られたPCC生成物は、BET表面積が4.0から7.0m/gであることも好ましい。
【0034】
本発明の方法に従って得られたPCC生成物は、加工中のPCCの塊/結晶の抵抗がより強く(すなわち、離散したPCC粒子を形成する傾向がより低く)、上質紙用途における、従来の方法を使用して調製されたPCC生成物より改善された剛性および/またはバルクにつながる。
【0035】
PCCが、脱水、分散および/または粉砕ステップに供される場合、これらのステップは、当技術で知られている手順によって実現され得る。粉砕に関して、PCC生成物は、乾燥粉砕および/または湿式粉砕され得る。湿式粉砕とは、液体媒質(例えば、スラリー)中でのPCCの粉砕を指す。湿式粉砕とは、粉砕助剤なしで、または粉砕助剤の存在下で行うことができる。1種以上の粉砕剤、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸の塩および/またはアクリル酸のコポリマーの塩などを含めることができる。乾燥は、任意の適した乾燥装置を使用して行うことができ、熱乾燥および/またはエバポレーターなどの装置を使用する減圧下での乾燥、フラッシュドライヤー、オーブン、噴霧乾燥器(Niroおよび/またはNaraによって販売されている噴霧乾燥器など)および/または真空容器中での乾燥を含むことができる。所望により、分散体を調製するための分散剤も含めることができる。
【0036】
本発明によって生成されるPCCまたはPCC生成物は、充填剤として炭酸カルシウムを使用することが望ましい様々な材料で使用され得る。例えば、偏三角面体状のPCCまたはPCC生成物は、薬剤などの生成物を用いる医薬分野において、ヒトまたは動物の食品において、充填剤として製紙分野において、または紙のコーティングにおいて、水ベースまたは非水ベースの塗料において、プラスチックにおいて、印刷用インク(例えば、オフセット印刷、輪転グラビア印刷)において使用され得る。好ましくは、PCCまたはPCC生成物は、紙中の充填剤として使用され、より好ましくは非塗工上質紙の充填剤として使用される。この点において、本発明のPCC生成物は、非塗工上質紙において従来のPCCを上回る改善をもたらし、従来のPCCより良好なバルク(+5−10%)、高い不透明性および剛性を可能にする。
【0037】
紙のコーティングに使用される場合、本発明のPCCまたはPCC生成物は、より高い光沢および改善された不透明性をもたらすと考えられる。
【0038】
本発明は、本発明の理解を助けるために記載されている以下の実施例で説明されており、以下の特許請求の範囲で定義されている本発明を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0039】
粒径分布(直径X未満の粒子の質量%)および鉱物材料の重量中位径(d50)。以下の実施例のすべてにおいて、鉱物材料の重量メジアン径および粒径分布特徴を、沈降法、すなわち重力場での沈降挙動の分析を介して求めた。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を使用して行われた。
【0040】
この方法および機器は、当業者に知られており、充填剤および顔料の粒度を求めるのに通常使用されている。測定は、0.1重量%のNaの水溶液で行われた。試料を、高速撹拌器および超音速を使用して分散した。
【0041】
材料の比表面積(SSA)。比表面積を、30分間250℃(482°F)での加熱による試料の調整に続いて、窒素を用いるISO 9277に従って、BET(Brunauer、Emmett、Teller)法を介して測定した。このような測定の前に、試料を濾過し、すすぎ、少なくとも12時間オーブンで90から100℃(194から212°F)で乾燥させてから、すりこぎを用いてすり鉢中で砕き、次いで、一定重量が観測されるまで、130℃(266°F)で、質量平衡で配置した。
【0042】
[比較例1]
従来のPCCの調製
従来のPCCを、以下の通りに調製した。まず、燃焼させた石灰を、消和機中で約185から210°Fの温度で水と反応させて、消石灰を得た。次に、コースの粗粒を、消石灰から分離して、廃棄した。次いで、消石灰を、バッファタンクに採集し、熱交換器にポンプで通してスラリーを冷却し、次いで中間槽に入れた。この後、糖を消石灰に添加した。次いで、冷却した消石灰を、初期温度135°F超で設定した反応器に移した。次いで、受け入れ先の製紙工場の石灰キルンからの二酸化炭素を、撹拌器を作動させた反応器の底に導入して、消石灰を炭酸カルシウムスラリーに変換した。次いで、炭酸カルシウムスラリーをふるいにかけて、45ミクロン超の粒子を除去し、次いで、得られた生成物を、貯蔵タンクにポンプで送り込んだ。2つの生成物を、炭酸化開始温度を変更することによってこの方法を用いて調製した。1つの生成物は、中位粒径(d50)が2.5ミクロン、BET比表面積が4.9m/g、d75/d25が1.49であった。この他の生成物は、中位粒径(d50)が2.9ミクロン、BET比表面積が3.8m/g、d75/d25が1.44であった。
【0043】
[実施例2]
本発明によるPCCの調製
