特許第6295323号(P6295323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6295323コア−シェル触媒の処理方法および処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295323
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】コア−シェル触媒の処理方法および処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20180305BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20180305BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20180305BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20180305BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20180305BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20180305BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20180305BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   B01J37/34
   B01J35/08 B
   B01J37/04 102
   B01J23/89 M
   B01J23/44 M
   H01M4/88 K
   H01M4/86 M
   H01M4/92
【請求項の数】11
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-527982(P2016-527982)
(86)(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公表番号】特表2016-525444(P2016-525444A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】US2013051200
(87)【国際公開番号】WO2015009311
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ミンファ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドナー,ジョン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】オデル,ジョナサン エイチ.
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−522478(JP,A)
【文献】 特開昭63−162896(JP,A)
【文献】 特表2009−504914(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0245017(US,A1)
【文献】 特開2008−297574(JP,A)
【文献】 特開2002−069689(JP,A)
【文献】 特開2014−128756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 37/34
B01J 23/44
B01J 23/89
B01J 35/08
B01J 37/04
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が移動するための通路を確立するようにハウジング内に配置された多孔質電極に、電位を確立するステップと、
前記多孔質電極を通してコア粒子を案内するステップと、
前記コア粒子が前記多孔質電極を通過するときに、前記コア粒子上に金属層を溶着するステップと、
を含み、
前記ハウジングは、チューブの形態を備え、
前記多孔質電極は、前記コア粒子が前記ハウジングを通して移動するときに、前記コア粒子が移動する方向に沿った長さを有し
記多孔質電極は、カーボンマトリックスを備えるとともに、チューブの形態を有した対向電極によって取り囲まれていることを特徴とするコア−シェル触媒を処理する方法。
【請求項2】
前記コア粒子はパラジウムを有し、前記金属層は銅を有することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記コア粒子は、カーボン粒子上に支持されたパラジウムナノ粒子を備えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記金属層は、銅単一層を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質電極は、カーボンを備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
溶着した前記金属層を有した前記コア粒子と、白金を有した溶液と、を混合するステップと、
前記コア粒子上に白金単一層を確立するように、白金で前記溶着した金属層を置換するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
粒子が移動するための通路を確立するハウジングと、
多孔質電極であって、コア粒子が移動することを許容し、それにより前記コア粒子が該多孔質電極を通過するときに、前記コア粒子上に金属層を溶着させるように、前記ハウジング内に配置された多孔質電極と、
を備え、
前記ハウジングは、チューブの形態を備え、
前記多孔質電極は、前記コア粒子が前記ハウジングを通して移動するときに前記コア粒子が移動する方向に沿った長さを有し
記多孔質電極は、カーボンマトリックスを備えるとともに、チューブの形態を有した対向電極によって取り囲まれていることを特徴とするコア−シェル触媒を処理するアッセンブリ。
【請求項8】
前記コア粒子はパラジウムを有し、前記金属層は銅を有することを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項9】
前記コア粒子は、カーボン粒子上に支持されたパラジウムナノ粒子を備えることを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項10】
前記多孔質電極は、カーボンを備えることを特徴とする請求項のいずれかに記載のアッセンブリ。
【請求項11】