本発明によるPCCを、実施例1の通りだが以下の変更を加えて調製した。まず、消石灰を、熱交換器をポンプで通さず、スラリーを冷却した。第2に、糖を消石灰に添加しなかった。第3に、炭酸化反応を、撹拌器を作動せずに行った。この方法で調製した生成物は、中位粒径(d50)が2.5ミクロン、BET比表面積が4.7m/g、d75/d25が1.5であった。
【0044】
[実施例3]
手すき紙試験
比較例1からの従来のPCCおよび実施例2からの本発明によるPCCを使用して、さらなる試験のための手すき紙を準備した。さらに特定すれば、手すき紙を、まず広葉樹パルプ80%と針葉樹パルプ20%を合わせることによって調製し、100%のパルプミックスを達成した。次いで、手すき紙を、そのパルプ80%および従来のPCCまたは本発明によるPCCのいずれか20%を使用して作った。次いで、手すき紙を以下の試験に供した。
【0045】
ガーレイ多孔度。この試験で、100ccの空気が紙試料を通過する時間を測定し、Tappi T460 om−96に従って、Gurley−Hill Porosity Meter(4190型)(Gurley Precision Instruments,New York)を使用した。
【0046】
スコットボンド試験。この試験で、紙の内部繊維結合強度を測定し、Z方向の強度の予想される性能の指標とした。この試験を、Tappi T569に従って、Scott Internal Bond Tester(型番号 B、バージョン AV−2)(Huygen Corporation,Illinois)を用いて行った。
【0047】
テーバー剛性。この試験で、紙の剛性およびレジリエンス(resilency)を評価し、Tappi T−543 pm−84に従って、Tabler V−5 Stiffness Tester(型番号 150B)(Teledyne/Taber Inc.,New York)を使用した。
【0048】
引張強度。この試験で、破断点で生じる最大引張強度、さらに特定すれば、紙試料を破るために必要とされる単位幅当たりの力を測定した。この試験は、Tappi T−498 om−88に従って、Instron Testing System(型番号 1011)(Instron Corporation,Massachusetts)を使用した。
【0049】
試験の結果は、表1に表されている。示されるように、本発明によるPCCから調製した手すき紙は、従来のPCC生成物から調製された手すき紙より高いバルク密度で、改善された剛性(スコットボンド試験、テーバー剛性試験および引張強度試験を用いて決定される)を有した。
【0050】
【表1】
【0051】
[実施例4]
抵抗試験
従来の方法によって調製されたPCC(「既存のPCC」)および本発明の方法によって調製されたPCC(「新規のPCC」)を、ローターの異周速によって生み出される遠心効果およびせん断効果による応力を受ける遠心分離を伴う抵抗試験に供した。この試験のパラメーターは、以下の通りであった。
【0052】
バッチサイズ: 500リットル
実施時間 約60分
遠心分離機、型: KHD Humboldt SC01
円錐角: 10°
ドラム直径: 268mm
プール深さ: 168mm
ローター速度: 4450分−1
異周速ローター速度: 41分−1
供給量: 400l/h
モーター定格電流: 28A
モーター定格出力: 15kW
【0053】
粒径分布を、遠心分離の前および後の両方の既存のPCCおよび新規のPCCに対して求めた。結果は、以下の表2および図1に示されている。表2および図1に示されているとおり、新規のPCCは、遠心分離に供した後、既存のPCCより少ない微粒子を生み出した。例えば、遠心分離の結果、既存のPCCは、dp2μm未満の粒子を56%増加させ、一方、新規のPCCは、dp2μm未満の粒子を48.9%増加させた。dp1.5μm未満では、既存のPCCは、dp1.5μm未満の粒子を34.6%増加させ、一方、新規のPCCは、dp1.5μm未満の粒子を27.8%増加させた。dp1.0μm未満では、既存のPCCは、dp1μm未満の粒子を13%増加させ、一方、新規のPCCは、dp1μm未満の粒子を10.1%増加させた。遠心分離の結果として、既存のPCCと比較した新規のPCCに対する微粒子の減少は、新規のPCCが、既存のPCCより加工中のPCCの塊/結晶の強い抵抗を有することを実証している。
【0054】
【表2】
【0055】
加えて、遠心分離前および後の新規のPCCのSEM写真が、図2および3にそれぞれ示されている。遠心分離前および後の試料は、質的に同じ、すなわち観察できる粒径の減少はないように見える。したがって、本発明のPCCは、加工中に受ける条件に対してPCCの塊/結晶のより強い抵抗を有すると結論づけることができる。
【0056】
本明細書で言及されたすべての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。前記発明が、明確さおよび理解の目的で詳細に記載されているが、形態および詳細における様々な変更が、添付の特許請求の範囲における本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、開示を読むことによって当業者には理解されるだろう。したがって、特許請求の範囲の等価物の意味および範囲に入るすべての変更は、本明細書に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3