前記金属層は、銅単一層を備えることを特徴とする請求項10のいずれかに記載のアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア−シェル触媒の処理方法および処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応に基づいて電気エネルギを生成するのに有用である。燃料電池の大規模な実施に関連した課題の1つは、燃料電池の構成要素に一般に関連した費用である。例えば、触媒層は、一般に、高価な材料、例えば白金を備えている。燃料電池に関連した費用を削減するのに必要な白金の量を減少する種々の提案がなされてきた。
【0003】
1つの提案は、コア上に白金製シェルを溶着してなる貴金属コアを有したコア−シェル触媒を用いるようになされてきた。このコア−シェル触媒は、例えば低温の燃料電池が期待できるものと考えられている。ある提案に従ってコア−シェル触媒を合成することは、パラジウム製(または他の貴金属製)コア上に銅単一層を形成し、そして、銅を白金単一層で置換することを含む。この点に関して提案された技術に関連した課題のいくつかは、望ましい特性を有した白金単一層を達成するために、溶着プロセス中に白金クラスタの形成を防止することを含む。白金溶着プロセスを制御するのに必要な制約の形式により、バッチの大きさが制限され易く、コア−シェル触媒の利用に関連した経済的な利益を損なうことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施例に従って、触媒の材料を処理する方法が、多孔質電極に電位を確立するステップを含む。コア粒子が、多孔質電極を通して案内される。粒子が多孔質電極を通過するときに、金属層が、コア粒子上に溶着される。
【0005】
実施例に従って、触媒の材料を処理する例示的なアッセンブリが、ハウジングを有しており、このハウジングは、粒子がハウジングを通して移動する通路を確立する。多孔質電極は、この多孔質電極を通して移動するコア粒子の分散を許容するようにハウジング内に位置する。粒子が多孔質電極を通過するときに、コア粒子上に金属層を溶着することができる。
【0006】
少なくとも1つの開示した実施例の種々の特徴および利点が、以下の発明を実施するための形態から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例に従う触媒の材料を処理する方法を実行するように構成されたシステムを概略的に示す図である。
図2】本発明の実施例に従う多孔質電極を備えた例示的な反応器を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、システム20を概略的に示しており、該システム20は、触媒の材料を処理する方法を実行するように構成されている。システム20は、貴金属、例えばパラジウムからなるシェルを覆う白金単一層を有してなるコア−シェル触媒を実現するのに有用である。システム20は、リザーバ22を有しており、該リザーバ22は、コア粒子、硫酸銅および硫酸水素塩(CuSO4+H2SO4)からなる溶液を備えている。また、リザーバ22内の溶液は、選択された貴金属、例えばパラジウムからなるコア粒子を備えている。一例では、リザーバ22内の溶液は、0.05モルの硫酸銅および0.05モルの硫酸水素塩からなる濃度を有している。
【0009】
ある例では、コア粒子は、パラジウムまたは選択された貴金属を備えている。一実施例では、コア粒子は、カーボン粒子上に支持されたパラジウムナノ粒子を備えている。
【0010】
ポンプ24が、リザーバ22から反応器26に溶液を案内し、該反応器26において、銅単一層が、コア粒子上に溶着される。銅単一層がコア粒子上に溶着されると、これらの銅単一層およびコア粒子は、置換チャンバ28に案内され、置換チャンバ28において、銅単一層は、白金単一層で置換される。
【0011】
図示した例において銅単一層を白金単一層で置換する反応は、一般に知られた方法で生じる。例えば、符号30によって提供された溶液は、K2PtCl4+H2SO4および添加物、例えばクエン酸およびクエン酸塩を備えている。一例では、K2PtCl4は、0.001モル濃度を有しており、H2SO4は、0.05モル濃度を有しており、添加物の濃度は、K2PtCl4の濃度の10倍よりも高くなっている。置換チャンバ28内の反応は、Cu+Pt2+=Cu2++Ptとしてまとめることができる。
【0012】
反応器26は、コア−シェル触媒上の白金単一層を実現する拡大したプロセスを容易にするように構成されている。図2に示すように、反応器26は、ハウジング40、例えばガラス製チューブを備えている。多孔質作用電極42が充電されるとともに、導電性リード44と関連している。多孔質作用電極42は、ハウジング40内に位置している。多孔質作用電極42は、この例では、カーボンマトリックスまたは格子構造体を備えている。本発明の恩恵を受ける当業者は、溶液が反応器26を通して移動するときに、コア粒子を有した溶液が多孔質作用電極42を通過する多孔質カーボンマトリックスをどのように構成するかを理解するであろう。
【0013】
他の多孔質チューブ46が、ハウジング40内に位置している。多孔質チューブ46は、導電性リード48と関連した対向電極として機能する。この例では、参照電極50が設けられている。電極は、コア粒子上に銅単一層を溶着することを容易にする。コア粒子を有した溶液が多孔質作用電極42を通して移動するときに、多孔質カーボンマトリックスと粒子との間の接触により、粒子に銅を溶着するための電位が提供される。一例では、コア粒子は、カーボン上に支持されたパラジウムを有したカーボンを備えている。コア粒子を有した溶液は、符号60で概略的に示すように、反応器26を通流する。多孔質作用電極42は、反応器26を通る流れの方向に沿った長さを有しており、この長さにより、コア粒子上に均一な銅単一層を確立することが容易となる。
【0014】
図示した例は、必要なときに、反応器26からあらゆる流体を除去することを容易にするドレーン62を備えている。
【0015】
多孔質作用電極42の1つの特徴は、多孔質作用電極42により、大きなバッチ数量でコア粒子上の銅単一層を実現することが容易となることである。銅単一層で触媒のコア粒子を覆う先に提案された構成は、グラムで計測される結果を算出してきたが、図示した反応器26は、キログラムで計測される結果を算出する。つまり、多孔質電極反応器の構成により、他の銅溶着設備または技術を用いることで期待されてきた生産量に対して1000倍、生産量を増加させることができる。
【0016】
開示した例示的な反応器構成により、コア−シェル触媒材料を用いることに関連した経済が向上する。大規模な生産を実現する能力により、コア−シェル触媒が、燃料電池や他の電気化学に基づいたエネルギ生成装置で用いられる触媒を製造する純白金に対して、より期待がもてる代替物となる。
【0017】
上述の説明は、例示的なものであって、限定的なものではない。開示した例によって提供される技術への貢献の本質から逸脱することなく、開示した例への変更および修正が、当業者に明らかになるであろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、添付の特許請求の範囲を検討することによって決定されるのみである。
図1
図2